(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】設計支援装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/18 20200101AFI20240522BHJP
F16L 27/12 20060101ALI20240522BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20240522BHJP
G06F 113/14 20200101ALN20240522BHJP
【FI】
G06F30/18
F16L27/12
G06F30/13
G06F113:14
(21)【出願番号】P 2020162921
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】新子 忠
(72)【発明者】
【氏名】大籔 直孝
(72)【発明者】
【氏名】大道 康之
(72)【発明者】
【氏名】撰 裕喜
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-029955(JP,A)
【文献】特開2016-003666(JP,A)
【文献】特開2001-229216(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103473410(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/18
F16L 27/12
G06F 30/13
G06F 113/14
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配管における継手に第2配管を接続する設計を支援する装置であって、
前記第1配管における設計情報および前記第2配管の設計情報から、(1)前記第2配管に含まれる所定の管、および、(2)前記所定の管における前記第1配管側の口が接続される所定の継手、それぞれの情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報に基づいて算出される判定対象情報と、判定の基準となる判定基準情報と、を比較して、前記所定の管の前記口に関する伸縮継手の要否について判定する判定部と、を備えている、設計支援装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記所定の管の長さを諸元値として、前記所定の継手の種別に応じた算出方法により前記判定対象情報を算出する、請求項1に記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記判定部の判定結果に基づいて前記第2配管の設計情報を更新する更新部を更に備えている、請求項1または2に記載の設計支援装置。
【請求項4】
前記判定部が、前記伸縮継手の追加を必要と判定したときに、前記更新部が、前記第2配管の設計情報を、前記所定の管と前記所定の継手との間に前記伸縮継手が追加された新たな情報に更新する、請求項3に記載の設計支援装置。
【請求項5】
前記更新部は、前記第2配管の設計情報を、前記伸縮継手が追加される分、前記所定の管の長さを短くした新たな情報に更新する、請求項4に記載の設計支援装置。
【請求項6】
前記所定の継手が前記伸縮継手である場合であって、前記判定部が、前記伸縮継手が不要であると判定したときに、前記更新部が、前記第2配管の設計情報を、前記伸縮継手が除外された新たな情報に更新する、請求項3から5のいずれか1項に記載の設計支援装置。
【請求項7】
前記更新部は、前記第2配管の設計情報を、前記伸縮継手が除外される分、前記所定の管の長さを長くした新たな情報に更新する、請求項6に記載の設計支援装置。
【請求項8】
前記更新部の更新結果に関する情報を表示部に出力する出力部を更に備える、請求項3から7のいずれか1項に記載の設計支援装置。
【請求項9】
入力部から、前記更新部の更新の要否の入力を受け付ける第1受付部と、を更に備え、
前記更新部は、前記第1受付部が更新の否の入力を受け付けたときに、前記第2配管の設計情報を元に戻す、請求項8に記載の設計支援装置。
【請求項10】
入力部から、前記第2配管の設計情報の更新の入力を受け付ける第2受付部を更に備え、
前記第2受付部が、前記第2配管に含まれる管に関する設計情報の更新を受け付けたときに、前記判定部が、その管の前記口に関する前記伸縮継手の配置について判定する、請求項1から9のいずれか1項に記載の設計支援装置。
【請求項11】
前記判定部は、前記第2配管に含まれる複数の前記管のうち、前記第1配管側に位置する前記管から順に、その管の前記口に関する前記伸縮継手の配置について判定する、請求項1から9のいずれか1項に記載の設計支援装置。
【請求項12】
前記第1配管の設計情報および前記第2配管の設計情報に基づいて施工条件を算出する算出部を更に備え、
前記算出部は、施工時の温度条件に関する情報に基づいて、前記伸縮継手に対する前記所定の管の差込量を算出する、請求項1から11のいずれか1項に記載の設計支援装置。
【請求項13】
前記第1配管が、排水用の縦管であり、前記第2配管が、排水用の横管である、請求項1から12のいずれか1項に記載の設計支援装置。
【請求項14】
第1配管における継手に第2配管を接続する設計を支援する装置であって、
前記第1配管における設計情報および前記第2配管の設計情報から、(1)前記第2配管に含まれる所定の管、および、(2)前記所定の管における前記第1配管側の口が接続される所定の継手、それぞれの情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した情報に基づいて算出される判定対象情報と、判定の基準となる判定基準情報と、を比較して、前記所定の管の前記口に関する伸縮継手の要否について判定する判定部と、を備えている設計支援装置として、コンピュータを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に記載の立て管施工支援システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、立て管などの配管構造においては、管の熱伸縮を考慮して、継手の一部に、伸縮継手が用いられる。伸縮継手は、管の熱伸縮を許容する継手である。伸縮継手が適切に配置されていない場合、管の熱伸縮時に管に予期せぬ応力などが生じ、配管構造においてわれ等が生じるおそれがある。
しかしながら、前記従来のシステムでは、例えば、設計者が配管構造を設計した場合や、コンピュータの設計結果に設計者が変更を加えた場合などに、伸縮継手の配置を忘れたり、伸縮継手を過剰に設置したりするおそれがある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、伸縮継手を適切に配置することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
<1>本発明の一態様に係る設計支援装置は、第1配管における継手に第2配管を接続する設計を支援する装置であって、前記第1配管における設計情報および前記第2配管の設計情報から、(1)前記第2配管に含まれる所定の管、および、(2)前記所定の管における前記第1配管側の口が接続される所定の継手、それぞれの情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報に基づいて算出される判定対象情報と、判定の基準となる判定基準情報と、を比較して、前記所定の管の前記口に関する伸縮継手の要否について判定する判定部と、を備えている。
【0007】
判定対象情報と判定基準情報とを比較して、判定部が、所定の管の口に関する伸縮継手の要否について判定する。ここで判定対象情報が、判定対象となる管およびその管に接続される継手の情報に基づいて算出される。そのため、判定対象となる管について、伸縮継手が必要であるか否かを適切に判定することができる。したがって、判定部の判定結果を参照することで、例えば、第2配管において伸縮継手の配置が漏れること等を防止し、第2配管において伸縮継手を適正に配置することができる。
【0008】
<2>上記<1>に係る設計支援装置では、前記判定部は、前記所定の管の長さを諸元値として、前記所定の継手の種別に応じた算出方法により前記判定対象情報を算出する、構成を採用してもよい。
【0009】
判定部が、所定の管の長さを諸元値として、所定の継手の種別に応じた算出方法により判定対象情報を算出する。したがって、判定部による判定の精度を高めることができる。
【0010】
<3>上記<1>または<2>に係る設計支援装置では、前記判定部の判定結果に基づいて前記第2配管の設計情報を更新する更新部を更に備えている、構成を採用してもよい。
<4>上記<3>に係る設計支援装置では、前記判定部が、前記伸縮継手の追加を必要と判定したときに、前記更新部が、前記第2配管の設計情報を、前記所定の管と前記所定の継手との間に前記伸縮継手が追加された新たな情報に更新する、構成を採用してもよい。
<5>上記<4>に係る設計支援装置では、前記更新部は、前記第2配管の設計情報を、前記伸縮継手が追加される分、前記所定の管の長さを短くした新たな情報に更新する、構成を採用してもよい。
<6>上記<3>から<5>のいずれか1項に係る設計支援装置では、前記所定の継手が前記伸縮継手である場合であって、前記判定部が、前記伸縮継手が不要であると判定したときに、前記更新部が、前記第2配管の設計情報を、前記伸縮継手が除外された新たな情報に更新する、構成を採用してもよい。
