(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】糖合成用限外ろ過デバイス
(51)【国際特許分類】
C12M 1/40 20060101AFI20240522BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20240522BHJP
C07H 1/00 20060101ALI20240522BHJP
C12P 19/04 20060101ALI20240522BHJP
C12P 19/16 20060101ALI20240522BHJP
C12P 19/18 20060101ALI20240522BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20240522BHJP
C07H 7/027 20060101ALN20240522BHJP
C07H 15/10 20060101ALN20240522BHJP
【FI】
C12M1/40 A
C12M1/12
C07H1/00
C12P19/04
C12P19/16
C12P19/18
B01D61/14 500
C07H7/027
C07H15/10
(21)【出願番号】P 2020016007
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-11-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504145283
【氏名又は名称】国立大学法人 和歌山大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 真範
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-520525(JP,A)
【文献】国際公開第2005/056810(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01352967(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C07H
C12P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖質関連酵素を保持する限外ろ過膜を備え、限外ろ過膜を備える限外ろ過デバイスに糖質関連酵素を投入した後、1000×g以上での遠心ろ過により、前記糖質関連酵素を前記限外ろ過膜に保持させる工程を含む方法によって得られる、糖合成用限外ろ過デバイス。
【請求項2】
糖鎖合成用である、請求項1に記載の限外ろ過デバイス。
【請求項3】
前記糖質関連酵素が、グリコシルトランスフェラーゼ及びグリコシダーゼからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の限外ろ過デバイス。
【請求項4】
前記糖質関連酵素がグリコシルトランスフェラーゼである、請求項1~3のいずれかに記載の限外ろ過デバイス。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の限外ろ過デバイスを含む、糖合成装置。
【請求項6】
前記限外ろ過デバイスを複数個含む、請求項5に記載の糖合成装置。
【請求項7】
(A)糖質関連酵素を保持する限外ろ過膜を備える限外ろ過デバイスに糖基質を投入して糖合成反応を行う工程、及び
(B)前記工程Aの後、1000×g以上での遠心ろ過により、前記糖質関連酵素を前記限外ろ過膜上に保持させ、且つ糖合成反応生成物を含むろ液を得る工程を含む、糖の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖合成用限外ろ過デバイス等に関する。
【背景技術】
【0002】
生理活性糖鎖は生命の恒常性を担う大きな役割を果たしており、ウイルス防疫や免疫調節、がんの次世代ワクチン開発等、医学及び生化学研究において重要な分子である。糖鎖の合成は、すべてのヒドロキシ基が反応点となり、更に立体制御、位置選択的反応を求められることから、酵素反応により行われることが多い。ただ、一般的に酵素は高価であるので、合成コストが問題となり得る。
【0003】
特許文献1には、酵素が共有結合により固定化された担体を備えるクロマトグラフィーカラム中で糖鎖合成反応を行うことが報告されている。この方法であれば、酵素を再利用することができ、合成コストを抑制することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、特許文献1の技術を利用した研究を進める中で、酵素の種類によっては、担体への固定化効率が低い場合があることを見出した。
【0006】
