(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】熱電変換構造体
(51)【国際特許分類】
H10N 10/13 20230101AFI20240522BHJP
H10N 10/17 20230101ALI20240522BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H10N10/13
H10N10/17
H02N11/00 A
(21)【出願番号】P 2021571234
(86)(22)【出願日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2021001084
(87)【国際公開番号】W WO2021145386
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2020003755
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597096161
【氏名又は名称】株式会社朝日ラバー
(73)【特許権者】
【識別番号】591034280
【氏名又は名称】株式会社フェローテックマテリアルテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 和明
(72)【発明者】
【氏名】豊島 周平
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐揮
(72)【発明者】
【氏名】植木 康郎
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/111359(WO,A1)
【文献】特開2008-277684(JP,A)
【文献】特開2014-229849(JP,A)
【文献】特開2009-302168(JP,A)
【文献】米国特許第03208877(US,A)
【文献】特開2006-278880(JP,A)
【文献】国際公開第2019/092876(WO,A1)
【文献】特開2017-216352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/13
H10N 10/17
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換素子の高温側及び低温側の各面が熱伝導性フィラー含有の熱伝導性エラストマーシートに接合されて一体化された熱電変換モジュールが、前記熱電変換素子に対して熱を伝熱する伝熱対象部材の間に配設された構造体であって、
前記熱伝導性エラストマーシートの各面と前記伝熱対象部材の対応面とが
取外しできかつ直接密着できるものであり、
前記熱伝導性エラストマーシートの厚さが0.3~0.5mmであり、前記熱伝導性エラストマーシートの硬度が、JIS K 6253に準拠されるデュロメータによるタイプAの硬度で90/s~70/sであり、前記熱伝導性エラストマーシートが、ポリイミド、PEEK、PSSから選ばれる樹脂材料、又はシリコーンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム、ウレタンゴムから選ばれるゴム材料であることを特徴とする熱電変換構造体。
【請求項2】
前記熱伝導性エラストマーシート
が、パーオキサイド架橋シリコーンゴム、付加架橋シリコーンゴム、縮合架橋シリコーンゴム、又はこれらのシリコーンゴムとオレフィン系ゴムとの共ブレンド物で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換構造体。
【請求項3】
前記熱伝導性エラストマーシートの熱伝導率が1.0W/(m・K)
~10W/(m・K)であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱電変換構造体。
【請求項4】
前記熱電変換素子と熱伝導性エラストマーシートとが、互いの表面の活性基を直接的な及び/又は分子接着剤を介した間接的な共有結合により接合されて一体化されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の熱電変換構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱電変換素子を具備する熱電変換構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱の有効利用を図るためにゼーベック効果やペルチェ効果といった熱電変換素子を具備する熱電変換構造体が用いられている。例えば、特許文献1には、P型とN型の複数の半導体素子が金属電極を介して交互に電気的に直列に接続された熱電変換素子と、該熱電変換素子と間接的に接した金属製熱交換器とを備え、前記熱電変換素子又は前記金属製熱交換器に樹脂及び無機系粉末からなる複合膜から形成した絶縁層が一体的に固着され、前記熱電変換素子と前記金属製熱交換器とが、それらの間に前記絶縁層を配して熱伝導性グリスを介して接合されている熱電変換システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の特許文献1に記載された熱電変換構造体は、構成部材間の熱伝導性の向上のために構成部材の接合面に熱伝導性グリス層が形成されている。しかし、特許文献1の熱電変換構造体のように構成部材の接合面に気泡の混入を防止しつつ均一な熱伝導性グリス層を形成することは、熱電変換構造体の生産性を低下させることにもなる。また、近年、物品や人体の一部に、熱電変換素子を絶縁体で挟み込んだ熱電変換モジュールを着脱自在に装着し、物品や人体の一部を加熱又は冷却することが試みられている。このように物品や人体の一部に熱電変換モジュールを着脱自在に装着する際に、両者間の伝熱特性を向上すべく熱伝導性グリス層を形成することはできず、両者間の伝熱特性は低下する。
【0005】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、熱伝導部材間に熱電変換素子が挟み込まれた熱電変換モジュールと放熱部材や吸熱部材の伝熱対象部材とが取り外し可能であって、且つ両者の伝熱特性を高めることのできる熱電変換構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するためになされた本発明に係る熱電変換構造体は、熱電変換素子の高温側及び低温側の各面が熱伝導性フィラー含有の熱伝導性エラストマーシートに接合されて一体化された熱電変換モジュールが、前記熱電変換素子に対して熱を伝熱する伝熱対象部材の間に配設された構造体であって、前記熱伝導性エラストマーシートの各面と前記伝熱対象部材の対応面とが取外しできかつ直接密着できるものであり、前記熱伝導性エラストマーシートの厚さが0.3~0.5mmであり、前記熱伝導性エラストマーシートの硬度が、JIS K 6253に準拠されるデュロメータによるタイプAの硬度で90/s~70/sであり、前記熱伝導性エラストマーシートが、ポリイミド、PEEK、PSSから選ばれる樹脂材料、又はシリコーンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム、ウレタンゴムから選ばれるゴム材料であることを特徴とするものである。
【0007】
前記熱伝導性エラストマーシートのJIS K 6253に準拠されるタイプAデュロメータによる硬度が90/s以下であることにより、熱伝導性エラストマーシートと伝熱対象部材との接合面との密着性を向上でき且つ構成部材の熱膨張等の熱変形への対応も更に向上できる。例えば前記伝導性エラストマーシートが、パーオキサイド架橋シリコーンゴム、付加架橋シリコーンゴム、縮合架橋シリコーンゴム、又はこれらのシリコーンゴムとオレフィン系ゴムとの共ブレンド物で形成されているといものである。
【0008】
前記熱伝導性エラストマーシートの熱伝導率が1.0W/(m・K)~10W/(m・K)であることが、熱電変換素子と伝熱対象部材との間の熱交換特性を向上できる。
【0009】
前記熱電変換素子と熱伝導性エラストマーシートとが、互いの表面の活性基を直接的な及び/又は分子接着剤を介した間接的な共有結合により接合されて一体化されていることにより、熱電変換構造体の構成部材が熱膨張等で熱変形しても熱電変換素子と熱伝導性エラストマーシートとの剥離を防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る熱電変換構造体は、熱電変換素子が熱伝導性エラストマーシートを介して伝熱対象部材間に配されているから、構成部材に熱膨張等による熱変形があっても熱伝導性エラストマーシートで吸収できる。しかも、本発明に係る熱電変換構造体の熱電変換モジュールは、熱電変換素子の高温側及び低温側の各面が熱伝導性フィラー含有の熱伝導性エラストマーシートに接合されて一体化され、且つ熱電変換モジュールの熱伝導性エラストマーシートの各面と伝熱対象部材の対応面とも直接密着されており、各接合面に熱伝導性グリス層を形成することなく良好な伝熱特性を呈することができる。このように熱伝導性グリス層を形成することなく熱電変換モジュールと伝熱対象部材とを密着できるので、熱電変換構造体の生産性も向上でき且つ熱電変換モジュールを伝熱対象部材から取り外す用途や人体に対しても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を適用する熱電変換構造体の断面図及び熱電変換モジュールの部分断面図である。
