(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】微生物発酵によって得られた炭水化物からラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)を精製するための簡素な方法
(51)【国際特許分類】
C07H 1/08 20060101AFI20240522BHJP
C07H 3/06 20060101ALI20240522BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20240522BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20240522BHJP
B01D 15/36 20060101ALI20240522BHJP
B01D 61/24 20060101ALI20240522BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20240522BHJP
C12P 19/14 20060101ALI20240522BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20240522BHJP
C12N 9/38 20060101ALN20240522BHJP
C12N 9/24 20060101ALN20240522BHJP
C13K 5/00 20060101ALN20240522BHJP
【FI】
C07H1/08
C07H3/06
B01D61/02 500
B01D61/14 500
B01D15/36
B01D61/24
B01D61/58
C12P19/14 Z
C12N1/20 F
C12N9/38
C12N9/24
C13K5/00
(21)【出願番号】P 2020562738
(86)(22)【出願日】2019-05-06
(86)【国際出願番号】 EP2019061530
(87)【国際公開番号】W WO2019215073
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-01
(32)【優先日】2018-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511297753
【氏名又は名称】クリスチャン・ハンセン・ハーエムオー・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Chr. Hansen HMO GmbH
【住所又は居所原語表記】Maarweg 32 53619 Rheinbreitbach Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】イェンネワイン,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルフリッヒ,マルクス
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-535724(JP,A)
【文献】国際公開第2017/182965(WO,A1)
【文献】特表2016-530888(JP,A)
【文献】特表2008-506949(JP,A)
【文献】MIWA, M et al.,Cooperation of β-galactosidase and β-N-acetylhexosaminidase from bifidobacteria in assimilation of human milk oligosaccharides with type 2 structure,Glycobiology,Volume 20, Issue 11,2010年11月,Pages 1402-1409
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00-41/00
C12N 9/00- 9/99
C07H 1/00-99/00
B01D 15/00-15/42
B01D 61/00-71/82
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクト-N-ネオテトラオースを他の炭水化物から精製するための方法であって、該方法は、ラクト-N-ネオテトラオースを含有する水溶液を異なる膜を用いる二つの膜濾過工程に付す工程を含み、ここで、
- 一つの膜は300~500ドルトンの分子量カットオフを有し、そして
- 他の膜は600~800ドルトンの分子量カットオフを有する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
該水溶液が、ラクト-N-ネオテトラオースを製造するための発酵又は酵素法から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水性媒体が、発酵ブロスからバイオマスを分離することによって発酵から得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
発酵ブロスからのバイオマスの分離が、少なくとも一つの限外濾過工程を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
発酵ブロスからのバイオマスの分離が、500kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第一の限外濾過と150kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第二の限外濾過とを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
水性媒体が、陽イオン交換樹脂と、陰イオン交換樹脂とにより処理される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
水性媒体が、陽イオン交換樹脂と、陰イオン交換樹脂とにより、該水溶液を膜濾過工程に付す前に処理される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
方法が、透析の工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ラクト-N-ネオテトラオースを他の炭水化物から精製するための方法であって、該方法は、ラクト-N-ネオテトラオースを含有する水溶液を、600~800ドルトンの分子量カットオフを有する膜を用いる膜濾過工程に付す工程と、該水溶液を連続クロマトグラフィーに付して、LNnTより小さい分子量を有する炭水化物を水溶液から除去する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
連続クロマトグラフィーの溶出液が膜濾過工程に付される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
該水溶液が、ラクト-N-ネオテトラオースを製造するための発酵又は酵素法から得られる、請求項9~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
水性媒体が、発酵ブロスからバイオマスを分離することによって発酵から得られる、請求項9~
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
発酵ブロスからのバイオマスの分離が、少なくとも一つの限外濾過工程を含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
