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特許7492327発酵乳用ココアパウダー含有ソースを有する発酵乳製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】発酵乳用ココアパウダー含有ソースを有する発酵乳製品
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/12 20060101AFI20240522BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20240522BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20240522BHJP
【FI】
A23C9/12
A23L35/00
A23L23/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019206932
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021078372
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】和泉 麻希
(72)【発明者】
【氏名】藤田 篤茂
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-095211(JP,A)
【文献】登録実用新案第3050334(JP,U)
【文献】なーんちゃって☆チョコシロップbyルリナ、クックパッド[online]、2009年3月6日(2023年12月15日検索),https://cookpad.com/recipe/746849
【文献】佐藤端男,調理材料としてのカッテージチーズ,調理科学,1976年,Vol.9 No.2,pp.73-79
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A23C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ココアパウダーとラム酒を含み、25℃におけるpHが5~8である、発酵乳用ココアパウダー含有ソース(但し、チョコレートを含むものを除く)と、発酵乳と、ココアパウダーを含有しない他のソースを有する、発酵乳製品。
【請求項2】
前記発酵乳の乳たんぱく質含有量が5.6質量%以上である、請求項1に記載の発酵乳製品。
【請求項3】
ココアパウダーとラム酒を含み、25℃におけるpHが5~8である、発酵乳用ココアパウダー含有ソース(但し、チョコレートを含むものを除く)と、発酵乳とを有し、
前記発酵乳用ココアパウダー含有ソースと、前記発酵乳が、別個の容器に収容されている、発酵乳製品。
【請求項4】
前記発酵乳と同じ容器に、さらに、ココアパウダーを含有しない他のソースが収容されている、請求項3に記載の発酵乳製品。
【請求項5】
前記発酵乳の乳たんぱく質含有量が5.6質量%以上である、請求項3又は4に記載の発酵乳製品。
【請求項6】
ココアパウダーとラム酒を含み、25℃におけるpHが5~8である、発酵乳用ココアパウダー含有ソース(但し、チョコレートを含むものを除く)と、発酵乳とを有し、
前記発酵乳の乳たんぱく質含有量が5.6質量%以上である、発酵乳製品。
【請求項7】
前記発酵乳の100g当たりのナトリウム含有量が100mg以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の発酵乳製品。
【請求項8】
前記発酵乳用ココアパウダー含有ソースの総質量に対して、前記ココアパウダーの含有量が1.5~7.5質量%、前記ラム酒の含有量が0.1~1.25質量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の発酵乳製品
【請求項9】
前記ココアパウダーの含有量と前記ラム酒の含有量との質量比を表す、ココアパウダー/ラム酒が1/0.03~1/0.5である、請求項8に記載の発酵乳製品
【請求項10】
ボストウィック粘度計を用い、測定温度5℃、測定時間5秒で測定したときの、前記発酵乳用ココアパウダー含有ソースの粘度が5~20cmである、請求項1~9のいずれか一項に記載の発酵乳製品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発酵乳用ココアパウダー含有ソース及び発酵乳製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーグルト等の発酵乳は独特の酸味を有しており、発酵乳と一緒に喫食する発酵乳用ソースとしては、果汁を含むフルーツソースが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6059980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は発酵乳と組み合わせるソースのバリエーションを増やすために、果汁以外の各種の食品材料を試したところ、カカオ豆特有の香り、苦味を有するココアパウダーは、発酵乳と組み合わせて喫食したときに良好な風味が得られ難いことを知見した。
