(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】歯列矯正における歯牙削合データ作成方法、歯列矯正における歯牙削合データ作成プログラム
(51)【国際特許分類】
A61C 7/00 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
A61C7/00
(21)【出願番号】P 2020099189
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】中西 崇
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/069191(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第101528152(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0231899(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯列矯正の際に行われる歯牙削合のデータを作成する
ための各ステップをコンピュータに機能させるプログラムであって、
口腔内3次元形状データから歯列矯正後の歯列データを演算して最終的に必要となる削合位置及び削合量を演算するステップと、
前記口腔内3次元形状データから歯列矯正により時系列に歯牙が移動する演算をするステップと、
前記歯牙が移動する演算をするステップにおいて、少なくとも1つの歯牙が予め決められた移動量に達したことを判定し、このときに隣在歯間に干渉があったときには、一機会での削合可否を判定し、
前記一機会で削合ができないときには
前記一機会で削合ができる歯牙の移動量にまで遡
り、前記一機会で削合できるときは遡ることなく、ここまでを1つのステージとして区切り、この状態で削合すべき歯牙の場所及び量を確定し、前記最終的に必要となる削合量から減算するステップと、を含み、
その後前記ステージを変更し、最終的に必要となる削合量に達するまで繰り返して複数のステージを得て、各前記ステージにおいて歯牙削合位置及び歯牙削合量を演算する、
歯牙削合データの作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯列矯正の際の歯牙削合のデータの作成に関する。
【背景技術】
【0002】
歯ならびや噛み合わせを治療する方法として歯列矯正が知られている。歯列矯正は、矯正装置を通じて、歯やアゴの骨に力をかけてゆっくりと移動させ、歯ならびや噛み合わせを治すものである。
【0003】
このように、歯列矯正ではその過程で歯牙の移動を伴うため、歯牙同士が接触して移動を妨げることがある。そのため、歯列矯正においては、当該歯牙の移動を想定して隣接する歯牙(隣在歯)の対向部分のエナメル部分を予め削り(歯牙削合)、隙間を形成する作業をおこなう。これをIPR(Interproximal enamel Reduction)、ストリッピング、又は、ディスキングと呼ぶことがある。
【0004】
例えば非特許文献1にはIPR量(歯牙削合量)を予想しながら矯正を進めていくことが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】槇宏太郎、佐本博、土岐泰弘ら「正しく使おう!アライナー型矯正装置」、デジタルダイヤモンド社、2019年4月1日発行、第44巻第6号、32頁-35頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、歯牙削合をするべき部位及びその量が多くなる場合、一度の施術機会で実施することが困難であることがある。また、歯列矯正は、アライナー(マウスピース型の矯正器具)を用いる場合には、矯正専門医でない一般歯科医で行う場合が増えており、歯列矯正の進行に伴う歯牙削合の程度等についてなんらかの指標を提示できれば非常に有用である。
【0007】
