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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】位置情報システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 23/00 20060101AFI20240522BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20240522BHJP
   G08B 27/00 20060101ALI20240522BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20240522BHJP
   H04M 1/72 20210101ALI20240522BHJP
   H04M 11/04 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G08B23/00 510D
G08B17/00 G
G08B27/00 C
G01S5/02 Z
H04M1/72
H04M11/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020087077
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021182685
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】工藤 彰久
(72)【発明者】
【氏名】茶志川 孝和
(72)【発明者】
【氏名】大槻 恭裕
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-157061(JP,A)
【文献】特開2014-225191(JP,A)
【文献】特開2019-032867(JP,A)
【文献】特開2011-090632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S5/00-5/14
19/00-19/55
G08B17/00
19/00-31/00
H04M1/00
1/24-3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己の位置に関する情報を送信可能な携帯端末と、
前記携帯端末と無線通信可能なサーバと、を備えた位置情報システムであって、
前記携帯端末は、当該携帯端末が充電中であるか否かを示す充電情報を前記サーバへ送信可能であり、
前記サーバは、
所定エリアの地図と当該地図上における当該携帯端末の位置を示した情報を所定の機器へ送信可能であり、
前記携帯端末から受信した位置に関する情報に基づいて当該携帯端末が移動しているか否かを示す移動情報を生成し、当該移動情報と前記携帯端末から受信した当該携帯端末の前記充電情報とに基づいて当該携帯端末の携帯率を示す携帯率情報を生成して前記地図の情報と共に前記所定の機器へ送信し、
前記所定の機器は、前記地図上に前記携帯端末のマークをその携帯率を識別可能に表示することを特徴とする位置情報システム。
【請求項2】
記移動情報には、所定時間内における携帯端末の移動距離に関する情報が含まれ、
前記サーバは、
前記移動情報と前記充電情報とに基づいて前記携帯率をレベル化もしくは数値化して前記携帯率情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の位置情報システム。
【請求項3】
前記所定エリアに配設され標識となる電波を送信可能な複数の送信器を備え、
前記携帯端末は、前記送信器からの電波を受信して当該送信器の識別情報を含む送信器情報を、携帯端末の位置を示した情報として前記サーバへ送信可能であり、
前記サーバは、
前記携帯端末から受信した前記送信器の識別情報が変化している場合に当該携帯端末が移動していると判定し、所定時間以上当該識別情報が変化していない場合に当接携帯端末が移動していないと判定することを特徴とする請求項1または2に記載の位置情報システム。
【請求項4】
前記携帯端末は、加速度センサを備え、前記加速度センサからの取得情報を前記サーバへ送信可能であり、
前記サーバは、
前記携帯端末から受信した前記取得情報に基づいて当該携帯端末が移動しているか否かを判定することを特徴とする請求項1または2に記載の位置情報システム。
【請求項5】
前記サーバは、
監視エリアに設置された感知器の検出信号に基づく異常情報を受信可能であり、
前記異常情報を受信した場合に、異常発生場所を特定し前記地図の情報に異常発生場所に関する情報を付加して前記所定の機器へ送信し、
前記所定の機器は、前記サーバから前記異常発生場所に関する情報および前記携帯端末の携帯率情報を受信した場合に、前記地図の情報に基づく地図上に前記異常発生場所のマークと前記携帯端末のマークをその携帯率を識別可能に表示することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の位置情報システム。
【請求項6】
前記感知器は火災検知システムを構成する火災感知器であり、
前記火災検知システムは、前記火災感知器からの信号に基づいて火災の判定を行う火災受信機を備え、前記火災受信機は火災発生と判定した場合に前記異常情報として火災の発生場所に関する情報を前記サーバへ送信し、
前記サーバは、前記火災受信機からの火災の発生場所に関する情報を受信すると、前記地図の情報に火災発生場所に関する情報を付加して前記携帯端末へ送信することを特徴とする請求項5に記載の位置情報システム。
【請求項7】
標識となる電波を送信可能な可搬型の送信器を備え、
前記サーバは、前記携帯端末から受信した送信器情報に前記可搬型の送信器の識別情報が含まれる場合に、当該携帯端末は携帯されている可能性が高いと判断することを特徴とする請求項3~6のいずれかに記載の位置情報システム。
【請求項8】
前記携帯端末は、表示部に、前記地図と共に救助要請を入力するためボタン画像を表示可能であり、前記ボタン画像が操作されると救助要請を前記サーバへ送信し、
