(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】タイヤ成形装置およびタイヤ成形方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/24 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
B29D30/24
(21)【出願番号】P 2020109459
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 謙介
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-131230(JP,A)
【文献】国際公開第2007/094053(WO,A1)
【文献】特開2016-083888(JP,A)
【文献】特開2020-203426(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0049503(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸周りに回転することによって外周面に帯状のゴム部材が巻き付けられる、ドラムと、
前記ドラムに前記ゴム部材を供給する、供給装置と、
軸線方向における長さが前記ゴム部材の幅よりも幅広に形成されており、前記ドラムの回転に従って従動回転して、前記ゴム部材を前記ドラムに押圧する、押圧ローラと
を備え、
前記ドラムは、前記押圧ローラが前記ゴム部材の巻き始め端部
を押圧するときおよび
前記ゴム部材の巻き終わり端
部を押圧するとき、所定の周方向長さにわたって正転および逆転を実施する、タイヤ成形装置。
【請求項2】
前記ドラムは、外周面に、前記ゴム部材が直接に巻き付けられる、
請求項1に記載のタイヤ成形装置。
【請求項3】
前記ゴム部材は、前記供給装置による供給方向における端部に位置する端面が、幅方向に平行に延びており、前記幅方向に直交する断面形状において厚み方向に対して傾斜しており、
前記所定の周方向長さは、前記端面を厚み方向に投影した部分の長さよりも長い、
請求項1または2に記載のタイヤ成形装置。
【請求項4】
前記ドラムは、前記正転および逆転を複数セット繰り返す、
請求項1~3のいずれか1つに記載のタイヤ成形装置。
【請求項5】
帯状のゴム部材をドラムに供給
すること、
前記ドラムを回転させることによって前記ドラムの外周面に前記ゴム部材を巻き付け
ること、
前記ゴム部材の巻き始め端部と巻き終わり端部とを接合させてジョイント部を構成
すること、
前記ゴム部材の巻き始め端
部を幅方向全体にわたって前記ドラムに押圧しながら、前記ドラムを所定の周方向長さにわたって正転および逆転させ
ること、
前記ゴム部材の巻き終わり端部を幅方向全体にわたって前記ドラムに押圧しながら、前記ドラムを所定の周方向長さにわたって正転および逆転させること、を含むタイヤ成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成形装置およびタイヤ成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転軸周りに回転することにより外周面にサイドウォール部材が巻き付けられるドラムと、供給されたサイドウォール部材をドラムに押圧する押圧ローラとを備えたタイヤ成形装置が開示されている。このタイヤ成形装置では、押圧ローラとして、サイドウォール部材の幅方向全体を押圧するサイドウォール全体押さえローラに加えて、ビード部側の端部を押圧する専用のサイドウォール下端押さえローラを備えている。
【0003】
