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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】パレット
(51)【国際特許分類】
   B65D 19/28 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
B65D19/28 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022091191
(22)【出願日】2022-06-03
(65)【公開番号】P2023178116
(43)【公開日】2023-12-14
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】591123573
【氏名又は名称】株式会社共立物流システム
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神吉 清二郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 創生
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0016929(US,A1)
【文献】特開2000-128284(JP,A)
【文献】特開2008-114869(JP,A)
【文献】特開2002-233227(JP,A)
【文献】特開2014-088597(JP,A)
【文献】登録実用新案第3017214(JP,U)
【文献】特開2001-236838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器が載る上台と、前記上台より下に設けられ下端が接地面である下台とを備え、前記上台が前記下台に対して平行な平行状態と、前記上台が前記下台に対して傾斜した傾斜状態とを取ることのできるパレットにおいて、
前記上台の前後方向の中央より後方の場所に支軸が設けられ、
前記上台における前記支軸より前方の部分である前方部分が上がり、前記上台における前記支軸より後方の部分である後方部分が下がることにより、前記傾斜状態が実現され、
送りネジが、上側連結部において前記上台の前記前方部分と連結され、下側連結部において前記下台と連結され、
前記送りネジの回転により、前記上側連結部と前記下側連結部との間隔が変化し、前記間隔の変化により前記平行状態から前記傾斜状態へ変化し、
前記送りネジにハンドルが取り付けられ、前記ハンドルの手回しにより前記送りネジが回転し、
前記ハンドルが前記送りネジの上端に対して着脱自在であり、前記上台において前記容器が載る面である載置面より下に前記送りネジの前記上端があり、
前記上側連結部は、前記送りネジが回転可能に支持される支持ユニットを含み、
前記下側連結部は、前記送りネジが嵌め合わさったナットを含み、
前記送りネジが回転しても、前記支持ユニットに対して前記送りネジがその延長方向に移動せず、
前記送りネジのうち前記ナットよりも下の部分の長さが、前記送りネジが前記ナットの内側で回転することにより変化する
ことを特徴とするパレット。
【請求項2】
前記平行状態及び前記傾斜状態において、前記上側連結部が前記下側連結部より前にあり、前記送りネジが傾斜している、請求項1に記載のパレット。
【請求項3】
前記平行状態において前記下台の前記接地面と前記送りネジとのなす角度が30°以上50°以下である、請求項1又は2に記載のパレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を載せることのできるパレットに関する。
【背景技術】
【0002】
大量の液体の運搬の際、液体の入った容器がトラック等で運搬され、運搬先でパレットに載せられる。そして、パレット上の容器から液体が排出される。排出は、容器の下端付近に設けられた排出口から行われる。容器内に液体を残さないために、容器内の液体の量が少なくなると人が手で容器を傾けて容器底面を排出口へ向かって傾斜させ、残っている液体を排出口から排出する(特許文献1参照)。
【0003】
近年、運搬コスト削減を目的に、濃度を高くした液体を容器に入れて運搬することが行われている。濃度の高い液体は粘度が高いため、そのような液体を容器から排出する際に容器を傾けることの重要性が増している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-128284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、液体の残っている容器は重いため、人の手で容器を傾けるのは容易ではなかった。
【0006】