本開示は上記の点に鑑み、歯列矯正における歯牙削合の進め方を提示することが可能な歯牙削合データの作成方法を提供することを課題とする。また、そのためのプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの態様は、歯列矯正の際に行われる歯牙削合のデータを作成する方法であって、口腔内3次元形状データから歯列矯正後の歯列データを演算して最終的に必要となる削合位置及び削合量を得る過程と、口腔内3次元形状データから歯列矯正により時系列に歯牙が移動する演算をする過程と、歯牙が移動する演算をする過程において、少なくとも1つの歯牙が予め決められた移動量に達したことを判定し、このときに隣在歯間に干渉があったときには、一機会での削合可否を判定し、一機会で削合ができないときには一機会で削合ができる歯牙の移動量にまで遡ることで、ここまでを1つのステージとして区切り、この状態で削合すべき歯牙の場所及び量を確定し、最終的に必要となる削合量から減算する過程と、を含み、その後ステージを変更し、最終的に必要となる削合量に達するまで繰り返して複数のステージを得て、各ステージにおける歯牙削合位置及び歯牙削合量を演算する、歯牙削合データの作成方法である。
【0009】
本開示の他の態様は、歯列矯正の際に行われる歯牙削合のデータを作成するプログラムであって、口腔内3次元形状データから歯列矯正後の歯列データを演算して最終的に必要となる削合位置及び削合量を演算するステップと、口腔内3次元形状データから歯列矯正により時系列に歯牙が移動する演算をするステップと、歯牙が移動する演算をするステップにおいて、少なくとも1つの歯牙が予め決められた移動量に達したことを判定し、このときに隣在歯間に干渉があったときには、一機会での削合可否を判定し、一機会で削合ができないときには一機会で削合ができる歯牙の移動量にまで遡ることで、ここまでを1つのステージとして区切り、この状態で削合すべき歯牙の場所及び量を確定し、最終的に必要となる削合量から減算するステップ過程と、を含み、その後ステージを変更し、最終的に必要となる削合量に達するまで繰り返して複数のステージを得て、各ステージにおいて歯牙削合位置及び歯牙削合量を演算する、歯牙削合データの作成プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、最終的に必要な歯牙の削合量に至るまでの削合の進め方についてその内容をステージに分けて提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は歯牙削合データの作成方法S10の流れを示す図である。
【
図2】
図2は3次元形状データの取得の過程S11で取得した口腔内3次元形状データを表示した例である。
【
図3】
図3は初期状態の歯列データを図形で表示した例である。
【
図4】
図4(a)は歯列矯正後に最終的に得られる歯列データを図形で表示した例、
図4(b)はその一部を拡大して表した例である。
【
図6】
図6は電子計算機10の構成を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.歯牙削合データの作成方法
図1には、1つの形態にかかる歯列矯正の際の歯牙削合データ作成方法S10(以下「作成方法S10」と記載することがある。)の流れを示した。
図1からわかるように、作成方法S10は、3次元形状データの取得の過程S11、初期・最終歯列データの作成の過程S12、第1ステージの宣言の過程S13、歯牙移動の演算の過程S14、規定移動量の歯牙の有無を判定する過程S15、隣在歯間の干渉有無を判定する過程S16、本ステージにおける合計IPR量の算出の過程S17、一機会で削合可能であるかを判定する過程S18、一機会で削合可能な歯牙移動に遡る過程S19、第Nステージデータの作成の過程S20、IPR完了の判定の過程S21、ステージ進行の宣言の過程S22、及び、IPRシートの作成の過程S23を含んでいる。以下に各過程について説明する。
【0013】
<3次元形状データの取得の過程>
3次元形状データの取得の過程S11(「過程S11」と記載することがある。)では、口腔内の歯列の形状をデジタルデータ(口腔内3次元形状データ)化する過程である。
図2には1つの例として取得した口腔内3次元形状データにより、コンピュータ上で図形として表示された口腔内の歯列1を表した。ここでは上顎のみを示しているが、下顎についても同様である。
デジタルデータ化する方法は公知の方法を用いることができ、特に限定されることはないが、例えば3次元計測装置によるスキャンや、CT(Computed Tomography、コンピュータ断層診断装置)による画像処理によることができる。
【0014】
<初期・最終歯列データの作成の過程>
初期・最終歯列データの作成の過程S12(「過程S12」と記載することがある。)では、過程S11で得た口腔内3次元形状データから歯列矯正の演算が可能なように初期状態の歯列データを作成するとともに、歯列矯正後の最終的に得られるべき歯列データを作成する。
【0015】
