(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20240522BHJP
D21H 13/02 20060101ALI20240522BHJP
D21H 11/18 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C08J5/04 CER
C08J5/04 CEZ
D21H13/02
D21H11/18
(21)【出願番号】P 2020559122
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2019046624
(87)【国際公開番号】W WO2020116315
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2018227690
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116404
【氏名又は名称】阿波製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯本 明
(72)【発明者】
【氏名】安田 茉由
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-104843(JP,A)
【文献】特開2017-132988(JP,A)
【文献】特開2017-082071(JP,A)
【文献】特開2014-095049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
セルロース繊維と、熱と水分に反応して自己接着又は他の繊維に接着可能な湿熱接着性バインダー繊維と、微細繊維状セルロースとを、湿式抄紙法で抄紙して、前記セルロース繊維同士を前記湿熱接着性バインダー繊維で接着させてシート状の原紙を形成する工程と、
前記シート状原紙に樹脂を含浸して繊維強化樹脂シートを形成する工程とを含み、
前記シート状原紙における
前記セルロース繊維の含有量が、60重量%~98重量%であり、
前記微細繊維状セルロースの含有量が、20重量%~1重量%であ
り、
前記シート状原紙に樹脂を含浸して繊維強化樹脂シートを形成する工程が、前記シート状原紙を所定形状にて配置し、型枠又はフィルムで密閉した上で、前記樹脂を含浸させてなる繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
前記セルロース繊維が、未叩解のパルプである繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
前記セルロース繊維が、化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ、非木材パルプ、又は塩素フリーパルプである繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
前記シート状原紙の坪量が、5g/m
2~100g/m
2、密度が0.3g/cm
3~0.7g/cm
3、引張強度が1.0kN/m以上、透気抵抗度が2sec以下である繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
前記セルロース繊維の平均繊維長が、0.5mm~7.0mmであり
前記セルロース繊維の平均繊維径が、5μm~50μmである繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
前記湿熱接着性バインダー繊維が、熱水で軟化して自己接着または他の繊維に接着可能な熱可塑性繊維である繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
前記湿熱接着性バインダー繊維が、ポリビニル系繊維、セルロース系繊維、又は変性ビニル系共重合体からなる繊維である繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
前記シート状原紙における前記湿熱接着性バインダー繊維の含有量が、1重量%~20重量%である繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
前記微細繊維状セルロースが、前記セルロース繊維を解繊及び/又は微細化することで得られる長さが3μm以上、平均繊維径が0.004μm~0.500μmのセルロースで構成される微細有機繊維である繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
