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特許7492456多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、反射型マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法
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  • 特許-多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、反射型マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、反射型マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/38 20120101AFI20240522BHJP
   G03F 1/24 20120101ALI20240522BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20240522BHJP
   G03F 1/50 20120101ALI20240522BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G03F1/38
G03F1/24
G03F1/84
G03F1/50
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020555553
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2019043546
(87)【国際公開番号】W WO2020095959
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2018209973
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】浜本 和宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏太
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-090421(JP,A)
【文献】特開2003-248299(JP,A)
【文献】特開2013-191733(JP,A)
【文献】国際公開第2008/129914(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/50
G03F 1/24
G03F 1/38
G03F 1/84
G03F 7/20
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板及び該基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜を有する多層反射膜付き基板と、該多層反射膜付き基板上に形成された積層膜とを有する反射型マスクブランクの製造方法であって、
前記多層反射膜付き基板は、該多層反射膜付き基板における欠陥の位置の基準となる基準マークを備えており、
前記積層膜は、前記基準マークが転写された転写基準マークを備えており、
前記基準マークの個数Nは、以下の手順(1)~(7)によって予め求められた個数であることを特徴とする、反射型マスクブランクの製造方法。
(1)第1の座標系を有する欠陥検査装置によって、複数の基準マークを有する別の多層反射膜付き基板における欠陥の第1の欠陥座標、及び、基準マークの第1の基準マーク座標を取得する。
(2)第2の座標系を有する座標計測器によって、前記別の多層反射膜付き基板上に形成された積層膜を有する反射型マスクブランクにおける欠陥の第2の欠陥座標、及び、転写基準マークの第2の基準マーク座標を取得する。
(3)前記第1の基準マーク座標及び前記第2の基準マーク座標に基づいて、前記第1の座標系から前記第2の座標系へ座標を変換するための変換係数を算出する。
(4)上記(3)で算出された変換係数を用いて、上記(1)において前記欠陥検査装置によって取得された前記第1の欠陥座標を、前記第2の座標系を基準とした第3の欠陥座標へ変換する。
(5)上記(2)において前記座標計測器によって取得された前記第2の欠陥座標と、上記(4)で変換された第3の欠陥座標との間の差について、σを標準偏差として、3σの値を求める。
(6)基準マークの個数と3σとの対応関係を取得する。
(7)3σの値が、50nm未満となる基準マークの個数を決定する。
【請求項2】
前記基準マークの個数Nは、9個以上100個以下である、請求項に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項3】
前記積層膜は、EUV光を吸収する吸収体膜を含む、請求項1または請求項2に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、反射型マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における超LSIデバイスの高密度化、高精度化の更なる要求に伴い、極紫外(Extreme Ultra Violet、以下、EUVと称す)光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィーが有望視されている。ここで、EUV光とは、軟X線領域又は真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2~100nm程度の光のことである。EUVリソグラフィーにおいて用いられるマスクとして、反射型マスクが提案されている。反射型マスクは、ガラスやシリコンなどの基板上に、露光光を反射する多層反射膜が形成され、その多層反射膜の上に露光光を吸収する吸収体膜パターンが形成されたものである。パターン転写を行う露光機において、それに搭載された反射型マスクに入射した光は、吸収体膜パターンのある部分では吸収され、吸収体膜パターンのない部分では多層反射膜により反射される。そして反射された光像が、反射光学系を介してシリコンウエハ等の半導体基板上に転写される。
【0003】
リソグラフィー工程での微細化に対する要求が高まることにより、リソグラフィー工程における課題が顕著になりつつある。その課題の1つが、リソグラフィー工程で用いられるマスクブランク用基板等の欠陥情報に関する問題である。
【0004】
従来は、ブランクス検査等において、基板の欠陥の存在位置を、基板センターを原点(0,0)とし、欠陥検査装置が管理する座標系を用いて、その原点からの距離で特定していた。このため、絶対値座標の基準が明確でなく、位置精度が低く、装置間でも検出のばらつきがあった。また、パターン描画時に、欠陥を避けてパターン形成用薄膜にパターニングする場合でも、μmオーダーでの欠陥の回避は困難であった。このため、パターンを転写する方向を変えたり、転写する位置をmmオーダーでラフにずらしたりして、欠陥を回避していた。
【0005】
このような状況下、例えばマスクブランク用基板に基準マークを形成し、基準マークを基準として欠陥の位置を特定することが提案されている。マスクブランク用基板に基準マークを形成することにより、装置毎に欠陥の位置を特定するための基準がずれることが防止される。
【0006】
露光光としてEUV光を使用する反射型マスクにおいては、多層反射膜上の欠陥の位置を正確に特定することが特に重要である。なぜなら、多層反射膜に存在する欠陥は、修正がほとんど不可能である上に、転写パターン上で重大な位相欠陥となり得るためである。
【0007】
多層反射膜上の欠陥の位置を正確に特定するためには、多層反射膜を形成した後に欠陥検査を行うことで、欠陥の位置情報を取得することが好ましい。そのためには、基板上に形成された多層反射膜に、基準マークを形成することが好ましい。
【0008】
特許文献1には、球相当直径で30nm程度の微小な欠陥の位置を正確に特定できるように、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランク用基板等に、大きさが球相当直径で30~100nmの少なくとも3つのマークを形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開WO2008/129914号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
マスクブランクの欠陥データとデバイスパターンデータとを元に、欠陥が存在している箇所に吸収体膜パターンが形成されるように描画データを補正して、欠陥を軽減させる技術(Defect mitigation technology)が提案されている。このような技術を実現するために、例えば、多層反射膜上に吸収体膜が形成された反射型マスクブランクにおいて、吸収体膜上に形成されたレジスト膜に電子線描画機を用いてパターンを描画する際に、電子線描画機においても電子線で基準マークを検出し、検出した基準点に基づいて、補正・修正した描画データを元にパターンを描画することが行われる。
【0011】
マスクブランクの欠陥データを取得するための欠陥検査装置の座標系は、電子線描画機の座標系と異なっている。このため、欠陥検査装置で取得した基準マーク及び欠陥のデータを用いて電子線描画を行う際には、当該データを電子線描画機の座標系に変換する必要がある。
【0012】
しかし、欠陥検査装置の座標系から電子線描画機の座標系への変換精度が悪いと、上述のDefect mitigation technologyを実施したときに、描画データの補正・修正を高精度で行うことができないという問題が生じる。
【0013】
