(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
(21)【出願番号】P 2021022414
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】西別府 慎也
(72)【発明者】
【氏名】小堀 裕貴
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-135802(JP,A)
【文献】GNSSガイダンスシステム・自動操舵システム 総合カタログ,カタログ,日本,ヤンマーアグリ株式会社,2020年,表紙、第2-15頁、奥付,https://www.yanmar.com/media/news/2020/05/26054527/self_driving_guidance.pdf
【文献】Trimble スマート農業 総合カタログ2019,カタログ,日本,株式会社ニコン・トリンプル,2019年,表紙、第1-14頁、奥付,https://annex.nikon-trimble.co.jp/agri/user/pdf/catalog/sample.pdf
【文献】PRECISION-IQ アプリケーションリファレンスマニュアル 対応ディスプレイ用,マニュアル,日本,2018年,表紙、第43-61頁,https://annex.nikon-trimble.co.jp/agri/user/pdf/setting/00.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星から受信する衛星信号に基づいて所定の測位方式により作業車両の位置を測位することと、
測位される前記作業車両の位置を示す位置情報に基づいて前記作業車両を自動走行させることと、
第1測位方式と前記第1測位方式よりも測位の位置精度が低い第2測位方式とを相互に切り替えることと、
前記作業車両の作業モードを、測位状態が所定状態から低下した場合に前記作業車両の自動走行を停止させる第1作業モード、及び、測位状態が前記所定状態から低下した場合に前記作業車両の自動走行を継続させる第2作業モードのうちいずれかに設定することと、
設定される前記作業モードと前記測位状態とに基づいて、前記第1測位方式及び前記第2測位方式を切り替えることと、
を実行する自動走行方法。
【請求項2】
前記作業モードが前記第1作業モードに設定されている場合において、前記測位状態が前記所定状態の場合に前記第1測位方式による前記位置情報に基づいて前記作業車両を自動走行させ、前記測位状態が前記所定状態から低下した場合に前記作業車両の自動走行を停止させる、
請求項1に記載の自動走行方法。
【請求項3】
前記作業モードが前記第2作業モードに設定され、かつ前記測位方式が前記第1測位方式に設定されている場合において、前記測位状態が前記所定状態から低下した場合に前記測位方式を前記第2測位方式に切り替える、
請求項1又は2に記載の自動走行方法。
【請求項4】
前記作業モードが前記第2作業モードに設定されている場合において、前記測位状態が前記所定状態の場合に前記第1測位方式による前記位置情報に基づいて前記作業車両を自動走行させ、前記測位状態が前記所定状態から低下した場合に前記第2測位方式による前記位置情報に基づいて前記作業車両を自動走行させる、
請求項1~3のいずれかに記載の自動走行方法。
【請求項5】
前記測位状態が前記所定状態であることを条件として、前記第1測位方式による前記作業車両の自動走行を開始する、
請求項1~4のいずれかに記載の自動走行方法。
【請求項6】
ユーザーによる前記第1作業モード及び前記第2作業モードのいずれかを選択する選択操作に基づいて前記作業モードを設定する、
請求項1~5のいずれかに記載の自動走行方法。
【請求項7】
前記測位状態を操作端末に表示させることと、
前記作業車両が自動走行中に前記測位状態が前記所定状態から低下した場合に、前記操作端末において前記選択操作を受け付けることと、
をさらに実行する請求項6に記載の自動走行方法。
【請求項8】
圃場内の第1領域に対して前記第2作業モードを選択する選択操作の受け付けを許可し、圃場内の前記第1領域よりも外側の第2領域に対して前記第2作業モードを選択する選択操作の受け付けを禁止することをさらに実行する、
請求項6に記載の自動走行方法。
【請求項9】
前記作業車両が過去に走行した際の前記測位状態及び前記位置情報を互いに関連付けて記憶する記憶部を参照して、現在の前記位置情報に関連付けられた過去の前記測位状態に基づいて前記作業モードを設定する、
請求項1~5のいずれかに記載の自動走行方法。
【請求項10】
前記作業車両に装着される作業機の種別又は前記作業車両の作業内容に基づいて前記作業モードを設定する、
請求項1~5のいずれかに記載の自動走行方法。
【請求項11】
前記測位状態を表す画像を操作端末に表示させることと、
前記画像を前記測位状態に応じた表示態様で表示させることと、
をさらに実行する請求項1~10のいずれかに記載の自動走行方法。
【請求項12】
衛星から受信する衛星信号に基づいて所定の測位方式により作業車両の位置を測位する測位処理部と、
前記測位処理部により測位される前記作業車両の位置を示す位置情報に基づいて前記作業車両を自動走行させる走行処理部と、
第1測位方式と前記第1測位方式よりも測位の位置精度が低い第2測位方式とを相互に切り替え可能な切替処理部と、
前記作業車両の作業モードを、前記測位処理部における測位状態が所定状態から低下した場合に前記作業車両の自動走行を停止させる第1作業モード、及び、前記測位処理部における測位状態が前記所定状態から低下した場合に前記作業車両の自動走行を継続させる第2作業モードのうちいずれかに設定する設定処理部と、
を備え、
前記切替処理部は、前記設定処理部により設定される前記作業モードと、前記測位処理部における測位状態とに基づいて、前記第1測位方式及び前記第2測位方式を切り替える、
自動走行システム。
【請求項13】
衛星から受信する衛星信号に基づいて所定の測位方式により作業車両の位置を測位することと、
測位される前記作業車両の位置を示す位置情報に基づいて前記作業車両を自動走行させることと、
第1測位方式と前記第1測位方式よりも測位の位置精度が低い第2測位方式とを相互に切り替えることと、
前記作業車両の作業モードを、測位状態が所定状態から低下した場合に前記作業車両の自動走行を停止させる第1作業モード、及び、測位状態が前記所定状態から低下した場合に前記作業車両の自動走行を継続させる第2作業モードのうちいずれかに設定することと、
設定される前記作業モードと前記測位状態とに基づいて、前記第1測位方式及び前記第2測位方式を切り替えることと、
を一又は複数のプロセッサーに実行させるための自動走行プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を自動走行させる自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタなどの作業車両を高精度に測位することが可能なリアルタイムキネマティック方式(RTK-GPS測位方式、以下「RTK方式」という。)が知られている。RTK方式によれば、作業車両を高精度に自動走行させることが可能になる。
【0003】
ここで、作業車両の近くに防風林、建物などの障害物が存在する場合、衛星からの電波を受信できなかったり、電波の干渉などにより所定数の衛星から電波を受信できなかったりすることにより測位障害が生じる場合がある。前記測位障害が発生すると、作業車両は自動走行を停止するため作業効率が低下する問題が生じる。
【0004】
