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  • 特許-トナーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20240522BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G03G9/08 381
G03G9/097 365
G03G9/097 375
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020137051
(22)【出願日】2020-08-14
(65)【公開番号】P2022032824
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】田村 順一
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 陽介
(72)【発明者】
【氏名】山下 大輔
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 祐一
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-020244(JP,A)
【文献】特開2016-139062(JP,A)
【文献】特開2011-007858(JP,A)
【文献】特開2005-067643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
G03G 9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱球形化処理装置を用いてトナー粒子を熱処理することで第一の熱処理トナー粒子を得る第一の熱処理工程であって、該トナー粒子は結着樹脂および離型剤を含有する、第一の熱処理工程と、
該第一の熱処理トナー粒子と無機微粒子とを混合し、第一の熱処理トナー粒子混合物を得る混合工程と、
該熱球形化処理装置を用いて該第一の熱処理トナー粒子混合物を熱処理することで第二の熱処理トナー粒子を得る第二の熱処理工程と、
を有するトナーの製造方法であって、
該熱球形化処理装置は、
該トナー粒子または該第一の熱処理トナー粒子混合物を熱処理する処理室と、
該処理室に該トナー粒子または該第一の熱処理トナー粒子混合物を供給するためのトナー粒子供給手段と、
該トナー粒子供給手段から供給される該トナー粒子または該第一の熱処理トナー粒子混合物を熱処理するための熱風を供給する熱風供給手段と、
該処理室に設けられた排出口から、該第一の熱処理トナー粒子または該第二の熱処理トナー粒子を該処理室の外に排出して回収する回収手段と、を有し、
該第一の熱処理工程において、該トナー粒子供給手段から供給される該トナー粒子の速度が25m/sec以上100m/sec以下であり、
該トナー粒子の平均円形度をC
該第一の熱処理トナー粒子の平均円形度をC
該第二の熱処理トナー粒子の平均円形度をCとしたとき、
該Cが0.935以上0.960以下であり、
該Cが0.960以上0.980以下であり、
該C、該Cおよび該Cが下記式(1)および(2)で示される関係を満たすトナーの製造方法。
0.20 ≦ C-C / C-C ≦ 0.50 (1)
0.010 ≦ C-C (2)
【請求項2】
前記トナー粒子供給手段から供給される前記第一の熱処理トナー粒子混合物の速度が5m/sec以上20m/sec以下である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
前記混合工程は第二の混合工程であり、
前記第一の熱処理工程の前に、さらに前記トナー粒子と無機微粒子とを混合する第一の混合工程を有する請求項1または2に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
前記熱球形化処理装置は、さらに円柱部材を有し、
前記処理室は該円柱部材の外周面を囲う円筒形状を有し、
前記熱風供給手段は、前記熱風が該円筒形状を有する前記処理室の中を回転しながら流れるように、前記処理室が有する該円筒形状の一方の端部側に設けられ、
前記トナー粒子供給手段は、前記処理室の外周に設けられた複数の粒子供給口により構成され、
前記排出口は、前記処理室の、前記熱風供給手段が設けられた側と反対の側の端部の外周に、前記トナー粒子または前記第一の熱処理トナー粒子混合物の回転方向の延長線上に存在するように、設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載のトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式およびトナージェット方式に用いられるトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真や静電荷像を顕像化するための画像形成方法では、電子写真および静電荷像を現像するためのトナーが使用される。近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及し、印刷市場では、幅広いメディア(紙種)に対応しながら、高速、高画質および高生産性が要求されるようになり、トナーに要求される性能も高くなってきている。
【0003】
トナーの製造法としては粉砕法および重合法に大別され、簡便な製造方法としては粉砕法が挙げられる。粉砕法においては、高い現像性や転写性を達成するために、混合原料を粉砕して得られるトナー粒子の熱処理が有効である(特許文献1)。これはトナー粒子表面に微粒子の外添剤が熱処理により固着することでトナー同士にスペーサー効果が発現するためである。