前記湿式抄紙法でシート化する工程において、定着剤、凝結剤、又は凝集剤を添加してなる繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
前記シート状原紙に含浸される前記樹脂が、熱硬化性樹脂である繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項12】
繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
セルロース繊維と、熱と水分に反応して自己接着又は他の繊維に接着可能な湿熱接着性バインダー繊維と、微細繊維状セルロースとを、湿式抄紙法で抄紙して、前記セルロース繊維同士を前記湿熱接着性バインダー繊維で接着させてシート状の原紙を形成する工程と、
前記シート状原紙に樹脂を含浸して繊維強化樹脂シートを形成する工程とを含み、
前記シート状原紙に含浸される前記樹脂が、熱硬化性樹脂である繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂の何れかである繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
前記シート状原紙に含浸される前記樹脂が、熱可塑性樹脂である繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂が、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂及びポリオレフィン系樹脂の何れかである繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法であって、
前記シート状原紙に含浸される前記樹脂が、前記シート状原紙を密閉したフィルムが溶融したものである繊維強化樹脂シートの製造方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂シートの製造方法で得られた繊維強化樹脂シートを複数枚積層して、繊維強化樹脂成形体を形成する工程を含む繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の繊維強化樹脂成形体の製造方法であって、
前記繊維強化樹脂シートに樹脂を含浸させたプラスチック成形体における前記セルロース繊維の含有量が、20重量%~70重量%である繊維強化樹脂成形体の製造方法。
【請求項19】
繊維強化樹脂シートであって、
セルロース繊維と、
熱と水分に反応して自己接着又は他の繊維に接着可能な湿熱接着性バインダー繊維と、
微細繊維状セルロースと、
熱硬化性樹脂と
を含
む繊維強化樹脂シート。
【請求項20】
請求項19に記載の繊維強化樹脂シートを複数枚積層した繊維強化樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車や電車、航空機などの移動体の軽量化の観点から、樹脂材料を繊維で補強したFRPが注目されている。近年では、ライフサイクルアセスメント(LCA)の意識の高まりから、強化繊維としてセルロースを積極的に使用することが望まれている。セルロースはパルプ等に含まれており、このようなセルロースを用いた繊維強化樹脂シートは、CO2排出量の削減を図り環境に優しい材質として、利用分野の拡大が期待されている。例えばNEDOや環境省の進めるプロジェクトNCV(ナノセルロースビークル)等でも研究が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許4306373号公報
【文献】特開2004-143401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなセルロースを用いた繊維強化樹脂シート、例えばセルロース強化プラスチックは、セルロース繊維基材に樹脂を含浸して作製される。このセルロース強化プラスチックの作製には、均一性の観点から、高度に叩解したパルプ紙が用いられることが多かった。しかしながら、高叩解パルプ紙は原紙作製時の濾水性が悪く、さらに樹脂の含浸速度が遅いため生産性が悪いという問題があった。