(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】案内音報知システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/005 20060101AFI20240522BHJP
G08G 1/07 20060101ALI20240522BHJP
G08G 1/08 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G08G1/005
G08G1/07 E
G08G1/08 C
(21)【出願番号】P 2020183769
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 尚之
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-068335(JP,A)
【文献】特開2012-113585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/005
G08G 1/07
G08G 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者の進行方向に対して上流側
の第1の交差点
に配置された、第1の信号制御機と、該第1の信号制御機に接続し、前記第1の交差点の近傍に設け、前記進行方向に対して点灯制御を行う第1の歩行者用信号灯器と、前記第1の信号制御機に接続し、前記進行方向に対して前記第1の交差点の上流側に配置した視覚障害用の第1の歩行者検出部と、前記第1の信号制御機に接続し、前記第1の歩行者用信号灯器と連動して、案内音を出力する第1の案内音出力部と、
前記歩行者の前記進行方向に対して下流側の第2の交差点に配置された、前記第1の信号制御機と接続した第2の信号制御機と、該第2の信号制御機に接続し、前記第2の交差点の近傍に設け、前記進行方向に対して点灯制御を行う第2の歩行者用信号灯器と、前記第2の信号制御機に接続し、前記進行方向に対して前記第2の交差点の上流側に配置した視覚障害用の第2の歩行者検出部と、前記第2の信号制御機に接続し、前記第2の歩行者用信号灯器と連動して、前記案内音を出力する第2の案内音出力部とから構成される案内音報知システムであって、
前記第1の信号制御機は、前記第1の歩行者検出部から検出信号を受信した際
は、前記第1の歩行者用信号灯器が青信号の点灯時に前記第1の案内音出力部から
、前記第1の歩行者検出部によって検出した前記歩行者に対して、前記進行方向に存在する横断歩道の横断を案内する横断案内音の出力を開始し、
前記第2の信号制御機は、
前記第2の歩行者検出部から検出信号を受信した際は、前記第2の歩行者用信号灯器が青信号の点灯時に前記第2の案内音出力部から、前記第2の歩行者検出部によって検出した前記歩行者に対して、前記進行方向に存在する横断歩道の横断を案内する横断案内音の出力を開始し、
前記第1の信号制御機
を介して前記第1の歩行者検出部の検出信号に基づく通知信号を受信
した際は、前記第2の歩行者用信号灯器が青信号の点灯時に、前記第2の案内音出力部から
前記第1の歩行者検出部によって検出した前記歩行者に対して、前記第2の交差点の位置方向を案内する位置方向案内音の出力を開始することを特徴とする案内音報知システム。
【請求項2】
前記進行方向の反対方向に対して、前記横断案内音を出力する前記第2の案内音出力部から前記位置方向案内音を出力することを特徴とする請求項1に記載の案内音報知システム。
【請求項3】
前記第1の案内音出力部の前記横断案内音の出力から所定時間後に、前記第2の案内音出力部から前記位置方向案内音の出力を開始することを特徴とする請求項1又は2に記載の案内音報知システム。
【請求項4】
前記所定時間は前記第1の交差点及び第2の交差点間の距離に基づいて、設定されることを特徴とする請求項3に記載の案内音報知システム。
【請求項5】
前記位置方向案内音は、交差点横断時に出力される前記横断案内音と同じ案内音であることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の案内音報知システム。
【請求項6】
前記位置方向案内音は、交差点横断時に出力される前記横断案内音と異なる案内音であることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の案内音報知システム。
【請求項7】
前記位置方向案内音は、前記第2の歩行者用信号灯器が青信号の点灯開始から数秒間のみ出力する、又は、青信号の点灯開始から数秒間のみ前記横断案内音より大きい音量又は高音で出力し、その後は前記横断案内音を出力することを特徴とする請求項6に記載の案内音報知システム。