前記サーバは、携帯端末より救助要請を受けると、前記地図上の前記携帯端末のマークに救助を要請している端末であることを示す記号を付加して表示させることを特徴とする請求項2~7のいずれかに記載の位置情報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末の通信機能を利用して端末の位置を把握する位置情報システムさらには赤外線や超音波、マイクロ波などを用いたセンサを利用して所定エリア内の異常を検知する検知システムと統合した位置情報システムに関し、例えば火災や地震等の災害の発生時に建物内から屋外へ避難した人員を把握したり救助活動を支援したりするのに利用して有用な位置情報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火災発生時に火災受信機からの情報に基づいて火災発生位置などの情報や消防活動に関する指令を、自衛消防隊員が携帯する端末などへ送信して消防活動を支援する防災支援システムが実用化されつつある。
かかる防災支援システムに関する発明としては、支援装置と端末とを備え、支援装置は異状情報を受け付けると端末に対して位置問合情報を発信し、端末は位置問合情報を受け付けると衛星測位システムを用いて自端末の位置を測定して送信し、支援装置は端末の位置が施設内にあるか否かを判定して、端末を携帯する自衛消防隊員のIDと対応付けて判定結果情報を記憶部に記憶する。そして、記憶された情報が端末の位置が施設内にあることを示す場合に、異状に関する支援情報を端末へ送信し、端末は支援情報を受けると当該支援情報を表示部に表示させるようにしたものが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
一方、火災や地震等の災害の発生時には、建物内に逃げ遅れた滞在者がいないか確認したいことがある。かかる利用者所在管理システムに関する発明として、建物の部屋等の区画毎にビーコン装置を設置して区画IDを含むビーコン信号を繰り返し送信させ、建物を利用する利用者が携帯するスマートフォン等の端末が、ビーコン信号を受信した場合に、ビーコン信号から取り出した区画IDと自己の端末IDを含む位置通報をサーバへ送信する。そして、サーバは、利用者の端末から受信した位置通報に含まれた端末IDと区画IDに基づいて、端末が存在する区画を示す利用者所在情報を収集して管理し、火災受信機から火災検出信号を受信した場合に、利用者所在情報から火災発生区画に所在する利用者端末を検出して逃げ遅れた利用者の情報として出力するようにしたものが提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
また、地震などの緊急速報が受信された時点の前後における位置情報の履歴に基づいて、携帯端末を所持するユーザの安否を判定し、第1携帯端末のユーザへ第2携帯端末のユーザの位置情報および安否に関する情報を提供する安否確認情報提供装置に関する発明が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-147439号公報
【文献】特開2019-032867号公報
【文献】特開2018-110025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の防災支援システムでは、自衛消防隊の活動を支援できるものの、逃げ遅れた利用者に関する情報を取得することができないという課題がある。一方、特許文献2の利用者所在管理システムは、逃げ遅れた利用者に関する情報を取得することができるものの、システムのある建物内から屋外へ避難した利用者の情報を取得することができない。また、携帯端末(携帯情報端末、モバイル通信端末を含む)が置き忘れであったような場合に、逃げ遅れた利用者がいるという誤った情報を提供して、救助活動において不要な行動をさせてしまうという課題がある。
【0007】
特許文献3に記載されている発明は、救助や避難時に携帯端末の位置情報を活用する点で本願発明と類似するものの、特許文献3の発明は緊急速報が受信されたことを条件としているのに対して、本願発明はそのような条件が不要である。また、特許文献3の発明における緊急速報は地震発生時の速報であり、避難も地図を利用した長い距離を移動する避難行動を想定している。さらに、特許文献3の発明は位置情報の履歴に基づいて携帯端末の保有者の安否を判定するとしており、具体的な判定基準を開示していないため、例えば保有者が建物内に携帯端末を置き忘れたような場合に要救助者と判断されるおそれがある。
【0008】
この発明は上記のような課題に着目してなされたものでその目的とするところは、移動していない利用者の携帯端末と、携帯端末を置き忘れて移動した利用者の端末とを区別して把握することが可能な位置情報システムを提供することにある。
この発明の他の目的は、災害の発生時に逃げ遅れた利用者の携帯端末と置き忘れの携帯端末とを区別して把握することができ、不要な行動を回避した救助活動を支援することができる位置情報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、
自己の位置に関する情報を送信可能な携帯端末と、
前記携帯端末と無線通信可能なサーバと、を備えた位置情報システムであって、
前記携帯端末は、当該携帯端末が充電中であるか否かを示す充電情報を前記サーバへ送信可能であり、
前記サーバは、
所定エリアの地図と当該地図上における当該携帯端末の位置を示した情報を所定の機器へ送信可能であり、
前記携帯端末から受信した位置に関する情報に基づいて当該携帯端末が移動しているか否かを示す移動情報を生成し、当該移動情報と前記携帯端末から受信した当該携帯端末の前記充電情報とに基づいて当該携帯端末の携帯率を示す携帯率情報を生成して前記地図の情報と共に前記所定の機器へ送信し、
前記所定の機器は、前記地図上に前記携帯端末のマークをその携帯率を識別可能に表示するように構成したものである。
【0010】
ここで、「所定の機器」としては、スマートフォンやタブレット端末、PDA(personal digital assistant)のような携帯端末の他、PC(パーソナルコンピュータ)等のデータ処理装置がある。また、表示を行う機能は、所定の機器と一体の表示部の他、所定の機器に接続された液晶または有機ELディスプレイやCRT、デジタルサイネージ、プロジェクタ等であってもよい。
上記のような構成を有する位置情報システムによれば、地図上に携帯端末のマークがその携帯率を識別可能に表示されるため、移動していない利用者の携帯端末であるのか携帯端末を置き忘れて移動した利用者の端末であるのかを判断することができる。また、サーバが携帯端末からの位置情報に基づいて当該携帯端末の所在位置を特定し所在位置を示した地図情報を携帯端末へ送信するため、表示部に地図情報を表示することによって携帯端末の保有者は、自己や他者の所在位置を把握することができる。
【0011】
また、望ましくは、前記移動情報には、所定時間内における携帯端末の移動距離に関する情報が含まれ、