本発明は、発酵乳と組み合わせて喫食するのに好適な発酵乳用ココアパウダー含有ソース、及びこれを有する発酵乳製品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を有する。
[1]ココアパウダーとラム酒を含み、25℃におけるpHが5~8である、発酵乳用ココアパウダー含有ソース。
[2]前記発酵乳用ココアパウダー含有ソースの総質量に対して、前記ココアパウダーの含有量が1.5~7.5質量%、前記ラム酒の含有量が0.1~1.25質量%である、[1]の発酵乳用ココアパウダー含有ソース。
[3]前記ココアパウダーの含有量と前記ラム酒の含有量との質量比を表す、ココアパウダー/ラム酒が1/0.03~1/0.5である、[2]の発酵乳用ココアパウダー含有ソース。
[4]前記[1]~[3]のいずれかの発酵乳用ココアパウダー含有ソースが容器に収容された、発酵乳用容器入りソース製品。
[5]前記[1]~[3]のいずれかの発酵乳用ココアパウダー含有ソースと、発酵乳とを有する発酵乳製品。
[6]さらに、ココアパウダーを含有しない他のソースを有する、[5]の発酵乳製品。
[7]前記発酵乳用ココアパウダー含有ソースと、前記発酵乳が、別個の容器に収容されている、[5]の発酵乳製品。
[8]前記発酵乳と同じ容器に、さらに、ココアパウダーを含有しない他のソースが収容されている、[7]の発酵乳製品。
[9]前記発酵乳の乳たんぱく質含有量が5.6質量%以上である、[5]~[8]のいずれかの発酵乳製品。
[10]前記発酵乳の100g当たりのナトリウム含有量が100mg以下である、[5]~[9]のいずれかの発酵乳製品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発酵乳と組み合わせて喫食するのに好適な発酵乳用ココアパウダー含有ソース、及びこれを有する発酵乳製品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において以下の定義が適用される。
pHは、特に断りがない限り25℃における値である。
粘度は、ボストウィック粘度計にて、測定温度5℃、測定時間5秒で測定したときの値(単位:cm)である。
ブリックス糖度は、測定温度25℃において、屈折式糖度計(屈折率を測定して蔗糖液の濃度に換算する糖度計)で測定して得られる値(単位:度)である。
【0008】
たんぱく質、脂肪の含有量の測定は、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の別添「栄養成分等の分析方法等」に開示されている手順に従って測定した値である。
固形分の含有量は、固形分(質量%)=100-水分(質量%)で算出した値である。
水分の含有量は、常圧加熱乾燥法(乾燥助剤添加法)により測定した値である。
ナトリウムの含有量は、誘導結合プラズマ発光分析法により測定した値である。
【0009】
<発酵乳用ココアパウダー含有ソース>
本実施形態の発酵乳用ココアパウダー含有ソース(以下、単に「ココアパウダー含有ソース」又は「ソース」ともいう。)は、ココアパウダーとラム酒を含む。さらに甘味料を含むことが好ましい。また寒天及びゲル化剤から選ばれる1種以上を含んでもよい。
ココアパウダー含有ソースは液体であり、水を含む。
【0010】
[ココアパウダー]
ココアパウダーは、カカオ豆を粉砕し、焙炒し、摩砕したカカオマスを搾油してココアバターとココアケーキに分離し、得られたココアケーキを粉砕した粉砕物(ココアバター8質量%以上、水分7質量%以下)である。
市販のココアパウダーには、前記粉砕物のみのもの、前記粉砕物にバニラ系の香料のみを加えたもの、又は前記粉砕物に3質量%未満の添加物(香料、香辛料、ビタミン、ミネラル等)を加えたものがあり、いずれも使用できる。
【0011】
発酵乳用ココアパウダー含有ソースの総質量に対して、ココアパウダーの含有量は1.5~7.5質量%が好ましく、2.0~7.5質量%がより好ましく、2.0~5.0質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であるとココアの風味に優れ、上限値以下であると発酵乳と組み合わせて喫食した際に風味のバランスに優れる。
【0012】
[ラム酒]
ラム酒は、サトウキビの搾り汁を煮詰めて、砂糖を結晶化させた後の糖蜜を原料とし、発酵、蒸留、熟成の工程を経てつくられる酒であり、酒税法ではスピリッツに分類される。