【請求項8】
前記第2の信号制御機は、前記通知信号を入力した際に既に前記第2の歩行者検出部から検出信号を受信している場合、又は前記通知信号を入力してから前記第2の歩行者用信号灯器が青信号の点灯を開始する前に、前記第2の歩行者検出部から前記検出信号を受信した場合は、前記第2の案内音出力部から前記位置方向案内音の出力するのではなく、前記横断案内音の出力を行うことを特徴とする請求項6又は7に記載の案内音報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者用信号灯器の青信号が点灯時に案内音を出力する案内音報知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、押ボタン箱に設けたスイッチが感知状態になり、歩行者用信号灯器が青色点灯に切換わると、案内音出力装置から案内音が出力される音案内システムが開示されている。視覚に障害を有する歩行者は、横断しようとする交差点の横断歩道に対して、青信号の点灯中に案内音が出力されるため、安全に横断歩道を通過することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、案内音を利用して横断歩道を渡った歩行者は、継続して同じ進行方向に移動する場合に、次の視覚障害者用の案内音出力装置を備えた交差点までどの程度の距離があるのか、その交差点の方向が分からないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、横断歩道を渡った後の視覚障害を有する歩行者に対して、進行方向に存在する次の案内音出力部を備えた交差点のおおよその位置、方向を報知する案内音報知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る案内音報知システムは、歩行者の進行方向に対して上流側の第1の交差点に配置された、第1の信号制御機と、該第1の信号制御機に接続し、前記第1の交差点の近傍に設け、前記進行方向に対して点灯制御を行う第1の歩行者用信号灯器と、前記第1の信号制御機に接続し、前記進行方向に対して前記第1の交差点の上流側に配置した視覚障害用の第1の歩行者検出部と、前記第1の信号制御機に接続し、前記第1の歩行者用信号灯器と連動して、案内音を出力する第1の案内音出力部と、前記歩行者の前記進行方向に対して下流側の第2の交差点に配置された、前記第1の信号制御機と接続した第2の信号制御機と、該第2の信号制御機に接続し、前記第2の交差点の近傍に設け、前記進行方向に対して点灯制御を行う第2の歩行者用信号灯器と、前記第2の信号制御機に接続し、前記進行方向に対して前記第2の交差点の上流側に配置した視覚障害用の第2の歩行者検出部と、前記第2の信号制御機に接続し、前記第2の歩行者用信号灯器と連動して、前記案内音を出力する第2の案内音出力部とから構成される案内音報知システムであって、前記第1の信号制御機は、前記第1の歩行者検出部から検出信号を受信した際は、前記第1の歩行者用信号灯器が青信号の点灯時に前記第1の案内音出力部から、前記第1の歩行者検出部によって検出した前記歩行者に対して、前記進行方向に存在する横断歩道の横断を案内する横断案内音の出力を開始し、前記第2の信号制御機は、前記第2の歩行者検出部から検出信号を受信した際は、前記第2の歩行者用信号灯器が青信号の点灯時に前記第2の案内音出力部から、前記第2の歩行者検出部によって検出した前記歩行者に対して、前記進行方向に存在する横断歩道の横断を案内する横断案内音の出力を開始し、前記第1の信号制御機を介して前記第1の歩行者検出部の検出信号に基づく通知信号を受信した際は、前記第2の歩行者用信号灯器が青信号の点灯時に、前記第2の案内音出力部から前記第1の歩行者検出部によって検出した前記歩行者に対して、前記第2の交差点の位置方向を案内する位置方向案内音の出力を開始することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る案内音報知システムによれば、視覚障害を有する歩行者に対して、進行方向に存在する次の交差点の案内音出力部からの位置方向案内音を出力することにより、次の案内音出力部を備えた交差点のおおよその位置、方向を、交差点に到達する前に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】案内音報知システムのシステム構成図である。
【
