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特許7492295遊具、家具、保護用具、アート作品、記念建造物、玩具及びそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】遊具、家具、保護用具、アート作品、記念建造物、玩具及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20240522BHJP
   A63G 31/00 20060101ALI20240522BHJP
   B32B 37/24 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B32B5/18
A63G31/00
B32B37/24
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023132837
(22)【出願日】2023-08-17
【審査請求日】2023-09-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520245666
【氏名又は名称】株式会社パックフォーミング
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加地 雅文
(72)【発明者】
【氏名】加地 泰樹
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-064279(JP,A)
【文献】特開2005-072496(JP,A)
【文献】特開平06-186824(JP,A)
【文献】特開平10-231393(JP,A)
【文献】特開2000-007846(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158916(WO,A1)
【文献】特開2002-361799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0295744(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0304599(US,A1)
【文献】国際公開第2022/248558(WO,A1)
【文献】特開2004-322520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
A63G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性樹脂層(但し、その表面に織物の転写面を有するものを除く)と、発泡樹脂層(但し、スペーサーを内包しているものを除く)と、賦形層(但し、その上に凸状体が形成されたものを除く)とを、この順に備え、
前記弾性樹脂層の前記発泡樹脂層とは反対側の面における算術平均高さ(Sa)が30μm以下である遊具、家具、保護用具、アート作品、記念建造物又は玩具
【請求項2】
前記発泡樹脂層と前記賦形層との間に、接着剤層をさらに備える
請求項1に記載の遊具、家具、保護用具、アート作品、記念建造物又は玩具
【請求項3】
前記弾性樹脂層の前記発泡樹脂層とは反対側の面におけるタイプCデュロメータ硬さが30以上90以下である
請求項1又は2に記載の遊具、家具、保護用具、アート作品、記念建造物又は玩具
【請求項4】
成形型を準備する成形型準備工程と、
前記成形型の内側の面に、弾性樹脂を吹き付けることにより、弾性樹脂層を形成する弾性樹脂層形成工程と、
前記弾性樹脂層における前記成形型とは反対側の面に、発泡樹脂を吹き付けることにより、発泡樹脂層を形成する発泡樹脂層形成工程と、
前記発泡樹脂層における前記弾性樹脂層とは反対側の面に、賦形層の材料を配置させることにより、前記賦形層を形成する賦形層形成工程と、
前記賦形層形成工程により得られる前記弾性樹脂層、前記発泡樹脂層及び前記賦形層を有する遊具、家具、保護用具、アート作品、記念建造物又は玩具を前記成形型から外す成形型除去工程と
をこの順に備え、
前記成形型の内側の面における算術平均高さ(Sa)が30μm以下である遊具、家具、保護用具、アート作品、記念建造物又は玩具の製造方法。
【請求項5】
前記発泡樹脂層形成工程後、かつ前記賦形層形成工程前に、