前記サーバは、
前記移動情報と前記充電情報とに基づいて前記携帯率をレベル化もしくは数値化して前記携帯率情報を生成するように構成する。
かかる構成によれば、サーバは、携帯端末から充電中であることを示す情報を取得して、携帯端末が移動しているか否かの情報と組み合わせて携帯率を判断するため、利用者から報告を受けることなく、端末が携帯されている可能性について判断することができる。ここで、「移動距離に関する情報」には、携帯端末が備える加速度センサやジャイロセンサからの情報もしくはGPS情報に基づいて算出される、所定時間内における携帯端末の移動距離の情報や、所定時間内に受信したビーコンの数の情報(数が多いほど移動距離が大きいこと意味する)等が含まれる。
【0012】
また、望ましくは、前記所定エリアに配設され標識となる電波を送信可能な複数の送信器を備え、
前記携帯端末は、前記送信器からの電波を受信して当該送信器の識別情報を含む送信器情報を、携帯端末の位置を示した情報として前記サーバへ送信可能であり、
前記サーバは、
前記携帯端末から受信した前記送信器の識別情報が変化している場合に当該携帯端末が移動していると判定し、所定時間以上当該識別情報が変化していない場合に当接携帯端末が移動していないと判定するように構成する。
【0013】
かかる構成によれば、複数の送信器(ビーコン)が設置されているエリアに存在する携帯端末から送信器情報(識別情報)をサーバが受信して、当該携帯端末の所在位置を特定し所在位置を示した地図情報を携帯端末へ送信するため、表示部に地図情報を表示することによって携帯端末の保有者は、自己や他者の所在位置を把握することができる。
また、サーバは、携帯端末が受信した送信器情報により当該携帯端末が移動しているかいないか判定するため、移動判定のために別途情報を取得する必要がない。
【0014】
あるいは、前記携帯端末は、加速度センサを備え、前記加速度センサからの取得情報を前記サーバへ送信可能であり、
前記サーバは、
前記携帯端末から受信した前記取得情報に基づいて当該携帯端末が移動しているか否かを判定するように構成する。
かかる構成によれば、携帯端末がもともと備えている機能により取得した情報に基づいて当該携帯端末が移動しているかいないか判定するため、携帯端末やサーバに移動判定のための新たな機能を追加する必要がない。
【0015】
さらに、望ましくは、前記サーバは、
監視エリアに設置された感知器の検出信号に基づく異常情報を受信可能であり、
前記異常情報を受信した場合に、異常発生場所を特定し前記地図の情報に異常発生場所に関する情報を付加して前記所定の機器へ送信し、
前記所定の機器は、前記サーバから前記異常発生場所に関する情報および前記携帯端末の携帯率情報を受信した場合に、前記地図の情報に基づく地図上に前記異常発生場所のマークと前記携帯端末のマークをその携帯率を識別可能に表示するように構成する。
【0016】
かかる構成によれば、監視エリアで異常が発生し感知器により検出された場合に、異常情報がサーバに伝達され、サーバから地図情報に異常発生場所に関する情報が付加されて携帯端末へ送信されるため、表示部に表示された地図上に異常発生場所を表示させることができ、携帯端末の保有者は避難方向を判断することができる。
なお、前記感知器は、火災や地震、津波等何らかの災害を検知するセンサのみならず、防犯用のセンサ等、避難を要する異常を検知して異常情報を発信する物であれば良い。
【0017】
さらに、望ましくは、前記感知器は火災検知システムを構成する火災感知器であり、
前記火災検知システムは、前記火災感知器からの信号に基づいて火災の判定を行う火災受信機を備え、前記火災受信機は火災発生と判定した場合に前記異常情報として火災の発生場所に関する情報を前記サーバへ送信し、
前記サーバは、前記火災受信機からの火災の発生場所に関する情報を受信すると、前記地図情報に火災発生場所に関する情報を付加して前記携帯端末へ送信するように構成する。
【0018】
かかる構成によれば、監視エリアで火災が発生した場合に、サーバから地図情報に火災発生場所に関する情報が付加されて携帯端末へ送信されるため、表示部に表示された地図上に火災発生場所を表示させることができ、携帯端末の保有者は避難方向を判断することができる。また、監視エリアが建物内部である場合、一般に火災感知器および火災受信機を備えた火災検知システムが設けられているため、既存の火災検知システムを利用して携帯端末の保有者に火災発生場所を知らせ、安全に避難させることができる。
【0019】
また、望ましくは、標識となる電波を送信可能な可搬型の送信器を備え、
前記サーバは、前記携帯端末から受信した送信器情報に前記可搬型の送信器の識別情報が含まれる場合に、当該携帯端末は携帯されている可能性が高いと判断するように構成する。
かかる構成によれば、監視エリアの外に一時避難場所が設定され、一時避難場所に可搬型の送信器が設置された場合に、その送信器の情報に基づいて携帯端末の携帯率を判断することができる。
ここで、前記可搬型の送信器は、前記標識電波の送信機能の他に、GPS電波を受信する機能と無線通信機能を有するようにしても良い。これにより、一時避難場所を予め登録しなくても、あるいは一度設定した一時避難場所を後に変更して移動した場合にも、地図(マップ画面)の適切な位置に、一時避難場所を示すマークおよび避難人員に関する情報を表示することができる。
【0020】
さらに、望ましくは、前記携帯端末は、表示部に、前記地図と共に救助要請を入力するためボタン画像を表示可能であり、前記ボタン画像が操作されると救助要請を前記サーバへ送信し、
前記サーバは、携帯端末より救助要請を受けると、前記地図上の前記携帯端末のマークに救助を要請している端末であることを示す記号を付加して表示させるように構成する。
かかる構成によれば、携帯端末の保有者が火災等に巻き込まれた際に、簡単な操作により防災センター等外部へ救助を要請することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の位置情報システムによれば、移動していない利用者の携帯端末と、携帯端末を置き忘れて移動した利用者の端末とを区別して把握することができる。また、災害の発生時に逃げ遅れた利用者の携帯端末と置き忘れの携帯端末とを区別して把握することができ、不要な行動を回避した救助活動を支援することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の位置情報システムの第1の実施形態の構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の位置情報システムの第2の実施形態の構成例を示すブロック図である。