そこで、本発明は、酵素を用いて、簡便且つ効率的に、且つ低コストで糖合成反応を行うことができる、新たな技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、糖質関連酵素を保持する限外ろ過膜を備える、糖合成用限外ろ過デバイス、であれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明者は、この知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0008】
項1. 糖質関連酵素を保持する限外ろ過膜を備える、糖合成用限外ろ過デバイス。
【0009】
項2. 糖鎖合成用である、項1に記載の限外ろ過デバイス。
【0010】
項3. 前記糖質関連酵素が、グリコシルトランスフェラーゼ及びグリコシダーゼからなる群より選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載の限外ろ過デバイス。
【0011】
項4. 前記糖質関連酵素がグリコシルトランスフェラーゼである、項1~3のいずれかに記載の限外ろ過デバイス。
【0012】
項5. 遠心ろ過デバイス又は圧力ろ過デバイスである、項1~4のいずれかに記載の限外ろ過デバイス。
【0013】
項6. 限外ろ過膜を備える限外ろ過デバイスに糖質関連酵素を投入した後、ろ過により、前記糖質関連酵素を前記限外ろ過膜に保持させる工程を含む方法によって得られる、項1~5のいずれかに記載の限外ろ過デバイス。
【0014】
項7. 項1~6のいずれかに記載の限外ろ過デバイスを含む、糖合成装置。
【0015】
項8. 前記限外ろ過デバイスを複数個含む、項7に記載の糖合成装置。
【0016】
項9. (a)限外ろ過膜を備える限外ろ過デバイスに糖質関連酵素及び糖基質を投入して糖合成反応を行う工程、及び
(b)前記工程aの後、ろ過により、前記糖質関連酵素を前記限外ろ過膜上に保持させ、且つ糖合成反応生成物を含むろ液を得る工程
を含む、糖の製造方法。
【0017】
項10. (A)糖質関連酵素を保持する限外ろ過膜を備える限外ろ過デバイスに糖基質を投入して糖合成反応を行う工程、及び
(B)前記工程Aの後、ろ過により、前記糖質関連酵素を前記限外ろ過膜上に保持させ、且つ糖合成反応生成物を含むろ液を得る工程
を含む、糖の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、酵素を用いて、簡便且つ効率的に糖合成反応を行うことができる、新たな技術を提供することができる。具体的には、糖合成用限外ろ過デバイス、糖合成装置、限外ろ過デバイスを利用した糖の製造方法を提供することができる。限外ろ過によって、酵素を限外ろ過膜上に保持させつつ、糖合成反応生成物を含むろ液を得ることができるので、酵素を再利用して糖合成反応を繰返して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の限外ろ過デバイスの一例の概略断面図を示す。
【
図2】本発明の限外ろ過デバイスの一例の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0021】
1.糖合成用限外ろ過デバイス
本発明は、その一態様において、糖質関連酵素を保持する限外ろ過膜を備える、糖合成用限外ろ過デバイス(本明細書において、「本発明の限外ろ過デバイス」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0022】
本明細書において、糖は、特に制限されず、単糖、及び2つ以上の単糖がグリコシド結合してなる糖(多糖)を包含する。
【0023】
単糖としては、特に限定されず、公知の単糖を採用することができる。例えば、七炭糖、六炭糖、五炭糖、四炭糖、又は三炭糖等が挙げられ、これらの中でも六炭糖が好ましく挙げられる。六炭糖としては、ガラクトース、グルコース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、マンノース、フルクトース、アロース、タロース、グロース、アルトロース、イドース、プシコース、ソルボース、タガトースが挙げられる。これらはD体又はL体のいずれでもよい。また、これらは一部の水酸基が還元されて水素原子に置換されていてもよいし、一部の水酸基が公知の保護基で保護されていても、硫酸基等の官能基で置換されていてもよい。
【0024】
多糖は、2分子以上の単糖がグリコシド結合により1分子に連結された糖である。多糖を構成する単糖の分子数は、例えば2以上、2~20、2~8である。多糖を構成する単糖の種類としては、特に限定されず、上記に示した単糖を採用することができる。また多糖を構成する単糖の組み合わせも特に限定されない。多糖の具体例としては、構成する単糖の分子数が2である多糖(例えばラクトース、Galβ(1→3)GalNAc、Galβ(1→4)GlcNAc、Galβ(1→6)GlcNAc、スクロース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオース、ラクチュロース、メリビオース等)、構成する単糖の分子数が3である多糖(例えばラフィノース、メレジトース、マルトトリオース、ガラクトシルラクチュロース、ガラクトシルメリビオース等)、構成する単糖の分子数が4である多糖(例えばアカルボース、スタキオース等)、構成する単糖の分子数が5以上である多糖等が挙げられる。
