(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】系統用蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20240522BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240522BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240522BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240522BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20240522BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240522BHJP
B60L 53/60 20190101ALI20240522BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 180
H02J7/34 G
H02J7/00 P
H02J9/06 120
B60L53/14
B60L53/60
(21)【出願番号】P 2023175404
(22)【出願日】2023-10-10
【審査請求日】2023-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513326761
【氏名又は名称】株式会社 FD
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政司
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-289980(JP,A)
【文献】特開2006-271097(JP,A)
【文献】特開2015-019538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 7/34
H02J 7/00
H02J 9/06
B60L 53/14
B60L 53/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統用蓄電システムであって、
系統と電気的に接続される系統用蓄電池と、
前記系統と前記系統用蓄電池との間を電気的に接続する第1配線上に設けられ、前記第1配線を導通及び遮断する第1遮断器と、
前記第1配線から分岐して、電力需要施設と前記系統との間を電気的に接続する第2配線へ接続されたバイパス接続配線と、
前記バイパス接続配線上に設けられ、前記バイパス接続配線を導通及び遮断するバイパス遮断器と、
を備え、
前記第1配線上には、前記第1遮断器と前記系統用蓄電池との間の区間に位置する第1変圧器が設けられており、
前記第2配線上には、前記第2配線を導通及び遮断する第2遮断器
と、前記第2遮断器と前記電力需要施設との間の区間に位置する第2変圧器とが設けられており、
前記バイパス接続配線は、前記第1配線及び前記第2配線の各々において、前記第1遮断器又は前記第2遮断器よりも反系統側で接続されている
とともに、前記第1変圧器又は前記第2変圧器よりも系統側で接続されている、
系統用蓄電システム。
【請求項2】
系統用蓄電システムであって、
系統と電気的に接続される系統用蓄電池と、
前記系統と前記系統用蓄電池との間を電気的に接続する第1配線上に設けられ、前記第1配線を導通及び遮断する第1遮断器と、
前記第1配線から分岐して、電力需要施設と前記系統との間を電気的に接続する第2配線へ接続されたバイパス接続配線と、
前記バイパス接続配線上に設けられ、前記バイパス接続配線を導通及び遮断するバイパス遮断器と、
を備え、
前記第1配線
上には、前記第1遮断器と前記系統用蓄電池との間の区間に位置する第1変圧器と、前記第1変圧器と前記系統用蓄電池との間の区間に位置する第1パワーコンディショナが設けられており、
前記第2配線
上には、
前記第2配線を導通及び遮断する第2遮断器と、前記第2遮断器と前記
電力需要施設との間の区間に位置する第2変圧器
とが設けられており、
前記バイパス接続配線は、前記第1配線において前記第1変圧器と前記第1パワーコンディショナとの間の区間から分岐するとともに、前記第2配線において前記第2変圧器と前記電力需要施設との間の区間に接続されている、
系統用蓄電システム。
【請求項3】
系統用蓄電システムであって、
系統と電気的に接続される系統用蓄電池と、
前記系統と前記系統用蓄電池との間を電気的に接続する第1配線上に設けられ、前記第1配線を導通及び遮断する第1遮断器と、
前記第1配線から分岐して、電力需要施設と前記系統との間を電気的に接続する第2配線へ接続されたバイパス接続配線と、
前記バイパス接続配線上に設けられ、前記バイパス接続配線を導通及び遮断するバイパス遮断器と、
