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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/49 20060101AFI20240522BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
F16F9/49
F16F9/46
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021032754
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2022133840
(43)【公開日】2022-09-14
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】志村 清之介
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-118206(JP,A)
【文献】特開2013-053669(JP,A)
【文献】特開2019-184032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/49
F16F 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に軸方向へ移動自在に挿入されるロッドと、
前記ロッドに連結されるとともに前記シリンダ内に摺動自在に挿入されて前記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、
前記シリンダの圧側室側端に設けられる有底筒状のオイルロックケースと、
前記ロッドの前記ピストンよりも前記圧側室側に連結されるとともに前記オイルロックケース内に侵入可能なオイルロックピースと、
前記オイルロックケースの底部に設けられ前記オイルロックケース内から前記オイルロックケース外へ排出する液体の流れに抵抗を与える排出通路と、
前記ロッドに対して軸方向に移動可能に装着されて前記オイルロックピースが前記オイルロックケース内に所定量侵入すると前記排出通路を遮断するシャッタ部材とを備える
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記ロッドは、圧側室側の先端から開口する中空部を有し、
前記シャッタ部材は、前記中空部内に摺動自在に挿入されるとともに、前記オイルロックピースが前記オイルロックケース内に挿入された状態で、前記中空部と前記オイルロックケース内を連通する連通路を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記連通路は、前記シャッタ部材の側方から開口しており、
前記連通路が前記オイルロックケース内に対向する面積は、前記シャッタ部材の前記中空部内への侵入にしたがって前記ロッドによって減少される
ことを特徴とする請求項2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記シャッタ部材は、前記オイルロックケースの底部に対向する端部に球面を持つ形状とされ、
前記排出通路の開口部は、前記シャッタ部材の端部に対向する位置に開口し、
前記開口部は、前記シャッタ部材側に向かうに従って開口径が大きくなるとともに前記シャッタ部材の端部に当接可能なテーパ面を有している
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記シャッタ部材は有底筒状であって、
前記中空部内の前記シャッタ部材よりも前記ロッドの基端側に設けられるばね受けと、
前記シャッタ部材の底部と前記ばね受けとの間に介装されるコイルばねとを有する
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記中空部内に固定され、前記コイルばねの内方に挿入される棒状のばねガイドを有する
ことを特徴とする請求項5に記載の緩衝器。
【請求項7】
前記ロッドは、
外周に前記ピストンが嵌合されるロッド本体と、
前記オイルロックピースを保持するとともに、前記ロッド本体の先端に螺子結合されて前記ピストンを前記ロッド本体とともに挟持するホルダとを有する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、例えば、車両の車体と車軸との間に介装されて伸縮時に発揮する減衰力で車体振動を抑制して、車両の乗り心地を向上させている。
【0003】
具体的には、緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室に区画するピストンが連結されるロッドと、伸縮時に液体の流れに抵抗を与えて減衰力を発揮する減衰部とを備えている。
【0004】
また、このような緩衝器においては、ロッドの先端に設けられたオイルロックピースと、シリンダの圧側室側端に設けられた筒状のオイルロックケースを備えるものがある(例えば、特許文献1)。当該緩衝器は、最圧縮時にオイルロックピースをオイルロックケース内に侵入させることで、オイルロックケース内をオイルロックするとともに、オイルロックピースの外周とオイルロックケースの内周の間に形成される隙間を液体が通過することで減衰部で発揮する減衰力に加えて付加減衰力を発揮して、緩衝器の最収縮時の衝撃を緩和している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-044786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の緩衝器では、最収縮時の衝撃を緩和するクッション性を確保するために、オイルロックピースの外周とオイルロックケースの内周の隙間を小さくするなどして最圧縮時における付加減衰力を高くすると、最圧縮時に車体への突き上げが生じて、車両の乗心地が悪化してしまう場合がある。
【0007】
