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  • 特許-洗い出しパネル及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】洗い出しパネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/08 20060101AFI20240522BHJP
   B28B 1/16 20060101ALI20240522BHJP
   C04B 41/72 20060101ALI20240522BHJP
   E04F 15/12 20060101ALI20240522BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B28B11/08
B28B1/16
C04B41/72
E04F15/12 G
E04F15/12 A
E04F13/08 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021190650
(22)【出願日】2021-11-25
(65)【公開番号】P2023077431
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】521515159
【氏名又は名称】株式会社新和
(74)【代理人】
【識別番号】100195431
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 史樹
(72)【発明者】
【氏名】新田 貞和
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-034746(JP,A)
【文献】実開平03-116923(JP,U)
【文献】特開2001-031452(JP,A)
【文献】特開平05-309626(JP,A)
【文献】特開2003-166258(JP,A)
【文献】特開2003-193557(JP,A)
【文献】特開昭63-272503(JP,A)
【文献】特開2009-293286(JP,A)
【文献】特開平10-053445(JP,A)
【文献】特開2019-138124(JP,A)
【文献】実開昭48-102248(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/08
E04F 15/12
E04F 13/08
B32B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に貼る又は床に敷くことが可能なパネルであって、
下面側から水分を抜くことが可能であり、割れ難くするため下面側に配置される網目状のファイバーと、
前記ファイバーの上側に配置される骨材を含む第1セメント層と、
前記第1セメント層の上側に配置される骨材を含む第2セメント層と、
割れ難くするため前記第1セメント層と前記第2セメント層との間に配置される格子状の芯材と、を含み、
前記第2セメント層の表面を洗い出しすることにより、前記第2セメント層の表面に骨材の一部が露出し、タイル状にカットして用いる洗い出しパネル。
【請求項2】
前記芯材が鉄筋であり、前記ファイバーがプラスチック製である請求項1記載の洗い出しパネル。
【請求項3】
壁面に貼る又は床に敷くことが可能なパネルの製造方法であって、
底面と側面を有する木型又は金型に、木型又は金型から離型し易くし、下面側から水分を抜くことが可能であり、割れ難くするため網状のファイバーを配置するファイバー配置工程と、
底面と側面を有する木型又は金型に配置された前記ファイバーの上側に骨材を含むセメントを、鏝を使用してこすり塗りを行い、第1セメント層を作成する第1セメント層工程と、
割れ難くするために、骨材を含む前記第1セメント層の上に格子状の芯材を配置する芯材配置工程と、
前記第1セメント層の上に配置された前記芯材の上に、骨材を含むセメントをこすり塗りし、第2セメント層を作成する第2セメント層工程と、
前記第2セメント層の表面が硬化する前に、洗い出しを行い、骨材の一部を表面に露出させる洗い出し工程と、
タイル状にカットするカット行程と、を含む、洗い出しパネルの製造方法。
【請求項4】
前記第2セメント層工程の後で前記洗い出し工程の前に、前記第2セメント層の上に硬化遅延剤を噴霧又は塗布する硬化遅延剤噴霧工程を含む請求項の洗い出しパネル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗い出しパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機的なコンクリート表面に装飾を施して美観を向上させる方法として、左官工事における洗い出し仕上げがある。