発酵ブロスからのバイオマスの分離が、500kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第一の限外濾過と150kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第二の限外濾過とを含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
該水溶液が、陽イオン交換樹脂と、陰イオン交換樹脂とにより処理される、請求項9~
14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
該水溶液が、陽イオン交換樹脂と、陰イオン交換樹脂とにより、水性媒体を膜濾過工程に付す前に処理される、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
方法が、透析の工程をさらに含む、請求項9~
16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
精製前の該水溶液中のラクト-N-ネオテトラオースの純度が、≦70%、≦60%、≦50%、≦40%、≦30%、≦20%、≦10%又は≦5%であり、及び/又は、精製後、該水溶液がラクト-N-ネオテトラオースを≧80%、≧85%又は≧90%の純度で含有する、請求項1~
17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
方法が、発酵ブロス中のLNnT以外の一つ又は複数の炭水化物を加水分解するために少なくとも一つのグリコシダーゼの使用を含む、請求項1~
18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
第二の微生物がLNnTの発酵生産後に発酵ブロスに添加され、前記第二の微生物はβ-ガラクトシダーゼ、及び/又はN-アセチルヘキソサミニダーゼを発現している、請求項1~
19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクト-N-ネオテトラオース(Gal(β1-4)GlcNAc(β1-3)Gal(β1-4)Glc)の精製法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ラクト-N-ネオテトラオースを、ラクト-N-トリオ-ス、ラクトース(乳糖)及び単糖などの他の炭水化物のほか、前記ラクト-N-ネオテトラオースが微生物発酵によって製造される場合、発酵ブロス中に夾雑炭水化物として存在しうるパラ-ラクト-N-ネオヘキサオースのようなより大きいオリゴ糖から分離するための簡素で経済的な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトミルクは乳児の発育のための最良の食事と見なされている。それは、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラル、微量元素及び複合オリゴ糖で構成されている。ヒトミルク(ならびにその他の哺乳動物のミルク)は、ラクトースのほか、ヒトミルクオリゴ糖(HMO)としても知られる様々な構造的に異なるオリゴ糖を含有している(Usashima T.ら(2011)ミルクオリゴ糖(Milk Oligosaccharides),Nova Biomedical Books,ニューヨーク ISBN 978-1-61122-831-1)。
【0003】
HMOを化学的に又はバイオ技術に基づく手法によって製造しようとする努力は、HMOの腸内フローラの発達に対する有益性のために注目を集めており、栄養製品(特に乳児及び幼児の栄養であるが、医療及び成人の栄養製品も)へのそれらの使用も推奨されている。
【0004】
これらのプロバイオティック特性のほか、HMOの多くのその他のプラス効果がこれまでに観察されており、それらの応用分野が拡大している(Morrow A.L.& Yu,Y.(2017)公衆衛生に及ぼすヒトミルクオリゴ糖の潜在的影響(Potential public health impact of human milk oligosaccharides).収載:Prebiotics and probiotics in human milk.McGuire,M.,McGuire,M.& Bode,L.(編)Academic Press,ロンドン,pp 207-222)。
【0005】
限定的な供給と個々のヒトミルクオリゴ糖の純粋画分を得ることの難しさは、これらの複合分子のいくつかを製造するための化学的経路の開発のきっかけとなる。しかしながら、ヒトミルクオリゴ糖の、化学合成による、酵素合成による又は発酵による合成は容易でないことが分かった。少なくとも、今日まで、大規模量ならびに食品用途に十分な量の生産は困難であるとされている。
【0006】
ヒトミルクオリゴ糖の化学合成に関わる困難のために、いくつかの酵素法及び発酵法が開発された。特に、発酵法は、数百の異なる分子を含有する非常に複雑な発酵ブロスから所望のオリゴ糖を精製する必要がある。発酵ブロスの炭水化物画分だけでも、基質(例えば、ラクトース、及び炭素源として使用されるその他の糖)を含む単糖及びオリゴ糖、生合成中間体、個々の単糖類、代謝的副産物及び微生物によって合成されたその他の多糖類の複雑な混合物で構成されている。さらに、発酵ブロス中に生じるオリゴ糖の多くの構造は構造的に不明である(例えば、細胞表面グリコシル化構造のような、合成宿主によって自然に製造されるオリゴ糖)。従って、多くの場合、バイオ技術生成物の精製は、発酵によるその製造よりもはるかに高くつく。特に、ラクト-N-ネオテトラオースの発酵は、ラクト-N-ネオテトラオースの生合成における生合成中間体であり、細胞から培地に排出されることが多いラクト-N-トリオースIIの過剰合成を伴うことが多い。ラクト-N-トリオースIIは、精製過程でグリコシダーゼ処理又はクロマトグラフィー工程によって発酵ブロスから除去できる。ラクト-N-ネオテトラオースの非還元末端にあるβ-1,4結合ガラクトース残基のために非還元末端はラクトースに非常に類似している。このため、微生物発酵菌株中に存在するグリコシルトランスフェラーゼ又は生体触媒反応で使用されるグリコシルトランスフェラーゼによって更なるグリコシル化反応が引き起こされることが多い。これにより、ペンタオース、ヘキサオース、ヘプタオース及びさらにはより大きいオリゴ糖の形成がもたらされる(所望のラクト-N-テトラオース生成物の過剰グリコシル化)。さらに、炭水化物(例えばラクトース)のオートクレーブ(熱処理)によって、アルドール又はマヤール(mayard)生成物などの望まざる副産物の形成、又は転位反応(例えばラクトースからラクツロースへの変換)ももたらされる。そのような夾雑物が最終生成物中に特に大量に存在するのは望ましくないか又は容認できない。
【0007】
発酵ブロスから個々のオリゴ糖を精製するための“最先端”の方法は、特に前記オリゴ糖が食品用途を意図される場合、技術的に複雑で非経済的であることが多い。乳清又は糖液のような複雑な混合物から二糖類のラクトース又はスクロースを精製するために、複数の結晶化工程を含む工業規模の方法が開発されている。しかしながら、前記方法は手が込んでいる上に低収率しかもたらさない。また、これらの方法は、乳清及び糖液が既に食品であるため、糖(saccharide)を食品産業での使用に適切なものにするのにはふさわしくない。
【0008】