市販のラム酒を使用できる。香料等が添加された市販品でもよい。ラム酒は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
発酵乳用ココアパウダー含有ソースの総質量に対して、ラム酒の含有量は0.1~1.25質量%が好ましく0.25~1.0質量%がより好ましく、0.5~1.0質量%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であるとココアパウダー含有ソースの風味に深みが増し、ココアの豆臭を抑えることで発酵乳と組み合わせて喫食した際に好ましい風味が得られる。上限値以下であるとラム酒の香りおよびアルコール感が強すぎず、ココアおよび発酵乳の本来の風味に優れる。
また、ココアパウダーの含有量とラム酒の含有量との質量比を表す、ココアパウダー/ラム酒は1/0.03~1/0.5が好ましく、1/0.06~1/0.4がより好ましく、1/0.1~1/0.3がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると発酵乳と組み合わせて喫食した際の風味に優れる、上限値以下であるとラム酒の香りおよびアルコール感が過度に強すぎず、ココアおよび発酵乳の本来の風味に優れる。
【0013】
[甘味料]
公知の甘味料を使用できる。甘味料は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
甘味料の例としては、砂糖、水あめ、ブドウ糖、果糖、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、高果糖液糖)、マルトオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、パノース、トレハロース、デキストリン等の糖類、キシリトール、ソルビトール、マルチロール、エリスリトール等の糖アルコール類、アスパルテーム、スクラロース、ステビア等の高甘味度甘味料が挙げられる。
甘味料の含有量は、得ようとする甘さに応じて設定できる。例えば、ココアパウダー含有ソースのブリックス糖度は60~75が好ましい。
【0014】
[寒天、ゲル化剤]
公知の寒天、ゲル化剤を使用できる。寒天及びゲル化剤から選ばれる1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゲル化剤の例としては、ペクチン、デンプン、グァガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンド種子ガム、アルギン酸、カラギーナン、ジェランガム、セルロース等の多糖類、ゼラチン等が挙げられる。
寒天、ゲル化剤の含有量は、得ようとする粘度に応じて設定できる。例えばココアパウダー含有ソースの粘度は5~20cmが好ましく、5~18cmがより好ましく、5~15cmがさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であるとココアパウダー含有ソースのとろみを感じることができ、発酵乳との絡み付きやすさにも優れる。上限値以下であると発酵乳製品として喫食する際に発酵乳とソースが分離し難い。
【0015】
[その他の成分]
ココアパウダー含有ソースは、ココアパウダー、ラム酒、甘味料、ゲル化剤及び水以外の他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、はちみつ、乳分、公知の食品添加物(酸味料、pH調整剤、酸化防止剤、香料等)が挙げられる。
【0016】
ココアパウダー含有ソースのpHは5~8であり、5.2~7.8が好ましく、5.5~7.5がより好ましい。上記範囲の下限値以上であるとココアらしさに優れる。上限値以下であると色調が黒くなりすぎず、チョコレートソース様の茶色い色調に優れる。
ココアパウダー含有ソースは発酵乳用であり、発酵乳と一緒に喫食する用途に使用される。発酵乳については後述する。
【0017】
<ココアパウダー含有ソースの製造方法>
ココアパウダー含有ソースは、全原料を水に溶解し、必要に応じて加熱殺菌処理する方法で製造できる。
全原料を水に溶解する際、原料の溶解が促進される程度に加温してもよい。加温する場合の温度が高すぎるとソースの風味が損なわれやすく、焦げ付きやすいため、80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
加熱殺菌する際の温度は95℃以下が好ましい。例えば85~90℃で10分間保持する加熱殺菌条件が好ましい。
【0018】
<発酵乳用容器入りソース製品>
上記の方法で製造したココアパウダー含有ソースを、容器に収容して密封することによって、発酵乳用容器入りソース製品(以下、単に「容器入りソース」ともいう。)が得られる。