前記発泡樹脂層における前記弾性樹脂層とは反対側の面に接着剤層を形成する接着剤層形成工程
をさらに備え、
前記賦形層形成工程において、前記接着剤層における前記発泡樹脂層とは反対側の面に前記賦形層を形成する
請求項4に記載の遊具、家具、保護用具、アート作品、記念建造物又は玩具の製造方法。
【請求項6】
前記賦形層が繊維強化プラスチック製である
請求項4又は5に記載の遊具、家具、保護用具、アート作品、記念建造物又は玩具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体及び成形体の製造方法に関し、詳しくは、弾性樹脂層を備える成形体及びこの成形体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、公園や広場等には、各種遊具が設置されている。このような遊具は、遊ぶ人があたった際に怪我をしないようにし、安全性を向上させるため、クッション性に優れることが要求される。
【0003】
特許文献1には、ソフト遊具として、軟質ポリマーと岩石微粉とを表面層に含むものが開示されている。また、ウレタンフォーム製品として、特許文献2には、軟質ウレタンフォームを切り出した母材の表面に、ポリウレタンを含む塗料をエアブラシで吹き付けて塗布層を形成したものが、特許文献3には、樹脂発泡体等の基体に、ポリウレタン溶液と水とを同時に噴射して、表面に通気性被膜を形成させたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-126558号公報
【文献】特開2011-195703号公報
【文献】特開2001-246318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遊具には、クッション性以外にも、上に乗って遊ぶ人が動き易いよう、表面の平滑性に優れることが求められ、さらに、耐久性に優れることも要求される。
【0006】
従来の遊具として、特許文献2に記載されているような、切削したポリウレタンフォームの表面に、ポリウレタンエラストマーを吹き付けた成形体が知られている。
【0007】
このような成形体は、吹き付けたポリウレタンエラストマーにより、表面に細かい凹凸が残り、また、硬化するまでに、ポリウレタンエラストマーが垂れること等に起因して、表面に形成される凹凸が大きくなる場合があり、表面の平滑性が悪化する。形成された凹凸を低減するためには、樹脂の吹き付け前又は後に、研磨作業が必要になり、製作に手間や時間が余計にかかる上に、コストの増大を招来するという不都合がある。また、前記従来の成形体は、耐久性が不十分である。
【0008】
本発明の課題は、クッション性、平滑性及び耐久性に優れる成形体、及び成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る成形体は、弾性樹脂層と、発泡樹脂層と、賦形層とを、この順に備え、前記弾性樹脂層の前記発泡樹脂層とは反対側の面における算術平均高さ(Sa)が30μm以下である。
【0010】
本発明の一態様に係る成形体の製造方法は、成形型を準備する成形型準備工程と、前記成形型の内側の面に弾性樹脂層を形成する弾性樹脂層形成工程と、前記弾性樹脂層における前記成形型とは反対側の面に発泡樹脂層を形成する発泡樹脂層形成工程と、前記発泡樹脂層における前記弾性樹脂層とは反対側の面に賦形層を形成する賦形層形成工程と、前記賦形層形成工程により得られる前記弾性樹脂層、前記発泡樹脂層及び前記賦形層を有する成形体を前記成形型から外す成形型除去工程とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、クッション性、平滑性及び耐久性に優れる成形体、及び成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の成形体の一例を示す概略の模式的断面図である。
図2図2A図2Eは、本発明の成形体の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.概要
以下、本発明の成形体及び成形体の製造方法について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。以下の実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計に応じて種々の変更が可能である。
