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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20240522BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240522BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240522BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20240522BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240522BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H02J9/06 110
H02J7/00 H
H02J7/00 302C
H02J7/02 G
H02J7/02 J
H02J7/10 B
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020075861
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021175236
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】近田 尚章
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-010250(JP,A)
【文献】特開2020-031470(JP,A)
【文献】特開2017-011849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H02J 7/00
H02J 7/02
H02J 7/10
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源から電力が供給される負荷装置に使用される無停電電源装置であって、
二次電池セルを有する電池パックと、
前記電池パックを充電する充電回路と、
前記電池パックから前記負荷装置に放電させる主放電回路と、
抵抗成分を有する調整放電回路と、
前記充電回路、前記主放電回路、及び前記調整放電回路を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記電池パックの電池電圧が充電により放電可能な上限電圧に達した第1時点において、前記電池パックを満充電にすると共に前記負荷装置への放電を禁止する放電禁止期間に移行させ、前記放電禁止期間の終了後、前記電池パックから前記負荷装置への放電を可能にし、
前記放電禁止期間は、前記第1時点を開始時点とし、前記開始時点から前記電池パックの充電を継続し、前記電池パックが満充電状態になったときに前記電池パックの充電を停止して前記電池パックを前記調整放電回路に電気的に接続し、前記電池パックと前記調整放電回路との電気的接続により前記電池電圧が前記上限電圧以下に低下した第2時点において前記電気的接続を切断し、前記第2時点を終了時点とする、無停電電源装置。
【請求項2】
前記調整放電回路は、抵抗器を備え、
前記調整放電回路に前記電池パックが電気的に接続されると、前記電池パックは前記抵抗器と閉回路を構成する、請求項1記載の無停電電源装置。
【請求項3】
前記電池パックとして、複数の電池パックを備え、前記複数の電池パックは、互いに並列接続され、
前記充電回路は、前記複数の電池パックを個別に充電可能であり、
前記主放電回路は、前記複数の電池パックを個別に放電可能であり、
前記制御部は、
前記複数の電池パックのうち、第1電池パックの電池電圧が充電により前記上限電圧に達した第3時点において、前記第3時点における第2電池パックの電池電圧が前記上限電圧以下であることを条件に、前記第3時点を前記開始時点とする前記放電禁止期間に前記第1電池パックを移行させ、
前記第1電池パックが前記放電禁止期間にある間は、前記第2電池パックを充電せずに前記第2電池パックから前記負荷装置への放電を可能とする、請求項1又は2記載の無停電電源装置。
【請求項4】
前記第1電池パックの放電禁止期間が終了した後、前記第1電池パックを充電せずに前記第2電池パックの充電を開始し、
前記第2電池パックが充電により前記上限電圧に達した第4時点において、第4時点を前記開始時点とする前記放電禁止期間に前記第2電池パックを移行させ、
前記第2電池パックの放電禁止期間の終了後、前記第1及び第2電池パックを充電せずに前記第1及び第2電池パックから前記負荷装置への放電を可能とする、請求項3記載の無停電電源装置。