従来、前記測位障害が発生した場合に、作業車両を慣性航法により自動走行させることにより、作業車両の停止を回避するシステムが提案されている(例えば特許文献1参照)。このシステムによれば、作業効率の低下を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来の技術では、前記測位障害が発生した場合に一律に慣性航法により作業車両の自動走行を継続させるため、慣性航法により自動走行した経路の作業精度が低下する問題が生じる。例えば、作業車両の高い位置精度が要求される作業(例えば播種作業)の場合、位置精度が低下すると作業精度も低下してしまう。一方、前記測位障害が発生した場合に一律に作業車両を停止させると作業効率が低下する問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、自動走行可能な作業車両による作業効率の低下及び作業精度の低下を防ぐことが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る自動走行方法は、衛星から受信する衛星信号に基づいて所定の測位方式により作業車両の位置を測位することと、測位される前記作業車両の位置を示す位置情報に基づいて前記作業車両を自動走行させることと、第1測位方式と前記第1測位方式よりも測位の位置精度が低い第2測位方式とを相互に切り替えることと、前記作業車両の作業モードを、測位状態が所定状態から低下した場合に前記作業車両の自動走行を停止させる第1作業モード、及び、測位状態が前記所定状態から低下した場合に前記作業車両の自動走行を継続させる第2作業モードのうちいずれかに設定することと、設定される前記作業モードと前記測位状態とに基づいて、前記第1測位方式及び前記第2測位方式を切り替えることと、を実行する方法である。
【0009】
本発明に係る自動走行システムは、測位処理部と走行処理部と切替処理部と設定処理部とを備える。前記測位処理部は、衛星から受信する衛星信号に基づいて所定の測位方式により作業車両の位置を測位する。前記走行処理部は、前記測位処理部により測位される前記作業車両の位置を示す位置情報に基づいて前記作業車両を自動走行させる。前記切替処理部は、第1測位方式と前記第1測位方式よりも測位の位置精度が低い第2測位方式とを相互に切り替え可能である。設定処理部は、前記作業車両の作業モードを、前記測位処理部における測位状態が所定状態から低下した場合に前記作業車両の自動走行を停止させる第1作業モード、及び、前記測位処理部における測位状態が前記所定状態から低下した場合に前記作業車両の自動走行を継続させる第2作業モードのうちいずれかに設定する。また、前記切替処理部は、前記設定処理部により設定される前記作業モードと、前記測位処理部における測位状態とに基づいて、前記第1測位方式及び前記第2測位方式を切り替える。
【0010】
本発明に係る自動走行プログラムは、衛星から受信する衛星信号に基づいて所定の測位方式により作業車両の位置を測位することと、測位される前記作業車両の位置を示す位置情報に基づいて前記作業車両を自動走行させることと、第1測位方式と前記第1測位方式よりも測位の位置精度が低い第2測位方式とを相互に切り替えることと、前記作業車両の作業モードを、測位状態が所定状態から低下した場合に前記作業車両の自動走行を停止させる第1作業モード、及び、測位状態が前記所定状態から低下した場合に前記作業車両の自動走行を継続させる第2作業モードのうちいずれかに設定することと、設定される前記作業モードと前記測位状態とに基づいて、前記第1測位方式及び前記第2測位方式を切り替えることと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自動走行可能な作業車両による作業効率の低下及び作業精度の低下を防ぐことが可能な自動走行方法、自動走行システム、及び自動走行プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る自動走行システムの全体構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る作業車両の走行経路の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示されるメニュー画面の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示されるステータス画面の一例を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される操作画面の一例を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される操作画面の一例を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される通知画面の一例を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される通知画面の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る自動走行システムによって実行される自動走行処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る操作端末に表示される操作画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0014】
図1及び
図2に示されるように、本発明の実施形態に係る自動走行システム1は、作業車両10と、操作端末20と、基地局30と、衛星40とを含んでいる。作業車両10及び操作端末20は、通信網N1を介して通信可能である。例えば、作業車両10及び操作端末20は、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANを介して通信可能である。
【0015】
本実施形態では、作業車両10がトラクタである場合を例に挙げて説明する。なお、他の実施形態として、作業車両10は、田植機、コンバイン、建設機械、又は除雪車などであってもよい。作業車両10は、圃場F(
図3参照)内を予め設定された走行経路R(内周経路R1及び外周経路R2)に沿って自動走行(自律走行)可能な構成を備える、所謂ロボットトラクタである。例えば、作業車両10は、測位装置16により測位される作業車両10の現在位置の位置情報に基づいて、圃場Fに対して予め生成された走行経路Rに沿って自動走行することが可能である。
【0016】
例えば、作業車両10は、
図3に示す圃場Fの作業領域において、内周経路R1を作業開始位置Sから平行に往復走行し、外周経路R2を作業終了位置Gに向けて内側に渦巻き状に走行する。走行経路Rは、
図3に示す経路に限定されず、作業内容に応じて適宜設定される。
【0017】
衛星40は、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システムを構成する測位衛星であり、GNSS信号(衛星信号)を送信する。基地局30は、衛星測位システムを構成する基準点(基準局)である。基地局30は、作業車両10の現在位置を算出するための補正情報を作業車両10に送信する。
【0018】
測位装置16は、衛星40から送信されるGNSS信号を利用して作業車両10の現在位置(緯度及び経度)を算出する測位処理を実行する。具体的には、測位装置16は、1台の受信機(測位用アンテナ164)が受信する測位情報(GNSS信号など)に基づいて作業車両10を測位する単独測位方式、2台の受信機(測位用アンテナ164及び基地局30)が受信する測位情報(GNSS信号など)と基地局30で生成される補正情報とに基づいて作業車両10を測位するRTK方式及びDGPS(Differential Global Positioning System)方式などを利用して作業車両10を測位する。これらの測位方式は、周知の技術であるため詳細な説明は省略する。
【0019】
一般的に、RTK方式による測位の誤差は数cmであり、DGPS方式による測位の誤差は数mであり、単独測位方式による測位の誤差は約10mである。すなわち、DGPS方式及び単独測位方式は、RTK方式よりも測位の位置精度が低い測位方式である。RTK方式は、本発明の第1測位方式の一例であり、DGPS方式及び単独測位方式は、本発明の第2測位方式の一例である。以下では、本発明の第1測位方式の一例としてRTK方式を挙げ、本発明の第2測位方式の一例としてDGPS方式を挙げる。
【0020】
[作業車両10]
図1及び
図2に示すように、作業車両10は、車両制御装置11、記憶部12、走行装置13、作業機14、通信部15、測位装置16などを備える。車両制御装置11は、記憶部12、走行装置13、作業機14、測位装置16などに電気的に接続されている。なお、車両制御装置11及び測位装置16は、無線通信可能であってもよい。
【0021】