<7>上記<6>に係る設計支援装置では、前記更新部は、前記第2配管の設計情報を、前記伸縮継手が除外される分、前記所定の管の長さを長くした新たな情報に更新する、構成を採用してもよい。
【0011】
更新部が、判定部の判定結果に基づいて第2配管の設計情報を更新する。したがって、例えば、第2配管における伸縮継手の配置を、設計者による作業を伴わず自動的に適正に変更することができる。
なお更新部が、第2配管の設計情報を、伸縮継手が追加される分、所定の管の長さを短くした新たな情報に更新したり、第2配管の設計情報を、伸縮継手が除外される分、所定の管の長さを長くした新たな情報に更新したりすることで、単に伸縮継手を適正に配置するだけに留まらず、配管構造全体としての適正な設計を実現することができる。
【0012】
<8>上記<3>から<7>のいずれか1項に係る設計支援装置では、前記更新部の更新結果に関する情報を表示部に出力する出力部を更に備える、構成を採用してもよい。
<9>上記<8>に係る設計支援装置では、入力部から、前記更新部の更新の要否の入力を受け付ける第1受付部と、を更に備え、前記更新部は、前記第1受付部が更新の否の入力を受け付けたときに、前記第2配管の設計情報を元に戻す、構成を採用してもよい。
【0013】
出力部が、更新部の更新結果に関する情報を表示部に出力する。したがって、更新部による設計情報の自動的な更新があった場合であっても、設計者が更新の事実を確認することができる。
なお更新部が、第1受付部が更新の否の入力を受け付けたときに、第2配管の設計情報を元に戻す場合、例えば、特殊な事情で伸縮継手を配置しない配管構造などであっても、更新部による設計情報の自動的な更新を容易に元に戻すことができる。
【0014】
<10>上記<1>から<9>のいずれか1項に係る設計支援装置では、入力部から、前記第2配管の設計情報の更新の入力を受け付ける第2受付部を更に備え、前記第2受付部が、前記第2配管に含まれる管に関する設計情報の更新を受け付けたときに、前記判定部が、その管の前記口に関する前記伸縮継手の配置について判定する、構成を採用してもよい。
【0015】
第2受付部が、第2配管に含まれる管に関する設計情報の更新を受け付けたときに、判定部が、その管の口に関する伸縮継手の配置について判定する。したがって、例えば、設計者が第2配管において新たな管を設計する都度、判定部による判定を実施することができる。
【0016】
<11>上記<1>から<9>のいずれか1項に係る設計支援装置では、前記判定部は、前記第2配管に含まれる複数の前記管のうち、前記第1配管側に位置する前記管から順に、その管の前記口に関する前記伸縮継手の配置について判定する、構成を採用してもよい。
【0017】
判定部が、第2配管に含まれる複数の管のうち、第1配管側に位置する管から順に、その管の口に関する伸縮継手の配置について判定する。したがって、設計済みの第2配管について、判定部による判定を実施することができる。
【0018】
<12>上記<1>から<11>のいずれか1項に係る設計支援装置では、前記第1配管の設計情報および前記第2配管の設計情報に基づいて施工条件を算出する算出部を更に備え、前記算出部は、施工時の温度条件に関する情報に基づいて、前記伸縮継手に対する前記所定の管の差込量を算出する、構成を採用してもよい。
【0019】
算出部が、施工時の温度条件に関する情報に基づいて、伸縮継手に対する所定の管の差込量を算出する。したがって、外気温が異なる夏場や冬場などにおいても、適正な施工を実現し易くすることができる。
【0020】
<13>上記<1>から<12>のいずれか1項に係る設計支援装置では、前記第1配管が、排水用の縦管であり、前記第2配管が、排水用の横管である、構成を採用してもよい。
<14>本発明の一態様に係るプログラムは、第1配管における継手に第2配管を接続する設計を支援する装置であって、前記第1配管における設計情報および前記第2配管の設計情報から、(1)前記第2配管に含まれる所定の管、および、(2)前記所定の管における前記第1配管側の口が接続される所定の継手、それぞれの情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した情報と、判定の基準となる判定基準情報と、を比較して、前記所定の管の前記口に関する伸縮継手の要否について判定する判定部と、を備えている設計支援装置として、コンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、伸縮継手を適切に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る設計支援装置が設計を支援する配管構造を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す配管構造に伸縮継手を配置した状態を示す側面図である。
【
図3】
図1に示す配管構造における伸縮継手に管が施工された状態を示す断面図である。
【
図4】
図3に示す断面図であって、熱によって管が伸長している状態を示す断面図である。
【
図5】
図3に示す断面図であって、熱によって管が収縮している状態を示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る設計支援装置が実装する伸縮継手の要否判定を説明するフローチャートである。
【
図7】
図6に示すフローチャートを実施した結果、伸縮継手が適切に設置された配管構造を示す側面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る設計支援装置の制御ブロック図である。
【
図10】
図9に示す設計支援装置を構成する記憶部が記憶する情報であって、(a)は設計情報の一例を示す図であり、(b)は属性情報の一例を示す図である。
【
図11】
図9に示す設計支援装置を構成する記憶部が記憶する管の差込量の算出基準情報の一例を示す図である。
【
図12】
図9に示す設計支援装置が実装する、対象とする管についての支援を説明するフローチャートである。
【
図13】
図9に示す設計支援装置が実装する伸縮継手の過剰判定を説明するフローチャートである。
【
図14】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース1の設計過程の第1段階を示す図である。
【
図15】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース1の設計過程の第2段階を示す図である。
【
図16】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース2の設計過程の第1段階を示す図である。
【
図17】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース2の設計過程の第2段階を示す図である。
【
図18】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース2の設計過程の第3段階を示す図である。
【
図19】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース2の設計過程の第4段階を示す図である。
【
図20】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース2の設計過程の第5段階を示す図である。
【
図21】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース2の設計過程の第6段階を示す図である。
【
図22】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース2の設計過程の第7段階を示す図である。
【
図23】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース3の設計過程の第1段階を示す図である。
【
図24】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース3の設計過程の第2段階を示す図である。
【
図25】
図9に示す設計支援装置が実装する、作図完了後における伸縮継手の適正配置の判定を説明するフローチャートである。
【
図26】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース4の設計過程の第1段階を示す図である。
【
図27】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース4の設計過程の第2段階を示す図である。
【
図28】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース4の設計過程の第3段階における第1例を示す図である。
【
図29】
図9に示す設計支援装置の表示部に表示される画像の一例であって、ケース4の設計過程の第3段階における第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、
図1から
図29を参照し、本発明の一実施形態に係る設計支援装置400を説明する。
【0024】
(支援対象の配管構造10)