【0014】
発明者らは、鋭意検討を重ねる上で、特定の複数積層構造を採用すると共に、上面を特定の構造とすることにより、前述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
本発明の成形体1は、弾性樹脂層10と、発泡樹脂層20と、賦形層30とを、この順に備える。弾性樹脂層10の発泡樹脂層20とは反対側の面における算術平均高さ(Sa)は30μm以下である。
【0016】
本発明の成形体1は、クッション性、平滑性及び耐久性に優れている。成形体1は、弾性樹脂層10と発泡樹脂層20と賦形層30とがこの順に積層された構造を有しているので、クッション性と耐久性とを共に向上させることができる。また、表面の凹凸が多い発泡樹脂層20に、弾性樹脂層10を積層させ、この弾性樹脂層10の表面の算術平均高さ(Sa)を前記特定値以下とすることにより、平滑性を優れたものとすることができる。
【0017】
また、本発明の成形体1の製造方法は、成形型準備工程と、弾性樹脂層形成工程と、発泡樹脂層形成工程と、賦形層形成工程と、成形型除去工程とを備える。成形型準備工程では、成形型100を準備する。弾性樹脂層形成工程では、成形型100の内側の面に弾性樹脂層10を形成する。発泡樹脂層形成工程では、弾性樹脂層10における成形型100とは反対側の面に発泡樹脂層20を形成する。賦形層形成工程では、発泡樹脂層20における弾性樹脂層10とは反対側の面に賦形層30を形成する。成形型除去工程では、賦形層形成工程により得られる弾性樹脂層10、発泡樹脂層20及び賦形層30を有する成形体1を成形型100から外す。
【0018】
本発明の成形体1の製造方法によれば、クッション性、平滑性及び耐久性に優れる成形体を、余計な手間や時間をかけることなく、簡便に、かつコストの増大を抑えて、製造することができる。
【0019】
本発明の成形体1の製造方法では、最初に成形型準備工程を行い、この成形型の内面に弾性樹脂層10を形成させるので、弾性樹脂層10の表面の平滑性をより向上させることができ、続いて、発泡樹脂層形成工程、及び賦形層形成工程を行うことにより、クッション性、平滑性及び耐久性を具備した成形体1を、簡便に製造することができる。
【0020】
2.詳細
<成形体>
図1は、本発明の成形体1の一例を示す断面図である。
【0021】
成形体1は、弾性樹脂層10と、発泡樹脂層20と、賦形層30とを、この順に備えている。弾性樹脂層10、発泡樹脂層20及び賦形層30は、それぞれ互いに異なる層である。成形体1は、発泡樹脂層20と賦形層30との間に、接着剤層50をさらに備えていることが好ましい。
以下、成形体1の各層について説明する。
【0022】
[弾性樹脂層]
弾性樹脂層10は、弾性樹脂を主成分として含む層をいう。「主成分」とは、含有割合が最も大きい成分をいい、含有割合が通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%であることを意味する。弾性樹脂層10は、通常、内部に気泡を含まない。すなわち、弾性樹脂層10は、発泡樹脂でない弾性樹脂で形成される。
【0023】
「弾性樹脂」とは、ゴム状弾性を示す樹脂をいい、外力を加えて1.5倍に伸ばした後、外力を取り除いた場合、直ちに元の長さの1.25倍以下に戻る樹脂を意味する。弾性樹脂には、合成樹脂、天然樹脂の他、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム等のゴムも含まれる。弾性樹脂は、通常、無発泡樹脂である。
【0024】
弾性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等の熱可塑性エラストマー;熱硬化性ポリウレタンエラストマー、エポキシエラストマー、シリコーンエラストマー等の熱硬化性エラストマー;天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、シリコーンゴム等のゴムなどが挙げられる。これらの中で、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及び熱硬化性ポリウレタンエラストマーの少なくとも一方が好ましい。
【0025】
