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特許7492329付加製造装置用水硬性組成物の硬化体の反りの修正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】付加製造装置用水硬性組成物の硬化体の反りの修正方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/08 20060101AFI20240522BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240522BHJP
   B28C 7/00 20060101ALI20240522BHJP
   C04B 7/345 20060101ALI20240522BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20240522BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20240522BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240522BHJP
【FI】
B28B11/08
B28B1/30
B28C7/00
C04B7/345
C04B24/26 B
C04B22/14 C
C04B22/14 B
B33Y10/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019217092
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021084414
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】扇 嘉史
(72)【発明者】
【氏名】千石 理沙
(72)【発明者】
【氏名】石田 弘徳
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-502870(JP,A)
【文献】国際公開第2019/004010(WO,A1)
【文献】特開平11-156831(JP,A)
【文献】特開2019-116094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
C04B 103/00-111/94
B28B 1/00-1/54
B28B 11/00-19/00
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)に記載の付加製造装置用水硬性組成物の硬化体の反りが発生した面の全面に、下記(B)に記載の荷重条件で荷重することを特徴とする、付加製造装置用水硬性組成物の硬化体の反りの修正方法。
(A)付加製造装置用水硬性組成物の硬化体
下記(a)に記載の複合結合材100質量部に対し、水を28~60質量部、および砂を100~600質量部含む。
(a)複合結合材
非晶質カルシウムアルミネートを50~99.5質量%、石膏を無水石膏換算で0.5~10質量%、および速硬セメントを0~50質量%含む無機結合材100質量部に対し、ケン化度が80~90モル%のポリビニルアルコールを1.5~12質量部含有する。
(B)荷重条件
前記付加製造装置用水硬性組成物の造形終了後、2~48時間の間に6時間以上に渡り、硬化体を、直方体を単位として区分した場合の、該直方体の単位の1mm当り0.05g/mm以上荷重する。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコールの平均粒径が150μm以下である、請求項1に記載の付加製造装置用水硬性組成物の硬化体の反りの修正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造装置を用いて作製した水硬性組成物の硬化体(成形体)に発生した反りを修正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、付加製造装置が、迅速かつ精密な成形手段として注目されている。この付加製造装置のうち、例えば、粉末積層成形装置は、粉末を平面の上に敷きならした後、該粉末にインクジェット等のノズルを通して水性バインダを噴射して固化した固化物を、垂直方向に順次積層して成形する装置である。この装置の特徴は、3次元CAD等で作製した立体成形体のデータを多数の水平面に分割し、これらの水平面の形状を順次積層して、成形体を製造する点にある。