そこで本発明は、上に載った容器を容易に傾けることのできるパレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の実施形態を含む。
【0008】
[1]容器が載る上台と、前記上台より下に設けられ下端が接地面である下台とを備え、前記上台が前記下台に対して平行な平行状態と、前記上台が前記下台に対して傾斜した傾斜状態とを取ることのできるパレットにおいて、前記上台の前後方向の中央より後方の場所に支軸が設けられ、前記上台における前記支軸より前方の部分である前方部分が上がり、前記上台における前記支軸より後方の部分である後方部分が下がることにより、前記傾斜状態が実現され、送りネジが、上側連結部において前記上台の前記前方部分と連結され、下側連結部において前記下台と連結され、前記送りネジの回転により、前記上側連結部と前記下側連結部との間隔が変化し、前記間隔の変化により前記平行状態から前記傾斜状態へ変化し、前記送りネジにハンドルが取り付けられ、前記ハンドルの手回しにより前記送りネジが回転し、前記ハンドルが前記送りネジの上端に対して着脱自在であり、前記上台において前記容器が載る面である載置面より下に前記送りネジの前記上端があり、前記上側連結部は、前記送りネジが回転可能に支持される支持ユニットを含み、前記下側連結部は、前記送りネジが嵌め合わさったナットを含み、前記送りネジが回転しても、前記支持ユニットに対して前記送りネジがその延長方向に移動せず、前記送りネジのうち前記ナットよりも下の部分の長さが、前記送りネジが前記ナットの内側で回転することにより変化することを特徴とするパレット。
【0009】
[2]前記平行状態及び前記傾斜状態において、前記上側連結部が前記下側連結部より前にあり、前記送りネジが傾斜している、[1]に記載のパレット。
【0012】
]前記平行状態において前記下台の前記接地面と前記送りネジとのなす角度が30°以上50°以下である、[1]又は[2]に記載のパレット。
【発明の効果】
【0013】
上記のパレットによれば、送りネジを回すことにより上台に載った容器を容易に傾けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】容器の載ったパレットを左から見た図。パレットが平行状態のときの図。
図2】上台を上から見た図。
図3】下台を上から見た図。
図4】ヒンジを前から見た図。
図5】上側連結部を前から見た図。
図6】下側連結部を前から見た図。
図7】容器の載ったパレットを左から見た図。パレットが傾斜状態のときの図。
図8】パレットを左から見た図。パレットが平行状態のときの図。
図9】送りネジ及びその周辺部分の断面図。ハンドルが装着されたときの図。
図10】送りネジ及びその周辺部分の断面図。ハンドルが外されたときの図。
図11】容器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示されるように、実施形態のパレット10は、上に容器60が載るものである。パレット10は、容器60が載る上台20と、上台20より下に設けられた下台30とを有している。
【0016】
図2に示されるように、上台20は、複数本のL字鋼材が溶接されて形成されたものである。それぞれのL字鋼材の上面は1つの平面上にあり、その平面が容器60の載る載置面12となる。上台20は上から見て略長方形である。
【0017】
上台20の後端の左右両側には、それぞれストッパ21が設けられている。ストッパ21は、上台20の角に沿って設けられた壁である。ストッパ21は、後述するように上台20が傾斜したときに上台20の上の容器60が落下するのを防ぐものである。
【0018】
図1において、ストッパ21の上下方向の長さは、上台20の載置面12から下台30の下端(後述する接地面13)までの上下方向の長さよりも短く、好ましい形態としては載置面12から接地面13までの上下方向の長さの半分以下の長さである。また、上台20の前端19の左右方向中央には、上から見て矩形に切欠かれた形の凹部22が形成されている。
【0019】
図2及び図4に示されるように、上台20の下面の左右両側には、それぞれ、左右方向に延びる管状部材23が固定されている。管状部材23は後述するヒンジ11を構成する部材である。
【0020】
また、図2及び図5に示されるように、上台20の下面の前方には、前後方向に延びる2本の支持用部材24が設けられている。これらの支持用部材24の前端は、上から見て、上台20の凹部22に突出している。これらの支持用部材24は下向きに開口した溝型鋼である。左右両方の溝型鋼において、図5に示されるように、左右の側壁25の間に支持用筒26が設けられている。支持用筒26は支持用部材24の前端付近にある。支持用筒26は後述する上側連結部14の一部である。
【0021】