弾性樹脂層10の表面、すなわち、弾性樹脂層10の発泡樹脂層20とは反対側の面におけるタイプCデュロメータ硬さは、30以上90以下であることが好ましく、33以上87以下であることがより好ましく、35以上85以下であることが特に好ましい。弾性樹脂層10の表面のタイプCデュロメータ硬さは、成形体1のクッション性を示す指標となる。弾性樹脂層10の表面のタイプCデュロメータ硬さを前記範囲とすることで、成形体1のクッション性をより向上させることができる。つまり、成形体1のクッション性をより適度なものとすることができる。タイプCデュロメータ硬さは、JIS-K7312に準拠し、デュロメータ硬さ試験機(タイプC)を用いて、23℃で測定される値である。
【0026】
弾性樹脂層10の密度は、例えば、1000kg/m以上1300kg/m以下であり、1100kg/m以上1250kg/m以下であることが好ましい。
【0027】
弾性樹脂層10の厚みは、0.01cm以上10cm以下であることが好ましく、0.05cm以上2cm以下であることがより好ましく、0.1cm以上0.7cm以下であることがさらに好ましい。弾性樹脂層10の厚みは、均一でも、場所により異なっていてもよい。
【0028】
弾性樹脂層10は、例えば、弾性樹脂を吹き付けることなどにより形成することができる。
【0029】
弾性樹脂層10の表面、すなわち、発泡樹脂層20とは反対側の面における算術平均高さ(Sa)は、30μm以下であることが重要である。これにより、成形体1は、平滑性に優れるものとなる。算術平均高さ(Sa)が前記値を超えると、成形体1は表面の平滑性が悪化し、例えば、上に乗って遊ぶ人が動き難くなる等の不都合を招来する。算術平均高さ(Sa)は、例えば、曲面微細形状測定システムを用い、ISO25178に準拠して測定することができる。算術平均高さ(Sa)は、20μm以下であることが好ましく、12μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることがさらに好ましい。算術平均高さ(Sa)の下限は特に限定されず、例えば、0.1μm以上であり、1μm以上であることが好ましい。
【0030】
また、弾性樹脂層10の表面の最大高さ(Sz)は、例えば、400μm以下であり、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。この場合、成形体1は、平滑性をより向上させることができる。最大高さ(Sz)は、算術平均高さ(Sa)と同様の方法により測定することができる。最大高さ(Sz)の下限は特に限定されず、例えば、1μm以上であり、10μm以上であることが好ましい。
【0031】
このような算術平均高さ(Sa)及び最大高さ(Sz)の面を有する弾性樹脂層10は、例えば、算術平均高さ(Sa)、最大高さ(Sz)等の面粗さが小さい面を有する成形型に、弾性樹脂を吹き付ける等、付着させることにより形成することができる。このような成形型は、例えば、材料として、金属、繊維強化プラスチック(FRP)等を用いることにより作製することができる。
【0032】
[発泡樹脂層]
発泡樹脂層20は、発泡樹脂を主成分として含む層をいう。「発泡樹脂」とは、内部に気泡を含む樹脂をいい、合成樹脂中に気体を分散させ、発泡状に成形された樹脂を意味する。このように、発泡樹脂層20は、弾性樹脂層10とは構成する材料が異なっている。
【0033】
発泡樹脂を構成する樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの中で、ポリウレタン樹脂が好ましく、軟質のポリウレタン樹脂がより好ましい。
【0034】
発泡樹脂層20は、気泡を含んでいる。この気泡は、独立気泡でも、連通気泡でも、これらの両方であってもよい。発泡樹脂層20を構成する発泡樹脂としては、例えば、4倍発泡以上10倍発泡以下、好ましくは6倍発泡程度のものを用いることができる。
【0035】
発泡樹脂層20の厚みは、例えば、0.2cm以上20cm以下であり、0.3cm以上10cm以下であることが好ましく、0.5cm以上5cm以下であることがより好ましい。発泡樹脂層20の厚みは、均一でも、場所により異なっていてもよい。
【0036】
発泡樹脂層20は、例えば弾性樹脂層10の面に、発泡樹脂を吹き付ける等、付着させることにより形成することができる。
【0037】
[接着剤層]
