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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20240522BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240522BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240522BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240522BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01L29/78 652P
H01L29/78 652T
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 652N
H01L29/06 301F
H01L29/78 658J
H01L29/44 Y
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020157510
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051174
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 創造
(72)【発明者】
【氏名】河野 洋志
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-368215(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0209971(US,A1)
【文献】国際公開第2013/140572(WO,A1)
【文献】特開2007-059766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/06
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル領域、及び、前記セル領域を囲む終端領域を有する半導体装置であって、
第1導電形の第1半導体層と、
前記終端領域において前記第1半導体層の上部に設けられ、前記セル領域を囲む第2導電形の第1ガードリング層と、
を有した半導体部分と、
前記半導体部分上に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜を介して前記第1ガードリング層と離隔して設けられ、前記セル領域から前記終端領域に向かう方向の端縁である終端側の端縁が、前記第1ガードリング層の前記終端側の端縁よりも前記終端側に位置し、セル領域側の端縁が、前記第1ガードリング層の前記セル領域側の端縁の直上域よりも前記終端側であって前記終端側の端縁の直上域までの間に位置し、前記セル領域側の部分が、前記第1ガードリング層の前記終端側の部分を覆い、前記終端側の部分が、前記第1ガードリング層を覆っていない第1導電部材と、
前記第1ガードリング層の前記セル領域側の部分の上に設けられ、前記第1ガードリング層に接し、前記第1導電部材と前記絶縁膜を介して離隔した第1導電板材と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
セル領域、及び、前記セル領域を囲む終端領域を有する半導体装置であって、
第1導電形の第1半導体層と、
前記終端領域において前記第1半導体層の上部に設けられ、前記セル領域を囲む第2導電形の第1ガードリング層と、
を有した半導体部分と、
前記半導体部分上に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜を介して前記第1ガードリング層と離隔して設けられ、前記セル領域から前記終端領域に向かう方向の端縁である終端側の端縁が、前記第1ガードリング層の前記終端側の端縁よりも前記終端側に位置し、セル領域側の端縁が、前記第1ガードリング層の前記セル領域側の端縁の直上域よりも前記終端側であって前記終端側の端縁の直上域までの間に位置した第1導電部材と、
前記第1ガードリング層の前記セル領域側の部分の上に設けられ、前記第1ガードリング層に接し、前記第1導電部材と前記絶縁膜を介して離隔した第1導電板材と、
を備え、
前記第1導電部材の前記終端側の部分と前記第1半導体層との間には、前記第1ガードリング層が設けられておらず、
前記第1導電部材の前記セル領域側の部分と前記第1半導体層との間には、前記第1ガードリング層が設けられている半導体装置。
【請求項3】
前記半導体部分は、
前記終端領域において前記第1半導体層の上部に設けられ、前記第1ガードリング層を囲む第2導電形の第2ガードリング層と、
を、更に有し、
前記絶縁膜を介して前記第2ガードリング層を覆う第2導電部材と、
を、更に備えた請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2導電部材は、前記終端側の端縁が、前記第2ガードリング層の前記終端側の端縁よりも前記終端側に位置し、前記セル領域側の端縁が、前記第2ガードリング層の前記セル領域側の端縁の直上域よりも終端側であって前記終端側の端縁の直上域までの間に位置した請求項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体部分は、
前記終端領域において前記第1半導体層の上部に設けられ、前記第2ガードリング層を囲む第2導電形の第3ガードリング層と、
を、更に有し、
上方から見て、前記絶縁膜を介して前記第3ガードリング層を覆う第3導電部材と、