【0025】
糖には、上記した糖と、グリコシド結合を形成可能な水酸基を有する化合物(水酸基含有化合物)とが連結してなる糖誘導体も包含される。水酸基含有化合物としては、例えば脂肪族アルコール、反応性基を有する化合物等が挙げられる。これらの水酸基含有化合物としては、例えば一般式(1):
【0026】
【化1】
[一般式(1)中:R
1はエチニル基、ビニル基、-O-C(=O)-C(-CH
3)=CH
2、-O-C(=O)-CH=CH
2、アジド基、エポキシ基、アルデヒド基、又はオキシルアミノ基を示す。mは0又は1を示す。R
2は2価の炭化水素基を示す。pは0又は1を示す。]で表される化合物が挙げられる。
【0027】
R2で示される2価の炭化水素基は、鎖状、分枝状、又は環状のいずれでもよく、また飽和又は不飽和のいずれでもよい。好ましくは該炭化水素基は、鎖状又は分枝状(より好ましくは鎖状)の飽和又は不飽和(好ましくは飽和)炭化水素である。該炭化水素基の炭素原子数は、特に制限されず、例えば1~40である。
【0028】
糖質関連酵素は、糖のグリコシド結合(好ましくは糖と糖の間でのグリコシド結合)の形成、糖のグリコシド結合の分解、及び糖の修飾からなる群より選択される少なくとも1種(例えば、1種、2種、3種、又は4種)の反応を触媒する酵素であり、この限りにおいて特に制限されない。糖質関連酵素としては、例えばグリコシルトランスフェラーゼ、グリコシダーゼ、糖修飾酵素等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはグリコシルトランスフェラーゼ、グリコシダーゼ等が挙げられ、より好ましくはグリコシルトランスフェラーゼが挙げられる。グリコシルトランスフェラーゼ及び/又はグリコシダーゼを用いることにより、その糖転移反応触媒活性を利用して、糖鎖合成を行うことができる。また、グリコシルトランスフェラーゼ及びグリコシダーゼ(特にグリコシルトランスフェラーゼ)は、一般的に不安定であり、緩やかな力でも失活することもあるところ、限外ろ過膜に保持させることにより安定に再利用することができる本発明の技術を好適に適用することができる。
【0029】
グリコシルトランスフェラーゼとしては、特に制限されないが、例えばシアリルトランスフェラーゼ、ガラクシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、キシリルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、N-アセチル-ガラクトサミニルトランスフェラーゼ、アラクトシルトランスフェラーゼ、コンドロイチンシンターゼ、ヒアルロナンシンターゼ、ヘパロサンシンターゼ、N-アセチル-ヘキソサミンキナーゼ、フクロースキナーゼ、ラムヌロースキナーゼ、リブロースキナーゼ、キシロースキナーゼ等が挙げられる。
【0030】
グリコシダーゼとして使用し得るものとしては、特に限定されず、エキソ型またはエンド型を問わず公知のグリコシダーゼが挙げられ、好ましくはエキソ型のグリコシダーゼが挙げられる。例えば、ガラクトシダーゼ、セルラーゼ、グルコシダーゼ、ラクターゼ、アミラーゼ、キチナーゼ、スクラーゼ、キシラナーゼ、マルターゼ、インベルターゼ、シアリダーゼ又はヒアルロニダーゼ等が挙げられる。
【0031】
糖修飾酵素としては、特に制限されないが、例えば糖脱アセチル化酵素、_硫酸化酵素、脱硫酸化酵素、リン酸化酵素、脱リン酸化酵素等が挙げられる。
【0032】
糖質関連酵素の分子量は特に制限されないが、例えば10~100kDa、20~60kDaである。
【0033】
糖質関連酵素は、1種単独で採用することもできるし、2種以上を組合わせて採用することもできる。
【0034】
限外ろ過膜は、糖質関連酵素を保持することができ、且つ糖合成反応生成物及び基質を通過させることができるものである限り、特に制限されない。
【0035】
限外ろ過膜の素材としては、特に制限されず、例えばポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース、再生セルロース、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セラミック等が挙げられる。また、素材には、各種修飾、例えば低タンパク質吸着性修飾が施されていてもよい。素材は、1種単独で採用することもできるし、2種以上を組合わせて採用することもできる。