図3には初期状態の歯列データに基づいてコンピュータにより表示された初期状態の歯列2を表した。過程S11で取得したデータは単なる表面データでしかないため、歯列矯正の演算をするため、歯牙部と歯肉部とを区別し、個々の歯牙を動かせるように加工する必要がある。歯牙部と歯肉部とを区別して個々の歯牙を動かせるようにするための方法は特に限定されることはなく、公知の方法を適用することができる。例えば近遠心付近の辺縁隆線上の任意の2点を手動で選択し、自動認識で歯牙と歯肉の境界線を引き区別することが挙げられる。同様の方法が例えば「Orhan C. Tuncay, "The Invisalign system" quintessence books, P50(Fig.6-4),P60-P61(Fig.7-7),P72-P73(Fig.8-9,Fig.8-10)」にも記載されている。
【0016】
図4(a)には、歯列矯正後に最終的に得られるべき歯列データに基づいてコンピュータにより表示された最終状態の歯列3を表した。初期状態の歯列データからの最終状態の歯列データの作成は、歯科医師の技工指示を基に歯牙を移動させて矯正後の歯列をシミュレーションすることで行われる。本形態では歯牙の移動はコンピュータプログラムによる演算で自動に行うことも、術者による手動操作で行うこともできる。これにより、例えば
図4(b)に
図4(a)の一部(具体的には上顎の3番と4番に注目してその周辺)を拡大して示し、丸で囲んだ部分のように、隣在歯同士が接触し、データ上では互いに食い込むようになり、食い込んだ範囲で同じ座標に隣在歯の両方が存在する(以下、この状態を「干渉」と記載することがある。)部分が生じる。これにより、干渉した量に基づいて例えば
図5のように、最終的な削合量(最終IPR量、total)が決められる。
図5では「最終IPR量(mm)合計」で表した。
図5では、上半分が上顎側を表し、下半分が下顎側を表している。
【0017】
削合量を設定する際、当該削合量は歯科医師の指示に従って設定するか、特に指示がない場合は通常の条件に従って演算した結果による削合量を設定する(いずれの場合でも、決定は必ず歯科医師の承認を得る。)。よってこの工程S12で、最終的に歯牙に必要な削合量が決定される。この例では、
図5示した通りであるが、その中でも例えば、上顎左3番と上顎左4との間では最終的に0.5mmの削合量が必要であるため、上顎左3番遠心に0.25mm、上顎左4番近心に0.25mmの削合量が設定されている。この2つの歯牙が最終的な歯列状態となるように移動するまでに、この量の削合が必要であることがわかる。
【0018】
<第1ステージの宣言の過程>
第1ステージの宣言の過程S13(「過程S13」と記載することがある。)では、第1ステージ(N=1)の処理をすることを宣言する。従って、次にステージ進行の宣言の過程S22で第2ステージに進むことが宣言されるまでは、第1ステージに関する処理が行われる。
【0019】
<歯牙移動の演算の過程>
歯牙移動の演算の過程S14(「過程S14」と記載することがある。)では、初期状態の歯列が最終状態の歯列に至るまでの歯牙の移動を時系列で演算する。
歯牙移動の演算は、時系列で歯牙を移動させて歯列をシミュレーションすることで行われる。歯牙移動はコンピュータプログラムによる演算で自動に行うか、術者による手動操作で行うことができ、公知の方法を適用することができる。例えば「Orhan C. Tuncay, "The Invisalign system" quintessence books, P105-P113」に記載がある。
【0020】
<規定移動量の歯牙の有無を判定する過程>
規定移動量の歯牙の有無を判定する過程S15(「過程S15」と記載することがある。)では、過程S14で行っている歯牙移動の演算の最中に、少なくとも1つの歯牙において規定した移動量に達したかを判定する。例えば歯牙の移動量の規定値を0.25mmとしたとき、過程S14の演算で歯牙の少なくとも1つにおいて移動量が0.25mmに達したときに過程S15でYesが選択されて次の過程S16に移動する。一方、全ての歯牙において規定移動量に達しないときには過程S15でNoが選択され、過程S14が進行される。
なお、規定移動量は施術者の希望等により変更することができてもよい。
【0021】
<隣在歯間の干渉有無を判定する過程>
隣在歯間の干渉有無を判定する過程S16(「過程S16」と記載することがある。)では、過程S15でYesと判定されたときに、隣在歯で干渉が生じたかを判定する。この干渉量が削合すべき歯牙の量となる。