を、更に備えた請求項またはに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第3導電部材は、前記終端側の端縁が、前記第3ガードリング層の前記終端側の端縁よりも前記終端側に位置し、前記セル領域側の端縁が、前記第3ガードリング層の前記セル領域側の端縁の直上域よりも前記終端側であって前記終端側の端縁の直上域までの間に位置した請求項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第3導電部材は、前記第1導電部材の前記終端側に配列され、
前記第2導電部材は、前記第1導電部材と前記第3導電部材の間隙に対して前記第1導電部材から前記第3導電部材に向かう第1方向に交差する第2方向にずれて配置された請求項またはに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体部分は、
前記終端領域において前記第1半導体層の上部に設けられ、前記第1ガードリング層を囲む第2導電形の第2ガードリング層と、
を、更に有し、
前記第1導電部材は、前記第2ガードリング層の前記セル領域側の部分を覆っている請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体部分は、
前記終端領域において前記第1半導体層の上部に設けられ、前記第2ガードリング層を囲む第2導電形の第3ガードリング層と、
を、更に有し、
前記絶縁膜を介して前記第3ガードリング層を覆う第2導電部材と、
を、更に備えた請求項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1ガードリング層と前記第2ガードリング層との間隔は、前記第2ガードリング層と前記第3ガードリング層との間隔よりも狭い請求項のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項11】
セル領域、及び、前記セル領域を囲む終端領域を有する半導体装置であって、
第1導電形の第1半導体層と、
前記終端領域において前記第1半導体層の上部に設けられ、前記セル領域を囲む第2導電形の第1ガードリング層と、
前記終端領域において前記第1半導体層の上部に設けられ、前記第1ガードリング層を囲む第2導電形の第2ガードリング層と、
前記終端領域において前記第1半導体層の上部に設けられ、前記第2ガードリング層を囲む第2導電形の第3ガードリング層と、
を有した半導体部分と、
前記半導体部分上に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜を介して前記第1ガードリング層と離隔して設けられ、前記セル領域から前記終端領域に向かう方向の端縁である終端側の端縁が、前記第1ガードリング層の前記終端側の端縁よりも前記終端側に位置し、セル領域側の端縁が、前記第1ガードリング層の前記セル領域側の端縁の直上域よりも前記終端側であって前記終端側の端縁の直上域までの間に位置し、前記セル領域側の部分が、前記第1ガードリング層の前記終端側の部分を覆い、前記終端側の部分が、前記第1ガードリング層を覆っていない第1導電部材と、
前記絶縁膜を介して前記第2ガードリング層を覆う第2導電部材と、
前記第1導電部材の前記終端側に配列され、上方から見て、前記絶縁膜を介して前記第3ガードリング層を覆う第3導電部材と、
を備え
前記第2導電部材は、前記第1導電部材と前記第3導電部材の間隙に対して前記第1導電部材から前記第3導電部材に向かう第1方向に交差する第2方向にずれて配置された半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばシリコン(Si)の約10倍の絶縁破壊強度がある炭化ケイ素(SiC)を含んだ半導体材料は、電力系の半導体装置の大電流化に寄与している。このような大電流化に併せて、半導体装置の終端領域においても耐圧の向上が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-353307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、信頼性の向上を可能とする半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、セル領域、及び、前記セル領域を囲む終端領域を有する。前記半導体装置は、半導体部分と、絶縁膜と、第1導電部材と、を備える。前記半導体部分は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第1ガードリング層とを有する。前記第1ガードリング層は、前記終端領域において前記第1半導体層の上部に設けられ、前記セル領域を囲んでいる。前記絶縁膜は、前記半導体部分上に設けられている。前記第1導電部材は、前記絶縁膜を介して前記第1ガードリング層と離隔して設けられている。前記第1導電部材の前記終端側の端縁は、前記ガードリング層の前記終端側の端縁よりも前記終端側に位置している。前記第1導電部材の前記セル領域側の端縁は、前記第1ガードリング層の前記セル領域側の端縁の直上域よりも前記終端側であって前記第1ガードリング層の前記終端側の端縁の直上域までの間に位置している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図2図1の領域Aを示す拡大平面図である。
図3図2に示すB-B'線による断面図である。
図4図3の領域Cを示す拡大断面図である。
図5】(a)は、横軸に絶縁膜中の正電荷面密度をとり、縦軸に耐圧をとって、絶縁膜中の正電荷の増加による耐圧の変化を示すグラフであり、(b)は、横軸に絶縁膜中の正電荷面密度をとり、縦軸に絶縁膜内の電界強度の最大値をとって、絶縁膜中の正電荷の増加による絶縁膜内の最大電界強度の変化を示すグラフである。