サイドウォール部材の巻き始め端部と巻き終わり端部と当接されてなるジョイント部を押圧するときには、サイドウォール下端押さえローラに制動をかけながら、当該ジョイント部のビード部側の端部が引き延ばされながらドラムに押圧されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置では、サイドウォール部材のビード部側の端部のジョイント部を引き延ばしてジョイント量を大きくすることによって、当該ビード部側の端部におけるジョイント部の口開きを抑制することを企図している。ここで、本明細書において、ジョイント部の口開きとは、巻き始め端部と巻き終わり端部間のジョイント代(重なり)がなくなることを意味する。すなわち、特許文献1の装置は、ビード部側の端部以外のジョイント部の口開きを抑制できるものではない。また、特許文献1では、ビード部側の端部を押圧する専用の押圧ローラを必要とし、さらに、当該専用の押圧ローラに制動をかけることができるように構成する必要があるため、構造が複雑化する。
【0006】
本発明は、ドラムの外周面に巻き付けられたゴム部材のジョイント部の口開きを、簡単な構成で、ジョイント部のドラム軸方向に沿った長さ方向にわたって抑制できる、タイヤ成形装置およびタイヤ成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
回転軸周りに回転することによって外周面に帯状のゴム部材が巻き付けられる、ドラムと、
前記ドラムに前記ゴム部材を供給する供給装置と、
軸線方向における長さが前記ゴム部材の幅よりも幅広に形成されており、前記ドラムの回転に従って従動回転して、前記ゴム部材を前記ドラムに押圧する、押圧ローラと
を備え、
前記ドラムは、前記押圧ローラが前記ゴム部材の巻き始め端部を押圧するときおよび前記ゴム部材の巻き終わり端部を押圧するとき、所定の周方向長さにわたって正転および逆転を実施する、タイヤ成形装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、押圧ローラがゴム部材の巻き始め端部を押圧するときおよびゴム部材の巻き終わり端部を押圧するときにドラムが正転および逆転するので、当該端部がドラムと押圧ローラとによって挟まれた部分を複数回、通過する結果、ドラムに対して複数回、押圧される。これによって、ゴム部材の巻き始め端部と巻き終わり端部とが適正に接合されやすく、ジョイント部の口開きが抑制される。
【0009】
また、押圧ローラはゴム部材よりも幅広であるので、ジョイント部の一部分のみではなくドラム軸方向に沿った長さ方向の全体にわたって適正に接合できる。さらにまた、押圧ローラはドラムの回転に従って従動回転するため制動をかける必要がないので、タイヤ成形装置を簡単な構成で実現できる。
【0010】
例えば、押圧ローラがゴム部材の巻き始め端部を押圧しているときにドラムが正転および逆転すると、巻き始め端部が押圧ローラとドラムとによって挟まれた部分を中心とした周方向両側へ複数回、移動し、このときに押圧ローラによって複数回、押圧される。これによって、巻き始め端部をドラムに貼り付けやすく、これに続いて、該巻き始め端部を起点として張力をかけながらゴム部材をドラムに巻き付けやすい。よって、巻き終わり端部を巻き始め端部に適切に当接させやすく、この結果、ジョイント部が適切に接合されるので、ジョイント部の口開きが抑制される。
【0011】
一方、押圧ローラがゴム部材の巻き終わり端部を押圧しているときにドラムが正転および逆転すると、巻き終わり端部、すなわち巻き始め端部と当接するジョイント部が押圧ローラとドラムとによって挟まれた部分を中心とした周方向両側へ複数回、移動し、このときに押圧ローラによって複数回、押圧される。これによって、ジョイント部を接合させやすく、ジョイント部の口開きが抑止される。
【0012】
前記ドラムは、外周面に、前記ゴム部材が直接に巻き付けられてもよい。
【0013】
本構成によれば、ゴム部材の外表面に他のゴム部材を巻き付ける場合のようにゴム間のタックに起因した粘着力に比して、粘着力が低くなりやすいドラムの外周面にゴム部材を直接に巻き付ける場合において、巻き始め端部に本発明にかかる正転および逆転を実施することによってドラムに確実に貼り付けやすく、本発明の上記効果が好適に発揮される。
【0014】
前記ゴム部材は、前記供給装置による供給方向における端部に位置する端面が、幅方向に平行に延びており、前記幅方向に直交する断面形状において厚み方向に対して傾斜しており、
