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特許7492317通信装置、無線通信システムおよびアクセスポイントの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】通信装置、無線通信システムおよびアクセスポイントの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/16 20090101AFI20240522BHJP
   H04W 28/06 20090101ALI20240522BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20240522BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20240522BHJP
   H04B 7/024 20170101ALI20240522BHJP
【FI】
H04W28/16
H04W28/06 110
H04W92/20 110
H04W84/12
H04B7/024
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019084435
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020182126
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯川 光彬
【審査官】吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/074919(WO,A1)
【文献】Kiseon Ryu (LG Electronics),Consideration on multi-AP coordination for EHT, IEEE 802.11-18/1982r1 ,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/18/11-18-1982-01-0eht-consideration-on-multi-ap-coordination-for-eht.pptx>,2019年01月09日
【文献】Abhishek Patil (Qualcomm),Resolutions to CIDs in 9.2.1.23 (part 1), IEEE 802.11-18/0065r3 ,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/18/11-18-0065-03-00ax-resolutions-to-cids-in-9-2-1-23-part-1.docx>,2018年01月07日
【文献】Sungjin Park (LG Electronics),Multi-AP Transmission Procedure, IEEE 802.11-19/0448r1 ,IEEE, インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/19/11-19-0448-01-0eht-multi-ap-transmission-procedure.pptx>,2019年03月11日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
H04B 7/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スレーブとして動作する1つ以上の他のアクセスポイントと1つ以上のステーションとを含む無線ネットワークにおいてマスターのアクセスポイントとして動作する通信装置であって、
IEEE802.11axに規定されたトリガーフレームであって、前記他のアクセスポイントとの協調送信の指示を示すTrigger typeサブフィールド値前記協調送信に参加する他のアクセスポイントに割り当てるリソースを示す記述とを含むトリガーフレームを生成する生成手段と、
前記トリガーフレームを前記他のアクセスポイントに送信する送信手段と、
前記トリガーフレームを送信した他のアクセスポイントと協働して前記協調送信を実行する実行手段と、を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記送信手段は、前記1つ以上の他のアクセスポイントのうち、前記協調送信に参加することを通知してきたアクセスポイントに対して、前記トリガーフレームを送信することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信装置に接続されているステーションと他のアクセスポイントにNDPA(null data packet announcement)を送信した後、前記1つ以上の他のアクセスポイントの各々から、協調送信に参加するか否かの通知を受信することを特徴とする請求項またはに記載の通信装置。
【請求項4】
