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特許7492370フィンゴリモド塩酸塩含有製剤及びフィンゴリモド塩酸塩含有製剤の製造方法
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  • 特許-フィンゴリモド塩酸塩含有製剤及びフィンゴリモド塩酸塩含有製剤の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】フィンゴリモド塩酸塩含有製剤及びフィンゴリモド塩酸塩含有製剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20240522BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240522BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240522BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240522BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
A61K31/137
A61K9/48
A61K47/02
A61K47/18
A61P25/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020081310
(22)【出願日】2020-05-01
(65)【公開番号】P2020183382
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】62/844,565
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】黒川 剛志
(72)【発明者】
【氏名】池治 宣晃
(72)【発明者】
【氏名】高田 新也
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0250235(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0141520(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性賦形剤を含む造粒粒子と、フィンゴリモド塩酸塩と、を含む組成物を含み、
前記フィンゴリモド塩酸塩が、前記塩基性賦形剤を含む造粒粒子の外部に存在し、
前記塩基性賦形剤は、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、沈降炭酸カルシウム、メグルミン、及びアルギニンからなる群から選択される、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤。
【請求項2】
前記組成物をカプセル内に含む、請求項に記載のフィンゴリモド塩酸塩含有製剤。
【請求項3】
塩基性賦形剤と、医薬的に許容された1つ以上の添加剤とを混合して、造粒して、粒子を得て、
得られた前記粒子と、フィンゴリモド塩酸塩とを倍散することを含
前記塩基性賦形剤は、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、沈降炭酸カルシウム、メグルミン、及びアルギニンからなる群から選択される、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤の製造方法。
【請求項4】
倍散して得られた組成物をカプセルに充填することをさらに含む、請求項に記載のフィンゴリモド塩酸塩含有製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤及びフィンゴリモド塩酸塩含有製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィンゴリモド(2-Amino-2-[2-(4-octylphenyl)ethyl]propane-1,3-diol)は、S1P受容体アゴニストとしての作用を有し、多発性硬化症の治療薬として用いられている。例えば、特許文献1には、フィンゴリモドまたはそれらの医薬上許容される塩と、糖アルコール類とを含有する経口投与に適した固形医薬組成物が記載されている。また、本邦ではフィンゴリモド含有製剤として、ジレニア(登録商標)カプセルが知られており、ジレニアカプセルは1カプセル中のフィンゴリモド塩酸塩の含有量が0.56mgという極めて少量であることを特徴とする。
【0003】
一方、フィンゴリモドは、アミノプロパン-1,3-ジオール基の反応性に起因して多くの添加剤の存在下で不安定であり、分解産物を生成することも知られており、フィンゴリモドの安定化についての種々の検討がなされている(特許文献2~4)。
【0004】
例えば、特許文献2には、フィンゴリモドを含み、メタクリル酸コポリマー又はセルロースから選択される1種以上のポリマー樹脂と、1種以上の金属オキシドとを含むコーティングを含む経口医薬組成物が記載されている。
