(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】耐火構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20240522BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
E04B1/94 L
E04B1/94 K
E04B1/94 V
E04B2/56 645F
(21)【出願番号】P 2019229005
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 靖浩
(72)【発明者】
【氏名】常俊 淳次
(72)【発明者】
【氏名】野田 剣一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 宏
(72)【発明者】
【氏名】坂東 薫
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-094350(JP,A)
【文献】特開2001-355298(JP,A)
【文献】特開2004-360444(JP,A)
【文献】特開2019-094739(JP,A)
【文献】特開平10-159209(JP,A)
【文献】特開2016-223202(JP,A)
【文献】特開2019-148164(JP,A)
【文献】特開2000-345644(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0118764(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04B 2/56 - 2/70
E04B 2/72 - 2/82
E04F 13/00 -13/30
B32B 1/00 -43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁下地の屋外側に壁材が設けられ、
前記壁下地は、柱又は間柱からなる支持材と、この支持材の屋外側の面に直接支持された熱発泡性の耐火シートと、を備え、
前記耐火シートと前記壁材の間に通気層が形成され
、
隣り合う前記支持材の間の空間及び前記通気層は、前記耐火シートが加熱により発泡して膨張するための発泡空間として形成されている、
耐火構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記壁下地と前記壁材との間に耐火ボードを更に備える、
耐火構造。
【請求項3】
請求項2において、
前記支持材の屋外側に複数の前記耐火シートを備え、
前記耐火シートの屋外側に複数の前記耐火ボードを備え、
隣り合う前記耐火ボードの突付け部と、隣り合う前記耐火シートの継ぎ目部とが一致していない、
耐火構造。
【請求項4】
請求項1において、
前記壁下地と前記壁材との間に耐火ボードがない、
耐火構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火構造に関する。詳しくは、壁下地の屋外側に壁材が設けられている耐火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、耐火壁構造が開示されている。この耐火壁構造は、木製の間柱の片側に、石膏ボードなどの板材を釘で固定した後、その板材に発泡性耐火シートをタッカーで固定し、更に、木製の胴縁を間柱に釘で固定して、その上から窯業系サイディングの板材を胴縁に釘で固定して形成されている。
【0003】
また一般に、下地の鉄骨には耐火材(吹付けロックウールなど)を吹き付けて鉄骨の耐火性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような耐火構造では、発泡性耐火シートを固定する際に板材が必須であり、また発泡性耐火シートを板材に固定する作業も必要であった。一方、鉄骨に耐火材を吹き付ける場合は、吹付け作業や吹付け装置が必要であった。このように、発泡性耐火シートの施工による耐火性確保と耐火材の吹き付け施工による柱の耐火性確保とが必要であり、施工に手間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、施工に手間がかかりにくい耐火構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る耐火構造は、壁下地の屋外側に壁材が設けられている。前記壁下地は、柱又は間柱からなる支持材と、この支持材の屋外側の面に直接支持された熱発泡性の耐火シートと、を備えている。前記耐火シートと前記壁材の間に通気層が形成されている。