しかしながら、限外濾過、精密濾過(マイクロ濾過)及びナノ濾過のような濾過法は、すべての工程パラメーターが分かっていて最適化されていれば、実施するのは技術的に容易である。透析濾過は別の適切な方法で、膜透過性成分を除去するために新鮮水を溶液に添加することを必要とする。限外濾過及び精密濾過は、通常、タンパク質又は細胞のようなかなり大きい分子を発酵ブロス又は水溶液から分離するために使用される。さらに、ナノ濾過による水、ミネラル及び非常に小さい分子の除去も周知であり、酪農業では乳清の濃縮及びミネラル除去のために使用されている。大部分の場合、ナノ濾過及び限外濾過用の膜材料は、ピペラジン、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレングリコール及びセラミックなどの材料に基づいている。膜は、例えば、中空糸モジュール、スパイラル型モジュール及び平膜として組み立てる(アセンブルする)ことができ、そのアセンブリは、異なる分離性能をもたらすことができる。一般に、ナノ濾過膜は150~300ドルトンの範囲の分子量カットオフを有する。400~600ドルトンの範囲の分子量カットオフを有する膜は、特に大規模工業生産では非常に珍しい。このため、オリゴ糖の分離は、バッチ式又は連続式のクロマトグラフィーなどの他の分離技術が必要になるため、依然として複雑なものとなっている。
【0009】
微生物発酵によるヒトミルクオリゴ糖の製造には組換え微生物(組換え細菌株又は酵母菌株)が使用される。そのような使用の結果、微生物に由来する核酸分子又はポリペプチドなどの組換え材料によって発酵ブロスが汚染される。しかしながら、ヒトが消費する製品が組換えDNA又はタンパク質で汚染されることは、今日、規制当局によっても消費者によっても許容できない。従って、組換え微生物に由来するあらゆる核酸及びタンパク質は、目的のヒトミルクオリゴ糖から除去される必要がある。組換えDNA分子の検出限界は今日では非常に低いため、徹底的な精製スキームが求められる。DNAのqPCRベースの検出の場合、サンプル中のわずか単一のDNA分子でさえも検出可能である。
【0010】
ラクト-N-ネオテトラオースや密接に関連したヒトミルクオリゴ糖ラクト-N-テトラオース(Galβ1-3GlcNAcβ1-3-Galβ1-4Glu)の精製には、クロマトグラフィー法、特にゲル濾過クロマトグラフィーが使用されていた(Dumonら,(2001)遺伝子工学的改変大腸菌におけるヘリコバクター・ピロリのα1,3-フコシルトランスフェラーゼの異種発現によるラクト-N-ネオテトラオース及びラクト-N-ネオヘキサオースのインビボフコシル化(In Vivo Fucosylation of lacto-N-neotetraose and lacto-N-neohexaose by Heterologous Expression of Helicobacter pylori α1,3-Fucosyltransferase in Engineered Escherichia coli).Glycoconj.J.18,465-474;Priemら,(2002)新規発酵法によって可能となる代謝的工学改変細菌によるヒトミルクオリゴ糖の大規模生産(A new fermentation process allows large-scale production of human milk oligosaccharides by metabolically engineered bacteria).Glycobiology 12,235-240;Baumgartnerら,(2014)代謝的に工学改変されたプラスミドフリーの大腸菌におけるヒトミルクオリゴ糖ラクト-N-テトラオースの合成(Synthesis of the human milk oligosaccharide lacto-N-tetraose in metabolically engineered, plasmid-free E. coli).Chembiochem 15,1896-1900)。ゲル濾過クロマトグラフィーは便利な実験室規模の方法にすぎないが、擬似移動床クロマトグラフィーは食品生産に適合する規模でLNnTを精製するための適切な方法の代表である。しかしながら、公表されているすべてのその他の方法は,夾雑炭水化物、特に過剰グリコシル化に関連するものを所望生成物から効果的に除去できないという問題に悩まされている。
【0011】
そこで、本発明の目的は、微生物発酵からラクト-N-ネオテトラオースを精製するための簡素で費用効率の高い方法を提供することであり、そこでは組換え微生物に由来する核酸及びポリペプチドを所望のオリゴ糖から前記その他の炭水化物と同様に除去することができる。
【0012】
いくつかの発酵法が、大腸菌株などの工学的改変微生物を用いて、構造的に単純なラクト-N-ネオテトラオースのようなHMOについて既に開発されている(例えば、EP 3 141 610 A1;WO 2001/004341 A1;Bode,L.ら,(2017)ヒトミルクオリゴ糖を研究及び応用に利用可能にする-方法、課題、及び将来の機会(Making human milk oligosaccharides available for research and application - approaches, challenges, and future opportunities).収載:Prebiotics and probiotics in human milk.McGuire,M.,McGuire,M.& Bode,L.(編)Academic Press,ロンドン,pp 251-293)。
【0013】
しかしながら、その他の微生物発酵法もオリゴ糖の製造に使用できる。細菌系のほかに、真核生物の生産株も使用できる。例えば、酵母、特にサッカロミセス・セレビシエ又は任意の近縁株である。他の多くの推定的生産微生物とは対照的に、サッカロミセス・セレビシエは食品生産に認可されている微生物である。
【0014】
本質的に、微生物は、ラクトース取込みのために、又は容易に入手可能な炭素源(例えば、グルコース、ガラクトース、スクロース、フルクトース、キシロース、グリセロールなど)からの内因性ラクトース生合成のために遺伝子工学的に改変されねばならない。ラクトース代謝及び副産物形成に関する活性は、ラクト-N-ネオテトラオースの製造が達成される程度に不活化又は削減されるべきである。その後、ラクト-N-ネオテトラオースは、二つのグリコシルトランスフェラーゼ、β-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及びβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼの酵素活性によって合成される。ラクト-N-ネオテトラオースを合成するためのいくつかのグリコシルトランスフェラーゼは知られており、例えば、IgtA遺伝子によってコードされている髄膜炎菌(N. meningitidis)のβ-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及びgalT遺伝子によってコードされているヘリコバクター・ピロリのβ-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼなどである。好ましくは、所望のオリゴ糖を発酵培地に排出するためのエクスポーターが組換え微生物に発現されており、その後そこから前記オリゴ糖を精製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】欧州特許公開第3141610号
【文献】国際特許公開第2001/004341号
【非特許文献】
【0016】
【文献】Usashima T.ら(2011),Nova Biomedical Books,ニューヨーク ISBN 978-1-61122-831-1
【文献】Morrow A.L.& Yu,Y.(2017),Prebiotics and probiotics in human milk.McGuire,M.,McGuire,M.& Bode,L.(編)Academic Press,ロンドン,pp 207-222