設計支援装置400は、配管構造10の設計を支援する。設計支援装置400の説明にあたり、この設計支援装置400が対象とする配管構造10について、
図1から
図3を参照して説明する。
本実施形態では、配管構造10は、建物における排水に用いられる。排水としては、例えば、空調設備からのドレン水や、排水設備(例えば、台所、風呂、洗面所、便所)からの生活排水などが挙げられる。
【0025】
なおこのように、本実施形態では、配管構造10として、いわゆる排水配管を例示している。しかしながら、設計支援装置400が対象とする配管構造10は、これに限られない。設計支援装置400が、例えば、建物における給水、給湯に用いられる配管構造10などを支援の対象としてもよい。設計支援装置400が対象とする配管構造10としては、温度が常温(例えば25℃程度)に対して高い流体(例えば湯)、または、低い流体(例えばドレン水)に用いられる構造が例示される。ただし、配管構造10を流れる流体の温度は制限されない。
【0026】
配管構造10は、排水用の縦管20(第1配管)と、排水用の横管30(第2配管)と、を備えている。本実施形態では、建物は、多層階の建物(例えば、いわゆるビルやマンションなど)である。この種の建物では、各階における排水が横管30を通して縦管20に集約され、排水枡、公共桝に排水される。縦管20は、各階のスラブSを鉛直方向に貫通する。横管30は、各階ごとに、例えばスラブSに沿って配置される。1つの縦管20に対して、横管30は複数設けられている。
【0027】
縦管20および横管30はそれぞれ、管11と、継手12と、を含む。管11および継手12(配管構成部材)は、樹脂製である。管11は、いわゆる直管であり、直線状に延びている。継手12は、隣り合う管11同士や、隣り合う管11と継手12とを接続する。
【0028】
縦管20は、継手12として、集合継手13を備えている。集合継手13は、鉛直方向に隣り合う管11同士を接続する。集合継手13には、更に、横管30が接続される。言い換えると、集合継手13は、3本以上の管11を接続する。集合継手13は、上層階から流下する排水と、横管30から流入する排水と、が合流する合流部として機能する。横管30では、縦管20に近いほど下流側となり、縦管20から遠いほど上流側となる。
なお縦管20は、継手12として、後述する伸縮継手15を更に備えていてもよい。
【0029】
横管30は、継手12として、汎用継手14と、伸縮継手15を備えている。
汎用継手14は、2つの管11の間に配置され、これらの管11を接続する。汎用継手14としては、例えば、ソケット14aやエルボ14bやチーズ(不図示)が挙げられる。ソケット14aは、直線形状であり、2つの管11を直線的に接続する。エルボ14bは、屈曲形状であり、2つの管11を曲線的に接続する。チーズは、T字形状であり、直線的に2つの管11を接続するとともに、これらと交差するよう別の管11(3つ目の管11)を接続する。汎用継手14には、集合継手13や伸縮継手15が含まれない。
【0030】
伸縮継手15は、縦管20の集合継手13と管11との間、または、汎用継手14と管11との間、に配置される。伸縮継手15は、集合継手13または汎用継手14と、管11と、を接続する。集合継手13または汎用継手14は、伸縮継手15に対して下流側に位置する。管11は、伸縮継手15に対して上流側に位置する。管11における下流側(縦管20側)の口11aが、伸縮継手15に接続される。
【0031】
管11は、例えば、内部を流れる流体の温度や、外気温の変化などを起因として、熱伸縮する。管11は、熱伸縮することにより、管軸方向に伸縮する。なお、熱伸縮による伸縮量は、配管構造10を流れる流体の温度が高かったり、低かったりするほど、大きくなる。
伸縮継手15は、この伸縮継手15に接続される管11の熱伸縮を許容する。ここで、熱伸縮を許容するとは、管11の熱伸縮時に、管11が伸縮継手15に接触することなく、管11に応力が生じないことを意味する。なお伸縮継手15は、その伸縮継手15に対して上流側に位置する管11の熱伸縮を許容する。
【0032】
図3に示すように、本実施形態では、伸縮継手15の内部に管11の口11aが配置される(差し込まれる)。このとき、(1)管11の口11aと伸縮継手15の内面との間に、管軸方向の隙間を確保しつつ、(2)管11の差込量も、一定量以上確保しておく。上記(1)により、
図4に示すように、例えば、外気温の上昇などを起因として伸長したとしても、管11の口11aが伸縮継手15に接触することがない。上記(2)により、
図5に示すように、例えば、外気温の低下などを起因として収縮したとしても、管11の口11aが伸縮継手15から抜け出ることがない。
【0033】
(伸縮継手15の配置規則)
伸縮継手15は、配管構造10上、必須ではないものの、管11の熱収縮を許容するために有用である。管11が長いほど、熱伸縮量は大きくなる。そのため、熱伸縮対策の観点から好ましい配管構造10を実現するためには、伸縮継手15の要否の判定に、主に管11の長さを考慮することが好ましい。すなわち、管11の長さが長いほど熱伸縮量が大きくなり、伸縮継手15の必要性が増加する。
【0034】
以下では、横管30における管11に対して、伸縮継手15が必要であるか否かについての判定方法の一例を、
図6から
図8に基づいて説明する。なお、
図7および
図8において、横管30に含まれて格子状にハッチングされている伸縮継手15は、以下に示す判定方法を実施した結果、必要と判定された伸縮継手15を意味する。言い換えると、格子状にハッチングされている伸縮継手15は、判定前には配置されていなかった伸縮継手15であり、判定後に追加した伸縮継手15である。その一方、黒塗りのハッチングがされている伸縮継手15は、判定前に設置されていた伸縮継手15である。
【0035】
図6に示すように、まず、管11の下流側に位置する継手12(接続対象)が、集合継手13であるか否かを判定する(ステップS10)。
この判定に関し、まず、管11の下流側に位置する継手12が、集合継手13である場合(ステップS10-Yes)について説明する。なお、この場合に相当する具体的な横管30は、
図7に示す配管構造10の最上階および最上階の下の階の横管30である。
【0036】
この場合、管11の長さが所定の長さ(図示の例では2m)以上であるか否かを判定する(ステップS11)。管11の長さが所定の長さ以上である場合(ステップS11-Yes)、伸縮継手15が必要と判定する(ステップS12)。管11の長さが所定の長さ未満である場合(ステップS11-No)、伸縮継手15が不要と判定する(ステップS13)。
図7に示す配管構造10では、最上階の横管30の長さは2m未満であるため(ステップS11-No)、伸縮継手15が不要と判定する(ステップS13)。一方、最上階の下の階の横管30の長さは2m以上であるため(ステップS11-Yes)、伸縮継手15が必要と判定する(ステップS12)。
【0037】
なおこの場合、伸縮継手15の要否の判定の対象となる情報である判定対象情報は、管11の長さそのものである。伸縮継手15の要否の判定の基準となる判定基準情報(閾値)は、2mである。すなわち、集合継手13に2m以上の長い管11が直接接続されていると、管11が熱伸縮したときに伸縮量が大きくなりすぎ、例えば、管11に熱応力が作用する等のおそれがある。なお判定基準情報は、例えば、経験則に基づいて設定したり、事前試験(実物による試験だけでなく、仮想のシミュレーションによる試験も含む)を実施したりすることで、設定することができる。以下に例示する判定基準情報も同様である。
【0038】
図6に戻り、管11の下流側に位置する継手12が、集合継手13でない場合(ステップS10-No)について説明する。なお、この場合に相当する具体的な横管30は、
図7に示す配管構造10の最下階および最下階の上の階の横管30である。これらの横管30は、いずれも2つの管11を含んでいる。横管30それぞれの2つの管11のうち、上流側に位置する管11について判定する場合、管11の下流側に位置する継手12が、集合継手13でないことになる。
【0039】
この場合、管11の管軸を、管11の下流側の口11aから延長した延長線L上に、伸縮継手15があるか否かを判定する(ステップS14)。なお、延長線L上に伸縮継手15がある場合(ステップS14-Yes)は、
図7に示す配管構造10における最下階の上の階の横管30である。このような場合(ステップS14-Yes)は、(1)判定対象としている管11に対して、下流側に他の管11が直線的に(すなわち、ソケット14aを介して)接続されていて、かつ、(2)他の管11の下流側の口11aに、伸縮継手15(
図7に示す黒塗りのハッチングの伸縮継手15)が接続されている場合である。
【0040】
延長線L上に伸縮継手15がある場合(ステップS14-Yes)、判定対象とする管11から下流側に向けて、伸縮継手15に至るまでに含まれる管11の長さの総和を求める(ステップS15)。この総和には、判定対象となる管11自身の長さも含まれる。
そして、この総和が所定の長さ(例えば6m)以上であるか否かを判定する(ステップS16)。総和が所定の長さ以上である場合(ステップS14-Yes)、伸縮継手15が必要と判定する(ステップS17)。総和が所定の長さ未満である場合(ステップS14-No)、伸縮継手15が不要と判定する(ステップS18)。なお、
図7に示す配管構造10における最下階の上の階の横管30では、総和が6m以上であるため(ステップS14-Yes)、伸縮継手15が必要と判定している(ステップS17)。
【0041】