接着剤層50は、接着剤から形成される層をいう。接着剤層50は、接着剤の硬化物が存在している領域を意味し、発泡樹脂層20及び賦形層30と領域が重複していることもある。成形体1は、接着剤層50を備えることによって、発泡樹脂層20と賦形層30との密着性がより向上し、剥離がより抑制され、それにより、成形体1の耐久性をより向上させることができる。
【0038】
接着剤として、例えば、ポリウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、アミノアルキド樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料等を用いることができる。
【0039】
接着剤として、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えばウレタン樹脂として、1液湿乾型ポリウレタン樹脂塗料ウルトラック895、NTXウルトラック898(以上、大阪塗料工業社製)等が挙げられる。
【0040】
接着剤層50の厚みは特に限定されないが、例えば、0.1μm以下であり、0.05μm以下であることが好ましい。接着剤層50の厚みは、均一でも、場所により異なっていてもよい。
【0041】
接着剤層50は、例えば、発泡樹脂層20の面に、接着剤を塗布し、これを硬化させることにより形成することができる。
【0042】
[賦形層]
賦形層30は、成形体1の形状を決める層をいう。つまり、成形体1の形状は、賦形層30の形状と同様のものになる。賦形層30を構成する材料としては、通常、剛性の高い素材が用いられる、このように、賦形層30を構成する材料は、弾性樹脂層10及び発泡樹脂層20を構成する材料とは異なっている。
【0043】
賦形層30を構成する材料としては、例えば樹脂、コンクリート、金属等が挙げられる。賦形層30を構成する樹脂としては、例えは繊維強化プラスチック(FRP)、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。賦形層30は、形成容易性の観点から、樹脂製であることが好ましく、耐久性の向上の観点から、繊維強化プラスチック製であることがより好ましい。
【0044】
賦形層30の厚みは、例えば0.01cm以上10cm以下であり、0.05cm以上5cm以下であることが好ましく、0.1cm以上2cm以下であることがより好ましく、0.2cm以上1cm以下であることがさらに好ましい。賦形層30の厚みは、均一でも、場所により異なっていてもよい。
【0045】
賦形層30は、例えば、発泡樹脂層20又は接着剤層50の面に、賦形層30の材料を配置させること等により、形成することができる。
【0046】
賦形層30には、発泡樹脂層20において生成した気体を成形体1の外に逃がすための貫通孔が形成されていることが好ましい。これにより、生成した気体によって起こる発泡樹脂層20と他の層との剥離を抑制することができ、成形体1の耐久性をより向上させることができる。
【0047】
弾性樹脂層10と、発泡樹脂層20と、賦形層30との厚みの比としては、弾性樹脂層:発泡樹脂層:賦形層が、例えば、1:5~30:1~5であり、1:10~20:2~3であることが好ましい。
【0048】
成形体1は、弾性樹脂層10、発泡樹脂層20及び賦形層30の外に、これらの層以外の他の部分を有していてもよい。また、弾性樹脂層10、発泡樹脂層20及び賦形層30のそれぞれは、成形体1の重量を調整したり、安定性を向上させたりする等のため、内部に、金属、コンクリート等の重量物の部分や、空洞の部分を有していてもよい。
【0049】
<成形体の製造方法>
本発明の成形体の製造方法は、成形型準備工程と、弾性樹脂層形成工程と、発泡樹脂層形成工程と、賦形層形成工程と、成形型除去工程とを備える。
成形体の製造方法は、発泡樹脂層形成工程後、かつ賦形層形成工程前に、発泡樹脂層における弾性樹脂層とは反対側の面に接着剤層を形成する接着剤層形成工程を、さらに備えることが好ましい。
以下、各工程について、図2A図2Eを参照しつつ、説明する。
【0050】
[成形型準備工程]
本工程では、図2Aに示すように、成形型100を準備する。
【0051】
成形型100の内面の形状は、通常、所望する成形体1の上面の形状と同じである。また、成形型100の内面の算術平均高さ(Sa)は、所望する成形体1の弾性樹脂層10の面の算術平均高さ(Sa)以下であることが好ましい。そのため、所望する成形体1と同じ形状の原型を作製し、この原型を用いて、成形型100を作製してもよい。
