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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】螺旋管用帯状部材
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/32 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
B29C63/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020144865
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039711
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】上田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】杉山 佳郎
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-082095(JP,A)
【文献】特開2006-248116(JP,A)
【文献】特開2003-056745(JP,A)
【文献】特開2012-206471(JP,A)
【文献】特開2014-014959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00 - 63/48
F16L 1/00 - 1/26
F16L 5/00 - 7/02
F16L 9/00 - 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に巻回されて一周違いの対向する縁どうしが接合されることによって螺旋管となる、帯幅が拡縮可能な螺旋管用帯状部材であって、
平坦な平帯部と、
前記平帯部の裏側へ突出されるとともに両端が前記平帯部と連なるU字状断面のベローズ部と、
前記平帯部における前記ベローズ部の前記両端どうし間の部分によって構成された閉塞部と、
前記閉塞部に形成され、前記平帯部を互いに並行する一対の片帯部分に分割する線状の分割隙間と、
弾性を有して、前記閉塞部の裏面に設けられ、前記分割隙間を塞ぐ内蓋材と、
を備え、前記ベローズ部の内面と前記内蓋材との間に空洞部が形成され
前記内蓋材が、前記分割隙間の前記裏面に開口する連通開口に設けられて該連通開口を塞ぐ部分を有していることを特徴とする螺旋管用帯状部材。
【請求項2】
前記内蓋材における、前記閉塞部の裏面との接合面となる表側面の一部が、前記分割隙間の前記ベローズ部内への連通開口に被さって前記連通開口を塞ぐ部分となっていることを特徴とする請求項1に記載の螺旋管用帯状部材。
【請求項3】
前記内蓋材が、前記閉塞部の裏面に設けられた内蓋材本体と、前記内蓋材本体から突出して前記分割隙間に充填されて前記連通開口を塞ぐ部分となる隙間詰め部を有していることを特徴とする請求項1に記載の螺旋管用帯状部材。
【請求項4】
前記分割隙間の幅が、1mm以下であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の螺旋管用帯状部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した既設管を更生する更生管等の螺旋管となる帯状部材に関し、特に帯幅が拡縮可能な螺旋管用帯状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水管などの既設管の内周に更生管をライニングすることによって、既設管を更生させる方法は公知である。更生管は、例えば帯状部材を螺旋状に巻回してなる螺旋管によって構成されている(特許文献1、2など参照)。この種の螺旋管用帯状部材は、平坦な平帯部の幅方向の両端部に凹凸形状の嵌合部が形成されている。該帯状部材を螺旋状に巻回し、隣接する嵌合部どうしを嵌合させることによって螺旋管が形成される。
【0003】