【0003】
しかし、付加製造装置を用いて作製した水硬性組成物の硬化体は、硬化の過程で反り易い。この反りの発生は、硬化体の寸法精度が低下するほか、例えば、部材を分割して作製して、後で組み合わせて製造する鋳型等の硬化体では、合わせ目の隙間から漏れ出た溶けた金属が、バリを形成するなどの問題が生じる。そこで硬化体の反りを修正する方法が望まれる。
特許文献1には、光造形物の表裏両面にそれぞれ配置した反り抑制部材(図2等)で光造形物を表裏両面から挟み込んだ状態で保持する保持工程を含む光造形法が記載されている。そして、該発明の効果として、光造形物の反りを抑制できるため光造形物を高精度に製造できるとしている(段落0009)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-10866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より簡易な方法で、付加製造装置を用いて作製した水硬性組成物の硬化体の反りを修正する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記の構成を有する反りの修正方法は前記目的を達成できることを見い出し、本発明を完成させた。
【0007】
[1]下記(A)に記載の付加製造装置用水硬性組成物の硬化体の反りが発生した面の全面に、下記(B)に記載の荷重条件で荷重することを特徴とする、付加製造装置用水硬性組成物の硬化体の反りの修正方法。
(A)付加製造装置用水硬性組成物の硬化体
下記(a)に記載の複合結合材100質量部に対し、水を28~60質量部、および砂を100~600質量部含む。
(a)複合結合材
非晶質カルシウムアルミネートを50~99.5質量%、石膏を無水石膏換算で0.5~10質量%、および速硬セメントを0~50質量%含む無機結合材100質量部に対し、ケン化度が80~90モル%のポリビニルアルコールを1.5~12質量部含有する。
(B)荷重条件
前記付加製造装置用水硬性組成物の造形終了後、2~48時間の間に6時間以上に渡り、硬化体を、直方体を単位として区分した場合の、該直方体の単位の1mm当り0.05g/mm以上荷重する。
[2]前記ポリビニルアルコールの平均粒径が150μm以下である、前記[1]に記載の付加製造装置用水硬性組成物の硬化体の反りの修正方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の付加製造装置用水硬性組成物の硬化体の反りの修正方法は、より簡易な方法で、該硬化体の反りを修正できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、付加製造装置用水硬性組成物の硬化体の反りが発生した面の全面、または、反りが発生した該硬化体の重心および両端部に荷重を加えて、該硬化体の反りを修正する方法等である。以下、該硬化体の反りの修正方法、および該硬化体について詳細に説明する。
【0010】
1.付加製造装置用水硬性組成物の硬化体の反りの修正方法
本発明において前記硬化体の反りが発生した面の全面のほかに、反りが発生した該硬化体の重心および両端部に荷重を加えてもよい。前記重心および両端部に荷重する方法は、全面に荷重する方法と比べ、重りの量を減らせるという利点がある。
前記荷重開始時期は、造形終了後、好ましくは2~48時間である。該荷重開始時期が2時間未満では造形物が変形するおそれがあり、48時間未満ではそりが修正されないおそれがある。なお、該荷重開始時期は、より好ましくは3~40時間であり、さらに好ましくは4~30時間である
前記加重継続時間は、好ましくは6時間以上である。該荷重継続時間が6時間未満では、反りの修正が充分でない場合がある。なお、該荷重継続時間は、より好ましくは12時間以上、さらに好ましくは18時間以上である。
また、前荷重の大きさは、好ましくは前記硬化体1mm当り0.05g以上である。荷重の大きさが、硬化体1mm当り0.05g/mm未満では反りの修正は充分でない場合がある。なお、前荷重の大きさは、硬化体1mm当り、より好ましくは0.2g以上、さらに好ましくは0.5g以上である。
【0011】
2.付加製造装置用水硬性組成物の硬化体
前記付加製造装置用水硬性組成物の硬化体は、無機結合材100質量部に対し部分ケン化したポリビニルアルコールを1.5~12質量部含む複合結合材、および砂を含有する硬化体である。以下、無機結合材、複合結合材、および水硬性組成物に分けて説明する。