【0052】
成形型100は、成形型除去工程における成形体1をより外し易くし、成形体1の製造をより容易にする観点から、互いに分離可能な複数の部材で構成されていることが好ましい。
【0053】
成形型100の材質は特に限定されないが、例えば、金属、コーティングされた木材、繊維強化プラスチック(FRP)等の樹脂などが挙げられる。
【0054】
成形型100の内面に、ワックスを塗布しておくことが好ましい。また、ワックスの塗布後に、タルク等の滑剤を、ハケ等を用いて塗布しておくことが好ましい。さらに、滑剤の塗布後に、液体離型剤を、ハケ等を用いて塗布しておくことが好ましい。これらにより、成形型除去工程において、成形体1をより外し易くすることができる。
【0055】
[弾性樹脂層形成工程]
本工程では、図2Bに示すように、成形型準備工程で準備した成形型100の内側の面に、弾性樹脂層10を形成する。
【0056】
本工程では、例えば、成形型100の内面に、専用ガンを用いて、弾性樹脂を吹き付けること等によって、弾性樹脂層10を形成する。
【0057】
[発泡樹脂層形成工程]
本工程では、図2Cに示すように、弾性樹脂層形成工程で形成した弾性樹脂層10における成形型100とは反対側の面に、発泡樹脂層20を形成する。
【0058】
本工程では、例えば、弾性樹脂層10の面に、専用ガンを用いて、発泡樹脂を吹き付けること等により、発泡樹脂層20を形成する。
【0059】
[接着剤層形成工程]
本工程では、図2Dに示すように、発泡樹脂層形成工程で形成した発泡樹脂層20における弾性樹脂層10とは反対側の面に、接着剤層50を形成する。
【0060】
本工程では、例えば、発泡樹脂層20の面に、ハケ等の塗布具を用いて、接着剤を塗布することにより、接着剤層50を形成する。
【0061】
[賦形層形成工程]
本工程では、発泡樹脂層形成工程で形成した発泡樹脂層20における弾性樹脂層10とは反対側の面に、又は接着剤層形成工程で形成した接着剤層50における発泡樹脂層20とは反対側の面に、賦形層30を形成する。
【0062】
本工程では、例えば、発泡樹脂層20又は接着剤層50の面に、賦形層30の材料を配置させること等により、賦形層30を形成する。
【0063】
賦形層30を繊維強化プラスチック製とする場合、本工程では、まず、繊維強化プラスチックの樹脂部分を形成するための、不飽和ポリエステル樹脂、タルク及び硬化剤を練り合わせたゲルコートを、ハケ等の塗布具を用いて塗布し、次に、この塗布したゲルコートに含浸されるように、繊維強化プラスチックの繊維部分を構成する繊維マットを貼り付けた後、次いで、ゲルコートを硬化させることによって、繊維強化プラスチック製の賦形層30を形成させることができる。
【0064】
[成形型除去工程]
本工程では、形成した成形体1を、成形型100から外す。これにより、成形体1(図2E参照)を得ることができる。
【0065】
成形型100の除去は、成形型100が互いに分離可能な複数の部材で構成されている場合、成形型100を互いに分離することによって、より容易に行うことができる。
【0066】
得られた成形体1において、賦形層30の形状を調整することが好ましい。また、得られた成形体1において、成形型100に塗布した液体離型剤を、水などにより洗浄して除去することが好ましい。さらに、成形体1にバリ、凹凸がある場合は、これをエアサンダー等を用いて削り落とすことにより、また、成形体1にパート面等の合わせ面があり、ここに隙間がある場合は、充填材等を入れることにより、成形体1の形状の調整を行ってもよい。
【0067】
得られた成形体1の表面に、塗装や、サーフェイサの塗布を行うことにより、成形体1を完成させる。
【0068】
本発明の成形体1は、遊具として好適に用いることができる。遊具としては、例えば、すべり台、スプリング遊具、山などの造形物を遊具としたものなどが挙げられる。また、本発明の成形体1は、遊具以外にも、家具、保護用具、アート作品、記念建造物、玩具等としても好適に用いることができる。家具としては、例えば、スツール、オットマン等の椅子全般、ソファー、テーブル、これらの子供用の家具などが挙げられる。保護用具としては、例えば、砂場の周りや階段等に設置される安全ブロック、囲い、壁面、各種保護パッドなどが挙げられる。アート作品としては、各種のアート作品が挙げられ、例えば、オブジェなどが挙げられる。記念建造物としては、例えば、記念碑、記念像等のモニュメント、キャラクター造形物全般などが挙げられる。玩具としては、例えば、パズル、積み木等の知育玩具などが挙げられる。