前記トリガーフレームにおいて、前記Trigger Type Subfieldは、Common Infoフィールドに含まれることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記Trigger Type Subfield値は、前記Common Infoフィールドが有する4ビットのTrigger typeサブフィールドにより表される、ことを特徴とする請求項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記トリガーフレームにおいて、前記協調送信に参加する他のアクセスポイントに割り当てるリソースを示す記述は、User Infoフィールドに含まれることを特徴とする請求項またはに記載の通信装置。
【請求項7】
マスターとして動作する他のアクセスポイントと1つ以上のステーションとを含む無線ネットワークにおいて、スレーブのアクセスポイントとして動作する通信装置であって、
マスターとして動作する前記他のアクセスポイントから、IEEE802.11axに規定されたトリガーフレームであって、前記他のアクセスポイントとの協調送信の指示を示すTrigger typeサブフィールド値と、前記協調送信に参加するアクセスポイントに割り当てるリソースを示す記述とを含むトリガーフレームを受信する受信手段と、
受信した前記トリガーフレームに基づいて、前記他のアクセスポイントと協働して、前記1つ以上のステーションに対する協調送信を実行する実行手段と、を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項8】
前記トリガーフレームにおいて、Common Infoフィールドが前記協調送信を示す値を有している、ことを特徴とする請求項に記載の通信装置。
【請求項9】
前記1つ以上のステーションとの間のチャネル状態情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得されたチャネル状態に基づいて協調送信に参加するか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段の判断結果を前記マスターとして動作する他のアクセスポイントへ送信する送信手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項またはに記載の通信装置。
【請求項10】
前記取得手段は、マスターとして動作する前記他のアクセスポイントからNDPAを受信した後に、前記1つ以上のステーションから受信したNDPに基づいてチャネル状態情報を取得することを特徴とする請求項に記載の通信装置。
【請求項11】
複数のアクセスポイントと1つ以上のステーションが無線ネットワークを構成する無線通信システムであって、前記複数のアクセスポイントのうちの1つのアクセスポイントがマスターとして、他のアクセスポイントがスレーブとして動作し、
IEEE802.11axに規定されたトリガーフレームであって、前記他のアクセスポイントとの協調送信の指示を示すTrigger typeサブフィールド値前記協調送信に参加する他のアクセスポイントに割り当てるリソースを示す記述とを含むトリガーフレームを生成する生成手段と、
前記マスターとして動作するアクセスポイントから前記スレーブとして動作するアクセスポイントに前記トリガーフレームを送信する送信手段と、
前記マスターとして動作するアクセスポイントと前記トリガーフレームを受信した前記スレーブとして動作するアクセスポイントとの協働による、前記1つ以上のステーションに対する前記協調送信を実行する実行手段と、を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項12】
スレーブとして動作する1つ以上の他のアクセスポイントと1つ以上のステーションとを含む無線ネットワークを構成し、マスターとして動作するアクセスポイントの制御方法であって、
IEEE802.11axに規定されたトリガーフレームであって、前記他のアクセスポイントとの協調送信の指示を示すTrigger typeサブフィールド値前記協調送信に参加する他のアクセスポイントに割り当てるリソースを示す記述とを含むトリガーフレームを生成する生成工程と、
前記トリガーフレームを前記他のアクセスポイントに送信する送信工程と、
前記トリガーフレームを送信した他のアクセスポイントと協働して前記協調送信を実行する実行工程と、を備えることを特徴とするアクセスポイントの制御方法。
【請求項13】
マスターとして動作する他のアクセスポイントおよび1つ以上のステーションと通信する無線ネットワークを構成し、スレーブとして動作するアクセスポイントの制御方法であって、
マスターとして動作する前記他のアクセスポイントから、IEEE802.11axに規定されたトリガーフレームであって、前記他のアクセスポイントとの協調送信の指示を示すTrigger typeサブフィールド値と、前記協調送信に参加するアクセスポイントに割り当てるリソースを示す記述とを含むトリガーフレームを受信する受信工程と、
受信した前記トリガーフレームに基づいて、前記他のアクセスポイントと協働して、前記1つ以上のステーションに対する協調送信を実行する実行工程と、を備えることを特徴とするアクセスポイントの制御方法。
【請求項14】