を備え、
前記第1配線
上には、前記第1遮断器と前記系統用蓄電池との間の区間に位置する第1変圧器と、前記第1変圧器と前記系統用蓄電池との間の区間に位置する第1パワーコンディショナ
とが設けられており、
前記第2配線
上には、
前記第2配線を導通及び遮断する第2遮断器と、前記第2遮断器と前記
電力需要施設との間の区間に位置する第2変圧器
とが設けられているとともに、前記第2変圧器と前記電力需要施設との間の区間には、第2パワーコンディショナを介して直流電源が接続されており、
前記バイパス接続配線は、前記第1配線において前記第1パワーコンディショナと前記系統用蓄電池との間の区間から分岐するとともに、前記第2配線において前記第2変圧器と前記電力需要施設との間の区間に、前記第2パワーコンディショナを介して接続されている、
系統用蓄電システム。
【請求項4】
系統用蓄電システムであって、
系統と電気的に接続される系統用蓄電池と、
前記系統と前記系統用蓄電池との間を電気的に接続する第1配線上に設けられ、前記第1配線を導通及び遮断する第1遮断器と、
前記第1配線から分岐して、電力需要施設と前記系統との間を電気的に接続する第2配線へ接続されたバイパス接続配線と、
前記バイパス接続配線上に設けられ、前記バイパス接続配線を導通及び遮断するバイパス遮断器と、
前記バイパス遮断器の動作を制御する制御装置
と、
を備え、
前記第2配線上には、前記第2配線を導通及び遮断する第2遮断器が設けられており、
前記バイパス接続配線は、前記第1配線及び前記第2配線の各々において、前記第1遮断器又は前記第2遮断器よりも反系統側で接続されており、
前記制御装置は、前記第1遮断器と前記第2遮断器との少なくとも一方が導通しているときに、前記バイパス遮断器が導通することを禁止するように構成されている、
系統用蓄電システム。
【請求項5】
前記系統用蓄電池に接続されており、前記系統用蓄電池に蓄積された電力を用いて電動車を充電する車両充電装置をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の系統用蓄電システム。
【請求項6】
前記第1変圧器は、前記第1遮断器が前記第1配線を遮断したときに、前記系統用蓄電池に蓄積された電力によって動作するように構成されている、請求項
1から
3のいずれか一項に記載の系統用蓄電システム。
【請求項7】
前記第1パワーコンディショナは、前記第1遮断器が前記第1配線を遮断したとき
に、前記系統用蓄電池に蓄積された電力によって動作するように構成されている、請求項
2又は
3に記載の系統用蓄電システム。
【請求項8】
前記バイパス遮断器の動作を制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記第1遮断器が導通しているときに、前記バイパス遮断器が導通することを禁止するとともに、前記第1遮断器が遮断されているときは、前記第2遮断器が導通しているときでも、前記バイパス遮断器が導通することを許容するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の系統用蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、系統用蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、電力の安定した供給を確保しつつ、再生可能エネルギー(以下、単に再エネと称する)の大量導入を可能とする電力ネットワークの次世代化が検討されている(非特許文献1参照)。
【0003】
再エネは季節や天候等による影響を受けやすい。再エネの導入拡大を図るためには、その変動を吸収し得る脱炭素型の調整力が必要である。非特許文献1には、脱炭素型の調整力の候補として、系統用蓄電池(系統に接続される大規模な定置用蓄電池)が挙げられている。系統用蓄電池については、それに関連する法整備も進んでおり、急速な普及が見込まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】2022年12月6日開催 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第47回)の配布資料 資料1「電力ネットワークの次世代化」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
系統用蓄電池は、一般送配電事業者が提供する系統(電力系統)に接続され、系統を介して充電(順潮流)及び放電(逆潮流)が行われる。従って、例えば自然災害等により、系統に大規模停電といった異常が生じると、系統用蓄電池はその機能を発揮することができなくなる。そのため、大規模停電という状況下において、電源喪失に困窮する電力需要施設が発生する一方で、その近隣に配備された系統用蓄電池に十分な電力が蓄電されているとしても、系統用蓄電池に蓄積された電力を利用することができないという懸念がある。
