(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】扉閉鎖順位調整器、観音開き式扉、警報装置
(51)【国際特許分類】
E05F 5/12 20060101AFI20240522BHJP
E06B 3/36 20060101ALI20240522BHJP
H01H 27/00 20060101ALN20240522BHJP
B23Q 11/08 20060101ALN20240522BHJP
【FI】
E05F5/12
E06B3/36
H01H27/00 G
B23Q11/08 Z
(21)【出願番号】P 2020131403
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 正治
(72)【発明者】
【氏名】木村 武史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 千秋
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-176496(JP,A)
【文献】特公昭29-2332(JP,B1)
【文献】実公平4-22753(JP,Y2)
【文献】米国特許第8595980(US,B1)
【文献】特開平7-317424(JP,A)
【文献】実公昭52-36877(JP,Y2)
【文献】米国特許第4262448(US,A)
【文献】特開平9-303027(JP,A)
【文献】特開平2-229495(JP,A)
【文献】米国特許第2015996(US,A)
【文献】英国特許出願公告第448900(GB,A)
【文献】特開平8-82157(JP,A)
【文献】登録実用新案第3019137(JP,U)
【文献】特開2003-129725(JP,A)
【文献】米国特許第3894356(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 5/00 - 5/12
E05C 7/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一扉と第二扉とを有する観音開き式扉の扉枠に取り付けられる扉閉鎖順位調整器であって、
揺動部材を備え、
前記揺動部材は、前記第一扉の開放時に前記第二扉の閉鎖を阻止するストッパ部と、前記第一扉の閉鎖に伴って前記第一扉から印加される力によって、前記ストッパ部による規制が解除される方向に前記揺動部材が揺動するよう構成された被印加部と、前記扉枠の開口面に垂直な軸を中心に揺動する、第一扉側の第一部分と、第二扉側の第二部分と、を備え、
前記第一部分は前記被印加部を有し、前記第二部分は前記ストッパ部を有する、
扉閉鎖順位調整器。
【請求項2】
第一扉と第二扉とを有する観音開き式扉の扉枠に取り付けられる扉閉鎖順位調整器であって、
揺動部材と、
前記揺動部材を前記第二扉側に向けて常時付勢する付勢部材と、
を備え、
前記揺動部材は、前記第一扉の開放時に前記第二扉の閉鎖を阻止するストッパ部と、前記第一扉の閉鎖に伴って前記第一扉から印加される力によって、前記ストッパ部による規制が解除される方向に前記揺動部材が揺動するよう構成された被印加部と、を備え、
前記揺動部材は、前記第一扉の閉鎖に伴って前記第一扉から前記被印加部に力が印加されたときに、前記ストッパ部が前記第一扉側に移動するように、前記付勢部材による付勢力に抗して揺動する、
扉閉鎖順位調整器。
【請求項3】
前記第一扉は磁石を備え、
前記被印加部は、前記磁石と作用し前記ストッパ部による規制を解除する磁石を有する、
請求項1
または2に記載の扉閉鎖順位調整器。
【請求項4】
観音開き可能な第一扉及び第二扉と、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の扉閉鎖順位調整器と、
を備える観音開き式扉。
【請求項5】
前記第二扉側にロック機構を備える、
請求項
4に記載の観音開き式扉。
【請求項6】
請求項
4又は
5に記載の観音開き式扉と、
前記第二扉の開閉を検知するセンサと、