【文献】Dumonら(2001),Glycoconj.J.18,465-474
【文献】Priemら(2002),Glycobiology 12,235-240
【文献】Baumgartnerら(2014),Chembiochem 15,1896-1900
【文献】Bode,L.ら(2017),Prebiotics and probiotics in human milk.McGuire,M.,McGuire,M.& Bode,L.(編)Academic Press,ロンドン,pp 251-293
【発明の概要】
【0017】
簡素で費用効率が高く、規模拡大可能なラクト-N-ネオテトラオースの精製法を提供する。このラクト-N-ネオテトラオースの精製法は、前記ラクト-N-ネオテトラオースを結晶化するための有機溶媒を使用せずに実施できる。さらに、このラクト-N-ネオテトラオースの精製法は、不連続的なクロマトグラフィー工程なしに実施できる。
【0018】
ラクト-N-ネオテトラオース(Gal(β1-4)GlcNAc(β1-3)Gal(β1-4)Glc)はヒトミルクオリゴ糖の代表で、乳児用調製粉乳(infant formula)及び病人向け特別食(medical food)へのその配合が非常に望まれる。ラクト-N-ネオテトラオースは高コストであるため、特に乳児用調製粉乳へのその幅広い使用が妨げられている。特に、微生物発酵からの生成物の精製には労力が要り、費用がかかることが多い。
【0019】
また、有機溶媒の使用と不連続的なクロマトグラフィー工程も、ラクト-N-ネオテトラオース及びその他の中性オリゴ糖を法外に高価なものにしている。また、エタノールの使用は、ある種の宗教的食品基準によっては受け入れられない(例えばハラル)。そこで、本発明は、組換えプロセシングの助けを借りて微生物発酵からラクト-N-ネオテトラオースを精製し、ヒトの消費に適切な、特に乳児用食品及び医療用栄養製品に適切なラクト-N-ネオテトラオース生成物を得るための簡素で費用効果的な方法に関する。
【0020】
精製法は、夾雑炭水化物からラクト-N-ネオテトラオース(Gal(β1-4)GlcNAc(β1-3)Gal(β1-4)Glc)を精製/分離するための膜に基づく。開発された方法は、クロマトグラフィー又は結晶化をベースにした精製法に代わる費用効率の高い代替法である。なされた発明は、特に、細菌又は酵母を生産宿主として使用する微生物発酵と粗酵素又は精製酵素を用いる生体触媒法(biocatalysis process)によって得られるラクト-N-ネオテトラオースの精製に関連する。ラクト-N-ネオテトラオースを精製するための方法は二つの膜濾過工程を含み、一つの膜は約300~約500ドルトンの分子量カットオフを有し、他の膜は約600~約800ドルトンの分子量カットオフを有する。
【0021】
本発明の側面において、二つの膜濾過工程のいずれか一つは、擬似移動床クロマトグラフィー(SMB)のような連続クロマトグラフィーの工程によって置き換えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、数種類の糖(サッカリド)を含有する組成物のHPLC分析の結果を示し、二つの膜濾過工程を用いるラクト-N-ネオテトラオースの精製の原理を示す。
【
図2】
図2は、ラクト-N-ネオテトラオースを製造するための微生物発酵後の発酵ブロスのイオン交換体処理後に得られた溶出液のHPLC分析の結果を示す。
【
図3】
図3は、ラクト-N-ネオテトラオースを製造するための微生物発酵後の発酵ブロスのイオン交換体処理と二つの膜濾過工程に付した後に得られた溶出液のHPLC分析の結果を示す。
【
図4】
図4は、SMB供給液のHPLC分析の結果を示す。
【
図5】
図5は、SMB抽出液(エクストラクト)のHPLC分析の結果を示す。
【
図6】
図6は、SMB回収液(ラフィネート)のHPLC分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ラクト-N-ネオテトラオースを他の炭水化物から精製するための方法を提供し、該方法は、ラクト-N-ネオテトラオースと前記他の炭水化物を含有する水溶液を異なる膜を用いる二つの膜濾過工程に付す工程を含み、ここで、一つの膜は約300~約500ドルトンの分子量カットオフを有し、他の膜は約600~約800ドルトンの分子量カットオフを有する。
【0024】
約300~約500ドルトンの分子量カットオフを有する膜は、LNnTより小さい分子量を有する炭水化物のバルクを除去できる。濾過により、LNnTとLNnTより大きい分子量を有する炭水化物が保持液中に保持される。
【0025】
追加及び/又は代替の態様において、約300~約500ドルトンの分子量カットオフを有する膜は、1~2nmの孔径を有する。
LNnTより小さい分子量を有する炭水化物のバルクを除去するための適切な膜は、例えば、TriSep XN-45(TriSep Corporation社、米国)、Dairy DK(Suez Water Technologies社、旧GE社)及びFilmtech NF270(Dow社、米国ミシガン州ミッドランド)である。
【0026】
約600~約800ドルトンの分子量カットオフを有する膜は、ラクト-N-ネオテトラオース及びLNnTより小さい分子量を有する炭水化物に対する透過性を有する。濾過により、LNnTは濾液中に存在するが、LNnTより大きい分子量を有する炭水化物は保持液中に残る。
【0027】
追加及び/又は代替の態様において、約600~約800ドルトンの分子量カットオフを有する膜は、2.5~3nmの孔径を有する。
LNnTに対する透過性を有するが、LNnTより大きい分子量を有する炭水化物を保持液中に保持するための適切な膜は、例えば、TangenX SIUS TFF 0.65kDa膜(Repligen Corporation社)、Zirkoniaモジュール 3nm(Pervatech BV社)及びS-CUT YSNF-YS600(CUT/Burkert社)である。
【0028】
当該方法は、高価な不連続クロマトグラフィー工程の使用を回避し、そしてまた有機溶媒を用いる沈殿又は結晶化工程も不要にする。従って、追加及び/又は代替の態様において、当該方法は、一つ又は複数の不連続クロマトグラフィー工程及び/又は一つ又は複数の、有機溶媒の使用によるLNnTの沈殿及び/又は結晶化の工程を含まない。
【0029】
当該方法の追加及び/又は代替の態様において、二つの膜濾過工程のいずれか一つを擬似移動床(SMB)クロマトグラフィーのような連続クロマトグラフィーで置き換えることができる。
【0030】
追加及び/又は代替の態様において、ラクト-N-ネオテトラオースを他の炭水化物から精製するための方法は、方法が、ラクト-N-ネオテトラオースを含有する水溶液を、約300~約500ドルトンの分子量カットオフを有する膜を用いる膜濾過工程に付し、そして該水溶液を連続クロマトグラフィーに付してLNnTより大きい分子量を有する炭水化物を水溶液から除去する工程を含むことを特徴とする。
【0031】
好ましくは、膜濾過工程は、膜濾過工程の保持液を連続クロマトグラフィーに付すという点で、連続クロマトグラフの前に実施される。
別の追加及び/又は代替の態様において、ラクト-N-ネオテトラオースを他の炭水化物から精製するための方法は、方法が、ラクト-N-ネオテトラオースを含有する水溶液を、約600~約800ドルトンの分子量カットオフを有する膜を用いる膜濾過工程に付し、そして該水溶液を連続クロマトグラフィーに付してLNnTより小さい分子量を有する炭水化物を水溶液から除去する工程を含むことを特徴とする。好ましくは、連続クロマトグラフィーは、連続クロマトグラフィーの溶出液を膜濾過工程に付すという点で、膜濾過工程の前に実施される。