【0036】
限外ろ過膜の構造としては、特に制限されず、例えば中空糸膜、スパイラル膜、チューブラー膜、平膜等が挙げられる。
【0037】
限外ろ過膜の分画分子量(MWCO:Molecular Weight Cut Off)は、特に制限されない。糖質関連酵素の分子量と、糖合成反応に使用する基質及び反応生成物の分子量とから、糖質関連酵素を保持することができ、且つ糖合成反応生成物及び基質を通過させることができる分画分子量を適宜設定することができる。該分画分子量は、例えば3~100kDa、好ましくは5~60kDa、より好ましくは5~30kDa、さらに好ましくは7~20kDa、よりさらに好ましくは8~15kDaである。また、限外ろ過膜の分画分子量は、糖質関連酵素の阻止率(又は糖質関連酵素と分子量が同程度のタンパク質の阻止率)が、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上となるような分画分子量であることが好ましい。
【0038】
限外ろ過膜は、1種単独で採用することもできるし、2種以上を組合わせて採用することもできる。
【0039】
本発明の限外ろ過デバイスにおいて、限外ろ過膜は、糖質関連酵素を保持している。本明細書において、この「保持」とは、膜素材に糖質関連酵素が直接又は間接的に接触しており、ろ過操作後も、限外ろ過膜上又は限外ろ過膜中に糖質関連酵素が存在することを示す。
【0040】
保持量は、糖合成反応生成物及び基質の通過効率の観点、糖合成反応効率の観点等から、限外ろ過膜の有効ろ過面積1cm2あたり、例えば0.01~50mg、好ましくは0.1~10mg、より好ましくは0.3~5mgである。
【0041】
本発明の限外ろ過デバイスの構造は、糖質関連酵素を保持する限外ろ過膜を備える限り、特に制限されない。限外ろ過膜の配置態様は、本発明の限外ろ過デバイスを用いて限外ろ過が可能な態様である限り特に制限されず、例えば公知の配置態様に従った又は準じた態様を採ることができる。
【0042】
本発明の限外ろ過デバイスは、典型的には、
図1に示されるように、しきりである限外ろ過膜を介して、一方側に糖合成反応を行う反応部位があり、他方側に限外ろ過により糖合成反応生成物を得る反応生成物回収部位を備える。本発明の限外ろ過デバイスにおいて、限外ろ過膜は、反応終了前に糖質関連酵素や未反応基質が反応生成物回収部位へ漏出しないような、またろ過時に糖質関連酵素が反応生成物回収部位へ漏出しないような構造を採る。具体的には、限外ろ過膜は、通常、壁面に密着している。
【0043】
本発明の限外ろ過デバイスは、1つの部材や容器からなるものであってもよいし、2つ以上の分離可能な部材や容器から構成されるものであってもよい。後者の場合の例としては、
図2に示されるように、限外ろ過膜を底面に備える反応部位と、反応生成物回収部位とが、分離可能な別々の容器又は部材である場合が挙げられる。
【0044】
本発明の限外ろ過デバイスの形状は、特に制限されず、カラム状、直方体状等、任意の形状であり得る。
【0045】
本発明の限外ろ過デバイスのろ過方式は、特に制限されず、ノーマルフローろ過、タンジェンシャルフローろ過等を包含する。ろ過方式としては、より短時間で糖質関連酵素と反応生成物とを分離することができ、逆反応や副反応をより抑制できるという観点から、好ましくはノーマルフローろ過が挙げられる。また、ろ過時に圧力をかける場合、好ましくは遠心ろ過、圧力ろ過等が挙げられる。このため、本発明の限外ろ過デバイスは、好ましくは遠心ろ過デバイス又は圧力ろ過デバイスである。本発明の一態様においては、遠心ろ過を好適に採用することができる。
【0046】
本発明の限外ろ過デバイスの製造方法は、特に制限されない。糖質関連酵素の安定性の観点から、本発明の限外ろ過デバイスは、限外ろ過膜を備える限外ろ過デバイスに糖質関連酵素を投入した後、ろ過により、前記糖質関連酵素を前記限外ろ過膜に保持させる工程を含む方法によって得られることが好ましい。各操作については、後述の「3.糖の製造方法」と同様である。
【0047】
本発明の限外ろ過デバイスは、糖の合成のため、という用途に用いられるものである。糖の合成には、糖鎖の合成(特に、グリコシド結合の形成による糖鎖の合成)、修飾糖の合成(特に、グリコシド結合の形成による修飾糖の合成、アセチル化等の修飾反応による修飾糖の合成)等が包含される。本発明の限外ろ過デバイスは、好ましくは糖鎖の合成に用いるためのものである。また、本発明の限外ろ過デバイスは、好ましくは、後述の本発明の製造方法に用いるためのものである。
【0048】
本発明の限外ろ過デバイスを用いて糖合成反応を行うことにより、酵素を限外ろ過膜上に保持させつつ、糖合成反応生成物を含むろ液を得ることができるので、酵素を再利用して糖合成反応を繰返して行うことができる。
【0049】
2.糖合成装置