図3】実施形態の位置情報システムを構成する携帯端末が実行する位置情報表示処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図4】(a)は第1実施形態の位置情報サーバまたは第2実施形態の位置情報サーバが平常時に実行する処理の手順の一例を示すフローチャート、(b)は第2実施形態の位置情報サーバが実行する火災時処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図5】火災が発生していない場合に一般ユーザの携帯端末の表示部に表示されるマップ画面の一例を示す図である。
図6】(a)~(c)は携帯端末のマップ画面に表示される携帯端末のマークに付記される端末携帯率に関する情報を示す記号の例、(d)は救助要請を表わす記号の例を示す図である。
図7】火災が発生している場合に管理者権限端末または一般端末の表示部に表示されるマップ画面の一例を示す図である。
図8】火災が発生している場合に一般ユーザの携帯端末の表示部に表示されるマップ画面の一例を示す図である。
図9】(a)~(c)は携帯端末の画面に表示されている救助要請ボタン画像を操作した際に表示される画面の例、(d)は救助要請を表わす記号がタッチ操作された際に表示される画面の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係る位置情報システムの実施形態について説明する。図1は、本発明を適用した位置情報システムの第1の実施形態の概略構成を示すブロック図である。なお、図1において、実線Bで囲まれた領域は建物の内部空間を、また符号E1,E2が付された領域は各フロアや壁で仕切られたエリアの空間を示している。
本実施形態の位置情報システムは、図1に示すように、建物内部の所定エリア内の複数の箇所に配設されている据付型のビーコン(送信器)10Aと、可搬型のビーコン10Bと、ビーコン10Aまたは10Bからの信号(電波)を受信可能な携帯端末20と、携帯電話基地局30及びインターネット等の通信ネットワークNを介して携帯端末20との間でデータ通信を行う位置情報サーバ40を備える。
【0024】
携帯端末20へ無線信号(機器IDや設備情報などの固有情報)を発信するビーコン10の通信方式としては、例えばBluetooth(登録商標)通信やIEEE 802.11規格に従ったWiFi等の無線LAN、赤外線通信、可視光通信など公知の通信方式を利用することができる。ビーコン10Aを配置する間隔は特に限定されないが、以下の説明では、建物内の空間を網羅できるよう、隣接するそれぞれのビーコン10Aの通信範囲が互いに重なるような距離をおいて配置されているものとする。
【0025】
ビーコン10Aと10B(以下、10A,10Bを区別しないときはビーコン10と記す)は、同一周波数帯の信号(標識電波)を送信する機能を有しており、自己の識別情報(機器ID)を無線信号に乗せて定期的に周囲に発信する発信部を備えるものであれば良い。ビーコン10が無線で発信する信号(ビーコン信号)には、少なくとも当該ビーコン10の識別情報(機器ID)が含まれていれば良く、さらに、設置されているエリアに関する情報が含まれていても良い。ビーコン10Aが電源スイッチを有する場合、ビーコン10Bとしてビーコン10Aと同一仕様のものを使用することができる。
【0026】
携帯端末20は、例えばスマートフォンやタブレット端末、PDA(personal digital assistant)などの携帯型の情報端末であり、それぞれ制御部と、記憶部、表示部、操作部(例えば、表示部の表示画面に設けられたタッチパネル)や、ビーコン10からの信号を受信するビーコン信号受信部、通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40等の外部機器との間で各種情報の送受信を行う無線通信部などを備えて構成される。
【0027】
携帯端末20の記憶部には、定期的にビーコン10から無線で発信されるビーコン信号を受信して、当該ビーコン信号に含まれる識別情報(機器ID)等を抽出するとともに当該ビーコン信号の受信電波強度を検出し、識別情報等と受信電波強度とを含むビーコン情報を、携帯電話基地局30及び通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40へ送信する処理と、通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して位置情報サーバ40から送信されたマップ情報に基づいて自己の位置や火災発生位置を示すマーク等を含むフロア図画像を表示部に表示する処理とを実行するアプリケーション・プログラム(位置情報アプリ)が格納されている。
携帯端末20の制御部は、ビーコン信号受信部が、通信範囲が互いに重なる複数のビーコン10から発信されるビーコン信号を受信した場合には、それぞれのビーコン情報を無線通信部から位置情報サーバ40へ送信する。また、ビーコン信号の受信強度を位置情報サーバ40へ送信する。
【0028】
位置情報サーバ40は、当該位置情報サーバ40が管理する各建物の情報や各携帯端末20の情報などを格納するデータベース41を備えている。位置情報サーバ40は受信した情報と、データベース41内のビーコン情報に基づいて携帯端末20の位置を判断する。ここで、サーバ(位置情報サーバ)は狭義のサーバの他、PC(パーソナルコンピュータ)などのデータ処理装置であっても良い。
建物の情報は、当該建物の識別情報(ビル名や住所など)、当該建物の各フロア(各階)のマップ、当該建物の各フロアに設置されているビーコン10Aの識別情報及び設置場所情報、当該建物の各フロアに設置されている各種防災機器・設備の設置場所情報、当該建物の一時避難場所情報等を含む情報である。また、データベース41には、当該建物の各フロアに設置されていないが一時避難場所用のビーコンとして予め登録されている可搬型のビーコン10Bの識別情報も記憶されている。
【0029】
また、携帯端末20の情報とは、当該携帯端末20の識別情報(端末ID)、当該携帯端末20のユーザに関する情報(ユーザの名前など)、電話番号、メールアドレス等を含む情報である。例えば、携帯端末20に表示される位置情報アプリの設定画面においてユーザに関する情報を入力できるようになっており、その入力された情報が、当該携帯端末20の識別情報(端末ID)とともに位置情報サーバ40へ送信されてデータベース41に記憶されるようになっている。
【0030】