特許文献1、2の螺旋管用帯状部材においては、平帯部の幅方向の中間部に裏側(外周側)へ突出するU字状の断面のベローズ部が設けられている。製管時や地震時には、ベローズ部が幅方向に伸縮されることによって、製管を容易化したり地震エネルギーを吸収したりできる。U字状断面のベローズ部の内部には、弾性部材などの充填体が充填されている。充填体の表側面が、平帯部の平滑な表側面と面一をなして露出されている。平帯部の表側面は、更生管(螺旋管)の内周面を構成する。したがって、弾性部材などの充填体の表側面は、更生管内に露出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-143420号公報
【文献】特開2018-052015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
供用中の下水道管などにおいては、弾性部材などの充填体の表側面が更生管の内周面に露出されていると、充填体が、流下物中の土砂や雑芥物等の与傷物との摩擦によって、摩耗、損傷、破断、剥離その他の損耗を来す可能性がある。そうすると、更生管(螺旋管)の内周面の平滑性が損なわれ、雑芥物等が引っ掛かったり詰まったりすることで流下能力が低下するおそれがある。また、充填体をベローズ部の内部空間全体に充填するのは材料コストが嵩む。
本発明は、かかる事情に鑑み、幅が拡縮可能な螺旋管用帯状部材において、材料コストを抑えながら、螺旋管の内周面の平滑性を維持して流下能力の低下を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、螺旋状に巻回されて一周違いの対向する縁どうしが接合されることによって螺旋管となる、帯幅が拡縮可能な螺旋管用帯状部材であって、
平坦な平帯部と、
前記平帯部の裏側へ突出されるとともに両端が前記平帯部と連なるU字状断面のベローズ部と、
前記平帯部における前記ベローズ部の前記両端どうし間の部分によって構成された閉塞部と、
前記閉塞部に形成され、前記平帯部を互いに並行する一対の片帯部分に分割する線状の分割隙間と、
弾性を有して、前記閉塞部の裏面に設けられ、前記分割隙間を塞ぐ内蓋材と、
を備え、前記ベローズ部の内面と前記内蓋材との間に空洞部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
当該帯状部材によれば、製管時の曲げ力や地震動などの外力が加わった時は、その外力に追従して、ベローズ部及び内蓋材が伸縮され、一対の片帯部分が接近離間されることによって、帯状部材の幅が拡縮される。これによって、製管操作を容易化できる。地震時には地震エネルギーを吸収することで、螺旋管の隣接する縁どうしの接合部が外れるのを回避でき、螺旋管の耐震性能が高まる。
帯状部材の拡縮に伴って、弾性体からなる内蓋材が伸縮変形される。逆に言うと、内蓋材は、製管時の曲げや地震動などに追従可能な弾性を有している。
当該帯状部材によれば、閉塞部が内蓋材の表側に被さっているから、内蓋材が螺旋管内へ露出されるのは、分割隙間との対応部分だけである。分割隙間は線状であるために、内蓋材の露出面積は極小である。したがって、内蓋材が、流下物中の土砂や雑芥物等の与傷物との接触によって、摩耗、損傷、破断、剥離その他の損耗を来すのを抑制できる。この結果、螺旋管の内周面の平滑性が維持され、流下能力の低下が防止される。
副次的効果として、螺旋管の内面に現れる内蓋材の露出面積が極小であるから、螺旋管の内面における美観が保たれる。
内蓋材は、ベローズ部内の全域に充填されるのではなく、ベローズ部の内部の閉塞部側の一部分だけに設けられているから、内蓋材の所要量を減らすことができ、材料コストを低減できる。また、内蓋材の厚みを増減させることができ、これによって、耐震性能を調整できる。
【0008】
前記内蓋材における、前記閉塞部の裏面との接合面の一部が、前記分割隙間の前記ベローズ部内への連通開口に被さっていることが好ましい。要するに、内蓋材が分割隙間に入り込んでおらず、分割隙間内が空になっていることが好ましい。これによって、内蓋材の形状が平坦で済み、内蓋材の作成を容易化できる。
螺旋管内を土砂や雑芥物等の、内蓋材に対する与傷物が流下している場合、分割隙間が狭いために、前記与傷物が分割隙間内に入り込むことは殆どできず、入り込んだとしても滞留して、内蓋材に到達することは殆ど無い。したがって、内蓋材が与傷物との接触によって損耗を来すのを確実に抑制できる。
【0009】
