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特許7492434釣り用リールのトルク制限装置及び釣り用リール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】釣り用リールのトルク制限装置及び釣り用リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/015 20060101AFI20240522BHJP
   A01K 89/017 20060101ALI20240522BHJP
   A01K 89/01 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
A01K89/015 E
A01K89/017
A01K89/015 F
A01K89/01 E
A01K89/015 H
A01K89/01 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020177450
(22)【出願日】2020-10-22
(65)【公開番号】P2022068656
(43)【公開日】2022-05-10
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】森 成秀
(72)【発明者】
【氏名】原口 仁志
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特許第5912371(JP,B2)
【文献】特開2016-136917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0219853(US,A1)
【文献】特開2016-086702(JP,A)
【文献】特開2019-052691(JP,A)
【文献】特開2009-014074(JP,A)
【文献】特開昭54-066287(JP,A)
【文献】特開2016-010380(JP,A)
【文献】米国特許第04917321(US,A)
【文献】特開2013-070652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 - 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に対して回転可能に配置される第1回転部材と、前記第1回転部材の外周側で第1回転部材の回転軸回りに回転可能に配置される第2回転部材との間のトルクを制限する釣り用リールのトルク制限装置であって、
前記第2回転部材の内周面に形成された係合凹部と、
前記係合凹部に係合可能な頭部を有し、前記第2回転部材に向けて進退可能に前記第1回転部材に配置された係合部材と、
前記係合部材を前記第2回転部材に向けて付勢する付勢部材と、
を備え、
前記係合部材の前記頭部は、前記第1回転部材の回転軸方向に直線状に延びた直線部を先端に有している、
釣り用リールのトルク制限装置。
【請求項2】
前記係合部材は、少なくとも前記頭部が樹脂製である、
請求項1に記載の釣り用リールのトルク制限装置。
【請求項3】
前記頭部は、前記直線部に接続されるとともに、少なくも一部が前記係合凹部に接触可能な1対の傾斜部を有し、
前記1対の傾斜部は、前記直線部に近づくに従って前記第1回転部材の回転軸方向に広がるように形成されている、
請求項1又は2に記載の釣り用リールのトルク制限装置。
【請求項4】
リール本体と、
前記リール本体に対して回転可能に配置される第1回転部材と、
前記第1回転部材の外周側で第1回転部材の回転軸回りに回転可能に配置される第2回転部材と、
前記第1回転部材と前記第2回転部材との間のトルクを制限する請求項1から3のいずれか1項に記載のトルク制限装置と、
を備えた、
釣り用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用リールのトルク制限装置及び釣り用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トルク制限装置を備えた釣り用リールが知られている。例えば、特許文献1に開示されているトルク制限装置は、ハンドル軸とハンドル軸に支持されるギアとの間のトルクを制限する。トルク制限装置は、係合部材と、付勢部材とを備えている。係合部材は、先端がギアの内周面に係合する。付勢部材は、係合部材をギアの内周面に向けて付勢する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5912371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなトルク制限装置において、耐久性の向上が望まれている。