【
図2】本発明を適用するゼーベック効果用の熱電変換構造体の断面図、電力測定回路図、及びピーク電力の説明図である。
【
図3】ゼーベック効果用の熱電変換構造体の各々のピーク電力を測定した結果を示すグラフである。
【
図4】本発明を適用するペルチェ効果用の熱電変換構造体の断面図及び到達最低温度と駆動電流との関係を示すグラフである。
【
図5】ゼーベック効果用の熱電変換構造体を構成するエラストマーシートの硬度の違いによる各々のピーク電力を測定した結果を示すグラフである。
【
図6】ゼーベック効果用の熱電変換構造体の熱伝導性エラストマーシートの熱伝導率の違いによる各々のピーク電力を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの記載に限定されるものではない。
【0013】
本発明に係る熱電変換構造体の一例を
図1に示す。
図1(a)は熱電変換構造体10の断面図であり、
図1(b)は熱電変換モジュール12の部分断面図である。熱電変換構造体10は、熱電変換モジュール12が、熱電変換モジュール12に熱を伝熱し又は伝熱される伝熱対象部材14,16の間に配設されている。この熱電変換モジュール12を構成する熱電変換素子18は、
図1(b)に示すようにN型半導体素子18aとP型半導体素子18bとを導電性パターン18c,18cで直列に連結されているものである。熱電変換素子18の高温側及び低温側の各面は、熱伝導性エラストマーシート20に接合されて一体化されている。
【0014】
熱伝導性エラストマーシート20は、熱伝導性フィラー含有の熱伝導性エラストマーで形成されている。熱伝導性フィラーとしては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、窒化珪素(Si3N4)、ダイヤモンド、カーボン、フラーレン、カーボングラファイト又はこれらの2種以上の組み合わせを挙げることができる。熱伝導性フィラーの配合量は50~95重量%(より好ましくは65~90重量%)とすることが好ましい。
【0015】
この熱伝導性エラストマーを構成するエラストマー成分は、少なくとも樹脂材料やゴム材料を含むエラストマー組成物で形成されているものである。樹脂材料としては、ポリイミド、PEEK、PSSなどが挙げられる。ゴム材料としては、シリコーンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム(EPDM)、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらの材料のうち、柔軟性、タック性、及び追従性を向上させる観点からはシリコーンゴムであると好ましく、気体透過性を低下させ防水性を高める観点からはEPDMであると好ましい。
【0016】
ゴム材料のシリコーンゴムは、主成分が、パーオキサイド架橋シリコーンゴム、付加架橋シリコーンゴム、縮合架橋シリコーンゴム、又はこれらのシリコーンゴムとオレフィン系ゴムとの共ブレンド物である。シリコーンゴムで形成された放熱性ゴム絶縁体を用いることで、-40℃~200℃のような広い温度範囲で高い柔軟性を示し、耐屈曲疲労性や追従性を向上することができ、またヒートショックによる膨張を防ぐことができる。これらシリコーンゴムは、数平均分子量で1万~100万のものである。
【0017】
パーオキサイド架橋型シリコーンゴムは、パーオキサイド系架橋剤で架橋できるシリコーン原料化合物を用いて合成されたものであれば特に限定されないが、具体的には、ポリジメチルシロキサン、ビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端トリフロロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフロロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサン、メタアクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、アクリロキシプロピル基末端ポリジメチルシロキサン、(メタアクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0018】
共存させるパーオキサイド系架橋剤として、例えばケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類が挙げられ、より具体的には、ケトンパーオキサイド、ペルオキシケタール、ヒドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ペルオキシカルボナート、ペルオキシエステル、過酸化ベンゾイル、ジクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジt-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ(ジシクロベンゾイル)パーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン、ベンゾフェノン、ミヒラアーケトン、ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ベンゾインエチルエーテルが挙げられる。
【0019】
パーオキサイド系架橋剤の使用量は、得られるシリコーンゴムの種類や、そのシリコーンゴムで形成された放熱性ゴム絶縁体の性質や、必要に応じて使用されるシランカップリング剤の性質に応じて適宜選択されるが、シリコーンゴム100質量部に対し、0.01~10質量部、好ましくは0.1~2質量部用いられることが好ましい。この範囲よりも少ないと、架橋度が低すぎてシリコーンゴムとして使用できない。一方、この範囲よりも多いと、架橋度が高すぎてシリコーンゴムの弾性が低減してしまう。
【0020】
また、付加架橋型シリコーンゴムは、Pt触媒存在下で合成したビニルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ジフェニルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ジエチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端トリフロロプロピルメチルシロキサン/ポリジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン、ビニルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジフェニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ジメチルシロキサン/ビニルメチルシロキサン/ジトリフロロプロピルメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキサン基末端ポリビニルメチルシロキサンなどのビニル基含有ポリシロキサンと、H末端ポリシロキサン、メチルHシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ポリメチルHシロキサン、ポリエチルHシロキサン、H末端ポリフェニル(ジメチルHシロキシ)シロキサン、メチルHシロキサン/フェニルメチルシロキサンコポリマー、メチルHシロキサン/オクチルメチルシロキサンコポリマーで例示されるH基含有ポリシロキサンの組成物、アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、アミノプロピルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノイソブチルメチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、アミノエチルアミノプロピルメトキシシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルアミノ末端ポリジメチルシロキサンで例示されるアミノ基含有ポリシロキサンと、エポキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーで例示されるエポキシ基含有ポリシロキサン、琥珀酸無水物末端ポリジメチルシロキサンで例示される酸無水物基含有ポリシロキサン及びトルイルジイソシアナート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナートなどのイソシアナート基含有化合物との組成物から得られるものである。
【0021】