【0004】
トナーへの外添剤の高い固着性やトナーの高い円形度を得るために、混合原料を粉砕して得られるトナー粒子に熱処理を行うと、トナーに高い熱エネルギーが与えられる。そのため、粒子の合一による粒径の増大や分布のブロード化など、弊害が大きくなる傾向にあった。
【0005】
前記課題に対し、熱処理前に小粒径の外添剤を外添し、トナー粒子の流動性を向上させ、トナー粒子の合一を抑制する方法がある。また、高風速でトナー粒子を搬送し、凝集を解すことによりトナー粒子の合一を抑制する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-20244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、混合原料を粉砕して得られるトナー粒子においては、トナー粒子の表面に微小な凹凸がある。そのため、熱処理前に流動化剤やスペーサー剤として小粒径の外添剤を加えた際には、トナー表面の凹部に外添剤が偏り、トナー粒子の合一を抑制する効果が得られにくい場合があった。また、高風速でトナー粒子を搬送した際には、トナー粒子から外添剤が外れてしまい、トナー表面への外添剤の固着性が低下する場合があった。
【0008】
これらの課題は、特に高生産性のために生産フィードを高くした場合に顕著になる。このようにトナーの熱処理工程におけるトナー粒子の合一による粒径の増大や分布のブロード化、トナー表面への外添剤の固着性に関してはさらに改善の余地がある。
【0009】
本発明の目的は、上記の如き問題点を解決し、生産性に優れ、熱処理時の粒径増加を抑制するとともに、外添剤固着率の高いトナーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
熱球形化処理装置を用いてトナー粒子を熱処理することで第一の熱処理トナー粒子を得る第一の熱処理工程であって、該トナー粒子は結着樹脂および離型剤を含有する、第一の熱処理工程と、
該第一の熱処理トナー粒子と無機微粒子とを混合し、第一の熱処理トナー粒子混合物を得る混合工程と、
該熱球形化処理装置を用いて該第一の熱処理トナー粒子混合物を熱処理することで第二の熱処理トナー粒子を得る第二の熱処理工程と、
を有するトナーの製造方法であって、
該熱球形化処理装置は、
該トナー粒子または該第一の熱処理トナー粒子混合物を熱処理する処理室と、
該処理室に該トナー粒子または該第一の熱処理トナー粒子混合物を供給するためのトナー粒子供給手段と、
該トナー粒子供給手段から供給された該トナー粒子または該第一の熱処理トナー粒子混合物を熱処理するための熱風を供給する熱風供給手段と、
該処理室の片端部に設けられた排出口から、該第一の熱処理トナー粒子または該第二の熱処理トナー粒子を該処理室の外に排出して回収する回収手段と、を有し、
該第一の熱処理工程において、該供給手段から供給される該トナー粒子の速度が25m/sec以上100m/sec以下であり、
該トナー粒子の平均円形度をC
該第一の熱処理トナー粒子の平均円形度をC
該第二の熱処理トナー粒子の平均円形度をCとしたとき、
該Cが0.935以上0.960以下であり、
該Cが0.960以上0.980以下であり、
該C、該Cおよび該Cが下記式(1)および(2)で示される関係を満たすトナーの製造方法。
0.20 ≦ C-C / C-C ≦ 0.50 (1)
0.010 ≦ C-C (2)
【発明の効果】
【0011】
本発明により、生産性に優れ、熱処理時の粒径増加を抑制するとともに、外添剤固着率の高いトナーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に用いられる熱球形化処理装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限および上限を含む数値範囲を意味する。
【0014】
本発明に係るトナーの製造方法は、
熱球形化処理装置を用いてトナー粒子を熱処理することで第一の熱処理トナー粒子を得る第一の熱処理工程であって、該トナー粒子は結着樹脂および離型剤を含有する、第一の熱処理工程と、
該第一の熱処理トナー粒子と無機微粒子とを混合し、第一の熱処理トナー粒子混合物を得る混合工程と、
該熱球形化処理装置を用いて該第一の熱処理トナー粒子混合物を熱処理することで第二の熱処理トナー粒子を得る第二の熱処理工程と、を有するトナーの製造方法であって、
該熱球形化処理装置は、
該トナー粒子または該第一の熱処理トナー粒子混合物を熱処理する処理室と、
該処理室に該トナー粒子または該第一の熱処理トナー粒子混合物を供給するためのトナー粒子供給手段と、
該トナー粒子供給手段から供給される該トナー粒子または該第一の熱処理トナー粒子混合物を熱処理するための熱風を供給する熱風供給手段と、
該処理室の片端部側に設けられた排出口から、該第一の熱処理トナー粒子または該第二の熱処理トナー粒子を処理室の外に排出して回収する回収手段と、を有し、
該第一の熱処理工程において、該トナー粒子供給手段から供給される該トナー粒子の速度が25m/sec以上100m/sec以下であり、
該トナー粒子の平均円形度をC
該第一の熱処理トナー粒子の平均円形度をC
該第二の熱処理トナー粒子の平均円形度をCとしたとき、
該Cが0.935以上0.960以下であり、
該Cが0.960以上0.980以下であり、
該C、該Cおよび該Cが下記式(1)および(2)で示される関係を満たす。
0.20 ≦ C-C / C-C ≦ 0.50 (1)
0.010 ≦ C-C (2)
【0015】
