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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】樹脂発泡シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240522BHJP
   C09J 7/26 20180101ALI20240522BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
C09J7/26
B32B27/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019065383
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2019183142
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2018067982
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】上田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 慶人
(72)【発明者】
【氏名】高須 健一郎
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-153977(JP,A)
【文献】特開2016-088977(JP,A)
【文献】特開2017-061669(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159094(WO,A1)
【文献】特開2017-066403(JP,A)
【文献】特開2015-091920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00 - 9/42
C09J 7/00 - 7/50
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡シートであって、前記樹脂発泡シートを初期厚みに対して75%の厚みとなるように圧縮して6時間後の圧縮応力が400Pa以下、かつ、12時間後の圧縮応力が300Pa以下であり、平均気泡径が下記式(1)及び(2)を満たし、前記樹脂発泡シートのアスカーC硬度が1以上15以下であり、前記樹脂発泡シートの重量に対する体積比率が8cm3/g以上14cm3/g以下であり、樹脂発泡シートのMDの平均気泡径が60μm以上350μm以下、TDの平均気泡径が50μm以上350μm以下、ZDの平均気泡径が10μm以上70μm以下であり、独立気泡率が70%以上である、樹脂発泡シート。
3.6≦MDの平均気泡径/ZDの平均気泡径≦8 (1)
4.8≦TDの平均気泡径/ZDの平均気泡径≦8 (2)
【請求項2】
厚みが0.1mm以上0.5mm以下である、請求項1に記載の樹脂発泡シート。
【請求項3】
25%圧縮強度が5kPa以上45kPa以下、かつ、50%圧縮強度が15kPa以上100kPa以下である、請求項1又は2に記載の樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記樹脂発泡シートが、ポリオレフィン系樹脂発泡シートである請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
【請求項5】
表示パネルの衝撃吸収材である請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
【請求項6】
前記表示パネルがタッチパネルである請求項に記載の樹脂発泡シート。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂発泡シートと、前記樹脂発泡シートの少なくとも一方の面に設けた粘着材とを備える粘着テープ。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂発泡シートと、その樹脂発泡シートの上に配置された表示パネルとを備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、タッチパネル等の表示装置の衝撃吸収材として使用される樹脂発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パーソナルコンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット等の携帯機器において、表示装置は、破損や故障の防止のために、背面側に衝撃吸収材が配置されることがある。衝撃吸収材は、高い柔軟性が求められており、従来、発泡シートが広く使用されている。
【0003】
携帯機器、特にスマートフォンの表示装置では、タッチパネル式のものが多く採用されている。タッチパネル式の液晶パネルは、パネル操作時の押圧が強くなると、プーリングと呼ばれる液晶の滲みが発生することがある。そのため、表示装置に衝撃吸収材として使用される発泡シートは、高い衝撃吸収性のみならず、耐プーリング特性も求められるようになってきている。