位置情報サーバ40は、携帯端末20が送信したビーコン情報を受信すると、受信したビーコン情報とデータベース41に記憶されている情報とに基づいて当該携帯端末20の所在位置を算出する。そして、データベース41から当該携帯端末20が位置しているフロアのマップを抽出し、抽出したマップに当該携帯端末20の所在位置をプロットしてマップ情報を生成し、生成したマップ情報を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して当該携帯端末20に送信する処理を実行可能である。これにより、携帯端末20の表示部には、当該携帯端末20の所在位置を示すフロア図画像が表示される。
【0031】
なお、位置情報サーバ40には、図1に破線で示すように、液晶ディスプレイのような表示装置42を設けて、この表示装置42の表示画面上に、携帯端末20の所在位置を示すフロア図画像を表示させるように構成しても良い。なお、表示装置42は、液晶または有機ELディスプレイの他、CRTやデジタルサイネージ、プロジェクタ等であってもよい。
【0032】
本実施形態においては、可搬型のビーコン10Bは、平時においては例えば防災センターなどに配備されており、災害の発生時に屋外または監視エリアの近傍に設定された一時避難場所へ搬送されて電源が投入されるとビーコン信号の送信を開始し、そのビーコン信号をその近傍に存在する携帯端末20が受信して位置情報サーバ40へビーコン情報を送信する。すると、ビーコン10Bが搬送された先の一時避難場所に、避難人員に関する情報を表わした画像が位置情報サーバ40によって生成され、携帯端末20へ送信されて表示部に表示される。
【0033】
図2は、本発明を適用した位置情報システムの第2の実施形態の概略構成を示す。本実施形態の位置情報システムは、建物内部の所定エリア内の複数の箇所に配設されている火災感知器50からの火災検出信号を受信可能な火災受信機60と、ゲートウェイ(中継器)70及びインターネット等の通信ネットワークNを介して火災受信機60との間でデータ通信を行う火災情報サーバ80とを備えたシステムに適用したものである。
【0034】
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様にビーコン10と位置情報サーバ40とからなるシステムと、複数の火災感知器50と火災受信機60とからなる火災検知システムが併設されており、火災受信機60はいずれかの火災感知器50からの火災検出信号を受信する火災の判定を行い、火災と判定すると火災発報を行う。位置情報サーバ40と火災情報サーバ80は通信ネットワークNを介してデータ通信を行うことができる。なお、位置情報サーバ40と火災情報サーバ80は1つの支援サーバとして構成しても良い。
また、本実施形態のシステムでは、もともと建物内に所定の間隔をおいて火災感知器50やスプリンクラーヘッドが設置されているので、ビーコン10Aは、それらの機器に内蔵もしくは付加する形態で取り付けたビーコン、あるいは、それらの機器の近傍に設置する形態で取り付けたビーコンを利用することができる。
【0035】
火災感知器50は、例えば、熱、煙、炎、有害ガスなどの異常現象の発生を検出すると、火災検出信号(有害ガスの場合は異常検出信号)を、感知器回線51を介して火災受信機60に送信する。火災感知器50は、火災検出信号に自己の設置アドレスを付加するタイプの感知器であっても良いし、火災検出信号に自身の設置アドレスを付加しないタイプの感知器であっても良い。
【0036】
火災受信機60は、火災感知器50からの火災検出信号を受信した場合に、表示部に火災報知表示を行うとともに、地区ベル鳴動や防排煙連動などの制御を行う。さらに、火災受信機60は、火災の発生場所情報や発生時刻情報などを含む火災情報を、当該火災受信機60の識別情報(受信機ID)とともにゲートウェイ70及び通信ネットワークNを介して火災情報サーバ80に送信する。
なお、火災受信機60は、火災検出信号に火災感知器50の設置アドレスが付加されている場合には、当該設置アドレスに基づいて火災の発生場所を特定する。一方、火災検出信号に火災感知器50の設置アドレスが付加されていない場合には、当該火災検出信号を伝送した感知器回線51(警戒区域)に基づいて火災の発生場所を特定する。
【0037】
火災情報サーバ80は、データベース81を備えている。データベース81には、例えば、当該火災情報サーバ80が管理する建物の識別情報(ビル名や住所など)と、当該建物に設置されている火災受信機60の識別情報(受信機ID)とを対応付けて記憶するテーブル等が格納されている。
火災情報サーバ80は、火災受信機60からの火災情報を受信すると、当該火災情報と共に送信された識別情報(受信機ID)に対応する建物の識別情報(ビル名や住所など)をデータベース81から取得する。そして、取得した建物の識別情報を、火災受信機60からの火災情報とともに通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40に送信する処理を実行可能である。
【0038】
第2の実施形態における位置情報サーバ40は、火災情報サーバ80からの火災情報を受信した場合に、当該火災情報に含まれる火災の発生場所情報等を反映させたマップ情報を生成し、生成したマップ情報を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して携帯端末20に送信する処理を実行可能である。これにより、携帯端末20の表示部には、火災の発生場所を示すフロア図画像が表示される。
また、位置情報サーバ40が防災センター等に配設されている場合に、図2に破線で示すように、液晶ディスプレイのような表示装置42を設けて、この表示装置42の表示画面上に、火災の発生場所や携帯端末20の所在位置を示すフロア図画像を表示させるように構成しても良い。
【0039】
次に、図3に示すフローチャートを用いて、第1および第2の実施形態において携帯端末20の制御部が実行する位置情報表示処理の手順の一例を説明する。なお、この位置情報表示処理は、位置情報アプリが起動されている間、一定の周期で繰り返し実行される。
携帯端末20の制御部は、位置情報アプリが起動されると、まず、ビーコン信号受信部がビーコン10から発信されるビーコン信号を受信したかを判定し(ステップS11)、ビーコン信号を受信していない(No)の場合には、ステップS13へ移行する。
【0040】
