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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】スピニングリールの糸案内機構
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
A01K89/01 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020179211
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2021087419
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019213640
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】落合 浩士
(72)【発明者】
【氏名】平山 広和
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-042740(JP,A)
【文献】特開2003-289770(JP,A)
【文献】特開2003-284460(JP,A)
【文献】特開平10-327718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0027691(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0020424(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 - 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のロータアームに揺動可能に連結され、スプールに釣り糸を案内するスピニングリールの糸案内機構であって、
前記1対のロータアームの一方に揺動可能に連結されるベール支持部材と、
前記ベール支持部材に固定される固定軸と、
前記固定軸に回転可能に支持され、前記スプールに前記釣り糸を案内するラインローラと、
一端が前記固定軸を介して前記ベール支持部材に支持され、前記ラインローラに前記釣り糸を案内するベールと、
前記ベールの前記一端に設けられ、前記ラインローラの一部を覆うカバー部材と、
前記固定軸の軸線方向に延び前記固定軸の径方向において前記カバー部材の外周面よりも前記固定軸の軸線に近い位置で前記ラインローラに対向して配置される第1部分を有する糸ふけ防止部を有し、前記ベール支持部材に設けられる突起部材と、
を備えた、スピニングリールの糸案内機構。
【請求項2】
前記糸ふけ防止部は、フィン形状であり前記釣り糸に押されたときに撓むことが可能である、
請求項1に記載のスピニングリールの糸案内機構。
【請求項3】
前記ラインローラと前記第1部分との最短距離は1mm以下である、
請求項1又は2に記載のスピニングリールの糸案内機構。
【請求項4】
前記ベール支持部材は、前記固定軸の軸線方向に延びる溝部を有し、
前記突起部材は、前記溝部に差し込まれる差込部さらに有し、前記ベール支持部材に着脱可能に装着されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のスピニングリールの糸案内機構。
【請求項5】
前記差込部は、前記溝部に圧入固定され、
前記突起部材は、前記溝部から前記差込部を引き抜くための工具を引っ掛ける引っ掛け部をさらに有する、
請求項4に記載のスピニングリールの糸案内機構。
【請求項6】
前記固定軸の軸線方向と異なる方向から前記ベール支持部材に差し込まれ、前記溝部から前記差込部を抜け止めする抜け止め部材をさらに備える、
請求項5に記載のスピニングリールの糸案内機構。
【請求項7】
前記抜け止め部材は、頭部を有するピン部材であり、
前記頭部は、前記1対のロータアームにおける前記ベール支持部材との合わせ面によって押さえ込まれている、
請求項6に記載のスピニングリールの糸案内機構。
【請求項8】
前記ベール支持部材及び前記突起部材の一方は、軸線方向と異なる方向に突出する突起を有し、
前記ベール支持部材及び前記突起部材の他方は、前記突起が嵌合する孔部を有し、
前記突起部材は、前記突起と前記孔部とによって前記ベール支持部材から抜け止めされている、
請求項4に記載のスピニングリールの糸案内機構。
【請求項9】
前記突起部材は、前記差込部の一端において前記ベール支持部材の一部を抱え込むように形成されたアーム部をさらに有し、