【0004】
例えば、特許文献1には、厚さが0.05~0.35mmである独立気泡発泡シートにおいて、25%圧縮応力、及びMD、TDにおける引張強さを一定の範囲としつつ、5Nで5秒間押圧した後解放したときの回復時間を0.1秒以下にすることが開示される。特許文献1において、発泡シートは、衝撃吸収性が良好で、かつ発生したプーリングを早期に消失できる耐プーリング特性を有することが示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2016/159094号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の発泡シートは、表示装置において発生するプーリングを早期に消失できるものの、表示パネルを押圧すると一定量のプーリングが発生する。近年、プーリングに対する要求は、年々厳しくなっており、プーリングをできる限り発生しないようにすることが望まれている。
そこで、本発明は、衝撃吸収性を良好にしつつ、プーリングの発生を十分に抑制できる樹脂発泡シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、所定量圧縮変形したときの樹脂発泡シートの応力緩和特性を高くすることで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。本発明は、以下の[1]~[13]を提供する。
[1]樹脂発泡シートであって、前記樹脂発泡シートを初期厚みに対して75%の厚みとなるように圧縮して6時間後の圧縮応力が400Pa以下、かつ、12時間後の圧縮応力が300Pa以下である、樹脂発泡シート。
[2]独立気泡率が70%以上である、上記[1]に記載の樹脂発泡シート。
[3]発泡倍率が8cm3/g以上14cm3/g以下である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂発泡シート。
[4]厚みが0.1mm以上0.5mm以下である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
[5]25%圧縮強度が5kPa以上45kPa以下、かつ、50%圧縮強度が15kPa以上100kPa以下である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
[6]MDの平均気泡径が60μm以上350μm以下、TDの平均気泡径が50μm以上350μm以下、ZDの平均気泡径が10μm以上70μm以下である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
[7]平均気泡径が下記式(1)及び(2)を満たす、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
2≦MDの平均気泡径/ZDの平均気泡径≦8 (1)
2≦TDの平均気泡径/ZDの平均気泡径≦8 (2)
[8]表面のアスカーC硬度が15以下である、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
[9]前記樹脂発泡シートが、ポリオレフィン系樹脂発泡シートである上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
[10]表示パネルの衝撃吸収材である上記[1]~[9]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シート。
[11]前記表示パネルがタッチパネルである上記[10]に記載の樹脂発泡シート。
[12]上記[1]~[11]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シートと、前記樹脂発泡シートの少なくとも一方の面に設けた粘着材とを備える粘着テープ。
[13]上記[1]~[11]のいずれか1項に記載の樹脂発泡シートと、その樹脂発泡シートの上に配置された表示パネルとを備える表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂発泡シートは、衝撃吸収性を良好にしつつ、プーリングの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[樹脂発泡シート]
本発明の樹脂発泡シートは、初期厚みに対して75%の厚みとなるように圧縮して(すなわち、25%圧縮して)6時間後の圧縮応力が400Pa以下、かつ、12時間後の圧縮応力が300Pa以下となるものである。
本発明の樹脂発泡シートは、圧縮6時間後及び12時間後の圧縮応力が上記のように低くなることで、圧縮に対する応力緩和特性が優れる。そのため、通常の使用状態では、樹脂発泡シートによって表示装置の画面などに反発力が作用されにくくなると考えられ、それにより表示装置にプーリングが発生しにくくなる。また、大きな衝撃が作用されたときには、樹脂発泡シートの優れた圧縮特性により、衝撃を吸収することができる。