通信部15は、作業車両10を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して操作端末20などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0022】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部12には、車両制御装置11に後述の自動走行処理(
図8参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して作業車両10にダウンロードされて記憶部12に記憶されてもよい。また、記憶部12には、操作端末20において生成される走行経路Rのデータが記憶されてもよい。
【0023】
走行装置13は、作業車両10を走行させる駆動部である。
図2に示すように、走行装置13は、エンジン131、前輪132、後輪133、トランスミッション134、フロントアクスル135、リアアクスル136、ハンドル137などを備える。なお、前輪132及び後輪133は、作業車両10の左右にそれぞれ設けられている。また、走行装置13は、前輪132及び後輪133を備えるホイールタイプに限らず、作業車両10の左右に設けられるクローラを備えるクローラタイプであってもよい。
【0024】
エンジン131は、不図示の燃料タンクに補給される燃料を用いて駆動するディーゼルエンジン又はガソリンエンジンなどの駆動源である。走行装置13は、エンジン131とともに、又はエンジン131に代えて、電気モーターを駆動源として備えてもよい。なお、エンジン131には、不図示の発電機が接続されており、当該発電機から作業車両10に設けられた車両制御装置11等の電気部品及びバッテリー等に電力が供給される。なお、前記バッテリーは、前記発電機から供給される電力によって充電される。そして、作業車両10に設けられている車両制御装置11及び測位装置16等の電気部品は、エンジン131の停止後も前記バッテリーから供給される電力により駆動可能である。
【0025】
エンジン131の駆動力は、トランスミッション134及びフロントアクスル135を介して前輪132に伝達され、トランスミッション134及びリアアクスル136を介して後輪133に伝達される。また、エンジン131の駆動力は、PTO軸(不図示)を介して作業機14にも伝達される。作業車両10が自動走行を行う場合、走行装置13は、車両制御装置11の命令に従って走行動作を行う。
【0026】
作業機14は、例えば耕耘機、播種機、草刈機、プラウ、又は施肥機などであって、作業車両10に着脱可能である。これにより、作業車両10は、作業機14各々を用いて各種の作業を行うことが可能である。
図2には、作業機14が耕耘機である場合を示している。
【0027】
ハンドル137は、オペレータ又は車両制御装置11によって操作される操作部である。例えば走行装置13では、車両制御装置11によるハンドル137の操作に応じて、不図示の油圧式パワーステアリング機構などによって前輪132の角度が変更され、作業車両10の進行方向が変更される。
【0028】
また、走行装置13は、ハンドル137の他に、車両制御装置11によって操作される不図示のシフトレバー、アクセル、ブレーキ等を備える。そして、走行装置13では、車両制御装置11による前記シフトレバーの操作に応じて、トランスミッション134のギアが前進ギア又はバックギアなどに切り替えられ、作業車両10の走行態様が前進又は後進などに切り替えられる。また、車両制御装置11は、前記アクセルを操作してエンジン131の回転数を制御する。また、車両制御装置11は、前記ブレーキを操作して電磁ブレーキを用いて前輪132及び後輪133の回転を制動する。
【0029】
測位装置16は、測位制御部161、記憶部162、通信部163、及び測位用アンテナ164などを備える通信機器である。例えば、測位装置16は、
図2に示すように、オペレータが搭乗するキャビン18の上部に設けられている。また、測位装置16の設置場所はキャビン18に限らない。さらに、測位装置16の測位制御部161、記憶部162、通信部163、及び測位用アンテナ164は、作業車両10において異なる位置に分散して配置されていてもよい。なお、前述したように測位装置16には前記バッテリーが接続されており、当該測位装置16は、エンジン131の停止中も稼働可能である。また、測位装置16として、例えば携帯電話端末、スマートフォン、又はタブレット端末などが代用されてもよい。
【0030】
通信部163は、測位装置16を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して基地局30などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0031】
測位用アンテナ164は、衛星から発信される電波(GNSS信号)を受信するアンテナである。
【0032】
測位制御部161は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。記憶部162は、測位制御部161に測位処理を実行させるための自動走行プログラム、及び測位情報、移動情報などのデータを記憶する不揮発性メモリなどである。例えば、前記自動走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部162に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して測位装置16にダウンロードされて記憶部162に記憶されてもよい。
【0033】
測位制御部161は、測位処理部171及び切替処理部172などの各種の処理部を含む。なお、測位制御部161は、前記自動走行プログラムに従って各種の処理を実行することにより前記各種の処理部として機能する。また、他の実施形態として、測位処理部171及び切替処理部172の一部又は全部が電子回路で構成されていてもよい。
【0034】
測位処理部171は、測位用アンテナ164が衛星40から受信するGNSS信号(本発明の衛星信号の一例)に基づいて所定の測位方式(RTK方式、DGPS方式など)により作業車両10の位置を測位する。具体的には、測位処理部171は、前記測位方式がRTK方式に設定されている場合にRTK方式により作業車両10を測位し、前記測位方式がDGPS方式に設定されている場合にDGPS方式により作業車両10を測位する。測位処理部171は、本発明の測位処理部の一例である。
【0035】
切替処理部172は、RTK方式とDGPS方式とを相互に切り替える。具体的には、切替処理部172は、設定処理部112により設定される作業車両10の作業モード(後述)と、測位処理部171における測位状態とに基づいて、RTK方式及びDGPS方式を切り替える。切替処理部172は、本発明の切替処理部の一例である。前記測位状態は、衛星40から発信されるGNSS信号の測位装置16における受信状態を示し、例えばGNSS信号を受信可能な衛星40の数が多い程、前記測位状態は良好(高精度状態)となる。例えば、圃場Fの近くに防風林、建物などの障害物が存在することによりGNSS信号を受信可能な衛星40の数が少なくなると、前記測位状態は低下する。前記測位状態は、例えばGNSS信号のクオリティ(GNSS Quality)の評価値で表される。
【0036】
ここで、前記測位方式は、予めRTK方式に設定されてもよい。すなわち、前記測位方式のデフォルトがRTK方式に設定されてもよい。この場合、作業車両10のエンジン131が始動すると、測位処理部171は、衛星40から発信されるGNSS信号の受信を開始し、前記測位状態がRTK測位可能な高精度状態になるまで測位処理を行う。例えば前記測位状態が高精度状態になると、測位処理部171は、高精度測位完了の通知を車両制御装置11及び操作端末20に送信する。車両制御装置11は、前記測位状態が高精度測位完了の状態になると、RTK方式による自動走行を許可する。すなわち、車両制御装置11の走行処理部111は、前記測位状態がRTK測位可能な高精度状態であることを条件として、RTK方式による作業車両10の自動走行を開始する。
【0037】
例えば、オペレータは、作業車両10のエンジン131を始動して、操作端末20の電源を入れると操作端末20に
図4に示すメニュー画面D1が表示される。メニュー画面D1には、圃場登録、作業機登録、作業領域登録、経路生成などの各種設定項目、前記測位状態を表すアイコンK1(本発明の画像の一例)などが表示される。オペレータがアイコンK1を押下すると、操作端末20に