前記内蓋材が、前記閉塞部の裏面に設けられた内蓋材本体と、前記内蓋材本体から突出して前記分割隙間に充填された隙間詰め部を有していてもよい。これによって、分割隙間が流下物中の土砂や雑芥物等で詰まるのを防止できる。一方、内蓋材の隙間詰め部は、土砂や雑芥物等の与傷物と直接接触して削られるおそれがあるが、それによって出来た凹みの内部で与傷物が滞留し、閉塞部の裏側の内蓋材本体まで与傷物が達することは殆ど無い。
【0010】
前記分割隙間の幅が、1mm以下であることが好ましい。分割隙間から露出される内蓋材の露出面積を十分に小さくでき、内蓋材の損耗を十分抑制できる。
分割隙間の幅は、前記隣接する縁どうしの接合状態におけるクリアランスと同等以下であることが好ましい。
内蓋材の幅は、分割隙間の幅以上、ベローズ部の幅以下であり、厚みは1mm以上10mm以下が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、幅が拡縮可能な螺旋管用帯状部材において、材料コストを抑えながら、内蓋材の損耗を抑制することによって、螺旋管の内周面の平滑性を確実に維持でき、流下能力の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る螺旋管用帯状部材の断面図である。
図2図2は、前記帯状部材の一部の拡大断面図である。
図3図3は、前記帯状部材の製造装置における押出成形部の押出成形金型を、図4のIII-III線に沿う位置から見た正面断面図である。
図4】前記押出成形金型のコア及びブリッジの斜視図である。
図5図5は、前記帯状部材によって更生された既設管の一例を示す平面断面図である。
図6図6は、図5の円部VIを拡大して示す断面図である
図7図7は、地震動発生時における円部VIの断面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る螺旋管用帯状部材の一部の断面図である。
図9図9は、本発明の第3実施形態に係る螺旋管用帯状部材の一部の断面図である。
図10図10は、本発明の第4実施形態に係る螺旋管用帯状部材の一部の断面図である。
図11図11は、本発明の第5実施形態に係る螺旋管用帯状部材の一部の断面図である。
図12図12は、本発明の第6実施形態に係る螺旋管用帯状部材の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
図5に示すように、本発明形態に係る帯状部材10は、老朽化した下水道管などの既設管1の更生に用いられる。帯状部材10が、既設管1の内周に沿って螺旋状に巻回されて、螺旋管状の更生管3に製管される。これによって、既設管1が更生される。既設管1にはカーブ部1cが設けられている。これに合わせて、更生管3もカーブしている。
既設管1としては、下水道管の他、農業用水管、上水道管、水力発電導水管、ガス管、トンネルなどが挙げられる。
【0014】
<帯状部材10>
図1に示すように、帯状部材10は、主帯材11と、補強帯材20を備え、一定の断面を有して、同図の紙面と直交する帯長方向へ延びている。主帯材11は、樹脂の押出成形品である。主帯材11の樹脂材質は、ポリ塩化ビニルであるが、これに限らず、ポリエチレン、ポリプロピレンなどであってもよい。主帯材11の裏側部(製管されたとき外周側を向く側部、図1において下側部)には、概略M字状ないしはW字状の断面のスチール製の補強帯材20が嵌め込まれている。補強帯材20によって主帯材11が補強されている。
補強帯材20を省略してもよい。
【0015】
図1に示すように、主帯材11は、平帯部12と、嵌合部13,14と、ベローズ部15とを備えている。平帯部12は、一定の厚さの平坦な平帯板状に形成され、帯長方向(同図の紙面直交方向)に沿って延びている。平帯部12の平滑な表側面12aは、更生管3(螺旋管)の内周面となる。平帯部12における帯幅方向(同図の左右方向)の両端部には、互いに相補状の凹凸断面形状をなす第1嵌合部13及び第2嵌合部14が設けられている。
図6に示すように、更生管3においては、螺旋状に巻回された帯状部材10の帯幅方向の両端部における互いに一周違いの対向する嵌合部13,14どうしが凹凸嵌合によって接合されている。
【0016】
図1に示すように、平帯部12の帯幅方向の中間部にはベローズ部15が設けられている。ベローズ部15は、U字状の断面に形成され、平帯部12の裏側(製管により外周を向く側)へ突出されている。ベローズ部15の両端15d,15eは、平帯部12と一体に連なっている。ベローズ部15は、帯幅方向に伸縮可能である。