図6】(a)は、第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す拡大平面図であり、(b)は、(a)に示すD-D’線による断面図である。
図7】第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す拡大平面図である。
図8】(a)は、図7に示すF-F’線による断面図であり、(b)は、図7に示すG-G’線による断面図である。
図9】第2実施形態に係る半導体装置を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。さらに、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。図2は、図1の領域Aを示す拡大平面図である。図3は、図2に示すB-B’線による断面図である。図4は、図3の領域Cを示す拡大断面図である。図1図3は、配線層が省略されている。図2は、後述する保護膜41が省略されている。
【0009】
本実施形態に係る半導体装置101は、例えば、鉄道車両等の車両に供給する電流を制御するために用いられ、数千Vの電圧が印加される。半導体装置101は、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor-Field-Effect-Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)である。
【0010】
図1図3に示すように、半導体装置101には、電流量を制御するセル領域CRと、その周囲に配置された終端領域ERが設定されている。図1図3においては、二点鎖線より内側の領域がセル領域CRであって、二点鎖線より外側の領域が終端領域ERである。終端領域ERにおいて、セル領域CR側をセル側CSといい、ダイシングラインがある外側を終端側ESという。
【0011】
図1図3に示すように、半導体装置101は、積層構造を持ち、その形状は略直方体形状である。半導体装置101は、概略的には、半導体部分10と、第1電極21と、第2電極22と、導電部材50と、終端電極28と、絶縁膜31と、保護膜41と、を有する。
第1電極21は、半導体装置101の底面全域に設けられ、略平坦な板形状である。第1電極21は、例えばドレイン電極である。
半導体部分10は、第1電極21上に設けられており、略直方体形状である。図3に示すように、半導体部分10は、第1半導体層11と、第2半導体層12と、ガードリング層13を含む。半導体部分10は、例えば、炭化シリコン又は窒化ガリウム(GaN)を含む。
【0012】
第1半導体層11は、第1導電形であり、例えばn形の半導体からなる。図3に示すように、第1半導体層11は、下層半導体層11cと、ベース半導体層11aと、終端半導体層11bとを有する。下層半導体層11cは、セル領域CR及び終端領域ERにおいて第1電極21上に設けられ、第1電極21に接している。下層半導体層11cは、例えばドレイン側半導体層である。下層半導体層11cは、例えばn形の半導体からなる。なお、「n形」とは、「n形」よりもキャリア濃度が高いことを示す。
【0013】
ベース半導体層11aは、セル領域CR及び終端領域ERにおいて下層半導体層11cの上に設けられている。ベース半導体層11aは、例えばn形の半導体からなる。終端半導体層11bは、終端領域ERにおいてベース半導体層11a上に設けられる。終端半導体層11bは、セル領域CRを囲む枠状に形成されている。終端半導体層11bは、半導体装置101の終端側ESに設けられ、例えば、半導体装置101の外縁に沿って配置されている。終端半導体層11bは、例えばn形の半導体からなる。
【0014】
図3に示すように、第2半導体層12は、セル領域CRにおいてベース半導体層11a上に設けられている。第2半導体層12の終端側ESの一部は、終端領域ERに配置されている。第2半導体層12は、第2導電形であり、例えばp形である。第2半導体層12は、例えばソース側半導体層である。
【0015】
図2図3に示すように、ガードリング層13は、例えばガードリング(Guard Ring)であり、終端領域ERにおける耐圧を向上させるものである。ガードリング層13は、終端領域ERにおいてベース半導体層11aの上に、複数、例えば4つ設けられている。ガードリング層13は、上面が絶縁膜31に接し、上面以外の表面がベース半導体層11aに接している。ガードリング層13は、第2導電形であり、例えばp形である。
【0016】
図1図3に示すように、複数のガードリング層13は、平面視において大きさが異なる略相似形の枠形状であり、セル領域CRを囲むように同心状に配置されている。複数のガードリング層13は、隣り合う2つのガードリング層13において、終端側ESのガードリング層13がセル側CSのガードリング層13を囲むように配置されている。
【0017】
図3に示すように、絶縁膜31は、半導体部分10上に設けられ、半導体部分10の上面に接している。具体的には、絶縁膜31は、第2電極22と終端電極28が半導体部分10に接している部分以外の半導体部分10の上面を覆っている。絶縁膜31は、シリコン及び酸素(O)を含み、例えばシリコン酸化物(SiO)を含んでいる。
【0018】
図2図3に示すように、第2電極22は、セル領域CRの全体、及び、終端領域ERのセル側CSの部分において、半導体部分10上に設けられている。第2電極22は、例えばソース電極である。図3に示すように、第2電極22は、第2半導体層12上に設けられている。第2電極22の下面は、セル領域CRにおいては第2半導体層12に接しており、終端領域ERにおいては絶縁膜31に接している。