【0003】
これは、コンクリートを打設した後に仕上げ面のセメントペーストの硬化を遅らせ、洗い流してコンクリート表面に骨材などの化粧材を露出させるものである。
【0004】
同様な表面化粧方法には、研磨仕上げ、ブラスト仕上げなどがあるが、洗い出し仕上げは、設備を必要としないので低コストであり、簡易に施工できるというメリットがある。
【0005】
洗い出し仕上げは、セメントの凝結硬化を遅らせる凝結遅延剤を用いる方法、未硬化のコンクリートを水洗いする方法、コンクリート硬化後に酸洗いする方法などがある。
【0006】
特許文献1では、アルミナセメントに凝結遅延剤と硬化促進剤を添加した固結材に水と珪砂を加えて混練りしたモルタルを一定厚に塗り、このモルタル表面にネットを敷いて化粧用の石をネットの上に撒き、化粧用の石を敷き均して相互に近接した状態に整列させ、化粧用の石をモルタル内に押し込み、目地から浮き上がったモルタルを均して化粧用の石を覆い、化粧用の石が移動しない程度にモルタルが硬化したところで表面のモルタルを拭き取って化粧用の石を露出させる表面化粧方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4268676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に未硬化のコンクリートを水洗いする洗い出し仕上げをする場合、周りが水浸しになってしまうため、室内で洗い出し仕上げを行い難いという問題があった。
【0009】
また、洗い出し仕上げを行う場合、コンクリートが半渇きになるのを待たなければならず、施工に時間がかかるという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、室内でも使用可能な洗い出しパネルを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、洗い出し仕上げの施工時間を短縮させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の局面に係る壁面に貼る又は床に敷くことが可能なパネルであって、
下面側に配置される網目状のファイバーと、
前記ファイバーの上側に配置される骨材を含む第1セメント層と、
前記第1セメント層の上側に配置される骨材を含む第2セメント層と、
前記第1セメント層と前記第2セメント層との間に配置される芯材と、を含み、
前記第2セメント層の表面に骨材の一部が露出している洗い出しパネルである。
【0013】
骨材の例としては、那智石(白那智石、黒那智石)、大磯玉砂利、白玉石、錆石、緑化石、本五色石等の丸石がある。
【0014】
このような洗い出しパネルであれば、室内でも使用することが可能である。
【0015】
また、通常であれば洗い出し仕上げに時間を要する施工時間を短縮することができる。
【0016】
本発明の第2の局面に係るパネルは、第1の局面に係る洗い出しパネルであって、前記芯材が鉄筋であり、格子状である洗い出しパネルである。
【0017】
芯材が鉄筋であり、また、芯材が格子状であることにより洗い出しパネルが頑丈になる。なお、鉄筋は異形鉄筋であってもよく、また、丸鋼であってもよい。
【0018】
本発明の第3の局面にかかるパネルは、第1の局面又は第2の局面に係る洗い出しパネルであって、前記ファイバーがプラスチック製であり、格子状である洗い出しパネルである。
【0019】
ファイバーがプラスチック製であることによりファイバーが劣化し難く、格子状であることにより通気性がよく、また、木型又は金型から洗い出しパネルが剥がれやすくなる。
【0020】
本発明の第4の局面に係るパネルの製造方法は、壁面に貼る又は床に敷くことが可能なパネルの製造方法であって、
木型又は金型に網状のファイバーを配置するファイバー配置工程と、
前記ファイバーの上側に骨材を含むセメントを、鏝を使用してこすり塗りを行い、第1セメント層を作成する第1セメント層工程と、
骨材を含む前記第1セメント層の上に芯材を配置する芯材配置工程と、
前記第1セメント層の上に配置された前記芯材の上に、骨材を含むセメントをこすり塗りし、第2セメント層を作成する第2セメント層工程と、
前記第2セメント層の表面が硬化する前に、洗い出しを行い、骨材の一部を表面に露出させる洗い出し工程と、を含む、洗い出しパネルの製造方法である。
【0021】
このような製造方法によって製造された洗い出しパネルを用いれば、室内であっても水を使用せずに洗い出し仕上げの壁や床とすることができる。
【0022】
また、通常、洗い出し仕上げをする場合に比べて、洗い出しパネルを事前に製造しておくことができ、施工期間を短縮することができる。
【0023】
