(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】音響発生装置
(51)【国際特許分類】
G10K 11/175 20060101AFI20240522BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G10K11/175
H04R1/02 104Z
H04R1/02 101E
(21)【出願番号】P 2020180653
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000223182
【氏名又は名称】TOA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】空山 雅一
(72)【発明者】
【氏名】稲畑 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】新井 圭介
(72)【発明者】
【氏名】竹本 悠平
(72)【発明者】
【氏名】藤井 克弥
(72)【発明者】
【氏名】埜中 靖夫
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-059690(JP,A)
【文献】特開2013-003393(JP,A)
【文献】特開2011-123141(JP,A)
【文献】特開2008-124918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/175-11/178
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスピーカーが同一空間内においてそれぞれ
音源の異なる音響信号を放音し、
前記複数のスピーカーのうち少なくとも1つは前記同一空間の上部領域にのみ高周波数帯域用の音響信号を発生し、
前記複数のスピーカーのうち少なくとも1つは前記同一空間の下部領域にのみ中低域周波数用の音響信号を発生することで、
前記同一空間の近傍で発せられる
前記音源とは無関係の音をマスキングすることを特徴とする音響発生装置。
【請求項2】
前記複数のスピーカーは前記同一空間内の壁面にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1に記載の音響発生装置。
【請求項3】
前記複数のスピーカーはそれぞれが前記同一空間内に滞在する人の前後方向に配置され、
前記高周波数帯域用の音響信号を発生させるスピーカーは前記同一空間内に滞在する人の前方に配置され、
前記中低周波数帯域用の音響信号を発生させるスピーカーは前記同一空間内に滞在する人の後方に配置される
ことを特徴とする請求項1ないし請求項2に記載の音響発生装置。
【請求項4】
前記複数のスピーカーはそれぞれが隣り合うように配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項2に記載の音響発生装置。
【請求項5】
前記複数のスピーカーは、前記壁面に設置されるパネル材に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の音響発生装置。
【請求項6】
前記パネル材は前記同一空間の近傍で発せられる音を吸音する吸音シートが貼着されていることを特徴とする請求項5に記載の音響発生装置。
【請求項7】
前記複数のスピーカーが発生する音響信号は、自然音であることを特徴とする請求項1ないし請求項6に記載の音響発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォンブースやテレワークなどに使用する一人用個室でのサウンドマスキング技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ワークスタイルの変化により、場所に縛りがない状態で働く人たちが増えてきた。様々な業種の人たちと意見交換ができ、新たな発想を生み出す場としてコワーキングスペースが利用されている。そのような場において、例えばオンラインでの会議や周りに聞かれたくない話などをする可能性が出てくる。そういった場においては、パーティションで囲われた半個室の空間や専用の個室を用いたりする。
【0003】