【0019】
図1図3に示すように、終端電極28は、終端領域ERにおいてセル領域CRを囲う略枠形である。図3に示すように、終端電極28は、絶縁膜31上に設けられており、下面から下に延びて終端半導体層11b上に接している。終端電極28は、下層半導体層11c、ベース半導体層11a、及び、終端半導体層11bを介して第1電極21に接続されるため、第1電極21と略等電位となる。
【0020】
導電部材50は、例えば、チタン(Ti)またはポリシリコン(Si)を含んでいる。図1図3に示すように、導電部材50は、終端領域ERにおいて絶縁膜31の上に、例えば4つ設けられている。導電部材50は、下面が絶縁膜31に接し、下面以外の表面が、保護膜41に接している。導電部材50は、絶縁膜31を介してガードリング層13から離隔し、例えば、電気的に浮遊している。
【0021】
図3に示すように、上方から見て、各導電部材50は、絶縁膜31を介して対応するガードリング層13をそれぞれ覆っている。これにより、複数の導電部材50は、終端領域ERにおいて複数のガードリング層13の上方において断続的に導電性の領域を形成している。
【0022】
図1図3に示すように、導電部材50は、終端領域ERにおいてセル領域CRを囲むように設けられた略枠形である。また、図2に示すように、一部の終端領域ERについて見ると、複数の導電部材50は、セル領域CRを囲むように延設され、第1方向E1に配列されている。第1方向E1は、平面視においてセル領域CRの外周に直交する方向である。なお、導電部材50は、セル領域CRを囲む略枠形に限らない。たとえば、導電部材50は、セル領域CRを囲む1つのガードリング層13に沿って配置された複数の略短冊状のものであってもよい。
【0023】
保護膜41は、絶縁膜31上であって、導電部材50の上に設けられている。保護膜41は、例えばポリイミド(PI)を含んでいる。本実施形態においては、導電部材50と半導体部分10の間には、絶縁膜31が設けられているが、更に保護膜41も設けられていてもよい。
【0024】
以下に、導電部材50とガードリング層13の位置関係について更に説明する。
図3図4に示すように、導電部材50は、セル側部分Wcと、終端側部分Weからなる。セル側部分Wcは、ガードリング層13の直上域に位置する。セル側部分Wcは、絶縁膜31を介してガードリング層13と離隔している。セル側部分Wcは、上方から見て、ガードリング層13の終端側部分Deを覆っている。終端側部分Weは、導電部材50の終端側端縁50eを含む終端側ESの部分であって、ガードリング層13の直上域に位置しない。終端側部分Weは、上方から見てガードリング層13を覆っていない。
【0025】
ガードリング層13は、セル側端縁13cを含むセル側部分Dcと、終端側端縁13eを含む終端側部分Deからなる。セル側部分Dcは、導電部材50に覆われていない。終端側部分Deは導電部材50のセル側部分Wcの直下域に位置する。終端側部分Deの第1方向E1の長さは、導電部材50のセル側部分Wcの第1方向E1の長さと同一である。尚、第1方向E1におけるガードリング層13の長さが、ガードリング層13の厚さ方向において異なる場合は、例えば、最大となる長さを第1方向E1におけるガードリング層13の長さとする。また、第1方向E1における導電部材50の長さが、導電部材50の厚さ方向において異なる場合は、例えば、最大となる長さを第1方向E1における導電部材50の長さとする。複数の導電部材50の間には、それぞれ間隙Sがある。導電部材50とガードリング層13の上下方向における間には、間隙Hがある。間隙Hは、絶縁膜31の厚さに相当する。
【0026】
導電部材50は、セル側CSに位置する端縁50cと、終端側ESに位置する端縁50eを有する。ガードリング層13は、セル側CSに位置する端縁13cと、終端側ESに位置する端縁13eを有する。導電部材50の終端側端縁50eは、ガードリング層13の終端側端縁13eよりも終端側ESに位置する。また、導電部材50のセル側端縁50cは、ガードリング層13のセル側端縁13cの直上域よりも終端側ESであって終端側端縁13eの直上域までの間に位置する。これにより、上方から見て、各導電部材50におけるセル側CSの部分Wcは、対応するガードリング層13の終端側ESの部分Deを覆っている。導電部材50におけるセル側部分Wcは、少なくともセル側端縁50cを含んだ部分である。
【0027】
図4に示すように、第1導電部材50の終端側部分Weとベース半導体層11aとの間には、第1ガードリング層13が設けられていない。第1導電部材50のセル側部分Wcとベース半導体層11aとの間には、第1ガードリング層13が設けられている。
【0028】
本実施形態に係る半導体装置101は、MOSFETではなく他の高耐圧の半導体装置であってもよい。例えば、半導体装置101は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やFRD(Fast Recovery Diode:高速整流素子)などの高耐圧の半導体装置であってもよい。
【0029】
また、本実施形態においては、ガードリング層13と同数の導電部材50が、ガードリング層13の上方にそれぞれ設けられて、断続的な導電領域が形成されているが、これに限らない。例えば、4つのガードリング層13のうちの1~3つのガードリング層13の上に、1~3つの導電部材50を上述の位置関係になるように配置されてもよい。
【0030】
以下に、本実施形態に係る半導体装置101の動作について説明する。
