(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】水素分離膜モジュール
(51)【国際特許分類】
B01D 53/22 20060101AFI20240522BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20240522BHJP
B01D 63/06 20060101ALI20240522BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20240522BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D63/00 500
B01D63/06
B01D69/10
C01B3/56 Z
(21)【出願番号】P 2020153800
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000231556
【氏名又は名称】日本精線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】味園 雅弘
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-007225(JP,A)
【文献】特開2007-144404(JP,A)
【文献】特許第2960998(JP,B2)
【文献】特開2019-030828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/44
C01B3/00-6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素分離膜モジュールであって、
軸心方向に延び、かつ、複数の孔を有する筒状の第1支持体と、混合ガスから水素ガスを選択的に透過させるための水素分離膜とを含み、
前記水素分離膜は、前記第1支持体の前記孔を覆うように前記第1支持体の上に重ねられており、
前記水素分離膜は、前記軸心方向の一方側に第1端縁を有し、
前記第1支持体は、前記水素分離膜の前記第1端縁から前記軸心方向の外側にはみ出した第1延長部を備え、
前記水素分離膜の前記第1端縁は、接合材を介して前記第1延長部に接合されており、
前記接合材は、溶融金属の固化物であり、
前記第1延長部は、前記溶融金属が前記水素分離膜の前記第1端縁から前記外側に離れる向きの流動を規制するための制限部を備え
ており、
前記水素分離膜を保護するための保護部材をさらに含み、
前記保護部材は、前記水素分離膜の上に重ねられており、
前記保護部材は、前記水素分離膜を通過した前記水素ガスが通過可能な孔を有し、
前記接合材は、さらに、前記保護部材と前記水素分離膜とを接合している、
水素分離膜モジュール。
【請求項2】
複数の孔を有する第2支持体をさらに含み、
前記第2支持体は、前記保護部材の上に重ねられており、
前記第2支持体は、前記保護部材を通過した前記水素ガスが通過可能な孔を有し、
前記接合材は、さらに、前記保護部材と前記第2支持体とを接合している、請求項1に記載の水素分離膜モジュール。
【請求項3】
前記第1支持体は、本体部と、前記本体部の前記軸心方向の一端側に固着された側部とを含み、
前記本体部と前記側部とは、前記軸心方向で、互いに略面一に連続する表面を備え、
前記水素分離膜は、前記本体部と前記側部とに跨って配置されており、
前記水素分離膜の前記第1端縁が、前記側部の上に位置し、
前記側部の一部が、前記第1延長部を形成している、請求項1又は2に記載の水素分離膜モジュール。
【請求項4】
前記制限部は、前記軸心方向に対して略鉛直方向に延びる壁面を含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の水素分離膜モジュール。
【請求項5】
前記接合材が、前記制限部よりも前記水素分離膜の前記第1端縁側に位置している、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の水素分離膜モジュール。
【請求項6】
前記第2支持体は、前記軸心方向の前記一方側に第1端縁を有し、
前記第2支持体の前記第1端縁は、前記水素分離膜の前記第1端縁よりも前記軸心方向の内側に位置し、
前記接合材が、前記制限部と前記第2支持体の前記第1端縁との間に形成される溝状部に配されている、請求項2に記載の水素分離膜モジュール。
【請求項7】
