(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】繊維製品用液体洗剤物品
(51)【国際特許分類】
C11D 17/08 20060101AFI20240522BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20240522BHJP
C11D 1/14 20060101ALI20240522BHJP
C11D 1/83 20060101ALI20240522BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20240522BHJP
C11D 3/30 20060101ALI20240522BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20240522BHJP
D06L 1/12 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D17/04
C11D1/14
C11D1/83
C11D3/20
C11D3/30
C11D1/72
D06L1/12
(21)【出願番号】P 2020032237
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】小松 義由己
(72)【発明者】
【氏名】廣島 理文
(72)【発明者】
【氏名】内藤 しおり
(72)【発明者】
【氏名】久保田 遼
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-214576(JP,A)
【文献】特開2005-096839(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0107341(US,A1)
【文献】特表2017-516720(JP,A)
【文献】特開2017-214567(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209085(WO,A1)
【文献】特開2019-044323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製品用液体洗剤組成物を樹脂製の容器に収容してなる繊維製品用液体洗剤物品であって、
前記繊維製品用液体洗剤組成物は、(A)内部オレフィンスルホン酸塩〔以下、(A)成分という〕、(B)非イオン界面活性剤〔以下、(B)成分という〕、(C)炭素数2以上4以下の水溶性グリコール化合物〔以下、(C)成分という〕及び水を含有し、(A)成分中の炭素数18の内部オレフィンスルホン酸塩〔以下、(A1)成分という〕の割合が80質量%以上であり、(A)成分を1質量%以上28質量%以下含有し、(B)成分を0.1質量%以上20質量%以下含有し、(C)成分を3質量%以上30質量%以下含有し、(A)成分及び(B)成分を合計で1質量%以上30質量%以下、水を40質量%以上含有し、
前記容器は、底部と該底部から立ち上がる側壁とを有し、前記底部と前記側壁は前記繊維製品用液体洗剤組成物の収容部を形成し、前記収容部は、平面からみた前記底部の最大長を2等分する平面に関して相互に非対称になる形状を有し、
前記容器は、充填容量100mlあたりの質量が3g以上12g以下である、
繊維製品用液体洗剤物品。
【請求項2】
(A1)成分が、炭素数18の内部オレフィンスルホン酸塩のスルホン酸基が2位以上4位以下に存在する炭素数18の内部オレフィンスルホン酸塩(IO-1S)とスルホン酸基が5位以上に存在する炭素数18の内部オレフィンスルホン酸塩(IO-2S)とを含み、(IO-1S)の含有量と(IO-2S)の含有量との質量比である(IO-1S)/(IO-2S)が0.5以上10以下である、請求項1に記載の繊維製品用液体洗剤物品。
【請求項3】
前記繊維製品用液体洗剤組成物における(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比(A)/(B)が、0.1以上1以下である、請求項1又は2に記載の繊維製品用液体洗剤物品。
【請求項4】
前記繊維製品用液体洗剤組成物が、更に(D)アミン及びアンモニアから選ばれる化合物を0.01質量%以上10質量%以下含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の繊維製品用液体洗剤物品。
【請求項5】
前記繊維製品用液体洗剤組成物が、更に(E)下記一般式(E1)で表される化合物を0.1質量%以上30質量%以下含有する、請求項1~4の何れか1項に記載の繊維製品用液体洗剤物品。
R
1e-O-(CH
2CHR
2eO)
n-H (E1)
〔式中、R
1eは炭素数1以上5以下のアルキル基又はフェニル基、R
2eは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基、nは平均付加モル数を示す1以上5以下の数であり、n個のR
2eは同一でも異なっていても良い。〕
【請求項6】
容器は、ボトル容器である、請求項1~5の何れか1項に記載の繊維製品用液体洗剤物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品用液体洗剤物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者が繊維製品用液体洗剤に求める性能は多様化しており、洗浄性能だけでなく、仕上がり性もまた求められている。具体的には、柔軟剤を使用しなくても、繊維製品に対して柔らかく滑やかな仕上がり性を与えられる洗剤が求められている。
【0003】
従来、アニオン性界面活性剤、特にアルキルベンゼンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、更には二重結合をオレフィン鎖の末端ではなく内部に有する内部オレフィンを原料として得られる内部オレフィンスルホン酸塩、炭素数2~3のオキシアルキレン基を含むノニオン界面活性剤は、家庭用及び工業用の洗浄成分として広く用いられている。
【0004】
特許文献1~3には、特定の炭素数を有する内部オレフィンスルホン酸塩及びこれを含有する洗剤組成物が記載されている。特許文献1、2には、毛髪洗浄時の起泡性や泡質などに優れることが記載されている。特許文献3には、特定のノニオン界面活性剤との併用により繊維を柔らかく仕上げることが記載されている。また、特許文献4には、所定の内部オレフィンスルホン酸塩を所定の洗濯方法で用いることで、繊維製品に柔軟性などの風合いを付与できることが記載されている。特許文献5には、所定の内部オレフィンスルホン酸塩を所定の洗濯方法で用いることで、繊維製品が有する吸水性を維持できることが記載されている。特許文献6には、所定の内部オレフィンスルホン酸塩を、繊維製品を柔らかく仕上げる改質剤として用いることが開示されている。
さらに、近年、液体洗剤においても、見た目の印象が購入意向にも大きく影響するデザイン性だけでなく、持ち易さ等の使い勝手を考慮したデザインの容器が増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-077126号公報
【文献】特開2014-076988号公報
【文献】特開2017-214567号公報
【文献】特開2017-214678号公報
【文献】特開2018-104880号公報
【文献】特開2018-66102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
界面活性剤として内部オレフィンスルホン酸塩を用いた洗剤は、繊維製品を柔らかな風合いに仕上げることが知られているが、内部オレフィンスルホン酸は、低温(例えば0℃以下)において固化してしまう上、冬場などの低温での使用において性能が発揮しにくくなる傾向がある。本発明者らは、これら課題が液体洗剤を充填する容器にも影響されること、そして対称容器に比べて非対称容器に生じ易いことを見出した。洗剤として内部オレフィンスルホン酸塩を使用することは知られていたが、限定的な内部オレフィンスルホン酸塩を含有する液体洗剤についてはまだ知見が少なく、容器による影響は全く知られていない。前記したように非対称容器は、デザイン性からの自由度が高いのみならず、使い勝手の良さ、延いてはバリアフリーの可能性も視野に入れての設計が可能であることから、内部オレフィンスルホン酸塩を用いた洗剤の非対称容器における課題を解決できることは望ましいと考えられる。
【0007】
本発明は、内部オレフィンスルホン酸塩を含有する液体洗剤と非対称の容器とを用いて、冬場の過酷な低温洗濯環境下での繊維製品に対する柔軟性に優れ、かつ注ぎやすさに優れる繊維製品用液体洗剤物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の内部オレフィンスルホン酸塩を用いた液体洗剤につき鋭意研究を進めたところ、非対称の容器に充填した場合であって、低温での保存と低温での洗浄であっても、洗浄性のみならず、柔軟性を付与することができる液体洗剤組成物を見出した。