そこで、本発明は、多層反射膜上の欠陥を検出する欠陥検査装置の座標系から、それ以外の装置の座標系への変換精度を向上させることのできる多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク、反射型マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、多層反射膜上の欠陥を検出する欠陥検査装置の座標系から、それ以外の装置の座標系への変換精度を向上させることについて鋭意研究を行った。その結果、欠陥位置の基準となる基準マークの個数と、座標変換精度との間に相関があることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
基板と、該基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜とを有する多層反射膜付き基板であって、
前記多層反射膜付き基板における欠陥の位置の基準となる基準マークを備えており、
前記基準マークの個数は、以下の手順(1)~(7)によって予め求められた個数であることを特徴とする、多層反射膜付き基板。
(1)第1の座標系を有する欠陥検査装置によって、複数の基準マークを有する別の多層反射膜付き基板における欠陥の第1の欠陥座標、及び、基準マークの第1の基準マーク座標を取得する。
(2)第2の座標系を有する座標計測器によって、前記別の多層反射膜付き基板における前記欠陥の第2の欠陥座標、及び、前記基準マークの第2の基準マーク座標を取得する。
(3)前記第1の基準マーク座標及び前記第2の基準マーク座標に基づいて、前記第1の座標系から前記第2の座標系へ座標を変換するための変換係数を算出する。
(4)上記(3)で算出された変換係数を用いて、上記(1)において前記欠陥検査装置によって取得された前記第1の欠陥座標を、前記第2の座標系を基準とした第3の欠陥座標へ変換する。
(5)上記(2)において前記座標計測器によって取得された前記第2の欠陥座標と、上記(4)で変換された第3の欠陥座標との間の差について、3σの値を求める。
(6)基準マークの個数と3σとの対応関係を取得する。
(7)3σの値が、50nm未満となる基準マークの個数を決定する。
【0016】
(構成2)
前記基準マークの個数は、8個以上である、構成1に記載の多層反射膜付き基板。
【0017】
(構成3)
前記基準マークの個数は、16個以上である、構成1または構成2に記載の多層反射膜付き基板。
【0018】
(構成4)
構成1から構成3のうちいずれかに記載の多層反射膜付き基板と、該多層反射膜付き基板上に形成された積層膜とを有する反射型マスクブランク。
【0019】
(構成5)
基板及び該基板上に形成されたEUV光を反射する多層反射膜を有する多層反射膜付き基板と、該多層反射膜付き基板上に形成された積層膜とを有する反射型マスクブランクであって、
前記多層反射膜付き基板は、該多層反射膜付き基板における欠陥の位置の基準となる基準マークを備えており、
前記積層膜は、前記基準マークが転写された転写基準マークを備えており、
前記基準マークの個数は、以下の手順(1)~(7)によって予め求められた個数であることを特徴とする、反射型マスクブランク。
(1)第1の座標系を有する欠陥検査装置によって、複数の基準マークを有する別の多層反射膜付き基板における欠陥の第1の欠陥座標、及び、基準マークの第1の基準マーク座標を取得する。
(2)第2の座標系を有する座標計測器によって、前記別の多層反射膜付き基板上に形成された積層膜を有する反射型マスクブランクにおける欠陥の第2の欠陥座標、及び、転写基準マークの第2の基準マーク座標を取得する。
(3)前記第1の基準マーク座標及び前記第2の基準マーク座標に基づいて、前記第1の座標系から前記第2の座標系へ座標を変換するための変換係数を算出する。
(4)上記(3)で算出された変換係数を用いて、上記(1)において前記欠陥検査装置によって取得された前記第1の欠陥座標を、前記第2の座標系を基準とした第3の欠陥座標へ変換する。
(5)上記(2)において前記座標計測器によって取得された前記第2の欠陥座標と、上記(4)で変換された第3の欠陥座標との間の差について、3σの値を求める。
(6)基準マークの個数と3σとの対応関係を取得する。
(7)3σの値が、50nm未満となる基準マークの個数を決定する。
【0020】
(構成6)
前記基準マークの個数は、8個以上である、構成5に記載の反射型マスクブランク。
【0021】
(構成7)
前記基準マークの個数は、16個以上である、構成5または構成6に記載の反射型マスクブランク。
【0022】
(構成8)
前記積層膜は、EUV光を吸収する吸収体膜を含む、構成4から構成7のうちいずれかに記載の反射型マスクブランク。
【0023】
(構成9)
構成4または構成8に記載の反射型マスクブランクにおける前記積層膜に積層膜パターンを形成する工程を有する、反射型マスクの製造方法。
【0024】
(構成10)
構成9に記載の反射型マスクの製造方法によって製造された反射型マスクを使用して、半導体基板上に転写パターンを形成する工程を有する、半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、多層反射膜上の欠陥を検出するための欠陥検査装置の座標系から、それ以外の装置の座標系への変換精度を向上させることのできる多層反射膜付き基板及び反射型マスクブランクを提供することができる。また、本発明によれば、これら多層反射膜付き基板又は反射型マスクブランクを使用し、これらの欠陥情報に基づき、描画データの修正を行なうことで欠陥を低減させた反射型マスクの製造方法及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】多層反射膜付き基板の断面を示す模式図である。
図2】多層反射膜付き基板の平面図、及び、基準マークの拡大図である。
図3】反射型マスクブランクの断面を示す模式図である。
図4】反射型マスクの製造方法を示す模式図である。
図5】パターン転写装置を示している。
図6】FMの個数が8個の場合における、FMの形成箇所を示す。
図7】FMの個数が3~8の場合における、3σの値を示すグラフである。
図8】基準マークの個数Nを200まで増加させたときの3σの計算結果を示すグラフである。
図9】FMの個数が16個の場合における、FMの形成箇所を示す。
図10】AMの個数が28個、FMの個数が4個の場合における、AM及びFMの形成箇所を示す。
図11】FMの個数が3個の場合における、FMの形成箇所を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
[多層反射膜付き基板]
図1は、本実施形態の多層反射膜付き基板の断面を示す模式図である。
図1に示すように、多層反射膜付き基板10は、基板12と、露光光であるEUV光を反射する多層反射膜14とを備えている。さらに、多層反射膜付き基板10は、多層反射膜14を保護するための保護膜18を備えてもよい。本実施形態では、基板12の上に多層反射膜14が形成されており、多層反射膜14の上に保護膜18が形成されている。後述するように、多層反射膜付き基板10は、欠陥位置の基準となる4個以上の基準マークを備えている。
【0028】
なお、本明細書において、基板や膜の「上に」とは、その基板や膜の上面に接触する場合だけでなく、その基板や膜の上面に接触しない場合も含む。すなわち、基板や膜の「上に」とは、その基板や膜の上方に新たな膜が形成される場合や、その基板や膜との間に他の膜が介在している場合等を含む。また、「上に」とは、必ずしも鉛直方向における上側を意味するものではない。「上に」とは、基板や膜などの相対的な位置関係を示しているに過ぎない。
【0029】
<基板>
本実施形態の多層反射膜付き基板10に使用される基板12としては、EUV露光の場合、露光時の熱による吸収体膜パターンの歪みを防止するため、0±5ppb/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO2-TiO2系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。
【0030】
基板12の転写パターン(後述の吸収体膜パターンがこれに対応する)が形成される側の主表面は、平坦度を高めるために加工されることが好ましい。基板12の主表面の平坦度を高めることによって、パターンの位置精度や転写精度を高めることができる。例えば、EUV露光の場合、基板12の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の主表面は、露光装置に静電チャックによって固定される面であって、その142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下、更に好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。なお、本明細書において平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を表す値で、基板表面を基準として最小二乗法で定められる平面を焦平面とし、この焦平面より上にある基板表面の最も高い位置と、焦平面より下にある基板表面の最も低い位置との高低差の絶対値である。
【0031】
EUV露光の場合、基板12の転写パターンが形成される側の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.1nm以下であることが好ましい。なお表面粗さは、原子間力顕微鏡で測定することができる。
【0032】
基板12は、その上に形成される膜(多層反射膜14など)の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有していることが好ましい。特に、基板12は、65GPa以上の高いヤング率を有していることが好ましい。
【0033】
<多層反射膜>
多層反射膜付き基板10は、基板12と、基板12の上に形成された多層反射膜14とを備えている。多層反射膜14は、例えば、屈折率の異なる元素が周期的に積層された多層膜からなる。多層反射膜14は、EUV光を反射する機能を有している。
【0034】
