(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】撮像素子及びその制御方法、及び、撮像装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H04N 25/70 20230101AFI20240522BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20240522BHJP
【FI】
H04N25/70
H04N23/60
(21)【出願番号】P 2020032191
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大下内 和樹
(72)【発明者】
【氏名】池戸 秀樹
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-033453(JP,A)
【文献】特許第6635221(JP,B1)
【文献】特開2017-183952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
H04N 23/00-23/959
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行列状に配置された複数の画素を有する画素アレイと、
前記複数の画素から信号の読み出し制御を行う読み出し手段と、
前記読み出された信号を、画像信号として出力する
第1の出力手段と、
前記読み出された信号を用いて、特徴量を抽出する
畳み込みニューラルネットワーク処理を行う抽出手段と、
前記特徴量を出力する第2の出力手段と、を有し、
前記読み出し手段による信号の読み出しと、前記抽出手段による前記
畳み込みニューラルネットワーク処理を並列処理することを特徴とする撮像素子。
【請求項2】
前記抽出手段は、前記複数の画素から、少なくとも前記
畳み込みニューラルネットワーク処理に必要な信号が読み出されてから、前記画素アレイの全体から信号が読み出される前に、前記
畳み込みニューラルネットワーク処理を開始することを特徴とする請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記読み出し手段は、行単位で前記信号を読み出し、
前記抽出手段は、前記畳み込みニューラルネットワーク
処理で用いるカーネルの行サイズ以上の行数の信号が読み出されると、前記
畳み込みニューラルネットワーク処理を開始することを特徴とする請求項2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記読み出し手段は、複数行単位で前記信号を読み出し、
前記カーネルの行サイズは、前記複数行の整数倍であることを特徴とする請求項3に記載の撮像素子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像素子と、
前記撮像素子から出力された信号を処理する信号処理手段と
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
前記信号処理手段は、前記抽出手段により抽出された特徴量に基づいて、前記画素アレイの領域に第1の領域と第2の領域を含む複数の領域を設定することを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
行列状に配置された複数の画素を有する画素アレイと、前記複数の画素から信号の読み出し制御を行う読み出し手段と、前記読み出された信号を、画像信号として出力する出力手段と、を有する撮像素子と、
前記読み出された信号を用いて、特徴量を抽出する特徴量抽出処理を行う抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された特徴量に基づいて、前記画素アレイの領域に第1の領域と第2の領域を含む複数の領域を設定する信号処理手段と、を有し、
前記読み出し手段による信号の読み出しと、前記抽出手段による前記特徴量抽出処理を並列処理
し、
前記抽出手段は、前記第1の領域と前記第2の領域とで、異なる特徴量抽出処理を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
行列状に配置された複数の画素を有する画素アレイと、前記複数の画素から信号の読み出し制御を行う読み出し手段と、前記読み出された信号を、画像信号として出力する出力手段と、を有する撮像素子と、