本発明の第5の局面に係るパネルの製造方法は、第4の局面に係るパネルの製造方法であって、前記第2セメント層工程の後で前記洗い出し工程の前に、前記第2セメント層の上に硬化遅延剤を噴霧又は塗布する硬化遅延剤噴霧工程を含む洗い出しパネル製造方法である。
【0024】
第2セメント層に対して硬化遅延剤を噴霧又は塗布することにより、洗い出しをするタイミングを逃しにくくなるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る木型に入った状態の洗い出しパネルの分解概念斜視図。
図2】同実施形態に係る木型に入った状態の洗い出しパネルのA-A側面断面図。
図3】同実施形態に係る洗い出しパネルの正面図。
図4】同実施形態に係る洗い出しパネルの背面図。
図5】同実施形態に係る洗い出しパネルの製造方法に係るフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に関して図面を参照しながら説明する。
【0027】
まず、壁面の「洗い出し仕上げ」の例に関して一般的な内容の説明をする。「洗い出し仕上げ」とは、「洗い出し仕上げ」ともいい、壁・床仕上げの一種で、種石とセメントを混練して下地モルタル面に塗り付けた後、硬化直前に表面を噴霧器等で水洗いして種石を露出させたものをいう。
【0028】
洗い出し仕上げの方法は、まずモルタル壁等の下地に「水浸し」又は「吸収調整材」の塗布を行い、ドライアウトを防止する。
【0029】
次に、鏝等を使用して「こすり塗り」を行い、その後、1回目の種石の塗り付けを行う。次に2回目の種石の塗り付けを行う。
【0030】
床に行う場合で種石が大きい場合、種石を作業者が手で置いていく場合もある。
【0031】
次に表面の「アマ」をとり1回目の伏せ込みを行う。「アマ」とは、セメントのメースト状のものである。
【0032】
乾きが遅いときは、新聞なので張り粉を塗り付け水分を吸収させて湿気をとる。
【0033】
次に、表面のアマをとって石の詰め込み具合を確認し、2回目の伏せ込みを行う。
【0034】
次に、表面が硬化する前に、水につけたブラシ等によって「洗い出し」を行い完成させる。洗い出しは水につけたスポンジ等で行う場合もある。
【0035】
<洗い出しパネル100の製造方法>
本願発明に係る実施形態の洗い出しパネル100に関して図面を用いながら説明する。また、本実施形態では、木型を使用しているが、金型であってもよい。
【0036】
まず、作業者は、洗い出しパネル100を製作するための木型200に網状のファイバー300を配置する(ステップS11、ファイバー配置工程)。
【0037】
ファイバー300は、劣化しにくいビニロン、ガラス繊維、ポリエチレン等プラスチック繊維が好ましい。
【0038】
また、本実施形態におけるファイバー300は、格子状であるが、網状であってもパンチングされたものであってもよい。
【0039】
ファイバー300を下側(z軸負方向側、xy平面)に敷くことにより、木型200から離れやすくなり、また、水分が抜けやすいという効果を有する。
【0040】
また、洗い出しパネル100の裏面(z軸負方向側)にファイバー300を配置することにより割れにくくなるという利点がある。
【0041】
なお、ファイバー300は、洗い出しパネル100の裏側(z軸負方向側)から見て、見えていても見えていなくてもよい。
【0042】
次に、作業者は、ファイバー300の上側(z軸正方向側)に骨材400を含むセメント(セメントモルタル)を、鏝を使用してこすり塗りを行い、第1セメント層410を作成する(ステップS12、第1セメント層工程)。
【0043】
なお、本実施形態では、セメントモルタルにモルタル接着増強剤が混合されている。
【0044】
本実施形態では、骨材400は、丸石が用いられており、例として那智石(白那智石、黒那智石)、大磯玉砂利、白玉石、錆石、緑化石、本五色石などの丸石がある。
【0045】
また、本実施形態では、骨材400を混合したセメントがこすり塗りされているが、骨材400である種石が大きい場合、作業者が手で並べてもよい。
【0046】
なお、骨材400として、丸石ではなく、ガラス、貝殻、再生骨材、人造石用砕石など用いても良い。
【0047】
本実施形態では、セメントモルタルはポルトランドセメント等を使用する。
【0048】
洗い出し作業を短時間で終了させる場合には、アルミナセメントに凝結遅延剤と硬化促進剤を添加した固結材に水と珪砂を加えて混練したモルタルを使用してもよい。
【0049】
アルミナセメントに添加する凝結遅延剤は、スターチエーテル、カゼイン、セルロース、ポリビニルアルコール(ポバール)、更には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、酒石酸、ホウ酸、リグニンスルホン酸塩、オキシカルボン酸塩、砂糖、糖類誘導体等を用いることができる。