前記所定の周方向長さは、前記端面を厚み方向に投影した部分の長さよりも長くてもよい。
【0015】
本構成によれば、巻き付けられたゴム部材は、巻き始め端部およびジョイント部が確実に押圧ローラによって確実に押圧される。よって、ジョイント部を適切に接合しやすい。
【0016】
前記ドラムは、前記正転および逆転を複数セット繰り返してもよい。
【0017】
本構成によれば、ゴム部材は、巻き始め端部またはジョイント部が押圧ローラによって少なくとも4回、押圧される。よって、ジョイント部を適切に接合しやすい。
【0018】
本発明の他の側面は、
帯状のゴム部材をドラムに供給すること、
前記ドラムを回転させることによって前記ドラムの外周面に前記ゴム部材を巻き付けること、
前記ゴム部材の巻き始め端部と巻き終わり端部とを接合させてジョイント部を構成すること、
前記ゴム部材の巻き始め端部を幅方向全体にわたって前記ドラムに押圧しながら、前記ドラムを所定の周方向長さにわたって正転および逆転させること、
前記ゴム部材の巻き終わり端部を幅方向全体にわたって前記ドラムに押圧しながら、前記ドラムを所定の周方向長さにわたって正転および逆転させること、を含むタイヤ成形方法を提供する。
【0019】
本発明によれば、上記タイヤ成形装置と同様の効果が発揮される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ドラムの外周面に巻き付けられたゴム部材のジョイント部の口開きを、簡単な構成で、ジョイント部のドラム軸方向に沿った長さ方向にわたって抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ成形装置の概略構成を示す斜視図。
【
図2】タイヤ成形装置の動作のうち前半部分を示す模式的な側面図。
【
図3】タイヤ成形装置の動作のうち後半部分を示す模式的な側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ成形装置1の概略構成を示す斜視図である。本実施形態のタイヤ成形装置1は、グリーンタイヤを構成するバンド体を成形するための装置である。
図1に示されるように、タイヤ成形装置1は、ドラム10と、ドラム10にサイドウォール部材2を供給する供給装置20と、サイドウォール部材2のドラム10への供給前において、サイドウォール部材2の供給装置20による供給方向における先端部2aが載置される支持部30と、ドラム10に供給されたサイドウォール部材2をドラム10に押圧するための押圧ローラ50とを備える。
【0024】
タイヤ成形装置1は、インナーライナ部材3が巻き付けられたドラム10に対して、インナーライナ部材3の両側に、端部を重複(例えば10mm程度)させつつ、サイドウォール部材2を巻き付けるものである。したがって、タイヤ成形装置1は、両側のサイドウォール部材2それぞれに対応して、供給装置20、支持部30、押圧ローラ50を一対に備えている。サイドウォール部材2は、本発明に係るゴム部材の一例である。
【0025】
ドラム10は円筒状に構成されており、インナーライナ部材3及びサイドウォール部材2が巻き付けられる外周面12を備える。ドラム10は、サーボモータ11によって駆動されて、回転軸Xを中心として周方向の両側に回転可能(図中矢印F,R)かつ、その回転角度位置を制御可能に構成されている。ドラム10は、回転軸Xを中心として周方向に正転することで(図中矢印F)、インナーライナ部材3及びサイドウォール部材2を外周面12に巻き取る。
【0026】
また、ドラム10は、周方向に分割され複数のセクタ13により構成されている。複数のセクタ13が径方向に移動することによって、ドラム10は径方向に拡縮するようになっている。これによって、タイヤ成形装置1は、インナーライナ部材3およびサイドウォール部材2を所望の直径を有する円筒状のバンド体に成型できる。
【0027】
ハッチングを付して示すように、ドラム10の外周面12には、供給装置20から供給されるサイドウォール部材2の先端部2aが貼り付けられる被貼り付け面部14が形成されている。被貼り付け面部14は、ドラム10の幅方向全体にわたって所定の周方向長さX0にわたって、表面が周方向にフラットに形成されている。被貼り付け面部14の所定周方向長さX0は、後述するドラム10の正転および逆転による周方向における移動範囲X2(