内部オレフィンスルホン酸塩を用いた液体洗剤は、特に内部オレフィンスルホン酸塩として炭素数が18の化合物を主に含有する液体洗剤に関し、非対称容器、例えば非対称ボトルで凍結しやすくなり設計通りの機能が発現しにくくなることが判明した。これは、非対称容器の場合、正立静置下で温度低下による充填溶液の対流に左右差が生じるため、容器内部に温度の偏りが起こり、溶解度の違いによる溶質濃度の偏重が生じ易くなり、その結果、低温保存後に均一に回復できなくなるためであると推察される。本発明では、内部オレフィンスルホン酸塩を配合した組成を検討し、通常であれば非対称容器では低温による影響を受けやすいと考えられる含有量であっても、効果が損なわれない配合組成を見いだしたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、繊維製品用液体洗剤組成物を樹脂製の容器に収容してなる繊維製品用液体洗剤物品であって、
前記繊維製品用液体洗剤組成物は、(A)内部オレフィンスルホン酸塩〔以下、(A)成分という〕、(B)非イオン界面活性剤〔以下、(B)成分という〕、(C)炭素数2以上4以下の水溶性グリコール化合物〔以下、(C)成分という〕及び水を含有し、(A)成分中の炭素数18の内部オレフィンスルホン酸塩〔以下、(A1)成分という〕の割合が80質量%以上であり、(A)成分を1質量%以上28質量%以下含有し、(B)成分を0.1質量%以上20質量%以下含有し、(C)成分を3質量%以上30質量%以下含有し、(A)成分及び(B)成分を合計で1質量%以上30質量%以下、水を40質量%以上含有し、
前記容器は、底部と該底部から立ち上がる側壁とを有し、前記底部と前記側壁は前記繊維製品用液体洗剤組成物の収容部を形成し、前記収容部は、平面からみた前記底部の最大長を2等分する平面に関して相互に非対称になる形状を有し、
前記容器は、充填容量100mlあたりの質量が3g以上12g以下である、
繊維製品用液体洗剤物品に関する。
【0010】
以下、前記所定の繊維製品用液体洗剤組成物を、本発明の繊維製品用液体洗剤組成物として、前記所定の容器を、本発明の容器として説明する場合がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冬場の過酷な低温洗濯環境下においても繊維製品に柔軟性および注ぎやすさに優れる繊維製品用液体洗剤物品を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
[繊維製品用液体洗剤組成物]
<(A)成分>
本発明の(A)成分は、内部オレフィンスルホン酸塩である。(A)成分の内部オレフィンスルホン酸塩は、炭素数12以上、更に16以上24以下の内部オレフィンスルホン酸塩であってよい。
そして、(A)成分中の炭素数18の内部オレフィンスルホン酸塩〔(A1)成分〕の割合が80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下であり、100質量%であってもよい。炭素数18以外の内部オレフィンスルホン酸塩は、炭素数が好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更により好ましくは16以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更により好ましくは20以下の内部オレフィンスルホン酸塩である。
(A)成分、(A1)成分の炭素数は、スルホン酸塩が共有結合した内部オレフィンの炭素数を表す。
本発明では、(A)成分として所定量の(A1)成分を用いることで、柔軟性に優れる。
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物は、柔軟性の観点から、好ましくは(A)成分として炭素数12以上、更に16以上24以下の内部オレフィンスルホン酸塩を含有し、この炭素数の範囲の(A)成分中、(A1)成分の割合が80質量%以上である内部オレフィンスルホン酸塩を含有する。
なお、本発明では、(A)成分、(A1)成分の含有量は、特に規定がない限り、ナトリウム塩に換算した場合の量である。すなわち、ナトリウム換算の量で(A)成分や(A1)成分の質量%や質量比を算出する。また、以下、(A)成分として説明している記載は(A1)成分にも適用できる。
【0014】
(A)成分の内部オレフィンスルホン酸塩は、原料として、炭素数18の内部オレフィン(二重結合をオレフィン鎖の内部に有するオレフィン)を80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上含む内部オレフィンをスルホン化、中和及び加水分解することにより得られるスルホン酸塩である。
【0015】
かかる内部オレフィンには、二重結合の位置が炭素鎖の1位に存在する、いわゆるアルファオレフィン(以下、α-オレフィンともいう。)を微量に含有するものも含まれる。また、内部オレフィンをスルホン化すると、定量的にβ-サルトンが生成し、β-サルトンの一部は、γ-サルトン、オレフィンスルホン酸へと変化し、更にこれらは中和・加水分解工程においてヒドロキシアルカンスルホン酸塩と、オレフィンスルホン酸塩へと転換する(例えば、J. Am. Oil Chem. Soc. 69, 39(1992))。ここで、得られるヒドロキシアルカンスルホン酸塩のヒドロキシ基は、アルカン鎖の内部にあり、オレフィンスルホン酸塩の二重結合はオレフィン鎖の内部にある。また、得られる生成物は、主にこれらの混合物であり、またその一部には、炭素鎖の末端にヒドロキシ基を有するヒドロキシアルカンスルホン酸塩、又は炭素鎖の末端に二重結合を有するオレフィンスルホン酸塩が微量に含まれる場合もある。
本明細書では、これらの各生成物及びそれらの混合物を総称して内部オレフィンスルホン酸塩((A)成分)という。また、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩を内部オレフィンスルホン酸塩のヒドロキシ体(以下、HAS又はHAS体ともいう。)、オレフィンスルホン酸塩を内部オレフィンスルホン酸塩のオレフィン体(以下、IOS体ともいう。)という。
なお、(A)成分中の化合物のHAS体とIOS体の質量比は、高速液体クロマトグラフィー質量分析計(以下、HPLC-MSと省略)により測定できる。具体的には、(A)成分のHPLC-MSピーク面積から質量比を求めることができる。
【0016】
内部オレフィンスルホン酸塩の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属(1/2原子)塩、アンモニウム塩又は有機アンモニウム塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。有機アンモニウム塩としては後述する炭素数2以上6以下のアルカノールアンモニウム塩が挙げられる。有機アンモニウム塩にはアミンの塩も含む。内部オレフィンスルホン酸塩の塩は、汎用性の観点から、好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩、カリウム塩である。
【0017】
(A)成分の内部オレフィンスルホン酸塩のスルホン酸基は、上記の製法から明らかなように、内部オレフィンスルホン酸塩の炭素鎖、すなわちオレフィン鎖又はアルカン鎖の内部に存在し、その一部に炭素鎖の末端にスルホン酸基が存在するものも微量に含まれる場合もある。
【0018】
(A)成分中における、スルホン酸基が5位以上、好ましくは5位以上9位以下に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量は、繊維の柔軟性向上の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下である。(A1)成分中における、スルホン酸基が5位以上、好ましくは5位以上9位以下に存在する内部オレフィンスルホン酸塩の含有量も、この範囲が好ましい。
【0019】
(A)成分中における、スルホン酸基が2位以上4位以下に存在する内部オレフィンスルホン酸塩[以下(IO-1S)という場合がある]の含有量と、スルホン酸基が5位以上、好ましくは5位以上9位以下に存在する内部オレフィンスルホン酸塩[以下(IO-2S)という場合がある]の含有量との質量比である、(IO-1S)/(IO-2S)は、繊維の柔軟性向上の観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.75以上、更に好ましくは0.8以上、更に好ましくは1.0以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは5.5以下、更により好ましくは4以下である。(A1)成分中における、(IO-1S)/(IO-2S)の質量比も、この範囲が好ましい。