本発明の課題は、釣り用リールのトルク制限装置及び釣り用リールにおいて、トルク制限装置の耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る釣り用リールのトルク制限装置は、リール本体に対して回転可能に配置される第1回転部材と、第1回転部材の外周側で第1回転部材の回転軸回りに回転可能に配置される第2回転部材との間のトルクを制限する。トルク制限装置は、係合凹部と、係合部材と、付勢部材とを備えている。係合凹部は、第2回転部材の内周面に形成されている。係合部材は、第2回転部材に向けて進退可能に第1回転部材に配置されている。係合部材は、係合凹部に係合可能な頭部を有している。付勢部材は、係合部材を第2回転部材に向けて付勢する。係合部材の頭部は、第1回転部材の回転軸方向に直線状に延びた直線部を先端に有している。
【0006】
この釣り用リールのトルク制限装置では、頭部が先端に直線部を有しているので、係合部材が係合凹部に対して線当たりする。これにより、係合部材が係合凹部に対して点当たりする場合に比べて、応力が分散されるので、係合部材及び係合凹部の耐久性が向上する。その結果、トルク制限装置の耐久性を向上させることができる。
【0007】
係合部材は、少なくとも頭部が樹脂製であってもよい。この場合は、係合部材が係合凹部に対して線当たりする場合に比べて、係合部材及び係合凹部の耐久性が向上するので、係合部材の少なくとも一部を樹脂化することが可能になり、トルク制限装置の軽量化を図ることができる。
【0008】
頭部は、直線部に接続されるとともに、少なくも一部が係合凹部に接触可能な1対の傾斜部を有してもよい。1対の傾斜部は、直線部に近づくに従って第1回転部材の回転軸方向に広がるように形成されてもよい。この場合は、係合部材の耐久性の向上と軽量化の両立を図ることができる。
【0009】
本発明の別の発明に係る釣り用リールは、リール本体と、リール本体に対して回転可能に配置される第1回転部材と、第1回転部材の外周側で第1回転部材の回転軸回りに回転可能に配置される第2回転部材と、第1回転部材と第2回転部材との間のトルクを制限する上記のトルク制限装置とを備えている。
【0010】
この釣り用リールでは、係合部材の頭部が先端に直線部を有しているので、係合部材が係合凹部に対して線当たりする。これにより、係合部材が係合凹部に対して点当たりする場合に比べて、応力が分散されるので、係合部材及び係合凹部の耐久性が向上する。その結果、トルク制限装置の耐久性を向上させることができる
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、釣り用リールのトルク制限装置及び釣り用リールにおいて、トルク制限装置の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態が採用された釣り用リールの平面図。
図2図1のII-II線断面図。
図3】釣り用リールの一部の分解斜視図。
図4】第1側カバー及び機構装着板を外した状態の電動リールの右側面図。
図5】クラッチ戻し機構の側面図。
図6】トルク制限装置を駆動軸に直交する平面で切断した断面図。
図7】トルク制限装置を図6のVII-VII線で切断した部分断面図。
図8】係合部材の斜視図。
図9】係合部材の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態が採用された釣り用リール100は、図1から図3に示すように、リール本体2と、スプール3と、ハンドル4と、スプール駆動機構13(図3参照)と、を備えている。釣り用リール100は、外部電源から供給された電力によりモータ12を駆動してスプール3が回転する電動リールである。なお、以下の説明において、後述するスプール軸10及び駆動軸30が延びる方向を軸方向と呼ぶ。また、軸方向と直交する方向を径方向と呼ぶ。
【0014】
リール本体2は、フレーム7と、第1側カバー8aと、第2側カバー8bと、を有している。フレーム7は、第1側板7aと、第2側板7bと、複数の連結部7cと、機構装着板9と、を有している。
【0015】
第1側板7aは、フレーム7の前方(釣り糸が繰り出される方向)に向かって右側に配置されている。第2側板7bは、第1側板7aと軸方向に間隔を隔てて、フレーム7の左側に配置されている。複数の連結部7cは、軸方向に延びて第1側板7aと第2側板7bとを連結している。機構装着板9は、第1側板7aと第1側カバー8aとの間に配置されている。機構装着板9は、第1側板7aと第1側カバー8aとの間に配置され、機構装着板9には各種の機構が装着されている。
【0016】