【0032】
追加及び/又は代替の態様において、水溶液は、ラクト-N-ネオテトラオースを製造するための発酵又は酵素法から得られる。
本明細書中に記載の方法は、経済的に実現可能であり規模拡大可能であるので、ヒトミルクオリゴ糖のラクト-N-ネオテトラオースを微生物発酵又は生体触媒反応から数トン量で精製するのに適切である。
【0033】
追加及び/又は代替の態様において、水溶液は、発酵ブロスからバイオマスを分離することによって発酵から得られる。好ましくは、発酵ブロスからのバイオマスの分離は、少なくとも一つの限外濾過工程、好ましくは二つの限外濾過工程、さらに好ましくは、約500kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第一の限外濾過と、約150kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第二の限外濾過とを含む。
【0034】
追加及び/又は代替の態様において、水溶液は、好ましくはH+形の、陽イオン交換樹脂と、好ましくはCl-形の、陰イオン交換樹脂とにより、さらに好ましくは該水溶液を膜濾過工程に付す前に処理される。
【0035】
追加及び/又は代替の態様において、方法はさらに、イオンを除去するために、透析の工程、好ましくは電気透析の工程を含む。
生成物は、無菌濃縮液として又は噴霧乾燥製品として供給されるのが最も好都合でありうる。
【0036】
当該方法はラクト-N-ネオテトラオースの精製、すなわち他の炭水化物からのLNnTの分離を可能にする。ここで、精製前の水溶液中のラクト-N-ネオテトラオースの純度は≦70%、≦60%、≦50%、≦40%、≦30%、≦20%、≦10%又は≦5%であり、及び/又は、精製後、該水溶液はラクト-N-ネオテトラオースを≧80%、好ましくは≧85%又はさらに好ましくは≧90%の純度で含有する。
【0037】
追加及び/又は代替の態様において、精製は下記工程を含む。
i.)バイオマスを発酵ブロスから分離し;
ii.)無細胞発酵ブロスをイオン交換樹脂処理に付して荷電物質を除去し;
iii.)工程ii.で得られた水溶液を膜濾過工程に付してラクト-N-ネオテトラオースより小さい分子量を有する炭水化物を除去し;
iv.)工程iii.で得られた保持液を膜濾過工程に付してラクト-N-ネオテトラオースより大きい分子量を有する炭水化物を除去し;
v.)工程iv.の濾液中に存在するラクト-N-ネオテトラオースの濃度を増大させる。
【0038】
ラクト-N-ネオテトラオースの精製に使用される他の方法(手順)はかなり複雑で、従って費用もかかるが、本明細書の上文に記載された方法は、主に二つの膜濾過工程の使用に依拠している。一つの膜濾過工程で、所望生成物のラクト-N-ネオテトラオースより小さい夾雑物質は濾過除去される。第二の濾過工程では、より大きい分子が所望生成物から濾過除去される。
【0039】
別の態様において、膜濾過工程の一つを擬似移動床クロマトグラフィー法に置き換えることができる。擬似移動床クロマトグラフィーは、他のクロマトグラフィー法とは対照的に、連続クロマトグラフィー法であるので、数トン規模で適用することができ、他の不連続クロマトグラフィー法に比べて極めて費用効果的である。
【0040】
追加及び/又は代替の態様において、LNnTの精製法は、
i.)バイオマスを発酵ブロスから分離し;
ii.)無細胞発酵ブロスをイオン交換樹脂処理に付して荷電物質を除去し;
iii.)工程ii.で得られた水溶液を膜濾過工程に付してラクト-N-ネオテトラオースより小さい分子量を有する炭水化物を除去し;
iv.)工程iii.で得られた保持液を連続クロマトグラフィーに付してラクト-N-ネオテトラオースより大きい分子量を有する炭水化物;より大きい物質をラクト-N-ネオテトラオースから除去し;
v.)工程iv.の溶出液中に存在するラクト-N-ネオテトラオースの濃度を増大させる
工程を含む。
【0041】
本発明の別の態様に従って、LNnTより小さい分子量を有する炭水化物(特に、より小さいオリゴ糖及び単糖)は擬似移動床クロマトグラフィーによって、LNnTより大きい炭水化物は膜濾過工程によって除去できる。
【0042】
追加及び/又は代替の態様において、方法は下記工程を含む。
i.)バイオマスを発酵ブロスから分離し;
ii.)無細胞発酵ブロスをイオン交換樹脂処理に付して荷電物質を除去し;
iii.)工程ii.で得られた水溶液を連続クロマトグラフィーに付してラクト-N-ネオテトラオースより小さい分子量を有する炭水化物を除去し;
iv.)工程iii.で得られた溶出液を膜濾過工程に付してラクト-N-ネオテトラオースより大きい分子量を有する炭水化物を除去し;
v.)工程iv.で得られた濾液中のラクト-N-ネオテトラオースの濃度を増大させる。
【0043】
本発明の別の態様に従って、一つ又は複数のグリコシダーゼをLNnTの精製法に使用して、一定のオリゴ糖をより小さいオリゴ糖又は単糖に加水分解する。例えば、副産物のラクト-N-トリオースII(GlcNAc(β1-3)Gal(β1-4)Glc)は、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)のbbhl遺伝子によってコードされたN-アセチルヘキソサミニダーゼによってN-アセチルグルコサミンとラクトース(Gal(β1-4)Glc)に分解できる。ラクトースはさらに、β-ガラクトシダーゼ(例えば、容易に過剰発現させることができるlacZ遺伝子によってコードされた大腸菌のβ-ガラクトシダーゼを使用できる)によって単糖のグルコースとガラクトースに分解できる。ビフィドバクテリウム・ビフィダムのbbhl遺伝子も大腸菌での過剰発現によって得ることができる。
【0044】
追加及び/又は代替の態様において、方法は、
i.)バイオマスを発酵ブロスから分離し;
ii.)一つ又は複数のグリコシダーゼを発酵ブロスに添加し(ここで、前記グリコシダーゼ、例えば、B.ビフィダムのBbhl、N-アセチルヘキソサミニダーゼは、LNnTを加水分解しない);
iii.)無細胞発酵ブロスをイオン交換樹脂処理に付して荷電物質を除去し;
iv.)工程iii.で得られた水溶液を膜濾過工程に付してラクト-N-ネオテトラオースより小さい分子量を有する炭水化物を除去し;
v.)工程iv.で得られた保持液を膜濾過工程に付してラクト-N-ネオテトラオースより大きい分子量を有する炭水化物を除去し;
vi.)工程v.の濾液中に存在するラクト-N-ネオテトラオースの濃度を増大させる工程を含む。
【0045】
追加及び/又は代替の態様において、二つの膜濾過工程のいずれか一つは、前述のように連続クロマトグラフによって置き換えられてもよい。
好適な態様において、組換え微生物、さらに好ましくは遺伝子工学的に改変された大腸菌が発酵過程の最後に発酵ブロスに添加される。この場合、前記組換え微生物は、ビフィドバクテリウム・ビフィダムのbbhl遺伝子を発現している及び/又はβ-ガラクトシダーゼ、好ましくは大腸菌のlacZ遺伝子によってコードされたβ-ガラクトシダーゼを発現又は過剰発現している。
【0046】
追加及び/又は代替の態様において、方法は下記工程を含む。
i.)ビフィドバクテリウム・ビフィダムのbbhl遺伝子及び/又は大腸菌のlacZ遺伝子を発現している組換え微生物を発酵ブロスに添加し;
ii.)バイオマスを発酵ブロスから分離し;
iii.)無細胞発酵ブロスをイオン交換樹脂処理に付して荷電物質を除去し;
iv.)工程ii.で得られた水溶液を膜濾過工程に付してラクト-N-ネオテトラオースより小さい分子量を有する炭水化物を除去し;