すなわち、繊維の間にエポキシ樹脂などのバインダー樹脂を含浸させて補強する構成となっているものの、高叩解したパルプは緻密であるため、溶融させた樹脂を含浸させても樹脂が入り込む隙間が殆どなく、樹脂を殆ど吸わないため、浸透圧を高めたり、時間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、生産性を高めた繊維強化樹脂シート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の第1の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、セルロース繊維と、熱と水分に反応して自己接着又は他の繊維に接着可能な湿熱接着性バインダー繊維と、微細繊維状セルロースとを、湿式抄紙法で抄紙して、前記セルロース繊維同士を前記湿熱接着性バインダー繊維で接着させてシート状の原紙を形成する工程と、前記シート状原紙に樹脂を含浸して繊維強化樹脂シートを形成する工程とを含み、前記シート状原紙における前記セルロース繊維の含有量が、60重量%~98重量%であり、前記微細繊維状セルロースの含有量が、20重量%~1重量%であり、前記シート状原紙に樹脂を含浸して繊維強化樹脂シートを形成する工程が、前記シート状原紙を所定形状にて配置し、型枠又はフィルムで密閉した上で、前記樹脂を含浸させている。これにより、従来困難であったセルロース繊維を用いたシート状原紙に樹脂を速やかに含浸させることが可能となる。すなわち、緻密になって樹脂を含浸できなくなる問題を、保水性を有する微細繊維状セルロースを含有させることで、湿潤性を高めて湿熱接着性バインダー繊維を反応させることが可能となる。この結果、セルロース繊維の中に樹脂を隙間なく配置して補強させ、繊維強化樹脂シート全体の強度と信頼性を高めることができる。また、湿式抄紙法でシート化する工程において微細繊維状セルロースでもって保水性を高め、湿熱接着性バインダー繊維の接着性を向上させることができる。
【0007】
また、第2の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、上記に加えて、前記セルロース繊維を、未叩解のパルプとすることができる。これにより、パルプを未叩解のままシート化することで、シート状原紙が緻密になることを回避して樹脂を含浸させ易くすることが可能となる。
【0008】
さらに、第3の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、上記何れかに加えて、前記セルロース繊維を、化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ、非木材パルプ、又は塩素フリーパルプとすることができる。
【0010】
さらにまた、第4の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、上記何れかに加えて、前記シート状原紙の坪量を、5g/m2~100g/m2、密度を0.3g/cm3~0.7g/cm3、引張強度を1.0kN/m以上、透気抵抗度を2sec以下とすることができる。
【0011】
さらにまた、第5の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、上記何れかに加えて、前記セルロース繊維の平均繊維長を、0.5mm~7.0mmとし、前記セルロース繊維の平均繊維径を、5μm~50μmとすることができる。
【0012】
さらにまた、第6の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、上記何れかに加えて、前記湿熱接着性バインダー繊維を、熱水で軟化して自己接着または他の繊維に接着可能な熱可塑性繊維とすることができる。
【0013】
さらにまた、第7の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、上記何れかに加えて、前記湿熱接着性バインダー繊維を、ポリビニル系繊維、セルロース系繊維、又は変性ビニル系共重合体からなる繊維とすることができる。
【0014】
さらにまた、第8の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、上記何れかに加えて、前記シート状原紙における前記湿熱接着性バインダー繊維の含有量を、1重量%~20重量%とすることができる。
【0015】
さらにまた、第9の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、上記何れかに加えて、前記微細繊維状セルロースを、前記セルロース繊維を解繊及び/又は微細化することで得られる長さが3μm以上、平均繊維径が0.004μm~0.500μmのセルロースで構成することができる。
【0017】
さらにまた、第10の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、上記何れかに加えて、前記湿式抄紙法でシート化する工程において、定着剤、凝結剤、又は凝集剤を添加することができる。これにより、微細繊維状セルロースの歩留りを向上させることができる。
【0018】
さらにまた、第11の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、上記何れかに加えて、前記シート状原紙に含浸される前記樹脂を、熱硬化性樹脂とすることができる。