隣り合う前記支持材の間の空間及び前記通気層は、前記耐火シートが加熱により発泡して膨張するための発泡空間として形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、施工に手間がかかりにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る耐火構造の実施形態1を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る耐火構造の実施形態2を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る耐火構造の実施形態3を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る耐火構造の実施形態4を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る耐火構造の実施形態5を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る耐火構造の実施形態6を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
(1)概要
本実施形態に係る耐火構造1は、壁下地10の屋外側に壁材20が設けられている。壁下地10は、支持材11と、この支持材11の屋内側の面111又は屋外側の面112の少なくとも一方に支持された耐火シート12と、を備えている。ここで、壁下地10から壁材20に向かう方向を前方、その逆を後方とし、鉛直上方及び下方を単に上方及び下方とし、さらに、前後方向及び上下方向と直交する方向を左右方向とする。
【0011】
本実施形態に係る耐火構造1によれば、耐火シート12を支持するための板材が不要であり、また耐火シート12を板材に固定するための作業も不要となり、さらに支持材11の耐火性を耐火シート12で確保して、耐火材を吹き付ける必要もない。したがって、本実施形態の耐火構造1は、耐火シート12を施工するための部材や作業が少なくなって、施工に手間がかかりにくい、という利点がある。
【0012】
(2)詳細
(2.1)壁材20
壁材20は耐火構造1の外装材であって、壁材20によって耐火構造1が化粧される。耐火構造1が外壁構造の場合、壁材20は外壁材であって、例えば、窯業系サイディングを含む。窯業系サイディングは、セメントを含む水硬性材料の硬化物である。壁材20は、略平板状に形成されるが、その表面に凹凸模様や塗膜を備えて意匠性を有している。壁材20の厚みは、例えば、10mm以上30mm以下に形成されるが、これに限定されるものではない。壁材20の形状も任意であるが、例えば、正面視(前方から見た場合)で矩形板状に形成される。壁材20は実を有していてもよい。例えば、壁材20の上端部には実凹部が設けられ、下端部には実凸部が設けられている。上下に隣接して施工される壁材20は実凹部と実凸部とが嵌合することにより接続される。なお、壁材20としては、金属板を成形して得られる金属系サイディング材であってもよい。
【0013】
(2.2)耐火シート12
耐火シート12は耐火構造1の耐火性を向上させる。耐火シート12は熱発泡性であることが好ましい。すなわち、耐火シート12は、火災が発生していないときには薄いシートであるが、火災が発生したときにはその熱で発泡して、火災前の初期状態よりも体積を増加させる。ここで、耐火性とは、熱が前後方向に伝わるのを抑制することを意味する。耐火シート12は熱発泡により体積が増加することにより、耐火層を形成する。耐火シート12は1枚又は複数を組み合わせて使用することができる。耐火シート12は、例えば、正面視で矩形状に形成されている。また耐火シート12は、ロール状に巻かれた長尺シートに形成されていてもよい。
【0014】
耐火シート12は、例えば、合成樹脂、多価アルコール、及び難燃性発泡剤などを含有するものが好ましい。
【0015】
合成樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン/酢ビ樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル/ポリオレフィン樹脂、酢酸ビニル/バーサチック酸/アクリル樹脂、酢酸ビニル/アクリル共重合樹脂、アクリル/スチレン共重合樹脂、ポリブタジエン樹脂等を挙げることができる。なお、ポリオレフィンとしてはポリエチレン等が挙げられる。
【0016】
多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール等が例示される。
【0017】
難燃性発泡剤としては、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アルミニウム、ポリリン酸マグネシウムリン酸塩等のリン酸塩が好適に用いられるが、スルファミン酸塩(スルファミンアンモニウム等)、ホウ酸塩(ホウ酸アンモニウム等)等を例示することができる。
【0018】
耐火シート12における合成樹脂、多価アルコール、難燃性発泡剤の含有比率は、合成樹脂100質量部に対して、多価アルコールが10質量部以上50質量部以下、難燃性発泡剤が50質量部以上200質量部以下であることが好ましい。耐火シート12の厚みは、0.1mm以上5mm以下であることが好ましくは、0.3mm以上3mm以下であることがより好ましく、さらに0.4mm以上1mm以下が好ましい。
