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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】着脱自在なフラップを備える衣類
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/20 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
A41D27/20 J
A41D27/20 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020089096
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021183735
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】399033267
【氏名又は名称】株式会社神馬本店
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神馬 直久
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3024451(JP,U)
【文献】実公昭50-010082(JP,Y1)
【文献】登録実用新案第3119875(JP,U)
【文献】実開昭61-090819(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0108167(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0313300(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0056001(US,A1)
【文献】特開2002-339129(JP,A)
【文献】米国特許第04553269(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 27/20
A41D 13/00-13/12
A41D 1/00-3/08
A41B 1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポケットを設けた衣類本体と、
前記ポケットの開口部に設けられるフラップと、
前記ポケットの内部に前記フラップ上部の接続片を固定する接続具とを備え
前記接続具を前記ポケットの内部に設けることにより、前記フラップを着脱自在としてなり、
前記ポケットは、開口部の上縁よりも上方となる身頃の内部に前記フラップの一部を収容可能な空間が設けられており、
前記空間内に設けられた前記接続具によって、前記ポケットの内部の身頃の裏面と前記フラップ上部の接続片とを固定することとしたことを特徴とする衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱自在なフラップを備える衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類において、フラップ(ポケットの雨蓋)は、雨や埃等がポケットの内部に入ることを防ぐために設けられるものであるが、近年、様々な色や形状、素材からなるものが提供されており、衣類のデザイン性や審美性を高める効果があることも知られている。また、フラップは、ポケットの開口部付近に縫合されており、着脱不可能なものが一般的である。
【0003】
このため、従来の衣類では、フラップのデザインを変更しようとする場合、フラップを含む衣類全体の変更や、別なフラップの再縫合が必要となるが、こうした手段をとらず、フラップのデザインを変更する方法として、デザインの異なるフラップを着脱自在とすることが考えられる。
【0004】
着脱自在なフラップに関する従来技術として、特許文献1には、被服におけるフラップ(ポケット蓋)を、プレスボタンを用いて自由に付け外しする構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実公昭03-010803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1が開示するポケット蓋着脱装置は、フラップを衣類本体に直接固定するものであり、フラップを取り外した状態において、接続具であるボタンが露出した外観となっている。また、特許文献1が開示するポケット蓋着脱装置は、上衣の内ポケットであるため、フラップを取り外した際にボタンが露出するとしても上衣の外観を損なうことはないが、例えばジャケットの外ポケットや脇ポケット、パンツのバックポケットに適用すると、これらの衣類の審美性に影響を与える。というのも、特許文献1が開示するポケット蓋着脱装置を用いた被服は、フラップを取り外した状態において着用することを想定していないためである。また、フラップを取り付けた状態においても、いかにも取って付けたようなフラップは、衣類の審美性を損なうこととなる。
【0007】
また、ジャケットやパンツ等の衣類は、ポケットの開口部に玉縁処理が施される場合がある。玉縁処理が施された衣類は、見栄えが良く高級感等の印象を与えるものであるが、特許文献1が開示するポケット蓋着脱装置をこうした衣類に適用すると、玉縁はフラップに覆われてしまい、衣類の審美性を損なうこととなる。
【0008】
本発明に係る着脱自在なフラップを備える衣類は、上記課題を解決するためになされたものであり、フラップを着脱自在としながらも、フラップの着状態及び脱状態において、フラップを縫合した従来の衣類と同様の外観を呈し、デザインを損なわない衣類を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