コンピュータを、請求項1乃至10のいずれか1項に記載された通信装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、無線通信システム、アクセスポイントの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信技術の発展とともにインターネット使用量が年々増加しており、需要の増加に応えるべく様々な通信技術の開発が進められている。中でもワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)技術では、携帯端末機によるパケットデータ、音声、ビデオなどのインターネット通信におけるスループット向上が実現されており、現在も様々な技術開発が盛んに行われている。
【0003】
WLAN技術の発展において、通信技術の標準化機構であるIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802による数多くの標準化作業が重要な役割を果たしている。標準WLAN通信規格の一つとしてIEEE802.11規格が知られており、IEEE802.11a/b/g/n/acまたはIEEE802.11axなどの規格がある。例えば最新規格である802.11axではOFDMAにより最大9.6ギガビット毎秒(Gbps)という高いピークスループットに加え、混雑状況下での通信速度向上が実現されている(特許文献1)。なお、OFDMAは、Orthogonal frequency-division multiple accessの略である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-050133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年さらなるスループット向上や周波数利用効率の改善を目指した後継規格として、IEEE802.11 EHT(extremely high throughput)と呼ばれるStudy Groupによる検討が進行中である。この中で、IEEE802.11beというtask groupが発足した。IEEE802.11beではスループットや周波数利用効率のさらなる向上のために複数のAP(access point)を協調動作させる技術が検討されている。
【0006】
協調動作の例として、例えば、複数の送信および受信アンテナを同時刻、同チャンネルで使用するMIMO(multi-input multi-output)と呼ばれる技術を基礎とした分散MIMO技術が挙げられる。分散MIMOでは、複数のアクセスポイント(以下、AP)と複数のステーション(以下、STA)が存在している環境において、複数のAP間で通信状態や各APの状態についての情報が共有され、同じタイミングでAPからSTAにデータが送られる。このように複数のAPが協調による同期送信をすることで単一APの場合と比べて空間ストリーム数を増やすことができるため、スループットの向上が期待される。
【0007】
協調動作の他の例として、協調ビームフォーミングと呼ばれる技術が挙げられる。協調ビームフォーミングでは、APがBSS(basic service set)中にあるSTAにデータ送信する際に、データを送信したいSTAの方向のアンテナゲインが大きく、かつ他のAPのBSS中にあるSTAの方向のアンテナゲインが低くなるアンテナパターンが用いられる。複数のAP間で、STAの位置などの環境情報に基づいてアンテナパターンの設定、スケジューリングを行うことで、BSS間干渉を低減することができる。
【0008】
上述のような複数のアクセスポイントによる協調動作下での同期したデータ送信および/または協調ビームフォーミングによるデータ送信を、協調送信という。上記のような複数のAPの協調送信においては、他のAPを管理する1台のマスターAPと、マスターAPの管理下で動作するスレーブAPとに複数のAPを分類することが考えられる。例えば、マスターAPがスレーブAPに対してトリガーフレームを送信することにより、複数のAPによるトリガーフレーム受信タイミングに基づいて協調送信を実現できると考えられる。しかしながら、複数のAPによる協調送信を行うためにAP間で送受信されるトリガーフレームフォーマットは存在しない。
【0009】
本発明は、マスターアクセスポイントからスレーブアクセスポイントへ、協調送信のための情報を、トリガーフレームを用いて通知する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による通信装置は以下の構成を備える。すなわち、
スレーブとして動作する1つ以上の他のアクセスポイントと1つ以上のステーションとを含む無線ネットワークにおいてマスターのアクセスポイントとして動作する通信装置であって、
IEEE802.11axに規定されたトリガーフレームであって、前記他のアクセスポイントとの協調送信の指示を示すTrigger typeサブフィールド値前記協調送信に参加する他のアクセスポイントに割り当てるリソースを示す記述とを含むトリガーフレームを生成する生成手段と、
前記トリガーフレームを前記他のアクセスポイントに送信する送信手段と、
前記トリガーフレームを送信した他のアクセスポイントと協働して前記協調送信を実行する実行手段と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マスターアクセスポイントからスレーブアクセスポイントへ、協調送信のための情報を、トリガーフレームを用いて通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態による無線通信システムの構成例を示す図。