前記読み出された信号を用いて、特徴量を抽出する特徴量抽出処理を行う抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された特徴量に基づいて、前記画素アレイの領域に第1の領域と第2の領域を含む複数の領域を設定する信号処理手段と、を有し、
前記読み出し手段による信号の読み出しと、前記抽出手段による前記特徴量抽出処理を並列処理し、
前記抽出手段は、前記第1の領域と前記第2の領域とで、前記特徴量抽出処理を行う優先度を異ならせることを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
行列状に配置された複数の画素を有する画素アレイと、前記複数の画素から信号の読み出し制御を行う読み出し手段と、前記読み出された信号を、画像信号として出力する出力手段と、を有する撮像素子と、
前記読み出された信号を用いて、特徴量を抽出する特徴量抽出処理を行う抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された特徴量に基づいて、前記画素アレイの領域に第1の領域と第2の領域を含む複数の領域を設定する信号処理手段と、を有し、
前記読み出し手段による信号の読み出しと、前記抽出手段による前記特徴量抽出処理を並列処理し、
前記読み出し手段は、前記第1の領域と前記第2の領域とで、間引き読み出しを行う場合の間引き率、加算平均して読み出す場合の加算平均数、フレームレートの少なくともいずれかを異ならせることを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
前記抽出手段は、前記複数の画素から、少なくとも前記特徴量抽出処理に必要な信号が読み出されてから、前記画素アレイの全体から信号が読み出される前に、前記特徴量抽出処理を開始することを特徴とする請求項
7乃至9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記特徴量抽出処理は、畳み込みニューラルネットワークを用いた処理であって、
前記読み出し手段は、行単位で前記信号を読み出し、
前記抽出手段は、前記畳み込みニューラルネットワークで用いるカーネルの行サイズ以上の行数の信号が読み出されると、前記特徴量抽出処理を開始することを特徴とする請求項
10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記読み出し手段は、複数行単位で前記信号を読み出し、
前記カーネルの行サイズは、前記複数行の整数倍であることを特徴とする請求項
11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記特徴量抽出処理は、畳み込みニューラルネットワークを用いた処理であって、
前記抽出手段は、前記第1の領域と前記第2の領域とで、前記畳み込みニューラルネットワークで用いるカーネルの種類の数、前記カーネルのサイズ、前記カーネルのスライド量、プーリング層におけるプーリング法の少なくともいずれかを異ならせることを特徴とする請求項
7に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記信号処理手段は、前記特徴量に基づいて予め決められた被写体を検出し、
前記抽出手段は、更に、前記被写体の領域を表すマーキングデータを生成することを特徴とする請求項
6乃至
13のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項15】
行列状に配置された複数の画素を有する画素アレイと、前記複数の画素から信号の読み出し制御を行う読み出し手段と、前記読み出された信号を、画像信号として出力する第1の出力手段と、前記読み出された信号を用いて、特徴量を抽出する
畳み込みニューラルネットワーク処理を行う抽出手段と、
前記特徴量を出力する第2の出力手段と、を有する撮像素子の制御方法であって、
前記読み出し手段による信号の読み出しと、前記抽出手段による前記
畳み込みニューラルネットワーク処理を並列処理するように制御することを特徴とする撮像素子の制御方法。
【請求項16】
行列状に配置された複数の画素を有する画素アレイと、前記複数の画素から信号の読み出し制御を行う読み出し手段と、前記読み出された信号を、画像信号として出力する出力手段と、を有する撮像素子と、前記読み出された信号を用いて、特徴量を抽出する特徴量抽出処理を行う抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された特徴量に基づいて、前記画素アレイの領域に第1の領域と第2の領域を含む複数の領域を設定する信号処理手段と、を有する撮像装置の制御方法であって、