【請求項5】
前記複数の電池パックの各々は、電池電圧が充電開始電圧以下であるときに充電が開始され、前記充電開始電圧は前記上限電圧より低い、請求項3または4に記載の無停電電源装置。
【請求項6】
前記二次電池セルは、ニッケル水素電池である、請求項1から5のいずれか一に記載の無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無停電電源装置は、停電等によって外部電源から負荷装置への給電が停止したときに、負荷装置の動作を継続させるために、予め充電した二次電池から負荷装置へ電力を供給する電源装置である。無停電電源装置の電池ユニットは、通常時に外部電源からの電力で充電されるのが一般的である。電池ユニットにおいて用いられる二次電池は、例えばニッケル水素二次電池等のアルカリ二次電池である。
【0003】
ニッケル水素電池は、満充電にするためには、定格電圧よりも高い電圧で充電する必要がある。しかし、電池ユニットの充電電圧は外部電源の電圧に依存し、外部電源の電圧は定格電圧程度であるために、ニッケル水素電池を満充電することができない。
【0004】
そこで、電池ユニットの内部にDC/DCコンバータを設けて、外部電源からの入力電圧を満充電できる電圧まで昇圧させ、その電圧でニッケル水素電池を充電する方法が行われている。
【0005】
また、効率良く放電を行うために、複数個の電池パックを並列接続し、電池パックを個別に充電してから放電させる方法がとられている。この方法では、電池ユニット内部のDC/DCコンバータで外部電源からの入力電圧を昇圧して電池パックをそれぞれ充電する。満充電直後の電池パックは、電池電圧が放電可能な上限電圧を上回る為、負荷装置に対し直ちに放電させることはできない。そこで、電池パックの各々を充電するタイミングをずらし、少なくとも1つの電池パックの電池電圧を放電可能な上限電圧以下とすることで、負荷装置への放電を連続的に可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-10250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
無停電電源装置が並列接続された2つの電池パックを備えている場合、例えば一方の電池パックの電池電圧が放電可能な上限電圧を越えている間、負荷装置に対して放電できるのは他方の電池パックのみである。このとき、負荷装置が多くの電力を必要とする場合、他方の電池パックからの電力だけでは足りないことがある。故に、一方の電池パックの電池電圧が上限電圧を超えている期間ができるだけ短いことが望まれる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電池パックの満充電後に負荷装置に向けて放電可能となるまでの期間が短い無停電電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、外部電源から電力が供給される負荷装置に使用される無停電電源装置であって、二次電池セルを有する電池パックと、前記電池パックを充電する充電回路と、前記電池パックから前記負荷装置に放電させる主放電回路と、抵抗成分を有する調整放電回路と、前記充電回路、前記主放電回路、及び前記調整放電回路を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記電池パックの電池電圧が充電により放電可能な上限電圧に達した第1時点において、前記電池パックを満充電にすると共に前記負荷装置への放電を禁止する放電禁止期間に移行させ、前記放電禁止期間の終了後、前記電池パックから前記負荷装置への放電を可能にし、前記放電禁止期間は、前記第1時点を開始時点とし、前記開始時点から前記電池パックの充電を継続し、前記電池パックが満充電状態になったときに前記電池パックの充電を停止して前記電池パックを前記調整放電回路に電気的に接続し、前記電池パックと前記調整放電回路との電気的接続により前記電池電圧が前記上限電圧以下に低下した第2時点において前記電気的接続を切断し、前記第2時点を終了時点とする、無停電電源装置である。
【0010】
電池パックを有効に利用するためには、電池パックを構成する二次電池セルを満充電することが必要になる。二次電池セルが例えばアルカリ二次電池の場合、二次電池を満充電するためには、電池電圧を、定格電圧、すなわち放電可能な上限電圧よりも高電圧にまで充電する必要がある。そこで、電池パックを充電しているとき、電池電圧が、上限電圧を超えてから満充電状態を経て再び上限電圧に低下するまで、負荷装置への過電圧印加を防止するために、電池パックを放電禁止期間に移行させて、電池パックから負荷装置への放電を禁止している。