図3に示されるように、下台30は、複数本のL字鋼材が溶接されて形成されたものである。それぞれのL字鋼材の下面は1つの平面上にあり、その平面が接地面13(図1参照)となる。下台30は上から見て長方形である。
【0022】
下台30の上面の前方には、前後方向に延びる2本の支持用部材37が設けられている。図6に示されるように、これらの支持用部材37は上向きに開口した溝型鋼である。左右両方の溝型鋼において、左右の側壁38の間に支持用筒39が設けられている。支持用筒39は後述する下側連結部15の一部である。
【0023】
また、図1及び図3に示されるように、下台30の前端には、上へ向かって突出した突出棒29が設けられている。この突出棒29は、後述する平行状態において上台20の下面に当たり上台20を支えるものである。
【0024】
図1及び図3に示されるように、下台30の前後方向中央の左右両側には、それぞれ、2枚ずつ支持壁31が設けられている。支持壁31は、前後方向中央の上端34と、上端34から前後それぞれの方向へ徐々に低くなる傾斜部35とを有している。上端34より後方の傾斜部35には上へ向かって突起36が突出している。
【0025】
図4に示されるように、支持壁31の上端34の左右両側には、それぞれ管状部材32が固定されている。これら2つの管状部材32の内径側に1本の支軸33が通されている。支軸33は左右方向に延びる棒状の部材である。支軸33は2つの管状部材32に対して回転できないように固定されている。
【0026】
左右の管状部材32の間に、上台20側の管状部材23が配置されている。そして、支軸33が、2つの管状部材32だけでなく上台20側の管状部材23の内径側にも通されている。ここで、上台20側の管状部材23は、支軸33に対して回転可能となっている。このような支軸33と管状部材23、32とからヒンジ11が構成されている。このようなヒンジ11が下台30の左右両側に設けられている。
【0027】
このように上台20と下台30がヒンジ11によって連結されているため、上台20の下台30に対する傾斜が変更可能となっている。具体的には、上台20が下台30に対して平行な平行状態(図1参照)と、上台20が下台30に対して傾斜した傾斜状態(図7参照)とを取ることができる。さらに、傾斜状態における傾斜角度は連続的に変化することができる。ここで、上台20の下台30に対する傾斜とは、正確には、上台20が有する載置面12の、下台30が有する接地面13に対する傾斜のことである。また、傾斜角度とは、載置面12と接地面13とのなす角度のことである。
【0028】
図7に示されるように、傾斜状態では、上台20における支軸33より前方の部分(この部分を「前方部分27」とする)が上がり、上台20における支軸33より後方の部分(この部分を「後方部分28」とする)が下がる。
【0029】
図1に示されるように、ヒンジ11の支軸33は、上台20の前後方向中央より後方の場所に設けられている。支軸33の前後方向の詳細な位置は、液体が容量一杯に充填され平行状態の上台20に載ったときの容器60の重心と、傾斜角度が最大値にまで傾斜した上台20の上において液体が容量の20~30%にまで減ったときの容器60の重心との間の位置が好ましい。数値で表すと、例えば、上台20の前端19から支軸33の位置までの前後方向の長さL1(図8参照)は、上台20の前後方向の全長L2(図8参照)の55%以上65%以下であることが好ましい。
【0030】
図1に示されるように、上台20の前方部分27と下台30とは送りネジ40によって連結されている。送りネジ40は、上方において上側連結部14によって上台20と連結され、下方において下側連結部15によって下台30と連結されている。また、図2からわかるように、送りネジ40は、パレット10の左右方向の中央に設けられている。
【0031】
詳細には、図5図9及び図10に示されるように、送りネジ40の上部は支持ユニット41に支持されている。図9及び図10に示されるように、支持ユニット41はハウジング42と軸受43を含み、軸受43に送りネジ40が嵌まっている。この構成により、固定されているハウジング42の内径側において送りネジ40が回転可能となっている。なお、送りネジ40が回転しても、支持ユニット41に対して送りネジ40はその延長方向へは移動しない。
【0032】
上記のように、上台20には左右2つの支持用筒26が設けられている。図2及び図5に示されるように、支持ユニット41は左右の支持用筒26の間に配置されている。支持ユニット41のハウジング42の左右それぞれに軸部材44が固定されている。これらの軸部材44が左右の支持用筒26の内径側に挿入されている。軸部材44は支持用筒26の内側で回転自在となっている。軸部材44が支持用筒26の内側で回転することにより、軸部材44に固定された支持ユニット41の上台20に対する角度が変化する。
【0033】