【0010】
一方で、圧縮6時間後の圧縮応力が400Paより大きくなったり、12時間後の圧縮応力が300Pa以下より大きくなったりすると、樹脂発泡シートは、通常の使用状態で反発力が大きくなり、プーリングが発生しやすくなる。衝撃吸収性を良好にしつつ、プーリングを抑制する観点から、上記圧縮6時間後の圧縮応力は、380Pa以下であることが好ましく、また、150Pa以上が好ましく、250Pa以上がより好ましい。
圧縮12時間後の圧縮応力は、290Pa以下であることが好ましく、また、100Pa以上が好ましく、200Pa以上がより好ましい。
【0011】
本発明の樹脂発泡シートは、表面を比較的柔らかくすることで、上記した圧縮6時間、及び12時間後の圧縮応力を低くすることができる。そのような観点から、アスカーC硬度は、15以下であることが好ましく、13以下がより好ましい。また、アスカーC硬度は、樹脂発泡シートに適度な機械強度を付与する観点から、1以上が好ましく、5以上がより好ましい。
【0012】
本発明の樹脂発泡シートは、発泡倍率が8cm3/g以上14cm3/g以下であることが好ましい。発泡倍率が8cm3/g以上となると、樹脂発泡シートの柔軟性が確保され、上記したアスカーC硬度を低くしやすくなり、それにより、圧縮6時間後、及び12時間後の圧縮応力を低くしやすくなる。また、後述する25%、50%圧縮強度も低くしやすくなる。発泡倍率は、これら観点から8.5cm3/g以上がより好ましい。
また、発泡倍率が14cm3/g以下であると、樹脂発泡シートは、適度な機械強度を有し、良好な衝撃吸収性及び耐久性を確保しやすくなる。このような観点から発泡倍率は、12cm3/g以下がより好ましく、11cm3/g以下が更に好ましい。
【0013】
本発明の樹脂発泡シートは、25%圧縮強度が5kPa以上45kPa以下であり、かつ50%圧縮強度が15kPa以上100kPa以下であることが好ましい。25%及び50%圧縮強度が上記範囲内であると、衝撃吸収性が優れたものとなり、かつプーリングの発生も抑えやすくなる。また、これら下限値以上とすることで、プーリングが発生してもプーリングを素早く消失させ、耐プーリング性が向上する。
これら観点から、25%圧縮強度は、15kPa以上がより好ましく、25kPa以上がさらに好ましく、また、40Pa以下がより好ましく、37kPa以下がさらに好ましい。同様の観点から、50%圧縮強度は、25kPa以上がより好ましく、35kPa以上がさらに好ましく、また、95kPa以下がより好ましく、85kPa以下がさらに好ましい。
【0014】
本発明の樹脂発泡シートの厚みは、0.1mm以上0.5mm以下が好ましい。樹脂発泡シートの厚みが0.5mm以下となると、厚みが必要以上に大きくならないので、発泡シートが適用される表示装置の小型化及び薄型化を達成しやすくなる。また、0.1mm以上とすることで、樹脂発泡シートの衝撃吸収性を良好としやすくなる。
樹脂発泡シートの厚みは、表示装置の小型化及び薄型化、衝撃吸収性の向上の観点から、0.12mm以上がより好ましく、0.14mm以上がさらに好ましく、また、0.35mm以下がより好ましく、0.25mm以下がさらに好ましい。
【0015】
また、樹脂発泡シートは、独立気泡発泡体であることが好ましい。なお、独立気泡発泡体であるとは、樹脂発泡シートの独立気泡率が70%以上であることを意味する。すなわち、樹脂発泡シートの内部に包含された気泡は概ね独立気泡となり、押圧に対する反発力が大きくなりやすいため、プーリングが発生しても素早く消失させことが可能であり、耐プーリング性が向上する。また、独立気泡発泡体であることで、衝撃吸収性も良好となりやすい。これら観点から、発泡シートの独立気泡率は、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上100%以下である。
【0016】
なお、独立気泡率は、下記の要領で測定できる。
まず、樹脂発泡シートから一辺が5cmの平面正方形状の試験片を切り出す。そして、試験片の厚さを測定して試験片の見掛け体積V1を算出すると共に、試験片の重量W1を測定する。
次に、気泡の占める体積V2を下記式に基づいて算出する。なお、試験片を構成している材料の密度はρ(g/cm3)とする。
気泡の占める体積V2=V1-W1/ρ
続いて、試験片を23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に15kPaの圧力を3分間に亘って加える。その後、水中で加圧から解放し、1分間静置した後、試験片を水中から取り出して試験片の表面に付着した水分を除去して試験片の重量W2を測定し、下記式に基づいて連続気泡率F1及び独立気泡率F2を算出する。
連続気泡率F1(%)=100×(W2-W1)/V2
独立気泡率F2(%)=100-F1
【0017】
本発明の樹脂発泡シートは、MDにおける引張強度が2500kPa以上、かつTDにおける引張強度が1800kPa以上であることが好ましい。引張強度がこれら下限値以上となると、樹脂発泡シートの機械強度が良好となり耐久性が高められる。