検討の結果開発したものが、ポケットを設けた衣類本体と、ポケットの開口部に設けられるフラップと、ポケットの内部に前記フラップ上部の接続片を固定する接続具とを備えてなり、接続具をポケットの内部に設けることにより、フラップを着脱自在としたことを特徴とする衣類である。
【0010】
上記の衣類において、ポケットには、開口部の上縁よりも上方となる身頃の内部にフラップの一部を収容可能な空間が設けられており、前記空間内に設けられた接続具によって、ポケットの内部の身頃の裏面とフラップ上部の接続片とを固定することが好ましい。
【0011】
また、上記の衣類において、フラップは、上部において裏地側に屈曲した接続片を有しており、接続片をポケットの開口部からポケットの内部に差し込んだ際に、ポケットの裏面に設けた接続具によって、フラップの接続片を固定することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の衣類は、接続具をポケットの内部において機能させることで、接続具が露出することなく、フラップを着脱自在とすることができる。したがって、フラップの着状態及び脱状態において、従来の衣類と同様の外観を提供することが可能となる。
【0013】
本発明は、衣類の審美性を損ねることなく、着脱自在なフラップを実現している。このため、衣類本体が同一であっても、フラップを付け替えることで、衣類のデザインを変更することができる。これにより、例えば、制服に本発明を用いた場合において、色や形状、素材等が異なるフラップを衣類本体に装着することで、制服本体は同一デザインでありながらフラップのデザインの違いにより着用者の所属や役職等を識別させること等が可能となる。また、ポケットの開口部に玉縁処理が施された衣類に本発明を適用すると、上方の玉縁がフラップにより覆われないので、高級感のあるポケットデザインを損なうことなく、着脱自在なフラップを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用した衣類の一例を示す正面図である。
図2】本例の衣類におけるフラップを取り外した状態を示す正面図である。
図3】第一実施態様の衣類におけるフラップを示す正面図である。
図4】第一実施態様の衣類におけるフラップを示す背面図である。
図5図1のA-A線による第一実施態様の概略断面図である。
図6】第二実施態様の衣類におけるフラップを示す正面側斜視図である。
図7】第二実施態様の衣類におけるフラップを示す背面側斜視図である。
図8】第二実施態様の衣類におけるフラップを示す側面模式図である。
図9図1のA-A線による第二実施態様の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。以下においては、本発明を適用した衣類の外観及び2つの実施態様(第一実施態様、第二実施態様)を例に挙げて、本発明の衣類を説明する。
【0016】
1.本発明を適用した衣類の外観
本発明を適用した衣類の外観について説明する。図1は、本発明を適用した衣類をジャケットとした一例を示す正面図である。図2は、本例の衣類におけるフラップを取り外した状態を示す正面図である。
【0017】
本発明の衣類は、ポケットを設けた衣類本体と、ポケットの開口部に設けられるフラップと、ポケットの内部とフラップとを固定する接続具とを備える。本例の衣類は、図1に示すように、ポケットを設けた衣類本体10と、ポケットの開口部20(図示されていない)に設けられるフラップ30は外部から視認可能となっている一方、接続具50(図示されていない)は外部から視認不可能となっている。また、本例の衣類における接続具50は、図2に示すように、着脱自在なフラップ30を取り外した状態においても、外部から視認不可能となっている。
【0018】
本例において、衣類本体10はジャケットとなっているが、本発明が適用される衣類本体はジャケットのほか、ベスト、パンツなど種類を問わない。また、本例の衣類に着脱されるフラップ30は、本発明を適用した他の衣類とも着脱自在とすることができ、本例の衣類と他の衣類との間でフラップ30を相互に付け替えることができる。
【0019】
2.第一実施態様の衣類
第一実施態様の衣類について説明する。図3は、本実施態様の衣類におけるフラップ30を示した正面図である。図4は、本実施態様の衣類におけるフラップ30を示した背面図である。図5は、図1のA-A線による本実施態様の概略断面図である。
【0020】
第一実施態様の衣類は、図3及び図4に示すように、着脱自在なフラップ30を備える。フラップ30は、略矩形状であり、衣類本体側に設けられる接続具50を機能させるための接続部33が設けられる。本実施態様においては接続具50がボタンであるため、フラップ30の接続部33はボタン穴が設けられる構成となっている。また、フラップ30は、フラップの一部を収容可能な空間71に固定される接続片35と、ポケットの外部から視認可能なフラップ形成布36により構成されるが、本例ではフラップ形成布36から延長して接続片35まで一体的に形成されている。
【0021】
第一実施態様の衣類は、図5に示す構造となっている。ポケットの開口部20は、前身頃61,62及び玉縁63,64によりなり、ポケット内部空間72は、さらに、ポケット形成布65及び布袋66により構成される。ポケット40は、内部に、開口部20の上縁よりも上方にフラップの一部を収容可能な空間71が設けられる。フラップ30は、その接続片35を、フラップの一部を収容可能な空間71に差し込まれ、この空間内に設けられた接続具50により着脱される。本実施態様において、フラップ30は、二層の部材(表地及び裏地)により構成される。また、本実施態様の衣類において、接続具50は玉縁63に設けられているが、本発明における身頃とは、玉縁又は身頃と重ねて構成された部材を含むものである。
【0022】
第一実施態様の衣類において、接続具50は、フラップの一部を収容可能な空間71内で、ポケットの内部とフラップ30とを接続する構成となっている。このため、接続具50は外部からの視認が不可能となる。また、本実施態様において、玉縁63は、フラップ30に覆われることなく、外部からの視認が可能となっている。