前記ベール支持部材は、前記アーム部の先端が係合する係合部を有する、
請求項4に記載のスピニングリールの糸案内機構。
【請求項10】
前記突起部材は、前記固定軸の径方向において前記第1部分よりも前記固定軸の軸線から離れた位置で前記カバー部材に対向して配置される第2部分をさらに有する、
請求項1から9のいずれか1項に記載のスピニングリールの糸案内機構。
【請求項11】
前記カバー部材と前記第2部分との最短距離は1mm以下である、
請求項10に記載のスピニングリールの糸案内機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピニングリールの糸案内機構に関する。
【背景技術】
【0002】
スピニングリールは、スプールに釣り糸を案内する糸案内機構を備えている。糸案内機構は、1対のロータアームに揺動可能に連結される。糸案内機構は、ベールと、ベール支持部材と、固定軸と、ラインローラと、を有している。ベールは、ベール支持部材に支持され、ラインローラに釣り糸を案内する。ベール支持部材は、ロータアームに揺動可能に連結される。ラインローラは、固定軸に回転可能に支持され、スプールに釣り糸を案内する(特許文献1参照)。
【0003】
ラインローラによってスプールに釣り糸が案内されるときに、釣り糸に十分な張力が作用していなければ、ラインローラから釣り糸が離れてしまい、糸ふけが生じてしまう。さらに、スプールやベール支持部材に釣り糸が絡まる恐れもある。この問題を解決するために、例えば特許文献1では、糸ふけ防止部材をベール支持部材に設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-327718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スピニングリールでは、より糸ふけが発生しにくい糸案内機構が望まれており、糸案内機構のさらなる改良が望まれている。
【0006】
本発明の課題は、糸ふけが発生しにくいスピニングリールの糸案内機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るスピニングリールの糸案内機構は、1対のロータアームに揺動可能に連結され、スプールに釣り糸を案内する。糸案内機構は、ベール支持部材と、固定軸と、ラインローラと、ベールと、カバー部材と、突起部材と、を備える。ベール支持部材は、1対のロータアームの一方に揺動可能に連結される。固定軸は、ベール支持部材に固定される。ラインローラは、固定軸に回転可能に支持され、スプールに釣り糸を案内する。ベールは、一端が固定軸を介してベール支持部材に支持され、ラインローラに釣り糸を案内する。カバー部材は、ベールの一端に設けられ、ラインローラの一部を覆う。突起部材は、ベール支持部材に設けられる。突起部材は、糸ふけ防止部を有する。糸ふけ防止部は、固定軸の軸線方向に延び固定軸の径方向においてカバー部材の外周面よりも固定軸の軸線に近い位置でラインローラに対向して配置される第1部分を有する。
【0008】
このスピニングリールの糸案内機構では、糸ふけ防止部の第1部分がカバー部材の外周面よりも固定軸の軸線に近い位置でラインローラに対向して配置されるので、ラインローラと糸ふけ防止部との隙間を小さくすることができる。これにより、ラインローラから脱落した釣り糸が糸ふけ防止部によってしごかれるので、釣り糸がループした状態でスプールに巻き付けられることを抑制できる。これにより、糸ふけが発生しにくいスピニングリールの糸案内機構を提供することができる。
【0009】
糸ふけ防止部は、フィン形状であり釣り糸に押されたときに撓むことが可能であってもよい。この場合は、ラインローラと糸ふけ防止部との間の隙間に釣り糸の結び目が引っ掛かることを防止することができる。
【0010】
ラインローラと第1部分との最短距離は1mm以下であってもよい。この場合は、釣り糸がループした状態でスプールに巻き付けられることをさらに抑制できる。
【0011】
ベール支持部材は、固定軸の軸線方向に延びる溝部を有してもよい。突起部材は、溝部に差し込まれる差込部さらに有し、ベール支持部材に着脱可能に装着されてもよい。この場合は、長さが異なる別の突起部材をベール支持部材に装着することが可能になる。すなわち、ラインローラと糸ふけ防止部との隙間の調節が可能になるので、使用する釣り糸の直径を変更した場合でも糸ふけを効果的に抑制することができる。
【0012】
差込部は、溝部に圧入固定されてもよい。突起部材は、溝部から差込部を引き抜くための工具を引っ掛ける引っ掛け部をさらに有してもよい。この場合は、ベール支持部材に対して突起部材を容易に着脱できる。