なおこの場合、伸縮継手15の要否の判定の対象となる判定対象情報は、判定対象とする管11から下流側に向けて、伸縮継手15に至るまでに含まれる管11の長さの総和である。伸縮継手15の要否の判定の基準となる判定基準情報は、6mである。すなわち、延長線L上に伸縮継手15がある場合、判定対象となる所定の管11から下流側に向けて伸縮継手15に至るまでの横管30(横管30の一部)が熱伸縮する影響を、前記伸縮継手15によって吸収する必要がある。この場合、前記総和が6m以上となると、前述の横管30の一部が熱伸縮したときに伸縮量が大きくなりすぎ、伸縮継手15による吸収容量を上回るおそれがある。
【0042】
一方、延長線L上に伸縮継手15がない場合(ステップS14-No)は、
図7に示す配管構造10における最下階の横管30である。図示の例では、横管30が2つの管11を含み、下流側の管11は、集合継手13に伸縮継手15を介して接続されている。しかしながら、2つの管11がソケット14aではなくエルボ14bを介して接続されていて、判定対象とする上流側の管11の管軸の延長線L上に伸縮継手15が配置されていない。
【0043】
延長線L上に伸縮継手15がない場合(ステップS14-No)、延長線L上に位置する管11の長さの総和を求める(ステップS19)。この総和には、判定対象となる管11自身の長さも含まれる。
そして、この総和が所定の長さ(例えば4m)以上であるか否かを判定する(ステップS20)。総和が所定の長さ以上である場合(ステップS20-Yes)、伸縮継手15が必要と判定する(ステップS21)。総和が所定の長さ未満である場合(ステップS20-No)、伸縮継手15が不要と判定する(ステップS22)。なお、
図7に示す配管構造10における最下階の横管30では、総和が4m未満であるため(ステップS20-No)、伸縮継手15が不要と判定している(ステップS22)。一方、
図8に示す横管30のように、総和が4m以上である場合(ステップS20-No)、伸縮継手15が必要と判定される(ステップS21)。
【0044】
なおこの場合、伸縮継手15の要否の判定の対象となる判定対象情報は、延長線L上に位置する管11の長さの総和である。伸縮継手15の要否の判定の基準となる判定基準情報は、4mである。すなわち、延長線L上に伸縮継手15がない場合、この延長線L上に位置する横管30(横管30の一部)が熱伸縮する影響を、伸縮継手15によらず吸収する必要がある。この場合、前記総和が4m以上となると、前述の横管30の一部が熱伸縮したときに伸縮量が大きくなりすぎ、伸縮継手15によらず吸収可能な吸収容量を上回るおそれがある。なお、判定基準情報は、横管30の種類に応じて設定変更できるようにしてもよい。
【0045】
(設計支援装置400)
本実施形態に係る設計支援装置400は、設計者が配管構造10を設計するに際し、上記伸縮継手15の配置規則に基づいて、適切に伸縮継手15を配置することを支援する。設計支援装置400は、例えば、配管設計に用いられるCADに、伸縮継手15の配置に関する機能を付加することで実現される。
【0046】
設計支援装置400は、例えば、コンピュータ(情報処理装置)によって構成される。コンピュータとしては、例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット端末などが例示される。コンピュータは、プログラムを実行することで設計支援装置400として機能する。プログラムは、コンピュータの内部の記憶部(例えば、後述する記憶部120)に記憶されていてもよく、コンピュータの外部の記憶装置に記憶されていてもよい。
【0047】
図9に示すように、設計支援装置400は、装置本体100と、入力部200と、表示部300と、を備えている。
入力部200としては、例えば、キーボードやマウス、タッチパネルなどが挙げられる。
表示部300としては、ディスプレイやタッチパネル、プリンタなどが挙げられる。
装置本体100は、記憶部120と、処理部110と、を備えている。処理部110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサが記憶部120に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0048】
記憶部120は、例えば、<1>管11や継手12の属性情報や、<2>縦管20の設計情報および横管30の設計情報、<3>伸縮継手15の要否に必要な判定基準情報、<4>管11の差込量の算出に必要な算出基準情報、などを記憶している。
【0049】
上記<1>に係る属性情報は、配管構造10の設計図によらず、全ての配管構造10に共通する情報である。属性情報は、管11や継手12そのものの属性に関連する情報であるともいえる。
【0050】
図10(a)に示すように、記憶部120は、属性情報として、属性情報テーブルT0を備えている。属性情報テーブルT0の各レコードは、管11や継手12(配管構成部材)1つ1つについての属性情報を示している。各レコードは、以下の各データなどを含む。
(1)その管11または継手12のID(属性情報ID)
(2)その管11または継手12の種別情報
(3)その管11または継手12の長さ
(4)その管11または継手12の呼び径
【0051】
上記(1)の属性情報IDは、その管11または継手12に固有のIDである。
上記(2)の種別情報は、その管11または継手12が、管11であるのか、集合継手13であるのか、ソケット14aであるのか、エルボ14bであるのか、伸縮継手15であるのか、を示す情報である。
上記(3)の長さは、その管11または継手12の長さを示す情報である。
上記(4)の呼び径は、その管11または継手12の呼び径(直径)を示す情報である。
【0052】
上記<2>に係る設計情報とは、設計対象である配管構造10ごとに固有の情報である。設計情報とは、配管構造10に関連する情報であるともいえる。設計情報は、配管構造10(縦管20や横管30)を設計した結果として得られる管11と継手12との配置を示す情報である。
なお設計情報は、本実施形態に係る設計支援方法を実施するための専用の情報として記憶されていてもよい。設計情報は、例えば、設計図などの作図に用いられる情報と共通の情報であってもよい。言い換えると、設計情報が、作図と設計支援とに兼用される情報であってもよい。配管設計図のデータに、上記の属性情報、種別情報、設計情報を含んでいても良く、配管設計図のデータを入力する際、併せてこれら情報を記憶するようにしてもよい。なお、以下に示す設計情報は一例であり、設計情報は設計支援方法を実現可能なデータ構造に適宜変更可能である。
【0053】
図10(b)、(c)に示すように、記憶部120は、設計情報として、複数の設計情報テーブルを備えている。設計情報テーブルとしては、縦管20に関する縦管テーブルT1(第1配管の設計情報)と、横管30に関する横管テーブルT2(第2配管の設計情報)と、を備えている。
図10(b)に示すように、縦管テーブルT1の各レコードは、縦管20を構成する管11や継手12(配管構成部材)1つ1つについての情報を示している。各レコードは、以下の各データなどを含む。
(1)その管11または継手12の配置順序
(2)その管11または継手12の属性情報(属性情報ID)
(3)その継手12に接続される横管30の情報(横管情報)
【0054】
上記(1)の配置順序は、例えば数値である。配置順序は、上方に位置する管11または継手12ほど、数値が小さい。配置順序が連番であることは、管11または継手12が隣り合っていることを表す。
上記(2)の属性情報は、その管11または継手12の属性に関する情報を示す。図示の例では、属性情報は、属性情報テーブルT0の各レコードと紐づけられた属性情報IDである。属性情報を参照することで、例えば、そのレコードが示す管11または継手12が、管11であるか集合継手13であるかを取得することができる。
上記(3)の接続される横管情報は、そのレコードが示す管11または継手12が集合継手13である場合に、その集合継手13に接続される横管30を示す。図示の例では、横管情報は、複数の横管テーブルT2のうちの1つの横管テーブルT2と紐づけられている。
【0055】
図10(c)に示すような1つの横管テーブルT2は、1つの横管30に対応付けられている。横管30が複数設けられている場合、横管テーブルT2は、横管30の数に対応して複数設けられている。各横管テーブルT2の各レコードは、横管30を構成する管11や継手12(配管構成部材)1つ1つについての情報を示している。各レコードは、以下の各データなどを含む。
(1)その管11または継手12の配置順序
(2)その管11または継手12の属性情報(属性情報ID)
(3)その管11に必要な調整長さ
【0056】
上記(1)の配置順序は、例えば数値である。配置順序は、下流側(縦管20側)に位置する管11または継手12ほど、数値が小さい。配置順序が連番であることは、管11または継手12が隣り合っていることを表す。
上記(2)の属性情報は、その管11または継手12の属性に関する情報を示す。図示の例では、属性情報は、属性情報テーブルT0の各レコードと紐づけられた属性情報IDである。例えば、属性情報を参照することで、そのレコードが示す管11または継手12が、管11であるか、ソケット14aであるか、エルボ14bであるか、伸縮継手15のであるかを取得することができる。さらに、属性情報を参照することで、そのレコードが示す管11または継手12の長さを取得することができる。