【0020】
尚、(A)成分中における、スルホン酸基の位置の異なる各化合物の含有量は、HPLC-MSにより測定できる。本明細書におけるスルホン酸基の位置の異なる各化合物の含有量は、(A)成分の全HAS体における、スルホン酸基が各位置にある化合物のHPLC-MSピーク面積に基づく質量比として求めるものとする。
【0021】
(A)成分中における、スルホン酸基が1位に存在するオレフィンスルホン酸塩の含有量は、洗浄に用いる水の温度が0℃以上15℃以下の低温であっても、繊維に良好な柔軟性を付与できる観点から、(A)成分中に、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、そして、生産コストの低減、及び生産性向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上である。(A1)成分中における、スルホン酸基が1位に存在するオレフィンスルホン酸塩の含有量も、この範囲が好ましい。
これらの化合物のスルホン酸基の位置は、オレフィン鎖又はアルカン鎖における位置である。
【0022】
前記の内部オレフィンスルホン酸塩は、ヒドロキシ体とオレフィン体の混合物であることが出来る。(A)成分中の内部オレフィンスルホン酸塩のオレフィン体の含有量と内部オレフィンスルホン酸塩のヒドロキシ体の含有量との質量比(オレフィン体/ヒドロキシ体)は、0/100以上、更に5/95以上、そして、50/50以下、更に40/60以下、更に30/70以下、更に25/75以下であることが出来る。
【0023】
(A)成分中における内部オレフィンスルホン酸塩のヒドロキシ体の含有量と内部オレフィンスルホン酸塩のオレフィン体の含有量との質量比は、(A)成分から、HPLC-MSにより実施例記載の方法で測定することができる。
【0024】
(A)成分は、例えば、原料として、炭素数18の内部オレフィンを所定量含む内部オレフィン、好ましくは炭素数18の内部オレフィンを、スルホン化、中和及び加水分解することにより製造することができる。スルホン化反応は、内部オレフィン1モルに対し三酸化硫黄ガスを1.0~1.2モル反応させることにより行うことができる。反応温度は、20~40℃で行うことができる。
中和は、スルホン酸基の理論値に対し1.0~1.5モル倍量の水酸化ナトリウム、アンモニア、2-アミノエタノール等のアルカリ水溶液を反応させることにより行なわれる。加水分解反応は、水の存在下、90~200℃で30分~3時間反応を行えばよい。これらの反応は、連続して行うことができる。また反応終了後は、抽出、洗浄等により精製することができる。
なお、内部オレフィンスルホン酸塩(A)を製造するにあたり、炭素数18の内部オレフィンを主に含む原料内部オレフィンを用いてスルホン化、中和、加水分解の処理を行ってもよく、炭素数18からなる原料内部オレフィンを用いてスルホン化、中和、加水分解の処理を行ったものに、また必要に応じて予め製造した異なる炭素数を有する複数種の内部オレフィンスルホン酸塩を混合してもよい。
【0025】
本発明において内部オレフィンとは、上記の如く、二重結合をオレフィン鎖の内部に有するオレフィンをいう。(A)成分に使用される内部オレフィンは炭素数18のみの単独で用いてもよく、炭素数18以外の炭素数のオレフィンを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
原料内部オレフィンをスルホン化し、中和し、加水分解して、(A1)成分を特定量含む(A)成分の内部オレフィンスルホン酸塩を得る場合、原料内部オレフィン中における二重結合が2位に存在する内部オレフィンの合計含有量は、繊維の柔軟性向上の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下である。
【0027】
原料内部オレフィン中における二重結合が1位に存在するオレフィン、いわゆるアルファオレフィンの合計含有量は、洗浄に用いる水の温度が0℃以上15℃以下の低温であっても、繊維に良好な柔軟性を付与できる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、そして、生産コストの低減、及び生産性向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上である。
【0028】
原料内部オレフィン中における二重結合が6位以上に存在するオレフィンの含有量は、溶液安定性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下である。なお、原料内部オレフィン中における二重結合の位置の最大値は、炭素数により異なる。
【0029】
原料内部オレフィン中における二重結合の分布は、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析計(以下、GC-MSと省略)により測定することができる。具体的には、ガスクロマトグラフ分析計(以下、GCと省略)により炭素鎖長及び二重結合位置の異なる各成分を正確に分離し、それぞれを質量分析計(以下、MSと省略)にかけることで、その二重結合位置を同定することができ、そのGCピーク面積から各々の割合を求めることができる。
【0030】
<(B)成分>
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物は、(B)成分として、非イオン界面活性剤を含有する。(B)成分の非イオン界面活性剤として、下記一般式(b1)で表される非イオン界面活性剤を挙げることができる。
R1b(CO)mO-(AO)n-R2b (b1)
〔式中、R1bは炭素数9以上18以下の脂肪族炭化水素基であり、R2bは水素原子又はメチル基であり、COはカルボニル基であり、mは0又は1の数であり、AO基はエチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる1種以上の基であり、nは平均付加モル数であって、3以上50以下の数である。〕
【0031】
一般式(b1)中、R1bは炭素数9以上18以下の脂肪族炭化水素基である。繊維に付着した汚れをより落としやすくする点で、R1bの炭素数は、9以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、そして、繊維の柔軟化効果をより高める点で、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは14以下である。
R1bの脂肪族炭化水素基としては、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる基が好ましい。
一般式(b1)中、mは0が好ましい。
一般式(b1)中、R2bは水素原子好ましい。
【0032】
一般式(b1)中、AO基は、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる1種以上の基である。エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基を含む場合は、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基は、ブロック型結合でもランダム型結合であっても良い。AO基は、(A)成分による繊維の柔軟化効果を阻害させない観点から、エチレンオキシ基を含む基であることが好ましい。
【0033】
一般式(b1)中、nは平均付加モル数であって、3以上50以下の数である。nの数が大きくなる程HLBの値は高くなり、小さくなる程HLBの値は低くなる。nは、(A)成分を安定に配合する観点から、3以上、好ましくは5以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは9以上、より更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上、そして、繊維に付着した汚れの洗浄性の観点から、50以下、好ましくは45以下が好ましく、より好ましくは40以下、更に好ましくは35以下、より更に好ましくは26以下、より更に好ましくは24以下である。
【0034】
本発明の(B)成分の非イオン界面活性剤としてより好ましい化合物は、エチレンオキシ基(以下EO基という場合がある)の平均重合度(あるいは平均付加モル数という場合もある)が3以上、好ましくは5以上、そして、50以下、好ましくは25以下であり、プロピレンオキシ基(以下PO基という場合もある)の平均重合度(あるいは平均付加モル数という場合もある)が0以上5以下、好ましくは3以下であって、EO基とPO基とはランダム又はブロック結合であってもよく、好ましくはブロック結合であって、より好ましくは、安定性の観点から、アルキルエーテルに対してEOPOEOの順序又はPOEOの順のブロック結合であり、そしてアルキル基が炭素数12以上18以下、より好ましくは12又は14、更により好ましくは12の直鎖1級又は2級アルコール由来である、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)アルキルエーテルである。