また、MDにおける引張強度が9500kPa以下、かつTDにおける引張強度が8000kPa以下であることが好ましい。引張強度がこれら上限値以下となると、機械強度が適切な大きさとなり、アスカーC硬度を上記上限値以下にしやすくなる。
本発明では、MDにおける引張強度が3000kPa以上,かつTDにおける引張強度が2000kPa以上であることがより好ましく、また、MDにおける引張強度が7000kPa以下,かつTDにおける引張強度が5500kPa以下であることがより好ましい。
なお、MDは、Machine directionを意味し、押出方向等と一致する方向である。TDは、Transverse directionを意味し、MDに直交しかつ発泡シートに平行な方向である。また、後述するZDは、発泡シートの厚さ方向であり、MD及びTDのいずれにも垂直な方向である。
【0018】
本発明では、上記した圧縮6時間後及び12時間後の圧縮応力を低くするためには、気泡の形状は、扁平であることが好ましい。具体的には、樹脂発泡シートの気泡の平均気泡径は、MDの平均気泡径/ZDの平均気泡径を「MD/ZD」、TDの平均気泡径/ZDの平均気泡径を「TD/ZD」とすると、下記の式(1)及び(2)を満たすことが好ましい。
2≦MD/ZD≦8 ・・・(1)
2≦TD/ZD≦8 ・・・(2)
また、上記観点から、MD/ZDが3以上7以下で、かつTD/ZDが3以上7以下であることがより好ましく、MD/ZDが4.8以上7以下で、TD/ZDが5.5以上7以下であることがさらに好ましい。
【0019】
樹脂発泡シートにおける気泡の平均気泡径は、例えば、MDにおいて60μm以上350μm以下、TDにおいて50μm以上350μm以下、ZDにおいて10μm以上70μm以下となるものである。樹脂発泡シートにおける気泡の平均気泡径は、好ましくは、MDにおいて100μm以上320μm以下、TDにおいて100μm以上320μm以下、ZDにおいて20μm以上55μm以下である。より好ましくは、MDにおいて20μm以上300μm以下、TDにおいて210μm以上310μm以下、ZDにおいて20μm以上55μm以下である。平均気泡径を一定の範囲内とすることで、上記した圧縮6時間後及び12時間後の圧縮応力を所望の範囲内に調整しやすくなる。
【0020】
樹脂発泡シートは、樹脂を含む発泡性樹脂組成物を発泡してなるものであるが、発泡性樹脂組成物を架橋及び発泡してなることが好ましい。すなわち、樹脂発泡シートは、架橋体であることが好ましい。樹脂発泡シートは、架橋体であることで、圧縮強度及び引張強度などを優れたものとしつつ、圧縮6時間後及び12時間後の圧縮応力を所望の範囲内に調整しやすくなる。樹脂発泡シートの架橋は、後述する電離性放射線の照射により行うことが好ましいが、その他の方法で行ってもよい。
【0021】
樹脂発泡シートの架橋度は、通常、5~60質量%程度であるが、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~35質量%である。架橋度は、後述する電離性放射線の照射量などにより調整可能である。
なお、架橋度は、以下の測定方法で測定する。樹脂発泡シートから約100mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出する。
架橋度(質量%)=100×(B/A)
【0022】
(ポリオレフィン系樹脂)
本発明の樹脂発泡シートは、樹脂成分として、ポリオレフィン系樹脂を使用したポリオレフィン系樹脂発泡シートであることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂を使用することで、アスカーC硬度を低くして、圧縮6時間後及び12時間後の圧縮応力を所定値以下に調整しやすくなる。また、圧縮強度及び引張強度なども所望の範囲内に調整しやすくなる。
ポリオレフィン系樹脂発泡シートにおいて、ポリオレフィン系樹脂は、主成分となるものであり、通常、樹脂発泡シート全量基準で、50質量%以上含有され、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80~100質量%含有される。
【0023】
樹脂発泡シートに使用されるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはこれらの混合物が挙げられ、これらの中ではポリエチレン系樹脂が好ましい。より具体的には、チーグラー・ナッタ化合物、メタロセン化合物、酸化クロム化合物等の重合触媒で重合されたポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物が挙げられ、これらの中では、メタロセン化合物の重合触媒で重合されたポリエチレン系樹脂が好ましい。
ポリエチレン系樹脂は、エチレン単独重合体でもよいが、エチレンと必要に応じて少量(例えば、全モノマーの30質量%以下、好ましくは1~10質量%)のα-オレフィンとを共重合することにより得られるポリエチレン系樹脂が好ましく、その中でも、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