図5に示すステータス画面D2が表示される。ステータス画面D2には、現時点の捕捉された衛星40、衛星40の数、測位状態などが表示される。前記測位状態がRTK測位可能な高精度状態になると、ステータス画面D2に、高精度測位完了のメッセージが表示される。なお、ステータス画面D2には、後述する作業精度設定(本発明の作業モードの一例)を選択するための作業モード選択欄K2が表示される。
【0038】
車両制御装置11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、車両制御装置11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより作業車両10を制御する。
【0039】
図1に示すように、車両制御装置11は、走行処理部111及び設定処理部112などの各種の処理部を含む。なお、車両制御装置11は、前記CPUで前記自動走行プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記自動走行プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0040】
走行処理部111は、作業車両10の走行を制御する。具体的には、走行処理部111は、測位処理部171により測位される作業車両10の位置を示す位置情報に基づいて作業車両10を自動走行させる。例えば、前記測位状態がRTK測位可能な高精度状態(高精度測位完了)になって、操作端末20の操作画面D3(
図6A参照)においてオペレータがスタートボタンを押下すると、操作端末20は作業開始指示を作業車両10に出力する。走行処理部111は、操作端末20から作業開始指示を取得すると、測位処理部171により測位される作業車両10の位置を示す位置情報に基づいて作業車両10の自動走行を開始させる。これにより、作業車両10は、走行経路Rに従って自動走行を開始し、作業機14による作業を開始する。なお、作業車両10が走行する走行経路Rは、例えば操作端末20により生成される。作業車両10は、操作端末20から走行経路Rを取得して、走行経路Rに従って圃場F内を自動走行する。
【0041】
また、走行処理部111は、操作端末20から走行停止指示を取得すると作業車両10の自動走行を停止させる。例えば、操作端末20の操作画面D4(
図6B参照)においてオペレータがストップボタンを押下すると、操作端末20は走行停止指示を作業車両10に出力する。走行処理部111は、操作端末20から走行停止指示を取得すると、作業車両10の自動走行を停止させる。これにより、作業車両10は、自動走行を停止し、作業機14による作業を停止する。走行処理部111は、本発明の走行処理部の一例である。
【0042】
設定処理部112は、作業車両10の作業モードを設定する。具体的には、設定処理部112は、作業車両10の作業モードを、測位処理部171における前記測位状態が所定状態から低下した場合に作業車両10の自動走行を停止させる作業精度優先(本発明の第1作業モードの一例)、及び、測位処理部171における測位状態が前記所定状態から低下した場合に作業車両10の自動走行を継続させる作業継続性優先(本発明の第2作業モードの一例)のうちいずれかに設定する。前記所定状態は、例えばRTK測位可能な高精度状態をいう。設定処理部112は、本発明の設定処理部の一例である。
【0043】
例えば、設定処理部112は、オペレータ(ユーザー)による前記作業精度優先及び前記作業継続性優先のいずれかを選択する選択操作(後述)に基づいて前記作業モードを設定する。具体的には、オペレータは、作業車両10による作業を開始する際に、
図5に示すステータス画面D2に表示される「作業精度設定」の作業モード選択欄K2において、前記作業精度優先及び前記作業継続性優先のいずれかを選択する。例えば、オペレータは、前記測位状態が低下した場合に自動走行を一時停止させて作業精度の低下を防ぎたい(作業精度を優先させたい)場合に「作業精度優先」を選択する。これに対して、例えば、オペレータは、前記測位状態が低下した場合に自動走行を継続させて作業効率の低下を防ぎたい(作業効率を優先させたい)場合に「作業継続性優先」を選択する。なお、前記作業モードのデフォルトが「作業精度優先」に設定されてもよい。この場合、オペレータは、「作業継続性優先」に切り替えたい場合にステータス画面D2を表示させて前記作業モードを切り替える。
【0044】
走行処理部111は、前記作業モードに応じて作業車両10を自動走行させる。具体的には、前記作業モードが前記作業精度優先に設定されている場合において、走行処理部111は、前記測位状態が高精度状態の場合にRTK方式による前記位置情報に基づいて作業車両10を自動走行させ、前記測位状態が高精度状態から低下した場合に作業車両10の自動走行を停止(一時停止)させる。例えば、前記測位方式がRTK方式に設定され、前記作業モードが前記作業精度優先に設定されている場合に、作業車両10が自動走行中に障害物の影響により前記測位状態が低下すると測位精度が低下してしまうため、走行処理部111は作業車両10を一時停止させる。作業車両10が一時停止した後、前記測位状態が回復して高精度状態(高精度測位完了)になると、走行処理部111は、作業車両10の自動走行を再開させる。これにより、作業車両10の作業精度の低下を防ぐことができる。
【0045】
これに対して、前記作業モードが前記作業継続性優先に設定されている場合において、走行処理部111は、前記測位状態が高精度状態の場合にRTK方式による前記位置情報に基づいて作業車両10を自動走行させ、前記測位状態が高精度状態から低下した場合にDGPS方式による前記位置情報に基づいて作業車両10を自動走行させる。例えば、前記測位方式がRTK方式に設定され、前記作業モードが前記作業継続性優先に設定されている場合に、作業車両10が自動走行中に障害物の影響により前記測位状態が低下すると、切替処理部172は、前記測位方式をRTK方式からDGPS方式に切り替える。このように、走行処理部111は、前記測位状態が高精度状態の場合にRTK方式による測位により作業車両10を自動走行させ、前記測位状態が低下した場合にDGPS方式による測位により作業車両10の自動走行を継続させる。これにより、作業車両10の作業効率の低下を防ぐことができる。
【0046】
なお、前記測位方式がRTK方式からDGPS方式に切り替えられた場合に、走行処理部111は、所定時間(例えば60秒間)だけDGPS方式による自動走行を行ってもよい。そして、前記所定時間経過後に前記測位状態が高精度状態に回復している場合には、切替処理部172は、前記測位方式をDGPS方式からRTK方式に切り替えてもよい。これにより、作業精度が低下する領域を抑制することができる。また、前記所定時間は、前記測位状態の履歴に応じて設定されてもよい。例えば、過去の作業における走行履歴の情報から圃場F内において前記測位状態が低下する場所が特定できる場合には、当該場所を通過するために要する時間を算出することにより前記所定時間を設定することができる。
【0047】
[操作端末20]
図1に示すように、操作端末20は、操作制御部21、記憶部22、操作表示部23、及び通信部24などを備える情報処理装置である。操作端末20は、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末で構成されてもよい。
【0048】
通信部24は、操作端末20を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両10などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0049】
操作表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるタッチパネル、マウス、又はキーボードのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。オペレータは、前記表示部に表示される操作画面において、前記操作部を操作して各種情報(後述の作業車両情報、圃場情報、作業情報など)を登録する操作を行うことが可能である。また、オペレータは、前記操作部を操作して作業車両10に対する作業開始指示、走行停止指示などを行うことが可能である。さらに、オペレータは、作業車両10から離れた場所において、操作端末20に表示される走行軌跡により、圃場F内を走行経路Rに従って自動走行する作業車両10の走行状態を把握することが可能である。