本実施形態に係る半導体装置101においては、半導体部分10が炭化シリコンを含むため、セル領域CRにおいて高い耐圧を実現することができる。このため、終端領域ERにおいても、高い耐圧が要求される。半導体装置101は、封止樹脂内に配置される。封止樹脂は、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂またはシリコーン樹脂などのゲルである。
【0031】
図3図4に示すように、導電部材50を終端領域ERに配置することにより、例えば封止樹脂に含まれる外部電荷等からの外的な影響を抑制している。
【0032】
導電部材50は、ガードリング層13に接続されておらず、例えば電気的に浮遊している。よって、導電部材50とガードリング層13は、通常は異なる電位になっている。このため、導電部材50とガードリング層13の周囲におけるベース半導体層11a、絶縁膜31、及び、保護膜41においては、セル領域CRの電流制御によって電位が変化する電位分布が存在し、等電位線が発生する。
以下、説明の便宜上、導電部材50のセル側部分Wcとガードリング層13の終端側部分Deの間の領域を、境界領域Ibとする。境界領域Ibの上下方向の長さは、間隙Hの長さと同じである。境界領域Ibに接し境界領域Ibよりも終端側ESの領域と、導電部材50に接し導電部材50よりも終端側ESの領域と、ガードリング層13に接しガードリング層13よりも終端側ESの領域を、第1領域Ieとする。境界領域Ibに接し境界領域Ibよりもセル側CSの領域と、導電部材50に接し導電部材50よりもセル側CSの領域であって、ガードリング層13のセル側部分Dcの直上域に位置する領域を、第2領域Icとする。
【0033】
半導体装置101は、セル領域CRにおいて逆バイアスがかけられた時に、ガードリング層13の終端側ESの下方において電界が強くなる。これにより、高エネルギーになった正孔が飛び出して絶縁膜31に侵入する。絶縁膜31に侵入した正孔が絶縁膜31中にある正孔捕獲準位(ホール・トラップ)に捕獲される。このホール・トラップの準位が深いと正孔は容易に放出されないため、正孔は固定電荷とみなされるようになる。この正の固定電荷によって、半導体部分10の電子が上面に引き寄せられ、第1領域Ieにおいて電界強度が高まっていく。また、絶縁膜31に蓄積した正電荷により、例えばp形であるガードリング層13の不純物が排斥され、ガードリング層13の実効的不純物濃度が低下する。ガードリング層13の不純物濃度の低下により、第1領域Ieにある等電位線L1が、ガードリング層13に近接し、半導体装置101の耐圧低下や絶縁膜31の破壊が生じる虞がある。
【0034】
以下に、本実施形態に係る半導体装置101の効果について説明する。
本実施形態に係る半導体装置101によれば、例えば電気的に浮遊している導電部材50を、半導体部分10の上部に形成されたガードリング層13の上に設けることにより、外部電荷の影響を抑制する。導電部材50は、例えば電気的に浮遊し、絶縁膜31を介してガードリング層13と離隔し、導電部材50の終端側端縁50eをガードリング層13の終端側端縁13eよりも終端側ESに配置し、セル側端縁50cをガードリング層13のセル側端縁13cよりも終端側ESであって終端側端縁13eの直上域までの間に配置している。すなわち、本願実施形態の半導体装置101は、導電部材50の終端側端縁50eが終端側ESに張り出しているため、電圧を分担し、等電位線L1のガードリング層13への近接を抑制する。したがって、半導体装置101は、絶縁膜31へのホットキャリア注入による耐圧の低下を抑制することができる。
【0035】
さらに、第1領域Ieの電界強度が一定以上になると、第1領域Ieにある等電位線L1は、境界領域Ibと第2領域Icにおける等電位線L2に切り替わる。このことから、第1領域Ieにおける電界の高まりを抑え、半導体部分10と絶縁膜31の絶縁破壊を抑制できる。また、第1領域Ieにおける電界強度を緩和することにより、絶縁膜31へのさらなるホットキャリアの注入を抑制できる。以上より、本実施形態の半導体装置101は、終端領域ERにおいて耐圧を高め、絶縁膜31の絶縁破壊を抑制できる。
【0036】
さらにまた、ガードリング層13のセル側部分Dcの直上域に導電部材50を配置しないため、導電部材50のセル側CSにおける電界集中を緩和している。
以上のように、半導体装置101は、高い電界が終端領域ERに発生したとしても、絶縁膜31の絶縁破壊を抑制し、かつ、終端領域ERの耐圧の低下を抑制できる。
【0037】
(試験例)
以下、本実施形態に係る半導体装置101による耐圧と絶縁膜内の最大電界について、試験例を用いて説明する。
図5(a)は、横軸に絶縁膜中の正電荷面密度をとり、縦軸に耐圧をとって、絶縁膜中の正電荷の増加による耐圧の変化を示すグラフである。
図5(b)は、横軸に絶縁膜中の正電荷面密度をとり、縦軸に絶縁膜内の電界強度の最大値をとって、絶縁膜中の正電荷の増加による絶縁膜内の最大電界強度の変化を示すグラフである。
【0038】
試料1は、ガードリング層13と同一幅のガードリング層を有しているが、導電部材が設けられなかったものである。試料2は、ガードリング層13と同一幅のガードリング層を有し、ガードリング層13の上面に接続された導電部材がガードリング層の上に設けられたものである。試料3は、本実施形態に相当し、フローティングの導電部材50がガードリング層13よりも終端側にずれて配置されたものである。比較のために、試料1~3において、ガードリング層並びに導電部材及び導電部材の数並びに幅及び厚みは同等であり、その他の構成も同等にした。
【0039】
図5(a)に示すように、試料1~3は、絶縁膜中にホットキャリアが注入されていない状態、すなわち絶縁膜中の正電荷面密度が0[a.u.]のときは、同一の耐圧を示している。試料1は、ホットキャリアが注入され、絶縁膜中の正電荷面密度が4[a.u.]と、6[a.u.]において、耐圧が低下した。