前記制限部は、前記水素分離膜の内周面よりも内側に局所的に凹んだ凹部を含む、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の水素分離膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素分離膜モジュールに関し、詳しくは、水素を含有する混合ガスから水素ガスを取り出すために用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、水素分離装置が記載されている。この装置は、水素透過部材と、取付け具とが、ロウ材によって接合されてなる水素分離装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような装置において、水素透過部材と取付け具とを接合する作業にはある程度の習熟を要する。例えば、経験が浅い技術者がこのような接合作業をした場合、流動性を有するロウ材が、取付け具の貫通孔から外部に漏れ落ちることがあり、適切な接合ができないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、水素分離膜とそれを支持する支持体とを容易に接合することが可能な水素分離膜モジュールを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、水素分離膜モジュールであって、軸心方向に延び、かつ、複数の孔を有する筒状の第1支持体と、混合ガスから水素ガスを選択的に透過させるための水素分離膜とを含み、前記水素分離膜は、前記第1支持体の前記孔を覆うように前記第1支持体の上に重ねられており、前記水素分離膜は、前記軸心方向の一方側に第1端縁を有し、前記第1支持体は、前記水素分離膜の前記第1端縁から前記軸心方向の外側にはみ出した第1延長部を備え、前記水素分離膜の前記第1端縁は、接合材を介して前記第1延長部に接合されており、前記接合材は、溶融金属の固化物であり、前記第1延長部は、前記溶融金属が前記水素分離膜の前記第1端縁から前記外側に離れる向きの流動を規制するための制限部を備える。
【0007】
本発明の他の態様では、前記水素分離膜を保護するための保護部材をさらに含み、前記保護部材は、前記水素分離膜の上に重ねられており、前記保護部材は、前記水素分離膜を通過した前記水素ガスが通過可能な孔を有し、前記接合材は、さらに、前記保護部材と前記水素分離膜とを接合しても良い。
【0008】
本発明の他の態様では、複数の孔を有する第2支持体をさらに含み、前記第2支持体は、前記保護部材の上に重ねられており、前記第2支持体は、前記保護部材を通過した前記水素ガスが通過可能な孔を有し、前記接合材は、さらに、前記保護部材と前記第2支持体とを接合しても良い。
【0009】
本発明の他の態様では、前記第1支持体は、本体部と、前記本体部の前記軸心方向の一端側に固着された側部とを含み、前記本体部と前記側部とは、前記軸心方向で、互いに略面一に連続する表面を備え、前記水素分離膜は、前記本体部と前記側部とに跨って配置されており、前記水素分離膜の前記第1端縁が、前記側部の上に位置し、前記側部の一部が、前記延長部を形成しても良い。
【0010】
本発明の他の態様では、前記制限部は、前記軸心方向に対して略鉛直方向に延びる壁面を含んでも良い。
【0011】
本発明の他の態様では、前記接合材が、前記制限部よりも前記水素分離膜の前記第1端縁側に位置していても良い。
【0012】
本発明の他の態様では、前記第2支持体は、前記軸心方向の前記一方側に第1端縁を有し、
前記第2支持体の前記第1端縁は、前記水素分離膜の前記第1端縁よりも軸心方向の内側に位置し、前記接合材が、前記制限部と前記第2支持体の前記第1端縁との間に形成される溝状部に配されていても良い。
【0013】
本発明の他の態様では、前記制限部は、前記水素分離膜の内周面よりも内側に局所的に凹んだ凹部を含んでも良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水素分離膜モジュールは、上記の構成を採用したことにより、水素分離膜とそれを支持する支持体とを容易に接合することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態を示す水素分離膜モジュールの正面図(一部断面図)である。
【
図3】
図2の接合材を配置する前の状態を示す図である。
【
図4】他の実施形態を示す
図1のX部拡大図である。
【
図5】他の実施形態を示す
図1のX部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本明細書では、複数の実施形態において、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0017】
図1には、本発明の一実施形態を示す水素分離膜モジュール1の正面図(一部断面図)が示されている。また、
図2には、
図1のX部拡大図が示されている。
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の水素分離膜モジュール1は、水素を含有する混合ガスから水素ガスを取り出すために用いられる装置ないし部品である。本実施形態の水素分離膜モジュール1は、第1端1Aと、その反対側の第2端1Bとを有する筒状に形成される。本実施形態の水素分離膜モジュール1では、第1端1Aから水素ガスを含む混合ガスが供給され(矢印IN)、第2端1B側は図示しないキャップ部材で閉塞される。