そういった空間等には音楽などを放音したりすることで、外部からの音を意識させないようにしている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、空間を間仕切る間仕切り板としてのパーティション内にスピーカーを有しており、そこからバックグラウンドミュージック(BGM)やアナウンスを流すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では音楽等を単純に流すだけであって、自分のいる空間の外部からの音を完全にマスキングすることはできていない。
【0006】
本願は上記の事情に鑑みてなされたものであり、利用者が滞在する空間の外で発生した音を確実にマスキングする音響発生装置により、利用者にとって快適な空間を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による第1の実施形態は、複数のスピーカーが同一空間内においてそれぞれ異なる音響信号を放音し、前記音響信号は前記同一空間の近傍で発せられる音をマスキングする音響装置を提供する。
【0008】
この構成によると、同一空間内に複数の音響信号を放音しているので、その空間の近傍で発生した音に対してマスキングができ、空間内の利用者が快適に過ごすことができる。
【0009】
本発明による第2の実施形態では、前記音響信号はそれぞれ周波数帯域が異なるように構成される。
【0010】
この構成によると、複数のスピーカーから放音される複数の音響信号の周波数帯域がそれぞれ異なっているため、各音響信号の目的や役割に応じた放音が実現できる。
【0011】
本発明による第3の実施形態では、前記複数のスピーカーの内、少なくとも1つは周波数帯域が中低帯域の音響信号を放音するように構成される。
【0012】
この構成によると、人の発する音声帯域をほぼカバーすることができ、音声のマスキング効果がより明確になる。
【0013】
本発明による第4の実施形態では、前記複数のスピーカーの内、少なくとも1つは前記同一空間の下部領域に放音するように構成される。
【0014】
この構成によると、空間内に滞在する利用者の頭部、特に耳付近に直接当たらないため、不快になりえるマスキング音を意識させずに音声マスキングを実現できる。
【0015】
本発明による第5の実施形態では、前記複数のスピーカーは前記同一空間内の壁面にそれぞれ配置されるように構成される。
【0016】
この構成によると、音の発生源から近い距離に複数のスピーカーを配置することができるのでマスキングの効果が高まる。
【0017】
本発明による第6の実施形態では、前記複数のスピーカーはそれぞれが対向するように配置されるように構成される。
【0018】
この構成によると、空間内にいる利用者を挟み込むような形で複数のスピーカーが配置されるため、音に包まれているような感覚になり、居心地の良い空間となる。
【0019】
本発明による第7の実施形態では、前記複数のスピーカーはそれぞれが前記同一空間内に滞在する人の前後方向に配置されるように構成される。
【0020】
この構成によると、空間内で耳障りとなるマスキング音を意識することなく利用者が滞在することができる。
【0021】
本発明による第8の実施形態では、前記複数のスピーカーはそれぞれが隣り合うように配置されるように構成される。
【0022】
この構成によると、空間内で耳障りとなるマスキング音を意識することなく利用者が滞在することができる
【0023】
本発明による第9の実施形態では、前記複数のスピーカーは、前記壁面に設置されるパネル材に取り付けられているように構成される。
【0024】
この構成によると、スピーカーを隠すことができ、利用者は空間内でスピーカーを意識することなく滞在できる。また、スピーカーがあることによる空間内での圧迫感が軽減される。
【0025】
本発明による第10の実施形態では、前記パネル材は前記同一空間の近傍で発せられる音を吸音する吸音シートが貼着されるように構成される。
【0026】
この構成によると、マスキング音だけでなく吸音シートでも吸音が行えるので、マスキング効果が高くなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、異なる音響信号を放音することで、利用者に耳障りとなりがちなマスキング音を意識させることなく、利用者の利用空間の近傍で発生する音を確実にマスキングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態1による音響発生装置の施工例を示した図である。
【
図2】
図1の高周波数帯域用音響発生装置1の一構成例を示した正面図である。
【
図3】
図1の高周波数帯域用音響発生装置11の一構成例を示した背面図である。
【
図4】
図1の高周波数帯域用音響発生装置1の一構成例を示した右側面図である。