これらの組成物から熱伝導性エラストマーを作製する際には、これらの組成物と熱伝導性フィラーとを混練した後、所定温度で所定時間加熱することによって得ることができる。加熱温度及び加熱時間等の作成条件は、付加反応の種類及び特性によって異なるので一義的には決められないが、一般には0~200℃で、1分間~24時間加熱するというものである。これにより熱伝導性フィラーが配合された熱伝導性の付加架橋型シリコーンゴムが得られる。低温の加工条件の方が、シリコーンゴムの物性が良い場合には、反応時間が長くなる。物性よりも素早い生産性が要求される場合には、高温で短時間の加工条件で行われる。生産過程や作業環境によって、一定の時間内に加工しなければならない場合には、所望の加工時間に合わせ、加工温度を前記範囲内の比較的高い温度に設定して、行われる。
【0022】
また、縮合架橋型シリコーンゴムは、スズ系触媒の存在下で合成されたシラノール末端ポリジメチルシロキサン、シラノール末端ポリジフェニルシロキサン、シラノール末端ポリトリフロロメチルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン/ジメチルシロキサンコポリマーで例示されるシラノール基末端ポリシロキサンからなる単独縮合成分の組成物、これらのシラノール基末端ポリシロキサンと、テトラアセトキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、ジt-ブトキシジアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエノキシメチルシラン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、テトラ-n-プロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシイミノ)シラン、ビニルトリイソプロペノイキシシラン、トリアセトキシメチルシラン、トリ(エチルメチル)オキシムメチルシラン、ビス(N-メチルベンゾアミド)エトキシメチルシラン、トリス(シクロヘキシルアミノ)メチルシラン、トリアセトアミドメチルシラン、トリジメチルアミノメチルシランで例示される架橋剤との組成物、又はこれらのシラノール基末端ポリシロキサンと、クロル末端ポリジメチルシロキサン、ジアセトキシメチル末端ポリジメチルシロキサン、末端ポリシロキサンで例示される末端ブロックポリシロキサンの組成物から得られるものである。
【0023】
これらの組成物から熱伝導性フィラーが配合された熱伝導性の縮合架橋型シリコーンゴムを作成する際には、これらの組成物と熱伝導性フィラーとを混練した後、所定温度で所定時間加熱することによって得ることができる。加熱温度及び加熱時間等の作成条件は、縮合反応の種類及び特性によって異なるので一義的には決められないが、一般には0~100℃で、10分間~24時間加熱するというものである。低温の加工条件の方が、シリコーンゴムの物性が良い場合には、反応時間が長くなる。物性よりも素早い生産性が要求される場合には、高温で短時間の加工条件で行われる。生産過程や作業環境によって、一定の時間内に加工しなければならない場合には、所望の加工時間に合わせ、加工温度を前記範囲内の比較的高い温度に設定して行われる。
【0024】
熱伝導性エラストマーは、シリコーンゴムと非シリコーンゴムとの共ブレンド物であってもよい。非シリコーンゴムとしては、4‐シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、塩素化エチレン・プロピレンゴム、塩素化ブチルゴム等のオレフィン系ゴム、天然ゴム、1,4‐シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、ポリクロロプレン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、水素添加スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリルニトリル・ブタジエン共重合ゴム、水素添加アクリルニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレンオキサイド-エピクロロヒドリン共重合体ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロルスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロルスルフォン化ポリエチレンゴム、クロロプレンゴム、塩素化アクリルゴム、臭素化アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンとその共重合ゴム、臭素化ブチルゴムテトラフロロエチレン、ヘキサフロロプピレン、フッ化ビニリデン及びテトラフルオロロエチレンなどの単独重合体ゴム及びこれらの二元及び三元共重合体ゴム、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合ゴム、プロピレン/テトラフルオロエチレン共重合ゴム、エチレンアクリルゴム、エポキシゴム、ウレタンゴム、両末端不飽和基エラストマー等の線状重合体で例示される原料ゴム状物質の配合物を架橋させたものが挙げられる。これらは単独で用いられても複数混合して用いられてもよい。
【0025】
他のゴム材料としては、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムが挙げられる。
【0026】
このような熱伝導性エラストマーからなる熱伝導性エラストマーシート20は、その厚さは、あまりにも薄すぎると加工が困難となり易く、あまりにも厚すぎると熱伝導性が低くなり易いことから、1.0~0.1mmの厚さ(より好ましくは0.5~0.3mmの厚さ)とすることが好ましい。厚さが0.1mm未満の熱伝導性エラストマーシート20は強度が不充分となり加工が困難となる傾向があり、厚さが1.0mmを超える熱伝導性エラストマーシート20は熱伝導性が低くなる傾向がある。また、熱伝導性エラストマーシート20の熱伝導率は、1.0W/(m・K)以上(より好ましくは10~3W/(m・K))であることが好ましい。熱伝導率が1.0W/(m・K)未満の熱伝導性エラストマーシート20を用いた場合には、熱伝導性エラストマーシート20の伝熱性が低下する傾向にある。更に、熱伝導性エラストマーシート20は、JIS K 6253に準拠されるタイプAデュロメータによる硬度が90/s以下(好ましくは85/s以下)であることが好ましい。このような低硬度の熱伝導性エラストマーシート20は伝熱対象部材14,16の対応面との密着性を向上できる。また、伝熱対象部材14,16の一方が人体の肌のように微細な凹凸があっても、熱伝導性エラストマーシート20と直接密着できる。
【0027】
熱電変換素子18は、2種類の異なる金属又は半導体などの熱電変換素子材料を導電性パターン18cにより連結して形成されている。熱電変換素子材料としては特に限定されないが、ビスマス・テルル系、鉛・テルル系、アンチモン・テルル系、鉄・アルミニウム系、シリコン・ゲルマニウム系、シリコン系又はゲルマニウム系のクラスレート化合物、CNTなどがあり、使用温度範囲や接続形態によって適宜選択される。導電性パターンとしては特に限定されないが、金、銀、銅、アルミニウム並びに各種合金系、銀系導電インク、炭素系導電インクなどがあり使用温度範囲や接続形態によって適宜選択される。
【0028】
熱電変換素子18は、
図1(b)に示すようにN型半導体素子18aとP型半導体素子18bとが導電性パターン18c、18cで直列に連結されているものである。このような熱電変換素子18は、その構成するN型半導体素子18aとP型半導体素子18b(以下構成半導体素子という)並びに導電性パターン18cの各々と熱伝導性エラストマーシート20、20との接合面が、互いの表面に有する活性基、例えば水酸基(-OH)やヒドロキシシリル基(-SiOH)のような反応性活性基同士で、共有結合により直接、化学結合して分子接着することにより、強固に接合して一体化されている。このような化学結合は、OH基同士の脱水によるエーテル結合であることが好ましい。
【0029】
熱伝導性エラストマーシート20と構成半導体素子とは、接合面となる少なくとも何れかの表面の一部又は全部に、コロナ処理、プラズマ処理、又は紫外線照射処理のような乾式処理が施されていてもよい。紫外線照射処理とは、紫外線を照射する処理であれば限定されないが、広域波長域又は複数波長の紫外線を照射する一般的な紫外線処理(UV処理)であってもよく、単一波長と見做せるエキシマ紫外線を照射するエキシマ紫外線処理(エキシマUV処理)であってもよい。これらの乾式処理により、その表面が元来有する水酸基のような活性基の他にさらに活性基を生成することができ、元来有する活性基や活性化されて生成した活性基が、対峙し合う表面で互いに共有結合、具体的には脱水して強固な共有結合であるエーテル結合を生じることで、熱伝導性エラストマーシート20と構成半導体素子とを化学的に直接、接合して一体化することができる。
【0030】