【0050】
記憶部22は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどの不揮発性の記憶部である。記憶部22には、操作制御部21に後述の自動走行処理(
図8参照)を実行させるための自動走行プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記自動走行プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部22に記憶される。なお、前記自動走行プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して操作端末20にダウンロードされて記憶部22に記憶されてもよい。
【0051】
操作制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、操作制御部21は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより操作端末20を制御する。
【0052】
図1に示すように、操作制御部21は、車両設定処理部211、圃場設定処理部212、作業設定処理部213、経路生成処理部214、出力処理部215、表示処理部216、受付処理部217などの各種の処理部を含む。なお、操作制御部21は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記制御プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0053】
車両設定処理部211は、作業車両10に関する情報(以下、作業車両情報という。)を設定する。車両設定処理部211は、作業車両10の機種、作業車両10において測位用アンテナ164が取り付けられている位置、作業機14の種類、作業機14のサイズ及び形状、作業機14の作業車両10に対する位置、作業車両10の作業中の車速及びエンジン回転数、作業車両10の旋回中の車速及びエンジン回転数等の情報について、オペレータが操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。
【0054】
例えば、オペレータは、作業車両10のエンジン131を始動して、操作端末20の電源を入れると、表示処理部216は、操作表示部23に
図4に示すメニュー画面D1を表示させる。オペレータは、「作業機登録」を選択して作業機情報を登録する。
【0055】
圃場設定処理部212は、圃場Fに関する情報(以下、圃場情報という。)を設定する。圃場設定処理部212は、圃場Fの位置及び形状、作業を開始する作業開始位置S及び作業を終了する作業終了位置G(
図3参照)、作業方向等の情報について、操作端末20において登録する操作を行うことにより当該情報を設定する。例えば、オペレータは、メニュー画面D1の「圃場登録」を選択して圃場情報を登録する。
【0056】
なお、作業方向とは、圃場Fから枕地、非耕作地等の非作業領域を除いた領域である作業領域において、作業機14で作業を行いながら作業車両10を走行させる方向を意味する。
【0057】
圃場Fの位置及び形状の情報は、例えばオペレータが作業車両10に搭乗して圃場Fの外周に沿って一回り周回するように運転し、そのときの測位用アンテナ164の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得することができる。また、圃場Fの位置及び形状は、操作端末20に地図を表示させた状態でオペレータが操作端末20を操作して当該地図上の複数の点を指定することで得られた多角形に基づいて取得することもできる。取得された圃場Fの位置及び形状により特定される領域は、作業車両10を走行させることが可能な領域(走行領域)である。
【0058】
作業設定処理部213は、作業を具体的にどのように行うかに関する情報(以下、作業情報という。)を設定する。作業設定処理部213は、作業情報として、作業車両10(無人トラクタ)と有人の作業車両10の協調作業の有無、作業車両10が枕地において旋回する場合にスキップする作業経路の数であるスキップ数、枕地の幅、及び非耕作地の幅等を設定可能に構成されている。例えば、オペレータは、メニュー画面D1の「作業領域登録」を選択して作業情報を登録する。
【0059】
経路生成処理部214は、前記設定情報に基づいて、作業車両10を自動走行させる経路である走行経路Rを生成する。走行経路Rは、例えば作業開始位置Sから作業終了位置Gまでの作業経路である(
図3参照)。
図3に示す走行経路Rは、圃場F内の内側領域において作業車両10を平行に往復走行させる内周経路R1と、圃場F内の外側領域において作業車両10を内側に向かって渦巻き状に旋回走行させる外周経路R2とを含む。経路生成処理部214は、車両設定処理部211、圃場設定処理部212及び作業設定処理部213で設定された前記各設定情報に基づいて、作業車両10の走行経路Rを生成して記憶することができる。例えば、オペレータは、メニュー画面D1の「経路生成」を選択して走行経路Rを生成する。
【0060】
経路生成処理部214は、圃場設定で登録した作業開始位置S及び作業終了位置Gに基づいて走行経路R(
図3参照)を生成する。走行経路Rは、
図3に示す経路に限定されない。
【0061】
操作端末20において生成された走行経路Rのデータが作業車両10に転送され、記憶部12に記憶される。作業車両10は、測位装置16により作業車両10の現在位置を測位しつつ、走行経路Rに沿って自動走行を行う。なお、作業車両10の現在位置は、通常は測位用アンテナ164の位置と一致している。
【0062】
本実施形態に係る作業車両10は、
図3に示すような略長方形状の圃場Fを走行する。作業車両10は、現在位置が圃場F内に位置している場合に自動走行できるように構成されており、現在位置が圃場F外(公道等)に位置している場合には自動走行できないように構成されている。また、作業車両10は、例えば現在位置が作業開始位置Sと一致している場合に、自動走行できるように構成されている。
【0063】
作業車両10は、現在位置が作業開始位置Sと一致している場合に、オペレータにより操作画面D3(
図6A参照)においてスタートボタンが押されて作業開始指示が与えられると、走行処理部111によって、自動走行を開始し、作業機14(
図2参照)による作業(例えば耕耘作業)を開始する。すなわち、作業車両10は、現在位置が作業開始位置Sと一致していることを条件に自動走行を許可する。なお、作業車両10の自動走行を許可する条件は、前記条件に限定されない。
【0064】
出力処理部215は、経路生成処理部214が生成した走行経路Rの情報を作業車両10に出力する。また、出力処理部215は、通信部24を介して制御信号を作業車両10に送信することにより、作業車両10に対して自動走行の開始及び停止等を指示することができる。これにより、作業車両10を自動走行させることが可能となる。
【0065】
例えば、走行処理部111は、操作端末20から取得する走行経路Rに基づいて、作業車両10を作業開始位置Sから作業終了位置Gまで自動走行させる。また、走行処理部111は、作業車両10が作業を終了すると、作業終了位置Gから圃場Fの入口まで自動走行させてもよい。作業車両10が自動走行している場合、操作制御部21は、作業車両10の状態(位置、走行速度等)を作業車両10から受信して操作表示部23に表示させることができる(
図6B参照)。
【0066】
表示処理部216は、各種情報を操作表示部23に表示させる。例えば、表示処理部216は、メニュー画面D1(
図4参照)、作業車両情報、圃場情報、作業情報などを登録する登録画面(不図示)、測位状態を表すステータス画面D2(
図5参照)、自動走行を開始させる操作画面D3(
図6A参照)、自動走行の走行状態を表す操作画面D4(
図6B参照)、測位状態が低下したことを通知する通知画面D5(
図7A及び
図7B参照)などを操作表示部23に表示させる。また、表示処理部216は、ステータス画面D2に作業モード(作業精度優先)を設定させる作業モード選択欄K2を表示させる。
【0067】