【
図5】
図2のA-A切断線による切断面を示した断面図である。
【
図6】
図1の中低周派数帯域用音響発生装置2の一構成例を示した正面図である。
【
図7】
図1の中低波周波数帯域用音響発生装置1の一構成例を示した背面図である。
【
図8】
図7のB-B切断線による切断面を示した断面図である。
【
図9】本発明の実施形態2による音響発生装置の施工例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明をする。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明の実施の形態1による高周波数帯域用音響発生装置1および中低周波数帯域用音響発生装置2の施工例を示した図であり、比較的小規模な複数の個室100、101・・・にそれぞれ設置される。
【0031】
個室100はその中に利用者90aが入って、パーソナルコンピューター(PC)80を用いて仕事やオンライン会議、ウェビナーの受講、音楽や動画の視聴などを行う。また、
図9に示すような携帯型電子機器81を用いて通話などを行う空間である。
【0032】
高周波数帯域用音響発生装置1および中低周波数帯域用音響発生装置2は、平坦な前面を有し、前面の大きさに比べて短い奥行きを有する板状の形状からなる。例えば、前面は各辺500~1000mmの矩形からなり、奥行きは50mm程度の薄型形状からなる。上記の大きさはあくまで一例であって、高周波数帯域用音響発生装置1および中低周波数帯域用音響発生装置2は、施工面の面積の半分程度の大きさであっても、施工面と同じ大きさであっても、施工面より大きくともよい。
【0033】
施工面10aは高周波数帯域用音響発生装置1が取り付けられる面であり、建物内の任意の面、例えば、壁面、天井面、床面などを施工面10aとして用いることができる。施工面10aは、例えば、躯体以外の室内パーティションなどを施工面10aとすることもできる。施工面10aは、高周波数帯域用音響発生装置1が取り付けることができる平坦面であればよく、その素材は、コンクリート、石膏ボード、木材、金属、樹脂などのいずれであってもよい。中低域周波数帯域用音響発生装置2も同じく施工面10bに取り付けられる。
【0034】
高周波数帯域用音響発生装置1は、主に個室100の上部領域の空間に対しておおよそ900Hz~10000Hz程度の帯域の音を放音する。放音される音源は、主に自然音を利用し、例えば、鳥のさえずりやコウロギや鈴虫など昆虫の鳴き声などを使用する。音源はこれに限らず、音楽などでもよい。
【0035】
中低周波数帯域用音響発生装置2は、主に個室100の下部領域の空間に対しておおよそ20~900Hz程度の帯域の音を放音する。放音される音源は、高周波数帯域用音響発生装置1と同様に主に自然音を利用し、例えば、小川のせせらぎや滝の音、沢の音、波の音などを使用する。音源はこれに限らず、音楽などでもよい。
【0036】
通常マスキング音には、意味を持たないノイズ音や空調から出る音を模した音が利用されるため、個室100の利用者90aは不快に思ったり、違和感を持ったりする。自然音を利用することで、個室100に滞在する利用者90aは、居心地のよい感覚を得ることができる。
【0037】
これらの音源は、図示しないパーソナルコンピューターやスマートフォンなど音源を記憶する記憶部を有する機器に記憶され、図示しない増幅器で増幅した後に、高周波数帯域用音響発生装置1と中低周波数帯域用音響発生装置2から放音される。また、これに限らず、音源はクラウド上で保持しておき、必要な時にクラウド上からストリーミングもしくはPC等のローカル機器にダウンロードして放音することもできる。
【0038】
実施例1では、高周波数帯域用音響発生装置1は施工面10aに、中低周波数帯域用音響発生装置2は施工面10bに個室100の利用者90aの前後方向に対向するように設置されている。これは、人間の心理的に前方からの音には注意が向きやすく、後方からの音には注意が向きにくいという性質を利用している。高周波数帯域用音響発生装置1からは上述の通り、比較的高い音が放音される。(例えば、鳥の鳴き声)これによって高い周波数帯域の音をマスキングすると同時に、個室100の利用者90aの注意を惹くようにし、マスキングに適しているものの、耳に残りやすい中低周波数帯域用音響発生装置2から放音される中低周波数帯域のマスキング音を意識させないようにしている。
【0039】