【0005】
特許文献3には、フィンゴリモド、その医薬上許容される塩、およびそのリン酸塩誘導体から選択される第1の化合物と、充填剤と、およびシクロデキストリンまたはその誘導体を含む安定剤とを含む、経口投与に好適な固体医薬組成物が記載されている。
【0006】
特許文献4には、フィンゴリモド、その薬学的に許容し得る塩またはホスファート誘導体と、アミノ酸、リン脂質およびスルホベタイン(NS)から選択される安定剤としての双性イオンを含む、安定な医薬組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-307506号公報
【文献】特表2010-504364号公報
【文献】特表2014-509652号公報
【文献】特表2016-525568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、類縁物質の生成と、フィンゴリモド塩酸塩製剤の溶出速度の低下を抑制したフィンゴリモド塩酸塩含有製剤を提供することを目的の一つとする。また、本発明は、類縁物質の生成と、フィンゴリモド塩酸塩製剤の溶出速度の低下を抑制するフィンゴリモド塩酸塩含有製剤の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によると、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤を含む造粒粒子と、フィンゴリモド塩酸塩と、を含む組成物を含む、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤が提供される。
【0010】
前記塩基性賦形剤は、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、沈降炭酸カルシウム、メグルミン、及びアルギニンからなる群から選択されてもよい。
【0011】
フィンゴリモド塩酸塩が、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤を含む造粒粒子の外部に存在してもよい。
【0012】
前記組成物をカプセル内に含んでもよい。
【0013】
本発明の一実施形態によると、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤と、医薬的に許容された1つ以上の添加剤とを混合して、造粒して、粒子を得て、得られた前記粒子と、フィンゴリモド塩酸塩とを倍散することを含む、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤の製造方法が提供される。
【0014】
前記塩基性賦形剤は、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、沈降炭酸カルシウム、メグルミン、及びアルギニンからなる群から選択されてもよい。
【0015】
倍散して得られた組成物をカプセルに充填することをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一実施形態によると、類縁物質の生成と、フィンゴリモド塩酸塩の溶出速度の低下を抑制したフィンゴリモド塩酸塩含有製剤が提供される。また、本発明の一実施形態によると、類縁物質の生成と、フィンゴリモド塩酸塩の溶出速度の低下を抑制するフィンゴリモド塩酸塩含有製剤の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は、本発明の一実施例に係るフィンゴリモド塩酸塩含有製剤の溶出速度を示す図であり、(b)は、比較例のフィンゴリモド塩酸塩含有製剤の溶出速度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[フィンゴリモド塩酸塩含有製剤]
本発明者らが検討した結果、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤は、フィンゴリモド塩酸塩の類縁物質の生成を抑制することを新たに見いだした。また、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤を含むフィンゴリモド塩酸塩含有製剤は、フィンゴリモド塩酸塩製剤の溶出速度の低下を抑制した。特許文献1~4には、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤がフィンゴリモド塩酸塩の類縁物質の生成を抑制すること、フィンゴリモド塩酸塩製剤の溶出速度の低下を抑制することについて開示も示唆もない。
【0019】