メタロセン化合物の重合触媒により得られた、ポリエチレン系樹脂、特に直鎖状低密度ポリエチレンを用いることにより、アスカーC硬度を低くして、圧縮6時間後、及び12時間後の圧縮応力を所定の範囲内に調整しやすくなる。さらには、圧縮強度及び引張強度なども所望の範囲内に調整しやすくなる。また、樹脂発泡シートを薄くても高い性能を維持しやすくなる。
ポリエチレン系樹脂を構成するα-オレフィンとして、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、及び1-オクテン等が挙げられる。なかでも、炭素数4~10のα-オレフィンが好ましい。
また、ポリエチレン系樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体も好ましく用いられる。エチレン-酢酸ビニル共重合体は、通常、エチレン単位を50質量%以上含有する共重合体である。エチレン-酢酸ビニル共重合体を用いる場合、直鎖状低密度ポリエチレン、特にメタロセン化合物の重合触媒により得られた直鎖状低密度ポリエチレンと併用することが好ましい。
メタロセン化合物の重合触媒により得られたポリエチレン系樹脂は、樹脂発泡シートにおいて樹脂全量に対して好ましくは50質量%以上含有され、さらに好ましくは70質量%以上、最も好ましくは100質量%含有される。
【0024】
また、ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン単位を50質量%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プロピレン-α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等が挙げられ、これらの中では、炭素数6~12のα-オレフィンが好ましい。
【0025】
<メタロセン化合物>
好適なメタロセン化合物としては、遷移金属をπ電子系の不飽和化合物で挟んだ構造を有するビス(シクロペンタジエニル)金属錯体等の化合物が挙げられる。より具体的には、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、及び白金等の四価の遷移金属に、1又は2以上のシクロペンタジエニル環又はその類縁体がリガンド(配位子)として存在する化合物が挙げられる。
このようなメタロセン化合物は、活性点の性質が均一であり各活性点が同じ活性度を備えている。メタロセン化合物を用いて合成した重合体は、分子量、分子量分布、組成、組成分布等の均一性が高くなるため、メタロセン化合物を用いて合成した重合体を含むシートを架橋した場合には、架橋が均一に進行する。均一に架橋されたシートは、均一に延伸しやすくなるため、架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートの厚さを均一にしやすくなり、厚さが薄くても高い性能を維持しやすくなる。
【0026】
リガンドとしては、例えば、シクロペンタジエニル環、インデニル環等が挙げられる。これらの環式化合物は、炭化水素基、置換炭化水素基又は炭化水素-置換メタロイド基により置換されていてもよい。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種アミル基、各種ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種セチル基、フェニル基等が挙げられる。なお、「各種」とは、n-、sec-、tert-、iso-を含む各種異性体を意味する。
また、環式化合物をオリゴマーとして重合したものをリガンドとして用いてもよい。
更に、π電子系の不飽和化合物以外にも、塩素や臭素等の一価のアニオンリガンド又は二価のアニオンキレートリガンド、炭化水素、アルコキシド、アリールアミド、アリールオキシド、アミド、アリールアミド、ホスフィド、アリールホスフィド等を用いてもよい。
【0027】
四価の遷移金属やリガンドを含むメタロセン化合物としては、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル-t-ブチルアミドジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
メタロセン化合物は、特定の共触媒(助触媒)と組み合わせることにより、各種オレフィンの重合の際に触媒としての作用を発揮する。具体的な共触媒としては、メチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素系化合物等が挙げられる。なお、メタロセン化合物に対する共触媒の使用割合は、10~100万モル倍が好ましく、50~5,000モル倍がより好ましい。
【0028】
上記ポリエチレン系樹脂は、樹脂発泡シートの圧縮6時間後及び12時間後の圧縮応力、圧縮強度、並びに引張強度を所望の範囲に調整しやすくするために、低密度であることが好ましい。上記ポリエチレン系樹脂の密度は、具体的には、0.920g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.880~0.915g/cm3、特に好ましくは0.885~0.910g/cm3である。なお、密度はASTM D1505に準拠して測定したものである。