v.)工程iii.で得られた保持液を膜濾過工程に付してラクト-N-ネオテトラオースより大きい分子量を有する炭水化物を除去し;
vi.)工程iv.の濾液中に存在するラクト-N-ネオテトラオースの濃度を増大させる。
【0047】
追加及び/又は代替の態様において、二つの膜濾過工程のいずれか一つは、前述のように連続クロマトグラフによって置き換えられてもよい。
本発明の一定の態様は、一つ又は複数の更なる任意工程、例えば、透析工程(塩類除去のため)、電気透析(荷電分子除去のため)、活性炭処理(生成物溶液の脱色のため)及び/又はその他の濾過工程(内毒素除去及び/又は滅菌濾過のような)などを含む。必要ではないが、方法は、夾雑オリゴ糖の沈殿のため、又は活性炭への吸着後に短鎖アルコール及び水混合物による溶離のため、及び/又はラクト-N-ネオテトラオースの結晶化のために、LNnTを含有する水溶液を有機溶媒(例えばメタノールのような短鎖アルコール)で処理することを含んでもよい。
【0048】
本発明の態様には、以下も含まれる。
態様1 ラクト-N-ネオテトラオースを他の炭水化物から精製するための方法であって、該方法は、ラクト-N-ネオテトラオースを含有する水溶液を異なる膜を用いる二つの膜濾過工程に付す工程を含み、ここで、
- 一つの膜は約300~約500ドルトンの分子量カットオフを有し、そして
- 他の膜は約600~約800ドルトンの分子量カットオフを有する
ことを特徴とする方法。
態様2 該水溶液が、ラクト-N-ネオテトラオースを製造するための発酵又は酵素法から得られる、態様1に記載の方法。
態様3 水性媒体が、発酵ブロスからバイオマスを分離することによって発酵から得られる、態様1又は2に記載の方法。
態様4 発酵ブロスからのバイオマスの分離が、少なくとも一つの限外濾過工程、好ましくは二つの限外濾過工程、さらに好ましくは約500kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第一の限外濾過と約150kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第二の限外濾過とを含む、態様3に記載の方法。
態様5 水性媒体が、好ましくはH
+
形の、陽イオン交換樹脂と、好ましくはCl
-
形の、陰イオン交換樹脂とにより、さらに好ましくは該水溶液を膜濾過工程に付す前に処理される、態様1~5のいずれかに記載の方法。
態様6 方法が、透析、好ましくは電気透析の工程をさらに含む、態様1~6のいずれかに記載の方法。
態様7 ラクト-N-ネオテトラオースを他の炭水化物から精製するための方法であって、該方法は、ラクト-N-ネオテトラオースを含有する水溶液を、約300~約500ドルトンの分子量カットオフを有する膜を用いる膜濾過工程に付す工程と、該水溶液を連続クロマトグラフィーに付して、LNnTより大きい分子量を有する炭水化物を水溶液から除去する工程とを含むことを特徴とする方法。
態様8 膜濾過工程の保持液が連続クロマトグラフィーに付される、態様7に記載の方法。
態様9 ラクト-N-ネオテトラオースを他の炭水化物から精製するための方法であって、該方法は、ラクト-N-ネオテトラオースを含有する水溶液を、約600~約800ドルトンの分子量カットオフを有する膜を用いる膜濾過工程に付す工程と、該水溶液を連続クロマトグラフィーに付して、LNnTより小さい分子量を有する炭水化物を水溶液から除去する工程とを含むことを特徴とする方法。
態様10 連続クロマトグラフィーの溶出液が膜濾過工程に付される、態様9に記載の方法。
態様11 該水溶液が、ラクト-N-ネオテトラオースを製造するための発酵又は酵素法から得られる、態様7~10のいずれかに記載の方法。
態様12 水性媒体が、発酵ブロスからバイオマスを分離することによって発酵から得られる、態様7~11のいずれかに記載の方法。
態様13 発酵ブロスからのバイオマスの分離が、少なくとも一つの限外濾過工程、好ましくは二つの限外濾過工程、さらに好ましくは約500kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第一の限外濾過と約150kDaの分子量カットオフを有する膜を用いる第二の限外濾過とを含む、態様12に記載の方法。
態様14 該水溶液が、好ましくはH
+
形の、陽イオン交換樹脂と、好ましくはCl
-
形の、陰イオン交換樹脂とにより、さらに好ましくは水性媒体を膜濾過工程に付す前に処理される、態様7~13のいずれかに記載の方法。
態様15 方法が、透析、好ましくは電気透析の工程をさらに含む、態様7~14のいずれかに記載の方法。
態様16 精製前の該水溶液中のラクト-N-ネオテトラオースの純度が、≦70%、≦60%、≦50%、≦40%、≦30%、≦20%、≦10%又は≦5%であり、及び/又は、精製後、該水溶液がラクト-N-ネオテトラオースを≧80%、好ましくは≧85%又はさらに好ましくは≧90%の純度で含有する、態様1~15のいずれかに記載の方法。
態様17 方法が、発酵ブロス中のLNnT以外の一つ又は複数の炭水化物を加水分解するために少なくとも一つのグリコシダーゼの使用を含む、態様1~16のいずれかに記載の方法。
態様18 第二の微生物がLNnTの発酵生産後に発酵ブロスに添加され、前記第二の微生物はβ-ガラクトシダーゼ、好ましくは大腸菌のLacZ、及び/又はN-アセチルヘキソサミニダーゼ、好ましくはビフィドバクテリウム・ビフィダムのBbhlを発現している、態様1~17のいずれかに記載の方法。
本発明を、特定の態様に関し、図面も参照しながら説明するが、本発明はそれらに限定されるのではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。さらに、説明文及び特許請求の範囲における第一、第二などの用語は、類似の要素を区別するために使用されているのであって、必ずしも、時間的、空間的、ランキング又は任意のその他の様式における順序を記述しているのではない。そのように使用された用語は、適切な状況下で交換可能であること、そして本明細書中に記載された発明の態様は本明細書中に記載又は例示されている以外の他の順序で操作可能であることは理解されるはずである。
【0049】
特許請求の範囲において使用されている“含む(comprising)”という用語は、その後に掲載されている手段に限定されないと解釈されるべきで;他の要素又は工程を除外しないことに注意する。従って、参照された規定の特徴、整数、工程又は要素の存在を具体化していると解釈されるべきではあるが、一つ又は複数のその他の特徴、整数、工程又は要素、又はそれらのグループの存在又は追加を排除しない。従って、“手段A及びBを含む装置”という表現の範囲は、要素A及びBのみからなる装置に限定されるべきではない。それは、本発明に関しては、装置の単なる関連要素がA及びBであることを意味する。
【0050】
本明細書全体を通じて、“一態様”又は“態様”への参照は、その態様に関連して記載されている特定の特徴(feature)、構造又は特徴(characteristic)が、本発明の少なくとも一つの態様に含まれることを意味する。従って、本明細書全体の様々な場所で、“一態様において”又は“態様において”という語句の出現は、必ずしもすべて同じ態様を参照しているとは限らないが、参照していることがありうる。さらに、特定の特徴(feature)、構造又は特徴(characteristic)は、本開示から当業者には明らかなように、一つ又は複数の態様において任意の適切な様式で組み合わせることができる。
【0051】