高周波数帯域用音響発生装置1と中低周波数帯域用音響発生装置2で使われる音源は同一のもの(全帯域を含む音源)であり、それぞれ、音源内の高域成分や中低域成分を図示しないイコライザーで持ち上げたり、高域成分や中低域成分をカットするフィルターを用いたりして採用する。もちろん、それぞれの帯域で別の音源を用意して採用することもできる。
【0040】
実施例1では、個室100の利用者90aの前後方向に対向するように高周波数帯域用音響発生装置1と中低周波数帯域用音響発生装置2が設置されるが、音響発生装置の設置の形態はこれに限られない。例えば、利用者90aの左右を挟むように設置してもよいし、利用者の前と右、後ろと左といった隣り合う施工面に配置されてもよい。隣り合う面については、後ほど
図9を用いて説明する。
【0041】
このように構成することで、個室100の隣にある個室101で発生した音をマスキングすることができる。また、マスキングするのは隣り合う部屋からの音だけでなく、個室100の近傍にある空間、例えば、廊下やオープンスペース、喫煙スペース、カフェスペースなどから発生する音も個室100内で聞こえないようにマスキングする。
【0042】
図2は、高周波数帯域用音響発生装置1の正面図である。高周波数帯域用音響発生装置の中心部分に縦長のスリット1aが複数形成されている。スリット1aの後ろにはツィーター40が取り付けられている。
【0043】
実施例1では、スリット1aの形状を縦長としているが、ツィーター40から放音される音を遮るようなものでなければ、どんな形状でもよい。例えば、横長であっても、斜線であっても、複数の円が集まったような形状であってもよい。
【0044】
図3は、高周波数帯域用音響発生装置1の背面図である。ツィーター40を中心として、その周りには吸音材60が複数敷き詰められている。吸音材60は、例えばグラスウールやホワイトウール、軟質ウレタン、架橋ポリエチレンフォーム、メラミンフォームなどが使われるが、これらに限らず、吸音性能がある材質であれば採用することができる。これによって、例えば、個室100の隣にある個室101で発生した音を吸音することができる。また、吸音するのは隣り合う部屋からの音だけでなく、個室100の近傍にある空間、例えば、廊下やオープンスペース、喫煙スペース、カフェスペースなどから発生する音も個室100内で聞こえないように吸音する。
【0045】
図4は、高周波数帯域用音響発生装置1の右側面図であり、施工面10aに取り付けられている態様を示している。高周波数帯域用フロントパネル3の表面には吸音シート50が貼着されており、高周波数帯域用音響発生装置1の高周波数帯域用フロントパネル3の周縁部付近にはフレーム材4aと4bが設置され、フレーム材4aと4bには取付フック20が設置されている。取付フック20および支持フック21は、施工面10aに対し、高周波数帯域用音響発生装置1を着脱可能に取り付けるための取付手段である。高周波数帯域用音響発生装置1の取付フック20を施工面10aの支持フック21と係合させることにより、高周波数帯域用音響発生装置1を施工面10aに取り付けることができる。
【0046】
図5は
図2で示しているA-A切断線による切断面を示した断面図である。上述の通り、高周波数帯域用音響発生装置1の表面には吸音シート50が貼着されている。吸音シート50は、例えば、グラスウールやホワイトウール、軟質ウレタン、架橋ポリエチレンフォーム、メラミンフォームなどをシート状に加工したものである。吸音材60と同様に吸音性能がある材質であれば採用することができる。
【0047】
吸音シート50及び吸音材60は、例えば、個室100に隣り合う個室101内で発生する音を吸音する。また、吸音するのは隣り合う部屋からの音だけでなく、個室100の近傍にある空間、例えば、廊下やオープンスペース、喫煙スペース、カフェスペースなどから発生する音も個室100内で聞こえないように吸音する。
【0048】
図6は、中低周波数帯域用音響発生装置2の正面図である。中低周波数帯域用フロントパネル6を有しており、
図5で説明をした吸音シート50が特定領域6aを除き貼着されている。
【0049】
図7は、中低周波数帯域用音響発生装置2の背面図である。エキサイター(励振装置)30を中心として、その周りには吸音材60が複数敷き詰められている。エキサイター30は中低周波数帯域用フロントパネル6に支持され、フロントパネル6を振動させて前方に放音する。エキサイター30は図示しない磁気回路及びボイスコイルを内蔵し、外部から入力される音響信号に基づいて、磁気回路及びボイスコイルが前後方向に相対的に移動して振動する。
【0050】