一方、ビーコン信号を受信した場合(ステップS11;Yes)には、当該ビーコン信号に含まれるビーコン10の識別情報(機器ID)等と当該ビーコン信号の受信電波強度とを含むビーコン情報を、自己の識別情報(端末ID)とともに携帯電話基地局30及び通信ネットワークNを介して位置情報サーバ40へ送信する(ステップS12)。また、携帯端末20は、自機が充電中であるか否か判定し(ステップS13)、自機が充電中であれば、充電中であることを知らせる情報を位置情報サーバ40へ送信する(ステップS14)。
【0041】
次いで、無線通信部が位置情報サーバ40から送信されるマップ情報を受信したかを判定する(ステップS15)。そして、マップ情報を受信していない場合(ステップS15;No)には、当該位置情報表示処理を終了する。
一方、マップ情報を受信した場合(ステップS15;Yes)には、当該マップ情報に基づく画像(フロア図画像)を表示部に表示して(ステップS16)、位置情報表示処理を終了する。これにより、位置情報アプリの起動後最初のステップS16では、最新のフロア図画像が表示部に表示され、位置情報アプリの起動後2回目以降のステップS16では、表示部に表示中のフロア図画像が最新のフロア図画像に更新されることとなる。
【0042】
なお、携帯端末20は、ビーコン信号を受信する度にビーコン情報を位置情報サーバ40へ送信するのではなく、例えば、前回受信したビーコン信号に含まれるビーコン10の識別情報と、今回受信したビーコン信号に含まれるビーコン10の識別情報とが異なる場合に、今回受信したビーコン信号に基づくビーコン情報を位置情報サーバ40へ送信するようにしても良い。
【0043】
次に、図4に示すフローチャートを用いて、位置情報サーバ40の制御部が実行する処理の手順の一例を説明する。なお、(a)は第1実施形態および第2実施形態の平常時における処理手順を、(b)は第2実施形態の火災発生時における処理手順を示す。
携帯端末20に位置情報アプリをインストールするときに、ログインIDとパスワードを設定するようになっており、その設定された情報は、当該端末の識別情報(端末ID)とともに位置情報サーバ40へ送信されてデータベース41に記憶されるようになっている。これにより、位置情報サーバ40は監視対象の携帯端末の情報を取得することができる。
【0044】
第1実施形態においては、位置情報サーバ40は、図4(a)に示すように、先ず、携帯端末20からビーコン情報を受信したかを判定する(ステップS20)。ビーコン情報を受信していない場合(ステップS20;No)には、処理を終了する。
一方、ビーコン情報を受信した場合(ステップS20;Yes)には、受信したビーコン情報とデータベース41に記憶されている情報とに基づいて当該携帯端末20の所在位置を算出し(ステップS21)、前回の所在位置から位置が変化しているか否か判定する(ステップS22)。そして、位置が変化している場合(ステップS22;Yes)には、当該携帯端末20は移動中であることおよび携帯端末の携帯率が高いことを記憶し(ステップS23)、所定時間(例えば1時間)以上位置が変化していない場合(ステップS22;No)には当該携帯端末20は非移動であることを記憶する(ステップS24)。
【0045】
続いて、位置情報サーバ40は、ビーコン信号を受信した携帯端末20から充電中であるかを示す情報を受信しているか判定する(ステップS25)。ここで、充電中情報を受信している場合には、移動中でなく充電中であるので携帯端末の携帯率が低いことを記憶する(ステップS26)。また、ステップS25で充電中情報を受信していない場合には移動中でなく充電中でもないため、携帯端末が携帯されていないことも携帯されているが移動していないことも考えられるので、端末携帯率は「中」であることを記憶する(ステップS27)。
その後、ステップS21で算出した端末所在位置に基づいて、データベース41から当該携帯端末20が位置するフロア(現在階)のマップを抽出し(ステップS28)、抽出したマップに当該携帯端末20の所在位置をプロットしてマップ情報を生成する(ステップS29)。
【0046】
続いて、ステップS29で生成したマップ情報(現在階フロア図情報)を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して当該携帯端末20および他の携帯端末へ送信する(ステップS30)。この際、ステップS24、S26、S27で記憶した端末携帯率に関する情報を付加して送信する。これにより、携帯端末20の表示部に、図5に示すような当該携帯端末20が位置するフロア(現在階)のマップ(フロア図)に、当該携帯端末20の現在位置に相当する部位に当該携帯端末20を示すマークMが表記されたフロア図画像が表示されることとなる。マークMに付記された丸付き数字は、その場所にいる人数(携帯端末の数)を表わす。なお、マークMをタッチすると、各端末の状態(充電中等)を表示するようにしても良い。
【0047】
また、表示されるフロア図画における携帯端末20を示すマークMには、例えば図6に示すように、その端末の端末携帯率を識別可能な記号が付加されて表示される。ここで、(a)は端末携帯率が高い携帯端末、(b)は端末携帯率が「中」の携帯端末、(c)は端末携帯率が低い携帯端末を表わしている。このような表示を行うことにより、各携帯端末の携帯率を把握することができ、端末携帯率が低い携帯端末は、置き忘れである可能性が高いと判断することができるようになる。
なお、図6(a)~(c)に示すような記号を付記する代わりに、端末携帯率が低いとき、高いとき、「中」のときで、それぞれ異なる表示色でマークMを表示するようにしても良い。図6(d)は、救助要請をしている携帯端末を表わす記号である。図6(a)~(dc)に示す記号は一例であって、これに限定されるものでない。また、記号以外に数値や文字で表現するようにしても良い。
【0048】
次の表1に、本実施形態の位置情報システムにおけるケース別の端末携帯率の分類の仕方を示す。
【表1】
ここで、ケース#3は、端末携帯率が低いので、当該携帯端末は置き忘れである可能性が高い。なお、本実施形態においては、位置情報サーバ40が携帯端末から充電中か否かの情報を取得して端末携帯率を判断する場合を例にとって説明したが、充電中情報に代えてあるいは充電中情報と共に携帯端末に内蔵されている加速度センサの情報を取得して、所定時間(例えば1時間)以上加速度センサの情報が変化していない場合には移動していないと判定して、端末携帯率を判断するようにしても良い。
【0049】