さらにまた、第12の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、セルロース繊維と、熱と水分に反応して自己接着又は他の繊維に接着可能な湿熱接着性バインダー繊維と、微細繊維状セルロースとを、湿式抄紙法で抄紙して、前記セルロース繊維同士を前記湿熱接着性バインダー繊維で接着させてシート状の原紙を形成する工程と、前記シート状原紙に樹脂を含浸して繊維強化樹脂シートを形成する工程とを含み、前記シート状原紙に含浸される前記樹脂を、熱硬化性樹脂とすることができる。
【0019】
さらにまた、第13の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、上記何れかに加えて、前記熱硬化性樹脂を、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂の何れかとすることができる。
【0020】
さらにまた、第14の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、上記何れかに加えて、前記シート状原紙に含浸される前記樹脂を、熱可塑性樹脂とすることができる。
【0021】
さらにまた、第15の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、上記何れかに加えて、前記熱可塑性樹脂を、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂及びポリオレフィン系樹脂の何れかとすることができる。
【0022】
さらにまた、第16の形態に係る繊維強化樹脂シートの製造方法によれば、上記何れかに加えて、前記シート状原紙に含浸される前記樹脂が、前記シート状原紙を密閉したフィルムが溶融したものとすることができる。
【0023】
さらにまた、第17の形態に係る繊維強化樹脂成形体の製造方法によれば、上記何れかの方法で得られた繊維強化樹脂シートを複数枚積層して、繊維強化樹脂成形体を形成する工程を含むことができる。
【0024】
さらにまた、第18の形態に係る繊維強化樹脂成形体の製造方法によれば、上記何れかに加えて、前記繊維強化樹脂シートに樹脂を含浸させたプラスチック成形体におけるセルロース繊維の含有量を、20重量%~70重量%とすることができる。
【0025】
さらにまた、他の形態に係る繊維強化樹脂シートを構成するシート状原紙の製造方法によれば、セルロース繊維と、熱と水分に反応して自己接着又は他の繊維に接着可能な湿熱接着性バインダー繊維と、微細繊維状セルロースとを、湿式抄紙法で抄紙して、前記セルロース繊維同士を前記湿熱接着性バインダー繊維で接着させてシート状の原紙を形成する工程を含むことができる。
【0026】
さらにまた、第19の形態に係る繊維強化樹脂シートによれば、セルロース繊維と、熱と水分に反応して自己接着又は他の繊維に接着可能な湿熱接着性バインダー繊維と、微細繊維状セルロースと、熱硬化性樹脂とを含むことができる。上記構成により、従来困難であったセルロース繊維を用いたシート状原紙に容易に樹脂を含浸させることが可能となる。すなわち、緻密になって樹脂を含浸できなくなる問題を、保水性を有する微細繊維状セルロースを含有させることで、湿潤性を高めて湿熱接着性バインダー繊維を反応させることが可能となる。この結果、セルロース繊維の中に樹脂を隙間なく配置して補強させ、繊維強化樹脂シート全体の強度と信頼性を高めることができる。
【0027】
さらにまた、第20の形態に係る繊維強化樹脂成形体は、上記繊維強化樹脂シートを複数枚積層して得ることができる。
【0028】
さらにまた、他の形態に係る繊維強化樹脂シートを構成するためのシート状原紙によれば、セルロース繊維と、熱と水分に反応して自己接着又は他の繊維に接着可能な湿熱接着性バインダー繊維と、微細繊維状セルロースとを含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための繊維強化樹脂シート及びその製造方法を例示するものであって、本発明は繊維強化樹脂シート及びその製造方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、以下の説明において、同一の名称については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
[実施形態1]
【0030】
実施形態1に係る繊維強化樹脂シートは、シート状原紙に樹脂を含浸させて得られる。シート状原紙は、セルロース繊維と、湿熱接着性バインダー繊維と、微細繊維状セルロースを湿式抄紙して得られる。