【0035】
<(C)成分>
本発明の(C)成分は、炭素数2以上4以下の水溶性グリコール化合物である。(C)成分について、水溶性とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解することをいう。
【0036】
本発明では、(A)成分に対して(B)成分及び(C)成分を併用することにより、冬場の低温での洗濯においても優れた柔軟性および注ぎやすさを向上することができる。
【0037】
本発明の(C)成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコールが挙げられる。低温での洗濯においても柔軟性及び注ぎやすさを高める観点から、(C)成分としては、好ましくは、エチレングリコール及びプロピレングリコールから選ばれる1種以上である。
【0038】
<組成、pH、粘度等>
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物中の(A)成分の含有量は、繊維製品の柔軟性の観点から、1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、28質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0039】
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物中の(B)成分の含有量は、冬場の低温洗濯時の液相安定性及び洗浄性を高める観点から、0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、柔軟化効果を阻害しない観点から、20質量%以下である。
【0040】
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物中の(A)成分及び(B)成分の合計の含有量は、冬場の低温洗濯時における柔軟性及び注ぎやすさの観点から、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0041】
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物において、(A)成分及び(B)成分の合計の含有量は、全界面活性剤中、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更により好ましくは90%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下であり、実質100質量%であってもよい。
【0042】
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物中の(A)成分の含有量と(B)成分の含有量の質量比(A)/(B)は、柔軟性及び注ぎやすさの観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.25以上、より更に好ましくは0.3以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下である。
【0043】
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物中の(C)成分の含有量は、冬場の低温洗濯時における柔軟性及び注ぎやすさを高める観点から、3質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは7質量%以上であり、そして、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
【0044】
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物中の(A)成分及び(B)成分の合計の含有量と(C)成分の含有量の質量比[(A)+(B)]/(C)は、冬場の低温洗濯時における(A)成分の柔軟性及び注ぎやすさを高める観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。
【0045】
<水>
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物の残部は水である。水は一般に液体洗剤に使用されている水を用いるが、脱イオン水(イオン交換水とも言う場合もある)や次亜塩素酸ソーダをイオン交換水に対して1mg/kg以上5mg/kg以下、添加した水を使用することが出来る。また、水道水も使用できる。組成物中の水は多い方が、粘度や冷水への溶解性の観点から使用し易い一方で、凍結し易いことから低温保存後の低温洗濯において本発明の課題を生じ易くなる。本発明では、組成物中の水の含有量は、40質量%以上であり、更に50質量%以上、より更に60質量%以上であってよく、そして、85質量%以下、更に80質量%以下であってよい。
【0046】
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物は、以下のような成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0047】
<(D)成分>
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物は、(D)成分として、アミン及びアンモニアから選ばれる化合物を含有することができる。(D)成分は、本発明の繊維製品用液体洗剤組成物に配合する場合、アルカリ剤として働くが、陰イオン界面活性剤、キレート剤などのアニオン性化合物の対イオンとして組成物中に含有されていてもよく、その場合は相安定化剤としても作用する。
【0048】
(D)成分としては、下記一般式(d1)~(d4)から選ばれるものを挙げることができる。
【0049】
【0050】
〔式中、R11、R14、R16、R18、R20、R22、R23はそれぞれ水素原子、又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、R12、R13、R15、R17、R19、R21はそれぞれ水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、又は炭素数2以上4以下のヒドロキシアルキル基を示す。〕
【0051】
一般式(d1)で表わされる化合物としては、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等が挙げられる。一般式(d2)で表わされる化合物としては、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン等が挙げられる。一般式(d3)で表わされる化合物としては、ジエチレントリアミン等が挙げられる。また、一般式(d4)で表わされる化合物としては、モルホリン、N-エチルモルホリン等が挙げられる。
【0052】
本発明において好ましい(D)成分は、モノエタールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルプロパノール、アンモニアであり、この中でもアルカリ剤としての特性や安定性の点からモノエタノールアミンがより好ましい。(D)成分は、陰イオン界面活性剤を含有する場合、対イオンとして配合することができ、液相安定性に寄与する。
【0053】
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物中の(D)成分の含有量は、洗浄性及び液相安定性の点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0054】
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物中の(A)成分の含有量と(D)成分の含有量の質量比(A)/(D)は、洗浄性及び液相安定性の点から、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下である。
【0055】
<(E)成分>
本発明は、(E)成分として、下記一般式(E1)で表される化合物を併用することが好ましい。(E)成分は、溶剤として機能するものであってよい。
R1e-O-(CH2CHR2eO)n-H (E1)
〔式中、R1eは炭素数1以上5以下のアルキル基又はフェニル基、R2eは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基、nは平均付加モル数を示す1以上5以下の数であり、n個のR2eは同一でも異なっていても良い。〕