【0011】
放電禁止期間は、電池電圧が上限電圧に達した時点を開始時点とする。開始時点以降、電池パックに対する充電が継続される。電池パックが満充電されると、充電が停止され、電池パックに調整放電回路が接続される。この接続により、電池パックは、調整放電回路の抵抗成分に向けて放電しているので、電池電圧は急速に低下する。電池電圧が上限電圧以下に低下した時点において、電池パックを調整放電回路から切り話す。電池電圧が上限電圧以下に低下した時点を放電禁止期間の終了時点とする。
【0012】
放電禁止期間の終了後は、電池パックから負荷装置への放電が可能になるので、停電時には負荷装置に対して電池パックから電力を供給できる。
【0013】
このように、放電禁止期間において、電池パックの上限電圧を上回る電圧に相当する電池容量については、調整放電回路の抵抗成分を用いて強制的に放電させることにより電池パックの電池電圧を下げているので、調整放電回路が無い場合に比較して放電禁止期間を短くできる。従って、電池パックから負荷装置への放電可能期間を長くすることができる。
【0014】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、前記調整放電回路は、抵抗器を備え、前記調整放電回路に前記電池パックが電気的に接続されると、前記電池パックは前記抵抗器と閉回路を構成する。上記構成により、電池パックの上限電圧を上回る電圧に相当する電池容量については、電池パックから抵抗素子に放電させることにより、電池パックの電池電圧を短時間で上限電圧まで低下させることができる。
【0015】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、上記第1又は第2の態様において、前記電池パックとして、複数の電池パックを備え、前記複数の電池パックは、互いに並列接続され、前記充電回路は、前記複数の電池パックを個別に充電可能であり、前記主放電回路は、前記複数の電池パックを個別に放電可能であり、前記制御部は、前記複数の電池パックのうち、第1電池パックの電池電圧が充電により前記上限電圧に達した第3時点において、前記第3時点における第2電池パックの電池電圧が前記上限電圧以下であることを条件に、前記第3時点を前記開始時点とする前記放電禁止期間に前記第1電池パックを移行させ、前記第1電池パックが前記放電禁止期間にある間は、前記第2電池パックを充電せずに前記第2電池パックから前記負荷装置への放電を可能とする。
【0016】
上記構成において、第1電池パックが放電禁止期間にあって電池電圧が上限電圧より高いために負荷装置に向けて放電することができないときは、当該期間の開始時点における電池電圧が上限電圧以下である第2電池パックに対して充電を行わず、第2電池パックから負荷装置への放電を可能にしている。従って、停電時には、第2電池パックから負荷装置に向けて電力を供給できる。
【0017】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、上記第3の態様において、前記第1電池パックの放電禁止期間が終了した後、前記第1電池パックを充電せずに前記第2電池パックの充電を開始し、前記第2電池パックが充電により前記上限電圧に達した第4時点において、第4時点を前記開始時点とする前記放電禁止期間に前記第2電池パックを移行させ、前記第2電池パックの放電禁止期間の終了後、前記第1及び第2電池パックを充電せずに前記第1及び第2電池パックから前記負荷装置への放電を可能とする。
【0018】
第1電池パックの放電禁止期間が終了した後、第1電池パックを充電せずに第2電池パックの充電を開始し、第2電池パックの電池電圧が上限電圧に達した第4時点において、第4時点を開始時点とする放電禁止期間に第2電池パックを移行させる。第2電池パックが放電禁止期間にある間は、第1電池パックから負荷装置に向けて放電が可能になる。従って、停電時には、第1電池パックから負荷装置への放電が可能になる。さらに、第2電池パックの放電禁止期間の終了後には、第1及び第2の両方の電池パックから負荷装置に向けて放電することができる。また、2つの電池パックから同時に放電可能なので、負荷装置に対する供給電力量を、1つの電池パックからの放電に比べて増やすことができる。
【0019】
また、第1及び第2電池パックの放電禁止期間が互いに重ならないので、いずれか一方の電池パックの電池電圧が充電により上限電圧を上回り放電できない場合であっても、他の電池パックから負荷装置に向けて放電可能であるので、装置全体としては、外部電源からの電力遮断が生じた場合には負荷装置に向けて給電することができる。