本発明は、その一態様において、本発明の限外ろ過デバイスを含む、糖合成装置(本明細書において、「本発明の装置」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0050】
本発明の装置は、本発明の限外ろ過デバイス以外に、例えば流路、流路切り替え装置(例えば、三方コック等)、原料保存容器、インジェクター、精製装置(例えば、各種クロマトグラフィーカラム等)、溶媒(例えば、クロマトグラフィー分画用移動相等)保存容器、検出器(例えば吸光度検出器、旋光度検出器、蛍光検出器等)、フォトダイオードアレイ、示差屈折、分子量測定器等を、必要に応じて備えることができる。
【0051】
本発明の装置が精製用のクロマトグラフィーカラムを備える場合、本発明の一態様においては、本発明の限外ろ過デバイスとクロマトグラフィーカラムとが連結されていることが好ましい。連結は流路や流路切り替え装置等の他の部材を介していてもよいし、他の部材を介さなくてもよい。一態様としては、
図3に示されるように、本発明の限外ろ過デバイスとクロマトグラフィーカラムとが、仕切り板を介して連結される形態が挙げられる。この態様においては、例えば、本発明の限外ろ過デバイスにおいて反応生成物を得てから、仕切り板を外し、クロマトグラフィーカラムによる分画を行うことができる。
【0052】
本発明の装置は、必要に応じて、本発明の限外ろ過デバイスを複数個含むことができる。この場合、本発明の一態様においては、本発明の限外ろ過デバイス同士が連結されていることが好ましい。連結は流路や流路切り替え装置等の他の部材を介していてもよいし、他の部材を介さなくてもよい。一態様としては、
図4に示されるように、本発明の限外ろ過デバイス同士が、仕切り板を介して連結される形態が挙げられる。この態様においては、例えば、上流側の本発明の限外ろ過デバイスにおいて反応生成物を得てから、仕切り板を外し、下流側の本発明の限外ろ過デバイスにおいて反応を行うことができる。また、2つの限外ろかデバイスを連結する際に、間にクロマトグラフィーカラムを挟む態様も挙げられる(
図5)。
【0053】
本発明の装置を用いて糖合成反応を行うことにより、酵素を限外ろ過膜上に保持させつつ、糖合成反応生成物を含むろ液を得ることができるので、酵素を再利用して糖合成反応を繰返して行うことができる。
【0054】
3.糖の製造方法
本発明は、その一態様において、(a)限外ろ過膜を備える限外ろ過デバイスに糖質関連酵素及び糖基質を投入して糖合成反応を行う工程、及び(b)前記工程bの後、ろ過により、前記糖質関連酵素を前記限外ろ過膜上に保持させ、且つ糖合成反応生成物を含むろ液を得る工程を含む、糖の製造方法、に関する。また、本発明は、その一態様において、(A)糖質関連酵素を保持する限外ろ過膜を備える限外ろ過デバイスに糖基質を投入して糖合成反応を行う工程、及び(B)前記工程Bの後、ろ過により、前記糖質関連酵素を前記限外ろ過膜上に保持させ、且つ糖合成反応生成物を含むろ液を得る工程を含む、糖の製造方法、に関する。本明細書において、これらをまとめて、「本発明の製造方法」と示すこともある。以下に、これについて説明する。
【0055】
糖基質は、特に制限されず、製造目的の糖と糖質関連酵素に応じて、適宜選択することができる。同様に、糖質関連酵素は、製造目的の糖と糖基質に応じて、適宜選択することができる。糖基質、糖質関連酵素は、例えば公知の情報(例えば、WO2013/042581、特開2014-181209号公報、特開2016-119847号公報、特開2017-057174号公報、特開2017-195793号公報、特開2019-059803号公報等)に従って、適宜選択することができる。糖基質としては、例えば、上記した糖そのもの、上記した糖のグリコシド結合が切断されてなる糖、上記した糖の供与体等を使用することができる。
【0056】
工程(a)において投入する糖質関連酵素量は、糖合成反応生成物及び基質の通過効率の観点、糖合成反応効率の観点等から、限外ろ過膜の有効ろ過面積1cm2あたり、例えば0.01~50g、好ましくは0.1~10g、より好ましくは0.3~5gである。
【0057】
工程(a)及び(A)において投入する糖基質量は、特に制限されず、糖質関連酵素量に応じて、適宜設定することができる。また、糖基質として、糖供与体と糖受容体の2つを使用する場合、そのモル比は、糖供与体1モルに対して、糖受容体が、例えば0.1~15モル程度である。
【0058】
工程(a)及び(A)における糖合成反応は、適当な溶媒中で行う。溶媒としては、糖受容体及びガラクトース供与体を溶解させることができ、且つガラクトシダーゼが失活しない溶媒であれば特に限定されない。このような溶媒としては、例えば、水、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等が挙げられ、好ましくは水、酢酸緩衝液等が挙げられる。また、溶媒には、少量の有機溶媒が混入していてもよい。