同様に、本発明の例示的態様の記載において、本発明の様々な特徴は、開示内容を簡素化するため及び様々な発明的側面の一つ又は複数の理解を助けるために、単一の態様、図面又はその説明にまとめられることもあることは理解されるべきである。しかしながら、この開示の方法は、特許請求されている発明は各請求項に明示されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を表していると解釈されるべきでない。むしろ、以下の特許請求の範囲に表されている通り、発明的側面は、前述の開示された単一の態様のすべての特徴よりも少ない特徴にある。従って、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、これによって明示的にこの詳細な説明に取り込まれ、各請求項は、本発明の別の態様として独立している。
【0052】
さらに、本明細書中に記載の一部の態様は、他の態様に含まれる一部の特徴(他の特徴ではない)を含むが、異なる態様の特徴の組合せは、当業者には分かる通り、本発明の範囲内であることを意味し、異なる態様を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲において、特許請求されている態様のいずれもが任意の組合せで使用できる。
【0053】
さらに、実施態様のいくつかは、コンピュータシステムのプロセッサによって又は機能を実施するその他の手段によって実施できる方法又は方法の要素の組合せとして本明細書に記載されている。従って、そのような方法又は方法の要素を実施するために必要な指示を備えたプロセッサは、方法又は方法の要素を実施するための手段を形成する。さらに、装置態様の本明細書中に記載されている要素は、本発明を実施するために、該要素によって実施される機能を実行するための手段の例である。
【0054】
本明細書中に提供されている説明及び図面には、多数の具体的な詳細が示されている。しかしながら、本発明の態様は、これらの具体的詳細がなくても実施できることは理解されるはずである。他の場合において、周知の方法、構造及び技術は、本説明の理解を曖昧にしないために詳細には示されていない。
【0055】
次に、本発明を、本発明のいくつかの態様を詳細に記載することによって説明する。本発明の他の態様は、本発明の真の精神又は技術的教示から逸脱することなく、当業者の知識に従って構成することができ、本発明は添付の特許請求の範囲の条項によってのみ限定されることは明白である。
【実施例】
【0056】
実施例1.ラクト-N-ネオテトラオースの発酵生産
大腸菌BL21(DE3)をLNnTの発酵合成に適切な菌株の形成のための宿主として使用した。宿主株中の下記遺伝子を不活化した。lacZ(ベータ-ガラクトシダーゼをコードする)、araA(L-アラビノースイソメラーゼをコードする)、wcaJ(おそらくUDP-グルコース:ウンデカプレニルホスフェートグルコース-1 ホスフェートトランスフェラーゼをコードする)、wzxC(コラン酸エクスポーターをコードすると推定)、fucI(L-フコースイソメラーゼをコードする)、fucK(L-フクロースキナーゼ(fuculose kinase)をコードする)。
【0057】
LNnT産生株を工学的に改変して、さらにN-アセチル-グルコサミン-6-ホスフェートデアセチラーゼ及びグルコサミン-6-ホスフェートデアミナーゼをそれぞれコードする遺伝子nagA及びnagBを削除した。この菌株によるLNnTの産生を可能にするために、β-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼをコードする髄膜炎菌由来の遺伝子IgtAと、β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼをコードするアグレガチバクター・アフロフィルス(Aggregatibacter aphrophilus)由来のlex-1 を転位によってBL21ゲノムに導入した。ラクトースペルメアーゼをコードする大腸菌由来のLacYも染色体に組み込んだ。すべての外来遺伝子は構成的に転写される。ガラクトシルトランスフェラーゼ反応におけるドナー基質としてUDP-ガラクトースの形成を増強させるために、遺伝子galE及びgalU(どちらも大腸菌K12由来)を、プロモーターT5の制御下でこれらの遺伝子を導入することにより、過剰発現させた。
【0058】
LNnTのほかに、三糖LNT IIも産生株によって産生され、発酵ブロス中に排出される。大腸菌BL21(DE3)のΔlacZ gal+ ara- ΔwzxY-wcaJ ΔfuclKを用いて、lacZ遺伝子及び脱制御(deregulated)ラクトースペルメアーゼ遺伝子(lacY6HIS)(どちらも構成的プロモーターの制御下)をゲノムに導入し、LNT II分解株を構築した。副産物LNT-IIを分解するために、N-アセチルヘキソサミニダーゼをコードするコドン最適化遺伝子Bbhl(ビフィドバクテリウム・ビフィダム由来)を染色体に導入した。単糖N-アセチルグルコサミンのより速い分解のために、N-アセチルグルコサミン-6-ホスフェートデアセチラーゼ、グルコサミン-6-ホスフェートデアミナーゼ、及びPTS系N-アセチルグルコサミン特異的EIICBAコンポーネントをそれぞれコードする宿主株由来の遺伝子nagA、nagB、及びnagEを、Ptetプロモーター制御下のnagABオペロン及びプロモーターT5から転写されたnagEの導入によって過剰発現させた。最終工程で、この菌株のガラクトース代謝は、大腸菌K12由来のgalETKMオペロンの挿入によって改良された。
【0059】
産生株を、7g/LのNH4H2PO4、7g/LのK2HPO4、2g/LのKOH、0.3g/Lのクエン酸、2g/LのMgSO4×7H2O、及び0.015g/LのCaCl2×6H2Oを含有し、1mL/Lの微量元素溶液(54.4g/Lのクエン酸第二鉄アンモニウム、9.8g/LのMnCl2×4H2O、1.6g/LのCoCl2×6H2O、1g/LのCuCl2×2H2O、1.9g/LのH3BO3、9g/LのZnSO4×7H2O、1.1g/LのNa2MoO4×2H2O、1.5g/LのNa2SeO3、1.5g/LのNiSO4×6H2O)を補充され、そして炭素及びエネルギー源としてグルコースを含有する化学的に定義された(既知組成)無機塩培地中で培養した。ラクトースをLNnT合成のための基質として添加した。発酵は流加法(fed-batch process)として実施された;pH制御はアンモニアの添加によるものであった。
【0060】
副産物の細胞内分解のために使用される第二の微生物株を、炭素源としてグルコースを含む同じ培地中で培養した。LNnT産生法の最後に二つの菌株を一つの発酵容器に入れた。方法は、夾雑物の単糖と二糖及びLNT IIがHPLC分析で検出されなくなったら停止された。
【0061】
実施例2:無細胞発酵ブロスの調製
細胞集団(cell-mass)(発酵ブロスの約13%)を、限外濾過(0.05μmカットオフ)(CUT membrane technology社、ドイツ・エルクラート)と、次いで150kDaのMWCOを有するクロスフローフィルター(Microdyn-Nadir社、ドイツ・ヴィースバーデン)によって培地から分離した。無細胞発酵ブロスは、HPLCクロマトグラムのピーク面積に関して、53.9%のLNnT、19.4%のGlcNAc、16.5%のpLNnH、3.9%のトリオース、4.8%のラクトース及び1.5%の二糖類を含有していた。
【0062】
実施例3:ラクト-N-ネオテトラオース含有無細胞発酵ブロスのイオン交換樹脂処理