【0029】
また、樹脂発泡シートに使用される樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を使用する場合、ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂と併用してもよい。そのような樹脂成分は、ゴム、エラストマー成分などであってもよい。ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂成分の含有量は、ポリオレフィン系樹脂よりも含有量が少なく、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは30質量部以下程度である。
【0030】
(熱分解型発泡剤)
本発明の樹脂発泡シートは、上記樹脂成分に加えて、熱分解型発泡剤を含む発泡性樹脂組成物を発泡してなることが好ましい。
熱分解型発泡剤としては、有機発泡剤、無機発泡剤が使用可能である。有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
無機系発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミドが特に好ましい。これらの熱分解型発泡剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。
発泡性組成物における熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは1~15質量部、より好ましくは1~12質量部、さらに好ましくは1.5~5質量部である。
【0031】
また、発泡性樹脂組成物は、上記樹脂成分と熱分解型発泡剤に加えて、気泡核調整剤を含有してもよい。気泡核調整剤としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の亜鉛化合物、クエン酸、尿素の有機化合物等が挙げられるが、これらの中では、酸化亜鉛がより好ましい。気泡核調整剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.4~8質量部、より好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは0.8~2.5質量部である。気泡核調整剤を配合することで、微細気泡の気泡径のばらつきを抑えることが可能になる。
発泡性樹脂組成物は、必要に応じて、上記以外にも、酸化防止剤、架橋助剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等の発泡体に一般的に使用する添加剤を含有していてもよい。
【0032】
[樹脂発泡シートの製造方法]
本発明の樹脂発泡シートは、例えば、樹脂及び熱分解型発泡剤を含む発泡性樹脂組成物を架橋し、加熱して熱分解型発泡剤を発泡させ、かつTD及びMDの両方に延伸することで製造することができる。
その製造方法は、より具体的には、以下の工程(1)~(4)を含む。
工程(1):樹脂、熱分解型発泡剤、及び必要に応じて配合されるその他の添加剤を混合して、シート状の発泡性樹脂組成物(樹脂シート)に成形する工程
工程(2):シート状の発泡性樹脂組成物に電離性放射線を照射して発泡性樹脂組成物を架橋させる工程
工程(3):架橋させた発泡性樹脂組成物を加熱し、熱分解型発泡剤を発泡させて、発泡シートを得る工程
工程(4):MD及びTDの両方に延伸させて発泡シートを延伸する工程
【0033】
工程(1)において、樹脂シートを成形する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂、熱分解型発泡剤、及びその他必要に応じて配合される添加剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機から発泡性樹脂組成物をシート状に押出すことによって樹脂シートを成形すればよい。
工程(2)において発泡性樹脂組成物を架橋する方法としては、樹脂シートに電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を照射する方法を用いる。上記電離性放射線の照射量は、得られる発泡シートの架橋度が上記した所望の範囲となるように調整すればよいが、3.5~13Mradであることが好ましく、4~8Mradであることがより好ましい。また、これら電離性放射線の加速電圧は、特に限定されないが、例えば、400~800kVであることが好ましい。
工程(3)において、発泡性樹脂組成物を加熱し熱分解型発泡剤を発泡させるときの加熱温度は、熱分解型発泡剤の発泡温度以上であればよいが、好ましくは200~300℃、より好ましくは220~280℃である。
【0034】