熱伝導性エラストマーシート20と構成半導体素子とは、分子接着剤を介した共有結合により、接合して一体化していてもよい。分子接着剤処理とは、分子接着剤の分子中の官能基が被着体と共有結合による化学反応をすることによって、構成半導体素子の各々と熱伝導性エラストマーシート20とを、単分子乃至は多分子の分子接着剤分子による共有結合を介して直接結合するものである。分子接着剤は、二つの官能基が被着体である構成半導体素子の各々と熱伝導性エラストマーシート20とに各々化学反応して共有結合を形成するもので、このような両官能性の分子の総称であり、具体的には、シランカップリング剤をはじめとする各種カップリング剤が挙げられる。
【0031】
分子接着剤は、より具体的には、
トリエトキシシリルプロピルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール(TES)、アミノエチルアミノプロピル トリメトキシシランのようなアミノ基含有化合物;
トリエトキシシリルプロピルアミノ基のようなトリアルコキシシリルアルキルアミノ基とメルカプト基又はアジド基とを有するトリアジン化合物、下記化学式(I)
【化1】
(式(I)中、Wは、スペーサ基、例えば置換基を有していてもよいアルキレン基、アミノアルキレン基であってもよく、直接結合であってもよい。Yは、OH基又は加水分解や脱離によりOH基を生成する反応性官能基、例えばトリアルコキシアルキル基である。-Zは、-N
3又は-NR
1R
2である(但し、R
1,R
2は同一又は異なりH又はアルキル基、-R
3Si(R
4)
m(OR
5)
3-m[R
3,R
4はアルキル基、R
5はH又はアルキル基、mは0~2]。なお、アルキレン基、アルコキシ、アルキル基は、置換基を有していてもよい炭素数1~12の直鎖状、分岐鎖状及び/又は環状の炭化水素基である。)で表わされるトリアジン化合物;
トリアルコキシシリルアルキル基を有するチオール化合物;
トリアルキルオキシシリルアルキル基を有するエポキシ化合物;
CH
2=CH-Si(OCH
3)
2-O-[Si(OCH
3)
2-O-]
n-Si(OCH
3)
2-CH=CH
2 (n=1.8~5.7)で例示されるビニルアルコキシシロキサンポリマーのようなシランカップリング剤
が挙げられる。
【0032】
また分子接着剤は、アルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤として、市販のシランカップリング剤、具体的にはビニルトリメトキシシラン(KBM-1003)、ビニルトリエトキシシラン(KBE-1003)で例示されるビニル基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM-303)、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-402)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403)、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE-402)、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(KBE-403)で例示されるエポキシ基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシラン(KBM-1403)で例示されるスチリル基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-502)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503)、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE-502)、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE-503)、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-5103)で例示される(メタ)アクリル基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン(KBE-585)で例示されるウレイド基及びアルコキシ含有シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-802)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM-803)で例示されるメルカプト基及びアルコキシ含有シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(KBE-846)で例示されるスルフィド基及びアルコキシ含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE-9007)で例示されるイソシアネート基及びアルコキシ含有シランカップリング剤(以上、何れも信越シリコーン株式会社製;商品名)が挙げられ、またビニルトリアセトキシシラン(Z-6075)で例示されるビニル基及びアセトキシ含有シランカップリング剤;アリルトリメトキシシラン(Z-6825)で例示されるアリル基及びアルコキシ含有シランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン(Z-6366)、ジメチルジメトキシシラン(Z-6329)、トリメチルメトキシシラン(Z-6013)、メチルトリエトキシシラン(Z-6383)、メチルトリフェノキシシラン(Z-6721)、エチルトリメトキシシラン(Z-6321)、n-プロピルトリメトキシシラン(Z-6265)、ジイソプロピルジメトキシシラン(Z-6258)、イソブチルトリメトキシシラン(Z-2306)、ジイソブチルジメトキシシラン(Z-6275)、イソブチルトリエトキシシラン(Z-6403)、n-ヘキシトリメトキシシラン(Z-6583)、n-ヘキシトリエトキシシラン(Z-6586)、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン(Z-6187)、n-オクチルトリエトキシシラン(Z-6341)、n-デシルトリメトキシシラン(Z-6210)で例示されるアルキル基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン(Z-6124)で例示されるアリール基及びアルコキシ基含有シランカップリング剤;n-オクチルジメチルクロロシラン(ACS-8)で例示されるアルキル基及びクロロシラン基含有シランカップリング剤;テトラエトキシシラン(Z-6697)で例示されるアルコキシシランであるシランカップリング剤(以上、何れも東レ・ダウコーニング株式会社製;商品名)が挙げられる。
【0033】
アルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤は、ヒドロシリル基(SiH基)含有アルコキシシリル化合物、例えば、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
(i-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
(n-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
(n-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(t-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
CH3O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(n-C3H7)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(i-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(n-C4H9)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(t-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(CH3O)2CH3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
CH3O(CH3)2SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C6H4OC6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C2H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p1Si(CH3)2H、
C2H5O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p2Si(C2H5)2H、