さらに、位置情報サーバ40は、携帯端末の移動距離を取得(算出)して、移動距離に関する情報と充電情報とに基づいて携帯率をレベル化もしくは数値化して携帯率情報を生成するようにしても良い。ここで、携帯端末の移動距離に関する情報としては、例えば携帯端末が備える加速度センサやジャイロセンサからの情報もしくはGPS機能による位置情報に基づいて算出した所定時間内における携帯端末の移動距離や、所定時間内に受信したビーコンの数の情報(数が多いほど移動距離が大きいことを意味する)等が考えられる。また、携帯端末が移動していない時間の長さに応じて、携帯率のレベルや数値を変化させる等の処理を行うようにしても良い。
上記のように携帯率をレベル化もしくは数値化することにより、携帯率を上記実施例の3段階よりも多い4段階以上の段階で表示させたり、パーセンテージで携帯率を表示させたりすることができる。
【0050】
次に、第2実施形態における位置情報サーバ40の処理について説明する。
なお、以下の説明では、出火建物(火災感知器50が作動している建物)内に存在する携帯端末20のうち管理者が保有する管理者権限端末を「特別端末」と称し、出火建物内に存在する携帯端末20のうち管理者権限端末以外の携帯端末20を「一般端末」と称し、一般端末を所持する者を「一般端末ユーザ」と称する。ここで、「管理者権限端末」は、自衛消防隊長が所持する携帯端末20の他、防災センターに配備されている設置型のPC端末であっても良い。なお、説明上「管理者権限端末」と「一般端末」の2つのグループに分けているが、2つのグループだけでなくても良い。例えば、自衛消防隊員が所持する「自衛消防隊員端末」等である。
【0051】
自衛消防隊長や防災センターには事前に管理者権限用のログインIDとパスワードを通知しておき、インストール時に管理者権限用のログインIDとパスワードを設定した携帯端末20は管理者権限端末として登録される。インストール時に管理者権限用以外のログインIDとパスワードを設定した携帯端末20は、管理者権限端末以外の携帯端末20として登録される。これにより、位置情報サーバ40は、火災発生時に支援情報を送信する対象の携帯端末の情報を取得することができる。
【0052】
第2実施形態の位置情報システムにおいては、火災情報サーバ80は、火災受信機60からの火災情報(火災の発生場所情報や発生時刻情報などを含む情報)を受信すると、当該火災情報とともに送信された火災受信機60の識別情報(受信機ID)に対応する建物の識別情報(ビル名や住所など)をデータベース81から取得し、当該火災情報を、取得した建物の識別情報とともに位置情報サーバ40へ送信する。
位置情報サーバ40は、管理する複数の建物のいずれかで火災が発生した場合(火災感知器50が作動している場合)に、携帯端末20からのビーコン情報に基づいて出火建物(火災感知器50が作動している建物)に位置する携帯端末20を特定する。
【0053】
図4(a)に示す処理は、第2実施形態における平常時処理であり、特別端末及び一般端末以外の携帯端末20に向けて実行される処理である。したがって、位置情報サーバ40が管理する複数の建物のいずれかで火災が発生しても、火災が発生していない建物に対しては平常時処理が一定の周期で繰り返し実行され、位置情報サーバ40が管理する複数の建物のいずれかで火災が発生した場合には、以下に説明する火災時処理(図4(b))が実行されて、この火災時処理において図4(a)に示す平常時処理(ステップS36)が実行される。
【0054】
次に、図4(b)に示すフローチャートを用いて、位置情報サーバ40の制御部が実行する火災時処理の手順の一例を説明する。図4(b)の火災時処理は、例えば火災情報サーバ80が火災受信機60から火災の発生を知らせる情報を受信し、位置情報サーバ40へ火災情報を送信することで開始される。なお、このフローチャートのステップS31~S35は、特別端末及び一般端末に向けて実行される処理であり、火災時処理のステップS36は、それ以外の携帯端末20(特別端末及び一般端末以外の携帯端末20)に向けて実行される処理である。
【0055】
図4(b)の火災時処理では、位置情報サーバ40は、先ず、データベース41から出火階のマップを抽出し(ステップS31)、抽出したマップに火災の発生場所をプロットする(ステップS32)。
次いで、特別端末及び一般端末からのビーコン情報とデータベース41に記憶されている情報とに基づいて特別端末及び一般端末のそれぞれの所在位置を算出する(ステップS33)。続いて、火災の発生場所がプロットされたマップに、出火階に位置する端末の所在位置をプロットしてマップ情報を生成する(ステップS34)。この際、当該携帯端末には他の端末とは区別可能にマークを付けたマップ情報を生成しても良い。また、各マークは何人がその場にいるかということを示すために、同一のビーコン情報を送信してきた携帯端末20の数に該当する数字を付加して表示をさせても良い。
【0056】
続いて、ステップS34で生成したマップ情報(出火階フロア図情報)を通信ネットワークN及び携帯電話基地局30を介して特別端末及び一般端末へ送信する(ステップS35)。これにより、特別端末及び一般端末の表示部に、例えば図7に示すような火災の発生場所と端末の所在位置に火災マークFと端末マークM1,M2等が付された出火階のフロア図画像が表示されることとなる。なお、図7において、円が太いマーク(M2)は自身がいる場所を示す。
【0057】
その後、図4(a)に示す平常時処理と同様な処理を実行して(ステップS36)、ステップS32へ戻る。ステップS36の平常時処理により、一般端末の表示部には、自端末の所在位置のマークMが示された図5に示すようなフロア図画像が表示されることとなる。また、各マークには、当該の携帯端末の携帯率を表わす記号が付記される。なお、本実施形態の位置情報システムにおけるケース別の端末携帯率の分類の仕方は、火災時も平常時も表1と同じである。また、同一フロアで火災が発生している時は、自端末の所在位置マークMの他、避難方向の情報や火災マークを付加したマップ情報を送信して表示させるようにしても良い。
【0058】
なお、図4には示されていないが、位置情報サーバ40は、携帯端末20が可搬型のビーコン10Bからのビーコン情報を受信していると判定したときやいずれのビーコンからのビーコン情報も受信していないと判定したときは、当該携帯端末は屋外にある可能性が高いので、充電中情報の有無にかかわらず「携帯率:高」と判断しても良い。
また、位置情報サーバ40は、避難完了を報告してきた携帯端末については、避難が完了しているので、例えば携帯端末側で位置情報提供の設定がオフにされる等、位置が把握できない状況でも、「携帯率:高」と判断して表示部に表示するようにしても良い。上記のように端末携帯率を表わす記号が付記されて表示されることで、火災発生時に活動中の自衛消防隊員や防災センターでは、火災発生フロアに表示されている携帯端末が置き忘れであることを判断することができ、効率的な救助活動を行うことができる。