前記読み出し手段による信号の読み出しと、前記抽出手段による前記特徴量抽出処理を並列処理するように制御
し、前記抽出手段は、前記第1の領域と前記第2の領域とで、異なる特徴量抽出処理を行うことを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項17】
行列状に配置された複数の画素を有する画素アレイと、前記複数の画素から信号の読み出し制御を行う読み出し手段と、前記読み出された信号を、画像信号として出力する出力手段と、を有する撮像素子と、前記読み出された信号を用いて、特徴量を抽出する特徴量抽出処理を行う抽出手段と、前記抽出手段により抽出された特徴量に基づいて、前記画素アレイの領域に第1の領域と第2の領域を含む複数の領域を設定する信号処理手段と、を有する撮像装置の制御方法であって、
前記読み出し手段による信号の読み出しと、前記抽出手段による前記特徴量抽出処理を並列処理するように制御し、前記抽出手段は、前記第1の領域と前記第2の領域とで、前記特徴量抽出処理を行う優先度を異ならせることを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項18】
行列状に配置された複数の画素を有する画素アレイと、前記複数の画素から信号の読み出し制御を行う読み出し手段と、前記読み出された信号を、画像信号として出力する出力手段と、を有する撮像素子と、前記読み出された信号を用いて、特徴量を抽出する特徴量抽出処理を行う抽出手段と、前記抽出手段により抽出された特徴量に基づいて、前記画素アレイの領域に第1の領域と第2の領域を含む複数の領域を設定する信号処理手段と、を有する撮像装置の制御方法であって、
前記読み出し手段による信号の読み出しと、前記抽出手段による前記特徴量抽出処理を並列処理するように制御し、
前記読み出し手段は、前記第1の領域と前記第2の領域とで、間引き読み出しを行う場合の間引き率、加算平均して読み出す場合の加算平均数、フレームレートの少なくともいずれかを異ならせることを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項19】
コンピュータに、請求項
15乃至18のいずれか1項に記載の制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子及びその制御方法、及び、撮像装置及びその制御方法に関し、特に、画像信号の読み出しと画像の特徴を抽出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像を認識する分野において、ディープラーニング技術が応用されている。例えば、撮像した画像データに対して、例えば、CNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)を用いることで特徴量の抽出を行う技術がある。
【0003】
特許文献1では、CNNにおける畳み込み処理の一部をイメージセンサチップ内で行う撮像装置が開示されている。一例として、特許文献1では、畳み込み処理に用いるフィルタに応じて、各画素が所望の感度に設定された各画素ブロック内の画素の信号を加算読み出しすることで、積和演算を実施することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された撮像装置では、画素ごとに感度を変えたり、画素からの信号を加算読み出しする処理が行われるため、読み出した信号から観賞用の画像を生成しようとすると、画質が低下することになる。
【0006】
また、1フレーム分の画像信号を撮像素子から読み出してから、読み出した画像信号に対して特徴量の抽出処理を行う場合、得られた特徴量を次のフレームの撮影や次の特徴量抽出処理に利用しようとすると、フレームレートの低下を招くという課題があった。
【0007】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、画像信号の読み出しと特徴量の抽出処理とを、効率的に実施することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の撮像素子は、行列状に配置された複数の画素を有する画素アレイと、前記複数の画素から信号の読み出し制御を行う読み出し手段と、前記読み出された信号を、画像信号として出力する第1の出力手段と、前記読み出された信号を用いて、特徴量を抽出する畳み込みニューラルネットワーク処理を行う抽出手段と、前記特徴量を出力する第2の出力手段と、を有し、前記読み出し手段による信号の読み出しと、前記抽出手段による前記畳み込みニューラルネットワーク処理を並列処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像信号の読み出しと特徴量の抽出処理とを、効率的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態における撮像素子の概略構成を示したブロック図。