上記(3)の調整長さは、そのレコードが示す管11または継手12が管11である場合に、その管11を、属性情報に記憶されている管11の長さに対して、どの程度短く調整する必要があるかを示す。管11の下流側の口11aに伸縮継手15が設けられた場合、その伸縮継手15の長さ分、管11を短くすることが好ましく、横管テーブルT2が調整長さのカラムを備えていることが好ましい。
【0057】
上記<3>に係る判定基準情報とは、例えば、
図6に示すフローチャートにおいて伸縮継手15の要否の判定時(ステップS11、S16、S20)に、判定の基準として必要な情報である。判定基準情報は、横管30の長さに関する情報である。判定基準情報は、横管30において、判定対象となる管11よりも下流側に位置する部分の状態に対応して複数、記憶部120に記憶されている。本実施形態では、判定基準情報として、以下の3つの場合に対応した情報が記憶されている。
(1)判定対象となる管11の下流側の口11aに集合継手13が接続されている場合
(2)判定対象となる管11の下流側の口11aに汎用継手14が接続されている場合であって、前記延長線L上に伸縮継手15がある場合
(3)判定対象となる管11の下流側の口11aに汎用継手14が接続されている場合であって、前記延長線L上に伸縮継手15がない場合
これらの場合においては、伸縮継手15の追加での配置が必要か否かを判定するために判定基準情報を用いる。これらの場合において、判定基準情報が異なるのは、それぞれの場合において、熱伸縮を考慮すべき横管30の長さ(後述する判定対象情報)が異なり、かつ、管11の熱伸縮を吸収可能な吸収容量が異なるためである。言い換えると、それぞれの場合における判定基準情報は、横管30の設計状況ごとに、管11の熱伸縮に応じて適切に設定されている。
なお以上は、伸縮継手15の追加での配置が必要か否かを判定するために判定基準情報を用いる場合について説明したが、後述する
図13に示すフローチャートのように、伸縮継手15が過剰に配置されているか否かを判定するために、判定基準情報を用いることも可能である。そのため本実施形態では、上記(1)~(3)の場合とは異なり、(4)判定対象となる管11の下流側の口11aに伸縮継手15が接続されている場合、において、伸縮継手15が過剰に配置されているか否かを判定するために用いられる、判定基準情報を記憶部120が更に記憶している。
【0058】
上記<4>に係る算出基準情報は、後述するように、管11の施工条件を算出するために用いられる。
図11に示すように、記憶部120は、前記算出基準情報として、以下の(1)~(3)に関する情報などを含む算出基準情報テーブルT3を記憶している。
(1)対象とする管11の呼び径
(2)対象とする管11の標準差込量
(3)対象となる管11の吸収長さ
これらの各データの使用方法については、帳票処理部107の説明とあわせて後述する。
【0059】
処理部110は、受付部102(第1受付部、第2受付部)と、取得部103と、判定部104と、更新部105と、図面処理部106と、帳票処理部107(算出部)と、出力部108と、して機能する。
【0060】
受付部102は、入力部200からの入力を受け付ける。受付部102は、例えば、入力部200から、縦管20の設計情報の更新、および、横管30の設計情報の更新の入力を受け付ける。
【0061】
取得部103は、縦管20の設計情報および横管30の設計情報から、(1)横管30に含まれる所定の管11、(2)所定の管11における下流側(縦管20側)の口11aが接続される所定の継手12、それぞれの情報を取得する。本実施形態では、取得部103は、横管30のうち、所定の管11よりも下流側(縦管20側)に位置する管11、継手12(配管構成部材)の情報を取得する。ここで、所定の管11とは、伸縮継手15の要否の判定対象となる管11である。取得部103は、例えば、記憶部120に記憶されている縦管20の設計情報および横管30の設計情報から、所定の管11や所定の継手12の情報を取得する。なお、所定の管11の選択方法については後述する。
【0062】
判定部104は、取得部103が取得した情報に基づいて算出される判定対象情報と、判定の基準となる判定基準情報と、を比較して、所定の管11の口11aに関する伸縮継手15の要否について判定する。判定部104は、伸縮継手15の配置が追加で必要か否か、または、伸縮継手15が過剰に配置されていないか、を判定する。
【0063】
判定部104が、伸縮継手15の配置が追加で必要か否かを判定するとき、判定部104は、
図6に示すフローチャートを実施する。判定部104は、少なくとも所定の管11の長さの情報に基づいて、伸縮継手15の配置について判定する。判定部104は、判定対象の所定の管11の長さを諸元値として判定対象情報を算出する。判定部104は、判定対象の管11における下流側の口11aに接続された所定の継手12の種別に応じた算出方法により判定対象情報を算出する。判定部104は更に、所定の継手12の種別に応じて、記憶部120から判定基準情報を取得する。例えば、
図6に示すフローチャートにおけるステップS11のように、前述の所定の継手12が、集合継手13である場合、判定部104は管11の長さ(諸元値)を判定対象情報として取得する。また同フローチャートにおけるステップS15、S19に該当する場合には、判定部104は管11の長さ(諸元値)を含む長さの前述した各総和を判定対象情報として取得する。
【0064】
更新部105は、縦管テーブルT1における縦管20の設計情報、および、横管テーブルT2における横管30の設計情報をそれぞれ更新する。更新部105は、例えば、設計者が入力部200から設計情報の更新を入力したときに、設計情報を更新する。更新部105は、判定部104の判定結果に基づいて横管30の設計情報を更新する。すなわち、更新部105は、判定部104が判定した結果、伸縮継手15が不足している、または、伸縮継手15が過剰であると判定した場合、判定部104の判定結果を自動的に設計情報テーブルに反映させる。更新部105は、横管30の設計情報を更新した後、受付部102が受け付けた入力部200からの入力に基づいて(設計者が更新不要との入力をした場合)、設計情報テーブルについて更新した情報を元に戻す。
【0065】
図面処理部106は、縦管20の設計情報および横管30の設計情報に基づいて、表示部300に出力するための図面を生成する。図面としては、設計図やアイソメ図だけでなく、設計者が設計中に画面に表示されるGUIなどが挙げられる。
【0066】
帳票処理部107は、縦管20の設計情報および横管30の設計情報に基づいて帳票を生成する。帳票は、表示部300としてのディスプレイに表示されてもよく、表示部300としてのプリンタ(印刷媒体)に印刷されてもよい。帳票としては、例えば、施工手順書などが挙げられる。施工手順書を出力するに際し、帳票処理部107は、縦管20の設計情報および横管30の設計情報に基づいて施工条件を算出する。施工条件の一例として、伸縮継手15に対する管11の差込量が挙げられる。
【0067】
本実施形態では、帳票処理部107は、施工時の温度条件に関する情報に基づいて、伸縮継手15に対して差し込まれる管11の差込量Lcを算出する。帳票処理部107は、以下の式(1)に基づいて差込量Lcを算出する。
【0068】
Lc={(2Tc-Ta-Tb)/(TaーTb)}×L2+L1 ・・・ (1)
L1:標準差込量
L2:吸収長さ
Lc:差込量
Ta:環境最高温度
Tb:環境最低温度
Tc:施工温度
【0069】
なお、数式中におけるL
1、L
2の値は、
図11に示すように記憶部120に記憶されている。これらのL
1、L
2の値は、管11の呼び径に関連する。Ta、Tb、Tcの値は入力部200から入力されてもよく、予め記憶部120に記憶されていてもよい。
【0070】
差込量の算出に際して、帳票処理部107は、まず、横管30の設計情報に基づいて、計算対象となる管11を選択する。言い換えると、横管テーブルT2において、計算対象となるレコードを選択する。計算対象となるレコードは、横管テーブルT2におけるレコードのうち、(1)種別が管11であって、(2)そのレコードに対して配置順序の直前のレコードの種別が伸縮継手15である、レコードである。
【0071】
帳票処理部107は、記憶部120の設計情報テーブルに記憶された情報、入力部200から入力された(または記憶部120に記憶された)Ta、Tb、Tcの値に基づいて、上記式(1)から差込量Lcを算出する。なおこのとき、L1およびL2は、計算対象となる管11における呼び径をキーとして、このキーとなる呼び径と、算出基準情報テーブルT3において同値の呼び径を有するレコードを検索し、このレコードにおけるL1およびL2を用いることができる。
帳票処理部107は、算出した差込量Lcを前記帳票に出力する。差込量Lcは、例えば帳票において、差込量Lcの欄を設け、その欄に記載してもよい。
【0072】
出力部108は、処理部110の処理結果(例えば、図面処理部106、帳票処理部107により処理された情報)を表示部300(例えば、ディスプレイやプリンタ)に出力する。出力部108は、判定部104の判定結果(例えば、伸縮継手15が不足していることや伸縮継手15が過剰であること)や更新部105の更新結果(例えば、伸縮継手15を追加したことや伸縮継手15を削除したこと)を表示部300に出力することも可能である。
【0073】
(設計支援装置400による設計支援(1):管11を追加で設計するタイミングでの支援)