【0056】
本発明では、(A)成分に対して(C)成分と共に(E)成分を併用することにより、冬場の低温での洗濯においてもより優れた柔軟性及び注ぎやすさを発揮することができる。
【0057】
一般式(E1)中、R1eは炭素数1以上5以下のアルキル基又はフェニル基であり、低温での洗濯においても(A)成分の柔軟性及び注ぎやすさを高める観点から、好ましくは炭素数2以上4以下のアルキル基又はフェニル基であり、より好ましくはフェニル基である。
一般式(E1)中、R2eは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基であり、低温での洗濯においても柔軟性及び注ぎやすさを高める観点から、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
一般式(E1)中、nは平均付加モル数を示す1以上5以下の数であり、低温での洗濯においても柔軟性及び注ぎやすさを高める観点から、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、そして、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。
【0058】
本発明の(E)成分としては、例えばオキシエチレン基の平均付加モル数1以上3以下のポリオキシエチレンモノブチルエーテル、オキシプロピレン基の平均付加モル数1以上3以下のポリオキシプロピレンモノプロピルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数1以上4以下のポリオキシエチレンモノフェニルエーテルが挙げられる。低温での洗濯においても繊維製品の柔らかさを高める観点から、(E)成分としては、好ましくは、オキシエチレン基の平均付加モル数1以上3以下のポリオキシエチレンモノブチルエーテル、オキシプロピレン基の平均付加モル数1以上3以下のポリオキシプロピレンモノプロピルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数1以上4以下のポリオキシエチレンモノフェニルエーテルから選ばれる1種以上であり、より好ましくは、オキシエチレン基の平均付加モル数1以上3以下のポリオキシエチレンモノブチルエーテル、オキシエチレン基の平均付加モル数1以上4以下のポリオキシエチレンモノフェニルエーテル、及びオキシエチレン基の平均付加モル数1以上4以下のポリオキシエチレンモノベンジルエーテルから選ばれる1種以上である。
【0059】
本発明の(E)成分は、低温での洗濯においても柔らかさ及び注ぎやすさを高める観点から、CLogPが好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上であり、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下の化合物であることが好ましい。なお、CLogPの値が大きい程、疎水性が高いことを表す。
【0060】
本発明の(E)成分としては、低温での洗濯においても柔らかさ及び注ぎやすさを高める観点から、好ましくは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(0.67)、2-フェノキシエタノール(1.2)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(1.25)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(0.23)、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル(1.08)、2-ベンジルオキシエタノール(1.1)、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル(0.96)が挙げられる。尚( )内の数字は、Perkin Elmer社のChemBio Draw Ultra ver.14.0のChemPropertyを用いて算出した各成分の計算値(CLogP)である。
【0061】
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物中の(E)成分の含有量は、冬場の低温洗濯時における柔軟性及び注ぎやすさを高める観点から、好ましくは0.1量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下である。
【0062】
<(F)成分>
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物は、組成物のpHを調整する観点から、(F)成分として酸剤を含有することができる。
酸剤としては、無機酸及び有機酸が挙げられ、無機酸の具体例としては、塩酸、及び硫酸が挙げられる。有機酸の具体例としては、炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸、炭素数1以上20以下の1価又は多価のスルホン酸、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸が挙げられる。より具体的には、メチル硫酸、エチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、(o-、m-、p-)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、エチレンジアミン4酢酸、クエン酸、安息香酸、及びサリチル酸が挙げられる。
これらの中でも、無機酸であれば塩酸が好ましく、有機酸であれば炭素数1以上10以下の1価又は多価のカルボン酸が好ましく、クエン酸がより好ましい。
【0063】
<(G)成分>
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物は、(G)成分として、香料組成物を含有することができる。本発明の繊維製品用液体洗剤組成物は、その配合が洗剤製品に行われている各種香料化合物からなる香料組成物を含有することが好ましい。例えば特開2017-214676号公報記載の香料化合物を用いることができる。香料組成物はマイクロカプセルに包含してもよく、外香料として液体洗剤組成物に配合してもよい。マイクロカプセルは、機能性成分である香料組成物をカプセル化したものである。例えば、マイクロカプセルの外殻(壁材)に樹脂を用いて、公知の方法により香料組成物が封入される。
【0064】
<その他の成分>
前記成分の他に、本発明の繊維製品用液体洗剤組成物には、下記(H1)~(H8)成分を配合してもよい。
(H1)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロースなどの再汚染防止剤及び分散剤を組成物中0.01質量%以上10質量%以下
(H2)過酸化水素、過炭酸ナトリウム又は過硼酸ナトリウム等の漂白剤を組成物中0.01質量%以上10質量%以下
(H3)テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6-316700号の一般式(I-2)~(I-7)で表される漂白活性化剤等の漂白活性化剤を組成物中0.01質量%以上10質量%以下
(H4)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ及びリパーゼから選ばれる1種以上の酵素、好ましくはアミラーゼ及びプロテアーゼから選ばれる1種以上の酵素を組成物中0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、そして、2質量%以下、好ましくは1質量%以下
(H5)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料を組成物中0.001質量%以上1質量%以下
(H6)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤を組成物中0.01質量%以上2質量%以下
(H7)色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤を適量。
(H8)結晶性の脂肪酸グリセリドを組成物中に好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.07質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下。
(H9)炭素数1以上6以下のアルコール化合物。例えばエタノール、1-プロパノール及び2-プロパノールから選ばれる一種以上を組成物中好ましくは0.001質量%以上5質量%以下。
【0065】