一般的には、多層反射膜14は、高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40~60周期程度積層された多層膜からなる。
多層反射膜14を形成するために、基板12側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に複数周期積層してもよい。この場合、1つの(高屈折率層/低屈折率層)の積層構造が、1周期となる。
多層反射膜14を形成するために、基板12側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に複数周期積層してもよい。この場合、1つの(低屈折率層/高屈折率層)の積層構造が、1周期となる。
【0035】
なお、多層反射膜14の最上層、すなわち多層反射膜14の基板12と反対側の表面層は、高屈折率層であることが好ましい。基板12側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層する場合は、最上層が低屈折率層となる。しかし、低屈折率層が多層反射膜14の表面である場合、低屈折率層が容易に酸化されることで多層反射膜の反射率が減少してしまうので、その低屈折率層の上に高屈折率層を形成する。一方、基板12側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層する場合は、最上層が高屈折率層となる。その場合は、最上層の高屈折率層が、多層反射膜14の表面となる。
【0036】
本実施形態において、高屈折率層は、Siを含む層であってもよい。高屈折率層は、Si単体を含んでもよく、Si化合物を含んでもよい。Si化合物は、Siと、B、C、N、及びOからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含んでもよい。Siを含む層を高屈折率層として使用することによって、EUV光の反射率に優れた多層反射膜が得られる。
【0037】
本実施形態において、低屈折率材料としては、Mo、Ru、Rh、及びPtからなる群から選択される少なくとも1つの元素、あるいは、Mo、Ru、Rh、及びPtからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む合金を使用することができる。
【0038】
例えば、波長13~14nmのEUV光のための多層反射膜14としては、好ましくは、Mo膜とSi膜を交互に40~60周期程度積層したMo/Si多層膜を用いることができる。その他に、EUV光の領域で使用される多層反射膜として、例えば、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などを用いることができる。露光波長を考慮して、多層反射膜の材料を選択することができる。
【0039】
このような多層反射膜14の単独での反射率は、例えば65%以上である。多層反射膜14の反射率の上限は、例えば73%である。なお、多層反射膜14に含まれる層の厚み及び周期は、ブラッグの法則を満たすように選択することができる。
【0040】
多層反射膜14は、公知の方法によって形成できる。多層反射膜14は、例えば、イオンビームスパッタ法により形成できる。
【0041】
例えば、多層反射膜14がMo/Si多層膜である場合、イオンビームスパッタ法により、Moターゲットを用いて、厚さ3nm程度のMo膜を基板12の上に形成する。次に、Siターゲットを用いて、厚さ4nm程度のSi膜を形成する。このような操作を繰り返すことによって、Mo/Si膜が40~60周期積層した多層反射膜14を形成することができる。このとき、多層反射膜14の基板12と反対側の表面層は、Siを含む層(Si膜)である。1周期のMo/Si膜の厚みは、7nmとなる。
【0042】
<保護膜>
本実施形態の多層反射膜付き基板10は、多層反射膜14の上に形成された保護膜18を備えてもよい。保護膜18は、後述の吸収体膜のパターニングあるいはパターン修正の際に、多層反射膜14を保護する機能を有している。保護膜18は、例えば、多層反射膜14と吸収体膜との間に設けられる。
【0043】
保護膜18の材料としては、例えば、Ru、Ru-(Nb、Zr、Y、B、Ti、La、Mo、Co又はRe)化合物、Si-(Ru、Rh、Cr又はB)化合物、Si、Zr、Nb、La、B等の材料を使用することができる。また、これらに窒素、酸素又は炭素を添加した化合物を用いることができる。これらのうち、ルテニウム(Ru)を含む材料を適用すると、多層反射膜の反射率特性がより良好となる。具体的には、保護膜18の材料は、Ru、又は、Ru-(Nb、Zr、Y、B、Ti、La、Mo、Co又はRe)化合物であることが好ましい。保護膜18の厚みは、例えば、1nm~5nmである。保護膜18は、公知の方法によって形成できる。保護膜18は、例えば、マグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタ法によって形成できる。
【0044】
多層反射膜付き基板10は、さらに、基板12の多層反射膜14が形成されている側とは反対側の主表面上に、裏面導電膜を有してもよい。裏面導電膜は、静電チャックによって多層反射膜付き基板10あるいは反射型マスクブランクを吸着する際に使用される。
【0045】
多層反射膜付き基板10は、基板12と多層反射膜14との間に形成された下地膜を備えてもよい。下地膜は、例えば、基板12の表面の平滑性向上の目的で形成される。下地膜は、例えば、欠陥低減、多層反射膜の反射率向上、多層反射膜の応力補正等の目的で形成される。
【0046】
<基準マーク>
図2は、本実施形態の多層反射膜付き基板10の平面図である。
図2に示すように、略矩形状の多層反射膜付き基板10の4つの角部の近傍には、基準マーク20がそれぞれ形成されている。基準マーク20は、欠陥情報における欠陥位置の基準として使用されるマークである。図2では、基準マーク20が4個形成されている例を示しているが、基準マーク20の個数は4個以上であってもよい。また、4個以上の基準マーク20は、少なくとも2軸上に配置されればよい。
【0047】
図2に示す多層反射膜付き基板10において、破線Aの内側の領域(132mm×132mmの領域)には、反射型マスクを製造するときに吸収体膜パターンが形成される。破線Aの外側の領域には、反射型マスクを製造するときに吸収体膜パターンが形成されない。基準マーク20は、好ましくは、吸収体膜パターンが形成されない領域、すなわち、破線Aの上、あるいは、破線Aの外側の領域に形成される。
【0048】
図2に示すように、基準マーク20は、略十字型形状を有している。略十字型形状を有する基準マーク20の幅W1、W2は、例えば、200nm以上10μm以下である。基準マーク20の長さLは、例えば、100μm以上1500μm以下である。図2では、略十字型形状を有する基準マーク20の例を示しているが、基準マーク20の形状はこれに限定されない。基準マーク20の形状は、例えば、平面視で略L字型、円形、三角形又は四角形等であってもよい。
【0049】
基準マーク20の断面形状は、例えば凹状である。ここでいう「凹状」とは、多層反射膜付き基板10の断面(多層反射膜付き基板10の主表面に垂直な断面)を見たときに、基準マーク20が下方に向けて例えば段差状あるいは湾曲状に凹むようにして形成されていることを意味する。凹状に形成された基準マーク20の深さDは、好ましくは、30nm以上である。基準マーク20の深さDは、基板12が露出する深さとしてもよいが、100nm以下が好ましく、50nm以下であることがより好ましい。深さDが小さい場合には、本発明の効果がより顕著に得られる。深さDとは、多層反射膜付き基板10の表面から、基準マーク20の底部の最も深い位置までの垂直方向の距離のことを意味する。
【0050】
基準マーク20の形成方法は、特に制限されない。基準マーク20は、例えば、多層反射膜付き基板10の表面にレーザ加工によって形成することができる。このとき、多層反射膜14を成膜した後に基準マーク20を形成し、その後保護膜18を成膜してもよいし、多層反射膜14及び保護膜18を成膜し、その後基準マーク20を形成してもよい。レーザ加工の条件は、例えば、以下の通りである。
レーザの種類(波長):紫外線~可視光領域。例えば、波長405nmの半導体レーザ。
レーザ出力:1~120 mW
スキャン速度:0.1~20 mm/s
パルス周波数:1~100 MHz
パルス幅:3ns~1000s
【0051】
基準マーク20をレーザ加工する際に使用するレーザは、連続波でもよく、パルス波でもよい。パルス波を用いた場合、連続波と比較して、基準マーク20の深さDが同程度であっても、基準マーク20の幅Wをより小さくすることが可能である。このため、パルス波を用いた場合、連続波と比較して、よりコントラストが大きく、欠陥検査装置や電子線描画装置によって検出し易い基準マーク20を形成することができる。
【0052】
基準マーク20の形成方法は、レーザに限定されない。基準マーク20は、例えば、フォトリソ法、FIB(集束イオンビーム)、ダイヤモンド針を走査しての加工痕、微小圧子によるインデンション、インプリント法による型押しなどで形成することができる。
【0053】
基準マーク20の断面形状は、凹状に限定されない。例えば、基準マーク20の断面形状は、上方に突出する凸状であってもよい。基準マーク20の断面形状が凸状の場合、FIBやスパッタリング法などによる部分成膜などで形成することができる。凸状に形成された基準マーク20の高さHは、好ましくは、30nm以上である。基準マーク20の高さHは、100nm以下が好ましく、50nm以下であることがより好ましい。高さHが小さい場合には、本発明の効果がより顕著に得られる。高さHとは、多層反射膜付き基板10の表面から、基準マーク20の最も高い位置までの垂直方向の距離のことを意味する。
【0054】