図2】実施形態による通信装置のハードウェア構成を示す図。
図3】実施形態で使われるトリガーフレームのフォーマットを示した図。
図4】APがSTAにデータを協調送信するまでの動作を示すフローチャート。
図5】実施形態による無線通信システムにおける、協調送信の実行までの動作を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る通信装置104が参加するネットワークの構成例を示す図である。通信装置107、通信装置108は、無線ネットワーク101、102、103に参加する役割を有するステーション(STA)である。通信装置104は、無線ネットワーク101を構築する役割を有するアクセスポイント(AP)であり、通信装置105は、無線ネットワーク102を構築する役割を有するAP、通信装置106は、無線ネットワーク103を構築する役割を有するAPである。通信装置104~106は協調送信を行うことができる。なお、本実施形態において、通信装置104はマスターAPとして機能し、スレーブAPである通信装置105、106を制御することができる。
【0015】
通信装置104~108の各々は、IEEE802.11be規格に対応しており、無線ネットワーク101、102、103を介してIEEE802.11be規格に準拠した無線通信を実行することができる。なお、IEEEはInstitute of Electrical and Electronics Engineersの略である。通信装置104~108は、2.4GHz帯、5GHz帯、および6GHz帯の周波数帯域において通信することができる。また、通信装置104~108は、20MHz、40MHz、80MHz、160MHz、および320MHzの帯域幅を使用して通信することができる。
【0016】
通信装置104~108は、IEEE802.11be規格に準拠したOFDMA通信を実行することで、複数のユーザの信号を多重する、マルチユーザ(MU、Multi User)通信を実現することができる。OFDMAは、Orthogonal Frequency Division Multiple Access(直交周波数分割多元接続)の略である。OFDMA通信では、分割された周波数帯域の一部(RU、Resource Unit)が各STAに夫々重ならないように割り当てられ、各STAの搬送波が直交する。そのため、APは複数のSTAと並行して通信することができる。
【0017】
なお、通信装置104~108は、IEEE802.11be規格に対応するとしたが、これに加えて、IEEE802.11be規格より前の規格であるレガシー規格に対応していてもよい。具体的には、通信装置104~108は、IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax規格の少なくとも何れか一つに対応していてもよい。また、IEEE802.11シリーズ規格に加えて、Bluetooth(登録商標)、NFC、UWB、ZigBee、MBOAなどの他の通信規格に対応していてもよい。なお、UWBはUltra Wide Bandの略であり、MBOAはMulti Band OFDM Allianceの略である。また、NFCはNear Field Communicationの略である。UWBには、ワイヤレスUSB、ワイヤレス1394、WiNETなどが含まれる。また、有線LANなどの有線通信の通信規格に対応していてもよい。
【0018】
通信装置104~106の具体例としては、無線LANルーターやパーソナルコンピュータ(PC)などが挙げられるが、これらに限定されない。また、通信装置104~106は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信を実行することができる無線チップなどの情報処理装置であってもよい。また、通信装置107~108の具体的な例としては、カメラ、タブレット、スマートフォン、PC、携帯電話、ビデオカメラなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、通信装置107~108は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信を実行することができる無線チップなどの情報処理装置であってもよい。また、図1の無線ネットワークは3台のAPと2台のSTAによって構成されているが、APおよびSTAの台数はこれに限定されない。
【0019】
図2に、本実施形態による通信装置104のハードウェア構成例を示す。通信装置104は、記憶部201、制御部202、機能部203、入力部204、出力部205、通信部206、およびアンテナ207を備える。なお、通信装置105~106も通信装置104と同様のハードウェア構成を備える。
【0020】
記憶部201はROMやRAM等のメモリにより構成され、後述する各種動作を行うためのコンピュータプログラムや、無線通信のための通信パラメータ等の各種情報を記憶する。ROMはRead Only Memoryの、RAMはRandom Access Memoryの夫々略である。なお、記憶部201として、ROM、RAM等のメモリの他に、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、DVDなどの記憶媒体を用いてもよい。また、記憶部201が複数のメモリ等を備えていてもよい。