試料2も、ホットキャリア注入により正電荷面密度が6[a.u.]において、耐圧が低下した。
試料3は、正電荷面密度が6[a.u.]においても耐圧の低下はほとんどみられなかった。従って、本実施形態における試料3は、ホットキャリア注入による耐圧変動が抑制され、耐圧が高かった。
【0040】
図5(b)に示すように、試料1~3は、絶縁膜中の正電荷面密度が0[a.u.]のときに、それぞれ絶縁膜中の電界強度の最大値が異なっていた。試料1が最も低く、試料2は試料1よりやや高く、試料3はこれらより高かった。試料1と試料2は、絶縁膜中の正電荷面密度が0~6[a.u.]の範囲において略同一の増加率によって増加した。試料3は、正電荷面密度が2[a.u.]において低下して試料2と同じになり、4[a.u.]において僅かに上昇して試料1と同じになり、6[a.u.]において僅かに上昇したが、試料1および試料2よりも低かった。結果として、試料3は、正電荷面密度が4[a.u.]と6[a.u.]において絶縁膜内の電界強度の最大値が最も低くなった。また、試料3は、正電荷面密度が2~6[a.u.]において、絶縁膜中の電界強度の最大値の変位幅が最も小さかった。したがって、本実施形態における試料3は、ホットキャリア注入によって絶縁膜中の正電荷面密度が増えても絶縁膜における電界を低くできた。
以上により、本実施形態に係る半導体装置は、耐圧が良好であった。
【0041】
(第1実施形態の第1変形例)
本変形例に係る半導体装置102は、第1実施形態におけるガードリング層13が例えば7個設けられており、導電部材50が例えば6個設けられている。複数のガードリング層13の第1方向E1の間隔は、セル側CSにおいて狭く、終端側ESにおいて広い。セル側CSに配列された導電部材50は、ガードリング層13に対して第1実施形態とは異なる位置関係で配置されている。以下、本変形例については、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図6(a)は、本変形例に係る半導体装置を示す拡大平面図であり、(b)は、(a)に示すD-D’線による断面図である。図6は、配線層と保護膜41を省略している。
【0042】
以下に、本実施形態における導電部材50とガードリング層13の位置関係について説明する。
図6(b)に示すように、ガードリング層131、132、133、134、135、136、137は、第1方向E1に沿ってこの順に配列されている。ガードリング層131~137の間隔を、間隔t1~t6とする。セル側CSに配列されたガードリング層131~134の間隔t1~t3は、略同一である。終端側ESに配列されたガードリング層134~137の間隔t4~t6は、終端側ESに向かうに従って大きくなる。また、セル側CSにおける間隔t1~t3は、終端側ESにおける間隔t4~t6よりも狭い。
【0043】
図6(a)、(b)に示すように、導電部材51、52、53、54、55、56は、第1方向E1に沿ってこの順に配列されている。導電部材51~56は、第1方向E1に平行な間隔r1、r2、r3、r4、r5を有して配列されている。セル側CSに配列された導電部材51~53の間隔r1、r2は、略同一である。間隔r1、r2は、例えば、導電部材51~53の第1方向E1の長さよりもやや短く、例えば、間隔t1~t3よりも広い。導電部材53、54の間隔r3は、間隔r1、r2よりも広い。導電部材54、55の間隔r4は、間隔r3よりも狭く、導電部材55、56の間隔r5は、間隔r3、r4よりも広い。
【0044】
最もセル側CSに位置する導電部材51は、最もセル側CSに位置するガードリング層131の直上域に設けられ、第1方向E1にずらして配置されていない。
導電部材52(例えば、特許請求の範囲における第1導電部材に相当する)は、導電部材51の終端側ESに配置されている。導電部材52は、ガードリング層132(例えば、特許請求の範囲における第1ガードリング層に相当する)に対して第1実施形態と同様の位置関係で配置されている。つまり、上方から見て、導電部材52におけるセル側CSの部分は、ガードリング層132の終端側ESの部分を覆っている。また、導電部材52の終端側ESの部分は、ガードリング層132の終端側ESに位置するガードリング層133のセル側CSの部分を覆っているが、ガードリング層133の終端側ESの部分は、他の導電部材に覆われていない。
【0045】
導電部材53(例えば、特許請求の範囲における第2導電部材に相当する)は、導電部材52の終端側ESに位置する。導電部材53は、上方から見て、絶縁膜31を介してガードリング層134(例えば特許請求の範囲における第3ガードリング層に相当する)の直上域を概ね覆っており、第1実施形態において説明した位置関係にはなっていない。
終端側ESのガードリング層135と導電部材54、ガードリング層136と導電部材55、ガードリング層137と導電部材56は、それぞれ、第1実施形態と同様の位置関係で配置されている。
【0046】
以下に、本変形例に係る半導体装置102の効果について説明する。
ガードリング層131~137をセル側CSにおいて間隔t1~t3を小さくして配置することにより、終端領域ERにおけるセル側CSの部分の耐圧を高めている。また、セル側CSのガードリング層131~134上に導電部材51~53を間隔r1、r2を空けて略均一に設けている。これにより、ガードリング層131~134の上に断続的な導電領域を形成し、耐圧を高め、外部電荷からの影響を抑制している。
【0047】