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p3Si(CH3)2H、
(CH3)3SiOSiH(CH3)O[SiH(CH3)O]p4Si(CH3)3、
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p5Si(CH3)3、
(CH3)3SiO[(C2H5OSiOCH3CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p6Si(CH3)3、
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p7Si(CH3)3、
(CH3)3SiO[(Si(OC2H5)2CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p8Si(CH3)3、
(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(CH3)O]p9[Si(CH3)2O]q1Si(CH3)3、
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]p10[Si(CH3)2O]q2Si(CH3)3、
(CH3)3SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]p11[Si(CH3)2O]q3Si(CH3)3、
(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(C2H5)O]p12Si(CH3)3、
(CH3)3SiO[(Si(OC2H5)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]p13Si(CH3)3、
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]p14Si(CH3)3、
C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]p15Si(CH3)2H、
Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]p16Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p17Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p18Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p19Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p20Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p21Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p22Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p23Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p24Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p25Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p26Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p27Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p28Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p29Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p30Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p31Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p32Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p33Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p34Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p35Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(CH3O)Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]p36[HSi(CH3)2OSiC6H5O]q4Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]p37[HSi(CH3)2OSiC6H5O]q5Si(CH3)2H、
C2H5O(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p38[SiCH3(C6H5)O]q6Si(CH3)2H、
Si(OC2H5)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p39[SiCH3(C6H5)O]q7Si(CH3)2H、
C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p40[SiCH3(C6H5)O]q8Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO(C2H5O)Si(CH3)O[SiH(CH3)O]p41[SiCH3(C6H5)O]q9Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[Si(OC2H5)3CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]p42[SiCH3(C6H5)O]q10Si(CH3)2H
であってもよい。これらの基中、p1~p42及びq1~q10は1~100までの数である。一つの分子に、ヒドロシリル基を、1~99個有していることが好ましい。
【0034】
アルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤は、ヒドロシリル基を含有するアルコキシシリル化合物、例えば、
(C2H5O)3SiCH2CH=CH2、
(CH3O)3SiCH2CH2CH=CH2、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH=CH2、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH=CH2、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH=CH2、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH=CH2、
(CH3O)3SiCH2(CH2)7CH=CH2、
(C2H5O)2Si(CH=CH2)OSi(OC2H5)CH=CH2、
(CH3O)3SiCH2CH2C6H4CH=CH2、
(CH3O)2Si(CH=CH2)O[SiOCH3(CH=CH2)O]t1Si(OCH3)2CH=CH2、
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[SiOC2H5(CH=CH2)O]t2Si(OC2H5)3、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t3CH=CH2、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t4CH=CH2、
CH3O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t5CH=CH2、
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t6CH=CH2、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t7CH=CH2、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]u1Si(CH3)3CH=CH2、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]u2[Si(CH3)2O]t8Si(CH3)3CH=CH2、
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[SiCH3(OC2H5)O]u3Si(OC2H5)2CH=CH2、