次に、上記設計支援装置400による設計支援方法について、
図12から
図24を参照して説明する。設計支援方法は、縦管20が既に設計済みであることを前提としている。そして、設計者が、入力部200を通して、横管30の管11を、縦管20の集合継手13、または、横管30の継手12(汎用継手14または伸縮継手15)に接続するという入力をしたことをトリガーとして、設計支援装置400による設計支援が実施される。
【0074】
なお、設計済みの縦管20に関する情報は、縦管20の設計情報である縦管テーブルT1として、記憶部120に記憶されている。設計者による入力部200からの前記入力は、受付部102が受け付ける。言い換えると、受付部102は、横管30に含まれる管11に関する設計情報の更新を受け付ける。このとき更新部105は、横管テーブルT2における設計情報を更新する。言い換えると、更新部105は、横管テーブルT2について、入力を受け付けた管11に関するレコードを追加する。さらにこのとき、判定部104は、判定の対象とする所定の管11として、入力を受け付けた管11を選択する。そして判定部104は、この管11における下流側の口11aに関する伸縮継手15の要否について判定する。
【0075】
このように、設計者による入力部200からの前記入力を受付部102が受け付けたとき、判定部104は、管11が接続された継手12が伸縮継手15であるか否か判定する(ステップS40)。このとき判定部104は、例えば、横管テーブルT2において、判定対象となる管11のレコードに対して、配置順序が直前のレコードにおける属性を判定することで、継手12が伸縮継手15であるか否か判定することができる。
【0076】
管11が接続された継手12が伸縮継手15であると判定部104が判定したとき(ステップS40-Yes)、判定部104は、伸縮継手15の要否判定を実施する(ステップS1)。判定部104は、
図6に示すフローチャートを実施することで、伸縮継手15の要否判定を実施する。
【0077】
なお
図6に示すフローチャートにおける各ステップは、設計支援装置400によって、例えば、以下に示すように実現することができる。
【0078】
(ステップS10)
横管テーブルT2において、対象の管11の配置順序が先頭である場合(管11が横管30において最も下流側である場合)、管11が集合継手13に接続されていると判定部104が判定することができる。
(ステップS11)
以下の3ステップを実施することで判定することができる。
(1)判定部104が、判定対象情報として、対象の管11の長さを取得する。
(2)判定部104が、ステップS11に対応した判定基準情報を、記憶部120から取得する。
(3)判定部104が、判定対象情報と判定基準情報とを比較する。
【0079】
(ステップS14)
判定部104が、横管テーブルT2におけるレコードを、対象の管11から配置順序の降順で検索し、属性がエルボ14bのレコードが検索される前に伸縮継手15が検索された場合、延長線L上に伸縮継手15があると判定することができる。
(ステップS15)
判定部104が、横管テーブルT2におけるレコードのうち、対象の管11と、ステップS14で検索された伸縮継手15と、の間に含まれる各レコードについての長さを合計することで、総和を算出することができる。
(ステップS16)
以下の3ステップを実施することで判定することができる。
(1)判定部104が、判定対象情報として、ステップS15の算出結果を取得する。
(2)判定部104が、ステップS16に対応した判定基準情報を、記憶部120から取得する。
(3)判定部104が、判定対象情報と判定基準情報とを比較する。
【0080】
(ステップS17)
判定部104が、横管テーブルT2におけるレコードのうち、対象の管11と、ステップS14で検索されたエルボ14bと、の間に含まれる各レコードの長さを合計することで算出することができる。
(ステップS18)
以下の3ステップを実施することで判定することができる。
(1)判定部104が、判定対象情報として、ステップS17の算出結果を取得する。
(2)判定部104が、ステップS18に対応した判定基準情報を、記憶部120から取得する。
(3)判定部104が、判定対象情報と判定基準情報とを比較する。
【0081】
要否判定の結果、伸縮継手15が不要と判定された場合(ステップS41-No)、設計支援装置400は、設計支援を終了する。
一方、要否判定の結果、伸縮継手15が必要と判定された場合(ステップS41-Yes)、設計支援装置400は、伸縮継手15の追加処理を実施する(ステップS42)。追加処理では、設計支援装置400は、例えば、以下の処理を実施した後、設計支援を終了する。
(1)更新部105は、横管テーブルT2における横管30の設計情報を、所定の管11と所定の継手12との間に伸縮継手15が追加された新たな情報に更新する。
(2)更新部105は、横管テーブルT2における横管30の設計情報を、伸縮継手15が追加される分、所定の管11の長さを短くした新たな情報に更新する。
(3)出力部108は、更新部105の更新結果に関する情報を表示部300に出力する。
なお、上記(1)に関し、更新部105は、例えば、対象とする管11と継手12の両レコードの間に、伸縮継手15に関する新たなレコードを挿入する。挿入する伸縮継手15の属性情報の選択は、対象とする管11や継手12の各レコードにおける呼び径を参照してもよい。例えば、伸縮継手15として、呼び径が、管11や継手12の呼び径と同径の伸縮継手15を、更新部105が選択してもよい。
また、上記(2)に関し、更新部105は、例えば、対象とする管11における調整長さフィールドのデータを更新する。フィールドの更新には、例えば、伸縮継手15の長さ情報を用いることが可能である。
【0082】
一方、判定部104は、管11が接続された継手12が伸縮継手15であると判定したときは(ステップS40-Yes)、伸縮継手15の過剰判定を実施する(ステップS3)。
伸縮継手15の過剰判定では、
図13に示すように、判定部104は、対象とする管11の長さが2m以上であるか否か判定する(ステップS31)。このとき判定部104は、判定対象情報として、対象の管11の長さを算出するとともに、ステップS31に対応する判定基準情報(2m)を記憶部120から取得する。そして判定部104は、判定対象情報と判定基準情報とを比較する。
そして判定部104は、対象とする管11の長さが2m以上であると判定した場合(ステップS31-Yes)、判定部104は、伸縮継手15の配置が適正であると判定する(ステップS32)。一方、判定部104が、対象とする管11の長さが2m以上でないと判定した場合(ステップS31-No)、判定部104は、伸縮継手15の配置が過剰であると判定する(ステップS33)。
【0083】
図12に戻り、過剰判定の結果、伸縮継手15が適正と判定された場合(ステップS43-No)、設計支援装置400は、設計支援を終了する。
一方、過剰判定の結果、伸縮継手15が過剰と判定された場合(ステップS43-Yes)、設計支援装置400は、伸縮継手15の除去処理を実施する(ステップS43)。除去処理では、設計支援装置400は、例えば、以下の処理を実施した後、設計支援を終了する。
(1)更新部105は、横管テーブルT2における横管30の設計情報を、伸縮継手15が除外された新たな情報に更新する。
(2)更新部105は、横管テーブルT2における横管30の設計情報を、伸縮継手15が除外される分、所定の管11の長さを長くした新たな情報に更新する。
(3)出力部108は、更新部105の更新結果に関する情報を表示部300に出力する。
なお、上記(1)に関し、更新部105は、例えば、過剰と判定された伸縮継手15に関するレコードを削除し、当該レコード以下の配置順序を繰り上げる。
また、上記(2)に関し、更新部105は、例えば、対象とする管11における調整長さフィールドのデータを更新する。具体的には、伸縮継手15を設置することにより調整長さが0より大きいデータであった場合、そのデータを0に更新する。
【0084】
次に、上記設計支援方法の具体例を3つ説明する。
(ケース1)
図14から
図15に示すケース1では、
図14および
図15に示すように、設計者が、集合継手13に管11を接続することを入力部200から入力する。この管11は属性情報テーブルT0に含まれる管11であり、この管11の長さは2m未満である。このとき、受付部102は、入力部200から横管30に含まれる設計情報の更新を受け付ける。そして更新部105が、横管テーブルT2における設計情報を更新し、横管テーブルT2について、入力を受け付けた管11に関するレコードを追加する。ケース1では、所定の横管テーブルT2における配置順序1に、管11に関するレコードを追加する。そして判定部104は、この管11における下流側の口11aに関する伸縮継手15の要否について判定する。
【0085】
このとき判定部104は、管11に伸縮継手15が接続されていないと判定する(S40-No)。具体的には、判定部104は、横管テーブルT2において、判定対象となる管11のレコードに対して、配置順序が直前のレコードがない。その結果、管11に伸縮継手15が接続されていないと判定する。
【0086】
その後、判定部104は、
図6に示すフローチャートの要否判定(ステップS1)を実施した結果、伸縮継手15が不要と判定する(S41-No)。