を備える警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉閉鎖順位調整器、観音開き式扉、及び警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械や工作ロボットなどの装置において、装置の周囲をフェンスやカバーで覆い、作業者が動作中の装置に接触しないような対策が講じられている。装置の修理、点検、ワークの交換など、人が直接装置に接触する際には、扉を開けて中に入り、装置内部に手を入れて作業する必要がある。従来、作業中に装置が動作しないように、様々な工夫が行われている。
【0003】
特許文献1には、キー挿入孔を備えるケースと、前記ケース内に設けられるスイッチ素子と、前記ケース内に設けられ前記キー挿入孔から挿入されるキーに連動して前記スイッチ素子の操作を行う第1操作体と、電磁ソレノイドと、前記電磁ソレノイドに連動して、前記キーの抜き取りを阻止するキー抜き取り阻止機構と、前記電磁ソレノイドに連動して、前記スイッチ素子を操作する第2操作体と、を備えてなるキースイッチが開示されている。このようなキースイッチを設けることにより、メンテナンス作業中に誤って装置が動作しないよう、扉の開閉によって安全スイッチが操作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
観音開き式扉のように複数の扉がある場合、
図11に示すように、キースイッチは、個々の扉に設置する必要がある。そのため、キースイッチを設置するためのコストが掛かり、また配線の数が増え、断線など故障確率が上昇する。
【0006】
本発明は、観音開き式扉において、安全スイッチの設置コストを下げることができると共に、安全スイッチの故障確率を低下させることができる扉閉鎖順位調整器を提供することを目的とする。本発明は、当該扉閉鎖順位調整器を備える観音開き式扉を提供することを目的とする。本発明は、当該観音開き式扉を備える警報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
第一扉と第二扉とを有する観音開き式扉の扉枠に取り付けられる扉閉鎖順位調整器であって、
揺動部材を備え、
前記揺動部材は、前記第一扉の開放時に前記第二扉の閉鎖を阻止するストッパ部と、前記第一扉の閉鎖に伴って前記第一扉から印加される力によって、前記ストッパ部による規制が解除される方向に前記揺動部材が揺動するよう構成された被印加部と、
を備える、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の扉閉鎖順位調整器において、
前記揺動部材は、前記被印加部を有する第一部分と、前記ストッパ部を有する第二部分と、を備え、
前記揺動部材は、少なくとも、前記第一扉及び前記第二扉の両方が開放した状態に対応する第一位置と、前記第一扉が閉鎖し、前記第二扉が開放している状態に対応する第二位置と、の間で揺動可能であり、
前記揺動部材が前記第一位置にあるとき、前記ストッパ部が前記第二扉の閉鎖を阻止し、
前記第一扉の閉鎖によって前記被印加部に力が印加されることで、前記揺動部材は前記第一位置から前記第二位置に移動する、
ことが好ましい。
【0009】
本発明の扉閉鎖順位調整器において、
前記揺動部材は、前記扉枠の開口面に垂直な軸を中心に揺動する、第一扉側の第一部分と、第二扉側の第二部分と、を備え、
前記第一部分は前記被印加部を有し、前記第二部分は前記ストッパ部を有する、
ことが好ましい。
【0010】
本発明の扉閉鎖順位調整器において、
前記揺動部材を、前記第二扉側に向けて常時付勢する付勢部材をさらに備え、
前記揺動部材は、前記第一扉の閉鎖に伴って前記第一扉から前記被印加部に力が印加されたときに、前記ストッパ部が前記第一扉側に移動するように、前記付勢部材による付勢力に抗して揺動する、
ことが好ましい。
【0011】
(削除)
【0012】
(削除)
【0013】
本発明の扉閉鎖順位調整器において、
前記第一扉は磁石を備え、
前記被印加部は、前記磁石と作用し前記ストッパ部による規制を解除する磁石を有する、
ことが好ましい。
【0014】
本発明は、
観音開き可能な第一扉及び第二扉と、
上記のいずれかの扉閉鎖順位調整器と、
を備える観音開き式扉にも関する。
【0015】
本発明の観音開き式扉において、
前記第二扉側にロック機構を備える、
ことが好ましい。
【0016】
本発明は、
上記のいずれかに記載の観音開き式扉と、