容器の形態は特に限定されず、公知のものを使用できる。例えばポーション容器が好ましい。ポーション容器は、通常、開口部を有する容器と、該開口部を開口可能に閉じる蓋とからなる。形状は特に限定されない。蓋は容器にヒートシールされてもよく、着脱自在に設けられていてもよい。
上記加熱殺菌処理を経て得られたココアパウダー含有ソースは、無菌的に容器に収容して密封することが好ましい。
容器が耐熱性を有する場合は、上記加熱殺菌処理を行わず、容器に収容した後に加熱殺菌処理を行ってもよい。
【0019】
<発酵乳製品>
本実施形態の発酵乳製品は、本実施形態のココアパウダー含有ソースと発酵乳とを有する。
[発酵乳]
本実施形態における発酵乳は、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令に定められた発酵乳(乳又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状または液状にしたもの又はこれらを凍結したもの)であり、発酵後に殺菌された「発酵乳(殺菌)」も含む。
【0020】
発酵乳は、乳原料、発酵菌(発酵に使用した乳酸菌、酵母等)及び水以外に、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、発酵乳の製造において公知の成分を使用できる。例えば、ショ糖、オリゴ糖等の糖類、植物性脂肪、安定剤、香料、糖類以外の甘味料等が挙げられる。
乳由来の風味に優れる点では、その他の成分は含まないことが好ましい。
【0021】
発酵乳は、濃厚感に優れる点で、乳たんぱく質含有量が5.6質量%以上であることが好ましく、6質量%以上がより好ましく、7質量%以上がさらに好ましい。乳たんぱく質含有量の上限値は特に限定されないが、ココアパウダー含有ソースとの風味の調和の点からは15質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましい。
発酵乳の乳脂肪含有量は、濃厚感及び風味に優れる点で、0~15質量%であることが好ましく、1~10質量%がより好ましい。
発酵乳の100g当たりのナトリウム含有量は、風味に優れる点で、20~100mgであることが好ましく、30~60mgがより好ましい。
【0022】
発酵乳の製造方法は特に限定されない。公知の製造方法を用いることができる。
乳たんぱく質含有量が5.6質量%以上である発酵乳は、乳由来の原料を含む調乳液を発酵させ、得られた発酵物を濃縮して濃縮発酵乳を得る方法で製造できる。
乳たんぱく質含有量が5.6質量%以上であり、かつ発酵乳100g当たりのナトリウム含有量が100mg以下である発酵乳は、乳由来の原料を含む調乳液を発酵させ、得られた発酵物を濃縮して濃縮発酵乳を得る方法で製造できる。
濃縮発酵乳は公知の製造方法で製造できる。発酵物を濃縮する方法としては、例えば遠心分離法、膜分離法が挙げられる。膜分離法としては、例えば限外ろ過膜(UF膜)を用いる方法、精密ろ過膜(MF膜)を用いる方法等が挙げられる。
濃縮発酵乳は、例えば特開2017-131153号公報、「Tamime and Robinson’s Yoghurt Science and technology Third edition」,A.Y.Tamime,R K Robinson著、Woodhead出版、2007年等に記載の方法で製造できる。
【0023】
[他の食品材料]
発酵乳製品は、ココアパウダー含有ソース及び発酵乳以外の他の食品材料を有してもよい。
他の食品材料としては、ココアパウダーを含有しないソース、例えば、果実類の果肉、果汁、果皮、ピューレ、野菜類、穀類、いも及びデンプン類、豆類、種実類、きのこ類、アロエ、ナタデココ、抹茶等の食材が挙げられる。
他のソースのブリックス糖度は、甘味および発酵乳製品の保存時の物性の点で20~50度が好ましく、25~40度がより好ましい。
他のソースのpHは制菌効果の点でpH4.0以下が好ましい。
他のソースは果汁を含むことが好ましい。また、果汁に加えてピューレ、果肉、果皮を含んでもよい。果汁、ピューレ、果肉、果皮としてはいちご、ブルーベリー、レモン、桃、みかん、りんご、バナナ、ぶどう、オレンジ、グレープフルーツ、梨、パイナップル、ラズベリー、マンゴー、柿、ゆず、メロン、スイカ、クランベリー、ブラックカラント、アロニア、ドラゴンフルーツ、アプリコット、ライチ、ハスカップ等が挙げられる。果汁、ピューレ、果肉、果皮としては発酵乳とココアパウダー含有ソースと他のソースとを一緒に喫食した際の風味に優れる点で柑橘類が好ましく、オレンジ果汁及び/又はオレンジ果皮がより好ましい。
【0024】
本実施形態の発酵乳製品の好ましい態様として下記(1)~(4)が挙げられる。
(1)発酵乳とココアパウダー含有ソースとを有し、発酵乳及びココアパウダー含有ソースが、それぞれ別個の容器に収容されている発酵乳製品。
例えば、容器入り発酵乳と、容器入りソースとが一体的に包装されている「ソース付き発酵乳製品」が好ましい。