図2および
図3参照)より長く構成されている。
【0028】
ドラム10の外周面12は、被貼り付け面部14を除く部分には、非粘着加工が施されている。非粘着加工として、例えばサンドブラスト加工により微小な凹凸が形成されている。これにより、ドラム10の外周面12のうち被貼り付け面部14を除く部分に対する、サイドウォール部材2の粘着が抑制されている。
【0029】
供給装置20は、帯状のサイドウォール部材2をドラム10に供給するための装置である。本実施形態の供給装置20は、基部21と、基部21に対して相対的に移動可能に基部21上に設けられた搬送部22とを備える。搬送部22上には、サイドウォール部材2が厚み方向を上下に向けた姿勢で載置されている。搬送部22は、ドラム10に近づく方向又は離れる方向(図中両側矢印A)に進退可能である。供給装置20は、搬送部22の先端がドラム10の外周面12に向くように、ドラム10の外周面12から間隔を開けて配置されている。
【0030】
支持部30は、板状の部品である。支持部30は、ドラム10と供給装置20との間に設けられており、供給装置20から供給されるサイドウォール部材2をドラム10に向けて案内する。
【0031】
支持部30の上方には、サイドウォール部材2を切断するためのカッタ31が設けられている。カッタ31は、支持部30に近づく方向又は離れる方向に上下方可能(図中両側矢印B参照)である。カッタ31は、支持部30上に載置されたサイドウォール部材2を上方から切断する。つまり、本実施形態の支持部30は、サイドウォール部材2を案内する機能に加えて、カッタ31を受け止める受け部材としての機能を有する。カッタ31の歯先は、先端に向かって厚みが減少するように傾斜している。
【0032】
押圧ローラ50は、ドラム10の上方に配置されている。押圧ローラ50は、ドラム10に近づく方向又は離れる方向に上下可能である(図中両側矢印C参照)。また、押圧ローラ50は、中心軸Oを中心として回転自在である。押圧ローラ50は、軸線方向における長さが、サイドウォール部材2の幅よりも幅広に形成されており、サイドウォール部材2を全幅にわたってドラム10に押圧する。
【0033】
本実施形態では、押圧ローラ50は、ワッシャーローラである。すなわち、押圧ローラ50は、幅方向に分割された複数のローラ51によって構成されており、各ローラ51が個別に径方向に移動可能に構成されている。これによって、サイドウォール部材2のように幅方向において厚みが変化するような部材であっても、幅方向の各部位それぞれを適切な押圧力で押圧することができる。
【0034】
以下、
図2および
図3を参照して、サイドウォール部材2のドラム10への巻き付け時のタイヤ成形装置1の動作を説明する。
図2はタイヤ成形装置1の動作の前半部分を概略的に示しており、
図3はタイヤ成形装置1の動作の後半部分を概略的に示している。
【0035】
まず、
図2を参照して、タイヤ成形装置1の動作の前半部分を説明する。
図2(a)に示されるように、ドラム10の外周面12にはインナーライナ部材3が巻き付けられている。このとき、サイドウォール部材2は、ドラム10への巻き付け前において、先端部2aが支持部30上に位置するように、供給装置20の搬送部22上に配置されている。また、このとき、ドラム10は、被貼り付け面部14が上端に位置する初期回転位置に保持されるように、サーボモータ11によって回転角度が制御されている。
【0036】
図2(a)の拡大図に示されるように、サイドウォール部材2の先端部2aは、カッタ31による切断面として形成された先端面2bを有している。先端面2bは、サイドウォール部材2の幅方向に平行に延びており、幅方向に直交する断面形状が厚み方向に対して傾斜している。先端面2bを厚み方向に投影した部分の長さはL1である。
【0037】
次に、