体積500L中に8,9kgのラクト-N-ネオテトラオースを純度29%(乾燥重量による)で含有する得られた無細胞発酵ブロスを、正に帯電した夾雑物質を除去するために、H+形の強陽イオン交換体(Lanxess社から入手したLewatit S2568)に通した(イオン交換体の床体積のサイズは200Lであった)。イオン交換体からのLNnTの溶出は脱イオン水を用いて続けた。次に、得られた溶液を水酸化ナトリウム溶液の添加によりpH7にセットした。次に(遅滞なく)、該溶液を陰イオン交換体カラムに通した(イオン交換体の床体積は200Lであった)。使用した強陰イオン交換体Lewatit S6368A(Lanxess社)は塩化物(Cl-)形であった。LNnTの溶出は脱イオン水を用いて続けた。得られた溶液を再度pH7に中和した。
【0063】
実施例4:より小さい分子/炭水化物を除去するための第一の膜処理
イオン交換体処理によって得られた溶液を、TriSep XN-45(TriSep Corporation社、米国)ナノ濾過膜と800Lの脱イオン水を用いて透析濾過した。得られた溶液をさらに、ナノ濾過膜(RE 8040-BE、CSM-Saehan社)を用いて濃縮した。ここで、純度36.2%(乾燥重量による)及び導電率8mS/cmのラクト-N-ネオテトラオース溶液が得られた。
【0064】
実施例5:より大きい分子/炭水化物を除去するための第二の膜処理
第二の膜処理前に、HPLCによる測定で純度57%のラクト-N-ネオテトラオースを含有する溶液が得られた。濾過のためにTangenX SIUS TFF 0.65kDa膜(Repligen Corporation社)が使用された。この濾過工程で主要発酵副産物パラ-ラクト-N-ネオヘキサオースが除去された(
図3)。
【0065】
実施例6:電気透析処理
次に、溶液を、PC-Cell ED 1000H 膜スタックを備えたPC-Cell 15 電気透析装置(PC-Cell、ドイツ・ホイスヴァイラー)を用いて電気透析し、0.4mS/cmにした。この膜スタックは下記の膜を備えていた。すなわち、陽イオン交換膜CEM:PK SK 及び陰イオン交換膜AEM:60Daのサイズ排除限界を有するPcAcid60。0.025Mのスルファミン酸(アミドスルホン酸)溶液を電気透析法の電解質として使用した。電気透析処理の代わりに透析濾過法を使用することもできた。
【0066】
実施例7:濃縮及び活性炭処理
逆浸透フィルターと45℃での回転蒸発を用いて水溶液から多少の水を除去し、25%(m/v)のラクト-N-ネオテトラオース溶液を得た。次に、得られた溶液を活性炭(Norit SA2)で処理した。1Lの25%(m/v)ラクト-N-ネオテトラオース溶液に対し125gの活性炭を使用した。
【0067】
実施例8:滅菌濾過及び内毒素除去
その後、溶液を3kDフィルター(Pall Microza 限外濾過中空糸モジュールSEP-2013、Pall Corporation社、ドイツ・ドライアイヒ)に通すことにより滅菌濾過に付した。次に、該滅菌溶液を噴霧乾燥までRT(室温)で保管した。
【0068】
実施例9:ラクト-N-ネオテトラオースの噴霧乾燥
このようにして得られた(実施例8)滅菌ラクト-N-ネオテトラオースを次に、NUBILOSA LTC-GMP噴霧乾燥機(NUBILOSA社、ドイツ・コンスタンツ)を用いて噴霧乾燥した。ラクト-N-ネオテトラオースの噴霧乾燥の場合、溶液を、3.5barの加圧下、130℃にセットされた噴霧乾燥機ノズルに通し、67~69℃の排気温度を維持するように流量を調整した。これらの設定を用いて、9%未満の水分量を有する噴霧乾燥粉末が得られた。水分含量は、カール・フィッシャー滴定によって決定した。
【0069】
実施例10:Na+形の擬似移動床クロマトグラフィーを用いるラクト-N-ネオテトラオースとパラ-ラクト-N-ネオヘキサオースの分離
微生物発酵から得られたラクト-N-ネオテトラオース(20g/l)を含有する透明な無粒子溶液をSMB分離に使用する前に、PC-Cell電気透析装置を用いて電気透析し、導電率を0.5mS/cmにした。この溶液は、ラクト-N-ネオテトラオース(全炭水化物含量の66.23%)のほかに、発酵由来の主要副産物としてパラ-ラクト-N-ネオヘキサオース(全炭水化物含量の18.58%)を含有していた。対イオンとしてナトリウムを用いるSMBクロマトグラフィーのために、ラクト-N-ネオテトラオースを真空下40℃で200g/l(20%w/v)に濃縮した。あるいは、ラクト-N-ネオテトラオース溶液はナノ濾過膜(Trisep社製XN45)を用いることによって濃縮されてもよかった。
【0070】
SMBクロマトグラフィーでは、4つのゾーンに配列された12本のカラム(Prosep(登録商標)ガラスカラム、寸法:40mm×740mm(Lartek、ドイツ・エッペルハイム))を備えた閉ループ(close loop)SMBシステムを使用した。各ガラスカラムは760gのPurolite(登録商標)PCR833H+強陽イオン交換樹脂を含有していた。陽イオン交換樹脂を50リットルの200mM NaClで洗浄し、H+イオンをNa+イオンで置き換えた。平衡化後、システムを水洗して残留塩を除去した。
【0071】
システムを下記パラメーター設定にて30℃で運転した。ゾーンIの流速を30.00ml/分に設定し、ゾーンIIの流速を21.60ml/分に設定し、ゾーンIVの流速を20.54ml/分に設定した。供給量は1.5ml/分に維持し、溶離液の流量は切り替え時間13.35分で4.46ml/分に設定した。蒸留水を溶離液として使用した。
【0072】
これらのパラメーター下で、ラクト-N-ネオテトラオースとトリオースのような小さい中性オリゴ糖(グリコシル化又はガラクトシル化ラクトース)は、抽出液(エクストラクト)中に分画されたが、パラ-N-ネオヘキサオースは回収液(ラフィネート)中に溶出された。ラクト-N-ネオテトラオースの純度は、SMB供給時の66.23%ではなく87.3%となり、パラ-ラクト-N-ネオヘキサオースの量は1.08%に減少した(
図4~6)。
【0073】
実施例11:ラクト-N-ネオテトラオースのHPLC分析
LNnT含有溶液の分析に使用されたHPLCシステムは、システムコントローラーSCL-10Avp、2個のポンプLC-10Avp、オーブンCTO-10Avp、自動サンプラーSIL-HTA及び屈折率検出器RID-10Aで構成されていた。全モジュールともShimadzu社(日本・京都)から購入した。さらに、このシステムには、プレカラムXBridge BEH Amide VanGd、3.5μm、3.9×5mm(Waters社、ドイツ・エシュボルン)及びHPLCカラムXBridge BEH Amide、3.5μm、4.6×250mm(Waters社、ドイツ・エシュボルン)が使用されていた。溶媒は、71%アセトニトリル、28.9%H2O及び0.1%NH4OHを含有していた。流速は1.4mL/分に設定した。すべてのHPLC測定は35℃の溶媒を用いてイソクラティック(単一組成溶離)に実施され、データは定性的に分析された。
【0074】
実施例12:ラクト-N-ネオテトラオースのLC-MS/MS分析
乾燥質量についてのLNnTの純度を決定するLC-MS分析のために、Nexera X2 LC システム(Shimadzu社、日本・京都)を使用した。これには、LC-30ADポンプ、自動サンプラーSIL-30AC、LCMS-8050質量分析計(ESI-MS検出器)、xBridge BEH Amide 3.5μm、50×2.1mmカラム(Waters社、ドイツ・エシュボルン)及びxBridge BEH Amide 3.5μmプレカラム(Waters社、ドイツ・エシュボルン)が含まれていた。溶媒は、60%アセトニトリル、39.9%ddH2O及び0.1%NH4OHを含有し、流速は0.3mL/分に設定された。すべての分析は35℃でイソクラティックな溶媒を用いて実施された。ラクト-N-ネオテトラオースはOligoTech社(フランス・クロル)から購入し、内部標準として使用した。