【0012】
1.無機結合材
前記無機結合材は、下記カルシウムアルミネート類から選ばれる1種以上を必須成分として含み、さらに石膏と速硬セメント等を任意成分として含む結合材である。
次に、カルシウムアルミネート類、石膏、および速硬セメント等に分けて詳細に説明する。
【0013】
(1)カルシウムアルミネート類
前記カルシウムアルミネート類は、3CaO・Al、2CaO・Al、12CaO・7Al、5CaO・3Al、CaO・Al、3CaO・5Al、またはCaO・2Al等のカルシウムアルミネート;2CaO・Al・Fe、または4CaO・Al・Fe等のカルシウムアルミノフェライト;カルシウムアルミネートにハロゲンが固溶または置換した3CaO・3Al・CaF、および11CaO・7Al・CaF2等のカルシウムフロロアルミネートを含むカルシウムハロアルミネート;8CaO・NaO・3Al、および3CaO・2NaO・5Al等のカルシウムナトリウムアルミネート;カルシウムリチウムアルミネート;アルミナセメント;さらにこれらにNa、K、Li、Ti、Fe、Mg、Cr、P、F、S等の微量元素(酸化物等含む。)が固溶した鉱物から選ばれる1種以上が挙げられる。
これらの無機結合材の中でも、強度発現性が高く、鋳型として使用する際にはガスの発生が少ないことから、カルシウムアルミネートが好ましく、特に、非晶質カルシウムアルミネートが好ましい。非晶質カルシウムアルミネートは、原料を溶融した後、急冷して製造するから、実質的に結晶構造を有せず、通常、そのガラス化率は80%以上であり、ガラス化率が高い程、早期強度発現性は高いため、ガラス化率は好ましくは90%以上である。
【0014】
カルシウムアルミネート類のCaO/Alのモル比は、好ましくは1.5~3.0、より好ましくは1.7~2.4である。該モル比が1.5以上で水硬性組成物の早期強度発現性が高く、3.0以下で水硬性組成物の耐熱性が高い。
また、カルシウムアルミネート類のブレーン比表面積(JIS R 5201に規定する粉末度)は、充分な早期強度発現性を得るとともに粉塵の発生を抑制するために、好ましくは1000~6000cm/g、より好ましくは1500~5000cm/gである。なお、カルシウムアルミネート類のブレーン比表面積は、付加製造装置での敷きならしが均一で、かつ、鋳型等の硬化体の強度が低下しないためには、さらに好ましくは1500~4000cm/g、特に好ましくは2000~3000cm/gである。
無機結合材中のカルシウムアルミネート類の含有率は50~100質量%が好ましい。該値が50質量%以上であれば、水硬性組成物の早期強度発現性と耐熱性が高い。なお、該値は、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは80~95質量%である。なお、前記のとおり、カルシウムアルミネート類の中でも非晶質カルシウムアルミネートが好ましい。
【0015】
(2)石膏
前記無機結合材は、早期強度発現性のさらなる向上のため、さらに石膏を任意成分として含んでもよい。前記石膏は、無水石膏、半水石膏、および二水石膏から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、半水石膏は早期強度発現性がより高いために好ましい。無機結合材中の石膏の含有率は、早期強度発現性を向上させ、鋳型等の硬化体の製造時においてガスの発生や黒鉛球状化不良を防止するため、無機結合材全体を100質量%として、好ましくは無水石膏換算で0.5~10質量%、より好ましくは0.8~5質量%以下、さらに好ましくは1~3質量%以下である。
なお、石膏はセメント中に含まれた状態の石膏でもよい。セメント中の石膏は、一般に、二水石膏と半水石膏の混合物(混合石膏)の形態で存在する。半水石膏は、セメントの粉砕により発生する熱により、二水石膏から脱水して生じるため、半水石膏と二水石膏の含有比率は粉砕条件の影響を受け変動する。
【0016】
(3)速硬セメント
前記無機結合材は、早期強度発現性のさらなる向上のため、速硬セメント(超速硬セメント)を任意成分として含んでもよく、該速硬セメントは、好ましくは、JIS R 5210に準拠して測定した凝結(始発)が30分以内である速硬セメント(超速硬セメント)、または止水セメントである。なお、速硬セメント等の市販品は、スーパージェットセメント(太平洋セメント社製)、ジェットセメント(住友大阪セメント社製)、ライオンシスイ(登録商標、住友大阪セメント社製)、またはデンカスーパーセメント(デンカ社製)が挙げられる。石膏を含む速硬セメントは早期強度発現性が高く、少量の石膏の添加が容易となるため好ましい。