(2)発酵乳とココアパウダー含有ソースとを有し、これらが同じ容器に収容されている発酵乳製品。
例えば、発酵乳層とココアパウダー含有ソース層が積層されていることが好ましい。ココアパウダー含有ソース層は、発酵乳層より上層でもよく下層でもよい。
(3)発酵乳とココアパウダー含有ソースと他のソースを有し、発酵乳と他のソースとが同じ容器に収容されており、これとは別の容器にココアパウダー含有ソースが収容されている発酵乳製品。
例えば、発酵乳層と他のソース層が積層されていることが好ましい。他のソース層は、発酵乳層より上層でもよく下層でもよい。
例えば、容器入り発酵乳(他のソース入り)と、容器入りソースとが一体的に包装されている「ソース付き発酵乳製品」が好ましい。
(4)発酵乳とココアパウダー含有ソースと他のソースを有し、これらの全部が同じ容器に収容されている発酵乳製品。
例えば、発酵乳層とココアパウダー含有ソース層と他のソース層が積層されていることが好ましい。発酵乳層が中間層であり、その上層及び下層のいずれか一方がココアパウダー含有ソース層であり、他方が他のソース層である発酵乳製品が好ましい。
前記(1)~(4)の態様において、発酵乳が固体食材を含んでいてもよい。
【0025】
前記(1)、(2)の態様の発酵乳製品において、発酵乳とココアパウダー含有ソースとの質量比を表す、発酵乳/ココアパウダー含有ソースは100/7~100/40が好ましく、100/8~100/20がより好ましい。
前記(3)、(4)の態様の発酵乳製品において、ココアパウダー含有ソースと他のソースの合計に対する発酵乳の質量比を表す、発酵乳/ソース合計は100/16~100/40が好ましく、100/18~100/35がより好ましい。
また、ココアパウダー含有ソースと他のソースの合計質量に対するココアパウダー含有ソースの割合は20~80質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましい。
【実施例
【0026】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
<試験例1>
表1に示すように、ココアパウダー含有ソース100質量部に、各種洋酒0.5質量部をそれぞれ添加して混合した。洋酒添加後のソースを試食し、その風味について下記の評価基準にしたがって評価した。
◎:ココアパウダー含有ソースと洋酒の両方の風味バランスが良く、さらに両者の相乗効果で風味が向上している。
〇:ココアパウダー含有ソースと洋酒の両方の風味バランスが良い。
△:アルコール感がやや強い。
×:アルコール感が強い。
【0028】
【表1】
【0029】
表1の結果に示されるように、ココアパウダー含有ソースとの風味の相性は、ラム酒が最も良かった。具体的には、ココアパウダー含有ソースにラム酒を添加することにより、コクのある風味になり、ソースの風味向上効果が得られた。
【0030】
<試験例2>
表2に示すように、ラム酒が異なる2種のココアパウダー含有ソースを調製した。配合1は、ラム酒を添加しない比較例である。
具体的には、表2に示す全原料を水と混合し、60℃に加温して溶解した後、90℃10分間の条件で加熱殺菌し、5℃に冷却してココアパウダー含有ソースを得た。
各配合のソース(5℃)を試食し、「香りの広がり」の良さと「味の深み」の良さについて10点満点で採点した。基準として、配合1のココアパウダー含有ソースの評価を4点とした。7名のパネリストの採点結果と、7名の平均点を表3に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
表3の結果に示されるように、いずれのラム酒も、ココアパウダー含有ソースの風味向上効果は同等であった。
【0034】
<試験例3>
表2に示す各配合のココアパウダー含有ソースを、発酵乳と一緒に喫食したときの風味について評価した。
発酵乳としては、濃縮発酵乳(後述の市販品A)を用いた。
濃縮発酵乳(5℃)の28gに、ココアパウダー含有ソース(5℃)の4gを発酵乳の表面全体にかけて全量を試食し、「風味の相性」の良さと、風味の「上質感」の良さについて10点満点で採点した。基準として、配合1のココアパウダー含有ソースと市販品Aとを一緒に喫食したときの評価を4点とした。5名のパネリストの採点結果と、5名の平均点を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
表4の結果に示されるように、ラム酒を含まない配合1(比較例)に比べて、ラム酒を含む配合2、配合3のココアパウダー含有ソースは、発酵乳と一緒に喫食したときの風味が優れていた。
【0037】
<試験例4>
表5に示すように、ラム酒の含有量が異なるココアパウダー含有ソースを、試験例2と同様の方法で調製し、発酵乳と一緒に喫食したときの風味を評価した。
配合13のココアパウダー含有ソースのブリックス糖度は70.4度、pHは6.8、粘度は10cmであった。他の配合のココアパウダー含有ソースも同程度であった。