本発明者らの検討によれば、上記製造方法により、熱処理時の粒径増加を抑制するとともに、外添剤固着率の高いトナーを製造することができる。
【0016】
本発明に係るトナーの製造方法により、従来にない優れた効果を得ることができる理由は以下のように考えられる。
【0017】
本発明に係るトナーの製造方法において、熱処理前のトナー粒子の平均円形度Cが0.935以上0.960以下であり、2回の熱処理を経た後の第二の熱処理トナー粒子の平均円形度Cが0.960以上0.980以下である。さらに、2回の熱処理を経た後の第二の熱処理トナー粒子の平均円形度Cと熱処理前のトナー粒子の平均円形度Cとの差が0.010以上である。これは、熱処理によるトナーの円形度変化が大きいことを意味している。
【0018】
混合原料を粉砕して得られるトナー粒子は円形度が低く、高い円形度を得るためには、熱エネルギーを多く与えなければならない。この場合、トナー粒子同士が凝集しやすくなり、熱処理する際にトナー粒子同士が合一し、粒径増大や分布のブロード化が起こる場合があった。
【0019】
本発明においては、熱処理の回数を2回に分けていることが特徴である。
第一の熱処理工程におけるトナー粒子の平均円形度の変化量、つまりC-Cで求められる値は、第一の熱処理工程および第二の熱処理工程を経た時のトナー粒子の平均円形度の変化量、つまりC-Cで求められる値に対して20%~50%の割合である。つまり、第一の熱処理工程における平均円形度の変化割合が小さい。第一の熱処理工程においては、混合原料を粉砕して得られるトナー粒子が有する粒子表面の凹部の数を減少させることが重要であり、トナー粒子に与える熱エネルギーを少なくし、トナー粒子の合一を抑制している。
【0020】
第一の熱処理工程において、トナー粒子供給手段から気体を用いて装置内に供給される熱処理前のトナー粒子の速度を25m/sec以上100m/sec以下にすることが重要である。トナー粒子の速度を上記範囲内とすることで熱処理前のトナー粒子の凝集が解れ、熱処理時の合一による粒径増大や分布のブロード化を抑制することができる。
【0021】
本発明に係るトナーの製造方法は、第一の熱処理工程と第二の熱処理工程との間に、第一の熱処理トナー粒子に外添剤としての無機微粒子を混合して第一の熱処理トナー粒子混合物を得る混合工程を有する。熱処理前のトナー粒子は、第一の熱処理工程により球形化され、第一の熱処理トナー粒子ではトナー粒子表面の凹部の数が減少している。これにより混合工程において第一の熱処理トナー粒子に外添剤を外添したとき、外添剤が凹部に集中することを抑制することができる。そのため、第一の熱処理トナー粒子表面に外添剤が均一に外添され、第二の熱処理工程において、トナーの流動性や外添剤によるスペーサー効果を高くすることができ、第一の熱処理トナー粒子同士の合一を抑制することができる。
【0022】
また、混合原料を粉砕して得られるトナー粒子の表面に微小な凸部がある場合、外添剤がトナー粒子表面の凸部に付着しにくく、付着できなかった外添剤がトナー表面から遊離するため、外添剤の固着性が悪化してしまう場合があった。本発明に係るトナーの製造方法においては、第一の熱処理工程においてトナー粒子の表面の凸凹を減少させてから、混合工程で外添剤と混合する処理を行い、その後第二の熱処理工程を実施する。これにより、トナー粒子表面への外添剤の固着率を高くすることができる。
【0023】
本発明に係るトナーの製造方法において、第二の熱処理工程でトナー粒子供給手段から供給される第一の熱処理トナー粒子混合物の速度は5m/sec以上20m/sec以下であることが好ましい。第二の熱処理工程でトナー粒子供給手段から供給される第一の熱処理トナー粒子混合物の速度が上記範囲内にあることにより、第一の熱処理トナー粒子混合物の凝集を解す効果および熱処理時に外添剤を維持する効果を高く得ることができる。そのため、熱処理時の粒径増加をより抑制することができ、外添剤の固着率がより高いトナーを製造することができる。
【0024】
本発明に係るトナーの製造方法において、上記の混合工程が第二の混合工程であり、第一の熱処理工程の前に、さらに前記トナー粒子と無機微粒子とを混合する第一の混合工程を有することが好ましい。第一の熱処理工程の前に、第一の混合工程でトナー粒子に無機微粒子を混合することにより、第一の熱処理工程においてトナー粒子の流動性を高くし、また外添剤によるスペーサー効果を高く得ることができるため、熱処理時の粒径増加をより抑制することができる。
【0025】
なお、第一の混合工程で用いる無機微粒子と第二の混合工程で用いる無機微粒子とは、互いに同じ種類であっても良いし、異なる種類であってもよい。
【0026】
<トナーの製造方法>
次に、本発明に係る製造方法で、トナーを製造する手順について説明する。
まず、原料混合工程では、トナー内添剤として、少なくとも結着樹脂および離型剤を所定量秤量して配合し、混合する。離型剤は、トナーの加熱定着時にホットオフセットの発生を抑制する。必要に応じて、着色剤や該離型剤を分散させる分散剤、帯電制御剤などを混合してもよい。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
【0027】
さらに、上記で配合し、混合したトナー原料を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中の離型剤等を分散させる。該溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。近年では、連続生産できる等の優位性から、1軸または2軸押出機が主流となっている。そのため、例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、池貝社製PCM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。さらに、トナー原料を溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0028】