前記第二扉の開閉を検知するセンサと、
を備える警報装置にも関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の扉閉鎖順位調整器を備えた観音開き式扉では、第二扉が閉まっていれば第一扉は必ず閉まっていることになる。したがって、扉の開閉を検知するセンサを第二扉側に設けるだけでよく、第一扉側に設ける必要がなくなる。これにより、センサの数、及び、センサの配線を減らすことができるため、センサの設置コストを低下させることができると共に、断線などによる故障確率を低減できる。
【0018】
本発明の観音開き式扉がロック機構を備えることにより、一つのロック機構で両方の扉をロックすることができる。
【0019】
警報装置は観音開き式扉とセンサとを備えているため、一つのセンサで、第一扉と第二扉の両方の閉鎖を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】第一実施形態の扉閉鎖順位調整器の斜視図であって、揺動部材が第一位置にあるときの斜視図である。
【
図3】(a)揺動部材が第一位置にあるときの、揺動部材の第二部分と第二扉との位置関係を示す側面図、(b)揺動部材が第一位置にあるときの、揺動部材の第一部分と第一扉との位置関係を示す側面図である。
【
図4】(a)揺動部材が第二位置にあるときの扉閉鎖順位調整器の斜視図であり、(b)揺動部材が第二位置にあるときの、揺動部材の第二部分と第二扉との位置関係を示す側面図である。
【
図5】揺動部材が第三位置にあるときの扉閉鎖順位調整器の斜視図である。
【
図6】第一実施形態の扉閉鎖順位調整器の変形例を示す斜視図である。
【
図7】第一実施形態の扉閉鎖順位調整器の変形例を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示す扉閉鎖順位調整器を使用したときの、揺動部材と扉との位置関係を示す側面図であり、(a)揺動部材が第一位置にあるときの、第一ベアリングと第一扉との位置関係を示す側面図、(b)揺動部材が第一位置にあるときの、第二ベアリングと第二扉との位置関係を示す側面図、(c)揺動部材が第二位置にあるときの、第二ベアリングと第二扉との位置関係を示す側面図である。
【
図9】第二実施形態の扉閉鎖順位調整器の斜視図であり、(a)揺動部材が第一位置にあるときの、揺動部材と第一扉及び第二扉との位置関係を示す斜視図、(b)第一扉を閉鎖した後の、揺動部材と第一扉及び第二扉との位置関係を示す斜視図である。
【
図10】第三実施形態の扉閉鎖順位調整器の平面図であり、(a)揺動部材が第一位置にあるときの、揺動部材と第一扉及び第二扉との位置関係を示す平面図、(b)第一扉を閉鎖した後に第二扉を閉鎖したときの、揺動部材と第一扉及び第二扉との位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照しつつ、本発明の観音開き式扉10、扉閉鎖順位調整器20、及び警報装置30について説明する。まず、観音開き式扉10及び警報装置30について説明した後、扉閉鎖順位調整器20について説明する。
【0022】
<1 観音開き式扉及び警報装置>
図1は観音開き式扉10及び警報装置30の斜視図である。観音開き式扉10は、第一扉1と、第二扉2と、扉閉鎖順位調整器20と、を備える。第一扉1及び第二扉2は、装置(例えば、工作機械)Mを囲う柵の扉枠3に取り付けられており、観音開きするようになっている。扉閉鎖順位調整器20は、扉枠3に取り付けられている。扉閉鎖順位調整器20は、第一扉1及び第二扉2を閉める際に、第一扉1が閉まった後でなければ第二扉2が閉まらないように、第一扉1及び第二扉2の閉鎖順位を決定するための装置である。言い換えると、扉閉鎖順位調整器20を備えた観音開き式扉10では、第二扉2が閉まっている場合には、必ず第一扉1は閉まっていることになる。なお、扉閉鎖順位調整器20の詳細な構成については後述する。
【0023】
観音開き式扉10は、第二扉2の閉鎖時に、第二扉2をロックするロック機構4を備えていてもよい。ロック機構4としては、例えば、キー挿入式の電磁ロックを使用でき、具体的には、小形電磁ロック・セーフティドアスイッチD4NL(オムロン株式会社製)を利用することができる。ロック機構4として、キー挿入式の電磁ロックを使用する場合、第二扉2にはキーが取り付けられ、第二扉2を閉めたときに、このキーが電磁ロック本体に挿入されることで、キーが電磁ロック本体から抜けない状態(ロック状態)になる。