工程(4)における発泡シートの延伸は、MD及びTDの両方に行う。発泡シートの延伸は、樹脂シートを発泡させて発泡シートを得た後に行ってもよいし、樹脂シートを発泡させつつ行ってもよい。なお、樹脂シートを発泡させて発泡シートを得た後、発泡シートを延伸する場合には、発泡シートを冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて発泡シートを延伸してもよく、発泡シートを冷却した後、再度、発泡シートを加熱して溶融又は軟化状態とした上で発泡シートを延伸してもよい。発泡シートは延伸することで薄厚にしやすくなる。
【0035】
工程(4)において、発泡シートのMD及びTDへの延伸倍率は、いずれも180%以上が好ましく、200%以上がより好ましく、220%以上がさらに好ましい。本製造方法では、MD及びTD両方の延伸倍率を高くすることで、樹脂発泡シートの表面が柔軟となる。そのため、上記下限値以上とすると、アスカーC硬度が低くなり、圧縮6時間後及び12時間後の圧縮応力を低くしやすくなる。MD及びTDへの延伸倍率は、いずれも400%以下が好ましく、350%以下がより好ましく、300%以下がさらに好ましい。延伸倍率は、これら上限値以下とすると、発泡シートが延伸中に破断したり、発泡中の発泡シートから発泡ガスが抜けて発泡倍率が著しく低下したりすることが防止される。また、延伸時に発泡シートは、例えば100~280℃、好ましくは150~260℃に加熱すればよい。なお、延伸倍率は、元の長さを100%として、延伸後の発泡シートの長さを%で示す。
【0036】
ただし、樹脂発泡シートの製造方法は、上記に限定されずに、上記以外の方法により、樹脂発泡シートを得てもよい。例えば、電離性放射線を照射する代わりに、発泡性樹脂組成物に予め有機過酸化物を配合しておき、発泡性樹脂組成物を加熱して有機過酸化物を分解させる方法等により架橋を行ってもよい。
【0037】
[粘着テープ]
本発明の樹脂発泡シートは、樹脂発泡シートを基材とする粘着テープに使用してもよい。粘着テープは、例えば、樹脂発泡シートと、樹脂発泡シートの少なくともいずれか一方の面に設けた粘着材とを備えるものである。粘着テープは、粘着材を介して他の部材に接着することが可能になる。粘着テープは、樹脂発泡シートの両面に粘着材を設けたものでもよいし、片面に粘着材を設けたものでもよい。
また、粘着材は、少なくとも粘着剤層を備えるものであればよく、樹脂発泡シートの表面に積層された粘着剤層単体であってもよいし、樹脂発泡シートの表面に貼付された両面粘着シートであってもよいが、粘着剤層単体であることが好ましい。なお、両面粘着シートは、基材と、基材の両面に設けられた粘着剤層とを備えるものである。両面粘着シートは、一方の粘着剤層を樹脂発泡シートに接着させるとともに、他方の粘着剤層を他の部材に接着させるために使用する。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を用いることができる。また、粘着材の上には、さらに離型紙等の剥離シートが貼り合わされてもよい。
粘着材の厚さは、5~200μmであることが好ましく、より好ましくは7~150μmであり、更に好ましくは10~100μmである。
【0038】
[樹脂発泡シートの使用方法]
本発明の樹脂発泡シートは、具体的には、液晶パネル等の表示パネルの衝撃吸収材として使用される。表示パネルの衝撃吸収材は、表示パネルの背面側に配置され、表示パネルに作用される衝撃を吸収して、表示パネルの破損、故障を防止する。また、本発明の樹脂発泡シートは、表示パネルの背面側に配置されることで、表示パネルにおけるプーリングの発生を防止する。
【0039】
樹脂発泡シートは、例えば、表示装置に組み込まれて使用される。したがって、表示装置は、例えば、支持部材の上に配置された本発明の樹脂発泡シートと、その樹脂発泡シートの上に配置された表示パネルとを備える。なお、支持部材は、例えば、各種携帯装置の筺体等の一部を構成するものである。また、支持部材と樹脂発泡シートの間や、樹脂発泡シートと表示パネルの間には、樹脂フィルム等の他のシート部材が配置されていてもよい。
表示装置に使用される樹脂発泡シートは、上記したように粘着材が設けられた粘着テープとされてもよく、粘着材によって表示パネル、支持部材、又は他の樹脂フィルムに貼り合わせられてもよい。
本発明において、発泡シートが使用される表示パネルは、タッチパネルであることが好ましい。タッチパネルの表面は、高速で繰り返し押圧されるが、樹脂発泡シートがプーリングの発生を抑制するので、表示装置の表示性能が改善される。
【実施例
【0040】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0041】
なお、本明細書における各種物性、評価方法は、以下のとおりである。
<厚み>
JIS K6767の方法に従って測定した。
<見掛け密度>
JIS K6767の方法に従って測定した。
<発泡倍率>
見掛け密度の逆数を発泡倍率とした。
<アスカーC硬度>
JIS K 7312の方法に従って測定した。なお、アスカーC硬度が樹脂発泡シートの両面で異なる場合、平均値を樹脂発泡シートの表面のアスカー硬度とする。
<独立気泡率>