【0019】
発泡後の耐火シート12の遮熱性を高めるに、耐火シート12は発泡前の体積に比べて発泡後の体積が10~30倍の発泡倍率であることが好ましい。例えば、壁材20と壁下地10の間に形成される15mmの通気層に、厚み0.6mmのシート状の耐火シート12を用いることによって、発泡倍率が25倍となり、比較的安価に耐火性を高められる。また耐火性能を高める部位には、例えば、1.2mmのシート状の耐火シート12を用いて発泡倍率12.5倍として使用すると更に耐火性が高まる。
【0020】
(2.3)支持材11
支持材11は、耐火シート12が取り付けられて、これらを支持する。本実施形態では、支持材11と耐火シート12で壁下地10が形成される。支持材11は上下方向に長い部材であって、例えば柱及び間柱などとして形成される。支持材11は金属製であって、例えば、C形鋼(リップ付き溝形鋼)を使用することができる。この他に、支持材11としては、各種の断面形状の形鋼が使用でき、例えば、角型鋼管、溝形鋼、H形鋼、ハット形鋼などが挙げられる。また支持材11は木製であってもよい。
【0021】
(2.4)耐火構造1の全体構成
本実施形態に係る耐火構造1は、壁下地10の屋外側に壁材20が設けられている(
図1参照)。壁下地10と壁材20との間には通気層40が設けられている。すなわち、耐火構造1は、屋内側から屋外側に向かって、壁下地10、通気層40、壁材20の順で並んでいる。また壁下地10と壁材20との間には耐火ボードが設けられていない。
【0022】
壁下地10は、支持材11と、耐火シート12とを備える。耐火シート12は、支持材11の屋内側の面111と屋外側の面112との少なくとも一方に支持されている。耐火構造1は、複数の支持材11を備え、所定の間隔を介して横方向に並んでいる。耐火シート12は横方向に隣り合う支持材11に架け渡して配置されている。本実施形態では、耐火シート12は、支持材11の屋外側の面112に支持されており、支持材11の屋内側の面111には支持されていない。したがって、耐火シート12は耐火ボードなどの板材には支持されていない。耐火シート12の横方向の端部の屋内側を向く面が支持材11の屋外側の面112に接触している。耐火シート12は支持材11に固定されている。耐火シート12を支持材11に固定するにあたって、タッカー、接着剤、釘及びビスなどが使用される。
【0023】
壁材20は留め具(図示省略)を使用して支持材11に取り付けられることが好ましい。通気層40の前後方向の寸法(対向する耐火シート12と壁材20との間の寸法)は留め具の厚みによって規定される。
【0024】
耐火シート12は、火災発生の際に、壁材20の屋外側から加熱されて、耐火シート12が発泡して膨張することにより通気層40内で膨張する。すなわち、通気層40は耐火シート12が発泡して膨張するための発泡空間として形成される。また耐火シート12が発泡して膨張することにより隣り合う支持材11の間の空間内でも膨張する。したがって、隣り合う支持材11の間の空間も耐火シート12が発泡して膨張するための発泡空間60として形成される。そして、これにより、発泡膨張した耐火シート12の遮熱効果や遮炎効果により、火炎及び熱が屋外から屋内へと侵入するのを低減することができ、したがって、耐火性を向上させることができると共に、発泡膨張した耐火シート12によって壁材20と壁下地10との間に上下に連通する空間が形成されにくく、熱が壁材20と壁下地10との間で上下方向に移動するのを抑制することができる。また発泡膨張した耐火シート12で支持材11の表面に配置され、支持材11の耐火性が向上する。
【0025】
また壁材20の屋内側に耐火シート12を設けることにより、耐火シート12に高い耐候性や耐水性は要求されず、耐火性を向上させることができる。また耐火シート12は、火災がなければ薄い材料なので、通常時は通気層40を阻害せず、また、耐火構造1の前後方向の寸法(壁材20から壁下地10までの寸法)は、従来のものと比べても大きくなりにくい。
【0026】
本実施形態に係る耐火構造1は、耐火シート12を支持材11で支持するため、耐火シート12を支持するための板材が不要である。また耐火シート12を板材に固定するための作業も不要となる。さらに支持材11は耐火シート12で耐火性を確保されるために、別途、ロックウール吹付け材などの耐火材を吹き付ける必要もない。したがって、本実施形態の耐火構造1は、耐火シート12で支持材11の耐火性を向上することができるにもかかわらず、耐火シート12を施工するための部材や作業が少なくなって、施工に手間がかかりにくい。また壁下地10と壁材20との間には耐火ボードが設けられていないため、耐火構造1よりも屋内側の態様に規制が少なく、自由に内装を設定することができる。
【0027】
(変形例)
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0028】
本実施形態は、建物の外壁だけでなく、内壁にも適用可能である。内壁の場合は、外壁材の代わりに、合板などの内壁材が使用される。
【0029】