【0013】
糸案内機構は、固定軸の軸線方向と異なる方向からベール支持部材に差し込まれ、溝部から差込部を抜け止めする抜け止め部材をさらに備えてもよい。この場合は、簡単な構成で突起部材をベール支持部材から抜け止めできる。
【0014】
抜け止め部材は、頭部を有するピン部材であってもよい。頭部は、1対のロータアームにおけるベール支持部材との合わせ面によって押さえ込まれてもよい。この場合は、部品点数の削減が図れる。また、外観が向上する。
【0015】
ベール支持部材及び突起部材の一方は、軸線方向と異なる方向に突出する突起を有してもよい。ベール支持部材及び突起部材の他方は、突起が嵌合する孔部を有してもよい。突起部材は、突起と孔部とによってベール支持部材から抜け止めされてもよい。この場合においても、簡単な構成で突起部材をベール支持部材から抜け止めできる。
【0016】
突起部材は、差込部の一端においてベール支持部材の一部を抱え込むように形成されたアーム部をさらに有しもよい。ベール支持部材は、アーム部の先端が係合する係合部をしてもよい。この場合は、この場合は、簡単な構成で突起部材をベール支持部材から抜け止めできるとともに、ベール支持部材に対して突起部材を容易に着脱できる。
【0017】
突起部材は、固定軸の径方向において第1部分よりも固定軸の軸線から離れた位置でカバー部材に対向して配置される第2部分をさらに有してもよい。この場合は、第2部分がカバー部材に対向して配置されているので、ラインローラから脱落した釣り糸がベール支持部材やスプールに絡まることを抑制できる。
【0018】
カバー部材と第2部分との最短距離は1mm以下であってもよい。この場合は、釣り糸がループした状態でスプールに巻き付けられることをさらに抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、糸ふけが発生しにくいスピニングリールの糸案内機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態が採用されたスピニングリールの縦断面図。
図2】糸案内機構の断面図。
図3】糸案内機構の斜視図。
図4】糸案内機構の斜視図。
図5】第1ベール支持部材の斜視図。
図6】突起部材の斜視図。
図7】糸ふけ防止部周辺の拡大図。
図8】他の実施形態に係る突起部材の斜視図。
図9】他の実施形態に係る突起部材の斜視図。
図10】他の実施形態に係る第1ベール支持部材の斜視図。
図11】他の実施形態に糸案内機構の斜視図。
図12】他の実施形態に糸案内機構の斜視図。
図13】他の実施形態に係る糸案内機構の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態が採用されたスピニングリール100の縦断面図である。スピニングリール100は、リール本体2と、スプール3と、ロータ4と、ハンドル5と、糸案内機構6と、を備えている。
【0022】
リール本体2は、内部空間を有しており、内部空間には周知のオシレーティング機構やロータ駆動機構などが収容されている。
【0023】
スプール3は、外周に釣り糸が巻き付けられる部材である。スプール3は、ハンドル5の回転に伴ってリール本体2を前後方向に往復移動する。
【0024】
ロータ4は、スプール3に釣り糸を巻き付けるための部材である。ロータ4は、ロータ本体部4aと、第1ロータアーム4bと、第2ロータアーム4cと、を有している。第1ロータアーム4bと第2ロータアーム4cは、1対のロータアームの一例であり、ロータ本体部4aの側方においてロータ本体部4aを挟んで互いに対向する位置に形成されている。ロータ4は、ハンドル5の回転に伴ってスプール3の中心軸を中心に回転する。
【0025】
ハンドル5は、リール本体2に回転可能に支持されている。
【0026】
糸案内機構6は、ロータ4とともにスプール3の中心軸を中心に回転し、スプール3に釣り糸を案内する。糸案内機構6は、糸巻き取り姿勢と糸開放姿勢とを取り得るように第1ロータアーム4bと第2ロータアーム4cとに揺動可能に連結される。なお、糸巻き取り姿勢は、スプール3に釣り糸を巻き付けるときの姿勢であり、糸開放姿勢は、スプール3に巻き付けられた釣り糸を繰り出すときの姿勢である。
【0027】
図2は、糸案内機構6の断面図である。図3及び図4は、糸案内機構6の斜視図である。糸案内機構6は、図1から図4に示すように、第1ベール支持部材11と、第2ベール支持部材12と、固定軸13と、ラインローラ14と、ベール15と、カバー部材16と、突起部材17と、を備えている。なお、以下の説明では、固定軸13の軸線Aが延びる方向を軸線方向、軸線方向と直交する方向を径方向、軸線A回りの方向を周方向と呼ぶ。