そうかと言って、車両の乗心地の悪化を防止するために、オイルロックピースの外周とオイルロックケースの内周の隙間を大きくするなどして、最圧縮時における付加減衰力を低下させるとクッション性が低下するので、今度は、緩衝器に強い振動が入力された場合にロッドが勢いよく底付きして車両の乗り心地を悪化させてしまう恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、ロッドの底付きを防止しつつ車両における乗心地を向上可能な緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段は、シリンダ内に軸方向へ移動自在に挿入されるロッドに連結されるとともに前記シリンダ内に摺動自在に挿入されて前記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、前記シリンダの圧側室側端に設けられる有底筒状のオイルロックケースと、前記ロッドの前記ピストンよりも圧側室側に連結されるとともに前記オイルロックケース内に侵入可能なオイルロックピースと、前記オイルロックケースの底部に設けられ前記オイルロックケース内から前記オイルロックケース外へ排出する液体の流れに抵抗を与える排出通路と、前記ロッドに対して軸方向に移動可能に装着されて前記オイルロックピースが前記オイルロックケース内に所定量侵入すると前記排出通路を遮断するシャッタ部材とを備えることを特徴とする。この構成によると、オイルロックピースがオイルロックケース内に侵入する緩衝器の最収縮時において、オイルロックピースが所定量移動するまでの付加減衰力を低くしつつ、オイルロックピースがオイルロックケース内に所定量以上侵入する際の付加減衰力を高くできる。
【0010】
また、本発明の緩衝器では、前記ロッドは、圧側室側の先端から開口する中空部を有し、前記シャッタ部材は、前記中空部内に摺動自在に挿入されるとともに、前記オイルロックピースが前記オイルロックケース内に挿入された状態で、前記中空部と前記オイルロックケース内を連通する連通路を有するとしてもよい。この構成によるとシャッタ部材がオイルロックケースの底部に当接すると緩衝器の収縮に伴ってシャッタ部材が中空部内に後退できる。よって、中空部が密閉されてシャッタ部材が中空部内に後退不能となるようなことがなく、シャッタ部材の当接時の衝撃も緩和できる。
【0011】
また、本発明の緩衝器では、前記連通路は、前記シャッタ部材の側方から開口しており、前記連通路が前記オイルロックケース内に対向する面積は、前記シャッタ部材の前記中空部内への侵入にしたがって前記ロッドによって減少されるとしてもよい。この構成によると、緩衝器の最収縮時に、排出通路とは別に減衰力を発揮できるため、緩衝器の最圧縮時における付加減衰力のチューニングの自由度が向上する。
【0012】
また、本発明の緩衝器では、前記シャッタ部材は、前記オイルロックケースの底部に対向する端部に球面を持つ形状とされ、前記排出通路の開口部は、前記シャッタ部材の端部に対向する位置に開口し、前記開口部は、前記シャッタ部材側に向かうに従って開口径が大きくなるとともに前記シャッタ部材の端部に当接可能なテーパ面を有するとしてもよい。この構成によると、シャッタ部材の軸が、排出通路の開口部に対して偏心したとしても、シャッタ部材の球面部分がテーパ面に当接して、シャッタ部材はテーパ面にならって開口部の中心に自動的に調心される。そのため、シャッタ部材は、排出通路を確実に遮断できる。
【0013】
また、本発明の緩衝器では、前記シャッタ部材は有底筒状であって、前記中空部内の前記シャッタ部材よりも前記ロッドの基端側に設けられるばね受けと、前記シャッタ部材の底部と前記ばね受けとの間に介装されるコイルばねとを有してもよい。この構成によると、コイルばねをシャッタ部材の筒部材内に挿入できるので、ロッドの軸方向長さを長くすることなく、シャッタ部材のストローク長を確保できる。
【0014】
また、本発明の緩衝器は、前記中空部内に固定され、前記コイルばねの内方に挿入される棒状のばねガイドを有するとしてもよい。この構成によると、コイルばねの胴曲がりを防止できる。
【0015】
また、本発明の緩衝器では、前記ロッドは、外周に前記ピストンが嵌合されるロッド本体と、前記オイルロックピースを保持するとともに、前記ロッド本体の先端に螺子結合されて前記ピストンを前記ロッド本体とともに挟持するホルダとを有するとしてもよい。この構成によると、ホルダが、ピストンをロッド本体の外周に固定するピストンナットとして機能しており、ピストンナットを省略することができるため、部品点数を削減できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の緩衝器によれば、ロッドの底付きを防止しつつ車両における乗心地を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係る緩衝器の全体を示す断面図である。
図2】本実施の形態に係る緩衝器において、オイルロックピースが第1所定量移動した状態を示す一部拡大断面図である。
図3】本実施の形態に係る緩衝器において、オイルロックピースが第2所定量移動した状態を示す一部拡大断面図である。
図4】本実施の形態に係る緩衝器において、オイルロックピースが第2所定量以上移動した状態を示す一部拡大断面図である。
図5】本実施の形態に係る緩衝器の変形例を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本実施の形態について説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
【0019】
本実施の形態に係る緩衝器Dは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動自在に挿入されるロッド2と、ロッド2に連結されるとともにシリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3とを有する緩衝器本体4と、緩衝器本体4に接続されて液体を貯留するタンク5とを備える。また、緩衝器Dは、シリンダ1の圧側室側端に設けられる有底筒状のオイルロックケース6と、ロッド2の先端側に設けられるオイルロックピース7とを備えている。オイルロックピース7は、緩衝器Dの最収縮時にオイルロックケース6内に侵入し、オイルロックケース6内を閉鎖してオイルロックケース6内の圧力を上昇させて緩衝器Dの収縮を抑制するクッション機能を発揮して緩衝器Dの最収縮時の衝撃を緩和する。