上記で得られた樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕され、トナー粒子となる。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕される。さらに、イノマイザー(ホソカワミクロン社製)、クリプトロン(川崎重工社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボミル(ターボ工業社製)等の機械式粉砕機で微粉砕される。粉砕工程では、このように段階的に所定の粒度まで粉砕される。
【0029】
上記で得られたトナー粒子を必要に応じて微粉カット、粗粉カットなどの分級処理を行っても良い。
【0030】
続いて、熱処理工程において図1にその一例を示すような熱球形化処理装置を用いて得られたトナー粒子の熱処理を行う。
【0031】
熱球形化処理装置は、トナー粒子または第一の熱処理トナー粒子混合物を熱処理する処理室6と、処理室6に該トナー粒子または第一の熱処理トナー粒子混合物を供給するためのトナー粒子供給手段と、トナー粒子供給手段から供給されるトナー粒子または第一の熱処理トナー粒子混合物を熱処理するための熱風を供給する熱風供給手段7と、処理室6に設けられた排出口から、第一の熱処理トナー粒子または第二の熱処理トナー粒子を処理室6の外に排出して回収する回収手段10と、を有する。
【0032】
図1に示す熱球形化処理装置は、さらに円柱部材として規制手段9を有し、処理室6は規制手段9の外周面を覆う円筒形状を有する。
【0033】
熱風供給手段7は、熱風が円筒形状を有する処理室6の中を回転しながら流れるように、処理室6が有する円筒形状の一方の端部側に設けられている。
【0034】
また、トナー粒子供給手段は、処理室6の外周に設けられた複数の供給管5により構成される。
【0035】
さらに、処理室6に設けられた排出口は、処理室6の、前記熱風供給手段7が設けられた側と反対の側の端部の外周に、トナー粒子または第一の熱処理トナー粒子混合物の回転方向の延長線上に存在するように設けられている。
【0036】
上記のような構成を有する熱球形化処理装置を用いた熱処理について以下に説明する。
原料定量供給手段1により定量供給された混合物は、圧縮気体流量調整手段2により調整された圧縮気体によって、原料定量供給手段1の延長線上に設置された導入管3に導かれる。導入管3を通過した混合物は、導入管3の中央部に設けられた円錐状の突起状部材4により均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管5に導かれ熱処理が行われる処理室6に導かれる。
【0037】
このとき、処理室6に供給された混合物は、処理室6内に設けられた混合物の流れを規制するための規制手段9によって、その流れが規制される。このため処理室に供給された混合物は、処理室6内を旋回しながら熱処理された後、冷却される。
【0038】
供給された混合物を熱処理するための熱は、熱風供給手段7から供給され、分配部材12で分配され、熱風を旋回させるための旋回部材13により、処理室6内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材13が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度により、熱風の旋回を制御することができる。熱風は熱風供給手段出口11から供給される。
【0039】
熱処理されたトナー粒子は冷風供給手段8(冷風供給手段8-1、冷風供給手段8-2および冷風供給手段8-3)から供給される冷風によって冷却される。
【0040】
次に、冷却されたトナー粒子は、処理室の下端にある回収手段10によって回収される。なお、回収手段の先にはブロワー(不図示)が設けられ、それにより吸引搬送される構成となっている。
【0041】
また、粉体粒子供給口14は、供給された混合物の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられており、熱球形化処理装置の回収手段10は、旋回された粉体粒子の旋回方向を維持するように、処理室の外周部に設けられている。さらに、冷風供給手段8から供給される冷風は、装置外周部から処理室内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。
【0042】
本発明に係るトナーの製造方法においては、第一の熱処理工程と第二の熱処理工程との間の混合工程において、第一の熱処理トナー粒子に無機微粒子を添加する。また、第一の熱処理工程の前にも、トナー粒子に無機微粒子を添加することが好ましい。第一の熱処理トナー粒子あるいは熱処理前のトナー粒子に無機微粒子等を添加する方法としては、次のような方法が挙げられる。すなわち、まず、第一の熱処理トナー粒子あるいは熱処理前のトナー粒子と公知の各種外添剤とを所定量混合する。続いて、得られた混合物を、ヘンシェルミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス社製)、スーパーミキサー、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)等の粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌・混合する。