第1側カバー8aは、フレーム7の第1側板7aの右側方を覆う。第2側カバー8bは、フレーム7の第2側板7bの左側方を覆う。
【0017】
スプール3は、図2に示すように、リール本体2に対して回転可能であり、第1側板7a及び第2側板7bの間に配置されている。スプール3は、リール本体2の内部を軸方向に延びるスプール軸10に支持されている。スプール3は、スプール軸10に一体回転可能に装着されている。スプール軸10は、リール本体2に配置された1対の軸受11a,11bにより、リール本体2に回転自在に支持されている。本実施形態におけるスプール軸10は、左右方向に延びている。
【0018】
ハンドル4は、リール本体2に対して回転可能である。ハンドル4は、リール本体2の第1側カバー8a側に設けられている。
【0019】
スプール駆動機構13は、ハンドル4及びモータ12の回転をスプール3に伝達する。スプール駆動機構13は、図3に示すように、第1回転伝達機構14と、第2回転伝達機構15と、を有している。
【0020】
第1回転伝達機構14は、モータ12の回転を減速してスプール3に伝達する。詳細には、第1回転伝達機構14は、モータ12の出力軸に連結された図示しない遊星歯車機構と、第1ギア部材60と、第2ギア部材61と、ピニオンギア32と、を有している。
【0021】
第1ギア部材60には、遊星歯車機構を介してモータ12の回転が伝達される。第2ギア部材61は、第1ギア部材60に噛み合う。第2ギア部材61は、第1ギア部材60の回転をピニオンギア32に伝達するための中間ギアであり、ピニオンギア32に噛み合う。
【0022】
ピニオンギア32は、スプール軸10の軸回りに回転可能であり、スプール軸10が内周部を貫通している。また、ピニオンギア32は、スプール軸10に一体回転可能に連結される連結位置と、スプール軸10との連結が解除される解除位置との間で、軸方向に移動可能にリール本体2に設けられている。ピニオンギア32は、後述するクラッチヨーク41に係合し、クラッチヨーク41とともに軸方向に移動する。ピニオンギア32は、クラッチヨーク41が係合する環状凹部32aを有している。
【0023】
第2回転伝達機構15は、ハンドル4の回転を、第1回転伝達機構14を介してスプール3に伝達する。第2回転伝達機構15は、駆動軸30(第1回転部材の一例)と、駆動ギア31と、第3ギア部材62と、を有している。
【0024】
駆動軸30は、リール本体2に対して回転可能に配置されている。駆動軸30は、左右方向に延びている。駆動軸30の回転軸Cは、図3の紙面に対して直交する方向に延びている。以下の説明では、駆動軸30の回転軸Cが延びる方向を回転軸方向と呼ぶ。本実施形態において、回転軸方向は軸方向と一致する。駆動軸30には、ハンドル4が一体回転可能に連結されている。
【0025】
駆動軸30は、第1側カバー8aに装着される図示しないローラクラッチによって糸巻き取り方向と逆方向の回転が禁止されている。また、駆動軸30は、回転部材52と、回転部材52とに係合可能な爪部材54(図4参照)とで構成される爪式のワンウェイクラッチによっても、糸巻き取り方向と逆方向の回転が禁止されている。
【0026】
駆動ギア31は、駆動軸30に回転可能に装着されている。駆動ギア31には、周知のドラグ機構を介して駆動軸30の回転が伝達される。
【0027】
第3ギア部材62は、駆動ギア31に噛み合うとともに、遊星歯車機構のキャリアに一体回転可能に連結されている。これにより、第3ギア部材62の回転がキャリア、第1ギア部材60、及び第2ギア部材61を介して、ピニオンギア32に伝達される。
【0028】
釣り用リール100は、クラッチ機構16(図2参照)と、クラッチ操作部材17(図3参照)と、をさらに備えている。また、釣り用リール100は、図4及び図5に示すように、クラッチ制御機構20と、クラッチ戻し機構22と、規制部材24と、をさらに備えている。
【0029】
クラッチ機構16は、ハンドル4の回転力をスプール3に伝達及び遮断するための機構である。クラッチ機構16は、従来と同様の構成であり、スプール軸10とピニオンギア32との間に設けられている。クラッチ機構16は、図2に示すように、係合ピン16aと、係合凹部16bと、を有している。
【0030】
クラッチ機構16が伝達状態にあるとき、すなわち、ピニオンギア32が連結位置にあるとき、係合ピン16aが係合凹部16bに係合して、ピニオンギア32の回転がスプール軸10に伝達される。一方、クラッチ機構16が遮断状態にあるとき、すなわち、ピニオンギア32が解除位置にあるとき、係合ピン16aが係合凹部16bから離脱して、ピニオンギア32の回転はスプール軸10に伝達されない。
【0031】