【0020】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、上記第3または4の態様において、前記複数の電池パックの各々は、電池電圧が充電開始電圧以下であるときに充電が開始され、前記充電開始電圧は前記上限電圧より低い。
【0021】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、上記第1から3の態様のいずれかにおいて、前記二次電池セルは、ニッケル水素電池である。ニッケル水素電池は、満充電状態にするためには、定格電圧よりも高い電池電圧まで充電する必要があるが、負荷装置に対して上限電圧よりも高い電圧の印加が防止される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、充電中の電池パックが放電可能な上限電圧を超えた開始時点から満充電状態を経て上限電圧以下に低下する終了時点までの1の電池パックの放電禁止期間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態に係る無停電電源装置を含むシステムを示す図である。
図2図1に示す無停電電源装置の回路図である。
図3】第1及び第2電池パックの電池電圧と図2に示す各スイッチの動作とのタイムチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態を、図面を参照して以下に説明する。尚、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0025】
<無停電電源装置1の構成>
一実施形態に係る無停電電源装置1を、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、無停電電源装置1は、外部電源2と並列に接続されて、停電等によって外部電源2から負荷装置3への電力供給が遮断されたときに、外部電源2に代えて負荷装置3へ電力を供給する装置である。外部電源2は、例えば商用電力を入力として電圧Vの直流電力を出力する電源装置である。負荷装置3は、電圧Vの直流電力で動作する電気機器である。
【0026】
図2に示すように、無停電電源装置1は、入出力部10と、電池ユニット20と、充放電回路30と、調整放電回路40と、制御装置50とを備える。入出力部10は、対をなす端子11、12を有する。一方の端子11は、外部電源2から負荷装置3へ電力を供給する高電位側の電源ライン4に接続され、他方の端子12は、低電位側の電源ライン5に接続される。
【0027】
電池ユニット20は、第1電池パック21と第2電池パック22とを有する。第1電池パック21と第2電池パック22とは、それぞれ、正極が充放電回路30に接続され、負極が端子12に接続される。すなわち、第1電池パック21と第2電池パック22とは、互いに並列に接続されている。各電池パック21、22は、同数個のニッケル水素二次電池セルを直列に接続することによって構成される。第1電池パック21及び第2電池パック22は、いずれも、外部電源2の電圧Vと同じ定格電圧値を有し、満充電時の電池容量は20Ahである。なお、ニッケル水素二次電池セルは、二次電池セルの一例である。
【0028】
充放電回路30は、外部電源2からの電力により電池ユニット20を充電し、また、外部電源2の停電時に、入出力部10を介して電池ユニット20を負荷装置3に向けて放電させる回路である。充放電回路30は、DC/DCコンバータ31、第1充電スイッチS11、第1放電スイッチS12、第2充電スイッチS21及び第2放電スイッチS22を含む。充放電回路30は、充電回路及び主放電回路を構成する。
【0029】
DC/DCコンバータ31は、外部電源2の電圧Vを電池パック21、22の充電電圧まで昇圧して出力する電圧変換装置である。より具体的には、DC/DCコンバータ31は、入出力絶縁型の昇圧型DC/DCコンバータである。
【0030】
第1充電スイッチS11は、第1電池パック21の充電をオン・オフするスイッチである。第1充電スイッチSW11は、一端がDC/DCコンバータ31の出力に接続され、他端が第1電池パック21の正極に接続される。第1充電スイッチS11がオンになると、第1電池パック21は、DC/DCコンバータ31からの出力電力で充電される。
【0031】
第2充電スイッチS21は、第2電池パック22の充電をオン・オフするスイッチである。第2充電スイッチS21は、一端がDC/DCコンバータ31の出力に接続され、他端が第2電池パック22の正極に接続される。第2充電スイッチS21がオンになると、第2電池パック22は、DC/DCコンバータ31の出力電圧で充電される。
【0032】