【0043】
<トナーの原料>
次に、トナーの製造に用いる原料について説明する。
【0044】
<結着樹脂>
トナーに用いられる結着樹脂としては、一般的な樹脂を用いることができ、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが例示できる。この中でも、低温定着性を良好にするという観点から非晶性ポリエステル樹脂が好ましく用いられ、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、低分子量ポリエステルと高分子量ポリエステルとを併用してもよい。また、さらなる低温定着性の向上と保管時の耐ブロッキング性の観点から結晶性ポリエステルを可塑剤として用いてもよい。
【0045】
<離型剤>
トナーに用いられる離型剤としては、低分子量ポリオレフィン類、シリコーンワックス、脂肪酸アミド類、エステルワックス類、カルナバワックス、炭化水素系ワックスなどが挙げられる。これら離型剤は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用して使用してもよい。
離型剤は、トナー粒子の製造に用いる結着樹脂を合成する際に、結着樹脂の合成原料とともに混合しておいてもよいし、トナーの製造時に原料混合工程で添加してもよい。トナー中の離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0046】
<無機微粒子>
先に述べたように、本発明に係るトナーの製造方法においては、第一の熱処理工程と第二の熱処理工程との間の混合工程において、第一の熱処理トナー粒子に無機微粒子を添加する。また、第一の熱処理工程の前にも、トナー粒子に無機微粒子を添加することが好ましい。無機微粒子は外添剤として熱処理前のトナー粒子あるいは第一の熱処理トナー粒子と混合する。無機微粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムまたはチタン酸ストロンチウムが好ましい。無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイルまたはそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
【0047】
無機微粒子の個数平均粒径は、10nm以上300nm以下であることが好ましい。流動性向上や耐久性安定化を両立させるためには、個数平均粒径が上記範囲にある複数種類の無機微粒子を併用してもよい。
【0048】
無機微粒子の含有量は、第一の熱処理トナー粒子混合物100質量部に対して、0.01質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
【0049】
<着色剤>
本発明に係るトナーの製造方法で用いることができる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
すなわち、着色剤としては、公知の有機顔料若しくは油性染料、カーボンブラック、または磁性体などが挙げられる。
シアン系着色剤としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。
マゼンタ系着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物などが挙げられる。
イエロー系着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物などが挙げられる。
黒色系着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、または、前記イエロー系着色剤、マゼンタ系着色剤、およびシアン系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
着色剤は、一種単独でまたは二種以上を混合して用いることができる。
【0050】
トナー粒子の各種物性の測定法について以下に説明する。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、以下の装置およびソフトを用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行って算出することができる。
・50μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)
・測定条件設定および測定データ解析をするための上記装置に付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)
【0051】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0052】
なお、測定、解析を行う前には、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を1μm以上30μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
【0053】
(1)「Multisizer 3」専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
【0054】
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
【0055】