【0021】
制御部202は、例えばCPUやMPU等の1つ以上のプロセッサにより構成され、記憶部201に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、通信装置104の全体を制御する。CPUはCentral Processing Unitの略であり、MPUは、Micro Processing Unitの略である。なお、制御部202は、記憶部201に記憶されたコンピュータプログラムとOS(Operating System)との協働により、通信装置104の全体を制御するようにしてもよい。また、制御部202は、他の通信装置との通信において送信するデータや信号を生成する。また、制御部202がマルチコア等の複数のプロセッサを備え、複数のプロセッサにより通信装置104全体を制御するようにしてもよい。また、制御部202は、機能部203を制御して、無線通信や、撮像、印刷、投影等の所定の処理を実行する。機能部203は、通信装置104が所定の処理を実行するためのハードウェアである。
【0022】
入力部204は、ユーザからの各種操作の受付を行う。出力部205は、モニタ画面やスピーカーを介して、ユーザに対して各種出力を行う。ここで、出力部205による出力とは、モニタ画面上への表示や、スピーカーによる音声出力、振動出力などであってもよい。なお、タッチパネルのように入力部204と出力部205の両方を1つのモジュールで実現するようにしてもよい。また、入力部204および出力部205は、夫々通信装置104と一体であってもよいし、別体であってもよい。
【0023】
通信部206は、IEEE802.11be規格に準拠した無線通信の制御を行う。また、通信部206は、IEEE802.11be規格に加えて、他のIEEE802.11シリーズ規格に準拠した無線通信の制御や、有線LAN等の有線通信の制御を行ってもよい。通信部206は、アンテナ207を制御して、制御部202によって生成された無線通信のための無線信号の送受信を行う。
【0024】
なお、通信装置104が、IEEE802.11be規格に加えて、NFC規格やBluetooth規格等に対応している場合、これらの通信規格に準拠した無線通信の制御を行ってもよい。また、通信装置104が複数の通信規格に準拠した無線通信を実行できる場合、夫々の通信規格に対応した通信部206とアンテナ207を個別に有する構成であってもよい。通信装置104は通信部206を介して、画像データや文書データ、映像データ等のデータを通信装置107、108と通信する。
【0025】
図1の無線ネットワークにおいてマスターAPの役割を有する通信装置104は、スレーブAPの役割を有する通信装置105~106を制御するために、トリガーフレームを、制御部202を介して通信部206より送信する。通信装置104は、スレーブAPである通信装置105~106からの返答信号を受信した場合に、制御部202においてそれを解釈することができる。一方、通信装置105~106では、通信装置104から送信されたトリガーフレームが受信され、制御部202において解釈される。通信装置105~106は、そのトリガーフレームに対する返答を通信部206より送信することができる。
【0026】
図3に、本実施形態におけるマスターAPである通信装置104がスレーブAPである通信装置105~106に対して送信する、協調送信を指示するためのトリガーフレームのフォーマットを示す図である。このトリガーフレームは、複数のAPの協調動作によりSTA(通信装置107~108)へのデータの送信(協調送信)が実行される前に、マスターAPからスレーブAPへ送信される。図3において、301~312に示すフィールド/サブフィールドはIEEE802.11axに規定されたフォーマットに準ずる。すなわち、先頭から、Frame Controlフィールド301、Durationフィールド302、RAフィールド303、TAフィールド304、Common Infoフィールド305、User Infoフィールド306、Paddingフィールド307、FCSフィールド308を含む。Common Infoフィールド305における4ビットのTrigger Typeサブフィールド309は、当該トリガーフレームによるトリガの種類を指定する。通常のトリガーフレームの場合、Trigger Typeサブフィールド309は0を示す。また、Common Infoフィールド305におけるLengthサブフィールド310は、全STA共通の通信期間を表す。当該通信期間は、各STAが送受信できるデータ量に対応する。Trigger Typeサブフィールド309が0の場合、User Infoフィールド306が追加される。Trigger typeサブフィールド値とトリガの種類の対応を表1に例示する。
【0027】
【表1】
【0028】