【0059】
工程(a)及び(A)における反応温度は、糖質関連酵素が失活しない温度であれば特に限定されないが、例えば10~60℃、好ましくは15~40℃、より好ましくは30~40℃である。
【0060】
工程(a)及び(A)における反応時間は、糖質関連酵素の酵素活性が十分に発揮できる限り特に限定されない。反応時間は、例えば0.1~200時間である。
【0061】
工程(a)及び(A)における反応pHは、糖質関連酵素の酵素活性が十分に発揮される限り特に限定されない。反応pHは、例えばpH3~10である。
【0062】
上記した反応条件は、公知の情報(例えば、WO2013/042581、特開2014-181209号公報、特開2016-119847号公報、特開2017-057174号公報、特開2017-195793号公報、特開2019-059803号公報等)に従って、適宜設定することができる。
【0063】
工程(b)及び(B)におけるろ過方式は、特に制限されず、ノーマルフローろ過、タンジェンシャルフローろ過等を包含する。ろ過方式としては、より短時間で糖質関連酵素と反応生成物とを分離することができ、逆反応や副反応をより抑制できるという観点から、好ましくはノーマルフローろ過が挙げられる。また、ろ過時に圧力をかける場合、好ましくは遠心ろ過、圧力ろ過等が挙げられる。ろ過は、反応液の例えば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上、特に好ましくは100%が限外ろ過膜を通過するまで行われる。ろ過の時間は、好ましくは1~30分間、より好ましくは2~15分間、さらに好ましくは3~10分間である。この程度の時間でろ過が完了するように遠心力や圧力を設定することにより、糖質関連酵素の失活を抑制することができる。具体例として、遠心ろ過の場合、例えば実施例1の場合であれば、10000~15000gの場合は約2分間、5000gの場合は約4分間、1000gの場合であれば約20分間で、反応液のほぼ100%が限外ろ過膜を通過する。
【0064】
工程(b)及び(B)により得られた糖合成反応生成物を含むろ液は、さらに精製工程に供してもよい。精製手段は、公知の方法(分液、蒸留、クロマトグラフィー、再結晶等)を採用できる。本発明の製造方法によれば、製造対象のガラクトシルオリゴ糖を、副産物(特に、目的の糖と分子量の近い糖)の生成を抑えて製造することができるので、簡便な精製によって、目的の糖を高純度で得ることが可能である。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0066】
実施例1.シアリルラクトースの合成
【0067】
【化2】
CMP-シアル酸(1.9 mg,2.98μmol)、ラクトース(3.42 mg, 10μmol)を100 mM Tris-HCl (pH=8.0) 500μLに溶解し、そこへα(2→6)シアリルトランスフェラーゼ(17μL, 17 mU(0.18mg))、アルカリホスファターゼ(1.8μL, 3U)を加え、得られた混合液を限外ろ過遠心カラム(ナノセップ、MWCO:10K、有効ろ過面積:0.28cm
2、ポール社製)に投入し、37 ℃にて1時間インキュベートした。反応終了後、限外ろ過遠心カラムを4℃にて15000×g、5分間遠心した。膜下に得られた溶液を、ゲル濾過カラム(Sephadex G10)に供し、目的としたシアリルα(2→6)ラクトース(1.9 mg, 97 %)を得た。
【0068】
尚、膜上に残った酵素は次の基質を添加し、上記と同様の操作を繰り返すことにより、連続的に合成が可能であった。連続合成回数は50回以上可能であった(50回目でも収率90%以上)。また、4℃で1年以上保存した後に使用しても、合成収率は良好であった。
【0069】
α(2→3)シアリルラクトースの合成は、α(2→3)シアリルトランスフェラーゼを用い、同様に行った。α(2→3)シアリルラクトースは(1.78 mg, 91 %)で得た。
【0070】
実施例2.N-アセチルラクトサミン誘導体の合成
【0071】
【化3】
UDP-ガラクトース(8.3 mg, 14.6μmol)、N-アセチルグルコサミン誘導体(3.8 mg, 14.6μmol)を、50 mM cacodylate buffer(pH=7.4、10 mM MnCl
2含有)730μLに溶解し、そこへβ(1→4)ガラクトシルトランスフェラーゼ(60μL, 60 mU)、アルカリホスファターゼ(8μL, 24U)を加え、得られた混合液を限外ろ過遠心カラム(ナノセップ、MWCO:10K、有効ろ過面積:0.28 cm
2、ポール社製)に投入し、37 ℃にて12時間インキュベートした。反応終了後、限外ろ過遠心カラムを4℃にて15000×g、5分間遠心した。膜下に得られた溶液を、mix bedにて脱塩後、ゲル濾過カラム(Sephadex G10)に供し、目的としたN-アセチルラクトサミン誘導体(5.9 mg, 95.6 %)を得た。