【
図2】第1の実施形態における特徴量抽出処理の一例を示したフローチャート。
【
図3】(a)第1の実施形態における画素信号の読み出し駆動と特徴量抽出処理とのタイミングを示した図、(b)画素信号の読み出し後に特徴量抽出処理を行う場合のタイミングの一例を示す図。
【
図4】第1の実施形態における画素信号の読み出し駆動と特徴量抽出処理との別のタイミングを示した図。
【
図5】第2の実施形態における撮像素子の概略構成を示したブロック図。
【
図6】第2の実施形態における画素信号の読み出し駆動と特徴量抽出処理とのタイミングを示した図。
【
図7】第3の実施形態における領域毎に異なる設定をする際の一例を示した図。
【
図8】第4の実施形態における撮像装置の全体構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態における撮像素子10の概略構成を示したブロック図である。
画素アレイ100は、行列状に並べて配置された複数の画素101で構成される。なお、
図1では、画素アレイ100を5行×4列分の画素101により表しているが、実際には、数千行、数千列に亘って画素101が配置される。
【0013】
垂直走査回路102は、タイミングジェネレータ(TG)103から出力された水平同期信号(HD)に基づいて、1HD毎に1行または複数行単位で画素101を順次走査する。このように、画素アレイ100を行単位で順次走査することで1フレーム分の画像信号を得ることができる。
【0014】
例えば、画素アレイ100がm行で構成され、1HDあたり1行ずつ順次走査する場合は、1フレーム分の画素信号の読み出しにはmHDの時間を要する。垂直走査回路102による制御により、画素101からは、ノイズレベルのアナログ信号であるノイズ信号と、入射光を光電変換して生成した電荷に基づくアナログ信号である光電変換信号とが、各列に配線された垂直信号線104を介して出力される。
【0015】
読み出し回路105は、各垂直信号線104に対応して列毎に設けられた複数のA/D変換器を有し、垂直信号線104を介して画素101から読み出されたアナログ信号をデジタル信号へとA/D変換する。また、読み出し回路105には、垂直信号線104を介して画素101に電流を供給する電流供給部や、アナログ信号を一時的に保持するメモリ部、画素101からのアナログ信号を増幅する列アンプ部等が含まれていても良い。
【0016】
信号保持部106は、読み出し回路105から出力される各列の信号を保持する。水平走査回路107は、信号保持部106を順次走査することで、信号保持部106に保持された各列の信号を、順次、出力切り替え部108に転送する。
【0017】
出力切り替え部108は、画像データ出力部109と信号変換部110へ、信号保持部106から出力された各列の信号を切り替えながら出力する。
【0018】
画像データ出力部109は、信号保持部106から出力された各列の信号を処理し、処理した信号を画像データとして撮像素子10の外部に出力する。
【0019】
信号変換部110は、信号保持部106から出力された各列の信号を、特徴量の抽出に適した信号に変換し、メモリ部111へ出力する。ここで行われる変換処理としては、例えば、A/D変換で変換されたデジタル信号のbit数を変えたり、解像度を変えたりすることが挙げられるが、これらの処理に限定されるものでは無い。
【0020】
特徴量抽出回路112は、メモリ部111に保持された信号に対して特徴量抽出処理を施し、メモリ部111に処理後の信号を出力する。なお、特徴量抽出回路112で行われる特徴量抽出処理については、
図2を参照して後述する。
【0021】
特徴量データ出力部113は、メモリ部111に保持された特徴量抽出処理により得られた信号を、特徴量データとして撮像素子10の外部に出力する。この特徴量データは、例えば被写体の判別や被写体の識別に用いることができる。
【0022】
TG103は、垂直走査回路102、読み出し回路105、信号保持部106、水平走査回路107、出力切り替え部108、画像データ出力部109、信号変換部110、メモリ部111、特徴量抽出回路112、特徴量データ出力部113のそれぞれにタイミング信号を供給する。