【0006】
上記を鑑み、本明細書は、系統に異常が生じた場合でも、系統用蓄電池の蓄電電力を利用し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する技術は、系統用蓄電システムに具現化される。このシステムは、系統と電気的に接続される系統用蓄電池と、系統と系統用蓄電池との間を電気的に接続する第1配線上に設けられ、第1配線を導通及び遮断する第1遮断器と、第1配線から分岐して、電力需要施設と系統との間を電気的に接続する第2配線へ接続されたバイパス接続配線と、バイパス接続配線上に設けられ、バイパス接続配線を導通及び遮断するバイパス遮断器とを備える。第2配線上には、第2配線を導通及び遮断する第2遮断器が設けられている。バイパス接続配線は、第1配線及び第2配線の各々において、第1遮断器又は第2遮断器よりも反系統側で接続されている。
【0008】
上記した構成では、平常時、第1遮断器が導通することで、系統用蓄電池が系統へ電気的に接続される。これにより、系統用蓄電池は、系統を介して充放電され、系統に対する調整力として機能する。電力需要施設においても、第3遮断器が導通することで、電力需要施設が系統へ電気的に接続される。これにより、電力需要施設は、系統を介して電力供給を受けることができる。このように、平常時は、系統用蓄電システムと電力需要施設とのそれぞれが、系統と電気的に接続されている。従って、平常時、第2遮断器は遮断されている。
【0009】
一方、例えば自然災害等により、系統に大規模停電といった異常が生じたときは、第1遮断器を遮断することで、系統用蓄電システムを系統から電気的に切断することができる。同様に、電力需要施設においても、第3遮断器を遮断することで、電力需要施設は系統から電気的に切断される。この状態で、第2遮断器が導通されると、系統用蓄電システムが、バイパス接続配線を介して直接的(即ち、系統を介さず)に、電力需要施設へ電気的に接続される。これにより、系統が利用不能な状況であっても、系統用蓄電池に蓄えられた電力を、電力需要施設へ供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の系統用蓄電システム10の構成を示すブロック図。
【
図2】系統2に異常が発生した場合の系統用蓄電システム10の動作を示す。
【
図3】平常時に系統用蓄電システム10が電力需要施設30へ電力を供給する様子を示す。
【
図4】実施例2の系統用蓄電システム110の構成を示すブロック図。
【
図5】実施例3の系統用蓄電システム210の構成を示すブロック図。
【
図6】実施例1-3の一変形例を説明する図であって、システム10に付加されたソーラパネル54を示す。電力需要施設30の図示は省略されている。
【
図7】実施例1-3の一変形例を説明する図であって、電力需要施設30に付加されたEV充電器58を示す。系統用蓄電システム10の図示は省略されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本技術の一実施形態において、系統蓄電システム側の第1配線には、第1遮断器と系統用蓄電池との間の区間に位置する第1変圧器が設けられていてもよい。同様に、電力需要施設側の第2配線には、第2遮断器と系統用蓄電池との間の区間に位置する第2変圧器が設けられていてもよい。この場合、バイパス接続配線は、第1配線及び第2配線の各々において、第1変圧器又は第2変圧器よりも系統側で接続されていてもよい。このような構成によると、バイパス接続配線では、系統と同じように高電圧で交流電力が送電されることから、バイパス接続配線における送電ロスを抑制することができる。また、系統用蓄電システムは、平常時に系統へ電力を供給するときと同じように、電力需要施設へ電力を供給することができる。また、電力需要施設においても、平常時に系統から電力の供給を受けるときと同じように、系統用蓄電システムから電力の供給を受けることができる。
【0012】
本技術の一実施形態において、系統蓄電システム側の第1配線には、第1遮断器と系統用蓄電池との間の区間に位置する第1変圧器と、第1変圧器と系統用蓄電池との間の区間に位置する第1パワーコンディショナが設けられていてもよい。また、電力需要施設側の第2配線には、第2遮断器と電力需要施設との間の区間に位置する第2変圧器が設けられていてもよい。この場合、バイパス接続配線は、第1配線において、第1変圧器と第1パワーコンディショナとの間の区間から分岐してもよい。そして、バイパス接続配線は、電力需要施設側の第2配線において、第2変圧器と電力需要施設との間の区間に接続されていてもよい。このような構成によると、バイパス接続配線では、系統よりも低電圧で交流電力が送電されることから、バイパス接続配線の構成を簡素なものとすることができる。
【0013】