【0028】
第1ベール支持部材11は、第1ロータアーム4bの先端に揺動可能に装着されている。第2ベール支持部材12は、第2ロータアーム4cの先端に揺動可能に装着されている。
【0029】
図5は、第1ベール支持部材11の斜視図である。第1ベール支持部材11は、カバー部21と、装着部22と、延伸部23と、を有している。カバー部21は、第1ベール支持部材11の前端に配置されている。カバー部21は、図2に示すように、ラインローラ14の一部を覆う。カバー部21は、軸線方向に貫通する貫通孔21aを有している。
【0030】
装着部22は、第1ベール支持部材11の後端に配置されている。装着部22は、第1ロータアーム4bに揺動可能に装着される。
【0031】
延伸部23は、前後方向に延びており、カバー部21と装着部22とを接続する。延伸部23は、収容部23aと、溝部23bと、を有している。収容部23aは、スプール3の外周面に対向する延伸部23の内側に設けられている。収容部23aは、軸線方向において、第1ベール支持部材11側からカバー部材16側に向かう方向に開口している。収容部23aは、前後方向に延びている。収容部23aは、装着部22からカバー部21に近づくにつれて開口の幅が大きくなるように形成されている。
【0032】
溝部23bは、収容部23aの後端側に設けられている。溝部23bは、収容部23aの収容空間に連通している。溝部23bは、軸線方向に延びている。溝部23bは、軸線方向に直交する断面が略T字状に形成されている。溝部23bは、スプール3の外周面に向かう方向に開口している。
【0033】
固定軸13は、第1ベール支持部材11に固定されている。詳細には、図2に示すように、固定軸13は、第1ベール支持部材11の貫通孔21aから挿入される固定ボルト41に螺合して、第1ベール支持部材11に固定されている。固定軸13は、カバー部材16を軸線方向に貫通している。
【0034】
ラインローラ14は、固定軸13に回転可能に支持され、スプール3に釣り糸を案内する。詳細には、ラインローラ14は、固定軸13に装着された軸受42a,42bを介して固定軸13に支持されており、軸線A回りに回転する。
【0035】
ラインローラ14は、第1円筒部14aと、第2円筒部14bと、糸案内溝14cと、を有している。第1円筒部14aは、カバー部材16に近接して配置されている。第1円筒部14aは、軸線方向に延びている。第1円筒部14aの外周面は、糸案内溝14cに近づくにつれて外径が小さくなるように直線状に延びている。第1円筒部14aの内周部には、軸受42aが配置されている。
【0036】
第2円筒部14bは、第1ベール支持部材11に近接して配置されている。第2円筒部14bは、軸線方向に延びている。第2円筒部14bの外端は、カバー部21によって覆われている。第2円筒部14bの外周面は、糸案内溝14cに近づくにつれて外径が小さくなるように直線状に延びている。第2円筒部14bの内周部には、軸受42bが配置されている。
【0037】
糸案内溝14cは、第1円筒部14aと第2円筒部14bの間に配置されている。糸案内溝14cは、第1円筒部14aの外周面及び第2円筒部14bの外周面よりも径方向内側に凹んで形成されている。糸案内溝14cは、周方向に延びている。
【0038】
ベール15は、線材を略U字状に湾曲させた形状を有している。ベール15は、一端が固定軸13を介して第1ベール支持部材11に支持され、他端が第2ベール支持部材12に支持されている。ベール15は、第1ベール支持部材11と第2ベール支持部材12とに揺動可能に支持され、ラインローラ14に釣り糸を案内する。
【0039】
カバー部材16は、ベール15の一端に設けられ、ラインローラ14の一部を覆う。カバー部材16は、略円筒形状であり、ベール15の一端に固定されている。図2に示すように、カバー部材16の外径は、第1円筒部14aの外径よりも大きい。カバー部材16は、第1円筒部14aの外端を覆うように配置されている。カバー部材16の外周面16aは、ラインローラ14に釣り糸を案内する。
【0040】
図6は、突起部材17の斜視図である。突起部材17は、第1ベール支持部材11に設けられる。詳細には、突起部材17は、略板状であり、第1ベール支持部材11に着脱可能に装着されている。
【0041】
突起部材17は、糸ふけ防止部31と、糸誘導部32と、差込部33と、アーム部34と、を有している。
【0042】