【0023】
次に、特徴量抽出回路112で行われる特徴量抽出処理について、
図2を用いて説明する。本実施形態では、特徴量抽出処理として、畳み込みニューラルネットワークを実行する場合について説明する。
【0024】
畳み込みニューラルネットワークでは、畳み込み層やプーリング層が主に使われる。畳み込み層では、カーネル(もしくはフィルタ)と呼ぶデータと、画像データの一部でカーネルと同じサイズの(ウィンドウ)のデータとの間で、各要素の積の和を演算し、1つの数値に変換する処理を行う。この変換処理を、ウィンドウを少しずつスライドさせながら行う。
【0025】
カーネルと画像データが似たようなデータだった場合は、演算した積和が高くなるため、画像の特徴量を抽出できる。この処理において、抽出したい特徴量に応じた様々なカーネルを適用することで、所望の特徴量を取り出すことができる。
【0026】
プーリング層では、畳み込み層と同じようにウィンドウを持ち、カーネルを画像全体に対して適用する統計的な処理が行われる。例えば、Maxプーリング層では、カーネル内の最大値を取り、Averageプーリング 層では、カーネル内の画像の値の平均値を取る。
【0027】
また、畳み込み層の後、活性化関数演算されることもある。例えば、正のデータはそのままとし、0未満の負のデータは0に置き換える正規化線形関数(Rectified Liner Units)が挙げられる。
【0028】
畳み込み層、活性化関数演算、プーリング層を任意の回数繰り返すことで、特徴量データが生成される。生成された特徴量データは、全結合層により1次元化され、特徴量データ出力部113より撮像素子10の外部に出力される。なお、全結合層は通さずに、特徴量データを特徴量データ出力部113から外部に出力してもよい。
【0029】
このように、入力された画像データに対して、畳み込み、活性化関数演算、プーリング、全結合が実行され、特徴量が抽出された特徴量データが形成される。
【0030】
図3(a)は、第1の実施形態において、任意のフレーム(第nフレーム)における、画素アレイ100からの画素信号の読み出し駆動と、特徴量抽出処理とのタイミングを示した図である。なお、特徴量抽出回路112で用いられるカーネル(フィルタ)のサイズが3×3であるものとして説明する。また、画素アレイ100の行数はm行とし、ローリングシャッタ方式により、1行毎に画素101の画素信号を順次読み出すものとする。
【0031】
フレームの先頭において、画素アレイ100の1行目の画素101から画素信号が読み出され、読み出し回路105においてデジタル信号に変換された画素信号が、信号保持部106に保持される。
【0032】
1行目の画素信号の読み出し終了後、2行目の画素信号の読み出しと並行して、信号保持部106に保持された1行目の画素信号は、出力切り替え部108を介し、画像データ出力部109から画像データとして撮像素子10の外部に出力される。また、信号保持部106に保持された1行目の画素信号は、出力切り替え部108を介して信号変換部110にも入力され、特徴量抽出処理に適した信号に変換されて、メモリ部111に保持される。
【0033】
続いて、3行目の画素信号の読み出しと並行して、信号保持部106に保持された2行目の画素信号は、出力切り替え部108を介し、画像データ出力部109から画像データとして撮像素子10の外部に出力される。また、信号保持部106に保持された2行目の画素信号は、出力切り替え部108を介して信号変換部110にも入力され、特徴量抽出処理に適した信号に変換されて、メモリ部111に保持される。
【0034】
更に、4行目の画素信号の読み出しと並行して、信号保持部106に保持された3行目の画素信号は、出力切り替え部108を介し、画像データ出力部109から画像データとして撮像素子10の外部に出力される。また、信号保持部106に保持された3行目の画素信号は、出力切り替え部108を介して信号変換部110にも入力され、特徴量抽出処理に適した信号に変換されて、メモリ部111に保持される。ここで、特徴量抽出処理に用いられるカーネルと同じ行サイズの信号が得られるので、特徴量抽出処理を開始する。
【0035】
同様にして、5行目の画素信号の読み出しと並行して、4行目の画素信号に基づく画像データの出力と、2~4行目の画像信号に基づく特徴量抽出処理を行うことができる。
【0036】