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を用意する。この超音波分散器を備えた水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
【0056】
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
【0057】
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
【0058】
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、トナーを分散した前記(5)の電解質水溶液をピペットを用いて滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
【0059】
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0060】
<平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定および解析条件で測定することができる。
【0061】
具体的な測定方法は、以下の通りである。
まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。
【0062】
さらに測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用いる。水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
【0063】
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用した。
【0064】
前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
【0065】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子を用いて自動焦点調整を行う。標準ラテックス粒子としては、標準ラテックス粒子(Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いる。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
【0066】
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定および解析条件で測定を行った。
【0067】
<無機微粒子の固着率の測定方法>
1)水洗処理の方法
水洗処理は次のようにして行うことができる。
まず以下の材料を用意する。
・イオン交換水10.3gにショ糖20.7g(キシダ化学社製)を溶解させたショ糖水溶液
・界面活性剤であるコンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤、和光純薬工業社製)6mL
これらを30mLのガラスバイアル(例えば、日電理化硝子株式会社製、VCV-30、外径:35mm、高さ:70mm)に入れて十分混合し、分散液を調製する。このバイアルにトナー粒子1.0gを添加し、トナーが自然に沈降するまで静置して処理前分散液を調製する。この分散液を、振とう機(YS-8D型:(株)ヤヨイ製)にて、振とう速度:200rpmで5分間振とうし、無機微粒子をトナー粒子表面から脱離させる。ここで離脱する無機微粒子は、トナー粒子に固着していない無機微粒子である。トナー粒子に固着している無機微粒子と、トナー粒子表面からと脱離した無機微粒子との分離は遠心分離機を用いて行う。遠心分離工程は例えば、3700rpmで30minの条件で行う。続いて、無機微粒子が固着しているトナー粒子を吸引濾過することで採取し、乾燥させて水洗後のトナー粒子を得る。
【0068】
2)無機微粒子の固着率の測定方法
以下にシリカ微粒子の固着率の測定方法を例として示す。まず水洗処理前のトナー粒子に含まれるシリカの定量を行う。これは波長分散型蛍光X線分析装置Axios advanced(PANalytical社製)を用いて、トナー粒子中のSi元素強度を測定する。次に同様にして水洗処理後のトナー粒子中のSi元素強度を測定する。固着率(%)は、
(水洗処理後のトナー粒子中のSi元素強度/水洗処理前のトナー粒子中のSi元素強度)×100
で求められる。
【実施例
【0069】
以下の実施例において、部数は質量部基準である。
<非晶性ポリエステル樹脂Lの製造例>
・ポリオキシプロピレン(2,2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:72.0質量部(0.200モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:28.0質量部(0.169モル;多価カルボン酸総モル数に対して96.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒):0.5質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、および、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した。
・無水トリメリット酸:1.3質量部(0.007モル;多価カルボン酸総モル数に対して4.0mol%)