図2】案内音報知システムの案内音出力のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は案内音報知システムのシステム構成図であり、歩行者Wが道路S1におけるA方向に進行する場合に歩行者Wの進行方向に対して、上流側である第1の交差点が交差点C1、下流である第2の交差点が交差点C2となる。A方向と逆方向に進行する場合は、上流側の交差点が交差点C2となり、下流側の交差点が交差点C1となる。
【0010】
各交差点Cには信号制御機10が設置され、交差点C1、C2には、それぞれ1機の信号制御機11、12が信号灯器を設置した電柱等に取り付けられている。
【0011】
箱状の筐体から成る信号制御機11、12は、互いに無線又は有線により接続されており、相互通信を可能としている。信号制御機11、12はネットワークNによって直接通信を行ってもよいし、管理センタ等に設置した中央装置を介して通信を行うようにしてもよい。
【0012】
なお、道路S1に対して隣接する交差点C1、C2の信号制御機11、12の接続について説明したが、交差点C1、C2のA方向、A方向の逆方向の道路S1の更に先に存在する交差点C、及び交差点C1、交差点C2と交差する道路S2に存在する交差点Cにそれぞれ設置された信号制御機11、12に対しても、ネットワークNを介して接続され、相互通信を可能としている。
【0013】
それぞれの交差点Cに設置された信号制御機10には、各交差点Cの近傍に設置された歩行者用、車両用の灯器を含む信号灯器20と、視覚障害を有する歩行者用の歩行者検出部30と、この歩行者検出部30からの入力に応じて、横断案内音Gを出力する案内音出力部40とが接続されている。
【0014】
また、信号制御機10は、図示しない管理センタ等に設置した中央装置と接続されており、この中央装置から信号制御機10に対して信号灯器20の点灯周期等の各種設定や、案内音出力部40に対して横断案内音Gを出力する時間帯や音量の各種設定を行うことが可能である。
【0015】
交差点Cの交差する主道路、従道路に設置された複数の信号灯器20は、信号制御機10に記憶されている点灯テーブルに基づいて、点灯周期を繰り返している。
【0016】
歩行者検出部30は視覚障害を有する歩行者Wが所持する端末、例えば非接触式磁気カードや携帯電話端末と狭域通信を行うことで、歩行者Wを検出する。このように、歩行者検出部30は無線通信装置を用いたり、視覚障害者用の押ボタンを備えた押ボタン箱を用いることができる。
【0017】
そして、歩行者検出部30は交差点Cにおける横断歩道Hを横断しようとする歩行者Wの検出信号を、信号制御機10に対して出力する。信号制御機10で歩行者Wの検出信号が入力されると、検出信号に対応する横断歩道Hの歩行者用の信号灯器20が青信号を点灯している間に、案内音出力部40の横断案内音Gが継続して出力される。
【0018】
案内音出力部40は、交差点Cの四隅にそれぞれ設置されており、歩行者Wが横断する方向の横断歩道Hを挟んで設置された案内音出力部40から横断案内音Gが出力される。また、案内音出力部40から後述する位置方向案内音G’を出力させることもできる。
【0019】
横断歩道Hの歩行者用の信号灯器20が赤信号を点灯しているときに、横断歩道Hの歩行者検出部30から歩行者Wの検出信号が入力されると、次の歩行者用の信号灯器20の青信号の点灯のタイミングで、又は青信号を点灯、点滅しているときに歩行者Wの検出信号が入力されると、1周期後の青信号の点灯のタイミングで、道路Sを挟んで横断歩道Hの反対側に設置された案内音出力部40から、横断歩道Hに対応する横断案内音Gの出力が開始される。
【0020】
そして、案内音出力部40から出力を開始した横断案内音Gは、青信号の点滅する直前まで継続され、横断案内音Gが終了することでもうすぐ歩行者用の信号灯器20が赤信号に切り換わることを歩行者Wに通知する。
【0021】
なお、案内音出力部40は、横断歩道Hの方向により異なる横断案内音Gを出力し、一方向の道路S1は例えば「カッコー、カッコー」の横断案内音G、直交する他方向の道路S2は例えば「ピヨピヨ」の横断案内音Gが出力するよう設定されている。
【0022】
このように、横断案内音Gの種類と、横断案内音Gが出力される方向から、横断したい横断歩道Hを間違えることなく、歩行者Wは進行することができる。
【0023】
図2は、視覚障害を有する歩行者Wが
図1においてA方向に進行する場合の案内音報知システムにおける横断案内音出力のフローチャート図である。歩行者Wが道路S1の交差点C1を通過し、交差点C2に至る場合に、ステップST1において、信号制御機11で歩行者検出部31から検出信号が入力されたか否かの判定をする。
【0024】