濃縮発酵乳(後述の市販品A、5℃)の28gに、ココアパウダー含有ソース(5℃)の4gを発酵乳の表面全体にかけて全量を試食した。配合1のソース(比較例)をかけたときの風味と、各配合のソースをかけたときの風味とを比較した。配合1(比較例)と配合2との風味の差を基準とし、これと同等の風味の差が得られた場合に「〇」と回答する方法で、各配合のソースの風味向上効果を評価した。9名のパネリストの回答結果、及びパネリストの総人数に対する「〇」と回答した人数の割合(単位:%)を表6に示す。
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
表6の結果に示されるように、ラム酒を含まない配合1(比較例)に比べて、ラム酒の含有量が0.1~1.25質量%の範囲であるココアパウダー含有ソースは、発酵乳と一緒に喫食したときの風味が優れていた。
【0041】
<試験例5>
表7に示すように、ココアパウダーの含有量が異なるココアパウダー含有ソースを、試験例2と同様の方法で調製し、発酵乳と一緒に喫食したときの風味を評価した。
濃縮発酵乳(後述の市販品A、5℃)の28gに、ココアパウダー含有ソース(5℃)の4gを発酵乳の表面全体にかけて全量を試食した。配合13のソースをかけたときの風味を基準の風味とし、下記の評価基準にしたがって評価した。2名のパネリストの回答結果を表8に示す。
◎:基準の風味より優れる。
〇:基準の風味と同等。
△:基準の風味よりやや劣る。
×:基準の風味より劣る。
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
【0044】
表8の結果に示されるように、ココアパウダーの含有量が1.5~7.5質量%の範囲であるココアパウダー含有ソースは、発酵乳と一緒に喫食したときの風味が良好であった。
【0045】
<試験例6>
表9に示すように、ソースと一緒に喫食する濃縮発酵乳を変えて風味を評価した。濃縮発酵乳は、下記の市販品A~Dを用いた。市販品A~Dはいずれも甘味料を含まないプレーンタイプである。ココアパウダー含有ソースは表5の配合13のソースを用いた。
市販品A:無脂乳固形分14.8質量%、乳脂肪4.8質量%、たんぱく質9.9質量%。
市販品B:無脂乳固形分15.5質量%、乳脂肪0.2質量%、たんぱく質11.7質量%。
市販品C:無脂乳固形分16.1質量%、乳脂肪0.3質量%、たんぱく質10.0質量%。
市販品D:無脂乳固形分11.5質量%、乳脂肪5.0質量%、たんぱく質7.2質量%。
各濃縮発酵乳(5℃)の28gに、ココアパウダー含有ソース(5℃)の4gを発酵乳の表面全体にかけて全量を試食した。市販品Aの濃縮発酵乳を使用したときの風味を基準の風味とし、下記の評価基準にしたがって評価した。9名のパネリストの回答の集計結果を表9に示す。集計は◎を4点、〇を3点、△を2点、×を1点として合計点を算出した。
◎:基準の風味と同等で良好な風味である。
〇:基準の風味よりやや劣るが、良好な風味である。
△:基準の風味より劣り、良好な風味でない。
×:基準の風味より明らかに劣り、良好な風味でない。
【0046】
【表9】
【0047】
表9の結果に示されるように、いずれの濃縮発酵乳においても良好な風味が得られた。
【0048】
<実施例1:発酵乳製品の製造方法>
[容器入り濃縮発酵乳]
容器入り濃縮発酵乳として下記の市販品を用いた。
森永乳業社製 ギリシャヨーグルトパルテノプレーン砂糖不使用:内容量100g、脂質4.8%、たんぱく質9.9%、発酵乳100g当たりのナトリウム33mg。
[容器入りソースの調製]
表5の配合13に示す全原料を水と混合し、60℃に加温して溶解した後、90℃10分間の条件で加熱殺菌し、冷却してココアパウダー含有ソースを得た。得られたソースの9gをポーション容器(容量15mL)に無菌的に充填し、蓋をヒートシールして容器入りソースを得て、5℃で保管した。
[発酵乳製品の製造]
上記で得た容器入り濃縮発酵乳と、容器入りソースとを一体的に包装して「ソース付き発酵乳製品」を得て、5℃で保管した。
【0049】
<実施例2:発酵乳製品の製造方法>
[容器入りソースの調製]
実施例1と同様にしてココアパウダー含有ソースを得て、得られたソースの9gを、ポーション容器(容量15mL)に無菌的に充填し、蓋をヒートシールして容器入りソースを得て、5℃で保管した。
[容器入り濃縮発酵乳(オレンジソース入り)の調製]
容器(底面直径49mm、高さ63mm、容量141mL)に、オレンジソース(ブリックス糖度30度、pH4.0)の10gを充填し、その上に濃縮発酵乳の70gを充填し、蓋をヒートシールして容器入り濃縮発酵乳を得て、5℃で保管した。
[発酵乳製品の製造]
上記で得た容器入り濃縮発酵乳と、容器入りソースとを一体的に包装して「ソース付き発酵乳製品」を得て、5℃で保管した。