つまり、中低周波数帯域用音響発生装置2全体もしくは特定領域6aをエキサイター30で振動させることで、中低周波数帯域の音響信号を放音している。エキサイター30の周辺では特に放音の中心となっているため、
図6の特定領域6aに吸音シート50を貼着しないようにしている。
【0051】
フレーム材7aと7b支持フック20cと20dの説明は
図3及び
図4と重複するため割愛する。
【0052】
図8は、
図7で示したB-B切断線による切断面を示した断面図である。
図6と
図7の説明と同様に、中低周波数帯域用フロントパネル6に吸音シート50が貼着されているが、エキサイター30周辺では吸音シート50を貼着しないため、断面図となっていない。
【実施例2】
【0053】
図9は、本発明の実施の形態2による音響発生装置の施工例を示した図である。一例では、半個室200は、一部の壁がない空間であって、施工面10dの上部と下部が空いている状態を表している。これに限らず、施工面がない状態、つまり、三面の施工面で利用者90bが囲われている状態であってもよい(
図9で説明すると、利用者90bの左側が空いている状態)。
【0054】
この半個室200内では、利用者90bが携帯型電子機器81を使用して、通話(テレビ通話も含む)をしたり、動画を視聴したりする。利用者が使用する電子機器は、この例に限らず通話可能な電子機器が施工面10cに設置されていてもよいし、通話相手の姿を映すためのモニターと利用者90bの音声を収音するマイクロホンや通話相手の音声を拡声するスピーカーがそれぞれ施工面10cに設置されてもよい。
【0055】
高周波数帯域用音響発生装置1は施工面10cに設置され、中低周波数帯域用音響発生装置2は施工面10cに隣り合う施工面10dに設置されている。このように設置することでも、実施例1と同様の効果が得らえる。
【0056】
実施例1および実施例2では、高周波数帯域用音響発生装置1および中低周波数帯域用音響発生装置2はそれぞれ1つずつ設置しているが、それぞれを複数設置してもよい。
【0057】
実施例1を例にして説明をすると、施工面10aおよび施工面10bの他に、利用者90aの左右にある施工面に対して、左の施工面に高周波数帯域用音響発生装置1を設置し、右側の施工面に中低周波数帯域用音響発生装置2を設置する。四面から自然音が流れてくることで、まるで本当の自然に囲まれたかのような感覚に陥ることができると同時に、マスキング効果を高められる。
【0058】
また、施工面は、複数なくともよい。例えば、円柱形状または円柱形状の一部を切り欠いたような空間であっても高周波数帯域用音響発生装置1および中低周波数帯域用音響発生装置2が設置できれば、問題ない。この場合であれば、1枚の施工面で利用者を取り囲むようになるので、同じ面で隣り合うように設置することとなる。ここでいう「隣り合う」は、複数のスピーカーを単純に並列して設置させることだけに限定されず、高さ方向に対しての上下は関係ない。つまりは、
図9を用いて説明すると、高周波数帯域用音響発生装置1と中低周波数帯域用音響発生装置2は、高さ方向に対して上下関係(高周波数帯域用音響発生装置1が上部に設置されていて、中低周波数帯域用音響発生装置2が下部に設置されている)があるが隣り合うといえる。
【0059】
高周波数帯域用音響発生装置1および中低周波数帯域用音響発生装置2は水平方向に放音するように設置した状態で説明したが、施工面の形状や所望の放音領域に向けるために角度をつけて設置してもよい。その場合、図示しない角度調整アタッチメントを取付フック20および支持フック21の間に取り付ける。
【0060】
音響発生装置と施工面を取付フック20および支持フック21で支持したが、支持方法はこれらに限らず、施工面に穴をあけ、音響発生装置にその穴に挿通する棒状の支持部材を設けてもよい。支持部材は円柱形状であっても、多角柱形状であってもよい。
【0061】
音響発生装置は、矩形に限らず、鳥を模した形状や、木を模した形状、月を模した形状、川を模した形状などでもよい。これによって音源との一体感が生まれ、より居心地の良い空間を演出できる。
【符号の説明】
【0062】
1 高周波数帯域用音響発生装置
2 中低周波数用帯域音響発生装置
3 高周波数帯域用フロントパネル
4a~4b フレーム材
6 中低周波数帯域用フロントパネル
10a~10d 施工面
20a~20d 取付フック
21 支持フック
30 エキサイター
40 ツィーター
50 吸音シート
60 吸音材
80 パーソナルコンピューター
81 携帯型電子機器
90a~90b 利用者
100~101 個室
200 半個室