【0024】
警報装置30は、観音開き式扉10と、第二扉2の開閉を検知するセンサ5と、を備える。センサ5としては、例えば、安全スイッチやセーフティ・リミットスイッチを使用することができる。センサ5は、扉をロックするロック機構を備えていてもよく、このようなセンサ5としては、上記で説明したキー挿入式の電磁ロックを利用することができる。センサ5として、キー挿入式の電磁ロックを使用する場合、第二扉2にはキーが取り付けられ、このキーが電磁ロック本体に挿入されることで、第二扉2の閉鎖が検知される。
【0025】
一実施形態において、センサ5は、装置Mを駆動制御する制御部に、第二扉2の開閉信号を送信するように構成されていてもよい。センサ5は第二扉2の閉鎖を検知している間、装置Mの制御部に許可信号を出力する。装置Mの制御部が許可信号を受信している状態では、装置Mの稼働が許可されている。第二扉2が開放された場合、センサ5からの許可信号は遮断される。センサ5からの許可信号が遮断されると、装置Mの制御部は、装置Mの稼働を停止する。なお、上記のキー挿入式の電磁ロックでは、キーが電磁ロック本体に挿入されている状態のとき許可信号が出力され、キーが電磁ロック本体から抜かれると許可信号が遮断される。
【0026】
扉閉鎖順位調整器20を備えた観音開き式扉10では、第二扉2が閉まっていれば第一扉1は必ず閉まっていることになる。したがって、扉の開閉を検知するセンサ5を第二扉2側に設けるだけでよく、第一扉1側に設ける必要がなくなる。これにより、センサ5の数、及び、センサ5の配線を減らすことができるため、センサ5の設置コストを低下させることができると共に、断線などによる故障確率を低減できる。
【0027】
観音開き式扉10がロック機構4を備えることにより、一つのロック機構で両方の扉をロックすることができる。
【0028】
警報装置30は観音開き式扉10とセンサ5とを備えているため、一つのセンサ5で、第一扉1と第二扉2の両方の閉鎖を確認できる。また、センサ5からの開閉信号によって装置Mの駆動制御を行うことにより、作業者の安全を確保することができる。
【0029】
<2 扉閉鎖順位調整器>
以下では、図面を参照しつつ、扉閉鎖順位調整器20について説明する。
【0030】
<A 第一実施形態>
[2-1 扉閉鎖順位調整器の構造]
図2は扉閉鎖順位調整器20の斜視図である。扉閉鎖順位調整器20は、ベース部21と、揺動部材22と、軸部材23と、を備える。ベース部21は、ネジなどの公知の取付手段により、扉枠3に取り付けられる。揺動部材22は、ベース部21に対して上下方向に揺動可能であるよう、軸部材23によってベース部21に接続されている。
【0031】
ベース部21は、第一部分211と、第二部分212と、第一部分211と第二部分212とを接続する第三部分213と、を備え、外観視でコの字型である。第二部分212には、ガイド部212aが設けられている。ガイド部212aは、後述する揺動部材22に設けられたガイド部222cと共に、揺動部材22の上下方向への揺動を案内するための部分である。本実施形態において、ガイド部212aは、第二部分212から突出するピンである。
【0032】
揺動部材22は、第一部分221と、第二部分222と、第一部分221と第二部分222とを接続する第三部分223と、を備え、外観視でコの字型である。揺動部材22は、ベース部21内に配置される。第一部分221は、軸部材23によって、ベース部21の第一部分211と接続されている。第二部分222は、軸部材23によって、ベース部21の第二部分212と接続されている。
【0033】
第一部分221の、第一扉1側の端部には、第一扉1を閉めたときに、第一扉1から力が印加される被印加部221aが設けられている。被印加部221aは、第一扉1を閉めたときに、第一扉1から印加される力によって、第一部分221及び第二部分222が上方に移動するように揺動部材22が揺動するような構造であればよい。本実施形態において、被印加部221aは、下方に向かうにしたがい、第一扉1から離れる方向に傾斜する傾斜部である。第一扉1を閉めたとき、被印加部221aには、第一扉1の上部が接触し、第一扉1から力が印加される。