【実施例
【0069】
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0070】
<成形体の製造>
[実施例]
以下の手順により、実施例の成形体を製造した。
【0071】
(成形型の作製)
目標とする成形体の上面と同じ形状を内側の面に有し、繊維強化プラスチック(FRP)製の成形型を作製した。具体的には、目標とする成形型の形状を分割した複数の各FRP型を準備し、各FRP型の内面側にワックスを塗布した後、余分なワックスを布で拭き取り、次に、各FRP型の内面側に、ハケを用いて、タルク(含水ケイ酸マグネシウム)の粉末を塗布した後、余分なタルク粉末をエアーガンを用いて除去し、次いで、各FRP型の内面側に、ハケを用いて、液体離型剤(水性ビニル系)(DICマテリアル社製のFRP用離型剤「RR-301」(ブルー))を塗布した後、これらの各FRP型を合わせ、ボルトで固定することにより、成形型を作製した。
【0072】
(弾性樹脂層の形成)
成形型の内面に、ポリウレタンエラストマー(ウレタン技研工業社製の「GS-80」)を、専用ガンを用いて吹き付け、弾性樹脂層を形成した。
【0073】
(発泡樹脂層の形成)
前記形成した弾性樹脂層の内面に、発泡ポリウレタン(キグラ社製の「キグラタン515」を、専用ガンを用いて吹き付け、発泡樹脂層を形成した。
【0074】
(接着剤層の形成)
前記形成した発泡樹脂層の内面に、ハケを用いて、接着剤(大阪塗料工業社製の「ウルトラック898」)を塗布し、接着剤層を形成した。
【0075】
(賦形層の形成)
以下のようにして、賦形層を形成した。
不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製の「4072PT」)と、タルク(日本タルク社製のダンタルクSW)とを練り合わせ、ゲルコート(硬練り)を調製し、これに硬化剤(日本特殊塗料社製の「パーメックNRK-04」)を混合した後、ハケを用いて、前記形成した接着剤層の内面に塗布した。
次に、前記塗布したゲルコートに含浸されるように、繊維強化プラスチックの繊維のマット(日東紡績社製のチョップドストランドマット「MC600AS(ソフトタイプ)」を貼り付けた後、乾燥させて、成形体を形成させた。
【0076】
(成形型の除去)
前記形成させた成形体を、成形型から取り出した。取り出した成形体に対し、余分な繊維強化プラスチックを除去し、表面に残っている液体離型剤を水道水で洗い落とし、バリ、凹凸等をエアサンダーで削り落とし、サーフェイサを塗布し、塗装を行うことにより、成形体を完成させた。
【0077】
[比較例]
目標とする成形体の形状に切削したポリウレタンフォームの表面に、実施例で用いたものと同じポリウレタンエラストマー(ウレタン技研工業社製の「GS-80」)を、専用ガンを用いて吹き付け、弾性樹脂層を形成することにより、比較例の成形体を製造した。
【0078】
<評価>
(平滑性)
製造した実施例及び比較例の成形体について、弾性樹脂層の表面における算術平均高さ(Sa)及び最大高さ(Sz)の面粗さを、ISO25178に準拠して、曲面微細形状測定システム(キーエンス社製の「VR-3200」)を用い、12倍の測定条件で、解析ソフトとして、TalyMap Gold 7.1.7106を使用して、測定を行った。
【0079】
(クッション性)
製造した実施例及び比較例の成形体について、弾性樹脂層における発泡樹脂層とは反対側の面において、JIS-K7312に準拠したデュロメータ硬さ試験機(タイプC)を使用し、23℃におけるタイプCデュロメータ硬さを測定した。
【0080】
算術平均高さ(Sa)及び最大高さ(Sz)並びにタイプCデュロメータ硬さの測定結果を、下記表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1の結果から分かるように、実施例の成形体は、表面の平滑性に優れており、クッション性にも優れている。一方、比較例の成形体は、表面の平滑性は低いものに留まる。
【0083】
(まとめ)
上述の実施形態から明らかなように、本発明は以下の態様を含む。