要否判定に際し、判定部104は、横管テーブルT2において、対象の管11の配置順序が先頭であることを取得することで、管11が集合継手13に接続されていると判定する(ステップS10-Yes)。その後、判定部104は、判定対象情報として、対象の管11の長さを取得し、このステップS11に対応した判定基準情報として、2mを取得し、これらの判定対象情報と判定基準情報とを比較することで、伸縮継手15が不要であると判定する(ステップS11-No)。
その結果、
図15に示すように、特別な表示がされることなく、設計支援が終了する。
【0087】
(ケース2)
図16から
図22に示すケース2では、まず
図16および
図17に示すように、設計者が、集合継手13に管11を接続することを入力部200から入力する。この管11は属性情報テーブルT0に含まれる管11であり、この管11の長さは2m以上である。このとき、受付部102は、入力部200から横管30に含まれる設計情報の更新を受け付ける。そして更新部105が、横管テーブルT2における設計情報を更新し、横管テーブルT2について、入力を受け付けた管11に関するレコードを追加する。
【0088】
このとき判定部104は、管11に伸縮継手15が接続されていないと判定する(S40-No)。具体的には、判定部104は、横管テーブルT2において、判定対象となる管11のレコードに対して、配置順序が直前のレコードがない。その結果、管11に伸縮継手15が接続されていないと判定する。
【0089】
その後、判定部104は、要否判定(ステップS1)を実施した結果、伸縮継手15が必要と判定する(S41-No)。
要否判定に際し、判定部104は、横管テーブルT2において、対象の管11の配置順序が先頭であることを取得することで、管11が集合継手13に接続されていると判定する(ステップS10-Yes)。その後、判定部104は、判定対象情報として、対象の管11の長さを取得し、このステップS11に対応した判定基準情報として、2mを取得し、これらの判定対象情報と判定基準情報とを比較することで、伸縮継手15が必要であると判定する(ステップS11-Yes)。
その結果、設計支援装置400は、上記伸縮継手15の追加処理(1)~(3)を実施する。このとき
図18に示すように、表示部300には、例えば、「伸縮処理部材(差し込みソケット)を挿入しました。」という文書が記載されたウィンドウメッセージW1が表示される。これにより、1本目の管11についての設計支援が終了する。
【0090】
このケースでは、その後、設計者は、
図19に示すように、1本目の管11に対して汎用継手14のソケット14aを接続することを入力部200から入力する。そして設計者は、
図20および
図21に示すように、ソケット14aに、2本目の管11を接続することを入力部200から入力する。この管11の長さは2m以上である。このとき、受付部102は、入力部200から横管30に含まれる設計情報の更新を受け付ける。そして更新部105が、横管テーブルT2における設計情報を更新し、横管テーブルT2の配置順序の最後列に、入力を受け付けた継手12および管11に関するレコードを追加する。そして判定部104は、この管11における下流側の口11aに関する伸縮継手15の要否について判定する。
【0091】
このとき判定部104は、管11に伸縮継手15が接続されていないと判定する(S40-No)。具体的には、判定部104は、横管テーブルT2において、判定対象となる管11のレコードに対して、配置順序が直前のレコードにおける属性情報が伸縮継手15ではないことを判定する。その結果、管11に伸縮継手15が接続されていないと判定する。
【0092】
その後、判定部104は、
図6に示すフローチャートの要否判定(ステップS1)を実施した結果、伸縮継手15が必要と判定する(S41-No)。
要否判定に際し、判定部104は、横管テーブルT2において、対象の管11の配置順序が先頭でないことを取得することで、管11が集合継手13に接続されていないと判定する(ステップS10-No)。その後、判定部104が、横管テーブルT2におけるレコードを、対象の管11から配置順序の降順で検索し、属性がエルボ14bのレコードが検索される前に伸縮継手15が検索されることで、延長線L上に伸縮継手15があると判定する(ステップS14-Yes)。そして、判定部104が、横管テーブルT2におけるレコードのうち、対象の管11と、ステップS14で検索された伸縮継手15と、の間に含まれる各レコードについての長さを合計することで、判定対象情報である総和を算出する(ステップS15)。なお総和の算出に際し、判定部104は、1本目の管11の調整長さも考慮する。その後、判定部104は、判定対象情報として、前記総和を取得し、このステップS16に対応した判定基準情報として、4mを取得し、これらの判定対象情報と判定基準情報とを比較することで、伸縮継手15が必要であると判定する(ステップS15-Yes)。
その結果、設計支援装置400は、上記伸縮継手15の追加処理(1)~(3)を実施する。このとき
図22に示すように、表示部300には、例えば、「伸縮処理部材(差し込みソケット)を挿入しました。取り消す場合はF1キーを押してください。」という文書が記載されたウィンドウメッセージW2が表示される。これにより、2本目の管11についての設計支援が終了する。
【0093】
なおその後、設計者が、入力部200から更新の否の入力をし(このケースでは、F1が押され)、受付部102が、更新の否の入力を受け付けたとき、更新部105は、横管テーブルT2における横管30の設計情報を元に戻す。このように、受付部102は、入力部200から、更新部105による更新の要否の入力を受け付ける。
【0094】
(ケース3)
図23および
図24に示すケース3では、
図23および
図24に示すように、設計者が、集合継手13に、伸縮継手15を介して管11を接続することを入力部200から入力する。この伸縮継手15および管11は属性情報テーブルT0に含まれる伸縮継手15および管11であり、この管11の長さは2m未満である。このとき、受付部102は、入力部200から横管30に含まれる設計情報の更新を受け付ける。そして更新部105が、横管テーブルT2における設計情報を更新し、横管テーブルT2について、入力を受け付けた伸縮継手15および管11に関するレコードを追加する。ケース3では、所定の横管テーブルT2における配置順序1、2それぞれに、伸縮継手15および管11に関するレコードを追加する。そして判定部104は、この管11における下流側の口11aに関する伸縮継手15の要否について判定する。
【0095】
このとき判定部104は、管11に伸縮継手15が接続されていると判定する(S40-Yes)。具体的には、判定部104は、横管テーブルT2において、判定対象となる管11のレコードに対して、配置順序が直前のレコードにおける属性が伸縮継手15であることを判定する。
【0096】
その後、判定部104は、
図13に示すフローチャートの過剰判定(ステップS3)を実施した結果、伸縮継手15が過剰と判定する(S43-Yes)。
過剰判定に際し、判定部104は、判定対象情報として、対象の管11の長さを取得し、このステップS31に対応した判定基準情報として、2mを取得し、これらの判定対象情報と判定基準情報とを比較することで、伸縮継手15が過剰であると判定する(ステップS31-No)。
その結果、設計支援装置400は、上記伸縮継手15の過剰処理(3)を実施する。このとき
図24に示すように、表示部300には、例えば、「伸縮処理部材(差し込みソケット)は不要です。削除する場合はF2キーを押してください。」という文書が記載されたウィンドウメッセージW3が表示される。これにより、設計支援が終了する。
なおその後、設計者が、入力部200から更新の否の入力をし(このケースでは、F1キーが押され)、受付部102が、更新の否の入力を受け付けたとき、更新部105は、横管テーブルT2における横管30の設計情報を元に戻す。ここで、上記F1キー、F2キーは、入力部200を構成するキーボードにあるファンクションキーである。
【0097】
(設計支援装置400による設計支援(2):設計図が完成している状態での支援)
次に、上記設計支援装置400による設計支援方法について、
図25から
図29を参照して説明する。設計支援方法は、縦管20および横管30の両方が既に設計済みであることを前提としている。この場合、例えば設計者が、入力部200を通して、伸縮継手15の適否を判定するという入力をしたことをトリガーとして、設計支援装置400による設計支援が実施される。
【0098】
なお、設計済みの縦管20に関する情報は、縦管20の設計情報である縦管テーブルT1として、記憶部120に記憶されている。設計済みの横管30に関する情報は、横管30の設計情報である横管テーブルT2として、記憶部120に記憶されている。設計者による入力部200からの前記入力は、受付部102が受け付ける。
【0099】
このように、設計者による入力部200からの前記入力を受付部102が受け付けたとき、判定部104は、複数の横管30のうち、判定未実施の横管30があるか否かを判定する(ステップS50)。
判定未実施の横管30がないと判定部104が判定したとき(ステップS50-No)、全ての横管30について判定が完了しているので、設計支援装置400は、支援を終了する。
【0100】
判定未実施の横管30があると判定部104が判定した場合(ステップS50-Yes)、判定部104は、未実施の横管30から1つを選択し(ステップS51)、その横管30において、判定未実施の管11があるか否かを判定する(ステップS52)。未実施の管11がない場合(ステップS52-No)、対象とする横管30について全ての管11の判定が完了しているので、判定部104は、判定未実施の横管30があるか否かを再び判定する(ステップS50)。