【0018】
[水素分離膜モジュール全体構成]
図1及び
図2に示されるように、水素分離膜モジュール1は、第1支持体2と、第1支持体2の上に重ねられた水素分離膜3とを含む。また、本実施形態の水素分離膜モジュール1は、任意要素として、さらに、水素分離膜3の上に重ねられた保護部材4と、その上に重ねられ第2支持体5とを含んでいる。以下、各要素が説明される。
【0019】
[第1支持体]
第1支持体2は、軸心方向Aに延びる筒状であり、その両端部は、それぞれ水素分離膜モジュール1の第1端1A及び第2端1Bを構成している。本実施形態の第1支持体2は、内部に空洞部iを画定する円筒状とされている。他の態様では、第1支持体2は、角柱状等であっても良い。なお、軸心方向Aと直交する方向を、「径方向」と呼ぶことがある。
【0020】
第1支持体2は、さらに、空洞部i側の内周面2iと、その反対側の外周面2oとを含む。第1支持体2の周面には、複数の孔2Aが形成されている。本実施形態の孔2Aは、第1支持体2を径方向に貫通する多数の円形孔である。
【0021】
第1支持体2は、その外周面2o又は内周面2iの上で水素分離膜3を支持することで、ガス圧力等に対して、水素分離膜3の形状を安定的に保持するのに役立つ。また、第1支持体2は、周面に孔2Aが形成されていることから、内周面2i又は外周面2oから供給された混合ガスを水素分離膜3に接触させることができる。
【0022】
第1支持体2としては、所望の剛性を有するものが望ましく、例えば、金属材料が好適である。金属材料としては、例えば、純ニッケル、ハステロイ、ステンレス鋼等が好適であり、とりわけ耐水素脆性に優れたSUS316L等が好適である。このような第1支持体2は、例えば、パンチングメタルを筒状に加工することで、容易に製作され得る。他の態様では、第1支持体2は、金網、メッシュ材料、多孔質焼結体等が採用されても良い。
【0023】
また、
図2に示されるように、第1支持体2は、本体部21と、本体部21の軸心方向Aの一端側(本実施形態では、両端側)に固着された側部22とを含んで構成されても良い。本体部21と側部22とは、例えば、互いに軸心方向Aで突き合わされ、その突き合わせ部が溶接にて固着されている。好ましい態様では、本体部21と側部22とは、軸心方向Aにおいて、互いに略面一に連続する表面を備える。なお、本明細書において、「略面一」とは、2つの連続する面が、径方向において、段差なく連続する態様の他、加工誤差の範囲で段差がある態様を含む。この加工誤差としては、径方向の段差として、0.2mm以下が許容される。
【0024】
[水素分離膜]
水素分離膜3は、混合ガスから水素ガスを選択的に透過させる性質を有する薄膜である。このような性質を備えるものであれば、水素分離膜3には、種々のものが採用され得る。本実施形態の水素分離膜3は、例えば、Pdを含む金属材料が用いられ、とりわけ、Pd-Cu合金やPd-Ag合金等が好適である。
【0025】
一般に、水素分離膜3の水素透過性能は、その厚さが小さいほど優れる傾向がある。このような観点では、水素分離膜3の厚さは、例えば50μm以下、好ましくは25μm以下が好ましい。一方、水素分離膜3の厚さが小さくなると、その取り扱いや加工が困難となるおそれがある。このような観点では、水素分離膜3の厚さは、5μm以上が望ましい。
【0026】
水素分離膜3は、第1支持体2の上に重ねられている。本実施形態では、水素分離膜3は、第1支持体2の外周面2oの上に、筒状となるように巻き重ねられている。これにより、水素分離膜3が、第1支持体2の外周面2oによって安定的に保持される。他の態様では、水素分離膜3は、第1支持体2の内周面2iの側に配されても良い。
【0027】
図2に示されるように、本実施形態の水素分離膜3は、本体部21と側部22とに跨って配置されている。この際、第1支持体2の本体部21と側部22とは、略面一に連続する表面を備えるため、該表面とその上に設けられた水素分離膜3との密着性を向上させることができる。また、このような態様は、水素分離膜モジュール1を、実質的に一定外径の筒状体として構成するのに役立つ。これは、水素分離膜モジュール1をコンパクトにし、また、ハウジングとの間のデッドスペース等をなくすのにも役立つ。
【0028】
また、水素分離膜3は、軸心方向Aの一方側に第1端縁31を有する。この第1端縁31は、第1支持体2の外周面2o上に位置している。換言すると、第1支持体2は、水素分離膜3の第1端縁31から軸心方向Aの外側にはみ出した第1延長部23を備えている。これについては、後述する。
【0029】
[保護部材]
保護部材4は、水素分離膜3を保護するための部材である。本実施形態の保護部材4は、筒状であり、水素分離膜3の径方向の外側に重ねられている。これにより、本実施形態の水素分離膜3は、第1支持体2及び保護部材4に内外から保持されることから、その形状等が安定的に維持される点で好ましい。