本発明の一実施形態によると、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤は、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤を含む造粒粒子と、粒子の外部に存在するフィンゴリモド塩酸塩と、を含む組成物を含む。本明細書において、「粒子の外部に存在するフィンゴリモド塩酸塩」とは、フィンゴリモド塩酸塩がマグネシウム塩を除く塩基性賦形剤を含む造粒粒子により倍散された状態を意味する。本発明者らは、フィンゴリモド塩酸塩と賦形剤が共に含まれる造粒粒子を用いた製剤は、フィンゴリモド塩酸塩の溶出速度が低下してしまうことを見いだした。さらに、詳細に検討した結果、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤を含む造粒粒子の外部にフィンゴリモド塩酸塩を配置することにより、フィンゴリモド塩酸塩製剤の溶出速度の低下を抑制することができることを新たに見いだした。特許文献1~4には、フィンゴリモド塩酸塩の溶出速度の低下が、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤を含む造粒粒子の外部にフィンゴリモド塩酸塩を配置することで抑制されることは開示も示唆もなく、そもそも特許文献1~4には、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤を含む造粒粒子の外部にフィンゴリモド塩酸塩を配置する製造法に関してなんら開示されていない。
【0020】
フィンゴリモド塩酸塩含有製剤は、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤として、例えば、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、沈降炭酸カルシウム、メグルミン、及びアルギニンからなる群から選択される1つ以上の賦形剤を含むことができる。しかし、フィンゴリモド塩酸塩に由来する類縁物質に生成を抑制可能であれば、塩基性賦形剤はこれらに限定されるものではない。
【0021】
一実施形態において、塩基性賦形剤は、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤100重量%に対して、1重量%以上、97重量%以下含むことができる。
【0022】
本発明の一実施形態に係るフィンゴリモド塩酸塩含有製剤は、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤を含む粒子と、粒子の外部にフィンゴリモド塩酸塩と、を含む組成物をカプセル内に含むカプセル剤とすることができる。また、一実施形態において、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤は、錠剤等の経口製剤としてもよい。
【0023】
一実施形態において、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤は、1錠あたり、0.5mgのフィンゴリモドを含有してもよく、フィンゴリモド塩酸塩として0.56mgを含有してもよい。また、一実施形態において、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤は、1錠あたり、0.25mgのフィンゴリモドを含有してもよく、フィンゴリモド塩酸塩として0.28mgを含有してもよい。なお、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤におけるフィンゴリモドの含有量は、医薬的な効果が得られる範囲で任意に変更可能である。
【0024】
フィンゴリモド塩酸塩含有製剤は、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤を含む粒子に、1つ以上の医薬的に許容された添加剤を含むことができる。医薬的に許容された添加剤としては、例えば、崩壊剤、結合剤等を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
崩壊剤としては、例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、カルメロース、部分アルファ化デンプン及びクロスポビドン等から選択される1つ以上を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
一実施形態において、崩壊剤は、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤100重量%に対して、1重量%以上、30重量%以下含むことができる。
【0027】
結合剤としては、例えば、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒプロメロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、デンプン粘液、アカシア、デキストリン、ゼラチン、グルコース、グアーガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルトデクトリン、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、及び水素化植物油等から選択される1つ以上を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