(セルロース繊維)
【0031】
セルロース繊維は、細く長い植物繊維が好ましい。植物繊維としては、麻、マニラ麻、アバカ、こうぞ、三又 パイン、リンター、N材等が利用できる。これらを用いることで、引張強度が非常に強い繊維強化樹脂シートが得られる。
【0032】
またセルロース繊維として、未叩解又は軽微な叩解を行ったパルプが好適に利用できる。本明細書では、軽微な叩解を行ったパルプも含めて未叩解パルプと呼ぶ。このようなパルプを未叩解のままシート化することで、シート状原紙が緻密になることを回避して樹脂を含浸させ易くしている。
【0033】
セルロース繊維として用いるパルプは、化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ、非木材パルプ、塩素フリーパルプ等が利用できる。化学パルプは、広葉樹又は針葉樹のKP等が挙げられる。機械パルプは、SGP、RGP、BCTMP、CTMP等が挙げられる。古紙パルプは、脱墨パルプ等が挙げられる。非木材パルプは、コットンリンター、ケナフ、ジュート、バガス、竹、藁、麻等が挙げられる。塩素フリーパルプは、ECFパルプ、TCFパルプ等が挙げられる。
【0034】
セルロース繊維の平均繊維長は、0.5mm~7.0mmとすることが好ましい。またセルロース繊維の平均繊維径は、5μm~50μmとすることが好ましい。
【0035】
またシート状原紙におけるセルロース繊維の含有量は、60重量%~98重量%とすることが好ましい。
(湿熱接着性バインダー繊維)
【0036】
湿熱接着性バインダー繊維は、熱と水分に反応して自己接着又は他の繊維に接着可能な繊維である。ここでは、熱水で軟化させて接着材として機能させている。このような湿熱接着性バインダー繊維には、ポリビニル系繊維、セルロース系繊維、又は変性ビニル系共重合体からなる繊維が利用できる。
【0037】
またシート状原紙における湿熱接着性バインダー繊維の含有量は、1重量%~20重量%とすることが好ましい。
(微細繊維状セルロース)
【0038】
微細繊維状セルロースは、セルロース繊維を解繊及び/又は微細化することで得られる。また微細繊維状セルロースは、繊維径が0.1μm以下の、いわゆるセルロースナノファイバーと呼ばれる材質を含むことができる。微細繊維状セルロースは、長さが3μm以上、平均繊維径が0.004μm~0.500μmのセルロースで構成される微細有機繊維である。
【0039】
シート状原紙における微細繊維状セルロースの含有量は、1重量%乃至20重量%とすることが好ましい。
【0040】
このようなセルロース繊維と、湿熱接着性バインダー繊維と、微細繊維状セルロースを湿式抄紙してシート状原紙を得ることができる。この湿式抄紙法でシート化する工程におい、微細繊維状セルロースでもって保水性を高め、湿熱接着性バインダー繊維の接着性を向上させることができる。
(シート状原紙の製造方法)
【0041】
ここで、シート状原紙の製造方法について説明する。まずセルロース繊維として、離解させた未叩解パルプを準備し、均一に分散させる。これに湿熱接着性バインダー繊維と、微細繊維状セルロースとを加え、湿式抄紙法で抄紙する。
【0042】
従来の方法で抄紙工程において乾燥前の湿紙をプレスする際、通常の未叩解パルプであればプレス時に水分が奪われる結果、湿度が不足し、湿度で反応すべき湿熱接着性バインダー繊維の軟化が不十分となるおそれがあった。
【0043】
これに対して実施形態に係るシート状原紙では、セルロース繊維に、微細繊維状セルロースを加えている。この微細繊維状セルロースが保水性を有するため、プレス時にも湿度が供給されて、湿熱接着性バインダー繊維が軟化して接着力を発揮できるようになる。
【0044】
このようなプレス工程を経て高密化した上で、湿紙を乾燥工程で接着させる。上述の通り未叩解パルプでは保水性が低く、プレス工程で必要以上に脱水されて湿紙の水分が低くなる結果、湿熱接着性バインダー繊維の接着力が不十分になり、樹脂含浸加工強度が十分に得られない。これに対して、少量の微細繊維状セルロース繊維を添加することで湿紙の保水性を高め、均一かつ高通気性のシート状原紙を得ることができる。
【0045】
このように微細繊維状セルロースは、強度向上の目的よりも保水性を発揮させるために機能させている。このようにしてセルロース繊維同士を湿熱接着性バインダー繊維で効果的に接着させて、シート状原紙が得られる。
【0046】
また湿式抄紙法でシート化する工程において、定着剤、凝結剤、又は凝集剤を添加してもよい。これにより、微細繊維状セルロースの歩留りを向上させることができる。
【0047】