第1放電スイッチS12は、第1電池パック21から負荷装置3への放電をオン・オフするスイッチである。第1放電スイッチS12は、一端が端子11に接続され、他端が第1電池パック21の正極に接続される。第1放電スイッチS12がオンになると、第1電池パック21は、負荷装置3へ放電可能な状態になる。
【0033】
第2放電スイッチS22は、第2電池パック22から負荷装置3への放電をオン・オフするスイッチである。第2放電スイッチS22は、一端が端子11に接続され、他端が第2電池パック22の正極に接続される。第2放電スイッチS22がオンになると、第2電池パック22は、負荷装置3へ放電可能な状態になる。
【0034】
調整放電回路40は、抵抗成分を有する抵抗器R、第1補助スイッチS13、及び第2補助スイッチS23を有する。抵抗器Rの一端は、第1補助スイッチS13を介して第1電池パック21の正極に接続されると共に、第2補助スイッチS23を介して第2電池パック22の正極に接続される。抵抗器Rの他端は、第1電池パック21の負極と電池パック22の負極とに接続される。従って、第1補助スイッチS13がオンになると、抵抗器Rと第1電池パック21とで閉回路が形成され、第1電池パック21から抵抗器Rに向けて放電される。一方、第2補助スイッチS23がオンになると、抵抗器Rと第2電池パック22とで閉回路が形成され、第2電池パック22から抵抗器Rに向けて放電される。
【0035】
また、抵抗器Rの抵抗値は、後述する満充電状態の電池パックの電池電圧を上限電圧まで低下させるのに要する時間に依存して決定される。なお、抵抗器Rは抵抗成分の一例である。
【0036】
制御装置50は、第1電池パック21の電池電圧と第2電池パック22との電池電圧とを検出する電圧検出手段(不図示)を有する。制御装置50は、検出した第1及び第2電池パック21、22の各々の電池電圧に基づき、充放電回路30と調整放電回路40とを制御する。具体的には、制御装置50は、第1電池パック21の電池電圧と、第2電池パック22の電池電圧とに基づいて、第1充電スイッチS11、第1放電スイッチS12、第1補助スイッチS13、第2充電スイッチS21、第2放電スイッチS22、及び第2補助スイッチS23のオン・オフを制御する。従って、制御装置50は、これらスイッチのオン・オフを切替えることにより、第1電池パック21と第2電池パック22とを個別に充電し、又は負荷装置3に向けて個別に放電する。
【0037】
より具体的には、制御装置50は、第1及び第2電池パック21、22の各々の電池電圧が、充電開始電圧以下であれば充電を開始する。本実施形態において、充電開始電圧は、電池パックが満充電になる電池容量の90%相当に相当する電圧である。しかしながら、他の実施形態においては、充電を開始する電圧は、二次電池セルの種類や大きさに応じて、満充電に対応する電池容量の適宜の割合に対応する電圧とすることもできる。なお、制御装置50は、制御部の一例である。
【0038】
<無停電電源装置1の充放電制御>
制御装置50が実行する第1電池パック21及び第2電池パック22の充放電制御について、図3を参照しながら説明する。
【0039】
図3に、第1電池パック21の電池電圧Vと第2電池パック22の電池電圧Vとの変化と、スイッチS11,S12,S13,S21,S22,S23のオン・オフとを示す。
【0040】
一実施形態として、外部電源2の電圧Vと、第1及び第2電池パック21、22の定格電圧とは、いずれも54Vとする。第1及び第2電池パック21、22の定格電圧は、放電可能な上限電圧でもある。負荷装置3は、40V~56Vの入力電圧で動作する電子機器である。従って、放電可能な上限電圧は、外部電源2の電圧Vと同じ54Vに設定され、下限電圧は40Vに設定される。また、DC/DCコンバータ31の出力電圧は、60Vとする。
【0041】
時刻T0において、第1電池パック21の電池電圧V1及び第2電池パック22の電池電圧V2のいずれもが充電開始電圧よりも低い場合、制御装置50は、第1及び第2充電スイッチS11、S21をオンにして、第1電池パック21及び第2電池パック22の充電を開始する。また、第1及び第2放電スイッチS12、S22をオンにして、停電時に備え、第1電池パック21及び第2電池パック22から負荷装置3への放電を可能な状態にする。第1及び第2補助スイッチS13,S23は、いずれもオフ状態にする。そして、第1電池パック21の電池電圧V及び第2電池パック22の電池電圧Vのどちらか一方が負荷装置3の上限電圧Vになるまで、第1電池パック21及び第2電池パック22を充電する。
【0042】