本実施形態では、Trigger typeサブフィールド値が8のときに、トリガーフレームがAP協調送信トリガーフレームとして扱われる。すなわち、マスターAPである通信装置104は、アクセスポイントとの協調送信の指示を示すTrigger typeサブフィールド値(=8)を含むトリガーフレームを生成する。User Infoフィールド306はそれぞれのスレーブAPに対応するフィールドであり、スレーブAPの数だけUser Infoフィールド306が連結して送信される。User Infoフィールド306中にはAID(association ID)311が存在し、スレーブAPは事前にマスターAPと認証時に付与されたAIDと一致するUser Infoフィールドの内容を解釈する。また、User Infoフィールド306中のRU Allocationサブフィールド312は、対応するAPのRU(リソースユニット)およびtoneサイズを特定する。
【0029】
図4は、本実施形態によるAPからSTAへの協調送信を開始するまでのマスターAPとスレーブAPの処理を示すフローチャートである。また、図5は、本実施形態の無線通信システムにおける、協調送信を実行するまでの動作例を示すシーケンス図である。以下、通信装置104をマスターAP、通信装置105~106をスレーブAP、通信装置107~108をSTAと称する。また、図4のフローチャートに示されるマスターAPとスレーブAPの処理の各ステップは、それぞれの通信装置の制御部202により実行される。
【0030】
マスターAPが、1つ以上のスレーブAPと、マスターAPに接続している1つ以上のSTAとに対してNDPA(null data packet announcement)を送信する(S401、501)。複数のSTAのそれぞれは、NDPAを受信すると、NDP(null data packet)をスレーブAPに対して送信する(502)。スレーブAPは、マスターAPからNDPAを受信すると(S421)、STAからのNDPを待ち、受信する(S422)。スレーブAPは、STAから受信されたNDPに基づいてチャネル状態情報(CSI:channel state Information)を取得する(S423)。そして、スレーブAPは、各STAについて取得したCSIに基づいて、協調送信に参加するかどうかを判断し(S424,503a、503b)、その判断結果をマスターAPに通知する(S424、504a、504b)。例えば、スレーブAPは、取得したCSIの平均値が所定値以上の場合に協調送信に参加すると判断するようにしてもよい。或いは、スレーブAPは、取得したすべてのCSIの値が、所定値以上であることを協調送信の参加の条件としてもよい。
【0031】
マスターAPは、1つ以上のスレーブAPのそれぞれから協調送信に参加するか否かの通知を受信することにより、協調送信に参加するスレーブAPを収集する(S402、505)。マスターAPは、協調送信に参加するスレーブAPをUser Infoとして記述した、協調送信のためのトリガーフレーム(図3)を生成する(S403、506)。このトリガーフレーム中のTrigger typeサブフィールドは、上述したように8である。マスターAPは、生成したトリガーフレームを、協調送信に参加するスレーブAPに対して送信する(S404、507)。その後、トリガーフレームを送信したスレーブAPとともに、STAに対する協調送信を実行する(S405、508)。
【0032】
スレーブAPは、S424で協調送信に参加すると判断し、協調送信に参加する旨をマスターAPに通知した場合(504a、S425でYES)、マスターAPからトリガーフレームを受信するのを待つ(S426)。スレーブAPは、トリガーフレームを受信すると、トリガーフレームに含まれる情報を解釈し、STAに対して協調送信を行う(S426、508)。一方、S424で協調送信に参加しないと判断し、協調送信に参加しない旨をマスターAPに通知した場合(504b、S425でNO)、処理を終了する。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、マスターAPが、協調送信に参加するスレーブAPの情報を収集し、トリガーフレームを生成し、協調送信に参加するスレーブAPへトリガーフレームを送信することができる。マスターAPの管理下で、適切な協調送信を実現できる。なお、本実施形態で用いた各フィールドの名前や、ビットの位置、ビット数は本実施形態で記載したものに限らず、同様の情報が、異なるフィールド名や異なる位置、ビット数でフレーム中に格納されても良い。
【0034】
以上、実施形態を詳述したが、本発明は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記録媒体(記憶媒体)などとしての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェース機器、撮像装置、webアプリケーションなど)から構成されるシステムに適用してもよいし、また、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0035】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0036】
101~103:無線ネットワーク、104~106:アクセスポイント、107~108:ステーション、201:記憶部、202:制御部、203:機能部、204:入力部、205:出力部、206:通信部、207:アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5