また、表示処理部216は、作業車両10が自動走行中に前記測位状態を操作表示部23に表示させる。具体的には、表示処理部216は、前記測位状態を表すアイコンK1(本発明の画像の一例)を操作画面D3、D4に表示させる。そして、表示処理部216は、アイコンK1を前記測位状態に応じた表示態様で表示させる。例えば、前記測位状態が高精度状態の場合に、表示処理部216はアイコンK1を緑色で表示させ、前記測位状態が低下した場合に、表示処理部216はアイコンK1をオレンジ色で表示させ、前記測位状態が測位不可状態(自動走行不可)の場合に、表示処理部216はアイコンK1を赤色で表示させる。なお、エンジン始動後のイニシャライズ(方位認識処理)が未完了の場合に、表示処理部216はアイコンK1を黄色で表示させる。前記表示態様は色に限定されず、点灯、点滅などであってもよい。また、操作制御部21は、前記測位状態に応じた音声を報知してもよい。表示処理部216は、本発明の表示処理部の一例である。
【0068】
ここで、アイコンK1は、ステータス画面D2(
図5参照)を表示させる操作をオペレータから受け付ける受付部としての機能を兼ね備えている。例えばオペレータが操作画面D3(
図6A参照)においてアイコンK1を押下すると、表示処理部216は、ステータス画面D2を表示させる。オペレータは、現時点の前記測位状態を確認したい場合や、前記作業モード(作業精度設定)を切り替えたい場合などにアイコンK1を選択することができる。
【0069】
受付処理部217は、オペレータから各種操作を受け付ける。具体的には、受付処理部217は、オペレータから作業車両10に作業を開始させる作業開始指示を受け付ける。また、受付処理部217は、オペレータから自動走行中の作業車両10の走行を停止させる走行停止指示を受け付ける。受付処理部217が前記各指示を受け付けると、出力処理部215は、前記各指示を作業車両10に出力する。受付処理部217は、本発明の受付処理部の一例である。
【0070】
作業車両10の走行処理部111は、操作端末20から作業開始指示を取得すると、作業車両10の走行及び作業を開始させる。また、走行処理部111は、操作端末20から走行停止指示を取得すると、作業車両10の走行及び作業を停止させる。
【0071】
また、受付処理部217は、作業車両10による作業を開始する際に、ステータス画面D2において、前記作業モード(「作業精度優先」又は「作業継続性優先」)を選択する選択操作を受け付ける。受付処理部217が前記選択操作を受け付けると、出力処理部215は、選択された作業モードを表す作業モード情報を作業車両10に出力する。作業車両10の設定処理部112は、前記作業モード情報を取得すると選択された作業モード(「作業精度優先」又は「作業継続性優先」)に設定する。
【0072】
ここで、前記作業モードが前記作業精度優先に設定されている場合において、作業車両10がRTK方式の測位により自動走行中に前記測位状態が高精度状態から低下すると、走行処理部111は、作業車両10の自動走行を停止(一時停止)させる。この場合、表示処理部216は、例えば
図7Aに示す通知画面D5を操作表示部23に表示させる。例えば、表示処理部216は、
図7Aに示す通知画面D5に、測位精度が低下したこと、及び、測位精度が向上(回復)するまで待機することを示すメッセージM1を表示させる。
【0073】
これに対して、前記作業モードが前記作業継続性優先に設定されている場合において、作業車両10がRTK方式の測位により自動走行中に前記測位状態が高精度状態から低下すると、走行処理部111は、DGPS方式の測位により自動走行を継続させる。この場合、表示処理部216は、例えば
図7Bに示す通知画面D5を操作表示部23に表示させる。例えば、表示処理部216は、
図7Bに示す通知画面D5に、測位精度が低下したこと、及び、60秒間自動走行を継続することを示すメッセージM2を表示させる。なお、表示処理部216は、メッセージM2を所定時間(例えば1秒間)だけ表示させ、所定時間経過後にメッセージM2を削除して操作画面D4(
図6B参照)を再表示させる。このように、メッセージM2の表示時間を短時間に設定することにより、DGPS方式の測位により自動走行を継続している間もオペレータは操作画面D4により作業状況を確認することができる。
【0074】
なお、操作端末20は、サーバー(不図示)が提供する農業支援サービスのウェブサイト(農業支援サイト)に通信網N1を介してアクセス可能であってもよい。この場合、操作端末20は、操作制御部21によってブラウザプログラムが実行されることにより、前記サーバーの操作用端末として機能することが可能である。そして、前記サーバーは、上述の各処理部を備え、各処理を実行する。
【0075】
他の実施形態として、上述した車両制御装置11及び測位装置16の一部の機能(例えば設定処理部112、切替処理部172)は、操作端末20の操作制御部21に含まれてもよい。例えば操作制御部21は、前記測位状態を取得して前記測位方式を切り替える処理を実行してもよい。また、操作制御部21は、オペレータによる前記作業モードの選択操作に基づいて作業車両10の作業モードを設定してもよい。
【0076】
[自動走行処理]
以下、
図8を参照しつつ、車両制御装置11、測位制御部161、及び操作制御部21によって実行される前記自動走行処理の一例について説明する。例えば、前記自動走行処理は、作業車両10のエンジン131が始動し、操作端末20の電源がONされた場合に、車両制御装置11、測位制御部161、及び操作制御部21によって開始される。
【0077】
なお、本発明は、車両制御装置11、測位制御部161、及び操作制御部21が前記自動走行処理の一部又は全部を実行する自動走行方法の発明、又は、当該自動走行方法の一部又は全部を車両制御装置11、測位制御部161、及び操作制御部21に実行させるための自動走行プログラムの発明として捉えてもよい。また、一又は複数のプロセッサーが前記自動走行処理を実行してもよい。
【0078】
ステップS1において、車両制御装置11は、オペレータによるエンジン始動操作に応じて作業車両10のエンジン131を始動させる。エンジン131が始動すると、測位制御部161は、方位認識処理(イニシャライズ)を実行する。また、操作制御部21は、オペレータによる電源ON操作に応じて操作端末20の電源をONしてメニュー画面D1(
図4参照)を操作端末20に表示させる。
【0079】
次にステップS2において、測位制御部161は、方位認識処理(イニシャライズ)が完了したか否かを判定する。方位認識処理が完了すると(S2:Yes)、処理はステップS3に移行する。また、測位制御部161は、方位認識処理が完了できない場合、方位認識処理が完了するまで待機する(S2:No)。
ステップS3において、測位制御部161は、高精度測位が完了したか否かを判定する。高精度測位が完了すると(S3:Yes)、処理はステップS4に移行する。また、測位制御部161は、高精度測位が完了できない場合、高精度測位が完了するまで待機する(S3:No)。なお、オペレータは、メニュー画面D1のアイコンK1を押下してステータス画面D2(
図5参照)を表示させて、ステータス画面D2において前記測位状態を確認することができる。
【0080】
ステップS4において、操作制御部21は、前記作業モードを選択する選択操作を受け付ける。具体的には、操作制御部21は、ステータス画面D2(
図5参照)の作業モード選択欄K2において、「作業精度優先」及び「作業継続性優先」のいずれかを選択する選択操作を受け付ける。例えば、オペレータは、作業精度を優先させたい場合に「作業精度優先」を選択し、作業効率を優先させたい場合に「作業継続性優先」を選択する。操作制御部21は、選択された作業モードを表す作業モード情報を作業車両10に出力する。車両制御装置11は、前記作業モード情報を取得すると、前記作業モードを選択された「作業精度優先」又は「作業継続性優先」に設定する。
【0081】
次にステップS5において、操作制御部21は、各種設定情報を登録する。具体的には、操作制御部21は、前記作業車両情報、前記圃場情報、前記作業情報、前記走行経路情報を登録する。また、操作制御部21は、生成された走行経路Rの前記走行経路情報を作業車両10に出力する。
【0082】
次にステップS6において、操作制御部21は、オペレータから自動走行を開始する操作を受け付けたか否かを判定する。例えば、作業車両10の現在位置が作業開始位置Sと一致している場合に、操作制御部21は、操作画面D3(