本技術の一実施形態において、系統蓄電システム側の第1配線には、第1遮断器と系統用蓄電池との間の区間に位置する第1変圧器と、第1変圧器と系統用蓄電池との間の区間に位置する第1パワーコンディショナが設けられていてもよい。また、電力需要施設側の第2配線には、第2遮断器と電力需要施設との間の区間に位置する第2変圧器が設けられているとともに、第2変圧器と電力需要施設との間の区間には、第2パワーコンディショナを介して直流電源が接続されていてもよい。この場合、バイパス接続配線は、系統蓄電システム側の第1配線において、第1パワーコンディショナと系統用蓄電池との間の区間から分岐してもよい。そして、バイパス接続配線は、電力需要施設側の第2配線において、第2変圧器と電力需要施設との間の区間に、第2パワーコンディショナを介して接続されていてもよい。このように、バイパス接続配線では、系統用蓄電池からの電力が、直流電力としてそのまま(又は必要に応じて変圧された後に)送電されてもよい。
【0014】
本技術の一実施形態において、系統用蓄電システムは、系統用蓄電池に接続された車両充電装置をさらに備えてもよい。この場合、車両充電装置は、系統用蓄電池に蓄積された電力を用いて、電動車を充電するように構成されるとよい。このような構成によると、系統に異常が生じたときでも、系統用蓄電池に蓄積された電力を用いて、電動車を充電することができる。電動車に充電された電力は、電動車によって消費されるだけでなく、例えば住居への給電(いわゆるV2H:Vehicle to Home)に利用することもできる。これにより、例えば大規模停電が生じたときには、バイパス接続配線を介して接続された電力需要施設だけでなく、電動車を介して不特定の家庭にも電力を供給することができる。
【0015】
本技術の一実施形態において、系統用蓄電システムは、バイパス遮断器の動作を制御する制御装置をさらに備えてもよい。この場合、制御装置は、第1遮断器と第2遮断器との少なくとも一方が導通しているときに、バイパス遮断器が導通することを禁止するように構成されているとよい。このような構成によると、系統用蓄電システムから電力需要施設へ電力供給する際に、異常が発生している系統へ意図せず電力が供給されることを回避することができる。
【0016】
本技術の一実施形態において、第1変圧器及び/又は第1パワーコンディショナは、第1遮断器が第1配線を遮断したときに、系統用蓄電池に蓄積された電力によって動作するように構成されていてもよい。このような構成によると、系統に異常が生じたときでも、第1変圧器及び/又は第1パワーコンディショナを動作させて、系統用蓄電システムから電力需要施設への電力供給を確実に実施することができる。但し、他の実施形態として、第1変圧器及び/又は第1パワーコンディショナは、他の蓄電池やソーラパネルといった自己電源を備えてもよい。
【実施例】
【0017】
(実施例1) 図面を参照して、実施例1の系統用蓄電システム10(以下、システム10と略記する)について説明する。本実施例のシステム10は、例えば工場、倉庫、空港、学校、病院、行政施設、大規模小売店舗のような、比較的に大型の施設30と同じ敷地内、又はそれに隣接して設けられる。それらの施設30は、系統2から電力供給を受ける施設であり、本明細書では電力需要施設30と称する。電力需要施設30は、第2変圧器34を介して、系統2に接続されている。また、電力需要施設30には、蓄電池42やソーラパネル44といった各種の電源と、それらに必要とされる第2パワーコンディショナ36が備えられてもよい。系統2は、一般送配電事業者が提供する系統(電力系統)である。
【0018】
図1に示すように、システム10は、系統用蓄電池12と、第1変圧器14と、第1パワーコンディショナ16とを備える。系統用蓄電池12は、第1配線18を介して系統2に接続されている。第1配線18には、第1変圧器14及び第1パワーコンディショナ16が設けられている。第1変圧器14は、系統2に接続されており、第1パワーコンディショナ16は、第1変圧器14と系統用蓄電池12との間に介在している。
【0019】
系統用蓄電池12は、定置用の蓄電池である。系統用蓄電池12は、系統2を介して充放電されることで、系統2に対する調整力として機能する。系統用蓄電池12は、例えば揚水発電等とともに、脱酸素型の調整力としてその普及が期待されている。系統用蓄電池12は、比較的に大きな定格出力及び蓄電容量を有しており、例えば10メガワット(MW)以上の定格出力と、100メガワット時(MWh)以上の蓄電容量を有することができる。系統用蓄電池12の具体的な構成については特に限定されない。例えば、系統用蓄電池12を構成する電池は、リチウムイオン電池、全固体電池、ナトリウム・硫黄電池(NAS電池:登録商標)等のいずれか、又は、それらの組み合わせであってもよい。
【0020】