無機結合材中の速硬セメントの含有率は、早期強度発現性を向上させ、鋳型として使用する際にはガス発生を少なくするため、無機結合材全体を100質量%として、好ましくは0~50質量%、より好ましくは0~30質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。
【0017】
(4)無機結合材中のその他の成分
前記無機結合材は、その他の成分(任意成分)としてセメントを含んでもよい。
該セメントは、JIS R 5210に準拠して測定した凝結(始発)が3時間30分以内であれば、成形から3時間後の早期強度発現性が高いため好ましく、1時間以内がより好ましい。
セメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、エコセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、およびセメントクリンカー粉末から選ばれる1種以上が挙げられる。なお、本発明では、セメントクリンカー粉末もセメントに含める。また、セメント中の珪酸カルシウムの含有率は、セメント全体を100質量%として、好ましくは25質量%以上である。該含有率が25質量%以上あれば、材齢1日以後の強度発現性が高く、また長期強度発現性が必要な場合、該含有率は、好ましくは45質量%以上である。
無機結合材中のセメントの含有率は、早期強度発現性の向上のため、無機結合材全体を100質量%として、好ましくは0~50質量%、より好ましくは0~30質量%、さらに好ましくは0~20質量%である。
【0018】
2.複合結合材
前記複合結合材は、無機結合材100質量部に対し部分ケン化したポリビニルアルコールを1.5~12質量部含む結合材である。ポリビニルアルコールの配合割合が1.5質量部未満では、強度の向上効果は低く、また、12質量部を越えると、形状によっては成形体の収縮により変形やひび割れが生じ、複雑な形状の硬化体が製造できない場合があるほか、鋳物を製造する際にガスが発生して鋳物にブローホール等の欠陥が生じたり、製造現場で異臭が生じる場合がある。なお、ポリビニルアルコールの配合割合は、無機結合材100質量部に対し、より好ましくは2~10質量部、さらに好ましくは3~9質量部である。
無機結合材とポリビニルアルコールの粉砕・混合方法は、両者を個別に粉砕した後に混合する個別粉砕と、両者を混合した後、同時に一括して粉砕する混合粉砕があるが、粉砕の手間を考慮すれば、好ましくは混合粉砕である。
前記ポリビニルアルコールのケン化度は、溶解性が高く、また成形体の強度が向上するなるため、好ましくは80~90モル%である。
また、ポリビニルアルコールの平均粒径(メディアン径、D50)は、高い強度が得られるため、好ましくは150μm以下、より好ましくは90μm以下、さらに好ましく10~75μmである。94μmより大きいポリビニルアルコールの粒子の含有率は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。また、77μmより大きいポリビニルアルコールの含有率は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0019】
3.水硬性組成物
前記水硬性組成物は、前記複合結合材の合計100質量部に対し、水を28~60質量部、および砂を含む組成物である。水の配合割合が該範囲であれば、強度発現性を確保できる。なお、水の配合割合は、硬化体の強度と寸法精度をより高める観点から、好ましくは30~55質量部、より好ましくは35~46質量部である。
また、砂の配合割合は、複合結合材100質量部に対し、好ましくは100~600質量部、より好ましくは150~500質量部、さらに好ましくは200~400質量部である。砂の配合割合が該範囲にあれば、同じく、強度発現性を確保できる。
前記砂は、耐火砂であれば、特に制限されず、珪砂、オリビン砂、ジルコン砂、クロマイト砂、アルミナ砂、および人工砂等から選ばれる1種以上が挙げられる。また、前記水は、通常の上水道水、井戸水等を用いることができる。また、水は、必要とされる各種の機能を付与するため、増粘剤、潤滑剤、流動化剤、界面活性剤、および表面張力低減剤から選ばれる1種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