糸ふけ防止部31は、図3に示すように、軸線方向に階段状に形成されている。糸ふけ防止部31は、フィン形状であり、一部が収容部23aに収容される。糸ふけ防止部31は、釣り糸に押されたときに撓むことが可能である。詳細には、糸ふけ防止部31は、例えば、剛性の低い樹脂で成形されている。糸ふけ防止部31が釣り糸の結び目に押されたときに、収容部23aの幅方向に撓むことが可能である。これにより、釣り糸の結び目がラインローラ14と糸ふけ防止部31との間の隙間よりも大きい場合でも、ラインローラ14と糸ふけ防止部31との間の隙間に釣り糸の結び目が引っ掛かることを防止することができる。
【0043】
糸ふけ防止部31は、第1部分31aと、第2部分31bと、接続部分31cと、を有している。第1部分31aは、径方向においてカバー部材16の外周面16aよりも固定軸13の軸線Aに近い位置でラインローラ14に対向して配置されている。詳細には、第1部分31aは、径方向において第1円筒部14a、第2円筒部14b及び糸案内溝14cに対向して配置されている。第1部分31aは、軸線方向と略平行に延びている。第1部分31aとラインローラ14との間には隙間が設けられている。
【0044】
図7は、図3における糸ふけ防止部31周辺を拡大した図である。ラインローラ14と第1部分31aとの最短距離D1は1mm以下である。第1円筒部14aと第1部分31aとの最短距離が1mm以下であることがより好ましい。第1円筒部14aと第1部分31aとの最長距離が1mm以下であることがさらに好ましい。すなわち、第1円筒部14aと第1部分31aとの隙間が全体に亘って1mm以下であることがさらに好ましい。また、第2円筒部14bと第1部分31aとの最短距離も1mm以下であることが好ましく、第2円筒部14bと第1部分31aとの隙間が全体に亘って1mm以下であることがさらに好ましい。
【0045】
第2部分31bは、径方向において第1部分31aよりも軸線Aから離れた位置でカバー部材16に対向して配置される。第2部分31bは、第1部分31aに近づくにつれて軸線Aに近づく方向に延びている。カバー部材16と第2部分31bとの最短距離D2は1mm以下である。カバー部材16と第2部分31bとの隙間が全体に亘って1mm以下であることがより好ましい。
【0046】
接続部分31cは、第1部分31aと第2部分31bとの間に配置され、第1部分31aと第2部分31bとを接続する。接続部分31cとカバー部材16との最短距離D3は1mm以下である。接続部分31cとカバー部材16との隙間が全体に亘って1mm以下であることがより好ましい。
【0047】
糸誘導部32は、釣り糸をラインローラ14に案内する。糸誘導部32は、ラインローラ14に向かう方向に延びている。糸誘導部32は、糸ふけ防止部31の第2部分31bに接続される。
【0048】
差込部33は、溝部23bに対応する形状を有しており、溝部23bに着脱可能に差し込まれる。差込部33が溝部23bに嵌合することで、突起部材17の径方向の移動が規制される。
【0049】
図6に示すように、アーム部34は、差込部33の一端に設けられている。アーム部34は、第1ベール支持部材11の一部を抱え込むように形成されている。詳細には、アーム部34は、略C字形状であり、第1ベール支持部材11の収容部23aを区画する壁部23cの一部を抱え込むように形成されている。図4及び図5に示すように、アーム部34の基端は、壁部23cに設けられた凹部23dに嵌合する。凹部23dは、溝部23bの開口に隣接した位置で軸線方向に凹んで形成されている。アーム部34の先端は、壁部23cに設けられた係合部23eに係合する。係合部23eは、壁部23cにおいて収容部23aに向かう方向に凹んで形成されている。アーム部34の先端には、係止突起34aが設けられており、係止突起34aが係合部23eに係合することで、突起部材17が溝部23bから抜け止めされる。
【0050】
上記構成のスピニングリール100の糸案内機構6では、糸ふけ防止部31の第1部分31aと第2部分31bとによって、糸ふけ防止部31が固定軸13の軸線方向に階段状に形成されているので、ラインローラ14と糸ふけ防止部31との隙間を小さくすることができる。これにより、ラインローラ14から脱落した釣り糸が糸ふけ防止部31によってしごかれるので、釣り糸がループした状態でスプール3に巻き付けられることを抑制できる。また、第2部分31bがカバー部材16に対向して配置されているので、ラインローラ14から脱落した釣り糸が第1ベール支持部材11やスプール3に絡まることを抑制できる。
【0051】