補強帯材20の中央のU字状の断面部分の内部にベローズ部15が収容されている。
【0017】
平帯部12におけるベローズ部15の両端15d,15eどうし間の部分によって、閉塞部16が構成されている。閉塞部16は、ベローズ部15の内部空間における表側(製管されたときの内周側)への開口を閉塞している。
【0018】
閉塞部16における裏面16bの両側部には、一対の小リブ18が形成されている。小リブ18は、閉塞部16から裏側(図2において下方)へ突出されるとともに、帯長方向(図2の紙面と直交する方向)へ真っ直ぐ延びている。閉塞部16の裏側における一対の小リブ18どうしの間に収容凹部16cが形成されている。
閉塞部16の裏側における各小リブ18とベローズ部15の対応端15d,15eとの間には、コーナー溝19が形成されている。
【0019】
図2に示すように、閉塞部16の幅方向(図2において左右)の中央部には、分割隙間17が形成されている。分割隙間17は、閉塞部16を厚み方向(図2において上下)に貫通するとともに、帯長方向(同図の紙面と直交する方向)へ真っ直ぐに延びている。分割隙間17の表側の端部は、閉塞部16ひいては平帯部12の表側面12aに達する表側開口17aとなっている。分割隙間17の裏側の端部は、閉塞部16の裏面16bに達し、収容凹部16cひいてはベローズ部15の内部に連なる連通開口17cとなっている。
【0020】
分割隙間17は線状である。すなわち、分割隙間17の幅W17は十分に小さい。好ましくは、幅W17は、嵌合部13,14どうしの接合状態における相対変位可能幅と同程度である。より好ましくは、外力が作用していない自然状態ないしはデフォルト状態における分割隙間17の幅W17は、1mm以下である。
【0021】
図1に示すように、分割隙間17を境にして、平帯部12が一対の片帯部分11a,11bに分割されている。片帯部分11a,11bは、互いに並行に延びている。片帯部分11a,11bの対向縁どうし間に分割隙間17が形成されている。
【0022】
片帯部分11a,11bどうしは、互いに帯幅方向へ接近離間可能である。これによって、帯状部材10の帯幅が拡縮可能である。このとき、ベローズ部15が伸縮され、分割隙間17が拡縮される。
【0023】
図2に示すように、さらに、帯状部材10は、内蓋材30を備えている。内蓋材30は、一定の厚みの帯板状に形成され、主帯材11と平行に帯長方向(図2において紙面直交方向)へ延びている。該内蓋材30が、収容凹部16cに収容され、閉塞部16の裏面16bに密着されている。内蓋材30の幅方向の両端部は、それぞれ対応する小リブ18の側面に突き当てられている。内蓋材30の裏側面(図2において下面)は、好ましくは小リブ18の突出端面と面一になっている。
【0024】
内蓋材30は、分割隙間17を跨いで片帯部分11a,11bに架け渡されている。内蓋材30によって、分割隙間17が裏側から塞がれている。内蓋材30の表側面30a(裏面16bとの接合面)の一部が、分割隙間17のベローズ部15内への連通開口17cに被さっている。
【0025】
内蓋材30は、主帯材11と一体成形されることによって、主帯材11と直接かつ一体に接合されている。閉塞部16の裏面と内蓋材30との間に接着剤などの接合手段は介在されていない。
なお、内蓋材30と主帯材11とが、接着剤を介して接着されていてもよい。
【0026】
内蓋材30は、弾性を有している。
内蓋材30の材質としては、軟質ポリ塩化ビニル、熱可塑性エラストマー、軟質ポリオレフィン、ポリウレタンなどの弾性体が挙げられる。
内蓋材30が接着剤によって主帯材11と接着される場合は、内蓋材30の材質として、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)その他のゴムを用いてもよい。
【0027】
内蓋材30の幅は、分割隙間17の幅以上(1mm以上)、ベローズ部15の幅及び閉塞部16の幅以下である。
内蓋材30の厚みは、好ましくは1mm以上10mm以下である。
内蓋材30は、後述する地震動に追従するのに十分な弾性、並びに厚み及び幅を有している。
【0028】
ベローズ部15の内面と内蓋材30との間に空洞部15cが形成されている。空洞部15cは、内蓋材30によって連通開口17cから遮断されており、ひいては帯状部材10の表側空間(更生管3の管内流路)から遮断されている。