【0034】
第二部分222の、第二扉2側の端部には、ストッパ部222aと、被印加部222bと、が設けられている。ストッパ部222aは、第一扉1が閉鎖されていない状態で第二扉2を閉鎖しようとしたとき、第二扉2と接触することによって、第二扉2の閉鎖方向への移動を規制する。ストッパ部222aは、第二扉2を閉鎖方向に押し込んでも、揺動部材22が上下方向に揺動しないような構造であればよく、本実施形態において、ストッパ部222aは、上下方向に延びる垂直面である。被印加部222bには、第一扉1が閉鎖した状態で第二扉2を閉めたときに、第二扉2から力が印加される。被印加部222bは、第二扉2を閉めたときに、第二扉2から印加される力によって、第一部分221及び第二部分222が上方に移動するように揺動部材22が揺動するような構造であればよい。本実施形態において、被印加部222bは、ストッパ部222aの下端から、下方に向かうにしたがい、第二扉2から離れる方向に傾斜する傾斜部である。第二部分222には、ガイド部212aに対応する位置にガイド部222cが設けられている。本実施形態において、ガイド部222cは、ガイド部212aが挿入される長穴である。
【0035】
次に、
図2から
図5を参照して、扉閉鎖順位調整器20の動作について説明する。第一扉1及び第二扉2の両方が開放されている状態では、揺動部材22は
図2に示す第一位置にある。
【0036】
揺動部材22が第一位置にあるとき、
図3(a)に示すように、ストッパ部222aの少なくとも一部は、第二扉2の上部の移動経路上に位置している。したがって、第一扉1を閉めていない状態で第二扉2を閉めようとしても、第二扉2はストッパ部222aに衝突するため、第二扉2を閉鎖させることができない。
【0037】
揺動部材22が第一位置にあるとき、
図3(b)に示すように、第一部分221の被印加部221aは、第一扉1の上部の移動経路上に位置している。したがって、第一扉1を閉めると、第一扉1の上部は、被印加部221aに接触する。
図4(a)に示すように、第一扉1を閉鎖方向に押し込むにつれて、第一部分221及び第二部分222が上方に移動するように揺動部材22が軸部材23を中心として揺動する。第一扉1が完全に閉鎖されたとき、揺動部材22は、第二位置(
図4(a)参照)に移動する。
【0038】
揺動部材22が第二位置にあるとき、
図4(b)に示すように、ストッパ部222aは、第二扉2の上部の移動経路よりも上方に位置し、被印加部222bは、第二扉2の上部の移動経路上に位置している。したがって、第二扉2を閉めると、第二扉2の上部は、被印加部222bに接触する。
図5に示すように、第二扉2を閉鎖方向に押し込むにつれて、第一部分221及び第二部分222が上方に移動するように揺動部材22が軸部材23を中心として揺動する。第一扉1及び第二扉2が完全に閉鎖されたとき、揺動部材22は、第三位置(
図5参照)に移動する。
【0039】
なお、
図4(a)及び
図5に示すように、第一扉1の内側には目板1aが備えられていることが好ましい。第一扉1の内側に目板1aが備えられていることにより、閉鎖されている第二扉2によって第一扉1が開くことを防止し、確実に両方の扉のロックや、両方の扉の閉鎖を検知することができる。
【0040】
[2-2 扉閉鎖順位調整器の特徴]
本発明の扉閉鎖順位調整器20では、揺動部材22の揺動という簡単な機構により第一扉1及び第二扉2の閉鎖順位を決定できる。
【0041】
扉閉鎖順位調整器20を使用した観音開き式扉10では、第二扉2が閉まっていれば第一扉1は必ず閉まっていることになる。したがって、扉の開閉を検知するセンサを第二扉2側に設けるだけでよく、第一扉1側に設ける必要がなくなる。これにより、センサの数、及び、センサの配線を減らすことができるため、センサの設置コストを低下させることができると共に、断線などによる故障確率を低減できる。
【0042】
[2-3 変形例]
上記実施形態は、扉閉鎖順位調整器20の好ましい一実施形態を説明するものである。本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。以下では、扉閉鎖順位調整器20の変形例について説明する。以下で説明する変形例は、適宜組み合わせ可能である。