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物の20℃におけるpHは、低温環境下における当該組成物中の固形物の析出の抑制又は分離の抑制の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは8以下である。pHは、下記に記載のpHの測定法に従って測定する。
<pHの測定法>
pHメーター(HORIBA製 pH/イオンメーター F-23)にpH測定用複合電極(HORIBA製 ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続し、電源を投入する。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33モル/L)を使用する。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、20℃の恒温槽に30分間浸漬する。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行う。測定対象となるサンプルを20℃に調整し、前記のpHメーターの電極をサンプルに浸漬し、1分後のpHを測定する。
【0066】
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物の20℃における粘度は、取り扱いの容易さの観点から、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは30mPa・s以上、更に好ましくは50mPa・s以上であり、好ましくは400mPa・s以下、より好ましくは300mPa・s以下、更に好ましくは200mPa・s以下である。なお、これらの粘度は、B型粘度計((株)東京計器製、VISCOMETER MODEL DVM-B)を用い、ローターNo.3又は4、回転数60r/min、測定時間60秒で測定されたものである。
【0067】
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物は、硬度成分を含む水中での繊維製品の洗浄に適している。前記の「硬度成分を含む水中での繊維製品の洗浄に適している。」とは、本発明の繊維製品用液体洗剤組成物を用いて硬度成分を含む水中で繊維製品を洗浄することにより、繊維製品が柔らかくシワを少なく仕上がり、且つ繊維製品に付着した汚れを洗浄できることを意味する。
洗浄に使用する硬度成分を含有する水において、水の硬度は、繊維製品への柔軟性付与効果がより向上する観点から、ドイツ硬度で、好ましくは1°dH以上、より好ましくは2°dH以上、更に好ましくは3°dH以上、そして、好ましくは20°dH以下、より好ましくは18°dH以下、更に好ましくは15°dH以下である。ここで、本明細書におけるドイツ硬度(°dH)とは、水中におけるカルシウム及びマグネシウムの濃度を、CaCO3換算濃度で1mg/L(ppm)=約0.056°dH(1°dH=17.8ppm)で表したものを指す。
このドイツ硬度のためのカルシウム及びマグネシウムの濃度は、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を使用したキレート滴定法で求められる。
本明細書における水のドイツ硬度の具体的な測定方法を下記に示す。
<水のドイツ硬度の測定方法>
〔試薬〕
・0.01mol/l EDTA・2Na溶液:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムの0.01mol/l水溶液(滴定用溶液、0.01 M EDTA-Na2、シグマアルドリッチ(SIGMA-ALDRICH)社製)
・Universal BT指示薬(製品名:Universal BT、(株)同仁化学研究所製)
・硬度測定用アンモニア緩衝液(塩化アンモニウム67.5gを28w/v%アンモニア水570mlに溶解し、イオン交換水で全量を1000mlとした溶液)
〔硬度の測定〕
(1)試料となる水20mlをホールピペットでコニカルビーカーに採取する。
(2)硬度測定用アンモニア緩衝液2ml添加する。
(3)Universal BT指示薬を0.5ml添加する。添加後の溶液が赤紫色であることを確認する。
(4)コニカルビーカーをよく振り混ぜながら、ビュレットから0.01mol/l EDTA・2Na溶液を滴下し、試料となる水が青色に変色した時点を滴定の終点とする。
(5)全硬度は下記の算出式で求める。
硬度(°dH)=T×0.01×F×56.0774×100/A
T:0.01mol/l EDTA・2Na溶液の滴定量(mL)
A:サンプル容量(20mL、試料となる水の容量)
F:0.01mol/l EDTA・2Na溶液のファクター
【0068】
<繊維>
本発明の繊維製品用液体洗剤組成物で洗浄する繊維は、疎水性繊維、親水性繊維のいずれでも良い。疎水性繊維としては、例えば、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックスなど)、ポリアミド系繊維(ナイロンなど)、ポリエステル系繊維(ポリエステルなど)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリルなど)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロンなど)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニルなど)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデンなど)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタンなど)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラールなど)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエートなど)、ポリフルオロエチレン系繊維(ポリテトラフルオロエチレンなど)、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、シリコーンカーバイト繊維、岩石繊維(ロックファイバー)、鉱滓繊維(スラッグファイバー)、金属繊維(金糸、銀糸、スチール繊維)等が例示される。親水性繊維としては、例えば、種子毛繊維(綿、もめん、カポックなど)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻など)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻など)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラなど)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテートなど)等が例示される。
【0069】
<繊維製品>
繊維製品としては、前記の疎水性繊維や親水性繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られたアンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、スラックス、帽子、ハンカチ、タオル、ニット、靴下、下着、タイツ等の製品が挙げられる。
【0070】
[容器]
本発明の繊維製品用液体洗剤物品は、前記本発明の繊維製品用液体洗剤組成物を、樹脂製で、100mlあたりの質量が3g以上10g以下であり、底部と該底部から立ち上がる側壁とを有し、前記底部と前記側壁は前記繊維製品用液体洗剤組成物の収容部を形成し、前記収容部は、平面からみた前記底部の最大長を2等分する平面に関して相互に非対称になる形状を有する、本発明の容器に充填してなるものである。
【0071】
本発明の容器は、充填容量100mlあたりの質量が3g以上12g以下である。この質量は、充填容量についての単位容量(100ml)当たりの容器質量であり、以下便宜的に容器目付質量(単位g/100ml)ということもある。容器目付質量は、3g以上、好ましくは4g以上、そして、12g以下、好ましくは10g以下、より好ましくは8g以下である。
【0072】
本発明の容器は、樹脂製である。樹脂製とは、容器の少なくとも一部が樹脂を含んで構成されていることであってよい。
本発明の容器は、樹脂の単層体又は積層体で構成されてよい。
【0073】
本発明の容器としては、ボトル容器が挙げられる。
ボトル容器は、例えば、開口部を有する口首部、底部及び胴部を備えた合成樹脂製の容器本体を備えたボトル容器であって、前記口首部を上方に有し、前記底部を下方に有しており、前記口首部に取着されるキャップを備えたボトル容器が挙げられる。前記胴部は、通常、容器の側壁となる。
前記キャップは、前記口首部に取着した状態で前記口首部の内部を通って口首部の下方まで垂下している筒部を備えていてよい。キャップは、着脱可能に装着されて前記開口部を密閉する。