以降、同様の動作を繰り返し、m行目の画素信号の読み出しと並行して、信号保持部106に保持されたm-1行目の画素信号は、出力切り替え部108を介し、画像データとして画像データ出力部109でセンサ外部に出力される。また、信号保持部106に保持されたm-1行目の信号は、出力切り替え部108を介して信号変換部110にも入力され、特徴量抽出処理に適した信号に変換され、メモリ部111に保持される。そして、m-3行目、m-2行目の信号と共に、特徴量抽出処理に用いられる。
【0037】
更に、m行目の画素信号の処理を行って、1フレーム分の画像データと特徴量データが撮像素子10の外部に出力される。
【0038】
なお、上述した説明では、特徴量抽出回路112において、特徴量抽出処理に用いるカーネルの行サイズと同じ行数の信号がメモリ部111に保持されると、特徴量抽出処理を開始するものとして説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものでは無く、カーネルの行サイズ以上の行数の信号がメモリ部111に保持されてから、1フレーム分の信号が全て読み出されるより前に特徴量抽出処理を開始すればよい。このようにすることで、サイズの異なる様々なカーネルを適用した場合にも、信号の読み出しと並行して、特徴量抽出処理を行うことができる。
【0039】
また、本実施形態では、画像データと特徴量データとを共に撮像素子10の外部に出力する期間を有する。その際に、画像データと特徴量データを並列に出力しても良いし、画像データと特徴量データとを重畳して出力しても良い。これは、撮像素子10内に特徴量抽出回路112を設ける構成を生かした協調動作である。
【0040】
ここで、比較のために、画素信号の読み出しと特徴量抽出処理とを並列処理しない場合のタイミングを、
図3(b)に示す。
図3(b)から分かるように、並列処理しない場合には、すべての行の画像データを読み出した後に、特徴量抽出処理と特徴量データ出力が行われるため、フレームの読み出しを開始してから、特徴量データを得るまでの時間が長くかかる。従って、得られた特徴量データを用いて次の信号の読み出しや処理を制御したい場合に、フレームレートが低下したり、制御の適用開始タイミングが遅くなってしまう。
【0041】
上記の通り第1の実施形態によれば、画素信号の読み出しと特徴量抽出処理とを並行して行うことで、画素信号の読み出しと特徴量抽出処理とを効率的に実施することができる。
【0042】
なお、上述した例では、フレームごとに画像データと特徴量データとを出力したが、特徴量処理の演算規模が大きい場合には、フレームにまたがって特徴量データを出力することも可能である。その場合の処理のタイミングを
図4に示す。
図4のように、第nフレームで開始した特徴量抽出処理は、第n+1フレームで終了すると共に、第n+1フレームでは、第n+1フレームの画像データと第nフレームの特徴量データとが、撮像素子10の外部に出力される。
【0043】
また、垂直走査回路102は、フレーム間で解像度やフレームレートを変えて画素アレイ100からの信号の読み出しを制御することも考えられる。一般的に画素信号の読み出しにおいて、画素信号を加算平均して読み出す技術が知られている。例えば、垂直信号線104上で行方向に画素信号を加算平均したり、読み出し回路105において、水平方向に加算平均したりする駆動がある。いずれも、解像度、フレームレートのトレードオフ関係にある。
【0044】
また、特徴量抽出処理において、カーネルの種類が多いほど、カーネルのサイズが小さいほど、カーネルのスライド量が小さいほど、特徴量抽出の精度があがる。
【0045】
例えば、抽出された特徴量から被写体の有無を判別し、次のフレームから詳細に被写体の識別をしたい、というような用途が挙げられる。その場合には、被写体の有無を判別するときには、カーネルの種類を少なく、カーネルサイズを大きくし、特徴量抽出処理の演算負荷を小さくする。
【0046】
被写体が有ることを判別し、被写体を識別する際には、カーネルの種類を多くし、カーネルサイズを小さくし、特徴量抽出の精度を上げるといった方法でよい。さらに、被写体が有ることを判別した場合、次のフレーム以降で解像度を上げても良い。
なお、解像度の変更は、信号変換部110で解像度を落としてもよい。その場合には、特徴量抽出回路への入力データは低解像となるが、画像データは高解像度となる。
【0047】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、画素信号を1行ずつ順次読み出す場合について説明したが、第2の実施形態では、複数行単位で同時に読み出す場合について説明する。
【0048】
図5は、第2の実施形態における撮像素子20の概略構成を示したブロック図である。
図1に示す構成との差は、各