時刻T1において、例えば、第1電池パック21の電池電圧V1が、第2電池パック22の電池電圧V2よりも先に上限電圧Vに達した場合、第1電池パック21は、時刻T1を開始時点とする放電禁止期間に移行する。放電禁止期間では、第1電池パック21を満充電するために、時刻T1から第1電池パック21の充電が継続される。第1電池パック21の充電継続により、第1電池パック21の電池電圧Vは、上限電圧Vよりも高くなる。上限電圧Vよりも高い電池電圧Vは、負荷装置3に印加すると、過電圧になって負荷装置3を破損させる恐れがある。そこで、第1放電スイッチS12を時刻T1においてオンからオフに切替えて第1電池パック21から負荷装置3への放電を禁止する。
【0043】
時刻T2にて第1電池パック21が満充電されると、制御装置50は、第1充電スイッチS11をオンからオフに切替えて第1電池パック21の充電を停止する。第1電池パック21が満充電されたときの電池電圧Vは、定格電圧V、すなわち上限電圧よりも高いため、負荷装置3に向けて第1電池パック21を放電させることができない。そこで、時刻T2にて第1補助スイッチS13をオフからオンに切替えて、第1電池パック21と抵抗器Rとで第1閉回路を形成する。第1閉回路では、第1電池パック21から抵抗器Rに放電するので、第1電池パック21の電池電圧Vは低下する。また、時刻T2以降、第1放電スイッチS12のオフ状態を維持して、第1電池パック21から負荷装置3への放電禁止を継続する。
【0044】
時刻T3にて、制御装置50は、第1電池パック21の電池電圧Vが上限電圧V以下に低下したことを検出すると、第1補助スイッチS13をオンからオフに切り替えて第1電池パック21から抵抗器Rへの放電を停止する。時刻T3が、第1電池パック21の放電禁止期間の終了時点になる。このとき、第1放電スイッチS12をオフからオンに切り替えて、第1電池パック21から負荷装置3への放電を可能にする。また、第1充電スイッチS11のオフ状態を維持して電池パック21の充電は行わない。従って、負荷装置3は、時刻T3以降、第1電池パック21の電池容量20Ahを取出すことができる。
【0045】
第2電池パック22については、時刻T1において第2充電スイッチ21をオンからオフに切替えて、第2電池パック22の充電を停止する。第2電池パック22は、時刻T1以降充電されないので、電池パック22の電池電圧Vは、上限電圧Vよりも高くなることはない。そこで、第2電池パック22に対しては、第2放電スイッチS22のオン状態を維持して、第2電池パック22から負荷装置3への放電可能状態を維持する。
【0046】
上記のように、制御装置50は、第1電池パック21の電池電圧Vが上限電圧Vを上回り、満充電状態を経て上限電圧Vまで低下するまでの放電禁止期間にある間(時刻T1-T3の期間)、第1電池パック21の負荷装置3への放電を禁止すると共に第2電池パック22から負荷装置3への放電が可能になっている。従って、第1電池パック21の放電禁止期間において、外部電源2から負荷装置3への電力供給が停止した場合、電池ユニット20を構成する第2電池パック22から負荷装置3へ電力を供給することができる。
【0047】
次に、時刻T3において、第2充電スイッチS21をオフからオンに切替えて第2電池パック22の充電を開始する。充電開始により、第2電池パック22の電池電圧Vは増加して、時刻T4にて上限電圧Vに達する。第2電池パック22は、時刻T4を開始時点とする放電禁止期間に移行する。「放電禁止期間」とは、電池パックの電池電圧が上限電圧よりも高いために電池パックから負荷装置への放電が禁止される期間である。この放電禁止期間では、第2電池パック22は、満充電にむけて充電されて電池電圧Vは上限電圧Vよりも高くなるので、第2放電スイッチS22をオンからオフに切り替えて、第2電池パック22から負荷装置3への放電を禁止する。なお、上記第2充電スイッチS21をオフからオンに切替動作は、第1電池パック21の電池電圧Vが上限電圧Vになる時刻T3のみならず、第1電池パック21の電池電圧Vが上限電圧V未満になる時点で行っても良い。
【0048】
次に、時刻T5において、第2電池パック22が満充電状態になると、制御装置50は、第2充電スイッチS21をオンからオフに切替えて第2電池パック22の充電を停止する。第2電池パック22が満充電状態にあるときの電池電圧Vは、定格電圧V、すなわち上限電圧よりも高いため、負荷装置3に向けて第2電池パック22から放電させることができない。そこで、第2補助スイッチS23をオフからオンに切替えて、第2電池パック22と抵抗器Rとで第2閉回路を形成する。第2閉回路では、第2電池パック22から抵抗器Rに放電するので、第2電池パック22の電池電圧Vは低下する。時刻T5以降、第2放電スイッチS22のオフ状態を維持して、第2電池パック22から負荷装置3への放電禁止を継続させる。
【0049】