前記胴部は、水平断面が長軸方向及び短軸方向を有する扁平な形状を有していてよい。
前記胴部は、前記口首部の下端から水平方向に拡がりつつ下降する形状の肩部と、内面同士が前記短軸方向において相対向する前壁及び後壁と、前記長軸方向の両端に位置する一対の側壁とを備え、前記長軸方向における一方の側壁側に、前記肩部からボトル下部に亘るように形成された把持部を有していてよい。
前記キャップは、前記口首部に取着される注出キャップと、該注出キャップの注出筒を覆うように該注出キャップに脱着可能な計量キャップとを有していてよい。また、前記注出キャップは、前記注出筒及び該注出筒の外側に間隔を設けて形成された外筒を備え、該外筒が、前記口首部の内部を通って該口首部の下方まで垂下し前記容器本体の胴部内まで延在していてよい。
前記キャップは、有天で他端が開口した筒部を備える液収容部と、該液収容部の外側に間隔を設けて形成され、前記口首部に取着される取着部を備え、前記液収容部の筒部の他端が、前記キャップを前記口首部に取着した状態で前記口首部の内部を通って該口首部の下方まで垂下し前記容器本体の胴部内まで延在しているものであってよい。
【0074】
樹脂としては、プラスチック(合成樹脂)が挙げられる。プラスチックとしては、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、ポリアミド系樹脂又はこれらの樹脂混合物を用いることができる。
エチレン系樹脂として、エチレン系単独重合体、エチレン系共重合体、プロピレン系樹脂としてプロピレン系単独重合体、プロピレン系共重合体を用いることができる。
プラスチックは、好ましくは、ポリエチレン、少なくとも1種類のαオレフィン(好ましくは、炭素数が4ないし10)を含むエチレン・αオレフィン共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、金属として亜鉛(Zn)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)の少なくとも1種類を含むエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩部分中和物(アイオノマー樹脂ということがある)、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリスチレン、スチレン系共重合体が挙げられる。
【0075】
本発明の容器は、底部と該底部から立ち上がる側壁とを有し、前記底部と前記側壁は前記繊維製品用液体洗剤組成物の収容部を形成する。該収容部の容量は、好ましくは0.3リットル以上、より好ましくは0.4リットル以上、更に好ましくは0.5リットル以上であり、そして、好ましくは5リットル以下、より好ましくは3リットル以下、更に好ましくは2リットル以下、より更に好ましくは1リットル以下である。
【0076】
本発明の容器の収容部は、平面からみた前記底部の最大長を2等分する平面(以下、等分平面ともいう)に関して相互に非対称になる形状を有する。このように収容部が等分平面に関して相互に非対称になる形状を有する容器を、特記しない限り、本明細書では、非対称容器という。一方、収容部が等分平面に関して相互に対称になる形状を有する容器を、特記しない限り、本明細書では、対称容器という。ここで、等分平面は、本発明の容器が本発明の繊維製品用液体洗剤組成物を収容して正成した状態の底部について、平面からみた前記底部の最大長を2等分する平面であってよい。等分平面は、本発明の容器の底部を長手方向と直交する方向で2等分する平面であってよい。
なお、等分平面は、容器の何れかの方向において存在すればよく、本発明の容器は、その等分平面に関して非対称にある部位が少なくとも1つ存在すればよい。例えば、ある方向からの等分平面に関して非対称になる部位を有しており、別の方向からの等分平面に関して対称となっている部位を有する容器は、本発明の容器としてよい。
【0077】
本発明の容器は、水平面に容器を正立させたときの容器胴部が左右非対称であってよい。更には本発明の好ましい容器は、容器を水平面に対して設計上の正立状態にしたときに、水平面に対して垂直方向の容器の連絡した断面において、非対称になる面を有している容器であってよい。
【0078】
図1に本発明の容器の一例を概略図として示した。
図1(I)は正立状態の容器1の正面からの概略図である。
図1(II)はその底面からの概略図である。
図1は、容器の理解のために概略的に示すものであって、寸法、形状は正確でない場合がある。
図1の容器1は、プラスチック材料からなるボトル型容器である。容器1は、底部2と該底部2から立ち上がる側壁3とを有し、前記底部2と前記側壁3は本発明の繊維製品用液体洗剤組成物の収容部4を形成している。
図1(II)は、容器1の平面からみた前記底部の形状に相当し、直線B-B’上にある最大長を2等分する直線としてA1-A1’を示している。この直線としてA1-A1’の部分に等分平面が存在し、
図1(I)では、等分平面を直線A2-A2’として示している。
図1の容器1では、等分平面は、容器1の底部2を長手方向と直交する方向で2等分する直線から垂直(正立方向)に立ち上がる平面である。1の容器では、等分平面の箇所の直線A2-A2’を中心線として、収容部4の形状は左右非対称となっている。
【0079】
本発明者らは、このような非対称容器に液体洗剤を充填した場合、低温環境下で長期保存しその後回復させた組成物の評価において、洗浄力をはじめとする効果が十分に得られにくい傾向にあることを見出した。その理由として、室温から低温環境下に移った場合に生じる容器内液状組成物の対流を考えると、容器が非対称であることで均等に混ざりにくいこと、更に含有成分と水との比重や融点の違い等が影響していること、などから、対称容器と比較して凍結し易くなるため、解凍後に内包される組成物の組成にばらつきが生じるためであると推測される。更に本発明では、(A)成分が固化性の高い化合物であることから、容器の影響を受け易い。本発明は、このような非対称容器を使用して充填した場合であっても、影響を受けにくい液体洗剤組成物を提案することに特徴がある。
【0080】
本発明の容器は、吹込成形、熱成形、射出成形、及びこれらの組み合わせなど任意の好適なプロセスによって作製できる。好ましくは、本発明の容器は、吹込成形プロセスによって作製される。
【0081】
本発明の容器の側壁(例えばボトル容器の胴部)の厚みは、好ましくは0.2mm以上、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.8mm以上であり、そして、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは2.3mm以下、更に好ましくは2.0mm以下である。
【実施例】
【0082】
<配合成分>
実施例及び比較例では、以下の成分を用いた。
〔(A)成分〕
(a-1):炭素数18の内部オレフィンスルホン酸ナトリウム塩
(a-1)中のオレフィン体(オレフィンスルホン酸ナトリウム)/ヒドロキシ体(ヒドロキシアルカンスルホン酸ナトリウム)の質量比は16/84である。(a-1)中のHAS体のスルホン酸基の位置分布の質量比は以下の通りである。1位/2位/3位/4位/5位/6~9位=1.5/22.1/17.2/21.8/13.5/23.9。また、(IO-1S)/(IO-2S)=1.6(質量比)である。
【0083】
(a-2):炭素数16の内部オレフィンスルホン酸ナトリウム塩
(a-2)中のオレフィン体(オレフィンスルホン酸ナトリウム)/ヒドロキシ体(ヒドロキシアルカンスルホン酸ナトリウム)の質量比は15/85である。(a-2)中のHAS体のスルホン酸基の位置分布の質量比は以下の通りである。1位/2位/3位/4位/5位/6~8位=1.5/24.1/19.9/24.6/14.1/15.8。また、(IO-1S)/(IO-2S)=2.3(質量比)である。
【0084】
各内部オレフィンスルホン酸塩中に含まれるHAS体のスルホン酸基の位置分布及びオレフィン体とヒドロキシ体(HAS体)の質量比率は、高速液体クロマトグラフ質量分析計により測定した。なお、二重結合が6位以上に存在する内部オレフィンスルホン酸塩は、ピークが重なり明確に分画出来なかった。測定に使用した装置及び分析条件は次の通りである。
〔測定機器〕
LC装置:「LC-20ASXR」((株)島津製作所製)
LC-MS装置:「LCMS-2020」((株)島津製作所製)
カラム:ODS Hypersil(長さ:250mm、内径:4.6mm、粒子径:3μm、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)検出器:ESI(-)、m/z=349.15(C18)、321.10(C16)、293.05(C14)
〔溶媒〕
溶媒A:10mM酢酸アンモニウム水溶液
溶媒B:10mMの酢酸アンモニウムを添加した、アセトニトリル/水=95/5溶液