このように、図5等に示される、上台20に固定された支持用筒26、送りネジ40に取り付けられた支持ユニット41、及び支持ユニット41に固定され支持用筒26の内側で回転できる軸部材44が、上側連結部14を構成している。
【0034】
また、図6図9及び図10に示されるように、支持ユニット41よりも下において、送りネジ40にナット45が嵌め合わさっている。そして、送りネジ40は、ナット45の内側で回転しながら、ナット45に対して自身の延長方向に移動可能となっている。
【0035】
上記のように、下台30には左右2つの支持用筒39(図3及び図6参照)が設けられている。また、図6に示されるように、ナット45の左右それぞれに軸部材46が固定されている。これらの軸部材46が左右の支持用筒39の内径側に挿入されている。そして、軸部材46は支持用筒39の内側で回転自在となっている。軸部材46が支持用筒39の内側で回転することにより、軸部材46に固定されたナット45の下台30に対する角度が変化する。
【0036】
このように、図6等に示される、下台30側に固定された支持用筒39、送りネジ40に取り付けられたナット45、及びナット45に固定され支持用筒39の内側で回転できる軸部材46が、下側連結部15を構成している。
【0037】
上記のように、上側連結部14において、支持ユニット41に固定された軸部材44が、上台20側に固定された支持用筒26の内側で回転できる。また、下側連結部15において、ナット45に固定された軸部材46が、下台30側に固定された支持用筒39の内側で回転できる。そして、支持ユニット41及びナット45はそれぞれ送りネジ40に設けられている。このような構造のため、下台30に対する上台20の傾斜角度が変化したとき、軸部材44、46が支持用筒26、39の内側で回転し、送りネジ40の傾斜角度が変化できる。
【0038】
図1及び図7に示されるように、平行状態及び傾斜状態において、上側連結部14が下側連結部15より前にある。そのため、送りネジ40が、上端47が前方になる方向に傾斜している。平行状態における送りネジ40の傾斜角度、すなわち下台30の接地面13と送りネジ40の長手方向とのなす角度は、30°以上50°以下であることが好ましい。
【0039】
送りネジ40の上端47は支持ユニット41よりも上へ突出している。ただし、送りネジ40の上端47は、上台20が平行状態のときも傾斜状態のときも、上台20の載置面12よりも下にある。また、図2のように上から見ると、送りネジ40の上端47は、上台20の前端19から前後方向へそれぞれ所定距離の範囲内にある。ここでの所定距離は、上台20の前後方向の長さの1/20以下の距離である。支持ユニット41より上の部分の長さは、送りネジ40が回転しても変わらない。
【0040】
図9に示されるように、送りネジ40の上端47には、送りネジ40を手回しするためのハンドル50が設けられている。ハンドル50には作業者が握る部分である取っ手52が設けられている。ハンドル50は円形で、その円の中心には孔51が開いている。送りネジ40の上端47は孔51に嵌まる形状となっている。そのため、作業者がハンドル50の孔51を送りネジ40の上端47に嵌めることができ、それのみによってハンドル50を送りネジ40に装着することができる。また、作業者がハンドル50を送りネジ40から外すこともできる。ハンドル50を送りネジ40に固定するための固定具は必要ない。
【0041】
図2に示されるように、上から見ると、送りネジ40に装着されたハンドル50の一部は上台20の前端19に形成された凹部22の中にあり、ハンドル50の残りの部分は上台20の前端19よりも前方にある。また、上台20が平行状態のとき、送りネジ40に装着されたハンドル50の一部は、上台20の載置面12と同じ高さにある。
【0042】
送りネジ40の下部はナット45よりも下に延びている。送りネジ40は、回転することによって、ナット45に対して自身の延長方向に移動する。しかし、ナット45の場所は下側連結部15の場所に固定されている。そのため、送りネジ40のうちナット45よりも下の部分の長さは、送りネジ40が回転することにより変化する。
【0043】
また、送りネジ40が回転すると、送りネジ40がその延長方向に移動し、送りネジ40のうち上側連結部14と下側連結部15との間の部分の長さ(以下、この長さを「2点間長さ」とする)が変化する。2点間長さの変化に伴い下台30に対する上台20の傾斜が変化する。なお、2点間長さは、上側連結部14と下側連結部15との間隔とも言える。
【0044】