列に複数の垂直信号線104が配線され、この垂直信号線104の数に対応する複数行の画素信号を、同時に読み出す点である。それ以外は
図1と同様であるため、説明を省略する。なお、
図5では、一例として、各
列に3本の垂直信号線104が配線され、1HD毎に3行ずつ同時に画素信号を読み出すと共に、3行分の画素信号がメモリ部111に保持される。
【0049】
図6は、第2の実施形態における画素信号の読み出し駆動と、特徴量抽出処理とのタイミングを示した図である。
図6では、上述したように、1HDの間に、画素信号の読み出しを3行ずつ行う場合について示す。この場合、カーネルのサイズを3×3とする。カーネルの行サイズが3行であるため、メモリ部111に3行分のデータが保持された時点から、特徴量抽出処理を開始することができる
。
【0050】
これに対し、例えば、1HDにおける画素信号の読み出し行数が3行でカーネルの行サイズが5行である場合、特徴量抽出処理を開始できるのは、6行分の画素信号を読み出した2HD後である。また、1行分の信号を余分にメモリ部111に確保する必要がある。
【0051】
また、次の1HDで3行分の画素信号を読み出したとしても、処理に必要な5行分の画素信号は得られないため、更に次の1HDで3行分の画素信号が読み出されるのを待たなければならない。その際には、2行分の画素信号が余分にメモリ部111に保持されることになる。
【0052】
従って、カーネルの行サイズを、1HDにおける画素信号の読み出し行数の整数倍とすると、効率よく特徴量抽出処理を開始することができる。また、メモリ部111の回路規模を削減することができる。
【0053】
なお、上述した第1及び第2の実施形態では、特徴量抽出処理を撮像素子10または20の内部で行うものとして説明したが、本発明はこれに限られるものでは無い。例えば、信号変換部や特徴量抽出回路を撮像素子10または20の外部に構成した場合、画素信号を撮像素子10または20の外部に出力し、特徴量抽出処理に必要な行数以上の信号が揃った時点で、特徴量抽出処理を開始すればよい。即ち、特徴量抽出回路が撮像素子10または20の内部にあるか外部にあるかに関わらず、撮像素子10または20における画素の読み出し処理と、特徴量抽出処理を並列処理することで、読み出し処理と特徴量抽出処理とを効率的に実施することができる。
【0054】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
上述したように、特徴量抽出回路112により抽出された特徴量データは、被写体の有無の判別や、被写体の識別等に用いることができる。第3の実施形態では、特徴量データを利用して、例えば被写体を含む領域とそれ以外の領域とに分け、更に、異なる特徴量抽出処理を行う場合について説明する。
【0055】
図7(a)は、画素アレイ100と被写体200とを重ねて表した模式図、
図7(b)は、特徴量抽出処理を異ならせる領域を示す図である。特徴量データを用いて、
図7(a)のように被写体200があることを検出した場合に、画素アレイ100の領域に対して、
図7(b)の被写体200に対応する被写体領域201と、被写体200以外に対応する非被写体領域202とを設定する。
【0056】
そして、本第3の実施形態では、被写体領域201と非被写体領域202とで異なる特徴量抽出処理を行って、特徴量データを出力する。異なる特徴量抽出処理としては、例えば畳み込み層としては、カーネルの種類、カーネルのサイズ、カーネルのスライド量等を変えることが挙げられる。また、例えばプーリング層としては、maxプーリング法、Averageプーリング法等が挙げられる。
【0057】
具体的には、被写体領域201では、非被写体領域202よりも、使用するカーネルの種類を多くし、カーネルのサイズを小さくし、カーネルのスライド量を小さくすることで、被写体の特徴量の抽出精度を上げる。
【0058】
また、被写体領域201と非被写体領域202とで、特徴量抽出処理の順番の優先度を変えても良い。例えば、被写体領域201を非被写体領域202より優先して、特徴量抽出処理を行う。
【0059】
また、被写体領域201と非被写体領域202とで、画素アレイ100から異なる駆動方法により画素信号を読み出しても良い。例えば、間引き率や、画素信号を加算平均する行数または列数、フレームレート等が挙げられる。
【0060】
ここで、間引き率とは、領域の全単位画素数に対する画素信号の読み出しを行う画素数の割合をいう。例えば、ある画素領域の間引き率が1である場合は、その画素領域内の全単位画素から画素信号の読み出しを行うことを意味する。また、ある画素領域の間引き率が0.25である場合は、その画素領域内の1/4の画素から画素信号の読み出しを行うことを意味する。従って、間引き率が大きいほど、被写体200を鮮明に撮影することができる。