【0043】
(1)ストッパ部222aは、垂直面に限らず、例えば、第二扉2に向けて凸となる曲面であってもよい。
【0044】
(2)揺動部材22は、コの字型に限らず、
図6に示すような矩形状であってもよい。
図6に示す揺動部材22も、第一扉1と対向する端部に被印加部221aが設けられ、第二扉2と対向する端部に、ストッパ部222aと、被印加部222bとが設けられている。
【0045】
(3)揺動部材22は、
図7に示すように、第一部分221の端部に第一ベアリング224を備え、第二部分222の端部に第二ベアリング225を備えていてもよい。この実施形態では、
図8に示すように、第一ベアリング224が被印加部221aとして機能し、第二ベアリング225がストッパ部222a及び被印加部222bとして機能する。
【0046】
図8(a)に示すように、揺動部材22が第一位置にあるとき、第一ベアリング224の中心は第一扉1の上端よりも上方に位置している。したがって、第一扉1を閉めた際に、第一扉1の上部は、第一ベアリング224の外周の下方湾曲面に接触する。そして、第一扉1を押し込むことにより、第一ベアリング224が回転し、第一部分221及び第二部分222が上方に移動するように揺動部材22が軸部材23を中心に揺動して、揺動部材22は第二位置に移動する。
【0047】
図8(b)に示すように、揺動部材22が第一位置にあるとき、第二ベアリング225の中心は第二扉2の上端よりも下方に位置している。これにより、第一扉1が閉鎖されていない状態で第二扉2を閉めても、第二ベアリング225は回転しないため、第二扉2を閉めることができない。揺動部材22が第二位置に移動すると、
図8(c)に示すように、第二ベアリング225の中心は、第二扉2の上端よりも上方に位置する。したがって、第二扉2を閉めた際に、第二扉2の上部は、第二ベアリング225の外周の下方湾曲面に接触する。そして、第二扉2を押し込むことにより、第二ベアリング225が回転し、第一部分221及び第二部分222が上方に移動するように揺動部材22が軸部材23を中心にして揺動して、揺動部材22は第三位置に移動する。
【0048】
被印加部221a及び被印加部222bをベアリング224、225によって構成することにより、第一扉1及び第二扉2が接触した際にベアリング224、225が回転するため、第一扉1及び第二扉2をスムーズに押し込むことができる。
【0049】
<B 第二実施形態>
図9を参照しつつ、扉閉鎖順位調整器20の第二実施形態について説明する。なお、上記実施形態との相違点を中心に説明し、上記実施形態と同一の部材又は同一の機能を有する部分については、上記実施形態と同一の符号を使用し、その説明を省略する。
【0050】
[2-4 扉閉鎖順位調整器の構造]
図9(a)は、第二実施形態の扉閉鎖順位調整器20の斜視図である。扉閉鎖順位調整器20は、揺動部材22と、軸部材23と、を備える。揺動部材22は、軸部材23によって扉枠3に接続されており、軸部材23を中心として上下方向に揺動する。
図9(a)に示す揺動部材22は、第一扉1及び第二扉2の両方が開放されている状態に対応する第一位置にある。第二実施形態において、第一扉1の上部には、磁石(例えば、永久磁石)1aが取り付けられている。また、第二扉2の上部には、凸部材2aが取り付けられている。
【0051】
揺動部材22は、軸部材23よりも第一扉1側に位置する第一部分221と、軸部材23よりも第二扉2側に位置する第二部分222と、から構成されている。第一部分221は、その底部に第一扉1からの力が印加される被印加部221aを有する。被印加部221aには、第一扉1の磁石1bと反発する磁石(例えば、永久磁石)221bが取り付けられている。被印加部221aは、第一扉1の磁石1bよりも上方に位置している。第二部分222は、ストッパ部222aを有する。ストッパ部222aは、揺動部材22が第一位置にあるとき、第二扉2の凸部材2aの移動経路上に位置している。したがって、第一扉1が閉鎖されていない状態で第二扉2を閉鎖しようとすると、第二扉2の凸部材2aがストッパ部222aに衝突するため、第二扉2を閉鎖することができない。
【0052】