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度180℃に維持したまま、1時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した軟化点が90℃に達したことを確認してから温度を下げて反応を止め、非晶性ポリエステル樹脂Lを得た。
【0070】
<非晶性ポリエステル樹脂Hの製造例>
・ポリオキシプロピレン(2,2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:72.3質量部(0.200モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:18.3質量部(0.110モル;多価カルボン酸総モル数に対して65.0mol%)
・フマル酸:2.9質量部(0.025モル;多価カルボン酸総モル数に対して15.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒):0.5質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、および、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180まで冷却し、大気圧に戻した。
・無水トリメリット酸:6.5質量部(0.034モル;多価カルボン酸総モル数に対して20.0mol%)
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度160℃に維持したまま、15時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した軟化点が137℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、非晶性ポリエステル樹脂Hを得た。
【0071】
<結晶性ポリエステル樹脂>
・1,6-ヘキサンジオール:34.5質量部(0.29モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・ドデカン二酸:65.5質量部(0.28モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫:0.5質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、および、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
次に、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を序々に開放して常圧へ戻した後、ステアリン酸を、原料モノマー100.0mol%に対し7.0mol%加え、常圧下にて200℃で2時間反応させた。
その後、再び反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で3時間反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
【0072】
[無機微粒子の製造例]
無機微粒子としてシリカ微粒子を使用した。
シリカ微粒子の製造に用いる燃焼炉としては、内炎と外炎が形成できる二重管構造の炭化水素-酸素混合型バーナーを用いた。バーナー中心部にスラリー噴射用の二流体ノズルが接地され、原料の珪素化合物が導入される。二流体ノズルの周囲から炭化水素-酸素の可燃性ガスが噴射され、還元雰囲気である内炎および外炎が形成される。可燃性ガスと酸素の量および流量を制御することにより、還元雰囲気の大きさ、温度および火炎の長さ等が調整される。火炎中において珪素化合物からシリカ微粒子が形成され、さらに所望の粒径になるまで融着させる。その後、冷却した後、バグフィルター等により捕集することによってシリカ微粒子が得られる。
原料の珪素化合物として、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを用いて、シリカ微粒子を製造し、得られたシリカ微粒子100質量部に、ヘキサメチルジシラザン4質量%で表面処理した。得られたシリカ微粒子を無機微粒子1とし、無機微粒子1の平均粒径を表1に示す。
【0073】
[無機微粒子2の製造例]
平均粒径が表1に記載の値となるように製造条件を変更した以外は無機微粒子1と同様の手法で無機微粒子2を製造した。
【0074】
【表1】
【0075】
<熱処理前トナー粒子1の製造例>
・非晶性ポリエステル樹脂L 70質量部
・非晶性ポリエステル樹脂H 30質量部
・結晶性ポリエステル樹脂 5質量部
・フィッシャートロプシュワックス(炭化水素ワックス、最大吸熱ピークのピーク温度90℃) 8質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 7質量部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minの条件で混合した後、二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ピンミルにて重量平均粒径100μm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。得られた微粉砕物を分級機(ファカルティF-300、ホソカワミクロン社製)にて、目的粒径・円形度となるように分級ローターの回転数、分散ローターの回転数を調整し分級し、トナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に、無機微粒子1を2.00質量部添加し、ヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)で、回転数15s-1、回転時間3minの条件で混合し、熱処理前トナー粒子1を得た。表2に得られた熱処理前トナー粒子1の重量平均粒径および平均円形度Cを示す。