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u4Si(OC2H5)2CH=CH2、
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u5Si(OC2H5)2CH=CH2
が挙げられる。これらの基中、t1~t8及びu1~u5は1~30までの数である。一つの分子に、ビニル基を、1~30個有していることが好ましい。
【0035】
これらのビニル基とSiH基とを金属触媒、例えば白金含有化合物で反応促進し、基材シートとエラストマーシートとを接合してもよい。
【0036】
アルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤として、アルコキシシリル基を両末端に含有するアルコキシシリル化合物、例えば、
(C2H5O)3SiCH2CH2Si(OC2H5)3、
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2Si(OC2H5)3、
(C2H5O)3SiCH=CHSi(OC2H5)3、
(CH3O)3SiCH2CH2Si(OCH3)3(CH3O)3SiCH2CH2C6H4CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3Si[CH2CH2]3Si(OCH3)3、
(CH3O)2Si[CH2CH2]4Si(OCH3)3、
(C2H5O)2Si(OC2H5)2、
(CH3O)2CH3SiCH2CH2Si(OCH3)2CH3、
(C2H5O)2CH3SiOSi(OC2H5)2CH3、
(CH3O)3SiO[Si(OCH3)2O]v1Si(OCH3)3、
(C2H5O)3SiO[Si(OC2H5)2O]v2Si(OC2H5)3、
(C3H7O)3SiO[Si(OC3H7)2O]v3Si(OC3H7)3
であってもよい。これらの基中、v1~v3は0~30までの数である。
【0037】
アルコキシ基を有するアミノ基非含有のシランカップリング剤として、加水分解性基含有シリル基を含有するアルコキシシリル化合物、例えば、
CH3Si(OCOCH3)3、(CH3)2Si(OCOCH3)2、n-C3H7Si(OCOCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCOCH3)3、C6H5Si(OCOCH3)3、CF3CF2CH2CH2Si(OCOCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCOCH3)3、CH3OSi(OCOCH3)3、C2H5OSi(OCOCH3)3、CH3Si(OCOC3H7)3、CH3Si[OC(CH3)=CH2]3、(CH3)2Si[OC(CH3)=CH2]3、n-C3H7Si[OC(CH3)=CH2]3、CH2=CHCH2Si[OC(CH3)=CH2]3、C6H5Si[OC(CH3)=CH2]3、CF3CF2CH2CH2Si[OC(CH3)=CH2]3、CH2=CHCH2Si[OC(CH3)=CH2]3、CH3OSi[OC(CH3)=CH2]3、C2H5OSi[OC(CH3)=CH2]3、CH3Si[ON=C(CH3)C2H5]3、(CH3)2Si[ON=C(CH3)C2H5]2、n-C3H7Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH2=CHCH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、C6H5Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CF3CF2CH2CH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH2=CHCH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH3OSi[ON=C(CH3)C2H5]3、C2H5OSi[ON=C(CH3)C2H5]]3、CH3Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH3Si[N(CH3)]3、(CH3)2Si[N(CH3)]2、n-C3H7Si[N(CH3)]3、CH2=CHCH2Si[N(CH3)]3、C6H5Si[N(CH3)]3、CF3CF2CH2CH2Si[N(CH3)]3、CH2=CHCH2Si[N(CH3)]3、CH3OSi[N(CH3)]3、C2H5OSi[N(CH3)]3、CH3Si[N(CH3)]3などの易加水分解性オルガノシランであってもよい。
【0038】
このアルコキシ基を有するアミノ基含有のシランカップリング剤として、市販のシランカップリング剤、具体的にはN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-602)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-603)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE-603)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE-903)、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン(KBE-9103)、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-573)、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(KBM-575)で例示されるアミノ基含有アルコキシシリル化合物(以上、信越シリコーン株式会社製;商品名)が挙げられ、また3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Z-6610)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Z-6611)、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(Z-6094)、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(Z-6883)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-N’-[(エテニルフェニル)メチル-1,2-エタンジアミン・塩酸塩(Z-6032)で例示されるアミノ基含有アルコキシシリル化合物(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製;商品名)が挙げられる。
【0039】
乾式処理と分子接着剤処理とは、それぞれ何れか一方のみ施してもよく、それらを連続的に交互に施してもよい。例えば、乾式処理のみで接合していてもよく、乾式処理に引き続く分子接着剤処理で接合していてもよく、乾式処理に引き続く分子接着剤処理と更に乾式処理とで接合していてもよい。また、分子接着剤処理のみで接合していてもよく、分子接着剤処理に引き続く乾式処理で接合していてもよく、分子接着剤処理に引き続く乾式処理とさらに分子接着剤処理とで接合していてもよい。
【0040】
このように
図1(b)に示す熱電変換モジュール12は、熱電変換素子18の構成半導体素子と熱伝導性エラストマーシート20,20とが、直接的な及び/又は分子接着剤を介した間接的な共有結合により接合されて一体化されていることから、両者を十分に接合できている。更に、熱電変換モジュール12の熱伝導性エラストマーシート20,20の各々は、ゴム弾性を有し且つ柔らかいことから、伝熱対象部材14,16の対応面に直接当接して密着できる。このように
図1に示す熱電変換構造体10は、その構成部材が熱膨張等による熱変形しても、熱伝導性エラストマーシート20,20で吸収でき、構成部材と熱伝導性エラストマーシート20,20との剥離のおそれを解消できる。しかも、熱伝導性エラストマーシート20,20は伝熱特性が向上されて熱拡散性が良好であることから、熱電変換素子18と伝熱対象部材14,16との伝熱特性を向上できる。このように構成半導体素子と熱伝導性エラストマーシート20,20との接合、熱伝導性エラストマーシート20,20と伝熱対象部材14,16とは、熱伝導性グリス層を形成することなく密着できるので、熱電変換構造体10の生産性も向上できる。また、熱電変換モジュール12を伝熱対象部材14,16から取り外す用途や人体にも適用できる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1
熱電変換構造体10の熱電変換モジュール12のゼーベック効果による発電について実験した。
【0043】
(熱伝導性エラストマー型熱電変換モジュール12の作製)