【0023】
第一実施態様の衣類は、フラップの一部を収容可能な空間71を有するため、従来の衣類と比べてポケット内部空間72が縦に広くなっている。これにより、例えばスマートフォンのような、従来の衣類のポケットには収容することが困難な大きさ又は形状の物を収容することが可能となる。
【0024】
3.第二実施態様の衣類
第二実施態様の衣類について説明する。図6は、本実施態様の衣類におけるフラップ30を示した正面側斜視図である。図7は、本実施態様の衣類におけるフラップ30を示した背面側斜視図である。図8は、第二実施態様の衣類におけるフラップ30を示した側面模式図である。図9は、図1のA-A線による本実施態様の概略断面図である。
【0025】
第二実施態様の衣類は、図6及び図7に示すように、着脱自在なフラップ30を備える。フラップ30は、屈曲部34を有する屈曲した形状であり、接続具50(図9参照)を機能させるための接続部33が設けられる。本実施態様においては接続具50がボタンであるため、接続部33はボタン穴が設けられる構成となっている。また、フラップ30は、屈曲部34を境界として、ポケット内部空間72に差し込まれる接続片35と、ポケットの外部から視認可能なフラップ形成布36により構成される。
【0026】
第二実施態様の衣類において、フラップ30は、図8に示すように、接続片35及びフラップ形成布36により構成される。接続片35は、フラップ形成布36と比較して薄い部材となっている。図8(a)は、接続片35及びフラップ形成布36が屈曲部34上で連結される構成を示しており、図8(b)は、接続片35及びフラップ形成布36が重ね合わされる構成を示しており、図8(c)は、接続片35がフラップ形成布36により挟み込まれる構成を示している。こうした構成とすることで、折り曲げられたフラップ30の屈曲部34による復元力を抑制することができる。これにより、フラップ30が取り付けられた状態において、屈曲部34の屈曲角度が変動することによる衣類の審美性への影響を低減することができる。
【0027】
第二実施態様の衣類は、図9に示す構造となっている。ポケットの開口部20は、前身頃61,62及び玉縁63,64により設けられ、ポケット内部空間72は、さらに、ポケット形成布65及び布袋66により構成される。屈曲した形状であるフラップ30は、接続片35をポケット内部空間72に差し込まれ、ポケット内部空間72に設けられた接続具50により着脱される。本実施態様において、フラップ30は、二層の部材(表地及び裏地)により構成される。
【0028】
第二実施態様の衣類において、接続具50は、ポケット内部空間72内で、ポケットの内部とフラップ30とを接続する構成となっている。このため、接続具50は外部からの視認が不可能となる。また、本実施態様において、玉縁63は、フラップ30に覆われることなく、外部からの視認が可能となっている。
【0029】
第二実施態様の衣類は、ポケットの開口部20がフラップ30により覆われていない。これにより、フラップ30を取り付けた状態において、フラップ30を取り外した状態と同様に、フラップ30を開閉することなくポケット40の内部へ物の出入が可能となる。
【0030】
4.第一実施態様及び第二実施態様の衣類
第一実施態様及び第二実施態様の衣類において、接続部33のボタン穴は、横方向に細長い形状となっている。接続部33のボタン穴をこうした形状とすることで、フラップ30を取り付けた状態において、フラップ30の左右への可動域を確保することができる。フラップ30は左右への可動域が確保されるため、フラップ30の装着時において、接続部33及び接続具50の設計や加工等が正確でない場合であっても、フラップ30又はポケットの内部にしわが発生することを防ぐことができる。また、これにより、衣類の製造時においては、接続部33のボタン穴及び接続具50のボタンの大きさや配置等の設計や加工等に高い精度が不要となる。
【0031】
第一実施態様及び第二実施態様の衣類において、接続具50はボタンとなっているが、本発明が適用される接続具は、ボタン、フック、スナップ、線ファスナー、面ファスナーなど種類を問わない。また、接続具は、ポケットの内部又はフラップ30に直接設けられる構成でもよく、ポケット及びフラップ30と独立した部材であってもよい。
【0032】
第一実施態様及び第二実施態様の衣類において、フラップ30の表面31及び裏面32のデザインは異なる。通常はフラップ30の表面31が外側になるよう装着するが、フラップ30の裏面32が外側になるように装着することもできる。また、衣類の右側に装着していたフラップ30を衣類の左側に、衣類の左側に装着していたフラップ30を衣類の右側に付け替えることもできる。これにより、1種類のフラップを着脱することで、衣類を複数のデザインに変更することができる。
【0033】
第一実施態様及び第二実施態様の衣類において、フラップ30の裏面32は、清掃機能を有する素材としてもよい。フラップ30は着脱自在であるため、衣類から取り外したフラップ30をクリーニングクロスや手巾等の清掃具として用いることができる。また、フラップの表面31又は裏面32もしくは両面に清掃機能を持たせてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 衣類本体
20 ポケット開口部
30 フラップ
31 フラップの表面
32 フラップの裏面
33 接続部
34 屈曲部
35 接続片
36 フラップ形成布
40 ポケット
50 接続具
61 前身頃
62 前身頃
63 玉縁
64 玉縁
65 ポケット形成布
66 袋布
71 フラップの一部を収容可能な空間
72 ポケット内部空間

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9