図6A参照)においてオペレータから自動走行を開始させる操作(スタートボタンの押下)を受け付ける。操作制御部21は、自動走行開始操作を受け付けると(S6:Yes)、作業開始指示を作業車両10に出力する。その後、処理はステップS7に移行する。一方、自動走行開始操作を受け付けない場合、操作制御部21は、自動走行開始操作を受け付けるまで待機する(S6:No)。
【0083】
ステップS7において、車両制御装置11は、RTK方式により測位する前記位置情報に基づいて、走行経路Rに沿って作業車両10を自動走行させる。
【0084】
次にステップS8において、測位制御部161は、前記測位状態が高精度状態であるか否かを判定する。例えば、測位制御部161は、GNSS信号を受信可能な衛星40の数が所定数(例えば10個)以上でありGNSS信号のクオリティの評価値が所定値である場合に前記測位状態が高精度状態であると判定する。一方、測位制御部161は、GNSS信号を受信可能な衛星40の数が所定数(例えば10個)未満でありGNSS信号のクオリティの評価値が所定値でない場合に前記測位状態が低下したと判定する。前記測位状態は、作業車両10の周囲の障害物(防風林、建物など)の影響により変動する。前記測位状態が高精度状態であると判定された場合(S8:Yes)、処理はステップS81に移行する。一方、前記測位状態が高精度状態でない、すなわち前記測位状態が低下したと判定された場合(S8:No)、処理はステップS9に移行する。
【0085】
ここで、操作制御部21は、操作画面D3(
図6A及び
図6B参照)において、アイコンK1を前記測位状態に応じた表示態様で表示させる。例えば、操作制御部21は、前記測位状態が高精度状態の場合にアイコンK1を緑色で表示させ、前記測位状態が高精度状態から低下した場合にアイコンK1をオレンジ色で表示させる。
【0086】
ステップS81では、車両制御装置11は、作業車両10が作業を終了したか否かを判定する。作業車両10が作業を終了した場合(S81:Yes)、前記自動走行処理は終了する。一方、作業車両10が作業を終了していない場合(S81:No)処理はステップS7に戻る。このように、車両制御装置11は、前記測位状態が低下しない場合は走行経路Rに応じた所定の作業が終了するまでRTK方式による自動走行を行う。
【0087】
ステップS9において、車両制御装置11は、前記作業モードが前記作業精度優先に設定されているか否かを判定する。前記作業モードが前記作業精度優先に設定されている場合(S9:Yes)、処理はステップS10に移行する。一方、前記作業モードが前記作業継続性優先に設定されている場合(S9:No)、処理はステップS91に移行する。
【0088】
ステップS10において、車両制御装置11は、自動走行中の作業車両10を一時停止させる。また、操作制御部21は、
図7Aに示す通知画面D5を操作端末20に表示させ、通知画面D5において、測位精度が低下したこと、及び、測位精度が向上(回復)するまで待機することを示すメッセージM1を表示させる。また、操作制御部21は、通知画面D5のアイコンK1をオレンジ色で表示させる。
【0089】
次にステップS11において、測位制御部161は、前記測位状態が高精度状態であるか否かを判定する。すなわち、測位制御部161は、前記測位状態がRTK方式による測位が可能な状態に回復したか否かを判定する。前記測位状態が高精度状態であると判定された場合(S11:Yes)、処理はステップS6に移行する。一方、前記測位状態が高精度状態でない、すなわち前記測位状態が低下したまま回復しない場合は、前記測位状態が高精度状態に回復するまで待機する(S11:No)。作業車両10は、前記測位状態が高精度状態に回復するまで一時停止した状態で待機する。なお、例えば、オペレータが作業車両10を手動で所定場所に移動させることにより、前記測位状態が高精度状態に回復する場合がある。前記測位状態が高精度状態に回復して(S11:Yes)、操作制御部21がオペレータから自動走行開始操作を受け付けると(S6:Yes)、車両制御装置11は、RTK方式により測位する前記位置情報に基づいて、走行経路Rに沿って作業車両10を自動走行を再開させる(S7)。
【0090】
これに対して、ステップS91では、測位制御部161は、前記測位方式をRTK方式からDGPS方式に切り替える。測位制御部161は、前記測位方式をRTK方式からDGPS方式に切り替えると時間の計測を開始する。次にステップS92において、測位制御部161は、計測時間が所定時間(例えば60秒間)を経過したか否かを判定する。計測時間が60秒を経過しない場合(S92:No)、処理はステップS93に移行する。一方、計測時間が60秒を経過した場合(S92:Yes)、処理はステップS10に移行する。
【0091】
ステップS93では、車両制御装置11は、DGPS方式により測位する前記位置情報に基づいて、走行経路Rに沿って作業車両10を自動走行を継続させる。また、操作制御部21は、
図7Bに示す通知画面D5を操作端末20に表示させ、通知画面D5において、測位精度が低下したこと、及び、60秒間自動走行を継続することを示すメッセージM2を表示させる。また、操作制御部21は、通知画面D5のアイコンK1をオレンジ色で表示させる。
【0092】
次にステップS94において、車両制御装置11は、作業車両10が作業を終了したか否かを判定する。作業車両10が作業を終了した場合(S94:Yes)、前記自動走行処理は終了する。一方、作業車両10が作業を終了していない場合(S94:No)、処理はステップS8に戻る。このように、前記作業モードが前記作業継続性優先に設定されており、前記測位状態が高精度状態でない場合は(S9:No)、車両制御装置11は、60秒間、DGPS方式により作業車両10を自動走行させる。また、作業車両10がDGPS方式により自動走行を継続中であって、かつ作業終了前に前記測位状態が高精度状態に回復すると(S8:Yes)、車両制御装置11は、前記測位方式をRTK方式に切り替えて自動走行を再開させる(S7)。
【0093】
一方、前記計測時間が60秒を経過して(S92:Yes)、処理がステップS10に移行すると、車両制御装置11は、自動走行中の作業車両10を一時停止させる。作業車両10は、前記測位状態が高精度状態に回復するまで一時停止した状態で待機する(S11:No)。その後、前記測位状態が高精度状態に回復すると(S11:Yes)、処理はステップS6に移行する。ステップS6において操作制御部21がオペレータから自動走行開始操作を受け付けると(S6:Yes)、車両制御装置11は、RTK方式により測位する前記位置情報に基づいて、走行経路Rに沿って作業車両10を自動走行を再開させる(S7)。
【0094】
車両制御装置11、測位制御部161、及び操作制御部21は、作業車両10が作業を終了するまでステップS1~S11の処理を繰り返し実行する。
【0095】
以上説明したように、本実施形態に係る自動走行システム1は、衛星40から受信する衛星信号(GNSS信号)に基づいて所定の測位方式により作業車両10の位置を測位し、作業車両10の位置情報に基づいて作業車両10を自動走行させる。また、自動走行システム1は、第1測位方式(例えばRTK方式)と前記第1測位方式よりも測位の位置精度が低い第2測位方式(例えばDGPS方式、単独測位方式)とを相互に切り替え可能である。また、自動走行システム1は、作業車両10の作業モードを、前記測位状態が所定状態(高精度状態)から低下した場合に作業車両10の自動走行を停止させる第1作業モード(作業精度優先)、及び、前記測位状態が前記所定状態から低下した場合に作業車両10の自動走行を継続させる第2作業モード(作業継続性優先)のうちいずれかに設定する。そして、自動走行システム1は、前記作業モードと前記測位状態とに基づいて、前記第1測位方式及び前記第2測位方式を切り替える。
【0096】
例えば、自動走行システム1は、前記作業モードが作業精度優先に設定されている場合において、前記測位状態が高精度状態の場合にRTK方式による前記位置情報に基づいて作業車両10を自動走行させ、前記測位状態が高精度状態から低下した場合に作業車両10の自動走行を停止させる。
【0097】