また、糸ふけ防止部31が固定軸13の軸線方向に階段状に形成されているので、ベール15、カバー部材16或いは糸誘導部32からラインローラ14に至るまでの釣り糸の侵入経路が直線的ではない。さらに、ラインローラ14と第1部分31aとの最短距離D1が1mm以下であり、接続部分31cとカバー部材16との最短距離D3が1mm以下である。このため、糸案内機構6では、従来よりもさらに糸ふけが発生しにくい。なお、第1円筒部14aと第1部分31aとの隙間、及びカバー部材16と第2部分31bとの隙間を1mm以下にした場合は、さらに糸ふけが発生しにくくなる。
【0052】
ここで、糸ふけを効果的に抑制することができる糸ふけ防止部31とラインローラ14との隙間は、スプール3に巻き付けられる釣り糸の直径に応じて変化する。本実施形態では、突起部材17が第1ベール支持部材11に着脱可能に装着されている。このため、使用する釣り糸の直径が変わった場合は、長さのみが異なる別の突起部材を第1ベール支持部材11に装着することで、ラインローラ14と糸ふけ防止部31との隙間の調節が可能になる。これにより、糸案内機構6では、使用する釣り糸の直径を変更した場合でも糸ふけを効果的に抑制することができる。
【0053】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0054】
前記実施形態では、突起部材17が第1ベール支持部材11と別体であったが、突起部材17が第1ベール支持部材11と一体であってもよい。
【0055】
突起部材17の形状及び材質は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、糸誘導部32は省略されてもよい。また、ラインローラ14と第1部分31aとの最短距離D1は1mm以下でなくてもよいし、カバー部材16と第2部分31bとの最短距離D2は1mm以下でなくてもよい。また、カバー部材16と接続部分31cとの最短距離D3は1mm以下でなくてもよい。
【0056】
突起部材17のアーム部34を第1ベール支持部材11の係合部23eに係合させて、突起部材17を第1ベール支持部材11から抜け止めしていたが、アーム部34は省略されてもよい。例えば、差込部33を溝部23bに圧入固定して、突起部材17を第1ベール支持部材11から抜け止めしてもよい。この場合、図8に示すように、突起部材17に溝部23bから差込部33を引き抜くための工具を引っ掛ける引っ掛け部35を設けてもよい。引っ掛け部35は、例えば、軸線方向に貫通する貫通孔であってもよい。
【0057】
第1ベール支持部材11及び突起部材17の一方に軸線方向と異なる方向に突出する突起を設けて、第1ベール支持部材11及び突起部材17の他方に突起が嵌合する孔部を設けて、突起と孔部とによって突起部材17を第1ベール支持部材11から抜け止めしてもよい。例えば、図9及び図10に示すように、突起部材17の差込部33に突起36を設けて、第1ベール支持部材11の壁部23cに突起36に嵌合する孔部23fを設けてもよい。
【0058】
突起部材17は、図11に示すように、軸線方向と異なる方向から第1ベール支持部材11に差し込まれる抜け止め部材44によって第1ベール支持部材11から抜け止めされてもよい。抜け止め部材44は、例えばイモネジであり、第1ベール支持部材11の壁部23cに設けられた図示しない挿入孔から挿入されてもよい。或いは、図12に示すように、抜け止め部材44は、頭部44aを有するピン部材であってもよい。この場合、抜け止め部材44の頭部44aは、第1ロータアーム4bにおける第1ベール支持部材11の装着部22との合わせ面4dによって押さえ込まれてもよい。
【0059】
糸ふけ防止部31の第2部分31bは、省略されてもよい。この場合、例えば図13に示すように、糸誘導部132は、糸ふけ防止部31の第1部分31aに接続されてもよい。この場合、カバー部材16と糸誘導部132との最短距離は1mm以下であることが好ましい。
【符号の説明】
【0060】
3 スプール
4b 第1ロータアーム
4c 第2ロータアーム
4d 合わせ面
6 糸案内機構
11 第1ベール支持部材
13 固定軸
14 ラインローラ
15 ベール
16 カバー部材
17 突起部材
23b 溝部
23e 係合部
23f 孔部
31 糸ふけ防止部
31a 第1部分
31b 第2部分
31c 接続部分
32 糸誘導部
33 差込部
34 アーム部
35 引っ掛け部
36 突起
44 抜け止め部材
44a 頭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13