この検出信号は、A方向に対して最上流の場所に設置されている横断歩道H1用の歩行者検出部31からの検出信号であり、歩行者Wが所持する端末を歩行者検出部31にかざしたり、歩行者検出部31である視覚障害者用押ボタン箱の押ボタンを押下することで入力される。ステップST1で歩行者検出部31からの検出信号が入力された場合はステップST2に移行し、入力されない場合はステップST1を繰り返す。
【0025】
ステップST2において、信号制御機11で歩行者検出部31から検出信号が入力されると、横断歩道H1に対する歩行者用信号灯器21の次の青信号の点灯時に、道路S2を挟んで横断歩道H1の反対側に設置された案内音出力部41から横断歩道H1に向かって、横断歩道H1に対応する横断案内音G1の出力を開始させる。併せて信号制御機11は、A方向の下流側である信号制御機12又は中央装置に対して、歩行者検出部31から入力があった旨を示す通知信号を送信する。
【0026】
そして、歩行者Wは
図3に示すように、横断歩道H1の反対側に設置された案内音出力部41から横断案内音G1の出力を聞き、横断案内音G1の種類及び横断案内音G1が出力される方向から、横断歩道H1を通過することができる。
【0027】
次いで、ステップST3において、通知信号を入力した信号制御機12又は中央装置を介して通知信号を入力した信号制御機12は、所定時間後の交差点C2の歩行者用信号灯器22の青信号の点灯時に、A方向の反対方向に対して、横断案内音G2を出力する案内音出力部42から位置方向案内音G2’の出力を開始する。この場合に、歩行者Wから見て道路S2を挟んで横断歩道H2の反対側に設置された案内音出力部42から出力することになる。
【0028】
案内音出力部42から所定時間後の位置方向案内音G2’を出力するタイミングは、少なくとも案内音出力部41の横断案内音G1の出力が終了した後で、歩行者Wが通常の歩行速度で移動した際に、
図4に示すように交差点C2の位置方向案内音G2’が十分に聞こえる距離Kまで移動する時間を考慮して設定される。また、案内音出力部41の横断案内音G1の出力から所定時間を計時する装置は、信号制御機11、12、中央装置の何れであってもよい。
【0029】
交差点C2の案内音出力部42の位置方向案内音G2’の出力により、横断歩道H1を横断した歩行者Wは、進行方向の先にある次の交差点C2のおおよその位置、方向を交差点C2に到達する前に知ることができる。
【0030】
また、位置方向案内音G2’は交差点横断時に出力する横断案内音G2と同じ案内音であってもよく、異なる案内音であってもよい。異なる案内音を採用する場合には、位置方向案内音G2’を、例えば、歩行者用信号灯器22の青信号の点灯中に渡って横断案内音G2を出力せずに、青信号の点灯開始から数秒間のみ横断案内音G2を出力させるようにしてもよい。
【0031】
また、位置方向案内音G2’を、例えば遠くまで聞こえるように横断案内音G2より、高音を主とした音で出力してもよいし、また横断案内音G2より大きい音量で出力するようにしてもよい。更には、青信号の点灯開始から数秒間のみ横断案内音G2より大きい音量又は高音で出力し、その後は横断案内音G2を出力するようにしてもよい。
【0032】
このように、位置方向案内音G2’が交差点横断時に出力する横断案内音G2と異なる案内音を採用する際には、信号制御機12は通知信号を入力したときに、既に歩行者検出部32から検出信号を受信している場合、又は通知信号を入力してから歩行者用信号灯器22が青信号の点灯を開始する前に、歩行者検出部32から検出信号を受信した場合には、案内音出力部42から位置方向案内音G2’の出力するのではなく、通常の横断案内音G2の出力を行う。
【0033】
交差点C2に到着した歩行者Wは、交差点C1の横断時に行った手順を繰り返して、横断歩道H2の横断を行う。歩行者Wは目的地に到着するまで、進行方向に存在する次の交差点Cに到着する前に、次の交差点Cの案内音出力部40から位置方向案内音G’を聞くことを繰り返す。
【0034】
このように、本発明に係わる案内音報知システムによれば、交差点Cの横断歩道Hを渡った後の視覚に障害を有する歩行者Wに対して、進行方向に存在する次の交差点Cの案内音出力部40からの位置方向案内音G’を出力する。これにより、歩行者Wは次の交差点Cのおおよその位置、方向を知ることができ、安心して次の交差点Cまで移動することが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
10、11、12 信号制御機
20 信号灯器
21、22 歩行者用信号灯器
30、31、32 歩行者検出部
40、41、42 案内音出力部
C1、C2 交差点
H1、H2 横断歩道
W 歩行者