【0076】
<熱処理前トナー粒子2~18の製造例>
無機微粒子使用の有無あるいは用いた無機微粒子の種類を表2に示すように変更し、さらに、得られるトナー粒子が有する重量平均粒径および平均円形度Cが表2に示す値となるように適宜製造条件を変更した。それ以外は、熱処理前トナー粒子1と同様に製造し、熱処理前トナー粒子2~18を得た。
【0077】
【表2】
【0078】
<第一の熱処理トナー粒子1の製造例>
熱処理前トナー粒子1を用い、図1で示す熱球形化処理装置によって第一の熱処理工程として熱処理を行い、第一の熱処理トナー粒子1を得た。フィード量は、10.0kg/hと20kg/hの2条件で行った。処理条件は次のようにし、熱風温度を調整して所望の円形度が得られるようにした。
・処理室への供給風量(エアー):1.0m/min
・供給流路の風速:40m/sec
・熱風流量:6.7m/min
・冷風温度E:-5℃
・冷風流量:3.5m/min
・冷風絶対水分量:3g/m
・ブロワー風量:13m/min
ここで、供給流路の風速は、処理室に供給される熱処理前トナー粒子1の速度となる。得られた第一の熱処理トナー粒子1の重量平均粒径および平均円形度Cを表3に示す。
【0079】
<第一の熱処理トナー粒子2~18の製造例>
用いる熱処理前トナー粒子の種類および熱処理の条件をそれぞれ表3に示すように変更した。それ以外は、第一の熱処理トナー粒子1と同様にして製造し、第一の熱処理トナー粒子2~18を得た。得られた第一の熱処理トナー粒子2~18の重量平均粒径および平均円形度Cを表3に示す。
なお、第一の熱処理トナー粒子14および16は、供給流路の最大風速を上げるために、供給する配管の径を狭めて処理を実施した。
【0080】
【表3】
【0081】
<第一の熱処理トナー粒子混合物1の製造例>
第一の熱処理トナー粒子1を100質量部用意し、これに、無機微粒子2を1.00質量部添加した。その後、ヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数15s-1、回転時間2minの条件で混合し、第一の熱処理トナー粒子混合物1を得た。
【0082】
<第一の熱処理トナー粒子混合物2~17の製造例>
用いる第一の熱処理トナー粒子の種類を表4に示すように変更した以外は、第一の熱処理トナー粒子混合物1の製造例と同様にして製造し、第一の熱処理トナー粒子混合物2~17を得た。
【0083】
【表4】
【0084】
<第二の熱処理トナー粒子1の製造例>
第一の熱処理トナー粒子混合物1を用い、図1で示す熱球形化処理装置によって第二の熱処理工程として熱処理を行い、第二の熱処理トナー粒子1を得た。フィード量は、10kg/hで行った。それ以外の熱処理の条件は次のようにし、熱風温度を調整して所望の円形度を得るようにした。
・処理室への供給風量(エアー):0.2m/min
・供給流路の最大風速:10m/sec
・熱風流量:6.7m/min
・冷風温度E:-5℃
・冷風流量:3.5m/min
・冷風絶対水分量:3g/m
:ブロワー風量:12m/min
得られた第二の熱処理トナー粒子1の重量平均粒径および平均円形度Cを表5に示す。
【0085】
<第二の熱処理トナー粒子2~17の製造例>
表5に示す材料、条件に変更した以外は、第二の熱処理トナー粒子1と同様に製造し、第二の熱処理トナー粒子2~17を得た。得られた第二の熱処理トナー粒子2~17の重量平均粒径および平均円形度Cを表5に示す。
【0086】
【表5】
【0087】
<実施例1~14、比較例1~4>
熱処理前トナー粒子が熱処理を経たことによる重量平均粒径の変化、および、第二の熱処理トナー粒子1における外添剤の固着率を測定した。各実施例および各比較例で用いた熱処理前トナー粒子の種類および第二の熱処理トナー粒子の種類は表6に示すとおりである。
【0088】
<熱処理前後のトナー粒子の重量平均粒径変化>
熱処理前トナー粒子の重量平均粒径をD、第二の熱処理トナー粒子の重量平均粒径をDとしたとき、D-Dの粒径変化を以下の評価基準により評価した。ただし、比較例4では第一の熱処理トナー粒子の重量平均粒径をDとした。C以上を本発明の効果が得られていると判断した。評価結果を表6に示す。
(評価基準)
A:D-Dが0.1μm以下 (非常に優れている)
B:D-Dが0.1μmより大きい、0.3μm以下(良好である)
C:D-Dが0.3μmより大きい、0.5μm以下(本発明では問題ないレベルである)
D:D-Dが0.5より大きい (本発明では許容できない)
【0089】
<外添剤の固着率>
第二の熱処理トナー粒子における外添剤の固着率を、先に述べた方法により評価した。ただし、比較例4では、第一の熱処理トナー粒子における外添剤の固着率を評価した。C以上を本発明の効果が得られていると判断した。評価結果を表6に示す。
(評価基準)
A:固着率が85%以上 (非常に優れている)
B:固着率が80%以上、85%未満 (良好である)
C:固着率が75%以上、80%未満 (本発明では問題ないレベルである)
D:固着率が75%未満 (本発明では許容できない)
【0090】
【表6】
【符号の説明】
【0091】
1.原料定量供給手段
2.圧縮気体流量調整手段
3.導入管
4.突起状部材
5.供給管
6.処理室
7.熱風供給手段
8.冷風供給手段
9.規制手段
10.回収手段
11.熱風供給手段出口
12.分配部材
13.旋回部材
14.粉体粒子供給口
図1