多層反射膜付き基板10に基準マーク20を形成した場合には、欠陥検査装置によって、基準マーク20及び欠陥の座標を高精度に取得する。次に、多層反射膜付き基板10の保護膜18の上に、吸収体膜を形成する。次に、吸収体膜の上に、レジスト膜を形成する。吸収体膜とレジスト膜との間には、ハードマスク膜(あるいはエッチングマスク膜)が形成されてもよい。
【0055】
多層反射膜付き基板10に形成された凹状の基準マーク20は、吸収体膜及びレジスト膜に転写される。吸収体膜とレジスト膜との間にハードマスク膜が形成される場合、多層反射膜付き基板10に形成された凹状の基準マーク20は、吸収体膜、ハードマスク膜及びレジスト膜に転写される。
【0056】
したがって、多層反射膜付き基板10に形成された基準マーク20は、欠陥検査装置によって検出可能な程度に高いコントラストを有している必要がある。欠陥検査装置としては、例えば、検査光源波長が266nmであるレーザーテック社製のEUV露光用のマスク・サブストレート/ブランク欠陥検査装置「MAGICSM7360」、検査光源波長が193nmであるKLA-Tencor社製のEUV・マスク/ブランク欠陥検査装置「Teron600シリーズ、例えばTeron610」、あるいは、検査光源波長が露光光源波長の13.5nmと同じであるABI(Actinic Blank Inspection)装置を用いることができる。
【0057】
また、吸収体膜及び/又はその上のレジスト膜に転写された基準マーク20は、座標計測器及び/又は電子線描画装置によって検出可能な程度に高いコントラストを有している必要がある。座標計測器としては、例えば、波長365nmのレーザで座標計測を行うKLA-Tencor社製の「LMS-IPRO4」、波長193nmのレーザで座標計測を行うCarl Zeiss社製の「PROVE」及び/又は、電子線描画装置に搭載されている座標計測器を用いることができる。座標計測器は、上記の欠陥検査装置と波長が異なる方が本発明の効果がより顕著に得られる。
【0058】
基準マーク20は、例えば、FM(フィデュシャルマーク)として使用できる。FMとは、電子線描画装置によってパターンを描画する際に、欠陥座標の基準として使用されるマークである。FMは、通常、図2に示すような十字型形状である。
【0059】
基準マーク20をFMとして使用することにより、欠陥座標を高精度に管理することができる。電子線描画装置によってレジスト膜にパターンを描画する際、レジスト膜に転写された基準マーク20は、欠陥位置の基準であるFMとして使用される。例えば、電子線描画装置によってFMを検出することにより、欠陥検査装置で取得した欠陥座標を、電子線描画装置の座標系に変換することができる。これにより、例えば、欠陥が吸収体膜パターンの下に配置するように、電子線描画装置によって描画されるパターンの描画データを補正することができる。描画データを補正することによって、最終的に製造される反射型マスクへの欠陥による影響を低減することができる。
【0060】
基準マーク20は、AM(アライメントマーク)としても使用できる。AMは、欠陥検査装置で多層反射膜付き基板10上の欠陥を検査した際に、欠陥座標の基準として使用できるマークである。しかし、AMは、電子線描画装置によってパターンを描画する際には、直接使用されない。AMの平面視における形状は、例えば、円形、四角形、又は十字型である。
【0061】
多層反射膜付き基板10上にAMを形成した場合には、多層反射膜付き基板10上の後述の積層膜にFMを形成する。AMは、積層膜に転写されるが、AM上の積層膜を一部除去することにより、AMの検出精度を上げることもできる。AMは、欠陥検査装置及び座標計測器で検出可能である。FMは、座標計測器及び電子線描画装置で検出可能である。AMとFMは共に座標計測器で検出することが可能であるため、これらの相対的な位置関係を高精度に管理することができる。したがって、欠陥検査装置によって取得されたAMを基準とする欠陥座標を、電子線描画装置で使用するFMを基準とする欠陥座標に高精度に変換することができる。なお、AMの個数は、FMの個数よりも多い。
【0062】
本実施形態の多層反射膜付き基板10は、該多層反射膜付き基板10における欠陥の位置の基準となる4個以上(例えばN個)の基準マーク20(図2では4個の基準マーク)を備えており、以下の手順(1)~(5)によって求められる3σの値が、50nm未満である。
(1)第1の座標系を有する欠陥検査装置によって、多層反射膜付き基板10における欠陥の第1の欠陥座標、及び、基準マーク20の第1の基準マーク座標を取得する。
(2)第2の座標系を有する座標計測器によって、多層反射膜付き基板10における前記欠陥の第2の欠陥座標、及び、前記基準マーク20の第2の基準マーク座標を取得する。
(3)前記第1の基準マーク座標、及び、前記第2の基準マーク座標に基づいて、欠陥検査装置の第1の座標系から座標計測器の第2の座標系へ座標を変換するための変換係数を算出する。
(4)上記(3)で算出された変換係数を用いて、上記(1)において欠陥検査装置によって取得された第1の欠陥座標を、座標計測器の第2の座標系を基準とした第3の欠陥座標へ変換する。
(5)上記(2)において座標計測器によって取得された第2の欠陥座標と、上記(4)で変換された第3の欠陥座標との間の差について、3σの値を求める。
【0063】
上記手順(1)では、欠陥検査装置によって、多層反射膜付き基板10における欠陥の第1の欠陥座標、及び、N個の基準マーク20の第1の基準マーク座標(x, y)を取得する。欠陥検査装置としては、例えば、上述した欠陥検査装置を用いることができる。また、3σの値を求めるための欠陥の個数は、3個以上が好ましく、9個以上がより好ましく、15個以上がさらに好ましい。また、N個の基準マークの大きさのばらつきは、小さい方が好ましい。例えば、N個の基準マークの大きさは、それらの平均値から±5%以内であることが好ましく、より好ましくは±3%以内である。ここでいう「大きさ」は、例えば、基準マークの平面視における面積を意味する。
【0064】
上記手順(2)では、座標計測器によって、多層反射膜付き基板10における欠陥の第2の欠陥座標、及び、N個の基準マーク20の第2の基準マーク座標(u, v)を取得する。座標計測器としては、例えば、上述した座標計測器を用いることができる。
【0065】
上記手順(1)及び(2)において座標を検出する際には、例えば、基板の中心に原点を設定することができる。あるいは、基板の四辺の8箇所(一辺につき2箇所)のエッジ座標を取得し、適切なチルト補正を行った後、基板の任意の角部に原点を設定してもよい。
【0066】
図2に示すように、基準マーク20の形状が十字型である場合、基準マーク20の座標は、基準マーク20のエッジを検出することにより、該エッジ間の幅W1の中心線と、幅W2の中心線との交点に設定することができる。
【0067】
上記手順(3)では、手順(1)で取得したN個の基準マーク20の第1の基準マーク座標(x, y)、及び、手順(2)で取得したN個の基準マーク20の第2の基準マーク座標(u, v)に基づいて、欠陥検査装置の第1の座標系から座標計測器の第2の座標系へ座標を変換するための変換係数を算出する。変換係数の算出には、例えば、線形変換(アフィン変換)を用いることができる。以下、アフィン変換を用いた変換係数の算出方法の一例について説明する。
【0068】
欠陥検査装置で取得したn個の座標データ(x1, y1), (x2, y2), ・ ・ ・ , (xn, yn) と、それに対応する座標計測器で取得したn個の座標データ(u1, v1), (u2, v2), ・ ・ ・ , (un, vn) があるとき、欠陥検査装置の第1の座標系から座標計測器の第2の座標系への変換には、アフィン変換を用いることができる。
【0069】
アフィン変換は、xとyに関する変換係数が独立なので、xとyは別々に解くことができる。xに関する式を例に挙げると、i番目の座標データをアフィン変換の式に代入すると、xi = aui+bvi +c となるが、導かれる変換式には誤差が存在するために、この式は成立しない。その誤差量δiは、単純に右辺から左辺を引いたものとなり、δi = aui + bvi + c - xi となる。
【0070】
ここで、n 個の座標データがある場合、n 個の誤差量に関する式をたてることができる。最小二乗法を使って、それらの誤差量が最小となるa, b, cを求める。ここで、二乗和の誤差関数φは、以下の式で表すことができる。
【0071】
【数1】
【0072】
この関数φは二次関数なので、この関数が最小となるa, b, cを求めるために、この式をa, b, c で偏微分する。偏微分すると、誤差関数の勾配を表す関数となるので、偏微分した関数が0となるところが極小値であり、それは最小値でもある。これを式で表すと、以下のとおりとなる。
【0073】
【数2】
【0074】
これらの式は、連立一次方程式なので、行列を用いて整理すると、以下の行列式を得ることができる。この連立方程式を解けば、誤差が最小となるa, b, c、すなわち変換係数を求めることができる。xについて説明したが、yについても同様に解くことができる。
【0075】
【数3】
【0076】
上記手順(4)では、上記(3)で算出された変換係数を用いて、上記(1)において欠陥検査装置によって取得された第1の欠陥座標を、座標計測器の第2の座標系へ変換する。座標の変換には、例えば、アフィン変換の式 xi = aui +bvi +cを用いることができる。
【0077】
上記手順(5)では、上記(2)において座標計測器によって取得された第2の欠陥座標と、上記(4)で変換された第3の欠陥座標との間の差について、3σの値を求める。つまり、座標計測器によって「実際に」取得された第2の欠陥座標と、変換係数を用いて座標計測器の第2の座標系へ変換された第3の欠陥座標との差について、3σの値を求める。3σは、標準偏差σの3倍である。3σが小さいということは、欠陥検査装置の第1の座標系から座標計測器の第2の座標系への変換精度が高いことを意味する。
【0078】