【0072】
尚、膜上に残った酵素は次の基質を添加し、上記と同様の操作を繰り返すことにより、連続的に合成が可能であった。連続回数が多数(数十回)に及んでも、また4℃で長期間(数ヶ月間)保存した後でも、合成収率は良好であった。
【0073】
実施例3.シアリルラクトース誘導体の合成
【0074】
【化4】
CMP-シアル酸(2.0mg, 3.13μmol)、ラクトース誘導体(3.8mg, 10μmol)を100 mM Tris-HCl (pH=8.0) 500μLに溶解し、そこへα(2→6)シアリルトランスフェラーゼ(17μL, 17 mU)、アルカリホスファターゼ(1.8μL, 3U)を加え、得られた混合液を限外ろ過遠心カラム(ナノセップ、MWCO:10K、有効ろ過面積:0.28 cm
2、ポール社製)に投入し、37 ℃にて1時間インキュベートした。反応終了後、限外ろ過遠心カラムを4℃にて15000×g、5分間遠心した。膜下に得られた溶液を、ゲル濾過カラム(Sephadex G10)に供し、目的としたシアリルα(2→6)ラクトース誘導体(2.0mg, 95%)を得た。
【0075】
尚、膜上に残った酵素は次の基質を添加し、同様の操作を繰り返すことにより、連続的に合成が可能であった。連続合成回数は50回以上可能であった(50回目でも収率90%以上)。また、4℃で1年以上保存した後に使用しても、合成収率は良好であった。
【0076】
α(2→3)シアリルラクトース誘導体の合成は、α(2→3)シアリルトランスフェラーゼを用い、同様に行った。α(2→3)シアリルラクトース誘導体は(2.08mg, 99%)で得た。
【0077】
実施例4.シアリルN-アセチルラクトサミン誘導体の合成
【0078】
【化5】
CMP-シアル酸(2.0mg, 3.13μmol)、N-アセチルラクトサミン誘導体(4.21mg, 10μmol)を100 mM Tris-HCl (pH=8.0) 500μLに溶解し、そこへα(2→6)シアリルトランスフェラーゼ(17μL, 17 mU)、アルカリホスファターゼ(1.8μL, 3U)を加え、得られた混合液を限外ろ過遠心カラム(ナノセップ、MWCO:10K、有効ろ過面積:0.28 cm
2、ポール社製)に投入し、37 ℃にて24時間インキュベートした。反応終了後、限外ろ過遠心カラムを4℃にて15000×g、5分間遠心した。膜下に得られた溶液を、ゲル濾過カラム(Sephadex G10)に供し、目的としたシアリルα(2→6)N-アセチルラクトサミン誘導体(2.1mg, 94%)を得た。
【0079】
尚、膜上に残った酵素は次の基質を添加し、同様の操作を繰り返すことにより、連続的に合成が可能であった。連続合成回数は50回以上可能であった(50回目でも収率90%以上)。また、4℃で1年以上保存した後に使用しても、合成収率は良好であった。
【0080】
シアリルα(2→3)N-アセチルラクトサミン誘導体の合成は、α(2→3)シアリルトランスフェラーゼを用い、同様に行った。シアリルα(2→3)N-アセチルラクトサミン誘導体は(2.2mg, 98%)で得た。
【0081】
実施例5.T抗原誘導体2糖の合成
【0082】
【化6】
PNP-ガラクトース(45 mg, 14.9 mmol)、N-アセチルガラクトサミン誘導体(45 mg, 173 mmol)を、100 mM Tris-HCl (pH=8.0) 900μLに溶解し、そこへβ(1→3)ガラクトシダーゼ(50μL, 50 U)を加え、得られた混合液を限外ろ過遠心カラム(ナノセップ、MWCO:10K、有効ろ過面積:0.28 cm
2、ポール社製)に投入し、37 ℃にて24時間インキュベートした。反応終了後、限外ろ過遠心カラムを4℃にて15000×g、5分間遠心した。膜下に得られた溶液を、シリカゲルクロマトグラフィー(BW-300、クロロホルム:メタノール=5/1)に供し、目的としたT抗原誘導体2糖(26.6mg, 36.4%)を得た。
【0083】
尚、膜上に残った酵素は次の基質を添加し、同様の操作を繰り返すことにより、連続的に合成が可能であった。連続回数が多数(数十回)に及んでも、また4℃で長期間(数ヶ月間)保存した後でも、合成収率は良好であった。
【0084】
実施例6.2,3ST抗原誘導体3糖の合成
【0085】
【化7】
CMP-シアル酸(25mg, 39.2μmol)、T抗原誘導体(10 mg, 23.7 mmol)を100 mM Tris-HCl (pH=7.6) 1.2mLに溶解し、そこへα(2→3)シアリルトランスフェラーゼ(30μL, 0.15 U)を加え、得られた混合液を限外ろ過遠心カラム(ナノセップ、MWCO:10K、有効ろ過面積:0.28 cm