【0050】
また、ケイフッ化物やオキシカルボン酸塩等を主成分とするものも同様に用いることができる。
【0051】
凝結遅延剤は、一般にそれ自身や反応物がセメント粒子の表面に吸着することにより、セメントと水との接触を一時的に遮断して初期水和反応を遅らせると考えられるものであり、凝結遅延剤の量は、作業時間等を考慮して添加量を定める。
【0052】
次に、作業者は、骨材400を含む第1セメント層410の上に芯材500を配置する(ステップS13、芯材配置工程)。
【0053】
本実施形態では、芯材500は、格子状の鉄筋であるが、丸鋼や異形鉄筋であってもよい。
【0054】
芯材500の格子の大きさは、格子のマス目が骨材400より大きいほうが好ましい。
【0055】
これにより、芯材500の格子のマス目に丸石等の骨材400が入り、洗い出しパネル100が割れにくくなる。
【0056】
芯材500を洗い出しパネル100の内部に入れることにより、洗い出しパネルが割れにくくなる。
【0057】
次に、作業者は、第1セメント層410の上に配置された芯材500の上に、再度、骨材400を含むセメントをこすり塗りし、第2セメント層420を作成する(ステップS14、第2セメント層工程)。
【0058】
面積が広い場合はトンボや定規で平らにしてもよく、また、タッピングを行ってもよい。
【0059】
次に、作業者は、第2セメント層420の上から鏝により伏せ込みを行う(ステップS15)。
【0060】
次に、作業者は、第2セメント層420の上に硬化遅延剤を噴霧又は塗布する(ステップS16、硬化遅延剤噴霧工程)。
【0061】
本実施形態では、硬化遅延剤は、日本シーカ部式会社製の「ルガゾールC」を用いている。
【0062】
第2セメント層420に硬化遅延剤を噴霧することにより、表面のモルタルだけが固まらないため、洗い出しがし易くなる。
【0063】
次に、作業者は、第2セメント層420の表面421が硬化する前に、洗い出しを行い、骨材400の一部を表面421に露出させる(ステップS17、洗い出し工程)。
【0064】
第2セメント層420の面積が広い場合は、水で表面421のセメントを流して骨材400の一部を表面421に露出させる。
【0065】
水が流せない小面積の場合は、濡らしたブラシや濡らしたスポンジで表面421をこすることで洗い出しをし、骨材400の一部を表面421に露出させる。
【0066】
<洗い出しパネル100>
洗い出しパネル100を、図面を用いて説明する。なお、洗い出しパネル100の製造方法で述べた同様の内容に関しては省略又は簡略して説明する。
【0067】
本実施形態に係る洗い出しパネル100は、
下面側に配置される網目状のファイバー300と、
ファイバー300の上側に配置される骨材を含む第1セメント層410と、
第1セメント層410の上側に配置される骨材を含む第2セメント層420と、
第1セメント層410と第2セメント層420との間に配置される芯材500と、を含む。
【0068】
ファイバー300は、上述したように、プラスチック製ファイバーであり、本実施形態では格子状のものである。
【0069】
本実施形態では、第1セメント層410には、丸石等の骨材400が含まれ、また、モルタル接着増強剤が含まれている。
【0070】
本実施形態では、芯材500は、第1セメント層410上に配置され、鉄筋であり、格子状の形状である。
【0071】
第2セメント層420は、第1セメント層410の成分を同一又は同様の成分であり、同様に骨材400が含まれている。
【0072】
第2セメント層420の骨材400は、格子状の芯材500のマス目より小さく、芯材500のマス目に入り込む。
【0073】
第2セメント層420の表面421は、洗い出しにより丸石等の骨材400の一部が露出している。
【0074】
洗い出しパネル100を工事前に事前に製造しておけば、現場作業を短縮することができる。
【0075】
また、事前に洗い出しパネル100を製造することから、現場で水をまく洗い出しを行う必要がなく、室内においてもタイルのように洗い出しパネル100を壁に貼ったり、床に敷いたりして用いることができる。
【0076】
洗い出しパネル100は、大きく製造しておき、それをタイル状の大きさに細かくカットしてもよい。
【0077】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。
【符号の説明】
【0078】
100 洗い出しパネル
200 木型
300 ファイバー
400 骨材
410 第1セメント層
420 第2セメント層
421 表面
500 芯材

図1
図2
図3
図4
図5