【0059】
また、本実施形態の位置情報システムにおいては、火災が発生すると、特別端末及び一般端末以外の携帯端末の所在位置のマークMが示されたフロア図画像において、図8に示すように、屋外または監視エリア外における一時避難場所Gと避難完了者の数が表示されるようになっている。さらに、一時避難場所が複数ある場合に、各一時避難場所とそこに搬入された可搬型ビーコンとを紐付けて位置情報サーバ40のデータベース41に登録することによって、マップ上に一時避難場所ごとの避難完了者の数を把握可能に表示させることができる。
【0060】
さらに、本実施形態の位置情報システムにおいては、位置情報アプリに、端末保有者が心身の状態(無事、怪我、緊急搬送待ちなど)の情報や救助要請を入力することができる入力画面を表示する機能を設けられている。
具体的には、図7に示すように、マップ表示画面の左上に救助を要請するための入力ボタン画像Bsosが表示されており、携帯端末保有者がこの入力ボタン画像Bsosを指でタッチすると、平常時には図9(a)に示すような画面が表示される。この画面において、「防災センター」または「近くの人」を選択すると、防災センターの通話器または近くに存在する携帯端末がコールされ、通話可能になる。「近くの人」が選択された場合、位置情報サーバ40は、データベース41を検索して、当該携帯端末と同一のフロアに設置されているビーコンからの電波を受信している携帯端末を見つけ、その端末の電話番号またはアドレスを取得して通信経路を確立することで通話可能にする。
【0061】
一方、火災等の異常発生時には、一般の携帯端末の画面には図9(b)に示すような画面が表示され、携帯端末保有者は、防災センターを通話呼び出したり負傷の程度や状況を入力したりすることができる。また、自衛消防隊員の携帯端末の画面には図9(c)に示すような画面が表示され、自衛消防隊員の携帯端末を使用して、防災センターを通話呼び出したり具体的な要請の内容や状況を入力したりすることができる。
図9(b)または(C)の画面において、いずれかの項目が選択されると、マップ画面上の当該携帯端末を示すマークMに、図6(d)に示すような「SOS」記号が付記されて表示され、このマークに指でタッチすると、図9(d)に示すように、救助要請が入力した負傷の程度や状況、具体的な要請内容が画面に表示される。
このように、本実施形態の位置情報システムにおいては、携帯端末を使用して異常発生時の救助活動を支援することができる。
【0062】
さらに、本実施形態の位置情報システムにおいては、据付型ビーコン10Aや可搬型ビーコン10Bのそれぞれの識別情報と、識別情報を送信してきた携帯端末20の情報から、避難完了済携帯端末(ユーザ)リストと避難未完了携帯端末(ユーザ)リストを表示できるようにしても良い。これにより、一時避難場所が複数となっている場合の避難者の把握や、誰が避難未完了といった情報を素早く把握できる。ここで、監視対象がオフィスビルの場合においては、位置情報サーバ40に勤怠システムを接続して出勤/休暇情報を取得可能に構成するようにしても良い。
【0063】
これによって、前記避難未完了携帯端末(ユーザ)リストから、休暇や外出等で社外にいる社員を誤って逃げ遅れ者として把握するのを回避することができる。なお、各ユーザは、携帯端末を用いて、自己や他者の心身の状態情報(無事、軽い怪我、救急搬送待、救急搬送済等)を入力できるようにしても良い。これによって、フロア図上や前記避難完了済携帯端末(ユーザ)リスト上等にて、各人員の状態を把握することができ、迅速な応急手当や作業の優先順位の決定等に活用することができる。
【0064】
以上、本発明を実施形態及び変形例に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、携帯端末20に自端末の位置表示機能および災害発生時の一時避難場所での人員の把握機能を有する位置情報アプリを搭載したものについて説明したが、前記位置情報アプリの位置表示機能や一時避難場所での人員把握機能は、消防隊長が隊員に対して役割を設定して火災の確認や消火活動を指令したり、指令を受けた隊員が報告を行なったりするなどの自衛消防隊の活動を支援する機能を備えた防災支援アプリの機能の一部として実現するようにしても良い。
【0065】
また、上記実施形態では、可搬型ビーコン10Bとして据付型ビーコン10Aと同じ機能を有するものを使用したシステムを説明したが、可搬型ビーコン10Bには、ビーコン信号の送信機能の他に、GPS電波を受信する機能と無線通信機能を有するものを使用して、一時避難場所を予め登録しなくても、あるいは一度設定した一時避難場所を後に変更して移動した場合にも、マップ画面の適切な位置(建物に対する可搬型ビーコンの正確な位置)に、一時避難場所を示すマークおよび避難人員に関する情報を表示して避難した人員を把握できるように構成しても良い。
また、上記実施形態では、可搬型の送信器として据置型の送信器と同一構成のビーコンを使用したものを説明したが、携帯端末で送信器を代用することも可能である。この場合、所定の携帯端末を一時避難場所と紐付け、その所定の携帯端末と通信を行った携帯端末は一時避難場所にいると判断することができる。
【0066】
さらに、上記実施形態では、ビーコン10はビーコン信号を送信する機能のみ有していると説明したが、携帯端末20等からの無線信号や電波を受信する機能および受信した情報を無線や有線を介してサーバへ送信する機能をビーコンに持たせるようにしても良い。そして、この場合、利用者あるいは物に電波発信タグを携帯もしくは貼付させて、ビーコンによってタグの情報を受信して位置情報サーバ40へ送信しても良い。また、携帯端末の電波を受信して、位置情報サーバ40へ送信させても良い。
また、上記実施形態では、位置情報システムとして、ビーコンによる測位を利用したシステムを例示したが、これに限定されず、例えばIMES(Indoor MEssaging System)等のその他の方式による測位を利用した位置情報システムであっても良い。すなわち、送信器は、ビーコン10に限定されず、例えばIMES送信器等であっても良い。
【符号の説明】
【0067】
10A 据付型ビーコン(据付型送信器)
10B 可搬型ビーコン(可搬型送信器)
20 携帯端末
40 位置情報サーバ(サーバ)
41,81 データベース
42 表示装置
50 火災感知器
60 火災受信機
70 ゲートウェイ
80 火災情報サーバ(サーバ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9