【0084】
本発明の第1の態様に係る成形体(1)は、弾性樹脂層(10)と、発泡樹脂層(20)と、賦形層(30)とを、この順に備える。弾性樹脂層(10)の発泡樹脂層(20)とは反対側の面における算術平均高さ(Sa)は30μm以下である。
【0085】
第1の態様によれば、クッション性、平滑性及び耐久性に優れる成形体を得ることができる。
【0086】
第2の態様に係る成形体(1)は、第1の態様において、発泡樹脂層(20)と賦形層(30)との間に、接着剤層(50)をさらに備える。
【0087】
第2の態様によれば、成形体(1)における発泡樹脂層(20)と賦形層(30)との間の密着性をより向上させることにより、成形体(1)の耐久性をより向上させることができる。
【0088】
第3の態様に係る成形体(1)は、第1又は第2の態様において、弾性樹脂層(10)の発泡樹脂層(20)とは反対側の面におけるタイプCデュロメータ硬さが30以上90以下である。
【0089】
第3の態様によれば、成形体(1)のクッション性をより向上させることができる。
【0090】
本発明の第4の態様に係る成形体(1)の製造方法は、成形型準備工程と、弾性樹脂層形成工程と、発泡樹脂層形成工程と、賦形層形成工程と、成形型除去工程とを備える。成形型準備工程では、成形型(100)を準備する。弾性樹脂層形成工程では、成形型(100)の内側の面に弾性樹脂層(10)を形成する。発泡樹脂層形成工程では、弾性樹脂層(10)における成形型(100)とは反対側の面に発泡樹脂層(20)を形成する。賦形層形成工程では、発泡樹脂層(20)における弾性樹脂層(10)とは反対側の面に賦形層(30)を形成する。成形型除去工程では、賦形層形成工程により得られる弾性樹脂層(10)、発泡樹脂層(20)及び賦形層(30)を有する成形体(1)を成形型(100)から外す。
【0091】
第4の態様によれば、クッション性、平滑性及び耐久性に優れる成形体を、簡便に製造することができる。
【0092】
第5の態様に係る成形体(1)の製造方法では、第4の態様において、発泡樹脂層形成工程後、かつ賦形層形成工程前に、接着剤層形成工程をさらに備える。接着剤層形成工程では、発泡樹脂層(20)における弾性樹脂層(10)とは反対側の面に接着剤層(50)を形成する。賦形層形成工程において、接着剤層(50)における発泡樹脂層(20)とは反対側の面に賦形層(30)を形成する。
【0093】
第5の態様によれば、耐久性がより向上した成形体(1)を製造することができる。
【0094】
第6の態様に係る成形体(1)の製造方法では、第4又は第5の態様において、賦形層(30)が、繊維強化プラスチック製である。
【0095】
第6の態様によれば、成形体(1)をより簡便に製造することができ、また、成形体(1)の耐久性をより向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の成形体は、クッション性、平滑性及び耐久性に優れている。従って、本発明の成形体は、クッション性、平滑性及び耐久性が必要とされる例えば遊具、家具、保護用具、アート作品、記念建造物、玩具等として、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0097】
1 成形体
10 弾性樹脂層
20 発泡樹脂層
30 賦形層
50 接着剤層
100 成形型
【要約】
【課題】クッション性、平滑性及び耐久性に優れる成形体、及び成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】成形体1は、弾性樹脂層10と、発泡樹脂層20と、賦形層30とを、この順に備え、弾性樹脂層10の発泡樹脂層20とは反対側の面における算術平均高さ(Sa)が30μm以下である。成形体1の製造方法は、成形型準備工程と、弾性樹脂層形成工程と、発泡樹脂層形成工程と、賦形層形成工程と、成形型除去工程とを備える。成形型準備工程では、成形型100を準備する。弾性樹脂層形成工程では、成形型100の内側の面に弾性樹脂層10を形成する。発泡樹脂層形成工程では、弾性樹脂層10における成形型100とは反対側の面に発泡樹脂層20を形成する。賦形層形成工程では、発泡樹脂層20における弾性樹脂層10とは反対側の面に賦形層30を形成する。成形型除去工程では、成形体1を成形型100から外す。
【選択図】図1
図1
図2