クラッチ操作部材17は、リール本体2の後部で上下方向に移動可能にリール本体2に支持されている。クラッチ操作部材17は、図3において、実線で示す第1位置と、破線で示す第2位置との間で移動可能であり、第1位置側に向けて付勢されている。
【0032】
クラッチ操作部材17は、図4に示すように、回動部18と、操作部19と、を有している。回動部18は、スプール軸10の軸回りに回動可能にリール本体2に支持されている。回動部18は、リング部18aと、挿入部18bと、第1バネ掛け部18cと、連結部18dと、を有している。リング部18aは、機構装着板9に設けられた第1支持部9aの外周面に揺動可能に支持されている。挿入部18bは、操作部19を軸方向に貫通して、操作部19に一体移動可能に連結されている。
【0033】
第1バネ掛け部18cは、リング部18aの外周部から径方向外側に延びて形成されている。第1バネ掛け部18cには、クラッチ操作部材17を第1位置に向けて付勢する第1バネ部材51の一端が引っ掛けられる。第1バネ部材51は、例えばコイルばねである。第1バネ部材51の他端は、機構装着板9の第1側カバー8a側の外側面に引っ掛けられる。
【0034】
連結部18dは、リング部18aと挿入部18bとを連結する。連結部18dには、クラッチ制御機構20の後述するクラッチ爪44を支持する支持軸18eが設けられている。
【0035】
操作部19は、クラッチ操作部材17を手で押圧操作する部分である。操作部19は、スプール軸10と実質的に平行に配置される。操作部19は、第1接触部材43a及び第2接触部材43bを介して、第1側板7a及び第2側板7bに沿って移動可能である。
【0036】
クラッチ制御機構20は、クラッチ操作部材17が第1位置から第2位置に移動する度にクラッチ機構16を伝達状態及び遮断状態に交互に切り換える。クラッチ制御機構20の構成は従来と同様の構成であるため、ここでは簡潔に説明する。
【0037】
クラッチ制御機構20は、クラッチカム40と、クラッチヨーク41と、クラッチ爪44と、有している。
【0038】
クラッチカム40は、クラッチ操作部材17が第1位置から第2位置に移動する度に、一方向にのみ回転する。詳細には、クラッチカム40は、クラッチ操作部材17が第1位置から第2位置に移動する度に、図5に示す第1方向R1に所定の回転位相RPだけ回転する。クラッチカム40は、機構装着板9の第1支持部9aに回転自在に装着されている。
【0039】
クラッチカム40は、複数のラチェット歯40aと、複数のカム部40bと、を有している。複数のラチェット歯40aは、クラッチカム40の外周面に周方向に間隔を隔てて設けられている。所定の回転位相RPはラチェット歯40aの数によって定まる。本実施形態では、ラチェット歯40aが12個であり、所定の回転位相RPは30度である。
【0040】
ラチェット歯40aは、第1ラチェット歯40cと、第2ラチェット歯40dと、を有している。第1ラチェット歯40c及び第2ラチェット歯40dは、周方向に間隔を隔てて交互に設けられている。
【0041】
カム部40bは、所定の回転位相RPに関連した位相PSで周方向に間隔を隔てて設けられている。カム部40bは、クラッチ操作部材17が第1位置から第2位置に移動する度にクラッチヨーク41を軸方向に移動させる。
【0042】
クラッチヨーク41は、ピニオンギア32を、連結位置と、解除位置と、に移動させるために設けられている。クラッチヨーク41は、図4に示す機構装着板9の第1支持部9aに固定されるガイド部材49によって軸方向に移動可能に支持されている。クラッチヨーク41は、ガイド部材49に装着された2本の第2バネ部材42によって、軸方向においてクラッチカム40に近づく方向に向けて付勢されている。クラッチヨーク41は、ピニオンギア32の環状凹部32aに係合する係合部41aを有している。
【0043】
クラッチ爪44は、回動部18の支持軸18eに揺動自在に支持されている。クラッチ爪44は、クラッチ操作部材17の第1位置から第2位置への移動に伴い、クラッチカム40を第1方向R1に所定の回転位相RPだけ回転させる。詳細には、クラッチ爪44は、ラチェット歯40aの第1ラチェット歯40c及び第2ラチェット歯40dのいずれかに係合してクラッチカム40を第1方向R1に押圧する。クラッチ爪44は、回動部18の支持軸18eに支持された第3バネ部材48によって、ラチェット歯40aに向けて付勢されている。
【0044】
クラッチ戻し機構22は、クラッチ機構16が遮断状態にあるとき、ハンドル4の回転によってクラッチ機構16を伝達状態に戻すための機構である。クラッチ戻し機構22は、回転部材52(第2回転部材の一例)を有している。回転部材52は、駆動軸30の外周側で駆動軸30の回転軸C