システム10が蓄電する場合、第1変圧器14は、系統2からの交流電力を降圧して、第1パワーコンディショナ16へ出力する。そして、第1パワーコンディショナ16は、第1変圧器14からの交流電力を直流電力に変換して、系統用蓄電池12へ出力する。これにより、系統2からの電力が系統用蓄電池12に蓄電される。一方、システム10が給電する場合、第1パワーコンディショナ16は、系統用蓄電池12からの直流電力を交流電力に変換して、第1変圧器14へ出力する。そして、第1変圧器14は、第1パワーコンディショナ16からの交流電力を昇圧して、系統2に出力する。これにより、系統用蓄電池12からの電力が系統2に供給される。
【0021】
システム10は、第1遮断器20をさらに備える。第1遮断器20は、第1配線18において、第1変圧器14と系統2との間に設けられており、第1変圧器14と系統2との間を電気的に導通及び遮断する。本実施例における系統2は、特別高圧(いわゆる特高)の系統である。従って、第1配線18のうち、系統2と第1変圧器14との間の区間18aも、系統2と同じ特高の配線となっている。但し、系統2の電圧は特に限定されない。平常時、第1配線18は第1遮断器20によって導通されており、システム10は系統2へ電気的に接続されている(
図1参照)。しかしながら、
図2に示すように、系統2に大規模停電又はその他の異常が生じると、第1配線18は第1遮断器20によって遮断され、システム10が系統2から電気的に切断される。なお、このときの第1遮断器20の動作は、系統2によって自動的に制御されてもよいし、システム10によって自動的に制御されてもよい。あるいは、第1遮断器20の動作は、その権限を有する作業者によって人為的に管理されてもよい。
【0022】
システム10は、バイパス接続配線22と、バイパス接続配線22上に設けられたバイパス遮断器24とをさらに備える。バイパス接続配線22は、第1配線18から分岐して、第2配線38へ接続されている。第2配線38は、電力需要施設30と系統2との間を接続する配線であって、系統2から電力需要施設30へ電力を供給する経路である。第2配線38には、第2変圧器34と第2遮断器40とが設けられている。第2変圧器34は、第1変圧器14と同様に、系統2からの交流電力を降圧して、電力需要施設30に供給する。
【0023】
第2遮断器40は、第2配線38において、第2変圧器34と系統2との間に設けられており、第2変圧器34と系統2との間を電気的に導通及び遮断する。平常時、第2配線38は第2遮断器40によって導通されており、電力需要施設30は系統2へ電気的に接続されている(
図1参照)。しかしながら、
図2に示すように、系統2に大規模停電又はその他の異常が生じると、第2配線38は第2遮断器40によって遮断され、電力需要施設30が系統2から電気的に切断される。なお、このときの第2遮断器40の動作は、系統2によって自動的に制御されてもよいし、電力需要施設30によって自動的に制御されてもよい。あるいは、第2遮断器40の動作は、その権限を有する作業者によって人為的に管理されてもよい。
【0024】
平常時、バイパス接続配線22は、バイパス遮断器24によって遮断されており、システム10と電力需要施設30との間は、系統2のみを介して互いに接続されている(
図1参照)。しかしながら、
図2に示すように、系統2に大規模停電又はその他の異常が生じると、第2配線38はバイパス遮断器24によって導通され、システム10と電力需要施設30との間が直接的に(即ち、系統2を介さずに)接続される。特に、バイパス接続配線22は、第1配線18及び第2配線38の各々において、第1遮断器20又は第2遮断器40よりも反系統側(即ち、系統2とは反対側)で接続されている。これにより、バイパス接続配線22は、システム10及び電力需要施設30の両者が系統2から電気的に切断された状態で、システム10と電力需要施設30との間を直接的に接続することができる。
【0025】
以上のように、本実施例のシステム10によると、例えば自然災害等により、系統2に大規模停電といった異常が生じたときは、第1遮断器20を遮断することで、系統用蓄電システム10を系統2から電気的に切断することができる。同様に、電力需要施設30においても、第2遮断器40が遮断されることで、電力需要施設30は系統2から電気的に切断される。この状態で、バイパス接続配線22のバイパス遮断器24が導通されると、システム10が、バイパス接続配線22を介して電力需要施設30へ電気的に接続される。これにより、系統2が利用不能な状況であっても、系統用蓄電池12に蓄えられた電力を、電力需要施設30へ供給することができる。
【0026】
電力需要施設30では、系統用蓄電池12からの供給電力を、様々な態様で利用することができる。例えば、系統用蓄電池12からの供給電力は、電力需要施設30の全体で利用されてもよいし、電力需要施設30のなかの一部に限って限定的に利用されてもよい。後者の態様によると、例えば、電力需要施設30において必須又は重要な設備のみに電力を供給することで、電力需要施設30に求められる必要最小限の機能を、長期に亘って維持することが可能となる。