さらにシート状原紙の坪量は、5g/m2~100g/m2、密度は0.3g/cm3~0.7g/cm3、引張強度は1.0kN/m以上、透気抵抗度は2sec以下とすることが好ましい。なお、透気抵抗度は樹脂含浸性を示す指標である。また引張強度は工程強度を示す指標である。さらにまた、樹脂含浸性についてシート状原紙の透気抵抗度が2sec以下であれば良く、更に、1.5sec以下であれば優れる。さらにまたシート状原紙の引張強度について、1kN/m以上であれば樹脂含浸工程強度を満たすことができ、更に2kN/m以上であれば更に優れる。
(樹脂)
【0048】
さらに、シート状原紙に樹脂を含浸させて、繊維強化樹脂シートを得る。この樹脂には、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を利用できる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂等を利用できる。また熱可塑性樹脂としては、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂及びポリオレフィン系樹脂等が利用できる。また、繊維強化樹脂シートにおけるセルロース繊維の含有量を、20重量%乃至70重量%としてもよい。
【0049】
またシート状原紙に樹脂を含浸して繊維強化樹脂シートを形成する工程において、シート状原紙を所定形状にて配置し、型枠又はフィルムで密閉した上で、樹脂を含浸させることが好ましい。さらにシート状原紙に樹脂を含浸及び/又塗工させて繊維強化樹脂成形前駆体を得ることもできる。さらにまた、この繊維強化樹脂成形前駆体を所定形状に配置し、型枠又はフィルムで密閉して成形してもよい。加えて、得られた繊維強化樹脂シートを複数枚積層して、繊維強化樹脂成形体を形成することもできる。
【0050】
このようにして、従来困難であったセルロース繊維を用いたシート状原紙に樹脂を含浸させることが可能となる。すなわち、緻密になって樹脂を含浸できなくなる問題を、未叩解のセルロース繊維を用いて、且つ保水性を有する微細繊維状セルロースを含有させることで、湿潤性を高めて湿熱接着性バインダー繊維を反応させることが可能となる。この結果、セルロース繊維の中に樹脂を隙間なく配置して補強させ、繊維強化樹脂シート全体の強度と信頼性を高めることができる。以下、詳述する。
【0051】
車や電車、航空機などの移動体の軽量化の観点から、樹脂材料を繊維で補強したFRPが注目されている。近年では、ライフサイクルアセスメント(LCA)の意識の高まりから、強化繊維としてセルロースを積極的に使用することが望まれている。このようなセルロース繊維をシート状に均一に配置するには、叩解処理をする必要がある。すなわち、セルロース繊維基材に樹脂を含浸して作製するセルロース強化プラスチック等の繊維強化樹脂シートは、従来、均一性の観点から高度に叩解したパルプ紙が用いられることが多かった。
【0052】
しかしながら、高度に叩解処理を行うと濾水性が悪くなって原紙生産性が悪くなり、更には繊維長が短くなるうえに隠蔽性が上がるため樹脂の浸透性が悪化し、全体としての生産性が悪くなるという問題があった。
【0053】
そこで本発明者らは、このような問題を解決するために、鋭意研究の結果、本発明を成すに至った。すなわち本発明の実施形態に係る繊維強化樹脂シートは、セルロース繊維として、未叩解パルプを用いた。そしてこのようなセルロース繊維と、湿熱接着性バインダー繊維とを混抄するにあたり、微細繊維状セルロースを少量添加して保水性を高めている。これによって水分が湿熱接着性バインダー繊維に与えられて接着力が向上される。また適度な透過性を与えたことにより、従来のように樹脂の含浸速度が遅くなることもなく、原紙及び樹脂含浸加工の生産性に優れた繊維強化樹脂シートが得られる。
【0054】
さらに、本実施形態に係る繊維強化樹脂シートによれば、引張強度及び曲げ強度を高めることができる。本発明者らの行った試験によれば、引張強度及び曲げ強度のいずれも、繊維強化していないエポキシ樹脂の1.5倍であった。さらに縦横強度比を均等にできる効果も得られる。樹脂含浸前のシート状原紙では、縦横強度比が2:1程度であったところ、樹脂含浸後の繊維強化樹脂シートの状態では、1:1となっており、縦横いずれの方向にも強い均等な繊維強化樹脂シートを得ることができた。
(実施例1)
【0055】
次に、試作した実施例と比較例について、表1に示すと共に、それぞれについて以下説明する。まず実施例1として、シート状原紙を作製した。ここでは、未叩解パルプとしてマニラ麻パルプ、湿熱バインダー繊維としてVPB107-2(クラレ製湿熱接着性ビニロン繊維)、微細繊維状セルロースとしてセリッシュKY100G(ダイセルファインケム)を、それぞれ81:14:5の割合、微細繊維状セルロースの定着剤としてポリアクリルアミド1.5%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンを1.5%、硫酸アルミニウムを0.3%添加し混抄し、シート状原紙、すなわちセルロース繊維強化プラスチック原紙を作製した。このシート状原紙の坪量は29g/m2、密度は0.55g/cm3、透気抵抗度は1.9sec、引張強度は3.9kN/mであった。