本実施形態は、左右方向に沿って延びる壁材20を上下左右に並べた「横張り」構造であってもよいし、上下方向に沿って延びる壁材20を上下左右に並べた「縦張り」構造であってもよい。
【0030】
本実施形態では、支持材11の屋内側の面111に、さらに耐火シート12を設けてもよい。すなわち、耐火シート12は支持材11の屋外側の面112と、屋内側の面111の両方にそれぞれ耐火シート12を支持してもよい。この場合、耐火シート12を支持材11の屋外側の面112又は屋内側の面111の片方だけに支持した耐火構造1に比べて、耐火性能を向上させることができる。
【0031】
本実施形態では、耐火ボード30の屋内側に断熱材が設けられていてもよい。この場合、断熱材としては、ロックウールボード、グラスウールボード、フェノール発泡樹脂ボードなどが使用可能である。断熱材を備えることにより、壁下地10よりも屋内側に熱が伝わりにくくなり、これにより、耐火構造1の耐火性を向上させることができる。
【0032】
本実施形態では、支持材11は柱や間柱などの建物の構造材だけに限られない。例えば、支持材11は縦胴縁であってもよい。また支持材11は横胴縁であってもよい。なお、支持材11が縦胴縁又は横胴縁である場合、支持材11はアルミニウム製などの軽量の金属材料で形成されるのが好ましい。
【0033】
本実施形態では、耐火シート12は熱発泡性でなくてもよく、例えば、金属シートなどの不燃材料であってもよい。
【0034】
(実施形態2)
本実施形態に係る耐火構造1は、耐火ボード30の構成が実施形態1に係る耐火構造1と相違する。
【0035】
以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0036】
実施形態2で説明した構成は、実施形態1で説明した構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。
【0037】
図2に示すように、本実施形態に係る耐火構造1は、実施形態1において、耐火ボード30を更に備えている。耐火ボード30は不燃性を有し、また平板状で、耐火シート12よりも硬質に形成される。壁下地10は1つ又は複数の耐火ボード30で形成される。耐火ボード30としては、例えば、石膏ボード及び珪酸カルシウム板などが使用される。耐火ボード30の厚みは、例えば、5mm以上30mm以下にすることができ、好ましくは9mm以上21mm以下にすることができるが、これに限定されない。耐火ボード30は、建築基準法第68条の26第1項の規定に基づき、同法第2条第九号及び同法施行令第108条の2(不燃材料)の規定に適合するものであることについて、国土交通大臣の認定を受けているものが好ましい。耐火ボード30は、例えば、正面視で矩形状に形成される。不燃性を有する耐火ボード30を設けた耐火構造1は耐火性が向上する。
【0038】
耐火ボード30は壁下地10の屋外側に配置されている。耐火ボード30は壁下地10と壁材20との間に配置されている。耐火ボード30の屋内側の面は、耐火シート12の屋外側の面に接触している。耐火ボード30の屋外側の面と壁材20の屋内側の面との間には通気層40が設けられている。耐火ボード30は釘又はビスなどの固定具で支持材11に固定される。すなわち、本実施形態では、屋内側から屋外側に向かって、壁下地10、耐火ボード30、通気層40、壁材20の順で並んでいる。
【0039】
本実施形態に係る耐火構造1は、支持材11の屋外側に複数の耐火シート12を備えている。また耐火シート12の屋外側には複数の耐火ボード30を備えている。そして、隣り合う耐火ボード30の突付け部31と、隣り合う耐火シート12の継ぎ目部121とが一致していない。突付け部31とは、隣り合う耐火ボード30の端面同士を突き合わせた部分に形成される。継ぎ目部121は、隣り合う耐火シート12の端部同士をつなぎ合わせた部分に形成される。そして、例えば、横方向に隣り合う耐火ボード30の突付け部31が、ある支持材11の屋外側に位置している場合、横方向に隣り合う耐火シート12の継ぎ目部121は、別の支持材11の屋外側に位置している。すなわち、突付け部31と継ぎ目部121とは、耐火構造1を屋外側から見たときに、横方向にずれた位置にあり、一直線上に並ばないように形成されている。
【0040】
本実施形態に係る耐火構造1は、実施形態1と同様に、耐火シート12で支持材11の耐火性を向上することができるため、従来のようなロックウール等の吹き付け作業が不要であり、施工性が向上する。また本実施形態に係る耐火構造1は、隣り合う耐火ボード30の突付け部31と、隣り合う耐火シート12の継ぎ目部121とが一致していないため、突付け部31で生じる不陸(段差)と、継ぎ目部121で生じる不陸(段差)とが重なりにくくなり、不陸を少なくすることができる。さらに、火災時に耐火ボード30同士に隙間が生じた場合に、また壁下地10よりも屋内側に耐火ボードが設けられていないため、壁下地10よりも屋内側の態様に規制が少なく、自由に内装を設定することができる。
【0041】
(実施形態3)
本実施形態に係る耐火構造1は、耐火ボード30の構成が実施形態1または2に係る耐火構造1と相違する。