過程S15において隣在歯間で干渉が生じていなければ過程S16では「No」が選択され、本ステージが確定し、後述する過程S20に移動する。一方、過程S15で隣在歯間の干渉が生じた場合には過程S16では「Yes」が選択され、次の過程S17に移動する。
【0022】
<本ステージにおける合計IPR量の算出の過程>
本ステージにおける合計IPR量の算出の過程S17(「過程S17」と記載することがある。)では、過程S16において隣在歯間で干渉がある場合において、この干渉量から、本ステージにおけるIPR量(削合量)の合計を算出する。複数の隣在歯間で干渉が生じた場合には、その全てのIPR量の合計を算出する。
【0023】
<一機会で削合可能であるか判定する過程>
一機会で削合可能であるかを判定する過程S18(「過程S18」と記載することがある。)では、過程S17で得た本ステージにおける合計のIPR量が一回の治療機会(一機会)で削合可能であるかを判定する。一機会で削合することができる量であればYesが選択されて過程S20に移動する。一方、一機会で削合することができない量であれば、削合のためにステージを分割する必要があることからNoが選択されて過程S19に移動する。
ここで、一機会で削合可能である量は、特に限定されることはなく施術者の希望等に沿って適宜設定することができる。
【0024】
<一機会で削合可能な歯牙移動に遡る過程>
一機会で削合可能な歯牙移動に遡る過程S19(「過程S19」と記載することがある。)では、過程S18において一機会で削合が不可能であると判定されたことを受けて、一機会で削合可能な歯牙移動量にまで歯牙の移動を遡る。これにより本ステージを一機会で行うことができるようになる。歯牙移動を遡る方法は特に限定されることはないが、過程S14で行われた演算の進行過程の履歴に基づいてこれを遡ればよい。
【0025】
<第Nステージデータの作成の過程>
第Nステージデータの作成の過程S20(「過程S20」と記載することがある。)では、過程S16でNoが選択されたとき、過程S18でYesが選択されたとき、及び、過程S19において一機会で削合可能なように歯牙移動が遡った状態とされたときに、これに基づいて歯牙削合が行われた(又は、行われなかった)としたときの残りの歯牙削合量をデータとして得る。
【0026】
<IPR完了の判定をする過程>
IPR完了の判定をする過程S21(「過程S21」と記載することがある。)では、過程S20で、最終的な矯正後の歯列とするための全ての隣在歯間で削合すべき歯牙がないか(IPR残量が0になったか)どうかを判定する。
過程S21で少なくとも1つの隣在歯間でIPR残量が0でない場合には過程S22に進む。一方、過程S21で全ての隣在歯間でIPR残量が0となった場合には過程S23に進む。
【0027】
<ステージ進行の宣言の過程>
ステージ進行の宣言の過程S22(「過程S22」と記載することがある。)では、この過程が、IPR残量がある場合に進む過程であることからもわかるように、未だ最終の歯列状態には至っていないことから、次のステージに進むため、ステージを1つ進めた新たなステージの演算とする宣言を行う。
具体的には、NをN+1に置き換える。例えば第1ステージの演算を行ってきた場合であれば、過程S22では第2ステージを行う宣言をするということになる。
【0028】
<過程S22の後の進行>
過程S22でステージ進行の宣言をした後は、前ステージまでに得たデータを承継して過程S14からの過程を繰り返す。
【0029】
<IPRシートの作成の過程>
IPRシートの作成の過程S23では、過程S21で全ての隣在歯間で残りのIPR量がゼロになった後に、ここまで得てきたデータに基づいてIPRシートを作成する。得られたIPRシートにより例えば歯科医師や患者に示されてその計画を検討したり、説明したりすることができる。
図5にはIPRシートの例を示した。このようにIPRシートでは、矯正後の最終歯列を得るための各隣在歯間のIPR量や各ステージにおける隣在歯間の位置及びIPR量を示すことができる。
【0030】
2.歯牙削合データの作成プログラム
上記したように、歯牙削合データの作成方法S10において、過程S11で口腔内3次元形状をデータ化して口腔内3次元形状データを取得した後は、全てデジタルデータで演算を行うものであり、これをコンピュータプログラムとして電子計算機で実行することができる。従って、上記過程S12乃至過程S23をプログラムの各ステップとして置き換え、歯牙削合データの作成プログラムとすることができる。各ステップの内容は、過程S12乃至過程S23と同じように考えることができる。
【0031】
3.電子計算機