独立気泡率は、明細書記載の方法で測定した。
<架橋度>
架橋度は、明細書記載の方法で測定したものである。
<25%、50%圧縮強度>
JIS K6767の方法に従って測定した。
<引張強度>
JIS K6767の方法に従って測定した。
【0042】
<圧縮6時間後及び12時間後の圧縮応力>
樹脂発泡シートを50mm四方にカットし、10枚重ねて、初期厚みに対して75%の厚みとなるように25%圧縮した状態にして、6時間後、12時間後の応力を測定した。応力測定は、引張・圧縮試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、製品名「TENSILON」、モデル「RTG-1250」)により、5000Nのロードセルを用い、初期加重10Nの設定で行った。
【0043】
<平均気泡径>
樹脂発泡シートをMD及びTDそれぞれに沿って厚さ方向に切断して、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、製品名「VHX-900」)を用いて200倍の拡大写真を撮影した。撮影した拡大写真において、MD、TDそれぞれにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡についてMD,ZDの気泡径、及びTD,ZDの気泡径を測定し、その操作を5回繰り返した。そして、全ての気泡のMD、TDそれぞれの気泡径の平均値をMD、TDの平均気泡径とするとともに、以上の操作によって測定された全てのZDの気泡径の平均値をZDの平均気泡径とした。
【0044】
<衝撃吸収率>
樹脂発泡シートを50mm四方にカットし、アクリル板の上に置いたうえで、4.3gの鉄球を30cmの高さから落とし、アクリル板に作用される衝撃を測定した。その後、樹脂発泡シートを除き、同様に鉄球を落とし、アクリル板に作用される衝撃をブランクとして測定し、以下の式により、樹脂発泡シートの衝撃吸収率を算出した。
衝撃吸収率(%)=(ブランクの衝撃-樹脂発泡シートを置いたときの衝撃)÷ブランクの衝撃×100
【0045】
<耐プーリング性>
50mm×70mmにカットした樹脂発泡シートの上に、4.7インチの液晶パネルを配置させ、液晶パネルの表面を押し棒で10Nの力で押した。プーリングが抑えられ、かつプーリングの消失速度の速いもの“A”とし、プーリングが抑えられないが消失速度が速いものを“B”とし、プーリングが抑えられず、消失速度も遅いものを“C”とした。
【0046】
実施例、及び比較例では、以下の成分を使用した。
ポリエチレン系樹脂(1):メタロセン化合物を用いて得られた直鎖状低密度ポリエチレン[エクソン・ケミカル社製、商品名.EXACT3027、密度0.900g/cm3
ポリエチレン系樹脂(2):日本ポリエチレン株式会社製、商品名.カーネルKF370
熱分解型発泡剤:アゾジカルボンアミド
酸化防止剤:2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール
気泡核調整剤:酸化亜鉛
【0047】
[実施例1]
ポリエチレン系樹脂(1)100質量部と、熱分解型発泡剤4質量部と、酸化防止剤0.3質量部と、気泡核調整剤1質量部とを押出機に供給して130℃で溶融混練し、厚み約0.2mmの樹脂シートとして押出した。次に、樹脂シートを、その両面に加速電圧500kVの電子線を5Mrad照射して架橋した後、熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱させて発泡させた。発泡シートは、発泡させながらMDの延伸倍率230%、TDの延伸倍率230%で延伸させ、厚み0.15mmで架橋度25%の樹脂発泡シートを得た。得られた発泡シートの評価結果を表1に示す。
【0048】
[実施例2]
表1に示す気泡径となるように延伸倍率を調整した点以外は、実施例1と同様に実施した。
[実施例3]
直鎖状低密度ポリエチレン(ポリエチレン系樹脂(1))を、ポリエチレン系樹脂(2)(「カーネルFK370」)として配合量を30質量部に変更するとともに、ポリオレフィン系樹脂としてエチレン-酢酸ビニル共重合体(東ソー株式会社製「ウルトラセン636」、酢酸ビニル含有率19質量%)を70質量部さらに配合した。また、表1に示す気泡径となるように延伸倍率を調整した点以外は、実施例1と同様に実施した。
[比較例1,2]
表1に示すとおりに、熱分解型発泡剤の質量部を調整し、かつ表2に記載の架橋度となるように電子線の照射量を調整した。また、表1に記載される気泡径となるように、MD及びTDの延伸倍率がいずれも180%未満となるようにした点以外は、実施例1と同様に実施した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、実施例1、2、3では、圧縮6時間後、及び12時間後の圧縮応力を規定値以下とすることで、衝撃吸収性を良好にしつつ、耐プーリング特性を優れたものにすることができた。それに対して、比較例1、2では、圧縮6時間後又は12時間後の圧縮応力が規定値を越えたため、衝撃吸収性を良好にしつつ、耐プーリング特性を優れたものにすることができなかった。