また、導電部材51~53において中央に位置する導電部材52とガードリング層132を第1実施形態の位置関係で配置して、半導体部分10と絶縁膜31の信頼性を高めている。また、導電部材52の終端側ESの部分を、ガードリング層133のセル側CSの部分の上に配置して、ガードリング層133周辺の耐圧を高めている。終端側ESにおいて広い間隔で配列された導電部材54~56とガードリング層135~137は、第1実施形態の位置関係で配置されている。以上より、本変形例の半導体装置102は、耐圧が向上し、絶縁膜31及び半導体部分10の絶縁破壊などを抑制できる。
【0048】
本変形例における上記以外の構成、動作、及び効果は、第1実施形態と同様である。
【0049】
(第1実施形態の第2変形例)
本変形例に係る半導体装置103は、第1変形例と同様に、ガードリング層131~137が例えば7個設けられ、ガードリング層131~137における間隔t1~t6は、終端側ESのガードリング層134~137の間隔t4~t6よりもセル側CSのガードリング層131~134の間隔t1~t3の方が狭い。一方、第1変形例とは異なり、セル側CSに配列された導電部材51~55は、上方から見て千鳥格子状に配置されている。
【0050】
図7は、本変形例に係る半導体装置103を示す拡大平面図である。図8(a)は、図7に示すF-F’線による断面図であり、(b)は、図7に示すG-G’線による断面図である。図7においては、配線層と保護膜41を省略している。図7に示すように、第2方向E2は、平面上において第1方向E1と直交する方向である。第2方向E2は、例えばセル領域CRの外周に平行な方向である。
【0051】
図7に示すように、ガードリング層131、132の間隔t1と、ガードリング層132、133の間隔t2と、ガードリング層133、134の間隔t3は、略同一であり、間隔t4~t6よりも狭い。ガードリング層134、135の間隔t4と、ガードリング層135、136の間隔t5と、ガードリング層136、137の間隔t6は、終端側ESに位置するに従って大きくなる。
【0052】
以下に、本変形例における導電部材51~55の千鳥格子状の位置関係について、導電部材53~55とガードリング層133~135を例に説明する。
図7図8(a)に示すように、導電部材53~55の中で最もセル側CSに設けられた導電部材53は、ガードリング層133~136の中で最もセル側に設けられたガードリング層133の上に第1実施形態の位置関係で配置されている。また、導電部材53は、ガードリング層133の終端側ESに配列されたガードリング層134のセル側端縁134cの直上域にも配置されている。導電部材53は、少なくとも第1部分53aと第2部分53bに分離している。第2部分53bは、第1部分53aの第2方向E2側に配置されている。
【0053】
図7図8(b)に示すように、導電部材54は、ガードリング層134の上に第1実施形態の位置関係で配置されている。導電部材54は、ガードリング層134の終端側ESに配列されたガードリング層135のセル側端縁135cの直上域にも位置している。導電部材54は、少なくとも第1部分54aと、第2部分54bに分離している。第2部分54bは、第1部分54aの第2方向E2側に配置されている。
【0054】
図7図8(a)に示すように、導電部材55は、ガードリング層135の上に第1実施形態の位置関係で配置されている。導電部材55は、ガードリング層135の終端側ESに位置するガードリング層136には配置されていない。導電部材55は、少なくとも第1部分55aと、第2部分55bに分離している。第2部分55bは、第1部分55aの第2方向E2側に配置されている。
【0055】
図7に示すように、導電部材55(例えば、特許請求の範囲において第3導電部材に相当する)は、導電部材53(例えば、特許請求の範囲において第1導電部材に相当する)の第1方向E1に配列されている。具体的には、導電部材55の第1部分55aは、導電部材53の第1部分53aの第1方向E1に配置され、導電部材55の第2部分55bは、導電部材53の第2部分53bの第1方向E1に配置されている。
【0056】
導電部材54(例えば、特許請求の範囲において第2導電部材に相当する)は、導電部材53と導電部材55の間隙に対して第2方向E2にずれて配置されている。詳細には、導電部材54の第1部分54aは、導電部材53の第1部分53aと導電部材55の第1部分55aの間隙から第2方向E2にずれて配置されている。また、導電部材54の第2部分54bは、導電部材53の第2部分53bと導電部材55の第2部分55bの間隙から第2方向E2にずれて配置されている。
【0057】
また、導電部材53と導電部材54の間隔s3と、導電部材54と導電部材55の間隔s4は、互いの対角位置にある。したがって、図7に示すように、導電部材53~55間の隣接箇所が間隔s3、s4において対角位置にあるため、間隔s3、s4を大きくとれなくても電界強度などに及ぼす影響は小さい。また、導電部材54の第1部分54aを第2方向E2に適宜ずらして配置すれば、間隔s3、s4における導電部材53~55間の距離を調整できる。また、導電部材53の第1部分53aと導電部材55の第1部分55aの間隙に、導電部材54の第1部分54aが隣接しており、信頼性を良好にしている。
セル側CSに配列された他の導電部材51、52及びガードリング層131、132、133も、導電部材53、54、55及びガードリング層133~135と同様に設けられている。
【0058】
以下に、本変形例に係る半導体装置103の効果について説明する。