詳細には、図1のように、始めは上台20が下台30に対して平行な平行状態であるとする。次に、作業者がハンドル50を回して送りネジ40を一方へ回転させると、送りネジ40が上へ移動し、図7に示されるように2点間長さが長くなる。2点間長さが長くなるに従い上台20の前方部分27が上がる。上台20はヒンジ11の支軸33によって支持されているため、上台20の前方部分27が上がると、上台20の後方部分28が下がる。このようにして、上台20が下台30に対して傾斜した傾斜状態となる。上台20の下台30に対する傾斜角度が大きくなるに従い、上側連結部14の位置が後方かつ上方へ移動し、接地面13に対する送りネジ40の傾斜角度が大きくなる。
【0045】
上台20の傾斜角度は送りネジ40の回転により連続的に変化する。作業者は、送りネジ40の回転を止めることにより、上台20の傾斜角度を任意に決めることができる。ただし、図7のように、上台20の後方部分28が、下台30の支持壁31から突出した突起36に当たると、上台20はそれ以上大きくは傾斜できなくなる。そのため、上台20の後方部分28が下台30の突起36に当たった状態において、上台20の傾斜角度が最大となる。上台20の傾斜角度の最大値は15°以上35°以下が好ましい。
【0046】
作業者は、上台20の傾斜角度を、0°より大きく最大値(15°以上35°以下のいずれかの値)以下のいずれかとすることができる。ただし、上台20が最も安定するのは、上台20の後方部分28が下台30の突起36に当たり傾斜角度が最大となったときである。
【0047】
上台20を平行状態から傾斜角度が最大値の傾斜状態とするまでに必要なハンドル50の回転数は、例えば15~20回転である。作業者がハンドル50を15~20回転させるために必要な時間は例えば10~15秒である。
【0048】
上台20を傾斜状態から平行状態にするときは、作業者は、ハンドル50を回して送りネジ40を上記の一方とは反対方向へ回転させる。送りネジ40の回転に伴い、上台20の前方部分27が下がっていき、最終的に上台20の前方部分27の下面が突出棒29に当たる。上台20が突出棒29に当たったとき、上台20が平行状態となる。
【0049】
送りネジ40の下端48の位置は、送りネジ40の回転により変化する。具体的には、上台20が平行状態にあるとき、送りネジ40の下端48はその可動範囲の中で最も後方にある。送りネジ40が回転して上台20の傾斜角度が大きくなるに従い、送りネジ40の傾斜角度も大きくなり、送りネジ40の下端48が前方に移動していく。また、上台20の傾斜角度の変化に伴い、送りネジ40の下端48の接地面13からの高さも変化する。ただし、送りネジ40の下端48は常に接地面13より上にある。
【0050】
パレット10の具体的材質は、例えば、SUS304等のステンレスである。パレット10の重さは、例えば、130kg以上150kg以下である。
【0051】
容器60は液体が入る容器である。図11に示されるように、容器60は、直方体の箱61と、箱61の内部に収納された内袋62とからなる。内袋62は、内部に液体が充填される袋である。内袋62に充填される液体としては、油脂、調味料、化粧品、洗剤、化学品等が挙げられる。そのような液体が、通常よりも濃度が高くされた状態で充填される。液体が充填された容器60の重さは、例えば800kg~1200kg程度である。
【0052】
箱61の後端下部の左右方向中央には排出口63が設けられている。排出口63は蓋64によって開閉される。箱61の内部においては、排出口63から連続する凹部65が形成されている。凹部65はその周囲の内底面66に対して凹んでいる。箱61の内底面66は凹部65に向かって緩やかに傾斜している。そのため、液体が内底面66に沿って凹部65へ向かって流れることができる。
【0053】
また、図11に示されるように、箱61における下部には2つの差込口67が並べて設けられている。これらの差込口67はフォークリフトのフォークが差し込まれる場所である。差込口67は箱61の前後左右それぞれの面に設けられており、いずれの面からでもフォークを差し込めるようになっている。上記のパレット10のストッパ21(図1及び図8参照)は、パレット10に載った容器60の前後左右の差込口67のいずれも塞がないように、全ての差込口67の場所を避けて設けられている。そのため、容器60を上台20に載せるときは前方から載せるのが通常ではあるが、後方や左右から載せることもできる。
【0054】
内袋62は樹脂製の袋である。内袋62の上端に充填口68が設けられている。液体はこの充填口68から内袋62の内部に充填される。また、内袋62の後方下端に排出口69が設けられている。排出口69は箱61の排出口63にセットされる。箱61の排出口63にある蓋64が開けられ、さらに排出口69に付いている蓋(不図示)が開けられると、内袋62の内部の液体が排出口63から排出される。
【0055】
容器60は、内部の内袋62に液体が充填された状態で、トラックによって運搬される。容器60は、運搬先において、フォークリフトによってトラックから降ろされ、パレット10の載置面12に載せられる。容器60は、その後端がパレット10のストッパ21に当たるように載置面12に載せられる。