〔溶出条件〕
・グラジエント:溶媒A60%溶媒B40%(0~15分)→溶媒A30%溶媒B70%(15.1~20分)→溶媒A60%溶媒B40%(20.1~30分)
・流速:0.5ml/min
・カラム温度:40℃
・インジェクション量:5μl
【0085】
〔(B)成分〕
(b-1):ポリオキシアルキレンラウリルエーテル(ラウリルアルコール1モルに対し、エチレンオキシ基を平均で9モル付加した後、プロピレンオキシ基を平均で2モル付加した後、エチレンオキシ基を平均で9モル付加した化合物、HLB=14.5、一般式(b1)において、R1b:ラウリル基、m:0、AO:エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基、n:20、R2b:水素原子の化合物)
(b-2):ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン基の平均付加モル数は10モル、HLB=14.0、一般式(b1)において、R1b:ラウリル基、m:0、AO:エチレンオキシ基、n:10、R2b:水素原子の化合物)
【0086】
〔(C)成分〕
(c-1):プロピレングリコール
(c-2):エチレングリコール
【0087】
〔(D)成分〕
(d-1):モノエタノールアミン
【0088】
〔(E)成分〕
(e-1):ジエチレングリコールモノブチルエーテル(富士フィルム和光純薬工業(株))
(e-2):2-フェノキシエタノール(富士フィルム和光純薬工業(株))
【0089】
〔(G)成分〕
(g-1):表1に示す香料組成物
【0090】
【0091】
〔(H)成分〕
(h-1):硬化ヒマシ油
【0092】
〔水〕
イオン交換水
【0093】
<繊維製品用液体洗剤組成物の調製>
上記の配合成分を用いて下記の方法で表2に示す繊維製品用液体洗剤組成物を調製した。
2000mL容量のガラス製ビーカーに長さ5cmのテフロン(登録商標)製スターラーピースを投入し質量を測定した。次に20℃のイオン交換水800g、(B)成分、(C)成分、(A)成分、(D)成分、(E)成分、をこの順で投入し、ビーカーの上面をサランラップ(登録商標)で封をした。内容物が入ったビーカーをマグネチックスターラーに設置した60℃のウォーターバスに入れ、ウォーターバス内の水の温度が60±2℃の温度範囲内で、100r/minで30分間撹拌した。その後、pHを(D)成分(モノエタノールアミン、必要な場合)及び(F)成分(クエン酸)によりpH7に調整した。pH調整に用いた(D)成分と(F)成分の量は表には示していない。次に、ウォーターバス内の水を、5℃の水道水に替え、ビーカー内の該組成物の温度が20℃になるまで冷却した後、(G)成分を投入し、さらに5分間攪拌した。次に、サランラップ(登録商標)を外し、内容物の質量が1500gになるように、イオン交換水を入れ、再度、100r/minで30秒間撹拌し、表2に記載の繊維製品用液体洗剤組成物を得た。
【0094】
<繊維製品用液体洗剤物品の調製>
上記方法で調製した繊維製品用液体洗剤組成物700gを下記の容器に充填し、キャップ(図示せず)を用いて大気圧下で密閉して繊維製品用液体洗剤物品を調製した。1つの組成物につき2つの繊維製品用液体洗剤物品を調製した。得られた繊維製品用液体洗剤物品を-5℃の恒温槽にそれぞれキャップ口を上方にして正立させて20日間保管した。
[容器]
X1:
図1に記載のボトル容器(ポリエチレン製、容量0.8L、容器目付質量8.0g/100ml、胴部の樹脂厚0.5mm以上2.5mm以下の範囲に入る非対称容器。)
【0095】
<柔軟性の評価方法>
(1)評価繊維の前処理
(1-1)綿メリヤスの前処理
あらかじめ、47cm×100cmに裁断された木綿メリヤス8枚、約1.7kg((株)色染社製、綿ニット未シル(シルケット加工されていないもの)、木綿100%)を、全自動洗濯機(National製NAF702P)の標準コースで2回累積洗濯(洗浄時にエマルゲン108(花王(株)製)4.7g、水量47L、洗い9分・すすぎ2回・脱水3分)後、水のみで3回累積洗濯(水量47L、洗い9分・すすぎ2回・脱水3分)を行い、25℃、45%RHの環境下で24時間乾燥させた。乾燥後、1枚の木綿メリヤスを長辺1/3、短辺1/2の位置で裁断することで、6枚切り出し、合計48の試験布を得た。
【0096】
(1-2)綿タオルの前処理
あらかじめ、非イオン性界面活性剤(ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物(平均付加モル数8))を用いて、市販のタオル(ヒオリエタオル、木綿100%、34cm×86cm)12枚、約1.6kgを、Panasonic全自動洗濯機NA-F70PB1の洗濯工程を5回繰り返した(非イオン界面活性剤使用量4.5g、標準コース、水量45L、水温20℃、洗浄時間10分、ため濯ぎ2回)。その後、25℃、45%RHの条件下で1日間、乾燥した。
【0097】
(2)評価繊維の洗浄
National製電気バケツ式洗濯機(型番「N-BK2」)に、市水(3.5°dH、前記の水の硬度の測定方法で算出、5℃)を6.0L注水した。-5℃で20日保存した繊維製品用液体洗剤物品を5℃で24時間静置した後、該物品から繊維製品用液体洗剤組成物12gを洗濯機中の水に投入し、1分間攪拌した。その後前記の方法で前処理した綿メリヤス4枚(約140g)又は綿タオル1枚を投入し、10分間洗浄した。洗浄後、日立製二層式洗濯機(型番「PS-H35L」)を用いて1分間脱水を行った。次に前記のバケツ式洗濯機に前記の市水を6.0L注水し、さらに日立製二層式洗濯機で脱水した後の綿メリヤス又は綿タオルを投入して3分間すすぎ処理を行った。その後二層式洗濯機を用いて同様の脱水処理を1分間行った。このすすぎ処理を合計2回行った後、二層式洗濯機の脱水槽から取り出し、軽く振りさばいてつるした後、25℃、45%RHの条件下で12時間放置し乾燥させた。
【0098】
(3)柔軟性の評価
表2に記載の繊維製品用液体洗剤組成物の-5℃20日保存品を5℃で24時間静置したものを用いて洗浄、濯ぎ、脱水した際に、二層式洗濯機の脱水槽から取り出したときの綿メリヤス又は綿タオルの柔らかさを、繊維の風合い評価の熟練者6名で下記の基準で点数づけし、6人の平均点を算出した。その際、1人の評価者から、1つの組成物につき、綿メリヤスの点数と綿タオルの点数を取得してその平均値をその組成物についての評価点とした。その評価点を6人分集計し、平均点を算出した。結果を表2に示した。平均点は、0.5以上で優位性があり、1点以上であれば優位性は明確であって、数値が高い方が好ましい。
-1…比較例1の組成物で処理した綿メリヤス又は綿タオルよりも柔らかく仕上がらない。
0…比較例1の組成物で処理した綿メリヤス又は綿タオルと同等の柔らかさに仕上がった。
1…比較例1の組成物で処理した綿メリヤス又は綿タオルと比較してやや柔らかく仕上がった。
2…比較例1の組成物で処理した綿メリヤス又は綿タオルと比較して柔らかく仕上がった。
3…比較例1の組成物で処理した綿メリヤス又は綿タオルと比較して非常に柔らかく仕上がった。
【0099】
(4)注ぎやすさの評価
表2に記載の繊維製品用液体洗剤物品の-5℃20日保存品を5℃で24時間静置したものを用いて内容物である組成物の排出操作を行い、注ぎやすさ評価の熟練者6名で下記の基準で点数づけし、6人の平均点を算出した。結果を表2に示した。平均点は、2.0以上が合格であり、数値が高い方が好ましい。
0…全く注ぐことができない。
1…やや注ぎにくかった。
2…やや注ぎやすかった。
3…注ぎやすかった。
4…非常に注ぎやすかった。
【0100】
【0101】
表2に示されるように、本発明の繊維製品用液体洗剤組成物を本発明の容器に収容した繊維製品液体洗剤物品は、低温での処理条件下においても繊維を柔らかく仕上げることが出来、かつ注ぎやすさにも優れる。
なお、実施例の繊維製品用液体洗剤物品は、繊維に付着した汚れを洗浄することが出来る。
【0102】
<参考例>
参考として、ボトル容器の形状による挙動を確認するために、
図2(a)、(b)、(c)の容器と比較例の組成物とを用いて行う。
図2(a)は、非対称容器、
図2(b)及び
図2(c)は対称容器を示す。
図2(a)、(b)、(c)は、容器目付質量が4g以上10g以下の容器を、
図1のB-B’に相当する軸で切断した断面図であり、容器の対称及び非対称性が示される。これら容器の胴部の樹脂厚は0.5mm以上2.5mm以下の範囲に入る。
比較例4の繊維製品用液体洗剤組成物を、
図1の容器に替えて、
図2(a)、
図2(b)又は
図2(c)の容器に充填して得た繊維製品用液体洗剤物品について、実施例1と同様の評価を行うと、
図2(a)の非対称容器は
図1の容器と同等の結果を示すに対し、
図2(b)及び
図2(c)の対称容器は、比較例4の繊維製品用液体洗剤物品よりも低温保存後の柔軟性及び注ぎ易さで
図1の容器よりも優位な結果を示す。