【0061】
また、加算平均数とは、行方向や列方向に近接する単位画素の画素信号を加算平均する場合の、その加算平均する単位画素数のことを表す。このような加算平均の処理は、例えば近接する単位画素101の画素信号を、垂直信号線104で混合することで行われる。このような近接する単位画素の画素信号を加算平均することにより、ある間引き率で間引いて単位画素の画素信号を読み出す処理と同じような効果がある。
【0062】
従って、被写体領域201では、非被写体領域202よりも間引き率等を大きくしたり、加算平均する行数や列数を少なくする。
【0063】
また、フレームレートとは、単位時間あたりに読み出されるフレーム数を表す。フレームレートが高いほど、被写体200の動きが滑らかになり、像ぶれが発生しにくくなる。従って、被写体領域201では、非被写体領域202よりもフレームレート(画素信号を読み出す回数)を高くする。
【0064】
また、被写体200を認識したときに、特徴量抽出回路112は、被写体200の部分画像に枠を付けるマーキングデータを形成しても良い。その場合は、画像データ出力あるいは特徴量データ出力と共に、マーキングデータもセンサ外部に出力される。
【0065】
上記の通り本第3の実施形態によれば、被写体200を含まない非被写体領域202に対応する特徴量抽出処理の演算負荷を下げることで、全領域を同一の特徴量抽出処理をした場合と比較して、特徴量抽出時間と特徴量データの低減を図ることが可能となる。
【0066】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図8は、第4の実施形態における撮像装置800(デジタルカメラ、車載カメラ、スマートフォン等)の概略構成を示すブロック図である。
【0067】
図8において、撮像装置800の撮像光学系は、撮像レンズ801及び絞り802を備える。撮像レンズ801及び絞り802を通過した光は、撮像レンズ801の焦点位置近傍にある撮像素子803の撮像面上に結像する。なお、撮像レンズ801は、1枚のレンズとして図示しているが、実際には複数のレンズから成るレンズ群で構成される。撮像素子803は、撮像レンズ801により結像された被写体像を信号として取り込む機能を有する。本実施形態では、撮像素子803は、第1及び第2の実施形態で説明した撮像素子10または撮像素子20の構成を有する。
【0068】
信号処理回路804は、撮像素子803から出力される信号に対して、信号増幅、基準レベル調整等の各種の補正や、データの並べ替え等を行う。なお、基準レベル調整等、一部の信号処理機能は、撮像素子803の中に設けても良い。逆に、撮像素子10または撮像素子20内に構成された特徴量抽出回路112における処理を、信号処理回路804で行うように構成してもよい。
【0069】
タイミング発生回路805は撮像素子803や信号処理回路804に駆動タイミング信号を出力する。
全体制御・演算回路806は、撮像素子803や信号処理回路804等を含む撮像装置800全体の統括的な駆動及び制御を行う。また、信号処理回路804から出力された画像信号に対して、所定の画像処理や欠陥補正等を施す。メモリ回路807及び記録回路808は、全体制御・演算回路806から出力された画像信号等を記録保持する不揮発性メモリあるいはメモリカード等の記録媒体である。
【0070】
操作回路809は、撮像装置800に備え付けられた操作部材からの信号を受け付け、全体制御・演算回路806に対してユーザーの命令を反映する。表示回路810は撮影後の画像やライブビュー画像、各種設定画面等を表示する。
<他の実施形態>
なお、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0071】
また、本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0072】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0073】
10,20:撮像素子、100:画素アレイ、101:画素、102:垂直走査回路、103:タイミングジェネレータ、105:読み出し回路、106:信号保持部、107:水平走査回路、108:出力切り替え部、109:画像データ出力部、110:信号変換部、111:メモリ部、112:特徴量抽出回路、113:特徴量データ出力部、800:撮像装置、803:撮像素子、804:信号処理回路