例えば、上記(2)において座標計測器によって取得された第2の欠陥座標が(sj, tj)であり、上記(4)において座標計測器の第2の座標系へ変換された第3の欠陥座標が(Sj, Tj)である場合、それらの座標の差は、(sj - Sj, tj - Tj)である。この場合、x座標とy座標のそれぞれについて、例えばj個分のデータの標準偏差σを計算することによって、3σの値を求めることができる。
【0079】
本発明者らは、後述するように、基準マーク20の個数をNとしたときに、3σがN1/2に反比例する傾向があることを見出した。すなわち、比例定数をαとしたとき、以下の式が成立することを見出した。
【0080】
3σ=α/N1/2 ・・・(1)
【0081】
αの値は、実際に基準マーク20の個数を変えて3σを測定した結果を上記式(1)に適用し、最小二乗法によって求めることができる。
【0082】
これによると、基準マーク20の個数が多い程、欠陥の座標の変換精度を向上させることができ、所望の3σに基づいて基準マーク20の個数を決定することができる。基準マーク20の個数は4個以上が好ましく、3σを50nm未満とすることができる。また、基準マーク20の個数は8個以上がより好ましく、3σを25nm未満とすることができる。また、基準マーク20の個数は16個以上がさらに好ましく、3σを20nm未満とすることができる。また、基準マーク20を形成するための工数が増えること、及び、基準マーク20が多すぎると欠陥が増加する観点から、基準マーク20の個数は、100個以下が好ましい。さらに、基準マーク20が60個を超える場合、3σの減少幅が小さくなる傾向があることから、基準マーク20の個数は、60個以下がより好ましい。
【0083】
本実施形態の多層反射膜付き基板10は、上記の手順(1)~(5)によって求められる3σの値が、50nm未満である。好ましくは、x座標及びy座標の両方のデータについて、3σの値が50nm未満である。3σの値が50nm未満であることにより、欠陥検査装置の第1の座標系から、座標計測器の第2の座標系への変換精度を向上させることができる。
【0084】
これにより、多層反射膜付き基板10を提供されたユーザーは、欠陥検査装置により特定した欠陥位置と、描画データとを高精度に照合することが可能となり、最終的に製造される反射型マスクにおいて欠陥を確実に低減させることができる。
【0085】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、別の多層反射膜付き基板を使用して、基準マークの個数と3σとの対応関係を取得し、該対応関係に基づいて決定された個数の基準マークを有する多層反射膜付き基板である点が、第1の実施形態とは異なる。それ以外は、第1の実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態の多層反射膜付き基板10は、該多層反射膜付き基板10における欠陥の位置の基準となる基準マーク20を備えており、該基準マーク20の個数は、以下の手順(1)~(7)によって予め求められた個数である。
(1)第1の座標系を有する欠陥検査装置によって、複数の基準マークを有する別の多層反射膜付き基板における欠陥の第1の欠陥座標、及び、基準マークの第1の基準マーク座標を取得する。
(2)第2の座標系を有する座標計測器によって、前記別の多層反射膜付き基板における前記欠陥の第2の欠陥座標、及び、前記基準マークの第2の基準マーク座標を取得する。
(3)前記第1の基準マーク座標及び前記第2の基準マーク座標に基づいて、前記第1の座標系から前記第2の座標系へ座標を変換するための変換係数を算出する。
(4)上記(3)で算出された変換係数を用いて、上記(1)において前記欠陥検査装置によって取得された前記第1の欠陥座標を、前記第2の座標系を基準とした第3の欠陥座標へ変換する。
(5)上記(2)において前記座標計測器によって取得された前記第2の欠陥座標と、上記(4)で変換された第3の欠陥座標との間の差について、3σの値を求める。
(6)基準マークの個数と3σとの対応関係を取得する。
(7)所望の3σの値(例えば、50nm未満)となる基準マークの個数を決定する。
【0086】
上記手順(1)~(5)は、別の多層反射膜付き基板を用いる点が異なるだけで、第1の実施形態の手順(1)~(5)と同様である。
【0087】
別の多層反射膜付き基板における欠陥は、実欠陥でもよいし、プログラム欠陥でもよい。
また、別の多層反射膜付き基板は、N個の基準マークが形成された1つの多層反射膜付き基板であってもよい。この場合には、1つの多層反射膜付き基板に対して、上記手順(1)~(6)を行って基準マークの個数と3σとの対応関係を取得し、手順(7)にて前記対応関係に基づいて基準マークの個数を決定する。
【0088】
別の多層反射膜付き基板は、互いに異なる4個~N個の基準マークが形成された複数の多層反射膜付き基板であってもよい。この場合には、各々の多層反射膜付き基板に対して上記手順(1)~(5)を行い、手順(6)で基準マークの個数と3σとの対応関係を取得し、手順(7)にて前記対応関係に基づいて基準マークの個数を決定する。
本実施形態では、別の多層反射膜付き基板を用いて基準マークの個数を求めるため、基準マークの形状、欠陥検査装置及び/又は座標計測器に応じて、最適な個数の基準マーク20を有する多層反射膜付き基板10を得ることができる。
【0089】
(第3の実施形態)
[反射型マスクブランク]
図3は、本実施形態の反射型マスクブランク30の断面を示す模式図である。上述の多層反射膜付き基板10の保護膜18上に積層膜28を形成することにより、本実施形態の反射型マスクブランク30を製造できる。特に制限するものではないが、積層膜28は、EUV光を吸収する吸収体膜であってもよい。以下、積層膜28が吸収体膜である例について説明する。
【0090】
吸収体膜は、露光光であるEUV光を吸収する機能を有する。すなわち、多層反射膜14(保護膜18がある場合には保護膜18を含む)のEUV光に対する反射率と、吸収体膜のEUV光に対する反射率との差は、所定値以上となっている。例えば、吸収体膜のEUV光に対する反射率は、0.1%以上40%以下である。多層反射膜14で反射された光と、吸収体膜で反射された光との間には、所定の位相差があってもよい。なお、この場合、反射型マスクブランク30における吸収体膜は、位相シフト膜と呼ばれることがある。
【0091】
吸収体膜は、EUV光を吸収する機能を有し、かつ、エッチング等により除去可能であることが好ましい。吸収体膜は、塩素(Cl)系ガスやフッ素(F)系ガスによるドライエッチングでエッチング可能であることが好ましい。このような機能を吸収体膜が有する限り、吸収体膜の材料は、特に制限されない。
【0092】
吸収体膜は、単層でもよく、積層構造を有してもよい。吸収体膜が積層構造を有する場合、同一材料からなる複数の膜が積層されてもよく、異なる材料からなる複数の膜が積層されてもよい。吸収体膜が積層構造を有する場合、材料や組成が膜の厚み方向に段階的及び/又は連続的に変化してもよい。
【0093】
吸収体膜の材料は、例えば、タンタル(Ta)単体、又は、Taを含む材料が好ましい。Taを含む材料は、例えば、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBと、O及びNのうち少なくとも1つとを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料、TaとPdを含む材料、TaとRuを含む材料、TaとTiを含む材料等である。
【0094】
吸収体膜は、例えば、Ni単体、Niを含む材料、Cr単体、Crを含む材料、Ru単体、Ruを含む材料、Pd単体、Pdを含む材料、Mo単体、及び、Moを含む材料からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0095】
吸収体膜の厚みは、好ましくは、30nm~100nmである。
吸収体膜は、公知の方法、例えば、マグネトロンスパッタリング法や、イオンビームスパッタリング法などによって形成することができる。
【0096】
本実施形態の反射型マスクブランク30において、吸収体膜(積層膜28)の上に、レジスト膜32が形成されてもよい。図3にはこの態様が示されている。レジスト膜32に電子線描画装置によってパターンを描画及び露光した後、現像工程を経ることによって、レジストパターンを形成することができる。このレジストパターンをマスクとして吸収体膜にドライエッチングを行うことによって、吸収体膜にパターンを形成することができる。
【0097】
本実施形態の反射型マスクブランク30において、積層膜28は、吸収体膜と、該吸収体膜上に形成されたハードマスク膜とを含んでもよい。ハードマスク膜は、吸収体膜をパターニングする際のマスクとして使用される。ハードマスク膜と吸収体膜は、エッチング選択性が互いに異なる材料によって形成される。吸収体膜の材料がタンタルあるいはタンタル化合物を含む場合、ハードマスク膜の材料は、クロム又はクロム化合物を含むことが好ましい。クロム化合物は、好ましくは、Crと、N、O、C、及びHからなる群から選択される少なくとも一つを含む。
【0098】
本実施形態の反射型マスクブランク30は、多層反射膜付き基板10における欠陥の位置の基準となる4個以上(例えばN個)の基準マーク20を備えている。多層反射膜付き基板10上に形成された吸収体膜(積層膜28)は、基準マーク20の形状が転写された転写基準マークを備えてもよい。例えば、基準マーク20が凹状である場合、その上に形成された吸収体膜(積層膜28)には、凹状の転写基準マークが形成される。また、基準マーク20が凸状である場合、その上に形成された吸収体膜(積層膜28)には、凸状の転写基準マークが形成される。
【0099】