時刻T6にて、制御装置50が、第2電池パック22の電池電圧Vが上限電圧V以下に低下したことを検出すると、第2補助スイッチS23をオンからオフに切替えて第2電池パック22から抵抗器Rへの放電を停止する。時刻T6が第2電池パック22の放電禁止期間の終了時点になる。このとき、第2放電スイッチS22をオフからオンに切り替えて、第2電池パック22から負荷装置3への放電を可能にする。なお、第2放電スイッチS22をオフからオンへの切替動作は、第2電池パック22の電池電圧Vが上限電圧Vになる時刻T6のみならず、第2電池パック22の電池電圧V2が上限電圧V未満になる時点で行うこともできる。
【0050】
第2電池パック22が放電禁止期間(時刻T4-T6)にある間、第1電池パック21に対しては、第1充電スイッチS11がオフに維持されているので充電が行われない。従って第1電池パック21の電池電圧V1は上限電圧Vよりも低い。従って、第1放電スイッチS12をオン状態に維持することにより、第1電池パック21から負荷装置3に対して放電可能である。負荷装置3は、時刻T4-T6の間、第1電池パック21の電池容量20Ahを取出すことができる。
【0051】
時刻T6以降は、第1及び第2充電スイッチS11、S21は、いずれもオフ状態に維持されて、第1電池パック21及び第2電池パック22のいずれに対しても充電を行わない。このため、第1電池パック21の電池電圧V及び第2電池パック22の電池電圧Vのいずれも上限電圧V以下であるため、負荷装置3に向けて放電可能である。そこで、第1及び第2放電スイッチS12,S22をオン状態にすることで、外部電源2から負荷装置3への電力供給が停止した場合に備え、電池ユニット20から負荷装置3への電力供給を可能にする。従って、負荷装置3は、時刻T6以降、第1電池パック21の電池容量20Ahと第2電池パック22の電池容量20Ahとを合わせた40hAの電池容量を取出すことができる。
【0052】
そして、第1電池パック21及び第2電池パック22の電池電圧V,Vの一方又は両方が充電開始電圧以下に低下した場合、制御装置50は、電池電圧が充電開始電圧以下になった電池パックの充電を開始する。
【0053】
このように、無停電電源装置1では、第1電池パック21又は第2電池パック22のいずれか一方が上限電圧Vを超えている間、他方の電池パックが負荷装置3に向けて放電可能な状態に維持される。これにより、無停電電源装置1は、停電時には、第1電池パック21又は第2電池パック22の少なくとも一方から負荷装置3へ電力を供給することができる。また、電池ユニット20から負荷装置3へ電力が供給されるときには、常に電池ユニット20の出力電圧(第1電池パック21の電池電圧V又は第2電池パック22の電池電圧V)は、負荷装置3の上限電圧V以下になっているので、負荷装置3への過電圧印加を防止できる。
【0054】
また、放電禁止期間において、満充電直後の電池パック21、22から抵抗器Rへ強制放電させることで、電池パック21、22の電池電圧V1,V2を、自然放電に比べて、短時間で上限電圧Vまで低下させている。従って、放電禁止期間が短縮される。このように、1の電池パックによる放電禁止期間を短縮することにより、無停電電源装置1の電源ラインへの接続時から、負荷装置3が2つの電池パックの電池容量を合わせた40Ahの容量を取出すことができる期間への移行を短時間で行うことができる。
【0055】
このように、電池パックの個数に応じた電池容量を有効に利用することのできる期間が長い無停電電源装置1を提供することができる。なお、電池容量を有効に利用するとは、電池パックの個数に応じた電池容量を負荷装置に供給することである。
【0056】
、上記実施形態では、満充電状態の電池パックの電池電圧を負荷装置3へ放電可能な上限電圧に下げるために電池パックから抵抗器に放電させたが、抵抗器に代えて、抵抗成分を有するならば、適宜の電気素子を用いることができる。
【0057】
さらに、電池ユニット20において互いに並列接続される電池パックの個数は、2個に限らず、適宜の複数の個数とすることができる。この場合、互いに並列接続された複数の電池パックのうちの少なくとも1つの電池パックの電池電圧が、上限電圧以下であれば、残りの電池パックのうち電池電圧が充電開始電圧より低い電池パックの充電を開始することができる。この場合、電池電圧が上限電圧より低い電池パックから、負荷装置3に対して放電することが可能である。
【0058】
また、電池パックは、上記のニッケル水素二次電池に代えて、満充電時の電池電圧が定格電圧よりも高くなる適宜の種類の二次電池セルを用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 無停電電源装置
2 外部電源
3 負荷装置
21、22 電池パック
30 充放電回路
40 調整放電回路
50 制御装置
R 抵抗器
図1
図2
図3