図9(b)に示すように、第一扉1を閉鎖したとき、被印加部221aには、第一扉1の磁石1bによる反発力が働く。これにより、揺動部材22は、軸部材23を中心として、第一部分221が上方に移動し、第二部分222が下方に移動するように揺動し、第二位置に移動する(
図9(b)では揺動部材22の揺動方向を矢印にて示している)。揺動部材22が第二位置にあるとき、ストッパ部222aは、凸部材2aの移動経路上から外れた位置にある。したがって、揺動部材22が第二位置に移動すると、ストッパ部222aによる規制が解除され、第二扉2の閉鎖が可能になる。
【0053】
[2-5 扉閉鎖順位調整器の特徴]
第二実施形態における扉閉鎖順位調整器20を使用することにより、第一実施形態の扉閉鎖順位調整器20と同様の効果を得ることができる。また、第二実施形態における扉閉鎖順位調整器20では、非接触により揺動部材22を揺動させることができるため、第一扉1、第二扉2、及び揺動部材22の破損を抑えることができる。
【0054】
<C 第三実施形態>
図10を参照しつつ、扉閉鎖順位調整器20の第三実施形態について説明する。なお、上記実施形態との相違点を中心に説明し、上記実施形態と同一の部材又は同一の機能を有する部分については、上記実施形態と同一の符号を使用し、その説明を省略する。
【0055】
[2-6 扉閉鎖順位調整器の構造]
図10(a)は、第三実施形態の扉閉鎖順位調整器20の平面図である。
図10(a)に示すように、扉閉鎖順位調整器20は、揺動部材22と、軸部材23と、付勢部材24と、を備える。揺動部材22は、軸部材23によって、扉枠3に接続されており、軸部材23を中心として水平面内で揺動する。
図10(a)に示す揺動部材22は、第一扉1及び第二扉2の両方が開放されている状態に対応する第一位置にある。第三実施形態において、第一扉1の上部には、磁石(例えば、永久磁石)1aが取り付けられている。また、第二扉2の上部には、凸部材2aが取り付けられている。
【0056】
揺動部材22は、被印加部221aと、ストッパ部222aと、を備える。被印加部221aには、第一扉1の磁石1bと引き合う磁石(例えば、永久磁石)221bが取り付けられている。付勢部材24は、例えばトーションバネであり、第一扉1が閉鎖されていないとき、ストッパ部222aが第二扉2の凸部材2aの移動経路上に位置するように、揺動部材22を常時付勢している(
図10(a)では付勢部材24による付勢方向を矢印にて示している)。したがって、第一扉1が閉鎖されていない状態で第二扉2を閉鎖しようとすると、第二扉2の凸部材2aがストッパ部222aに衝突するため、第二扉2を閉鎖することができない。
【0057】
図10(b)に示すように、第一扉1を閉鎖すると、被印加部221aには、第一扉1の磁石1bによる吸引力が働く。これにより、揺動部材22は、付勢部材24の弾性力に抗して、第一扉1の磁石1bに接近するように揺動し、第二位置に移動する(
図10(b)では揺動部材22の揺動方向を矢印にて示している)。揺動部材22が第二位置にあるとき、ストッパ部222aは第二扉2の凸部材2aの移動経路上から外れた位置にある。したがって、揺動部材22が第二位置に移動すると、ストッパ部222aによる規制が解除され、第二扉2の閉鎖が可能になる。
【0058】
[2-7 扉閉鎖順位調整器の特徴]
第三実施形態における扉閉鎖順位調整器20を使用することにより、第一実施形態の扉閉鎖順位調整器20と同様の効果を得ることができる。また、第三実施形態における扉閉鎖順位調整器20では、非接触により揺動部材22を揺動することができるため、第一扉1、第二扉2、及び揺動部材22の破損を抑えることができる。
【0059】
[2-8 変形例]
第一扉1の磁石1b又は被印加部221aの磁石221bの一方は、磁石ではなく、鉄などの強磁性材料であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 観音開き式扉
1 第一扉
1b 磁石
2 第二扉
3 扉枠
4 ロック機構
5 センサ
20 扉閉鎖順位調整器
22 揺動部材
221 第一部分
221a 被印加部
221b 磁石
222 第二部分
222a ストッパ部
222b 被印加部
224 第一ベアリング(ベアリング)
225 第二ベアリング(ベアリング)
24 付勢部材
30 警報装置