図2(b)に示されるように、サイドウォール部材2の先端部2aがドラム10の被貼り付け面部14に位置するまで、搬送部22がドラム10に近づく方向に前進する。その後、
図2(c)に示されるように、押圧ローラ50が下降し、サイドウォール部材2は、先端部2aが押圧ローラ50によってドラム10の被貼り付け面部14に向けて押圧される。
【0038】
その後、
図2(d)に示されるように、ドラム10が、回転軸Xを中心として周方向に正転(図中矢印F)および逆転(図中矢印R)を所定の周方向長さにわたって繰り返す。具体的には、外周面12に貼り付けられたサイドウォール部材2の先端部2aが、ドラム10と押圧ローラ50とによって挟まれた部分を中心として正転方向および逆転方向の両側に所定の周方向長さX1離れた位置に交互に移動するように、ドラム10は所定の角度だけ回転する。このとき、押圧ローラ50は、ドラム10の回転に従って従動回転する。
【0039】
より具体的には、
図2(d)の拡大図を参照して、ドラム10は、矢印F1で示されるように、まず周方向長さX1に相当する角度だけ正転する。次いで、ドラム10は、矢印R1で示されるように、周方向長さX1の2倍に相当する角度だけ逆転する。さらに、ドラム10は、矢印F2で示されるように、周方向長さX1の2倍に相当する角度だけ正転する。最後に、ドラム10は、矢印R2で示されるように、周方向長さX1に相当する角度だけ逆転する。この結果、ドラム10は、正転および逆転を繰り返す前の位置、すなわち被貼り付け面部14が上端に位置する初期回転位置に戻っている。
【0040】
すなわち、本実施形態では、ドラム10は、正転および逆転を1セットとして、正転および逆転を2セット実施している。
【0041】
ドラム10の正転および逆転の繰り返しによって、サイドウォール部材2は、先端部2a(巻き始め端部)が、ドラム10の被貼り付け面部14に対して押圧ローラ50によって複数回押圧される。被貼り付け面部14は非粘着加工が施されておらず周方向にフラットに形成されているため、サイドウォール部材2は、先端部2aにおいて、ドラム10の被貼り付け面部14にしっかりと貼り付けられる。
【0042】
なお、周方向長さX1は、ドラム10の正転および逆転の繰り返しによる周方向における移動範囲X2が、先端面2bの長さL1より大きくなるように設定されている。本実施形態では、周方向長さX1は、先端面2bの周方向長さL1と同じに設定されている。ドラム10の正転および逆転による周方向における移動範囲X2はX1の2倍となるので、先端面2bの周方向長さL1よりも大きい。よって、ドラム10の正転および逆転によってサイドウォール部材2の先端部2aが押圧ローラ50によって複数回、確実に押圧される。
【0043】
次に、
図3を参照して、タイヤ成形装置1の動作の後半部分を説明する。
図3(a)に示されるように、ドラム10が回転軸Xを中心として周方向に正転する(図中矢印F)ことによりサイドウォール部材2がドラム10の外周面12に巻き付けられる。
【0044】
押圧ローラ50は、ドラム10が初期回転位置に戻った状態から、正転を開始した短時間後(例えば0.5秒後)に上昇して、ドラム10から上方に退避する。これにより、サイドウォール部材2は、巻き付け初期において押圧ローラ50によってドラム10に押圧されつつドラム10に巻き付けられるので、付着が不安定になりがちな巻き付け初期におけるドラム10への付着が促進されている。押圧ローラ50の上昇と同時に、搬送部22がドラム10から離れる方向に後退している。
【0045】
次に、
図3(b)に示されるように、サイドウォール部材2が、ドラム10の外周面12に約3/4周巻き付けられたとき、押圧ローラ50が下降してドラム10の上端においてサイドウォール部材2をドラム10に押圧する。押圧ローラ50が下降した後、カッタ31が、支持部30に向けて下降して、サイドウォール部材2を所定の長さに切断する。上記所定の長さとは、ドラム10の外周面12の1周分の長さに対応する長さである。切断によって、サイドウォール部材2の後端部2cが形成されると共に、切断面として後端面2dが形成される。
【0046】
次に、