【0042】
以下、実施形態1または2と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0043】
実施形態3で説明した構成は、実施形態1または2で説明した構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。
【0044】
図3に示すように、本実施形態に係る耐火構造1は、実施形態1において、耐火ボード30を更に備えているが、耐火ボード30は壁下地10の屋内側に配置されている。すなわち、耐火ボード30は支持材11の屋内側に配置されている。つまり、耐火ボード30は壁下地10と壁材20との間には配置されていない。よって、本実施形態では、屋内側から屋外側に向かって、耐火ボード30、壁下地10、通気層40、壁材20の順で並んでいる。耐火ボード30の屋外側の面は、支持材11の屋内側の面111に接触している。耐火ボード30は釘又はビスなどの固定具で支持材11に固定される。
【0045】
本実施形態に係る耐火構造1は、実施形態1と同様に、耐火シート12で支持材11の耐火性を向上することができるため、従来のようなロックウール等の吹き付け作業が不要であり、施工性が向上する。また本実施形態に係る耐火構造1は、壁下地10と壁材20との間には耐火ボード30が設けられていないため、壁材20の施工にあたって、耐火ボード30を考慮する必要がなく、壁材20の施工が容易に行える。
【0046】
(実施形態4)
本実施形態に係る耐火構造1は、壁下地10の構成が実施形態1~3に係る耐火構造1と相違する。
【0047】
以下、実施形態1~3と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0048】
実施形態4で説明した構成は、実施形態1~3で説明した構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。
【0049】
本実施形態に係る耐火構造1では、耐火シート12を支持材11の屋内側に配置している(
図4参照)。また本実施形態では、耐火シート12を支持材11の屋外側に配置していない。壁下地10の屋外側に壁材20が設けられている。壁下地10と壁材20との間には通気層40が設けられている。すなわち、耐火構造1は、屋内側から屋外側に向かって、壁下地10、通気層40、壁材20の順で並んでいる。また壁下地10と壁材20との間には耐火ボードが設けられていない。
【0050】
耐火シート12は横方向に隣り合う支持材11に架け渡して配置されている。本実施形態では、耐火シート12は、支持材11の屋内側の面111に支持されており、支持材11の屋外側の面112には支持されていない。したがって、耐火シート12は耐火ボードなどの板材には支持されていない。耐火シート12の横方向の端部の屋外側を向く面が支持材11の屋内側の面111に接触している。耐火シート12は支持材11に固定されている。耐火シート12を支持材11に固定するにあたって、タッカー、接着剤、釘及びビスなどが使用される。
【0051】
本実施形態に係る耐火構造1は、実施形態1と同様に、耐火シート12で支持材11の耐火性を向上することができるにもかかわらず、耐火シート12を施工するための部材や作業が少なくなって、施工に手間がかかりにくい。また本実施形態に係る耐火構造1は、壁下地10と壁材20との間には耐火ボード30が設けられていないため、壁材20の施工にあたって、耐火ボード30を考慮する必要がなく、壁材20の施工が容易に行える。
【0052】
(実施形態5)
本実施形態に係る耐火構造1は、耐火ボード30の構成が実施形態1~4に係る耐火構造1と相違する。
【0053】
以下、実施形態1~4と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0054】
実施形態5で説明した構成は、実施形態1~4で説明した構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。
【0055】
図5に示すように、本実施形態に係る耐火構造1は、実施形態4において、耐火ボード30を更に備えているが、耐火ボード30は壁下地10の屋外側に配置されている。すなわち、耐火ボード30は支持材11の屋外側に配置されている。つまり、耐火ボード30は壁下地10と壁材20との間には配置されている。よって、本実施形態では、屋内側から屋外側に向かって、壁下地10、耐火ボード30、通気層40、壁材20の順で並んでいる。耐火ボード30の屋内側の面は、支持材11の屋外側の面112に接触している。耐火ボード30は釘又はビスなどの固定具で支持材11に固定される。
【0056】
本実施形態に係る耐火構造1は、実施形態1と同様に、耐火シート12で支持材11の耐火性を向上することができるため、従来のようなロックウール等の吹き付け作業が不要であり、施工性が向上する。また本実施形態に係る耐火構造1は、壁下地10と壁材20との間には耐火ボード30が設けられていないため、壁材20の施工にあたって、耐火ボード30を考慮する必要がなく、壁材20の施工が容易に行える。また壁下地10よりも屋内側に耐火ボードが設けられていないため、壁下地10よりも屋内側の態様に規制が少なく、自由に内装を設定することができる。