本実施形態の基準マーク20は、第1の実施形態の基準マーク20と同様である。例えば、基準マーク20が略十字型形状の場合には、転写基準マークも略十字型形状となる。略十字型形状を有する転写基準マークの幅W1’、W2’は、例えば、200nm以上10μm以下である。転写基準マークの幅W1’(W2’)の、基準マーク20の幅W1(W2)からのずれΔW(=(|W1-W1’|/W1)×100)は、10%以下であることが好ましい。また、ずれΔWが1%以上、さらにはΔWが3%以上である場合には、本発明の効果がより顕著に得られる。転写基準マークの長さL’は、例えば、100μm以上1500μm以下である。転写基準マークの長さL’の基準マーク20の長さLからのずれΔL(=(|L-L’|/L)×100)は、1%以下であることが好ましい。また、ずれΔLが0.05%以上である場合には、本発明の効果がより顕著に得られる。
【0100】
また、例えば、基準マーク20が略円形形状の場合には、転写基準マークも略円形形状となる。転写基準マークの直径の、基準マーク20の直径からのずれ(絶対値)は、10%以下であることが好ましい。また、ずれが1%以上、さらにはずれが3%以上である場合には、本発明の効果がより顕著に得られる。
【0101】
基準マーク20が凹状(凸状)である場合、転写基準マークも凹状(凸状)となる。転写基準マークの深さD’(高さH’)は、好ましくは、30nm以上である。深さD’(高さH’)は、100nm以下が好ましく、50nm以下であることがより好ましい。転写基準マークの深さD’(高さH’)の、基準マーク20の深さD(高さH)からのずれΔD(ΔH)は、10%以下であることが好ましい。また、ずれΔD(ΔH)が0.05%以上、さらにはΔD(ΔH)が1%以上である場合には、本発明の効果がより顕著に得られる。
【0102】
吸収体膜(積層膜28)が転写基準マークを備える場合、以下の手順(1)~(5)によって求められる3σの値が、50nm未満であってもよい。
(1)第1の座標系を有する欠陥検査装置によって、多層反射膜付き基板10における欠陥の第1の欠陥座標、及び、基準マーク20の第1の基準マーク座標を取得する。
(2)第2の座標系を有する座標計測器によって、反射型マスクブランク30における欠陥の第2の欠陥座標、及び、転写基準マークの第2の基準マーク座標を取得する。
(3)前記第1の基準マーク座標、及び、前記第2の基準マーク座標に基づいて、欠陥検査装置の第1の座標系から座標計測器の第2の座標系へ座標を変換するための変換係数を算出する。
(4)上記(3)で算出された変換係数を用いて、上記(1)において欠陥検査装置によって取得された第1の欠陥座標を、座標計測器の第2の座標系を基準とした第3の欠陥座標へ変換する。
(5)上記(2)において座標計測器によって取得された第2の欠陥座標と、上記(4)で変換された第3の欠陥座標との間の差について、3σの値を求める。
【0103】
上記手順(1)~(5)は、上述した第1の実施形態の多層反射膜付き基板10における手順(1)~(5)と同様であるが、手順(2)において、座標計測器によって反射型マスクブランク30における欠陥の第2の欠陥座標、及び、転写基準マークの第2の基準マーク座標を取得している点が異なる。
【0104】
本発明者らは、後述の実施例1の表1及び図7に示されるように、基準マーク20の個数をNとしたときに、3σがN1/2に反比例する傾向があることを見出した。すなわち、比例定数をαとしたとき、以下の式が成立することを見出した。
【0105】
3σ=α/N1/2 ・・・(1)
【0106】
例えば、表1に示す結果を上記式(1)に適用し、最小二乗法により、αの値を求めることができる。αは装置によって異なる係数であり、この場合、α=70である。
【0107】
図8に、α=70を代入した上記式(1)のグラフを示す。
このグラフより、基準マーク20の個数が多い程、欠陥の座標の変換精度が向上することが分かる。基準マーク20の個数は、所望の3σに基づいて決定することができる。基準マーク20の個数は4個以上が好ましく、3σを50nm未満とすることができる。また、基準マーク20の個数は8個以上がより好ましく、3σを25nm未満とすることができる。また、基準マーク20の個数は16個以上がさらに好ましく、3σを20nm未満とすることができる。また、基準マーク20を形成するための工数が増えること、及び、基準マーク20が多すぎると欠陥が増加する観点から、基準マーク20の個数は、100個以下が好ましい。さらに、基準マーク20が60個を超える場合、3σの減少幅が小さくなる傾向があることから、基準マーク20の個数は、60個以下がより好ましい。
【0108】
本実施形態の反射型マスクブランク30において、上記の手順(1)~(5)によって求められる3σの値が、50nm未満である。好ましくは、x座標及びy座標の両方のデータについて、3σの値が50nm未満である。3σの値が50nm未満であることにより、欠陥検査装置の第1の座標系から、座標計測器の第2の座標系への変換精度を向上させることができる。
【0109】
これにより、反射型マスクブランク30を提供されたユーザーは、欠陥検査装置により特定した欠陥位置と、描画データとを高精度に照合することが可能となり、最終的に製造される反射型マスクにおいて欠陥を確実に低減させることができる。
【0110】
本実施形態の反射型マスクブランク30では、上記手順(2)において、吸収体膜(積層膜28)に転写された転写基準マークの第2の基準マーク座標を取得している。電子線描画装置によってレジスト膜にパターンを描画する際には、吸収体膜上のFMを基準として用いるため、吸収体膜に転写された転写基準マークの第2の基準マーク座標を使用することにより、座標の変換精度をより向上させることができる。すなわち、基準マークの上に吸収体膜(積層膜28)が形成されると、吸収体膜に転写された転写基準マークの幅や深さが変わることによって、検出される基準マークの位置が変わる場合がある。吸収体膜に転写された転写基準マークの第2の基準マーク座標を取得し、この取得した第2の基準マーク座標に基づいて変換係数を算出することによって、基準マークの位置ずれの影響を考慮した変換係数を算出することが可能となる。その結果、上記手順(4)における座標の変換精度をより向上させることが可能となる。
【0111】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、別の多層反射膜付き基板と、該別の多層反射膜付き基板上に積層膜を有する別の反射型マスクブランクとを使用して、基準マークの個数と3σとの対応関係を取得し、該対応関係に基づいて決定された個数の基準マークを有する反射型マスクブランク30である点が、第3の実施形態とは異なる。それ以外は、第3の実施形態と同様である。
【0112】
すなわち、本実施形態の反射型マスクブランク30は、多層反射膜付き基板10における欠陥の位置の基準となる基準マーク20を備えている。多層反射膜付き基板10上に形成された吸収体膜(積層膜28)は、基準マーク20の形状が転写された転写基準マークを備える。前記基準マーク20の個数は、以下の手順(1)~(7)によって予め求められた個数である。
(1)第1の座標系を有する欠陥検査装置によって、複数の基準マークを有する別の多層反射膜付き基板における欠陥の第1の欠陥座標、及び、基準マークの第1の基準マーク座標を取得する。
(2)第2の座標系を有する座標計測器によって、前記別の多層反射膜付き基板上に形成された積層膜を有する別の反射型マスクブランクにおける欠陥の第2の欠陥座標、及び、転写基準マークの第2の基準マーク座標を取得する。
(3)前記第1の基準マーク座標及び前記第2の基準マーク座標に基づいて、前記第1の座標系から前記第2の座標系へ座標を変換するための変換係数を算出する。
(4)上記(3)で算出された変換係数を用いて、上記(1)において前記欠陥検査装置によって取得された前記第1の欠陥座標を、前記第2の座標系を基準とした第3の欠陥座標へ変換する。
(5)上記(2)において前記座標計測器によって取得された前記第2の欠陥座標と、上記(4)で変換された第3の欠陥座標との間の差について、3σの値を求める。
(6)基準マークの個数と3σとの対応関係を取得する。
(7)所望の3σの値(例えば、50nm未満)となる基準マークの個数を決定する。
上記手順(1)~(5)は、別の多層反射膜付き基板及び別の反射型マスクブランクを用いる点が異なるだけで、第3の実施形態の手順(1)~(5)と同様である。
別の多層反射膜付き基板は、第3の実施形態と同様である。別の反射型マスクブランクは、別の多層反射膜付き基板に形成された基準マークが転写された複数の転写基準マークを有する。
【0113】
本実施形態では、別の多層反射膜付き基板及び別の反射型マスクブランクを用いて基準マークの個数を求めるため、基準マークの形状、転写基準マークの形状、欠陥検査装置及び/又は座標計測器に応じて、最適な個数の基準マーク20を有する多層反射膜付き基板10を得ることができる。
【0114】
[反射型マスクの製造方法]
本実施形態の反射型マスクブランク30を使用して、本実施形態の反射型マスク40を製造することができる。以下、反射型マスク40の製造方法について説明する。
【0115】
図4は、反射型マスク40の製造方法を示す模式図である。
図4に示すように、まず、基板12と、基板12の上に形成された多層反射膜14と、多層反射膜14の上に形成された保護膜18と、保護膜18の上に形成された吸収体膜(積層膜28)とを有する反射型マスクブランク30を準備する(図4(a))。つぎに、吸収体膜の上に、レジスト膜32を形成する(図4(b))。レジスト膜32に、電子線描画装置によってパターンを描画し、さらに現像・リンス工程を経ることによって、レジストパターン32aを形成する(図4(c))。
【0116】
レジストパターン32aをマスクとして、吸収体膜(積層膜28)をドライエッチングする。これにより、吸収体膜のレジストパターン32aによって被覆されていない部分がエッチングされ、吸収体膜パターン28aが形成される(図4(d))。
【0117】
なお、エッチングガスとしては、例えば、Cl,SiCl,CHCl,CCl等の塩素系ガス、これら塩素系ガス及びOを所定の割合で含む混合ガス、塩素系ガス及びHeを所定の割合で含む混合ガス、塩素系ガス及びArを所定の割合で含む混合ガス、CF,CHF,C,C,C,C,CH,CHF,C,SF,F等のフッ素系ガス、これらフッ素系ガス及びOを所定の割合で含む混合ガス、フッ素系ガス及びHeを所定の割合で含む混合ガス、フッ素系ガス及びArを所定の割合で含む混合ガス等を使用することができる。