【0056】
容器60から液体が排出されるとき、始めは、パレット10の上台20が平行状態にあり、その載置面12に容器60が載っている。作業者は、まず容器60を構成する箱61の排出口63の蓋64を開け、次に排出口63にセットされている内袋62の排出口69を開ける。それにより、内袋62内の液体が排出口69から排出され始める。排出開始からしばらくの間、パレット10の上台20は平行状態に保たれている。
【0057】
液体の排出が進み、内袋62内の液体の量が容器60の容量の20~30%程度にまで減ると、液体の排出が遅くなってくる。そこで作業者は、嵌め込み式のハンドル50を送りネジ40に装着し、そのハンドル50を回して送りネジ40を一方へ回転させて上台20を傾斜させる。通常、作業者は、上台20の後方部分28が下台30の突起36に当たるまでハンドル50を回す。それにより、上台20の傾斜角度が最大値となる。
【0058】
ここで、傾斜角度変化の基準となる支軸33が、上記のように上台20の前後方向中央より後方の場所に設けられている。そのため、支軸が前後方向中央に設けられる場合と比較して、小さな力で上台20の前方部分27を持ち上げることができる。
【0059】
詳細には、水平状態から上台20を傾斜させ始めるときに関しては、支軸33が上台20の後方に設けられている場合の方が、支軸が前後方向中央に設けられる場合よりも、上台20の前方部分27を持ち上げるために必要な力が大きい。しかし、上台20がある程度傾斜した状態からさらに傾斜角度を大きくしようとするときに関しては、支軸33が上台20の後方に設けられている場合の方が、支軸が前後方向中央に設けられる場合よりも、上台20の前方部分27を持ち上げるために必要な力が小さい。そして、作業者が上台20を傾斜させ始めるときから傾斜角度が最大値となるときの直前までの課程のそれぞれの瞬間において必要となる力の最大値は、支軸33が上台20の後方に設けられている場合の方が、支軸が前後方向中央に設けられる場合よりも、小さい。そのため、容器60は内部に液体があるため重いが、上台20の前方部分27を持ち上げるためのハンドル50の操作を作業者の力で容易に行うことができる。
【0060】
また、上台20の傾斜角度が大きくなるに従い、容器60内の後方に液体が集まっていき、容器60の重心が後方に移動していく。しかし、支軸33が上台20の前後方向中央より後方の場所に設けられているため、容器60とその内部の液体との重さを支軸33が支えることができる。
【0061】
上台20が傾斜状態になることにより、容器60内の液体が排出口63の方へ集まり、排出口63付近における液体の圧が高まって排出口63から液体が勢い良く排出される。そして、上台20が傾斜状態に保たれることにより、容器60内のほとんど又は全ての液体が排出口63から排出される。
【0062】
液体の排出が終わると、作業者は、ハンドル50を回して送りネジ40を回転させ、上台20を平行状態に戻す。次に、作業者は、フォークリフトで容器60をパレット10の上台20から降ろす。
【0063】
以上のように、本実施形態のパレット10では、上側連結部14において上台20の前方部分27と連結され、下側連結部15において下台30と連結された送りネジ40が設けられている。そして、送りネジ40の回転により上側連結部14と下側連結部15との間隔が変化し、前記間隔の変化により上台20が平行状態から傾斜状態へ変化する。そのため、作業者が送りネジ40を回転させることにより、上台20の載置面12に載った容器60を容易に傾けることができる。
【0064】
容器60を傾けることによって、容器60内に粘度の高い液体が入っていたとしても、その液体を容器60の外へ最後まで排出させることができる。
【0065】
ここで、上台20における支軸33より前方の部分である前方部分27が上がり、上台20における支軸33より後方の部分である後方部分28が下がることにより、傾斜状態が実現される。そのため、後方部分を下げることなく前方部分を持ち上げるだけで上台を傾斜させようとする場合と比べて、小さな力で上台20の前方部分27を持ち上げることができる。
【0066】
また、上台20の傾斜の基準となる支軸33が、上台20の前後方向の中央より後方の場所に設けられている。この場所に支軸33があるため、上台20を傾斜させる操作の最初から最後まで、小さな力で上台20の前方部分27を持ち上げることができる。そのため、作業者が小さな力で送りネジ40を回転させるだけで、上台20の載置面12に載った容器60を容易に傾けることができる。
【0067】
また、上台20の前後方向の中央より後方の場所に支軸33が設けられているため、容器60が傾いて容器60の重心が後方へ移動したときでも、容器60とその内部の液体との重さを支軸33が支えることができる。
【0068】