【0056】
【0057】
さらに、このシート状原紙に対して、樹脂を含浸させて繊維強化樹脂シートを作製した。ここでは樹脂含浸マイヤーバーコート40g/m2で、樹脂として熱可塑性エポキシ樹脂XNR/H6850Vを用いた。このシート状原紙の樹脂含浸性はきわめて良好であった。また引張応力はニート樹脂に比べて1.4倍、引張弾性率は4.3倍、曲げ応力は1.5倍、曲げ弾性率は3.3倍であった。なお、評価に際しては、樹脂含浸性については透気抵抗度が、>2.1:×、1.6~2.0:△、~1.5:○、工程強度については引張強度が、<0.9:×、1.0~1.9:△、2.0~:○としている。なお、評価について、○は優れており、△は良く、×は困難であることを意味している。
(実施例2)
【0058】
また実施例2として、実施例1と同じマニラ麻パルプ/VPB107-2/セリッシュKY100Gを用いながら、その比率を、86:6:8とし、微細繊維状セルロースの定着剤としてポリアクリルアミド1.5%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンを1.5%、硫酸アルミニウムを0.3%添加しシート状原紙を作製した。このシート状原紙の坪量は25g/m2、密度は0.54g/cm3、透気抵抗度は1.1sec、引張強度は2.8kN/mであった。このように、樹脂浸透性は十分であった。
(実施例3)
【0059】
また実施例3として、実施例1と同じマニラ麻パルプ/VPB107-2/セリッシュKY100Gを用いながら、その比率を、60:20:20とし、微細繊維状セルロースの定着剤としてポリアクリルアミド1.5%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンを1.5%、硫酸アルミニウムを0.3%添加してシート状原紙を作製した。このシート状原紙の坪量16g/m2、密度は0.43g/cm3、透気抵抗度は0.21sec、引張強度は1.4kN/mであり、樹脂含浸性は良好であった。
(実施例4)
【0060】
次に実施例4として、未叩解パルプとしてN-BKPを用い、湿熱バインダー繊維は同じくVPB107-2、微細繊維状セルロースもセリッシュKY100Gを用いながら、その比率を、86:6:8とし、微細繊維状セルロースの定着剤としてポリアクリルアミド1.5%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンを1.5%、硫酸アルミニウムを0.3%添加してシート状原紙を作製した。このシート状原紙の坪量は24g/m2、密度は0.49g/cm3、透気抵抗度は0.5sec、引張強度は1.7kN/mであり、樹脂含浸性は良好であった。
(実施例5)
【0061】
次に実施例5として、未叩解パルプとしてN-BKPを用い、湿熱バインダー繊維は同じくVPB107-2×3mm、微細繊維状セルロースもセリッシュKY100Gを用いながら、その比率を、98:1:1とし、微細繊維状セルロースの定着剤としてポリアクリルアミド1.5%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンを1.5%、硫酸アルミニウムを0.3%添加してシート状原紙を作製した。このシート状原紙の坪量は97g/m2、密度は0.48g/cm3、透気抵抗度は1.5sec、引張強度は5.2kN/mであり、樹脂含浸性は良好であった。
(実施例6)
【0062】
次に実施例6として、未叩解パルプとしてマニラ麻パルプ、湿熱バインダー繊維としてVPB107-2、微細繊維状セルロースとしてN-BKPを湿式粉砕して微細化したセルロースを用いて、その比率を、86:6:8とし、微細繊維状セルロースの定着剤としてポリアクリルアミド1.5%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンを1.5%、硫酸アルミニウムを0.3%添加してシート状原紙を作製した。このシート状原紙の坪量は26g/m2、密度は0.52g/cm3、透気抵抗度は1.6sec、引張強度は3.1kN/mであり、樹脂含浸性は良好であった。N-BKPの微細化として水に分散させたN-BKPを5%濃度に調整し、これを石臼式磨砕機(増幸産業製スーパーマスコロイダー)を用い、モーター回転数1500rpm、砥石間隔は2000μmに設定し、繰り返し粉砕するに従い砥石の間隔を狭め、最終的に-150μmで5回通過させた。