【0118】
吸収体膜パターン28aが形成された後、例えば、レジスト剥離液によりレジストパターン32aを除去する。レジストパターン32aを除去した後、酸性やアルカリ性の水溶液を用いたウェット洗浄工程を経ることによって、本実施形態の反射型マスク40が得られる(図4(e))。
【0119】
[半導体装置の製造方法]
本実施形態の反射型マスク40を使用したリソグラフィーにより、半導体基板上に転写パターンを形成することができる。この転写パターンは、反射型マスク40の吸収体膜パターン28aが転写された形状を有している。半導体基板上に反射型マスク40によって転写パターンを形成することによって、半導体装置を製造することができる。
【0120】
図5を用いて、レジスト付き半導体基板56にEUV光によってパターンを転写する方法について説明する。
【0121】
図5は、パターン転写装置50を示している。パターン転写装置50は、レーザープラズマX線源52、反射型マスク40、及び、縮小光学系54等を備えている。縮小光学系54としては、X線反射ミラーが用いられている。
【0122】
反射型マスク40で反射されたパターンは、縮小光学系54により、通常1/4程度に縮小される。例えば、露光波長として13~14nmの波長帯を使用し、光路が真空中になるように予め設定する。このような条件で、レーザープラズマX線源52で発生したEUV光を、反射型マスク40に入射させる。反射型マスク40によって反射された光を、縮小光学系54を介して、レジスト付き半導体基板56上に転写する。
【0123】
反射型マスク40に入射した光は、吸収体膜パターン28aのある部分では、吸収体膜に吸収されて反射されない。一方、吸収体膜パターン28aのない部分に入射した光は、多層反射膜14により反射される。
【0124】
反射型マスク40によって反射された光は、縮小光学系54に入射する。縮小光学系54に入射した光は、レジスト付き半導体基板56上のレジスト層に転写パターンを形成する。露光されたレジスト層を現像することによって、レジスト付き半導体基板56上にレジストパターンを形成することができる。レジストパターンをマスクとして半導体基板56をエッチングすることにより、半導体基板上に例えば所定の配線パターンを形成することができる。このような工程及びその他の必要な工程を経ることで、半導体装置が製造される。
【0125】
多層反射膜付き基板上に形成された基準マークがFMである場合、本実施形態の反射型マスクブランクは、例えば、上述の第2の実施形態又は第4の実施形態によって、FMの個数を決定し、以下の方法によって製造することができる。
反射型マスクブランクの製造方法であって、
基板上に、多層反射膜を成膜して、多層反射膜付き基板を形成する工程と、
前記多層反射膜付き基板の表面に、所望の3σに基づいて決定された個数のFMを形成する工程と、
欠陥検査装置を用いて、前記多層反射膜付き基板の表面の欠陥の第1の欠陥座標、及び、前記FMの第1のFM座標を取得することにより、前記第1のFM座標を基準とした第1の欠陥座標を示す欠陥マップを取得する工程と、
前記多層反射膜付き基板の上に、前記FMが転写された転写FMを有する積層膜を成膜する工程と、を備える反射型マスクブランクの製造方法。
【0126】
上記反射型マスクブランク及び欠陥マップを提供されたユーザーは、転写FMに基づいて、欠陥検査装置により特定した欠陥位置と、描画データとを高精度に照合することが可能となり、最終的に製造される反射型マスクにおいて欠陥を確実に低減させることができる。
【0127】
多層反射膜付き基板上に形成された基準マークがAMである場合、本実施形態の反射型マスクブランクは、例えば、上述の第2の実施形態又は第4の実施形態によって、AMの個数を決定し、以下の方法によって製造することができる。
反射型マスクブランクの製造方法であって、
基板上に、多層反射膜を成膜して、多層反射膜付き基板を形成する工程と、
前記多層反射膜付き基板の表面に、所望の3σに基づいて決定された個数のAMを形成する工程と、
欠陥検査装置を用いて、前記多層反射膜付き基板の表面の欠陥の第1の欠陥座標、及び、前記AMの第1のAM座標を取得することにより、第1のAM座標を基準とした第1の欠陥座標を示す第1の欠陥マップを取得する工程と、
前記多層反射膜付き基板の上に、前記AMが転写された転写AMを有する積層膜を成膜する工程と、
前記積層膜の表面に、FMを形成する工程と、
座標計測器を用いて、前記転写AMの第2のAM座標及び前記FMのFM座標を取得することにより、前記第1の欠陥マップを、前記FM座標を基準とする第1の欠陥座標を示す第2の欠陥マップに変換する工程と、を備える反射型マスクブランクの製造方法。
【0128】
上記反射型マスクブランク及び第2の欠陥マップを提供されたユーザーは、FMに基づいて、欠陥検査装置により特定した欠陥位置と、描画データとを高精度に照合することが可能となり、最終的に製造される反射型マスクにおいて欠陥を確実に低減させることができる。
【実施例
【0129】
以下、本発明のさらに具体的な実施例について説明する。
<実施例1>
SiO-TiO系のガラス基板(6インチ角、厚さが6.35mm)を準備した。このガラス基板の端面を面取り加工、及び研削加工し、更に酸化セリウム砥粒を含む研磨液で粗研磨処理した。これらの処理を終えたガラス基板を両面研磨装置のキャリアにセットし、研磨液にコロイダルシリカ砥粒を含むアルカリ水溶液を用い、所定の研磨条件で精密研磨を行った。精密研磨終了後、ガラス基板に対し洗浄処理を行った。得られたガラス基板の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で、0.10nm以下であった。得られたガラス基板の主表面の平坦度は、測定領域132mm×132mmにおいて、30nm以下であった。
【0130】
上記のガラス基板の裏面に、以下の条件で、CrNからなる裏面導電膜をマグネトロンスパッタリング法により形成した。
(条件):Crターゲット、Ar+Nガス雰囲気(Ar:N=90%:10%)、膜組成(Cr:90原子%、N:10原子%)、膜厚20nm
【0131】
ガラス基板の裏面導電膜が形成された側と反対側の主表面上に、Mo膜/Si膜を周期的に積層することで多層反射膜を形成した。
【0132】
具体的には、MoターゲットとSiターゲットを使用し、イオンビームスパッタリング(Arを使用)により、基板上に、Mo膜及びSi膜を交互に積層した。Mo膜の厚みは、2.8nmである。Si膜の厚みは、4.2nmである。1周期のMo/Si膜の厚みは、7.0nmである。このようなMo/Si膜を、40周期積層し、最後にSi膜を4.0nmの膜厚で成膜し、多層反射膜を形成した。
【0133】
多層反射膜の上に、Ru化合物を含む保護膜を形成した。具体的には、RuNbターゲット(Ru:80原子%、Nb:20原子%)を使用し、Arガス雰囲気にて、DCマグネトロンスパッタリングにより、多層反射膜の上に、RuNb膜からなる保護膜を形成した。保護膜の厚みは、2.5nmであった。
【0134】
保護膜の上に、レーザ加工によって、FMを形成した。
レーザ加工の条件は、以下の通りであった。
レーザの種類:波長405nmの半導体レーザ
レーザの出力:20mW(連続波)
スポットサイズ:430nmφ
【0135】
FMの形状及び寸法は、以下の通りであった。
形状:略十字型
深さD:40nm
幅W1,W2:1μm
長さL:1mm
【0136】
FMは、8個形成した。
FMの形成箇所は、図6に示す通りであり、132mm×132mmの有効領域(破線で示す領域)の外側であった。
【0137】
欠陥検査装置(レーザーテック株式会社製、ABI)を用いて、多層反射膜付き基板における欠陥の第1の欠陥座標、及び、FMの第1のFM座標を取得した。欠陥の個数は、4個だった。
【0138】
多層反射膜付き基板の保護膜の上に吸収体膜を形成し、反射型マスクブランクを製造した。具体的には、TaBN(厚み56nm)とTaBO(厚み14nm)の積層膜からなる吸収体膜を、DCマグネトロンスパッタリングにより形成した。TaBN膜は、TaBターゲットを使用し、ArガスとNガスの混合ガス雰囲気における反応性スパッタリングにより形成した。TaBO膜は、TaBターゲットを使用し、ArガスとOガスの混合ガス雰囲気における反応性スパッタリングにより形成した。積層膜には、FMが転写された転写FMが形成されていた。
【0139】
座標計測器(KLA-Tencor社製LMS-IPRO4)を用いて、反射型マスクブランクにおける欠陥の第2の欠陥座標、及び、転写FMの第2のFM座標を取得した。
【0140】
取得した第1のFM座標、及び、第2のFM座標を用いて、欠陥検査装置の第1の座標系から座標計測器の第2の座標系へ座標を変換するための変換係数を算出した。変換係数の算出には、上述のアフィン変換の式を用いた。
【0141】
算出した変換係数を用いて、欠陥検査装置によって取得された第1の欠陥座標を、座標計測器の第2の座標系へ変換して第3の欠陥座標を取得した。
【0142】
変換によって求められた第3の欠陥座標と、座標計測器によって取得された第2の欠陥座標との差を、X座標及びY座標それぞれについて求めた。すべての欠陥データについてこのような「差」(絶対値)を計算し、この「差」についての標準偏差σ、及び、3σを計算した。この結果、FMが8個の場合の3σは、X座標が24.2nm、Y座標が23.3nmであり、いずれも50nm未満であった。
【0143】
また、FMの個数を3~7の間で変化させて、上述のFMの個数が8個の場合と同様に、3σの値を計算した。FMの個数が3~8の場合の3σの計算結果を、以下の表1、及び、図7のグラフに示す。
【0144】
【表1】
【0145】
表1及び図7に示す通り、FMの個数が4個以上の場合、3σがX座標及びY座標ともに50nm未満であり、欠陥検査装置の第1の座標系から座標計測器の第2の座標系への変換精度が高かった。