一実施形態において、結合剤は、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤100重量%に対して、0.5重量%以上、10重量%以下含むことができる。
【0029】
塩基性賦形剤を含む粒子の外部に、フィンゴリモド塩酸塩とともに、1つ以上の医薬的に許容された添加剤を含むことができる。塩基性賦形剤を含む粒子の外部に含まれる医薬的に許容された添加剤としては、例えば、滑沢剤等を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマレートナトリウム、コロイド状シリカ、及びタルク等から選択される1つ以上を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
一実施形態において、滑沢剤は、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤100重量%に対して、0.1重量%以上、5重量%以下含むことができる。
【0032】
以上、説明したように、本発明に係るフィンゴリモド塩酸塩含有製剤は、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤を含む粒子と、粒子の外部に存在するフィンゴリモド塩酸塩と、を含む組成物を含むことにより、類縁物質の生成と、フィンゴリモド塩酸塩の溶出速度の低下を抑制することができる。
【0033】
[フィンゴリモド塩酸塩含有製剤の製造方法]
一実施形態において、フィンゴリモド塩酸塩含有製剤は、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤を含む粒子と、粒子の外部に存在するフィンゴリモド塩酸塩と、を含む組成物を調製可能な公知の製造方法により製造することができる。例えば、マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤と、医薬的に許容された1つ以上の添加剤とを混合して、造粒する。造粒法としては、例えば、撹拌練合法を用いることができる。練合物を粗砕して、乾燥する。乾燥物を整粒して、粒子を得る。フィンゴリモド塩酸塩と得られた粒子とを混合及び倍散して篩過し、混合粉末を得る。得られた混合粉末と滑沢剤とを混合して、本発明に係る組成物を調製することができる。得られた組成物をカプセルに充填し、カプセル剤を製造することができる。
【0034】
また、一実施形態において、混合粉末にさらに賦形剤、結合剤、崩壊剤、矯味矯臭剤、滑沢剤、流動化剤等を添加し、錠剤等の経口製剤としてもよい。
【実施例
【0035】
(実施例1~5)
本発明の実施例1~5として、5mgのフィンゴリモド塩酸塩と500mgの表1に示した塩基性賦形剤とをそれぞれ混合及び倍散して篩過し、混合粉末を得た。得られた混合粉末を60℃、60%RHで4週間保存した。保存には環境試験機を用いた。
【0036】
(比較例1)
比較例1として、5mgのフィンゴリモド塩酸塩を60℃、60%RHで4週間保存し、保存後のフィンゴリモド塩酸塩の類縁物質を測定した。
【0037】
(比較例2~9)
比較例2~9として、5mgのフィンゴリモド塩酸塩と500mgの表1に示した賦形剤とをそれぞれ混合及び倍散して篩過し、混合粉末を得た。実施例1~5と同様の方法により、得られた混合粉末を保存した。
【0038】
[類縁物質の測定]
保存後の混合粉末中のフィンゴリモド塩酸塩の類縁物質を測定した。測定には液体クロマトグラフィーを用いた。測定条件は、以下の通りである。
検出波長:215nm
カラム:Symmetery Shield RP18,3×150mm,3.5μm
移動相:0.1%リン酸水溶液/アセトニトリル
【0039】
実施例1~5及び比較例2~9のフィンゴリモド塩酸塩含有混合粉末の賦形剤を表1に示す。また、比較例1及び実施例1~5及び比較例2~9のフィンゴリモド塩酸塩の類縁物質の測定結果を表1に示す。
【表1】
【0040】
表1の結果より、フィンゴリモド塩酸塩を単独で保存した場合、類縁物質が生成されることが明らかである。一方、実施例1~5の塩基性賦形剤を含む混合粉末では、類縁物質の生成が有意に抑制された。しかし、比較例2~9の賦形剤を含む混合粉末では、実施例1~5の混合粉末程は類縁物質の生成を抑制できないことが明らかとなった。さらに、マグネシウムを含む塩基性賦形剤含む比較例2及び3の混合粉末では、類縁物質が顕著に生成されることが明らかとなった。
【0041】
(実施例6)
実施例6のフィンゴリモド塩酸塩含有製剤として、カプセル錠を製造した。小スケールで製造したカプセル錠と、スケールアップした製造方法で製造したカプセル錠について比較した。
【0042】
(小スケール)