図3(c)に示されるように、ドラム10がさらに1/4周回転することによって、サイドウォール部材2がドラム10の全周にわたって巻き付けられる。このとき、サイドウォール部材2の後端部2c(巻き終わり端部)の後端面2dが先端部2aの先端面2bに周方向に突き合わされてジョイント部5が形成される。
【0047】
最後に、
図3(d)に示されるように、ドラム10が、回転軸Xを中心として周方向に正転(図中矢印F)および逆転(図中矢印R)を所定の周方向長さにわたって繰り返す。具体的には、ジョイント部5が、ドラム10と押圧ローラ50とによって挟まれた部分を中心として正転方向および逆転方向の両側に所定の周方向長さX1離れた位置に交互に移動するように、ドラム10は所定の角度だけ回転する。このときも、押圧ローラ50は、ドラム10の回転にしたがって従動回転する。
【0048】
より具体的には、
図3(d)の拡大図を参照して、ドラム10は、矢印F3で示されるように、まず周方向長さX1に相当する角度だけ正転する。次いで、ドラム10は、矢印R3で示されるように、周方向長さX1の2倍に相当する角度だけ逆転する。さらに、ドラム10は、矢印F4で示されるように、周方向長さX1の2倍に相当する角度だけ正転する。最後に、ドラム10は、矢印R4で示されるように、周方向長さX1に相当する角度だけ逆転する。この結果、ドラム10は、正転および逆転を繰り返す前の位置、すなわち被貼り付け面部14が上端に位置する初期回転位置に戻っている。
【0049】
すなわち、本実施形態では、ドラム10は、正転および逆転を1セットとして、正転および逆転を2セット実施している。ドラム10の正転および逆転の繰り返しによって、サイドウォール部材2は、ジョイント部5が、押圧ローラ50によって複数回、押圧される。
【0050】
ジョイント部5の周方向長さは、先端面2b(後端面2d)の周方向長さL1に等しい。よって、すなわち、周方向長さX1は、ジョイント部5の周方向長さL1と同じに設定されており、これにより、ドラム10の正転および逆転による移動範囲X2はX1の2倍となるので、ジョイント部5の周方向長さL1よりも大きい。よって、ドラム10の正転および逆転によって、サイドウォール部材2のジョイント部5が押圧ローラ50によって確実に複数回、押圧されるので、ジョイント部5が適切に接合される。
【0051】
本実施形態のタイヤ成形装置1によれば、以下の作用効果を奏する。
【0052】
(1)押圧ローラ50がサイドウォール部材2の先端部2aおよびジョイント部5を押圧するときにドラム10が正転および逆転するので、先端部2aおよびジョイント部5が複数回、ドラム10に対して押圧される。これによって、サイドウォール部材2の先端部2aと後端部2cとを適正に接合しやすく、ジョイント部5の口開きが抑制される。
【0053】
また、押圧ローラ50はサイドウォール部材2よりも幅広であるので、ジョイント部5の一部分のみではなく幅方向すなわちドラム10の軸線方向に沿ったジョイント部5の長さ方向の全体にわたって適正に接合できる。さらにまた、タイヤ成形装置1は、専用の押圧ローラ50を必要とせず、また押圧ローラ50に制動をかけることも要せず、ドラム10の動作の制御を変更することにより簡単に構成され得る。
【0054】
(2)押圧ローラ50がサイドウォール部材2の先端部2aを押圧しているときにドラム10が正転および逆転すると、先端部2aがドラム10と押圧ローラ50とによって挟まれた部分を中心とした周方向両側へ複数回移動し、このときに押圧ローラ50によって複数回、押圧される。これによって、サイドウォール部材2の先端部2aをドラム10に貼り付けやすく、これに続いて、先端部2aを起点として張力をかけながらサイドウォール部材2をドラム10に巻き付けやすい。よって、後端面2dを先端面2bに適切に当接させやすい。この結果、ジョイント部5が適切に接合されるので、ジョイント部5の口開きが抑制される。
【0055】