回りに回転可能に配置されている。回転部材52は、駆動軸30に支持されており、ハンドル4の回転に応じて回転する。本実施形態における回転部材52は、樹脂製である。
【0045】
回転部材52は、複数の突起部52aと、連結孔52bと、を有している。突起部52aは、周方向に間隔を隔てて設けられている。突起部52aは、クラッチ機構16が遮断状態にあるとき、ハンドル4の回転によってクラッチカム40の第1ラチェット歯40cに係合して、クラッチカム40を第1方向R1に回転させる。
【0046】
突起部52aは、クラッチカム40の第2ラチェット歯40dに係合しないように構成されている。詳細には、第2ラチェット歯40dは、第1ラチェット歯40cよりも径方向の厚みが薄く形成されている。また、クラッチ機構16が伝達状態にあるとき、突起部52aは、第2ラチェット歯40dに近接した位置に配置される。このため、ハンドル4が回転しても、突起部52aによってクラッチカム40が第1方向R1に回転することがない。
【0047】
連結孔52bは、後述する係合凹部72を除いて円形であり、駆動軸30が軸方向に貫通する。
【0048】
規制部材24は、クラッチ操作部材17の移動により、クラッチ機構16を伝達状態から遮断状態に切り換えたときにクラッチ戻し機構22の作動を規制する。
【0049】
詳細には、クラッチ機構16が伝達状態にあるとき、クラッチ操作部材17を第1位置から第2位置に移動させると、クラッチカム40の回転によってクラッチ機構16が伝達状態から遮断状態に切り換わる。規制部材24は、このクラッチ機構16が伝達状態から遮断状態に切り換わったときからクラッチ操作部材17が第2位置に戻るまでの間の少なくとも一部の期間において、クラッチ戻し機構22の作動を規制する。なお、少なくとも一部の期間とは、クラッチ操作部材17が第2位置にあるときを含む。
【0050】
規制部材24は、図4に示すように、クラッチ操作部材17の回動部18に設けられている。詳細には、規制部材24は、回動部18のリング部18aから軸方向に板状に延びている。規制部材24は、回動部18に一体に設けられている。規制部材24は、例えば、回動部18の一部を曲げ加工して形成されている。
【0051】
規制部材24は、クラッチ操作部材17の移動によりクラッチ機構16を伝達状態から遮断状態に切り換えたときに、クラッチカム40の第1ラチェット歯40cと、回転部材52の突起部52aと、の干渉を規制する。詳細には、規制部材24は、クラッチ操作部材17の第1位置から第2位置への移動に伴って回動部18が回動することで、図5の実線で示す待機位置から破線で示す規制位置に回動する。これにより、規制部材24によって回転部材52の糸巻き取り方向WDへの回転が規制され、ハンドル4の回転によるクラッチ戻し機構22の作動が防止される。
【0052】
図5及び図6に示すように、釣り用リール100は、トルク制限装置70をさらに備えている。トルク制限装置70は、駆動軸30と回転部材52との間で伝達されるトルクを制限する。トルク制限装置70は、規制部材24に大きな負荷がかかった場合に、規制部材24及び突起部52aの損傷を防止するために設けられている。
【0053】
トルク制限装置70は、係合凹部72と、係合部材73と、付勢部材74とを有している。
【0054】
係合凹部72は、回転部材52の内周面に形成されている。係合凹部72は、回転部材52の内周面において、径方向外側に凹むように形成されている。係合凹部72は、連結孔52bに形成されている。本実施形態では、係合凹部72は、駆動軸30の周方向に間隔を隔てて4つ設けられている。
【0055】
係合凹部72は、係止面72aと、斜面72bとを有している。係止面72aは、1対の係合部材73の先端に沿うように形成されている。係止面72aは、回転軸方向に延びている。斜面72bは、回転部材52を糸巻き取り方向WDに付勢するように構成されている。斜面72bは、駆動軸30の軸方向から見て、直線状に傾斜するとともに、糸巻き取り方向WDに進むにつれて内径が徐々に大きくなるように形成されている。
【0056】
係合部材73は、1対のピン部材によって構成されている。係合部材73は、回転部材52に向けて進退可能に駆動軸30に配置されている。詳細には、係合部材73は、駆動軸30を径方向に貫通して形成された貫通孔30aに進退可能に収容されている。貫通孔30aは、回転部材52と径方向に重なる位置に形成されている。係合部材73は、貫通孔30aの内周面によって径方向の移動が案内される。
【0057】
図6から図9に示すように、係合部材73は、係合凹部72に係合可能な頭部73aと、頭部73aよりも小径の軸部73bと、を有している。
【0058】