4.水硬性組成物中のその他の成分
成形後に残った水硬性組成物の未硬化の粉末を、成形体から除去する作業(デパウダー)を容易にするために、本発明の水硬性組成物は、さらに、複合結合材の合計100質量部に対し、任意の成分として疎水性フュームドシリカを0.1~2質量部、より好ましくは0.5~1.5質量部含むことができる。ここで、疎水性フュームドシリカとは、フュームドシリカの表面をシランまたはシロキサンで処理して、表面を疎水性にしたシリカ粉末である。
また、水硬性組成物の粉末の除去効率をより高めるため、疎水性フュームドシリカのBET比表面積は、好ましくは30~300m/gである。疎水性フュームドシリカのBET比表面積が該範囲内であれば、粉体の流動性が向上し、付加製造装置で敷きならした面が平坦で、かつ強度が低下することなく鋳型等の硬化体を軽量化できる。また、疎水性フュームドシリカは、粉体の固結の防止や混合性の向上に有効である。
【0021】
なお、本発明の水硬性組成物は、さらに、強度発現性の調整材等として、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、珪石微粉末、および石灰石粉末等の任意の成分を含んでもよい。
【実施例
【0022】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.供試体の反りの修正試験
(1)供試体の作製に用いた材料
(i)非晶質カルシウムアルミネート
CaO/Alのモル比は2.2、ガラス化率は95%以上、試製品である。また、非晶質カルシウムアルミネートのブレーン比表面積は3490cm/gである。
(ii)速硬セメント
商品名 スーパージェットセメント
ケイ酸カルシウムの含有率は47質量%、凝結(始発)は30分、およびブレーン比表面積は4700cm/g、太平洋セメント社製である。ただし、無水石膏を14質量%含む。
(iii)砂
(a)商品名 エスパール♯180L、アルミナ系、山川産業社製である。
(b)商品名 ナイガイセラビーズ#1450、アルミナ系、伊藤忠セラテック社製である。
(iv)ポリビニルアルコール
品番 22-88 S1(PVA217SS)、クラレ社製である。
ケン化度は87~89%、平均粒径(メディアン径、D50)は60μmで、94μmより大きい粒子の含有率は29質量%、および77μmより大きい粒子の含有率は47質量%であり、10%径(D10)は25μm、および90%径(D90)は121μmである。
なお、前記ポリマーの粒径はすべて、シリコーンオイルを媒質に用いて島津製作所製SALD-2000Jにより測定した。
(v)バインダー液
商品名 ProJet660Pro用バインダー液:3質量%のグリセロール水溶液で、スリーディシステムズ社製である。
【0023】
(2)供試体の作製
前記カルシウムアルミネート類:速硬セメント:エスパール♯180L:ナイガイセラビーズ#1450=0.9:0.1:1:1(質量比)で混合した混合物を100質量%として、ポリビニルアルコールを2質量%混合した付加製造装置用水硬性組成物を作製した。
次に、該水硬性組成物と、付加製造装置として結合剤噴射式粉末積層成形装置(商品名: ProJet660Pro スリーディシステムズ社製)を用いて、20℃、相対湿度60%の条件下で、結合剤噴射法により、断面の寸法が縦80mm、横16mm、および厚さ10mmの成形体を作製した。この成形体は、40℃、相対湿度30%の条件下で3時間、気中養生して、最大の反りが0.25μmである供試体を得た。
なお、前記装置による成形体の製造では、前記装置の水量設定値を、外部(Shell)88%と内部(Core)122%で調整して、粉体混合物の外部と内部にノズルから水を噴射し、付加製造装置用水硬性組成物を固化した。
【0024】
(3)供試体の反りの修正
前記供試体の全面に、表1に示す錘による荷重を、表1に示す荷重開始時期と荷重継続時間かけて、供試体の反りを修正した。その結果を表1に示す。なお、反りの大きさは、0.1mm以下であれば実用上問題はない。
【0025】
【表1】
【0026】
表1に示すように、付加製造装置用水硬性組成物が硬化した後、試験例2、3、試験例5~7、および試験例9~11の、それぞれ2~48時間の間に6時間以上に渡り、0.05g/mm以上の荷重を加えれば、反りの大きさは0.1mm以下になった。なお、無荷重では、荷重持続時間が長くなっても、供試体の最大の反りは減少せず、荷重前の0.25mmを維持していた。