【0029】
<帯状部材製造装置>
図3に示すように、帯状部材10の製造装置は、押出成形部40を備えている。押出成形部40は、原料供給部41,42と、押出成形金型43を含む。原料供給部41は、主帯材11の原料を加熱溶融させて押出成形金型43へ供給する。原料供給部42は、内蓋材30の原料を加熱溶融させて押出成形金型43へ供給する。
【0030】
押出成形金型43は、ダイ44と、ブリッジ45と、コア46を備えている。ダイ44には、平帯部12の外面を成形する押出流路44aが形成されている。押出流路44aにおけるベローズ部15と対応する空間部分の内部に、コア46が収容されている。コア46によって空洞部15cが成形される。コア46の上面の幅方向の両端部には、コーナー溝19を形成する凸条部46fが設けられている。
コア46の上面にブリッジ45が被さっている。ブリッジ45を介して、コア46が、ダイ44と連結されて支持されている。
【0031】
図3及び図4に示すように、ブリッジ45は、閉塞部16における内蓋材30と重なる部分の断面に合わせた幅及び厚みの板形状に形成されている。図4に示すように、ブリッジ45における押出方向の先端部分は、幅が漸次小さくなり、三角形状に尖っている。更に、ブリッジ45の先端から薄板状の隔板47が押出方向へ延びている。隔板47によって、分割隙間17が成形される。
なお、隔板47の上端縁は、ダイ44に連結されて支持されていてもよい。
【0032】
内蓋材30用の原料供給部42の供給路42bが、ブリッジ45を貫通して、コア46とブリッジ45の間を通り、図4の斜線部にて示す吐出口42cに連なっている。吐出口42cは、ブリッジ45の先端部分とコア46との間に形成されている。
【0033】
吐出口42cから押し出された溶融弾性材が、押出流路44aを流れる溶融樹脂と合流される。これによって、溶融弾性材が溶融樹脂と密着一体化されながら、押出成形部40から押し出される。その後、図示しない冷却部で冷却されることによって、溶融樹脂が主帯材11となり、溶融弾性材が内蓋材30となる。このようにして、内蓋材30が主帯材11と一体成形される。内蓋材30は平坦な板形状であるから、成形が容易である。
なお、内蓋材30を、接着剤層を介して主帯材11と接着する場合には、押出成形金型43に接着剤の流路を形成しておく。
さらに、別途成形した補強帯材20を主帯材11に嵌め込む。これによって、帯状部材10が製造される。
【0034】
<更生施工>
図5に示すように、前記の帯状部材10を既設管1の内周に沿って螺旋状に巻回して、更生管3を製管することによって、既設管1を更生する。既設管1の管軸がカーブするカーブ部1cにおいては、内まわり側部1dの巻きピッチは小さくなり、外まわり側部1eの巻きピッチは大きくなる。巻きピッチの変化に合わせて、帯状部材10の帯幅が拡縮される。具体的には、内まわり側部1dでは、ベローズ部15及び内蓋材30が縮められて、分割隙間17が狭められ、片帯部分11a,11bどうしが接近されることによって、帯状部材10の帯幅が縮小される。外まわり側部1eでは、ベローズ部15及び内蓋材30が伸ばされて、分割隙間17が拡げられ、片帯部分11a,11bどうしが離間されることによって、帯状部材10の帯幅が拡大される(図7参照)。これによって、更生管3を、既設管1の曲がりに合わせてカーブするようにして円滑に製管できる。巻きピッチの変化に合わせるために、嵌合部13,14に無理な力が作用するのを回避できる。
【0035】
図7に示すように、更生管3の供用後、地震時には、地震動に追随して、ベローズ部15及び内蓋材30が伸縮され、分割隙間17の幅が拡縮され、片帯部分11a,11bどうしが接近離間される。これによって、地震エネルギーを吸収でき、更生管3の耐震性能が高まる。特に、嵌合部13,14が外れるのを回避でき、更生管3の破損を防止して、流下能力を維持できる。
【0036】
帯状部材10においてはベローズ部15の表側に閉塞部16が配置されることによって、更生管3の内周面を平滑に保つことができる。