終端側ESよりも間隔が狭いセル側CSのガードリング層131~135上に導電部材51~55を分離して千鳥格子状に設けている。これにより、セル側CSの導電部材51~55の全てに第1実施形態の位置関係を採用することができ、半導体装置103の信頼性を高めることができる。また、ガードリング層131~135の上に導電部材51~55によって形成された断続的な導電領域を設けることにより、耐圧を高め、外部電荷からの影響を抑制する。また、終端側ESに設けられた導電部材56、57には、ガードリング層136、137に対して第1実施形態の位置関係が採用されている。以上より、本変形例の半導体装置102は、例えば、耐圧が向上し、絶縁膜31及び半導体部分10の絶縁破壊などを抑制できる。
【0059】
尚、本変形例においては、導電部材51、52、53の分離された第1部分51a、52a、53aと第2部分51b、52b、53bの形状は同一であるが、当然にこれに限られず、例えば分離個数や、第2方向E2の長さなどは、適宜設定できる。また、間隔s1、s2、s3の長さも、それぞれ異なっていてもよい。
【0060】
本変形例における上記以外の構成、動作、及び効果は、第1実施形態と同様である。
【0061】
(第2実施形態)
本実施形態に係る半導体装置104は、ガードリング層13上に導電板材60が更に設けられている。
図9は、本実施形態に係る半導体装置104を示した拡大断面図である。図9は、図4と同様な箇所であって、第1方向E1に平行な断面を示している。
【0062】
導電板材60は、例えば、チタンまたはポリシリコンを含んでいる。図9に示すように、導電板材60は、終端領域においてガードリング層13の上に設けられている。導電板材60は、下面がガードリング層13に接してガードリング層13と略同一の電位、例えばソース電位(0V)になっている。導電板材60は、下面以外の表面が絶縁膜31で覆われている。導電板材60は、導電部材50と絶縁膜31を介して離隔している。導電板材60と導電部材50の間隙は、間隙H2である。
【0063】
導電板材60は、ガードリング層13のセル側部分Dcの上に設けられている。導電板材60の第1方向長さは、ガードリング層13のセル側部分Dcの第1方向長さと略同一である。導電板材60のセル側端縁60cは、ガードリング層13のセル側端縁13cの直上域に配置されることが望ましいが、ガードリング層13のセル側端縁13cよりも僅かにセル側CSまたは終端側ESに配置されていてもよい。
【0064】
導電板材60の終端側端縁60eは、導電部材50のセル側端縁50cの直下域に配置されることが好ましいが、セル側端縁50cよりもわずかにセル側CSに配置してもよく、この場合、等電位線を第1領域Ieから第2領域Icに逃がし易くなる。また、導電板材60の終端側端縁60eは、導電部材50のセル側端縁50cよりも僅かに終端側ESに配置されてもよい。
【0065】
以下に、本実施形態に係る半導体装置104の効果について説明する。
本実施形態に係る半導体装置104によれば、導電部材50に覆われていないガードリング層13のセル側部分Dc上に導電板材60を設けている。これにより、導電部材50に覆われていないガードリング層13のセル側部分Dcへの外部電荷からの影響を抑制することができる。また、このように導電板材60を配置することにより、第1実施形態と同様に、間隙H2を通って導電部材50のセル側CSに等電位線を逃がし易くしている。以上により、導電部材50の終端側ESにおける電界集中を抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態においては、導電板材60は、ガードリング層13に接しているが、これに限らない。
また、本実施形態においては、複数のガードリング層13は略同一の間隔で設けられているが、これに限らない。例えば、第1実施形態の第1変形例または第2変形例のように配置したガードリング層13と導電部材50において、導電板材60を導電部材50と同様に一部のガードリング層13上に部分的に配置してもよい。
【0067】
本変形例における上記以外の構成、動作、及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0068】
本発明の実施形態によれば、信頼性の向上を可能とする半導体装置を提供することができる。
【0069】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体装置に含まれる半導体部分、ガードリング層、導電部材、及び、導電板材の具体的な構成及び形状や材質等に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
10…半導体部分
11…第1半導体層
11a…ベース半導体層
11b…終端半導体層
11c…下層半導体層
12…第2半導体層
13…ガードリング層
13c…セル側端縁
13e…終端側端縁
21…第1電極
22…第2電極
28…終端電極
31…絶縁膜
41…保護膜
50…導電部材
51、52、53、54、55、56、57…導電部材
50c…セル側端縁
50e…終端側端縁
51a、52a、53a、54a、55a…第1部分
51b、52b、53b、54b、55b…第2部分
60…導電板材
60c…セル側端縁
60e…終端側端縁
101、102、103、104…半導体装置
131~136…ガードリング層
132c、133c、134c…セル側端縁
CR…セル領域
CS…セル側
Dc…セル側部分
De…終端側部分
E1…第1方向
E2…第2方向
ER…終端領域
ES…終端側
H、H2、S…間隙
Ib…境界領域
Ic…第2領域
Ie…第1領域
L1、L2…等電位線
r1、r2、r3、r4、r5…間隔
s1、s2、s3、s4、s5…間隔
t1、t2、t3、t4、t5、t6…間隔
Wc…セル側部分
We…終端側部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9