【0101】
ステップS51およびステップS52を具体的に実施するには、判定部104は、縦管テーブルT1において、配置順序の昇順にレコードを検索し、そのレコードにおける属性が集合継手13であった都度、その集合継手13に接続されている横管30(そのレコードにおける横管情報)の有無を判定する。これにより、判定未実施の横管30があるか否かを判定することができる。また、昇順にレコードを検索した結果、全てのレコードを検索し終えた場合、判定未実施の横管30がないと判定部104が判定することができる。
【0102】
判定未実施の管11がある場合(ステップS52-Yes)、判定部104は、未実施の管11から1つを選択し(ステップS53)、その管11における支援を実施する(ステップS4)。この支援は、
図12に示すフローチャートであるので、説明を省略する。支援が完了したら、判定部104は、横管30において、判定未実施の管11があるか否かを再び判定する(ステップS52)。なお本実施形態では、判定部104は、横管30に含まれる複数の管11のうち、縦管20側(下流側)に位置する管11から順に、その管11の口11aに関する伸縮継手15の配置について判定する。
【0103】
ステップS53を具体的に実施するには、判定部104は、ステップS50において集合継手13に接続されていると判定された横管30の横管テーブルT2を選択し、その横管テーブルT2において、配置順序の昇順にレコードを検索し、そのレコードにおける属性が管11であった都度、その管11について支援(
図12に示すフローチャート)を実施する。また、昇順にレコードを検索した結果、全てのレコードを検索し終えた場合、判定未実施の管11がないと判定部104が判定することができる。
【0104】
次に、上記設計支援方法の具体例を説明する。
(ケース4)
図26から
図29に示すケース4では、
図26に示すように、既に縦管20および横管30が設計されている。このケース4では、
図26に示すように、3階層の配管構造10である。最上階および中央階では、いずれも横管30が1つの管11によって構成されている。最上階の横管30では、管11の長さが2m以内である。中央階の横管30では、管11の長さが2m以上である。最下階では、横管30が2つの管11と、これらの両管11を接続する汎用継手14(ソケット14a)と、によって構成されている。最下階の横管30の2つの管11は、いずれも2m以上である。
【0105】
このとき判定部104は、判定未実施の横管30を選択し(ステップS50、S51)、その横管30について、下流側の管11から選択し(ステップS52、S53)、伸縮継手15についての支援(判定)を実施していく(ステップS4)。
図27および
図28に示すように、このケース4では、判定部104が、最上階の横管30では管11に伸縮継手15が不要と判定する(S41-No)。一方、判定部104は、最上階の横管30では管11に伸縮継手15が必要と判定する(S41-Yes)。このとき、上記伸縮継手15の追加処理(1)、(2)を実施する。
【0106】
一方、最下階の横管30には、まず、
図28に示すように、判定部104が、下流側の管11に伸縮継手15が必要と判定する(S41-Yes)。このとき、上記伸縮継手15の追加処理(1)、(2)を実施する。このとき、更新部105は、伸縮継手15の配置、および、管11の長さの変更について、横管30の設計情報を更新する。判定部104は、上記更新が完了した後、再び上流側の管11について支援(判定)を実施する(ステップS4)。その結果、図示の例では、判定部104が、上流側の管11にも伸縮継手15が必要であると判定している(S41-Yes)。
【0107】
なお本実施形態では、全ての横管30についての支援が完了したとき(ステップS50-No)、出力部108が、更新部105による更新結果に関する情報を表示部300に出力する。
このとき
図28に示すように、表示部300には、例えば、「伸縮処理部材(差し込みソケット)を挿入しました。」という文書が記載されたウィンドウメッセージW11、W12が表示されてもよい。
さらにこのとき、
図29に示すように、「3か所(赤色で表示)に伸縮処理部材(差し込みソケット)を挿入しました。取り消す場合は対象の部材を指定してF1キーを押してください。」というウィンドウメッセージW13が表示されてもよい。
【0108】
以上説明したように、本実施形態に係る設計支援装置400によれば、判定対象情報と判定基準情報とを比較して所定の管11の口11aに関する伸縮継手15の要否について判定する。ここで判定対象情報が、判定対象となる管およびその管に接続される継手の情報に基づいて算出される。そのため、判定対象となる管について、伸縮継手が必要であるか否かを適切に判定することができる。したがって、判定部104の判定結果を参照することで、例えば、横管30において伸縮継手15の配置が漏れること等を防止し、横管30において伸縮継手15を適正に配置することができる。
判定部104が、所定の管11の長さを諸元値として、所定の継手の種別に応じた算出方法により判定対象情報を算出する。したがって、判定部104による判定の精度を高めることができる。
【0109】
更新部105が、判定部104の判定結果に基づいて横管30の設計情報を更新する。したがって、例えば、横管30における伸縮継手15の配置を、設計者による作業を伴わず自動的に適正に変更することができる。
なお更新部105が、横管30の設計情報を、伸縮継手15が追加される分、所定の管11の長さを短くした新たな情報に更新したり、横管30の設計情報を、伸縮継手15が除外される分、所定の管11の長さを長くした新たな情報に更新したりすることで、単に伸縮継手15を適正に配置するだけに留まらず、配管構造10全体としての適正な設計を実現することができる。
【0110】
出力部108が、更新部105の更新結果に関する情報を表示部300に出力する。したがって、更新部105による設計情報の自動的な更新があった場合であっても、設計者が更新の事実を確認することができる。
なお更新部105が、第1受付部102が更新の否の入力を受け付けたときに、横管30の設計情報を元に戻す場合、例えば、特殊な事情で伸縮継手15を配置しない配管構造10などであっても、更新部105による設計情報の自動的な更新を容易に元に戻すことができる。
【0111】
受付部102が、横管30に含まれる管11に関する設計情報の更新を受け付けたときに、判定部104が、その管11の口11aに関する伸縮継手15の配置について判定する場合、例えば、設計者が横管30において新たな管11を設計する都度、判定部104による判定を実施することができる。
判定部104が、横管30に含まれる複数の管11のうち、縦管20側に位置する管11から順に、その管11の口11aに関する伸縮継手15の配置について判定する場合、設計済みの横管30について、判定部104による判定を実施することができる。
【0112】
帳票処理部107が、施工時の温度条件に関する情報に基づいて、伸縮継手15に対する所定の管11の差込量を算出する。したがって、外気温が異なる夏場や冬場などにおいても、適正な施工を実現し易くすることができる。
【0113】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0114】
上述した実施形態における設計支援装置400をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0115】
設計支援装置400の記憶部120は外部の記憶装置であってもよいし、外部のサーバ装置に記憶しておき、ネットワークまたは他の通信線を介して通信することで、記憶部120として機能するようにしてもよい。例えば、クラウドサービスとして提供されてもよい。
設計支援装置400において、装置本体100の各機能のうち少なくともいずれか1つの機能が他のサーバ装置に設けられ、システム全体として設計支援装置400の機能を有するようにしてもよい。
【0116】
更新部105が、判定部104の判定結果に基づいて、横管30の設計情報を更新しなくてもよい。例えば、出力部108が、判定部104の判定結果に関する情報を、表示部300に出力してもよい。例えば、判定部104が所定の管11における下流側の口11aに伸縮継手の配置が必要と判定した場合、所定の管11の表示の態様を、他の管11の表示の態様と異ならせた上で、表示の態様が異なる管11について、伸縮継手15の配置が必要である旨のメッセージを表示してもよい。
【0117】
伸縮継手15として、差し込みソケットを前記実施形態では例示したが、やりとりソケットでもよく、管11が上水用などの圧力管である場合は、伸縮継手15は、U型継手、ループ型エキスパンジョンであってもよい。判定部104は、伸縮継手15の配置が必要と判定した場合、これら伸縮継手15をオペレーターに選択させるよう表示してもよい。
【0118】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0119】
11 管
12 継手
15 伸縮継手
20 縦管(第1配管)
30 横管(第2配管)
102 受付部(第1受付部、第2受付部)
103 取得部
104 判定部
105 更新部
108 出力部
200 入力部
300 表示部
400 設計支援装置