【0146】
上記で製造した反射型マスクブランクの吸収体膜上に、レジスト膜を形成した。電子線描画装置を用いて、レジスト膜にパターンを描画した。パターンを描画する際には、4個の転写FMを欠陥座標の基準として使用した。パターンを描画した後、所定の現像処理を行い、吸収体膜上にレジストパターンを形成した。
【0147】
レジストパターンをマスクとして、吸収体膜にパターンを形成した。具体的には、フッ素系ガス(CFガス)により、上層のTaBO膜をドライエッチングした後、塩素系ガス(Clガス)により、下層のTaBN膜をドライエッチングした。
【0148】
吸収体膜パターン上に残ったレジストパターンを、熱硫酸で除去することで、実施例1に係る反射型マスクが得られた。この得られたEUV反射型マスクについてマスク欠陥検査装置(KLA-Tencor社製Teron600シリーズ)により検査したところ、吸収体膜パターンの多層反射膜の露出領域に欠陥は確認されなかった。
【0149】
<実施例2>
FMの個数を8個から16個に変更した以外は、上記実施例1と同様に、多層反射膜付き基板及び反射型マスクブランクを製造した。
FMの形成箇所は、図9に示す通りであり、132mm×132mmの有効領域(破線で示す領域)の外側であった。
【0150】
実施例1と同様にして3σを計算した。この結果、FMが16個の場合の3σは、X座標が18.2nm、Y座標が18.0nmであり、いずれも50nm未満であった。
【0151】
実施例1と同様に、転写FMを基準とする欠陥の位置情報に基づき、電子線描画装置によって、レジスト膜にパターンを描画することにより、実施例2の反射型マスクを得た。この得られたEUV反射型マスクについてマスク欠陥検査装置(KLA-Tencor社製Teron600シリーズ)により検査したところ、吸収体膜パターンの多層反射膜の露出領域に欠陥は確認されなかった。
【0152】
<実施例3>
実施例1の8個のFMが形成された多層反射膜付き基板及び反射型マスクブランクを別の多層反射膜付き基板及び別の反射型マスクブランクとして用いて、実施例3の多層反射膜付き基板及び反射型マスクブランクを作製した。
実施例1で求められたFMの個数と3σとの対応関係から、3σが30nm未満となるFMの個数を算出し、FMの個数を7個とした。
実施例1と同様にして、ガラス基板の裏面導電膜が形成された側と反対側の主表面上に多層反射膜及び保護膜を形成した。保護膜の上にレーザ加工によってFMを形成し、7個のFMを有する多層反射膜付き基板を作製した。
FMの形状及び寸法は、以下の通りであった。
形状:略十字型
深さD:40nm
幅W1,W2:1μm
長さL:1m
【0153】
実施例1と同様にして、欠陥検査装置(レーザーテック株式会社製、ABI)を用いて、多層反射膜付き基板における欠陥の第1の欠陥座標、及び、FMの第1のFM座標を取得し、第1のFM座標に対する第1の欠陥座標を示す欠陥マップを得た。欠陥の個数は、5個だった。
【0154】
実施例1と同様にして、保護膜の上に転写FMが形成された積層膜を成膜し、反射型マスクブランクを作製した。転写FMの深さD’の、FMの深さDからのずれΔDは、ほぼ0であった。転写FMの幅W1’,W2’の、FMの幅W1,W2からのずれΔW1、ΔW2は、各々7%であった。転写FMの長さL’の、FMの長さLからのずれΔLは、0.1%であった。
【0155】
座標計測器(KLA-Tencor社製LMS-IPRO4)を用いて、反射型マスクブランクにおける欠陥の第2の欠陥座標、及び、転写FMの第2のFM座標を取得した。実施例1と同様にして、第1の欠陥座標を、座標計測器の第2の座標系に変換し、変換によって求められた第3の欠陥座標と、座標計測器によって取得された第2の欠陥座標との差を、X座標及びY座標それぞれについて求めた。この結果、3σは30nm未満を満たしていた。
【0156】
上記で製造した反射型マスクブランクを用いて、実施例1と同様にして反射型マスクを作製した。この得られた反射型マスクについて、マスク欠陥検査装置(KLA-Tencor社製Teron600シリーズ)により検査したところ、吸収体膜パターンの多層反射膜の露出領域に欠陥は確認されなかった。
【0157】
<実施例4>
上述の図8の結果に基づいて、3σが20nm未満となるAMの個数として28個を算出し、実施例4の多層反射膜付き基板及び反射型マスクブランクを作製した。
実施例1と同様にして、ガラス基板の裏面導電膜が形成された側と反対側の主表面上に多層反射膜及び保護膜を形成した。
【0158】
保護膜の上に、レーザ加工によって、AMを形成した。
レーザ加工の条件は、以下の通りであった。
レーザの種類:波長405nmの半導体レーザ
レーザの出力:20mW(連続波)
スポットサイズ:430nmφ
【0159】
AMの形状及び寸法は、以下の通りであった。
形状:略円形
深さ:40nm
直径:0.9μm
【0160】
AMは、28個形成した。
AMの形成箇所は、図10に示す通りであり、132mm×132mmの有効領域(破線で示す領域)の外側であった。
【0161】
欠陥検査装置(レーザーテック株式会社製、ABI)を用いて、多層反射膜付き基板における欠陥の第1の欠陥座標、及び、28個のAMの第1のAM座標を取得した。
【0162】
多層反射膜付き基板の保護膜の上に吸収体膜を形成し、反射型マスクブランクを製造した。具体的には、TaBN(厚み56nm)とTaBO(厚み14nm)の積層膜からなる吸収体膜を、DCマグネトロンスパッタリングにより形成した。TaBN膜は、TaBターゲットを使用し、ArガスとNガスの混合ガス雰囲気における反応性スパッタリングにより形成した。TaBO膜は、TaBターゲットを使用し、ArガスとOガスの混合ガス雰囲気における反応性スパッタリングにより形成した。吸収体膜(積層膜)には、AMが転写された28個の転写AMが形成されていた。転写AMの深さD’の、AMの深さDからのずれΔDは、ほぼ0であった。転写AMの直径の、AMの直径からのずれは、6%であった。
【0163】
吸収体膜の表面に、FIB加工によって、FMを形成した。
FIB加工の条件は、以下の通りであった。
加速電圧:50kV
ビーム電流値:20pA
【0164】
FMの形状及び寸法は、以下の通りであった。
形状:略十字型
深さD:70nm
幅W1,W2:5μm
長さL:1mm
【0165】
FMは、4個形成した。
FMの形成箇所は、図10に示す通りであり、132mm×132mmの有効領域(破線で示す領域)の外側であった。
【0166】
座標計測器(KLA-Tencor社製LMS-IPRO4)を用いて、反射型マスクブランクにおける欠陥の第2の欠陥座標、及び、28個の転写AMの第2のAM座標を取得した。
【0167】
取得したAMの第1のAM座標、及び、転写AMの第2のAM座標を用いて、欠陥検査装置の第1の座標系から座標計測器の第2の座標系へ座標を変換するための変換係数を算出した。変換係数の算出には、上述のアフィン変換の式を用いた。
【0168】
算出した変換係数を用いて、欠陥検査装置によって取得された第1の欠陥座標を、座標計測器の第2の座標系へ変換し、第3の欠陥座標を取得した。
【0169】
変換によって求められた第3の欠陥座標と、座標計測器によって取得された第2の欠陥座標との差を、X座標及びY座標それぞれについて求めた。すべての欠陥データについてこのような「差」(絶対値)を計算し、この「差」についての標準偏差σ、及び、3σを計算した。この結果、AMの個数が28個の場合の3σは、X座標が14.9nm、Y座標が14.1nmであり、いずれも50nm未満であった。
【0170】
上記で製造した反射型マスクブランクの吸収体膜上に、レジスト膜を形成した。電子線描画装置を用いて、レジスト膜にパターンを描画した。パターンを描画する際には、FMを欠陥座標の基準として使用した。具体的には、転写AMとFMの相対的な位置関係を、座標計測器によって取得した。この位置関係を用いて、AMを基準とする欠陥の位置情報を、FMを基準とする欠陥の位置情報に変換した。FMを基準とする欠陥の位置情報に基づき、電子線描画装置によって、レジスト膜にパターンを描画した。
【0171】
レジストパターンをマスクとして、吸収体膜にパターンを形成した。具体的には、フッ素系ガス(CFガス)により、上層のTaBO膜をドライエッチングした後、塩素系ガス(Clガス)により、下層のTaBN膜をドライエッチングした。
【0172】
吸収体膜パターン上に残ったレジストパターンを、熱硫酸で除去することで、実施例4に係る反射型マスクが得られた。この得られたEUV反射型マスクについてマスク欠陥検査装置(KLA-Tencor社製Teron600シリーズ)により検査したところ、吸収体膜パターンの多層反射膜の露出領域に欠陥は確認されなかった。
【0173】
<比較例1>
FMの個数を8個から3個に変更した以外は、上記実施例1と同様に、多層反射膜付き基板及び反射型マスクブランクを製造した。
FMの形成箇所は、図11に示す通りであり、132mm×132mmの有効領域(破線で示す領域)の外側であった。
【0174】
実施例1と同様にして、3σを計算した。この結果、FMが3個の場合の3σは、X座標が62.7nm、Y座標が57.3nmであり、いずれも50nm以上であった。
【0175】
実施例1と同様に、転写FMを基準とする欠陥の位置情報に基づき、電子線描画装置によって、レジスト膜にパターンを描画することにより、比較例1の反射型マスクを得た。この得られたEUV反射型マスクについてマスク欠陥検査装置(KLA-Tencor社製Teron600シリーズ)により検査したところ、座標変換の精度が悪いため、吸収体膜パターンの下に欠陥を隠すことができず、多層反射膜の露出領域に欠陥が確認された。
【符号の説明】
【0176】
10 多層反射膜付き基板
12 基板
14 多層反射膜
18 保護膜
20 基準マーク
28 積層膜
30 反射型マスクブランク
40 反射型マスク
50 パターン転写装置
56 半導体基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11