【0030】
また、本実施形態の保護部材4は、水素分離膜3を通過した水素ガスが通過可能な孔を有する。このような保護部材4としては、例えば、金属繊維の焼結体が好適である。この焼結体は、内部に多数の連続した微細孔が形成された多孔質構造を備えている。したがって、水素ガスは、保護部材4の内外を通過することができる。
【0031】
金属繊維としては、例えば、ステンレス鋼繊維が好ましく、とりわけSUS316Lが好適である。このようなステンレス鋼繊維は、可撓性を有するのみならず、高温(例えば、400℃以上)雰囲気中で耐水素脆性機能を有する点で特に好ましい。特に限定されるものではないが、金属繊維の平均線径は、例えば、60μm以下、より好ましくは40μm以下が望ましい。同様に、金属繊維の平均繊維長は、例えば、20~40mm程度が望ましい。
【0032】
保護部材4は、金属繊維の焼結体に限定されるものではなく、例えば、メッシュ金網等であっても良い。この場合、金網は、線径が15~60μm、より好ましくは20~40μmであり、かつ、1インチ当たり150メッシュ以上、より好ましくは200~500メッシュを有することが望ましい。
【0033】
[第2支持体]
第2支持体5は、例えば、第1支持体2と同様、軸心方向Aに延びる筒状とされ、本実施形態では、保護部材4の径方向の外側に重ねられている。第2支持体5も、水素分離膜3の形状を安定的に保持するように機能する。また、第2支持体5は、その周面に、複数の孔5Aを有する。したがって、保護部材4を通過した水素ガスは、この孔5Aを通過し、第2支持体5の外部に移動できる。
【0034】
第2支持体5は、所望の剛性を有するものが望ましく、例えば、金属材料が好適である。金属材料としては、例えば、純ニッケル、ハステロイ、ステンレス鋼等が好適であり、本実施形態ではSUS316Lが用いられている。
【0035】
[水素分離膜モジュールの作用]
本実施形態の水素分離膜モジュール1の作用は、次の通りである。まず、水素分離膜モジュール1の軸心方向Aの第1端1Aから、空洞部iに水素ガスを含む混合ガスが所定の圧力で供給される。空洞部iに供給された混合ガスは、第1支持体2の孔2Aを通過して、水素分離膜3に接触する。水素分離膜3は、選択的に水素ガスのみを径方向外側へ通過させる。水素分離膜3を通過した水素ガスは、保護部材4の多孔質構造及び第2支持体5の孔5Aをそれぞれ通過して、水素分離膜モジュール1の径方向の外側から取り出される(矢印OUT)。なお、水素分離膜モジュール1の外側には、水素分離膜モジュール1を覆うようなハウジング(図示省略)が適宜設けられ、第2支持体5から排出された水素ガスが適宜取り出される。なお、他の実施形態では、上記とは逆に、水素分離膜モジュール1の径方向の外側に混合ガスが供給され、空洞部i側から水素ガスが取り出されても良い。
【0036】
[接合材]
本実施形態の水素分離膜モジュール1において、水素分離膜3の第1端縁31は、接合材6を介して第1延長部23に接合されている。接合材6は、水素分離膜3と第1延長部23とに跨るように、両者の上に配置されている。また、
図1から明らかなように、接合材6は、第1端縁31に沿って円周方向に配置されている。
【0037】
接合材6は、溶融金属の固化物であり、例えば、ロウ材である。ロウ材には、水素分離膜3と第1延長部23とを接合できる材料であれば様々なものが採用でき、例えば、銀ロウ、銅ロウ、黄銅ロウ等の硬ロウが好適であり、本実施形態では銀ロウが用いられている。ロウ材からなる接合材6は、その融点以上に加熱されたときに、溶融金属の状態(液体状態)となり、被塗面のぬれによって、水素分離膜3と第1延長部23との間の隙間にも流れ込み、両者の間を接合する。なお、ロウ材を配するのに先立ち、フラックス等で第1延長部23の表面の酸化膜等が除去されるのが望ましい。
【0038】
また、本実施形態の水素分離膜モジュール1は、水素分離膜3の上に保護部材4が配されていることから、本実施形態の接合材6は、さらに、保護部材4と水素分離膜3との間も接合している。より具体的には、接合材6は、溶融金属の状態において、水素分離膜3と保護部材4との間の隙間にも流れ込み、両者の間を接合している。ただし、保護部材4と水素分離膜3との間の接合は、任意である。
【0039】
さらに、本実施形態の水素分離膜モジュール1は、保護部材4の上に第2支持体5が配されていることから、本実施形態の接合材6は、さらに、保護部材4と第2支持体5との間も接合している。より具体的には、接合材6は、溶融金属の状態において、保護部材4と第2支持体5との間の隙間にも流れ込み、両者の間を接合している。ただし、保護部材4と第2支持体5との間の接合は、任意である。
【0040】
[制限部]
第1延長部23は、制限部7を備える。この制限部7は、接合材6が溶融金属とされている場合に、該溶融金属が、水素分離膜3の第1端縁31から外側に離れる向き(