2、ポール社製)に投入し、37 ℃にて24時間インキュベートした。反応終了後、限外ろ過遠心カラムを4℃にて15000×g、5分間遠心した。膜下に得られた溶液を、逆相カラムクロマトグラフィー(ワコーゲル100C
18)に供し、目的とした2,3ST抗原誘導体3糖(10.3 mg, 61 %)を得た。
【0086】
尚、膜上に残った酵素は次の基質を添加し、上記と同様の操作を繰り返すことにより、連続的に合成を可能が可能であった。連続回数が多数(数十回)に及んでも、また4℃で長期間(数ヶ月間)保存した後でも、合成収率は良好であった。
【0087】
参考例1.フィスゲン反応1
【0088】
【化8】
2,3ST抗原誘導体(11.1mg, 15.6μmol)、アジドテトラデカン(8.6mg, 46.9μmol)をDMF(1 mL)に溶解し、そこへヨウ化銅(3.7mg, 19.4μmol)、DIPEA(26μL, 184μmol)を加え、窒素雰囲気下、室温にて24時間撹拌した。反応終了後、減圧濃縮し得られたシラップをフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(silysia 300 mesh, L=15 cm)に供し、溶出液クロロホルム:メタノール=3:1にて目的化合物(12.4mg, 83.8 %)を得た。
【0089】
実施例7.6-sulfo-LacNAc誘導体の合成
【0090】
【化9】
UDP-ガラクトース(8.0mg, 14.1μmol)、6-スルホ-N-アセチルグルコサミン誘導体(4.77mg, 14.1μmol)を、50 mM cacodylate buffer(pH=7.4、10 mM MnCl
2含有)730μLに溶解し、そこへβ(1→4)ガラクトシルトランスフェラーゼ(60μL, 60 mU)、アルカリホスファターゼ(8μL, 24mU)を加え、得られた混合液を限外ろ過遠心カラム(ナノセップ、MWCO:10K、有効ろ過面積:0.28 cm
2、ポール社製)に投入し、37 ℃にて24時間インキュベートした。反応終了後、限外ろ過遠心カラムを4℃にて15000×g、5分間遠心した。膜下に得られた溶液を、ゲル濾過カラム(Sephadex G10)に供し、目的とした6-sulfo-LacNAc誘導体(6.35mg, 90%)を得た。
【0091】
尚、膜上に残った酵素は次の基質を添加し、同様の操作を繰り返すことにより、連続的に合成が可能であった。連続回数が多数(数十回)に及んでも、また4℃で長期間(数ヶ月間)保存した後でも、合成収率は良好であった。
【0092】
実施例8.シアリルα(2→6) 6-sulfo-LacNAc誘導体の合成
【0093】
【化10】
CMP-シアル酸(2.0mg, 3.13μmol)、6-sulfo-LacNAc誘導体(5.01mg, 10μmol)を100 mM Tris-HCl (pH=8.0) 500μLに溶解し、そこへα(2→6)シアリルトランスフェラーゼ(17 μL, 17 mU)、アルカリホスファターゼ(1.8μL, 3U)を加え、得られた混合液を限外ろ過遠心カラム(ナノセップ、MWCO:10K、有効ろ過面積:0.28 cm
2、ポール社製)に投入し、37 ℃にて24時間インキュベートした。反応終了後、限外ろ過遠心カラムを4℃にて15000×g、5分間遠心した。膜下に得られた溶液を、ゲル濾過カラム(Sephadex G10)に供し、目的としたシアリルα(2→6)6-sulfo-LacNAc誘導体(1.9 mg, 77 %)を得た。
【0094】
尚、膜上に残った酵素は次の基質を添加し、同様の操作を繰り返すことにより、連続的に合成が可能であった。連続回数が多数(数十回)に及んでも、また4℃で長期間(数ヶ月間)保存した後でも、合成収率は良好であった。
【0095】
参考例2.フィスゲン反応2
【0096】
【化11】
シアリルα(2→6)6-sulfo-LacNAc誘導体(3.0mg, 3.79μmol)、アジドテトラデカン(2.08mg, 11.4μmol)をDMF(1mL)に溶解し、そこへヨウ化銅(1mg, 5.24μmol)、DIPEA(7μL, 49.5μmol)を加え、窒素雰囲気下、室温にて24時間撹拌した。反応終了後、減圧濃縮し得られたシラップをフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(silysia 300 mesh, L=15 cm)に供し、溶出液クロロホルム:メタノール=3:1にて目的化合物(3.5mg, 89.6 %)を得た。
【0097】
尚、膜上に残った酵素は次の基質を添加し、同様の操作を繰り返すことにより、連続的に合成が可能であった。連続回数が多数(数十回)に及んでも、また4℃で長期間(数ヶ月間)保存した後でも、合成収率は良好であった。
【符号の説明】
【0098】
1 限外ろ過膜
2 反応部位
3 反応生成物回収部位
4 壁面
5 底面
6 限外ろ過デバイス
7 クロマトグラフィーカラム
8 仕切り板
9 三方コック