まず、熱電変換素子(ビスマス・テルル系半導体素子、p-n数:73カップル)に分子接着剤処理を行った。分子接着剤処理は、分子接着剤としてビニルトリエトキシシラン(信越シリコーン株式会社製、製品名:KBE-1003)のエタノール溶液にて処理を行い、その後80℃にて30分間乾燥した。次に熱伝導性エラストマーシートの乾式処理を行った。熱伝導性エラストマーシートは、ジメチルシリコーンゴムに、伝熱性フィラーとしての酸化マグネシウム(MgO)及び酸化アルミニウム(Al2O3)を分散させた後、150×150×0.5mmのシート用金型に入れ、75t加圧加熱プレスにて150℃、10分間にて硬化させ、厚さ0.5mmの熱伝導性エラストマーシート(熱伝導率:3W/(m・K)、硬度:A82/s)を得た。得られた熱伝導性エラストマーシートを50×50mmに切り出し、大気圧コロナ表面改良装置(信光電気計測株式会社製、商品名:コロナマスター)を用いて、電源:AC100V、ギャップ長:0.5mm、出力電圧:18.0kV(表面電圧)、電力:18W、発振周波数:20kHzで温度20℃、移動速度:70mm/sec、移動回数:3回の条件で、乾式処理を行い、乾式処理した熱伝導性エラストマーシートを得た。得られた乾式処理した熱伝導性エラストマーシートを2枚用意し、熱電変換素子の上下を挟み込み、80℃にて30分間熱圧着プレスにて加圧加熱を行い、熱伝導性エラストマーシートと熱電変換素子18を接着させ、熱伝導性エラストマー型の熱電変換モジュールを得た。尚、熱伝導性エラストマーシートの硬度の「A」は、JIS K 6253に準拠されるタイプAデュロメータによるものであることを示す。
【0044】
(セラミック型熱電変換モジュール12の作製)
次に比較例として一般的な組み合わせであるセラミックと熱電変換素子を用いたセラミック型の熱電変換モジュールを作製した。熱電変換素子は熱伝導性エラストマー型と同様の熱電変換素子を用いた。セラミックは厚み0.5mm、50×50mmの酸化アルミニウム板(熱伝導率:30W/(m・K))を用いた。セラミック板を2枚用意し、熱電変換素子の上下を挟み込み、無機系耐熱接着剤(スリーエム社製 品番:TB3732)にてセラミックと熱電変換素子を接着させ、セラミック型の熱電変換モジュールを得た。
【0045】
(ゼーベック効果用の熱電変換構造体の作製)
(1)熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体10
作製した熱電変換モジュール12は、
図2(a)に示すように熱電変換素子18の加熱側に接合されている熱伝導性エラストマーシート20に伝熱対象部材16としての加熱部26を搭載した。加熱部26は、銅板26a、加熱用ペルチェ装置26b及びヒートシンク26cから構成され、銅板26aと加熱側の熱伝導性エラストマーシート20とが直接密着している。銅板26aの温度は、銅板16aの端部に設けられた温度センサ26dで検出され、この温度が一定となるように加熱用ペルチェ装置26bが制御されている。また、熱電変換モジュール12の冷却側の熱伝導性エラストマーシート20に伝熱対象部材14としての冷却部24が直接密着されている。この熱電変換構造体10の銅板16aは50℃に制御されており、冷却部24は冷却用ペルチェ装置で10℃に制御されている。従って、加熱部26と冷却部24との温度差は40℃である。
【0046】
(2)熱伝導性エラストマー型(グリス有)の熱電変換構造体
熱伝導性エラストマー型(グリス有)の熱電変換構造体は、熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体10において、銅板26aと加熱側の熱伝導性エラストマーシート20との面及び冷却側の熱伝導性エラストマーシート20と冷却部24との面にシリコーン系放熱グリス(SHENZHEN HALNZIYE ELECTRONIC COMPANY製、品番:HY-880、熱伝導率5W/mK)を塗布して熱伝導性グリス層を形成した他は熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体と同構成である。
【0047】
(3)セラミック型(グリス無)の熱電変換構造体
セラミック型(グリス無)の熱電変換構造体は、熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体10の熱伝導性エラストマー型に変えて、セラミック型を用いた他は熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体と同構成である。
【0048】
(4)セラミック型(グリス有)の熱電変換構造体
セラミック型(グリス有)の熱電変換構造体は、セラミック型(グリス無)の熱電変換構造体10において、銅板26aと加熱側のセラミックとの面及び冷却側のセラミックと冷却部24との面にシリコーン系放熱グリスを塗布して熱伝導性グリス層を形成した他は熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体と同構成である。
【0049】
(ピーク電力の測定)
熱電変換構造体の各々の熱電変換素子のピーク電力は
図2(b)に示す回路で測定した。
図2(a)に示す熱電変換モジュール12の熱電変換素子からの電流回路に所定の電子負荷(抵抗)を加えて発生する電圧を電圧計で測定して電力を計算した。電子負荷(抵抗)を変化させることにより
図2(c)に示す電子負荷と電力とのグラフからピーク電力を求めた。各熱電変換構造体のピーク電力を
図3に示す。
【0050】
図3から明らかなように熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体10は、セラミック型(グリス無)の熱電変換構造体よりも高いピーク電力を示し、熱伝導性エラストマー型(グリス有)の熱電変換構造体及びセラミック型(グリス有)の熱電変換構造体の各ピーク電力と略等しい。従って、熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体10の熱伝導性エラストマーシート20,20の各面と冷却部24及び加熱部26の各対応面とは直接密着しており、熱伝導性グリス層を形成することなく十分に熱伝導されていることを示す。
【0051】
実施例2
熱電変換構造体10の熱電変換モジュール12のペルチェ効果による冷却について実験した。
【0052】
(ペルチェ効果用の熱電変換構造体の作製)
(1)伝導ゴム型(グリス無)の熱電変換構造体10
熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体10は、実施例1で作製した熱電変換モジュール12の冷却側の熱伝導性エラストマーシート20に、
図4(a)に示すように銅板26aが直接密着されている。銅板26aには、銅板26aに載置された台30に155gの重り32が載せられており、銅板26aの温度を温度センサ34で検出している。また、熱電変換モジュール12の加熱側の熱伝導性エラストマーシート20は、
図4(a)に示すように冷却用ペルチェ装置で冷却されている冷却部24が直接密着されている。
【0053】
(2)熱伝導性エラストマー型(グリス有)の熱電変換構造体
熱伝導性エラストマー型(グリス有)の熱電変換構造体は、伝導ゴム型(グリス無)の熱電変換構造体10において、銅板26aと冷却側の熱伝導性エラストマーシート20との面及び加熱側の熱伝導性エラストマーシート20と冷却部24との面にシリコーン系放熱グリス(熱伝導率5W/mK)を塗布して熱伝導性グリス層を形成した他は熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体と同構成である。
【0054】
(3)セラミック型(グリス無)の熱電変換構造体
セラミック型(グリス無)の熱電変換構造体は、熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体10の熱伝導性エラストマー型に変えて、セラミック型を用いた他は熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体と同構成である。
【0055】
(4)セラミック型(グリス有)の熱電変換構造体
セラミック型(グリス有)の熱電変換構造体は、セラミック型(グリス無)の熱電変換構造体10において、銅板26aと加熱側のセラミックとの面及び冷却側のセラミックと冷却部24との面にシリコーン系放熱グリスを塗布して熱伝導性グリス層を形成した他は熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体と同構成である。
【0056】
(銅板26aの最低到達温度の測定)
熱電変換モジュール12に所定の駆動電流を供給し、銅板26aの温度を温度センサ34で検出した。熱電変換モジュール12への駆動電流の供給開始から5分後の銅板26aの温度を到達最低温度とした。熱電変換モジュール12に供給する駆動電流値を変えて各熱電変換構造体の到達最低温度を測定し、その結果を
図4(b)に示す。
【0057】