図2において、右側への向き)の流動を規制する。したがって、本実施形態の水素分離膜モジュール1において、水素分離膜3の第1端縁31を
第1延長部23に接合する際、特別な技術を要することなく、溶融金属を水素分離膜3の第1端縁31側付近に保持することができる。このため、溶融金属は、水素分離膜3と第1延長部23との間に浸透し、両者の間を確実に接合することができる。したがって、本実施形態の水素分離膜モジュール1は、比較的経験が浅い技術者でも、水素分離膜3とそれを支持する第1支持体2とを容易に接合することが可能になる。
【0041】
制限部7は、本実施形態では、軸心方向Aに対して略鉛直方向に延びる壁面71を含む。壁面71は、水素分離膜3の第1端縁31よりも軸心方向Aの外側の位置で、第1延長部23の外面から径方向外側に突出している。このような壁面71は、溶融金属の水素分離膜3の第1端縁31から離れる向きの流動を確実に堰き止める、ひいては、接合材6を、制限部7よりも水素分離膜3の第1端縁31側に置き留めることができる。なお、本明細書において、軸心方向Aに対して「略鉛直方向」とは、軸心方向Aに対して90°±5°の範囲を包含する方向と解釈される。
【0042】
壁面71は、例えば、第1延長部23の円周方向に連続して延びているのが望ましい。これによって、円周方向に亘って、上記作用が確実に発揮される。なお、壁面71の高さhは、特に限定されないが、例えば、0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上が望ましい。
【0043】
図3には、接合材6が配される前の状態の
図1のX部拡大図を示す。
図3に示されるように、本実施形態の水素分離膜モジュール1において、第2支持体5は、軸心方向Aの前記一方側に第1端縁51を有するのが望ましい。この第2支持体5の第1端縁51は、水素分離膜3の第1端縁31よりも軸心方向Aの内側に位置している。これにより、第2支持体5の第1端縁51と、制限部7の壁面71との間には、円周方向にのびる溝状部8が形成される。そして、接合材6が、この溝状部8内に配されることになる。
【0044】
上記のような態様では、作業者は、溝状部8内に接合材6(溶融金属)を配するという簡単な工程で、溶融金属の軸心方向Aの流動をその両側から規制することができる。水素分離膜3の第1端縁31がこの溝状部8内に配置されていることから、上記態様では、水素分離膜3と、第1支持体2とをより一層容易に接合することが可能になる。
【0045】
図4には、本発明の他の実施形態として、
図1のX部に相当する断面図が示されている。
図4に示されるように、この実施形態では、制限部7は、凹部72を含んでいる。
【0046】
凹部72は、例えば、第1支持体2の外周面2oに局所的に設けられた角溝状であり、本実施形態では、第1支持体2の円周方向に連続して形成されている。凹部72は、例えば、第1側壁面72Aと、第2側壁面72Bと、底面72Cとを含む。底面72Cは、水素分離膜3の内周面よりも内側に局所的に凹んでいる。なお、本明細書において、水素分離膜3の内周面とは、第1延長部23に凹部9がないとした場合の、水素分離膜3の内周面を意味する。
【0047】
水素分離膜3の第1端縁31は、この凹部72内に位置する。すなわち、第1端縁31は、軸心方向Aにおいて、第1側壁面72Aと、第2側壁面72Bとの間に位置する。本実施形態では、第1端縁31は、凹部72の輪郭に沿って折り曲げられているが、
図5に示されるように、軸心方向Aに沿って真っ直ぐに延びても良い。
【0048】
図4及び
図5の実施形態においても、水素分離膜3の第1端縁31を第1延長部23に接合する際、特別な技術を要することなく、凹部72に溶融金属を配置することで、溶融金属を水素分離膜3の第1端縁31側付近に保持することができる。このため、溶融金属は、水素分離膜3と第1延長部23との間に浸透し、両者の間を確実に接合することができる。したがって、これらの実施形態の水素分離膜モジュール1も、比較的経験が浅い技術者でも、水素分離膜3とそれを支持する第1支持体2とを容易に接合することができる。
【0049】
なお、水素分離膜モジュール1の軸心方向Aの他端側は、特に限定されるものではないが、水素分離膜3の第1支持体2への接合については、好ましくは、一端側と同様の構成を備えるのが望ましい。
【0050】
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な開示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々変更して実施することができる。また、本発明は、その均等物を含む。
【符号の説明】
【0051】
1 水素分離膜モジュール
2 第1支持体
2A 孔
2i 内周面
3 水素分離膜
4 保護部材
5 第2支持体
5A 孔
6 接合材
7 制限部
8 溝状部
9 凹部
21 本体部
22 側部
23 第1延長部
31 第1端縁
51 第1端縁
71 壁面
72 凹部
A 軸心方向