上記した歯牙削合データの作成プログラムで行われる各ステップは、コンピュータ等の電子計算機で実行される。すなわち、3次元形状データの取得の過程S11で口腔内3次元形状データが取得され、電子計算機に当該口腔内3次元形状データとして入力された後、このデータに基づいて、初期・最終歯列データの作成のステップ、第1ステージの宣言のステップ、歯牙移動の演算のステップ、規定移動量の歯牙の有無を判定するステップ、隣在歯間の干渉有無を判定するステップ、本ステージにおける合計IPR量の算出のステップ、一機会で削合可能であるかを判定するステップ、一機会で削合可能な歯牙移動に遡るステップ、第Nステージデータの作成のステップ、IPR完了の判定のステップ、ステージ進行の宣言のステップ、及び、IPRシートの作成のステップの各ステップを電子計算機が演算してその結果を出力することにより行われる。
図6に電子計算機の構成を説明のための図を示した。
図6からわかるように、電子計算機10は、演算子11、RAM12、記憶手段13、受信手段14、及び出力手段15を備えている。
【0032】
演算子11は、いわゆるCPU(中央演算子)により構成されており、上記した各構成部材に接続され、これらを制御することができる手段である。また、記憶媒体として機能する記憶手段13等に記憶された各種プログラムを実行し、これに基づいて各種データの生成やデータの選択をする手段として演算を行うのも演算子11である。本形態ではこの記憶手段13に、歯牙削合データ作成プログラムが記憶され、これを演算子11で演算して結果を得ている。
【0033】
RAM12は、演算子11の作業領域や一時的なデータの記憶手段として機能する構成部材である。RAM12は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等で構成することができ、公知のRAMと同様である。
【0034】
記憶手段13は、各種演算の根拠となるプログラムやデータが保存される記憶媒体として機能する部材である。また記憶手段13には、プログラムの実行により得られた中間、最終の各種結果を保存することができてもよい。本形態ではこの記憶手段13に、歯牙削合データ作成プログラム、過程S20で得られる第Nステージデータ、IPRシート等が記憶されている。
【0035】
受信手段14は、例えば3次元的に口腔内形状を取得するスキャナの記憶媒体20に接続され、ここに記憶された口腔内3次元形状データを取り入れるための機能を有する部材である。
【0036】
出力手段15は、演算子11の演算により得られた結果のうち外部に出力すべき情報を出力する機能を有する部材であり、本形態ではモニター21が接続され、該モニター21により操作者が画面で結果が見られるようにされている。例えばIPRシートを表示することができる。
【0037】
電子計算機10によれば、スキャナ等から口腔内3次元形状データが受信手段14を介して取り込まれ、記憶手段13に記憶されたプログラムに基づき演算子11で演算を行って、その結果を出力手段15を介してモニター21に表示する。
これにより、各ステージにおける歯科削合データを演算し、最終的に
図5に示したようなIPRシートの作成を効率よく行うことができる。
【0038】
4.効果等
上記した歯牙削合データの作成方法、歯牙削合データの作成プログラムによれば、最終的に必要な歯牙の削合量に至るまでの削合の進行についてその内容をステージに分けて提示することができる。これにより、必要に応じて条件を変える等して当該進行を提示することもでき、例えば施術する歯科医師や、施術を受ける患者の負担を低減させた治療(削合)の進行を提供することも可能となる。
【0039】
5.アライナーの作製
歯牙削合データの作成方法、歯牙削合データの作成プログラムでは、歯牙削合に関するデータの他、各ステージで当該ステージにおける歯列矯正後の歯列形状を得ることもできる。従って、この歯列形状のデータに基づいた歯列形状CADデータを作成し、このCADデータから工作機械で歯列形状模型を作製することが可能となる。そしてこの歯列形状模型に対してアライナーとなる材料シートを圧接して硬化することで、アライナーを作製することができる。
このように歯牙削合データの作成方法、歯牙削合データの作成プログラムでは各ステージにおけるアライナー作製のための具体的な形状データを得ることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 3次元口腔内形状表示
2 初期歯列形状表示
3 最終歯列形状表示
10 電子計算機
11 演算子
12 RAM
13 記憶手段
14 受信手段
15 出力手段