図4(b)から明らかなように、熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体10は、セラミック型(グリス無)の熱電変換構造体の到達最低温度よりも低温であって、熱電変換モジュール12と伝熱対象部材である銅板26aと冷却部24との伝熱が良好である。セラミック型(グリス無)の熱電変換構造体の到達最低温度は、駆動電流が3Aのとき、1A,2Aのときに比較して高温となっている。この現象は、熱電変換構造体のセラミック板と銅板26a及び冷却部24との伝熱が不十分であって、熱電変換モジュール内に熱が蓄積されたことによるものと推察される。
【0058】
また、熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体10と熱伝導性エラストマー型(グリス有)の熱電変換構造体との到達最低温度は同じである。従って、熱電変換モジュール12を用いることにより、熱電変換モジュール12と伝熱対象部材である銅板26aと冷却部24との伝熱は、熱電性グリス層を形成しなくても、熱電性グリス層を形成した場合と同一の伝熱特性が得られている。
【0059】
図4(b)において、セラミック型(グリス有)の熱電変換構造体の最低到達温度は、熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体10及び熱伝導性エラストマー型(グリス有)の熱電変換構造体のいずれの最低到達温度よりも低温である。セラミック型の熱電変換モジュールに用いられているセラミック板は、熱伝導性エラストマー型の熱電変換モジュールに用いられている熱伝導性エラストマーシート20よりも比熱が著しく大きく熱容量が大きいことによるものと推察される。このことから、セラミック型(グリス有)の熱電変換構造体の最低到達温度は、熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体10及び熱伝導性エラストマー型(グリス有)の熱電変換構造体の最低到達温度よりも高々4℃ほど低い程度であって、セラミック型(グリス有)の熱電変換構造体であってもセラミック板と銅板26a及び冷却部24との伝熱が十分でないことを示す。
【0060】
実施例3
熱電変換構造体10を構成するエラストマーシートの硬度の影響を、熱電変換構造体10の熱電変換モジュール12のゼーベック効果による発電にて実験した。尚、熱伝導性エラストマーシート20は、伝熱性フィラーを添加すると熱伝導率とともに硬度も変化するため、熱伝導性エラストマーシート20に変えてシリコーンエラストマーシートを用いて実験を行った。
【0061】
(異なる硬度のシリコーンエラストマーシートの作製)
シリコーンエラストマーシートは、ジメチルシリコーンゴムを150×150×0.5mmのシート用金型に入れ、75t加圧加熱プレスにて150℃、10分間にて硬化させ、厚さ0.5mmのシリコーンシートを得た。使用したメチルシリコーンゴムは、RBB-6670(硬度:A70/s)、RBB-6650(硬度:A50/s度)、RBB-6630(硬度:A30/s)(いずれもダウコーニング社製、熱伝導率0.2W/(m・K))を用いた。尚、硬度は、いずれもJIS K 6253に準拠してタイプAデュロメータによるものである。
【0062】
(ゼーベック効果用の熱電変換構造体の作製)
(1)構成するエラストマーシートの硬度が異なる熱電変換モジュール(グリス無)の熱電変換構造体
構成するエラストマーシートの硬度が異なる熱電変換モジュール(グリス無)の熱電変換構造体は、熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体10の熱伝導性エラストマーシート20に変えて硬度の異なる上記シリコーンエラストマーシートを用いた他は熱伝導性エラストマー型(グリス無)の熱電変換構造体10と同構成である。
【0063】
(2)構成するエラストマーシートの硬度が異なる熱電変換モジュール(グリス有)の熱電変換構造体
構成するエラストマーシートの硬度が異なる熱電変換モジュール(グリス有)の熱電変換構造体は、熱伝導性エラストマー型(グリス有)の熱電変換構造体10の熱伝導性エラストマーシート20に変えて硬度の異なる上記シリコーンエラストマーシートを用いた他は熱伝導性エラストマー型(グリス有)の熱電変換構造体10と同構成である。
【0064】
(ピーク電力の測定)
構成するエラストマーシートの硬度が異なる熱電変換構造体の各々の熱電変換素子のピーク電力は
図2(b)に示す回路で測定した。
図2(a)に示す熱電変換モジュール12の熱電変換素子からの電流回路に所定の電子負荷(抵抗)を加えて発生する電圧を電圧計で測定して電力を計算した。電子負荷(抵抗)を変化させることにより
図2(c)に示す電子負荷と電力とのグラフからピーク電力を求めた。各熱電変換構造体のピーク電力を
図5に示す。
【0065】
図5に示す熱電変換構造体のピーク電力は、エラストマーシートとして熱伝導性エラストマーシート20に変えてシリコーンエラストマーシートを用いたので、
図3に示す熱伝導性エラストマーシート20を用いた熱電変換構造体よりもピーク電力は低い値であった。しかし、
図5から明らかなように、いずれの硬度のシリコーンエラストマーシートを用いた熱電変換構造体でも、グリス有の熱電変換構造体及びグリス無の熱電変換構造体のピーク電力はほぼ同等であった。このように熱電変換構造体10のシリコーンエラストマーシートの各面と冷却部24及び加熱部26の各対応面とは直接密着しており、熱伝導性グリス層を形成することなく十分に熱伝導されていることを示す。尚、
図5の熱電変換構造体のピーク電力は、シリコーンエラストマーシートが低硬度となるほど低下する傾向を示しているが、シリコーンエラストマーシートの硬度は熱伝導物質でもあるシリカの配合量で調整していることから、シリカ配合量が少ない低硬度のシリコーンエラストマーシートではシリカ配合量の多い高硬度のシリコーンエラストマーシートよりも熱伝導率が低下したことに起因するものと推察される。
【0066】
実施例4
熱電変換構造体10の熱伝導性エラストマーシート20の熱伝導率の影響を、熱電変換構造体10の熱電変換モジュール12のゼーベック効果による発電にて実験した。
【0067】
(熱伝導性エラストマーシート20の熱伝導率が異なる熱電変換モジュール12の作製)
熱伝導性エラストマー型熱電変換モジュール12の熱伝導性エラストマーシート20として、熱伝導率が異なる熱伝導性エラストマーシートを用いた他は熱伝導性エラストマー型熱電変換モジュール12と同様に作製した。熱伝導性エラストマーシートは、ジメチルシリコーンゴムに、伝熱性フィラーとしての酸化マグネシウム(MgO)及び酸化アルミニウム(Al2O3)を所定の熱伝導率になるように分散させた後、150×150×0.5mmのシート用金型に入れ、75t加圧加熱プレスにて150℃、10分間にて硬化させ、厚さ0.5mmの熱伝導性エラストマーシートを得た。熱伝導性エラストマーシートは、熱伝導率5.0W/(m・K)(硬度:A80/s)、熱伝導率3.0W/(m・K)(硬度:A83/s)熱伝導率0.2W/(m・K)(硬度:A70/s)の3種にて比較した。
【0068】
(ピーク電力の測定)
熱伝導率が異なる熱伝導性エラストマーシートを用いた熱電変換構造体の各々の熱電変換素子のピーク電力は
図2(b)に示す回路で測定した。
図2(a)に示す熱電変換モジュール12の熱電変換素子からの電流回路に所定の電子負荷(抵抗)を加えて発生する電圧を電圧計で測定して電力を計算した。電子負荷(抵抗)を変化させることにより
図2(c)に示す電子負荷と電力とのグラフからピーク電力を求めた。各熱電変換構造体のピーク電力を
図6に示す。
【0069】
図6から明らかなように、熱伝導性エラストマーシートの熱伝導率の増加に伴い熱電変換構造体のピーク発電量の増加が見られた。特に、熱伝導率5.0W/(m・K)及び熱伝導率3.0W/(m・K)の熱伝導性エラストマーシートを用いた熱電変換構造体のピーク発電量が、熱伝導率0.2W/(m・K)の熱伝導性エラストマーシートを用いた熱電変換構造体のピーク発電量よりも大きく増加している。また、いずれの熱伝導率の熱伝導性エラストマーシートを用いた熱電変換構造体であっても、グリス有の熱電変換構造体及びグリス無の熱電変換構造体のピーク電力はほぼ同等であった。従って、熱電変換構造体10の各面と冷却部24及び加熱部26の各対応面とは直接密着しており、熱伝導性グリス層を形成することなく十分に熱伝導されていることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る熱電変換構造体によれば、熱電変換モジュールと伝熱対象部材との間に熱伝導性グリス層を形成することなく良好な伝熱特性を呈することから、熱電変換構造体の生産性も向上でき、熱電変換モジュールを熱伝導対象部材から取り外す用途や人体にも適用できる。
【符号の説明】
【0071】
10は熱電変換構造体、12は熱電変換モジュール、14,16は伝熱対象部材、16aは銅板、18は熱電変換素子、18aはN型半導体素子、18bはP型半導体素子、18cは導電性パターン、20は熱伝導性エラストマーシート、24は冷却部、26は加熱部、26aは銅板、26bは加熱用ペルチェ装置、26cはヒートシンク、26d,34は温度センサ、30は台である。