さらに、閉塞部16が内蓋材30の表側に被さっているから、内蓋材30が更生管3内へ露出されるのは、分割隙間17との対応部分だけである。分割隙間17は線状であるために、内蓋材30の露出面積は極小である。かつ、更生管3内の流下物中の土砂や雑芥物等の、内蓋材30にとっての与傷物は、分割隙間17内に殆ど入り込むことができず、入り込んだとしても滞留して、内蓋材30に到達することは殆ど無い。したがって、内蓋材30が与傷物との接触によって摩耗、損傷、破断、剥離その他の損耗を来すのを抑制できる。この結果、更生管3の内周面の平滑性が維持され、流下能力が低下するのを防止できる。また、副次的効果として、内蓋材30の露出面積が極小であるから、更生管3の内周面の美観が保たれる。
内蓋材30は、ベローズ部15の内部の全体に充填されるのではなく、ベローズ部15の内部における閉塞部16側の一部分だけに設けられているために、内蓋材30の所要量を減らすことができ、材料コストを低減できる。また、内蓋材30の厚みを増減させることができ、これによって、耐震性能を調整できる。
【0037】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態>
図8に示すように、本発明の第2実施形態に係る帯状部材10Bにおいては、閉塞部16の裏面16bに小リブ18(図2)が設けられておらず、裏面16b全体が平坦になっている。内蓋材30Bが閉塞部16の裏面16bの全域に被さっている。内蓋材30Bの幅方向の両端部は、ベローズ部15の両端15d,15eの内側面まで達し、ベローズ部15と直接に密着して接合されている。
【0038】
<第3実施形態>
図9に示すように、本発明の第3実施形態に係る帯状部材10Cにおいては、閉塞部60が、厚み方向(同図において上下)に2つの閉塞板61,62に分割されている。第1の閉塞板61は、一方の片帯部分11aと一体をなし、ベローズ部15の一端15dと連なるとともに、他方の片帯部分11bへ向かって延び出ている。閉塞板61の表側面61aは、片帯部分11aの表側面と面一になっている。
【0039】
第2の閉塞板62は、他方の片帯部分11bと一体をなし、ベローズ部15の他端15eと連なるとともに、一方の片帯部分11aへ向かって延び出ている。第2の閉塞板62の先端は、ベローズ部15の一端15dの内側面と裏側隙間部64bを介して近接している。
第2の閉塞板62は、第1の閉塞板61よりも裏側(図9において下側)に少しずれて配置されている。これら閉塞板61の間に中間隙間部64cが形成されている。
第2の閉塞板62の表側面と片帯部分11bとの間には段差11dが形成されている。第1の閉塞板61の先端が、段差11dと表側隙間部64aを介して近接している。
【0040】
中間隙間部64cの両端部に表側隙間部64a及び裏側隙間部64bがそれぞれ連なっている。これら3つの隙間部64a~64cによってクランク状の断面の分割隙間64が構成されている。表側隙間部64aが、平帯部12の表側面12aに開口されている。更生管3(図3参照)においては、表側隙間部64aが、更生管3の内部流路に連なる。
【0041】
第2の閉塞板62の裏面62bに内蓋材30Cが設けられている。内蓋材30Cの表側面30aが、第2の閉塞板62と密着、接合されている。内蓋材30Cの幅方向の両端部は、ベローズ部15の内側面と密着、接合されている。
内蓋材30Cは、第2の閉塞板62の裏面62bの全域に被さっている。更に、内蓋材30Cのベローズ部端15d側の部分が、分割隙間64の連通開口64dに被さって、該連通開口64dを塞いでいる。すなわち、内蓋材30Cにおける、閉塞部60の裏面62bとの接合面30aの一部が、連通開口64dに被さっている。
【0042】
第3実施形態の帯状部材10Cによれば、分割隙間64がクランク状になっているため、土砂や雑芥物等の与傷物が、分割隙間64内に入り込んだとしても、分割隙間6の途中で滞留して、内蓋材30Cに達するのを確実に抑制できる。これによって、内蓋材30Cの損耗を一層確実に防止することができる。
【0043】
<第4実施形態>
図10に示すように、本発明の第4実施形態に係る帯状部材10Dにおいては、内蓋材を除いて、第1実施形態に係る帯状部材10(図1図2)と同様の断面形状になっている。帯状部材10Dの内蓋材30Dは、内蓋材本体31と、隙間詰め部32を一体に有している。内蓋材本体31は、第1実施形態の内蓋材30(図2)と同様に、長方形断面の帯板形状に形成され、閉塞部16の裏面16bに密着されている。内蓋材本体31の幅方向の両端部は、小リブ18と密着されている。
【0044】