(3)押圧ローラ50がサイドウォール部材2の後端部2cすなわちジョイント部5を押圧しているときにドラム10が正転および逆転すると、ジョイント部5が押圧ローラ50とドラム10とによって挟まれた部分を中心とした周方向両側へ複数回移動し、このときに押圧ローラ50によって複数回、押圧される。これによって、ジョイント部5を接合させやすく、ジョイント部5の口開きが抑止される。
【0056】
(4)上記実施形態では、ドラム10の外周面12に直接にサイドウォール部材2を貼り付けるものであるため、ゴム部材の外表面に他のゴム部材を巻き付ける場合のようにゴム間のタックに起因した粘着力に比して、粘着力が低くなりやすい。しかしながら、ドラム10は、巻き始め端部としての先端部2aが外周面12に貼り付けられたときに、正転および逆転を実施するので、押圧ローラ50によって、先端部2aが複数回、ドラム10に押圧される。よって、先端部2aを、粘着力が低くなりやすいドラム10に対しても、直接にしっかりと付着させることができる。特に、サイドウォール部材2の先端部2aを、ドラム10のうち周方向にフラットに形成された被貼り付け面部14に貼り付けることによって、しっかりと貼り付けやすい。
【0057】
(5)ドラム10の正転および逆転による周方向における移動範囲X2は、サイドウォール部材2の先端面2bおよび後端面2dの周方向長さL1よりも大きい。よって、ドラム10に巻き付けられたサイドウォール部材2は、ジョイント部5を含む周方向範囲が確実に押圧ローラ50によって複数回、押圧される。よって、ジョイント部5を適切に接合しやすい。
【0058】
(6)ドラム10は、正転および逆転を複数セット繰り返すので、サイドウォール部材2は、先端部2aまたはジョイント部5が押圧ローラ50によって少なくとも4回、押圧される。よって、ジョイント部5を適切に接合しやすい。
【0059】
本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【0060】
上記実施形態では、ドラム10の正転および逆転は、2セット実施するように構成したがこれに限らない。ドラム10の正転および逆転を1セットのみ実施してもよいし、3セット以上実施してもよい。
【0061】
ただし、上記実施形態のように、正転および逆転を2セット実施するのが好ましい。正転および逆転を1セットのみ実施した場合には、先端部2aのドラム10への接合が不十分となったり、ジョイント部5の接合が不十分となったりする場合がある。また、正転および逆転を3セット以上実施した場合に、ドラム10を構成する複数のセクタ13のうち隣接するセクタ13の間にサイドウォール部材2が押圧ローラ50によって過度に押圧されるため、得られるバンド体が多角形となってしまうおそれがある。
【0062】
また、上記実施形態では、ドラム10の正転および逆転を、サイドウォール部材2の巻き付け開始時と、巻き終わり時との両方において実施しているが、いずれか一方のみ実施してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ドラム10の外周面12に直接にサイドウォール部材2を巻き付ける場合を例に取って説明したが、これに限らない。ドラム10の外周面12に巻き付けられたゴム部材(例えばカーカスプライ)の外表面に、他のゴム部材(例えばサイドウォール部材)を巻き付ける場合にも本発明を好適に適用できる。
【0064】
また、上記実施形態では、本発明に係るゴム部材として、サイドウォール部材2を例に取って説明したが、これに限らない。インナーライナ部材3の巻き付けに本発明を適用してもよい。例えば、インナーライナ部材3をドラム10に対して直接に巻き付ける場合において、巻き付け開始時において本発明を好適に実施できる。一方、巻き終わり時において先端部と後端部とを突合せてジョイント部を形成する場合にも、本発明を好適に実施できる。
【符号の説明】
【0065】
1 タイヤ成形装置
2 サイドウォール部材(ゴム部材)
2a 先端部
2c 後端部
3 インナーライナ部材
5 ジョイント部
10 ドラム
11 サーボモータ
12 外周面
14 被貼り付け面部
20 供給装置
21 基部
22 搬送部
30 支持部
31 カッタ
50 押圧ローラ
L1 先端面の長さ
X1 所定の周方向長さ
X2 移動範囲