ここで、上台20の前端19から支軸33の位置までの前後方向の長さL1が、上台20の前後方向の全長L2の55%以上65%以下であれば、作業者が特に容易に容器60を傾けることができる。また、L1がL2の55%以上65%以下であれば、上台20が平行状態のときも傾斜状態のときも、容器60とその内部の液体との重さを支軸33がしっかりと支えることができる。そして、容器60とその内部の液体との重さを支軸33がしっかりと支えるため、送りネジ40にかかる荷重が小さく、送りネジ40で上台20の前方部分27を持ち上げるときに必要とされる力が小さい。
【0069】
また、本実施形態のパレット10によれば、上台20を傾斜させることにより容器60を傾けることができるため、容器60の箱61の内底面66に大きな傾斜がなくても容器60内に残った液体を排出口63に向かって流すことができる。そのため、容器60の高さを低く抑えることができる。
【0070】
また、平行状態及び傾斜状態の両方において送りネジ40が接地面13に対して傾斜しているため、送りネジ40を上台20の下の狭い空間に収容することができる。そのため、上台20の載置面12に容器60を載せるときに送りネジ40が邪魔にならない。さらに、送りネジ40の上端47が載置面12よりも下にあるため、載置面12に容器60を載せるときに送りネジ40が邪魔にならない。
【0071】
また、平行状態において、下台30の接地面13と送りネジ40とのなす角度が30°以上であれば、送りネジ40が立ち上がろうとする力が上台20の前方部分27を持ち上げることに効率良く利用される。また、平行状態において、下台30の接地面13と送りネジ40とのなす角度が50°以下であれば、下台30に対する上台20の高さを低くすることができる。
【0072】
また、送りネジ40にハンドル50が取り付けられ、ハンドル50の手回しにより送りネジ40が回転する構造となっている。そのため、作業者はハンドル50を回すだけで容易に上台20を傾斜させることができる。ここで、ハンドル50が送りネジ40の上端47に対して着脱自在となっているため、ハンドル50が必要ないときや邪魔になるときはハンドル50を外しておくことができる。また、送りネジ40の上端47が上台20の載置面12より下にあるため、載置面12に容器60を載せるとき等に送りネジ40が邪魔にならない。
【0073】
また、上台20が平行状態のとき、送りネジ40に装着されたハンドル50の一部が載置面12と同じ高さにあるため、作業者がハンドル50を操作しやすい。
【0074】
また、上台20の傾斜角度の最大値が15°以上であることにより、容器60内の液体の排出が順調に行われる。また、上台20の傾斜角度の最大値が35°以下であることにより、上台20のストッパ21が高さの低いものであっても、上台20が傾斜したときに容器60が滑り落ちない。そして、ストッパ21の高さが低いことにより、パレット10の運搬や保管等が容易になる。
【0075】
また、上台20を傾斜させるために使用されるのが作業者の力で回す送りネジ40であるため、モータや油圧シリンダ等を使用する場合と比べて、パレット10を安価なものとすることができる。また、送りネジ40は回転を作業者の意思で止めることができるため、液体を排出するときの上台20の傾斜角度を作業者が自在に決めることもできる。
【0076】
以上の実施形態に対して様々な変更を行うことができる。例えば、容器60に入るのは粉体であっても良い。粉体の場合も、上記と同様に容器60を傾けることによって順調に排出することができる。また、上記の容器60には排出口63から連続する凹部65が形成されているが、このような凹部65は存在しなくても良い。また、上記の容器60では箱61の内底面66が緩やかに傾斜しているが、内底面66はこのように傾斜していなくても良い。また、不図示のモータが送りネジ40と機械的に連結され、そのモータによって送りネジ40が回転しても良い。
【符号の説明】
【0077】
10…パレット、11…ヒンジ、12…載置面、13…接地面、14…上側連結部、15…下側連結部、19…前端、20…上台、21…ストッパ、22…凹部、23…管状部材、24…支持用部材、25…側壁、26…支持用筒、27…前方部分、28…後方部分、29…突出棒、30…下台、31…支持壁、32…管状部材、33…支軸、34…上端、35…傾斜部、36…突起、37…支持用部材、38…側壁、39…支持用筒、40…送りネジ、41…支持ユニット、42…ハウジング、43…軸受、44…軸部材、45…ナット、46…軸部材、47…上端、48…下端、50…ハンドル、51…孔、52…取っ手、60…容器、61…箱、62…内袋、63…排出口、64…蓋、65…凹部、66…内底面、67…差込口、68…充填口、69…排出口
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