隙間詰め部32は、内蓋材本体31の幅方向の中央部から表側(図10において上側)へ突出して、分割隙間17に充填されている。好ましくは、隙間詰め部32の先端面32aは、閉塞部16の表側面ひいては平帯部12の表側面12aと面一になっている。したがって、隙間詰め部32の先端面32aは、更生管3の内周面の一部を構成している。
なお、隙間詰め部32の先端面32aが、平帯部12の表側面12aより引っ込んでいてもよい。
【0045】
第4実施形態の帯状部材10Dによれば、隙間詰め部32が分割隙間17に充填されていることによって、分割隙間17が流下物中の土砂や雑芥物等で詰まるのを防止できる。
隙間詰め部32の先端面32aが平帯部12の表側面12aと面一になることによって、更生管3の内周面の平滑性を一層高めることができる。
一方、隙間詰め部32の先端面32aは、更生管3内の流下物中の土砂や雑芥物等の与傷物と直接接触して削られるおそれがある。しかし、それによって出来た凹みの内部で与傷物が滞留し、内蓋材本体31まで与傷物が達することは殆ど無い。
【0046】
<第5実施形態>
図11に示すように、本発明の第5実施形態に係る帯状部材10Eは、内蓋材を除いて、第2実施形態に係る帯状部材10B(図8)と同様の断面形状になっている。帯状部材10Eの内蓋材30Eは、第4実施形態(図10)の内蓋材30Dと同様に、内蓋材本体31と、隙間詰め部32を一体に有している。内蓋材本体31は、第2実施形態の内蓋材30B(図8)と同様に、閉塞部16の裏面16bの全域に被さり、幅方向の両端部がベローズ部15の両端15d,15eの内側面に達して、ベローズ部15と密着されている。
【0047】
<第6実施形態>
図12に示すように、本発明の第6実施形態に係る帯状部材10Fは、内蓋材を除いて、第3実施形態に係る帯状部材10C(図9)と同様の断面形状になっている。帯状部材10Fの内蓋材30Fは、内蓋材本体31と、隙間詰め部33を一体に有している。内蓋材本体31は、第3実施形態の内蓋材30C(図9)と同様に、第2の閉塞板62の裏面62bの全域に被さり、更に分割隙間64の連通開口64dに被さっている。
【0048】
内蓋材本体31における、前記連通開口64dに被さる部分から表側(図12において上側)へ隙間詰め部33が突出されている。隙間詰め部33は、クランク状の断面形状に形成され、クランク状の断面の分割隙間64に充填されている。詳しくは、隙間詰め部33は、裏側隙間部64bに充填された裏側隙間詰め部分34と、中間隙間部64cに充填された中間隙間詰め部分35と、表側隙間部64aに充填された表側隙間詰め部分36とを一体に有している。好ましくは、表側隙間詰め部分36の先端面ひいては隙間詰め部33の先端面33aは、平帯部12の表側面12aと面一になっている。
【0049】
第6実施形態の帯状部材10Fによれば、隙間詰め部33によって、流下物中の土砂や雑芥物等が分割隙間64に侵入するのを防止できる。隙間詰め部33の先端面33aが土砂や雑芥物等の与傷物と接触して削られて凹みが出来たとしても、隙間詰め部33及び分割隙間64がクランク状になっているため、与傷物を前記凹みの内部で確実に滞留させることができ、内蓋材本体31まで与傷物が達するのを確実に防止できる。
【0050】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、既設管1は必ずしもカーブしている必要は無く、全長にわたってストレートであってもよい。その場合でも、少なくとも地震時に内蓋材及びベローズ部の地震動追従機能が発揮される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば下水道管の更生施工に適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 既設管
1c カーブ部
3 更生管(螺旋管)
10 帯状部材
10B~10F 帯状部材
11a,11b 片帯部分
12 平帯部
12a 表側面
15 ベローズ部
15d,15e 両端
15c 空洞部
16 閉塞部
16b 裏面
17 分割隙間
17c 連通開口
30 内蓋材
30B~30F 内蓋材
30a 表側面(接合面)
60 閉塞部
64 分割隙間
64d 連通開口
31 内蓋材本体
32,33 隙間詰め部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12