【0027】
バイパス遮断器24の動作は、システム10によって自動的に制御されてもよいし、その権限を有する作業者によって人為的に管理されてもよい。この点に関して、本実施例のシステム10は、バイパス遮断器24の動作を制御する制御装置26をさらに備えている。制御装置26は、第1遮断器20及び第2遮断器40の状態を監視しており、それらの遮断器20、40の少なくとも一方が導通しているときは、バイパス遮断器24が導通することを禁止するように構成されている。即ち、仮に作業者がバイパス遮断器24を導通する操作をしたとしても、第1遮断器20と第2遮断器40との少なくとも一方が導通していれば、制御装置26によってバイパス遮断器24の導通する動作が禁止される。一例ではあるが、制御装置26はさらに、第1遮断器20と第2遮断器40との両者が遮断されたときに、それを検知してバイパス遮断器24を自動的に導通するように構成されてもよい。
【0028】
バイパス接続配線22が第1配線18から分岐する位置や、バイパス接続配線22が第2配線38へ接続される位置は、特に限定されない。一例ではあるが、本実施例のシステム10では、バイパス接続配線22が、第1配線18及び第2配線38の各々において、第1変圧器14又は第2変圧器34よりも系統2側で接続されている。このような構成によると、バイパス接続配線22では、系統2と同じように高電圧で交流電力が送電されることから、バイパス接続配線22における送電ロスを抑制することができる。また、システム10は、平常時に系統2へ電力を供給するときと同じように、電力需要施設30へ電力を供給することができる。また、電力需要施設30においても、平常時に系統2から電力の供給を受けるときと同じように、システム10から電力の供給を受けることができる。
【0029】
本実施例のシステム10において、第1変圧器14、第1パワーコンディショナ16、制御装置26といった各構成要素は、系統用蓄電池12に蓄積された電力によって動作するように構成されている。これにより、システム10は、第1配線18が第1遮断器20によって遮断され、系統2から電力供給が喪失した場合でも、その動作を継続することができる。但し、システム10の各構成要素は、系統用蓄電池12とは別に、蓄電池やソーラパネルといった自己電源を備えてもよい。また、システム10の各構成要素は、平常時においては、系統2から供給される電力によって動作するように構成されてもよい。
【0030】
一例ではあるが、本実施例のシステム10は、EV充電器28をさらに備える。EV充電器28は、直流充電器であって、系統用蓄電池12に接続されており、系統用蓄電池12に蓄積された電力を用いて電動車(図示省略)を充電することができる。電動車に充電された電力は、電動車によって消費されるだけでなく、その電動車が住居に接続されることで、住居への給電(いわゆるV2H:Vehicle to Home)に利用することもできる。これにより、例えば大規模停電が生じたときには、バイパス接続配線22を介して接続された特定の電力需要施設30だけでなく、システム10から離れて位置する不特定の家庭にも、電動車を介して電力を供給することができる。
【0031】
図3に示すように、本実施例のシステム10は、系統2に支障がない平常時においても、バイパス接続配線22を介して、電力需要施設30へ電力を供給してもよい。この場合、電力需要施設30は、系統2とシステム10の両者から電力供給を受けることから、システム10から供給された電力量の分だけ、系統2から供給される電力量を低減することができる。一般に、電力需要施設30における消費電力量は季節による変動が大きく、一年の間でピークとなる時期の消費電力量に合わせて、系統2の提供者(即ち、一般送配電事業者等)と契約電力を取り決めている。従って、電力需要施設30は、システム10から電力供給を受けることにより、ピークとなる時期の消費電力量を低下させることで、契約電力(即ち、契約料金)をより低くすることができる。なお、本態様の動作を行う場合、制御装置26は、第2遮断器40が導通しているときでも、バイパス遮断器24が導通することを許容するように変更されるとよい。
【0032】
(実施例2)
図4を参照して、実施例2の系統用蓄電システム110(以下、システム110と略記する)について説明する。本実施例のシステム110は、実施例1のシステム10と比較して、バイパス接続配線22の位置が変更されている。本実施例のその他の構成については、実施例1のシステム10と同一又は対応することから、同一の符号を付すことによって重複する説明は省略する。
【0033】
図4に示すように、本実施例におけるバイパス接続配線22は、システム110側の第1配線18において、第1変圧器14と第1パワーコンディショナ16との間の区間18bから分岐している。そして、バイパス接続配線22は、電力需要施設30側の第2配線38において、第2変圧器34と電力需要施設30との間の区間38bに接続されている。このような構成によると、バイパス接続配線22では、系統2よりも低電圧で交流電力が送電される。従って、バイパス接続配線22に必要とされる耐圧性が緩和され、バイパス接続配線22の構成を簡素なものとすることができる。