【0057】
(実施形態6)
本実施形態に係る耐火構造1は、耐火ボード30の構成が実施形態1~5に係る耐火構造1と相違する。
【0058】
以下、実施形態1~5と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
【0059】
実施形態6で説明した構成は、実施形態1~5で説明した構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて適用可能である。
【0060】
図6に示すように、本実施形態に係る耐火構造1は、実施形態4において、耐火ボード30を更に備えている。耐火ボード30は壁下地10の屋内側に配置されている。すなわち、耐火ボード30は耐火シート12の屋内側に配置されている。つまり、耐火ボード30は壁下地10と壁材20との間には配置されていない。よって、本実施形態では、屋内側から屋外側に向かって、耐火ボード30、壁下地10、通気層40、壁材20の順で並んでいる。耐火ボード30の屋外側の面は、耐火シート12の屋内側の面に接触している。耐火ボード30は釘又はビスなどの固定具で支持材11に固定される。
【0061】
本実施形態に係る耐火構造1は、実施形態1と同様に、耐火シート12で支持材11の耐火性を向上することができるにもかかわらず、耐火シート12を施工するための部材や作業が少なくなって、施工に手間がかかりにくい。また本実施形態に係る耐火構造1は、壁下地10と壁材20との間には耐火ボード30が設けられていないため、壁材20の施工にあたって、耐火ボード30を考慮する必要がなく、壁材20の施工が容易に行える。
【0062】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る耐火構造(1)は、壁下地(10)の屋外側に壁材(20)が設けられている。壁下地(10)は、支持材(11)と、この支持材(11)の屋内側の面(111)又は屋外側の面(112)の少なくとも一方に支持された耐火シート(12)と、を備えている。
【0063】
この態様によれば、耐火シート(12)を支持するための板材が不要であり、また耐火シート(12)を板材に固定するための作業も不要となり、さらに支持材(10)の耐火性を耐火シート(12)で確保して、耐火材を吹き付ける必要もない。したがって、耐火シート(12)を施工するための部材や作業が少なくなって、施工に手間がかかりにくい、という利点がある。
【0064】
第2の態様に係る耐火構造(1)は、第1の態様において、耐火シート(12)は、熱発泡性である。
【0065】
この態様によれば、耐火シート(12)は、火災が発生したときにはその熱で発泡して、火災前の初期状態よりも体積を増加させることにより、耐火層を形成し、この耐火層で支持材(11)の耐火性を向上させることができる、という利点がある。
【0066】
第3の態様に係る耐火構造(1)は、第1又は第2の態様において、壁下地(10)と壁材(20)との間に耐火ボード(30)を更に備える。
【0067】
この態様によれば、耐火ボード(30)により、屋外側から屋内側に向かって熱や火炎が遮断されやすくなり、耐火性を向上させることができる、という利点がある。
【0068】
第4の態様に係る耐火構造(1)は、第3の態様において、支持材(11)の屋外側に複数の耐火シート(12)を備える。耐火シート(12)の屋外側に複数の耐火ボード(30)を備える。隣り合う耐火ボード(30)の突付け部(31)と、隣り合う耐火シート(12)の継ぎ目部(121)とが一致していない。
【0069】
この態様によれば、突付け部(31)で生じる不陸(段差)と、継ぎ目部(121)で生じる不陸(段差)とが重なりにくくなり、不陸を少なくすることができる、という利点がある。
【0070】
第5の態様に係る耐火構造(1)は、第3の態様において、支持材(11)の屋内側に耐火シート(12)を備える。支持材(11)の屋外側に耐火ボード(30)を備える。
【0071】
この態様によれば、耐火シート(12)及び耐火ボード(30)により耐火性を向上させることができる、という利点がある。また耐火シート(12)を施工するための耐火ボード(30)が必要でなく、施工に手間がかかりにくい、という利点がある。
【0072】
第6の態様に係る耐火構造(1)は、第1又は第2の態様において、壁下地(10)と壁材(20)との間に耐火ボードがない。
【0073】
この態様によれば、壁下地(10)よりも屋内側に耐火ボードが設けられていないため、壁下地(10)よりも屋内側の態様に規制が少なく、自由に内装を設定することができる。という利点がある。
【符号の説明】
【0074】
1 耐火構造
10 壁下地
11 支持材
111 屋内側の面
112 屋外側の面
12 耐火シート
121 継ぎ目部
20 壁材
30 耐火ボード
31 突付け部