また例えば、自動走行システム1は、前記作業モードが作業継続性優先に設定され、かつ前記測位方式がRTK方式に設定されている場合において、前記測位状態が高精度状態から低下した場合に前記測位方式をDGPS方式に切り替える。すなわち、自動走行システム1は、前記作業モードが作業継続性優先に設定されている場合において、前記測位状態が高精度状態の場合にRTK方式による前記位置情報に基づいて作業車両10を自動走行させ、前記測位状態が高精度状態から低下した場合にDGPS方式による前記位置情報に基づいて作業車両10を自動走行させる。
【0098】
上述の構成によれば、例えばオペレータが作業の精度を優先させる作業モード(「作業精度優先」)に設定した場合には、前記測位状態が低下した場合に作業車両10を一時停止させる。これにより、位置精度が低い状態で作業車両10が自動走行を継続することにより作業精度が低下することを防ぐことができる。
【0099】
これに対して、例えばオペレータが作業の効率を優先させる作業モード(「作業継続性優先」)に設定した場合には、前記測位状態が低下した場合に作業車両10を一時停止させることなく自動走行を継続させる。これにより、作業車両10の自動走行が停止することにより作業効率が低下することを防ぐことができる。
【0100】
[他の実施形態]
本発明は上述の実施形態に限定されず、以下に示す実施形態であってもよい。
【0101】
上述の実施形態では、オペレータは、圃場Fの作業領域(内周経路R1及び外周経路R2)の全体について前記作業モードを前記作業精度優先又は前記作業継続性優先に設定することが可能である。ここで、圃場Fのうち外周経路R2の作業領域では、圃場Fの境界が近いため高い位置精度が求められる。例えば、作業車両10は、位置精度が低い測位方式により外周経路R2を自動走行すると圃場F外へ飛び出してしまう恐れがある。
【0102】
そこで、他の実施形態として、操作制御部21は、圃場F内の内側領域(本発明の第1領域の一例)に対して作業継続性優先を選択する選択操作の受け付けを許可し、圃場F内の外側領域(本発明の第2領域の一例)に対して作業継続性優先を選択する選択操作の受け付けを禁止する構成であってもよい。この構成によれば、例えば、内周経路R1を自動走行する作業車両10は、前記測位状態が低下した場合に測位方式をDGPS方式に切り替えて自動走行を継続する一方、外周経路R2を自動走行する作業車両10は、前記測位状態が低下した場合に測位方式の切り替えを行わず一時停止する。これにより、作業車両10が圃場F外へ飛び出ることを防ぐことができる。
【0103】
また、上述の実施形態では、車両制御装置11は、オペレータによる前記作業モード(「作業精度優先」又は「作業継続性優先」)の選択操作に基づいて前記作業モードを設定している。他の実施形態として、車両制御装置11は、作業車両10が過去に走行した際の前記測位状態及び前記位置情報を互いに関連付けて記憶する記憶部12を参照して、現在の前記位置情報における前記作業モードを設定してもよい。例えば、記憶部12には、過去の作業時における圃場F内の測位状態と、作業車両10の位置情報とが互いに関連付けられて記憶される。例えば、車両制御装置11は、作業車両10が自動走行中に、作業車両10の現在位置の位置情報に関連付けられた前記測位状態を参照して、前記作業モードを作業継続性優先に設定する。例えば、前記位置情報に関連付けられた前記測位状態が高精度状態に近い状態である場合や、前記測位状態が低下する位置が所定範囲以内である場合に、車両制御装置11は、前記作業モードを作業精度優先から作業継続性優先に切り替える。
【0104】
また、例えば、車両制御装置11は、自動走行を開始する際に、記憶部12に記憶された前記測位状態を参照して、圃場Fに前記測位状態が低下する場所が含まれる場合に、前記作業モードを作業継続性優先に設定する。これにより、オペレータによる選択操作を介さずに前記作業モードを設定することができる。なお、操作制御部21は、車両制御装置11が設定する前記作業モードを許可するか否かを選択する操作をオペレータから受け付けてもよい。
【0105】
また、他の実施形態として、操作制御部21は、作業車両10が自動走行中に、操作画面D4(
図9参照)においてオペレータから前記作業モードを選択する操作を受け付けてもよい。例えば、操作制御部21は、
図9に示すように、操作画面D4に前記作業モードを選択する作業モード選択欄K2を表示させて、前記作業モードの選択操作を受け付ける。操作制御部21は、前記選択操作を受け付けると、前記作業モード情報を作業車両10に出力する。車両制御装置11は、前記作業モード情報を取得すると選択された作業モード(「作業精度優先」又は「作業継続性優先」)に設定する。これにより、オペレータは、作業車両10が自動走行中においても前記作業モードを設定することができる。
【0106】
ここで、例えばオペレータが自動走行を開始する際にステータス画面D2において前記作業モードを作業継続性優先に設定していた場合において、作業車両10が自動走行中にオペレータが前記作業モードを作業精度優先に切り替えると、以下の問題が生じる恐れがある。例えば、作業車両10が自動走行中に前記測位状態が低下したことによりDGPS方式により自動走行を継続しているときにオペレータが前記作業モードを作業精度優先に切り替えると、切り替えた時点において前記測位状態がRTK方式に要求される高精度状態でないため、車両制御装置11は、作業精度優先に切り替えられたタイミングで作業車両10を急停止させてしまう。このため、作業車両10の故障につながる恐れがある。
【0107】
そこで、操作制御部21は、作業車両10が自動走行中の場合には前記作業モードを切り替える操作を受け付けない構成としてもよい。また、他の実施形態として、操作制御部21は、作業車両10が自動走行中の場合には、前記作業精度優先から前記作業継続性優先への切り替え操作のみを許可し、前記作業継続性優先から前記作業精度優先への切り替え操作を禁止する構成としてもよい。この場合に、操作制御部21は、
図9に示す操作画面D4において、「作業精度優先」を非表示又はグレースケール表示させて、「作業継続性優先」のみを選択可能に表示させてもよい。
【0108】
また、他の実施形態として、操作制御部21は、作業車両10が自動走行中の場合には、前記作業モードが前記作業精度優先に設定されており、かつ作業車両10の位置が圃場Fの境界から所定距離(例えば1m以内)の場合に、前記作業継続性優先への切り替え操作のみを許可する構成としてもよい。
【0109】
また、他の実施形態として、操作制御部21は、作業車両10が自動走行中の場合には、前記測位状態が高精度状態であり、かつ作業車両10の位置が圃場Fの境界から所定距離(例えば1m以内)の場合に、前記作業モードの切り替え操作を許可する構成としてもよい。これらの構成によれば、上述の作業車両10の急停止の問題を防ぐことができる。
【0110】
なお、操作制御部21は、前記作業モードの切替操作を受け付け可能な状態になったことを条件として、作業モード選択欄K2を操作画面D4(
図9参照)に表示(ポップアップ表示)させてもよい。
【0111】
また、他の実施形態として、車両制御装置11は、作業車両10に装着される作業機14の種別又は作業車両10の作業内容に基づいて、前記作業モードを設定してもよい。例えば、作業内容が耕耘作業の場合には高精度な作業が要求されず、作業内容が播種作業の場合には高精度な作業が要求される。このため、車両制御装置11は、作業機14が耕耘機である場合又は作業内容が耕耘作業である場合には前記作業モードを作業継続性優先に設定する。これに対して、車両制御装置11は、作業機14が播種機である場合又は作業内容が播種作業である場合には前記作業モードを作業精度優先に設定する。
【符号の説明】
【0112】
1 :自動走行システム
10 :作業車両
11 :車両制御装置
12 :記憶部
13 :走行装置
14 :作業機
16 :測位装置
20 :操作端末
21 :操作制御部
23 :操作表示部
30 :基地局
40 :衛星
111 :走行処理部
112 :設定処理部
161 :測位制御部
171 :測位処理部
172 :切替処理部
211 :車両設定処理部
212 :圃場設定処理部
213 :作業設定処理部
214 :経路生成処理部
215 :出力処理部
216 :表示処理部
217 :受付処理部
F :圃場
R1 :内周経路(第1領域)
R2 :外周経路(第2領域)
K1 :アイコン(画像)
K2 :作業モード選択欄