塩基性賦形剤として、リン酸水素カルシウム水和物(協和工業株式会社)76.880gを用い、デンプングリコール酸ナトリウム(プリモジェル、DMV社)14.000g、ヒプロメロース(TC-5(登録商標)M、信越化学工業株式会社)2.000gを乳鉢で混合し、精製水35.294gを添加して、乳鉢で練合した。練合物を篩8号で粗砕して、棚式乾燥機にて、70℃で2時間乾燥させた。その後、篩22号で整粒し、粒子を得た。得られた粒子で、フィンゴリモド塩酸塩0.224gを倍散し、篩30号と60号で篩過して混合粉末を得た。得られた混合粉末とステアリン酸マグネシウム(植物性、太平化学産業株式会社)0.400gを混合し、組成物を得た。得られた組成物を4号ゼラチンカプセルに充填し、カプセル錠を製造した。
【0043】
(スケールアップ)
塩基性賦形剤として、リン酸水素カルシウム水和物(協和工業株式会社)691.920gを用い、デンプングリコール酸ナトリウム(プリモジェル、DMV社)126.000g、ヒプロメロース(TC-5(登録商標)M、信越化学工業株式会社)18.000gをハイスピードミキサー(深江パウテック株式会社、LFS-GS-2J)で混合し、精製水317.650gを添加して練合した。練合物をスクリーン径がφ1.2mmのパワーミル(株式会社ダルトン製、F-04-S)で粗砕して、棚式乾燥機にて、70℃で2時間乾燥させた。その後、スクリーン径がφ1.2mmのパワーミル(株式会社ダルトン製、F-04-S)で整粒し、粒子を得た。得られた粒子で、フィンゴリモド塩酸塩1.120gを倍散し、篩60号と30号で篩過して混合粉末を得た。得られた混合粉末とステアリン酸マグネシウム(植物性、太平化学産業株式会社)2.000gを混合し、組成物を得た。得られた組成物を4号ゼラチンカプセルに充填し、カプセル錠を製造した。
【0044】
(比較例10)
比較例10のフィンゴリモド塩酸塩含有製剤として、カプセル錠を製造した。小スケールで製造したカプセル錠と、スケールアップした製造方法で製造したカプセル錠について比較した。
【0045】
(小スケール)
塩基性賦形剤として、リン酸水素カルシウム水和物(協和工業株式会社)5.820gを用い、フィンゴリモド塩酸塩0.084g、デンプングリコール酸ナトリウム(プリモジェル、DMV社)1.080g、ヒプロメロース(TC-5(登録商標)M、信越化学工業株式会社)0.072gを乳鉢で混合し、精製水2.835gを添加して、乳鉢で練合した。練合物を篩8号で粗砕して、棚式乾燥機にて、60℃で2時間乾燥させた。その後、篩22号で整粒し、粒子を得た。得られた粒子とステアリン酸マグネシウム(植物性、太平化学産業株式会社)0.144gを混合し、組成物を得た。得られた組成物を4号ゼラチンカプセルに充填し、カプセル錠を製造した。
【0046】
(スケールアップ)
塩基性賦形剤として、リン酸水素カルシウム水和物(協和工業株式会社)232.800gを用い、フィンゴリモド塩酸塩3.360g、デンプングリコール酸ナトリウム(プリモジェル、DMV社)43.200g、ヒプロメロース(TC-5(登録商標)M、信越化学工業株式会社)2.880gをハイスピードミキサー(深江パウテック株式会社、LFS-GS-2J)で混合し、精製水113.400gを添加して練合した。練合物を篩8号で粗砕して、棚式乾燥機にて、60℃で2時間乾燥させた。その後、スクリーン径がφ1.2mmのパワーミル(株式会社ダルトン製、F-04-S)で整粒し、粒子を得た。得られた粒子とステアリン酸マグネシウム(植物性、太平化学産業株式会社)5.760gを混合し、組成物を得た。得られた組成物を4号ゼラチンカプセルに充填し、カプセル錠を製造した。
【0047】
[溶出性]
小スケール及びスケールアップで製造した実施例6及び比較例10のカプセル錠について溶出試験を行った。溶出試験器(富山産業株式会社製)を用いて、第十七改正日本薬局方の溶出試験第2法(パドル法・毎分50回転)に準じて、試験液にMcIlvaine緩衝液pH4.0を900ml用いて溶出試験を行った。なお、溶出試験は、小スケール及びスケールアップで製造した実施例6及び比較例10のカプセル錠各1錠を試料として3回実施し、その試験開始後5分、10分、15分、30分、45分、60分、90分及び120分の時点での平均値をそれぞれの溶出率とした。溶出率の測定結果を図1に示す。なお、実施例6の小スケールについては、15分での溶出率は測定していない。溶出率の測定条件は以下の通りであった。
検出波長:215nm
カラム:InertSustainC8 4.6×12.5mm,3μm
移動相:pH3.0の0.02Mリン酸塩緩衝液(日局)/アセトニトリル
【0048】
図1(a)は、実施例6のフィンゴリモド塩酸塩含有製剤の溶出速度を示す図であり、(b)は、比較例10のフィンゴリモド塩酸塩含有製剤の溶出速度を示す図である。マグネシウム塩を除く塩基性賦形剤を含む粒子と、粒子の外部に存在するフィンゴリモド塩酸塩と、を含む組成物を含む実施例6のフィンゴリモド塩酸塩含有製剤では、スケールアップした製造方法により製造したカプセル錠においても、溶出速度の低下は認められなかった。一方、フィンゴリモド塩酸塩と塩基性賦形剤を粒子内に含む組成物を含む比較例10のフィンゴリモド塩酸塩含有製剤では、スケールアップした製造方法により製造したカプセル錠においては、溶出速度の大幅な低下が認められた。
図1