(実施例7)
【0063】
次に実施例7として、未叩解パルプとしてマニラ麻パルプ、湿熱バインダー繊維としてVPB107-2、微細繊維状セルロースとしてコットンリンターを湿式粉砕して微細化したセルロースを用い、その比率を86:6:8とし、微細繊維状セルロースの定着剤としてポリアクリルアミド1.5%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンを1.5%、硫酸アルミニウムを0.3%添加して、シート状原紙を作製した。このシート状原紙の坪量は23g/m2、密度は0.47g/cm3、透気抵抗度は1.0sec、引張強度は2.7kN/mであり、樹脂含浸性は良好であった。またコットンリンターの微細化として水に分散させたN-BKPを5%濃度に調整し、これを石臼式磨砕機(増幸産業製スーパーマスコロイダー)を用い、モーター回転数1500rpm、砥石間隔は2000μmに設定し、繰り返し粉砕するに従い砥石の間隔を狭め、最終的に-150μmで5回通過させた。
(実施例8)
【0064】
次に実施例8として、未叩解パルプとしてマニラ麻パルプ、湿熱バインダー繊維としてVPB107-2、微細繊維状セルロースとしてマニラ麻パルプを湿式粉砕して微細化したセルロースを用い、その比率を86:6:8とし、微細繊維状セルロースの定着剤としてポリアクリルアミド1.5%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンを1.5%、硫酸アルミニウムを0.3%添加して、シート状原紙を作製した。このシート状原紙の坪量は25g/m2、密度は0.52g/cm3、透気抵抗度は1.7sec、引張強度は2.9kN/mであり、樹脂含浸性は良好であった。マニラ麻パルプの微細化として水に分散させたN-BKPを5%濃度に調整し、これを石臼式磨砕機(増幸産業製スーパーマスコロイダー)を用い、モーター回転数を1500rpm、砥石間隔は2000μmに設定し、繰り返し粉砕するに従い砥石の間隔を狭め、最終的に-150μmで5回通過させた。
(実施例9)
【0065】
次に実施例9として、未叩解パルプとしてマニラ麻パルプ、湿熱バインダー繊維としてS030(クラレ製湿熱接着性エチレン‐ビニルアルコール共重合繊維(EVOH繊維))、微細繊維状セルロースとしてセリッシュKY100Gを用い、その比率を86:6:8とし、微細繊維状セルロースの定着剤としてポリアクリルアミド1.5%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリンを1.5%、硫酸アルミニウムを0.3%添加して、シート状原紙を作製した。このシート状原紙の坪量は25g/m2、密度は0.52g/cm3、透気抵抗度は1.8sec、引張強度は2.9kN/mであり、樹脂含浸性は良好であった。
(比較例1)
【0066】
一方で比較例として、定着剤を添加せず叩解パルプを用いた以外は実施例1と同様のシート状原紙を作製した。ここでは、比較例1として、叩解したマニラ麻(60°SR)100%を用いてシート状原紙を作製した。このシート状原紙の、坪量は28g/m2、密度は0.58g/cm2、透気抵抗度は197.0sec、引張強度は3.2kN/mであった。樹脂の含浸性は悪く、均一な複合体を作製することができなかった。
(比較例2)
【0067】
また比較例2として、定着剤を添加せず叩解したN-BKP(60°SR)を用いた以外は、実施例1と同様の条件でシート状原紙を作製した。このシート状原紙の坪量は32g/m2、密度は0.59g/cm3、透気抵抗度は470.0sec、引張強度は2.4kN/mであり、樹脂含浸性は悪かった。
(比較例3)
【0068】
さらに比較例3として、定着剤を添加せず叩解したN-BKP(60°SR)を用いた以外は、実施例1と同様の条件でシート状原紙を作製した。このシート状原紙の坪量は15g/m2、密度は0.49g/cm3、透気抵抗度は0.8sec、引張強度は0.6kN/mであり、引張強度が弱く含浸工程強度不足であった。
(比較例4)
【0069】
さらにまた比較例4として、定着剤を添加せず叩解したN-BKP(60°SR)を用いた以外は、実施例1と同様の条件でシート状原紙を作製した。このシート状原紙の坪量は19g/m2、密度は0.49g/cm3、透気抵抗度は6.0sec、引張強度は1.0kN/mであり、樹脂含浸性は悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の繊維強化樹脂シート及びその製造方法は、自動車や鉄道、船舶、航空機等の外装や、樹脂部材として好適に利用できる。