【0034】
(実施例3)
図5を参照して、実施例3の系統用蓄電システム210(以下、システム210と略記する)について説明する。本実施例のシステム210は、実施例1のシステム10と比較して、バイパス接続配線22の位置が変更されている。本実施例のその他の構成については、実施例1のシステム10と同一又は対応することから、同一の符号を付すことによって重複する説明は省略する。
【0035】
図5に示すように、本実施例におけるバイパス接続配線22は、システム210側の第1配線18において、第1パワーコンディショナ16と系統用蓄電池12との間の区間18cから分岐している。そして、バイパス接続配線22は、電力需要施設30において、第2パワーコンディショナ36と蓄電池42等との間を接続する直流配線38cに接続されている。これにより、バイパス接続配線22は、第2配線38(特に、第2変圧器34と電力需要施設30との間の区間38b)に、第2パワーコンディショナ36を介して接続されている。このような構成によると、系統用蓄電池12からの直流電力は、バイパス接続配線22を介して、電力需要施設30の第2パワーコンディショナ36に供給される。第2パワーコンディショナ36は、系統用蓄電池12からの直流電力を交流電力に変換して、第2配線38へ出力する。これにより、系統用蓄電池12から電力需要施設30へ、バイパス接続配線22を通じて電力が供給される。このように、バイパス接続配線22では、系統用蓄電池12からの電力が、直流電力としてそのまま(又は必要に応じて変圧された後に)送電されてもよい。なお、系統用蓄電池12からの電力は、電力需要施設30の蓄電池42に蓄電されてもよい。
【0036】
(変形例)
図6に示すように、上述した実施例1のシステム10は、ソーラパネル54をさらに備えてもよい。このような構成によると、システム10は、系統用蓄電池12の蓄電電力だけでなく、ソーラパネル54による発電電力も電力需要施設30に供給することができる。これにより、電力需要施設30において、再エネの利用率を高めることができる。図示省略するが、同様のソーラパネル54は、実施例2、3のシステム110、210にも設けることができる。
【0037】
上記に加えて、又は代えて、
図7に示すように、電力需要施設30には、EV充電器58がさらに備えられてもよい。EV充電器58は、直流充電器であって、電力需要施設30における直流配線38cに接続されており、系統用蓄電池12からの供給電力を用いて、電動車(図示省略)を充電することができる。なお、平常時について、EV充電器58は、系統2からの供給電力、蓄電池42の蓄電電力、又はソーラパネル44の発電電力を用いて、電動車を充電することもできる。システム10のEV充電器28と同様に、電動車に充電された電力は、電動車によって消費されるだけでなく、その電動車が住居に接続されることで、住居への給電(V2H)にも利用することもできる。なお、EV充電器58は、実施例1のシステム10に限られず、実施例2,3のシステム110、210においても、電力需要施設30へ同様に設けることができる。
【0038】
以上、本技術の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではないまた、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
2:系統、 10、110、210:系統用蓄電システム(システム)、 12:系統用蓄電池、 14:変圧器、 16:パワーコンディショナ、 18:第1系統接続配線、 20:第1遮断器、 22:バイパス接続配線、 24:第2遮断器、 26:制御装置、 28、58:EV充電器、 30:電力需要施設、 34:変圧器、 36:パワーコンディショナ、 38:第2系統接続配線、 40:第3遮断器、 42:蓄電池、 44、54:ソーラパネル
【要約】
【課題】 系統に異常が生じた場合でも系統用蓄電池の蓄電電力を利用し得る技術を提供する。
【解決手段】 系統用蓄電システムは、系統と電気的に接続される系統用蓄電池と、系統と系統用蓄電池との間を電気的に接続する第1配線上に設けられ、第1配線を導通及び遮断する第1遮断器と、第1配線から分岐して、電力需要施設と系統との間を電気的に接続する第2配線へ接続されたバイパス接続配線と、バイパス接続配線上に設けられ、バイパス接続配線を導通及び遮断するバイパス遮断器とを備える。第2配線上には、第2配線を導通及び遮断する第2遮断器が設けられている。バイパス接続配線は、第1配線及び第2配線の各々において、第1遮断器又は第2遮断器よりも反系統側で接続されている。
【選択図】
図1