係合部材73は、少なくとも頭部73aが樹脂製である。本実施形態では、係合部材73の全体が樹脂製である。
【0059】
頭部73aは、直線部73cと、1対の傾斜部73dとを有している。直線部73cは、頭部73aの先端に形成されている。直線部73cは、係合凹部72に対して回転軸方向に線接触する形状を有している。詳細には、直線部73cは、回転軸方向に直線状に延びている。回転軸方向に直線状に延びているとは、回転軸方向に対して僅かに傾斜して直線状に延びている形状も含まれる。したがって、直線部73cは、回転軸方向に対して僅かに傾斜して直線状に延びていてもよい。直線部73cは、回転軸方向における頭部73aの全長に亘って形成されている。直線部73cは、係合凹部72に対して少なくとも線接触する。なお、直線部73cは、回転軸方向における頭部73aの一部に形成されてもよい。
【0060】
1対の傾斜部73dは、直線部73cに接続されている。1対の傾斜部73dは、頭部73aの側面に形成されており、直線部73cから略周方向に延びている。1対の傾斜部73dは、回転軸方向かつ径方向に延びている。1対の傾斜部73dは、直線部73cに近づくに従って回転軸方向に広がるように形成されている。1対の傾斜部73dは、少なくとも一部が係合凹部72に接触可能である。本実施形態では、1対の傾斜部73dは、直線部73cに隣接する部分が係合凹部72に接触する。
【0061】
頭部73aが係止面72aを押圧することで、駆動軸30の回転とともに回転部材52が回転する。駆動軸30と回転部材52との間に許容以上のトルクが作用すると、頭部73aが貫通孔30a内に後退して、駆動軸30が回転部材52に対して相対回転する。すなわち、駆動軸30と回転部材52との間に許容以上のトルクが作用すると、駆動軸30のみが回転する。
【0062】
付勢部材74は、貫通孔30aに収容されている。付勢部材74は、係合部材73を回転部材52に向けて付勢する。付勢部材74は、例えばコイルバネであり、圧縮された状態で係合部材73の軸部73bに装着されている。
【0063】
上記構成のトルク制限装置70では、係合部材73の頭部73aが先端に直線部73cを有しているので、係合部材73が係合凹部72に対して線当たりする。これにより、係合部材73が係合凹部72に対して点当たりする場合に比べて、応力が分散されるので、係合部材73及び係合凹部72の耐久性が向上する。その結果、トルク制限装置70の耐久性を向上させることができる。
【0064】
また、係合部材73及び回転部材52が樹脂で形成されているので、係合部材73及び回転部材52が金属で形成されている場合に比べて、トルク制限装置70を軽量化できる。
【0065】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0066】
(a)前記実施形態では、釣り用リールとしてモータ12でスプール3を駆動する電動リールを開示したが、本発明は、手巻きの釣り用リールにも適用できる。
【0067】
(b)前記実施形態では、トルク制限装置70は、駆動軸30と回転部材52との間で伝達されるトルクを制限する構成であったが、トルク制限装置70は、例えば、スプール3に釣り糸を均一に巻き付けるレベルワインド機構のウォームシャフトとウォームシャフトに支持される従動ギアとの間のトルクを制限してもよい。また、トルク制限装置70は、スピニングリールのスプールを往復移動させる往復移動機構に回転を伝達する回転部材のトルクを制限する構成であってもよい。また、トルク制限装置70は、駆動軸30と駆動軸30に支持される他の回転部材との間のトルクを制限してもよい。例えば、従動ギアに回転を伝達する回転部材と駆動軸30との間のトルクと制限してもよい。また、スプール軸10とスプール軸10に支持される回転部材との間のトルクを制限してもよい。
【0068】
(c)前記実施形態では、係合部材73が1対のピン部材によって構成されていたが、係合部材73は、例えば、1つのピン部材で構成されてもよい。トルク制限装置70は、少なくとも1つの係合凹部72を有していればよい。
【0069】
(d)前記実施形態では、係合部材73及び回転部材52が樹脂製であったが、係合部材73及び回転部材の少なくとも一方が金属製であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
2 リール本体
30 駆動軸(第1回転部材の一例)
52 回転部材(第2回転部材の一例)
70 トルク制限装置
72 係合凹部
73 係合部材
73a 頭部
73c 直線部
73d 1対の傾斜部
74 付勢部材
100 釣り用リール
C 回転軸
図1
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図9