【0020】
以下、本実施の形態の緩衝器Dの各部について詳細に説明する。図1に示すように、シリンダ1は、有底筒状であって、シリンダ1の図中上端には、シリンダ1の上端を閉塞するとともにロッド2を軸支する環状のロッドガイド8が設けられている。また、シリンダ1の図中下端には、有底筒状のオイルロックケース6が取付けられている。
【0021】
本実施の形態のロッド2は、図1に示すように、シリンダ1の図中上端から基端が突出するとともに先端側外周にピストン3が装着されるロッド本体20と、ロッド本体20の先端に連結されてオイルロックピース7を保持するホルダ21とを有する。
【0022】
具体的には、ロッド本体20は、図1図2に示すように、大径部20aと、大径部20aの先端側に連続し大径部20aよりも径の小さい小径部20bとを有する。そして、小径部20bの外周には、環状のピストン3が嵌合されている。この状態で、ホルダ21は、ロッド本体20の下端外周に螺子結合されている。そのため、ピストン3は、ロッド本体20の大径部20aと小径部20bとの間に形成される段差20cとホルダ21との間に挟持されて、ロッド本体20の外周に固定されている。つまり、本実施の形態では、ホルダ21が、ピストン3をロッド本体20の外周に固定するピストンナットとして機能している。
【0023】
ピストン3は、シリンダ1内に軸方向移動自在に挿入されていてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2に区画している。また、ピストン3には、伸側室R1と圧側室R2を連通する伸側通路13と圧側通路14が設けられている。そして、伸側通路13には、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の通過のみを許容するとともにこの液体の流れに抵抗を与える減衰バルブ15が設けられている。他方、圧側通路14には、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の通過のみを許容する逆止弁16が設けられている。
【0024】
また、図1に示すように、ロッド本体20には、伸側通路13と圧側通路14を迂回して伸側室R1と圧側室R2を連通するバイパス通路17が形成されている。このバイパス通路17の途中にはバイパス通路17の流路面積を調整可能な可変絞り弁18が設けられている。
【0025】
タンク5は、図1に示すように、シリンダ1の側方に設けられており、パイプPを通じて、緩衝器本体4内の圧側室R2に連通している。タンク5内は、バルブケース10によってリザーバ室Rと圧側室R2とに区画されている。そして、リザーバ室Rは、フリーピストン9によって気室Gとバルブケース10に面する液室Lとに区画されている。このように構成されたリザーバ室Rでは、フリーピストン9が移動すると、リザーバ室Rの液室Lの容積が拡縮するようになっている。
【0026】
また、図1に示すように、バルブケース10には、圧側室R2からリザーバ室Rへ向かう液体の通過のみを許容するとともにこの液体の流れに抵抗を与えるベースバルブ11と、リザーバ室Rから圧側室R2へ向かう液体の通過のみを許容するチェックバルブ12とが並列に設けられている。さらに、バルブケース10には、圧側室R2とリザーバ室Rを連通するとともに、途中に流路面積を調整可能な可変絞り弁19aを有して通過する液体の流れに抵抗を与える減衰通路19が設けられている。
【0027】
また、伸側室R1と圧側室R2と液室Lには液体が充満されており、気室Gには、気体が充填されている。なお、本実施の形態では、液体は作動油とされているが、液体は水、水溶液、電気粘性流体、磁気粘性流体といった他の液体としてもよい。
【0028】
つづいて、オイルロックピース7を保持する前述したホルダ21について詳細に説明する。ホルダ21は、図2に示すように、筒状であって、図中下端である先端側から開口する中空部22を備えている。また、ホルダ21は、ロッド本体20の下端外周に螺子結合される大径筒部21aと、大径筒部21aの先端側に連続し大径筒部21aの内外径よりも小さい内外径をもつ小径筒部21bとを有する。小径筒部21bの先端側には、小径筒部21bの外径よりも小さい外径をもちオイルロックピース7が外周に装着される保持軸21cが形成されている。さらに、保持軸21cの先端側には環状溝21dが形成されている。
【0029】
また、ホルダ21の大径筒部21aには、バイパス通路17の圧側室R2側の開口端と対向してバイパス通路17と圧側室R2との連通を確保するポート21eが形成されており、ホルダ21が、バイパス通路17を閉塞しないようになっている。さらに、ホルダ21の保持軸21cには、環状であって上下に貫通する通路23を有するオイルロックピース7と、オイルロックピース7の下端部に重ねられて通路23を閉塞する環状のリーフバルブ24と、オイルロックピース7の上端部とリーフバルブ24の下端内周にそれぞれ重ねて配置される複数のシム25,26が装着されている。
【0030】
図2中上方側に配置される上側シム25は、オイルロックピース7の通路23を閉塞しない大きさに設定される。また、図2中下方側に配置される下側シム26の外径の設定によって、リーフバルブ24の撓みの支点の位置が決定される。このように、リーフバルブ24は、内周側がホルダ21に固定されて、外周側の撓みが許容されており、外周側が撓むと通路23を開放する。また、上側シム25と下側シム26の数を調整することで、オイルロックピース7のホルダ21に対する軸方向位置を調節できるようになっている。
【0031】
そして、ホルダ21の保持軸21cには、上側シム25、オイルロックピース7、リーフバルブ24、下側シム26が、この順で図2中下方から装着されている。これらの部材は、ホルダ21の環状溝21dに環状のストッパ27を嵌合することで、ホルダ21の外周に固定されている。
【0032】
また、ホルダ21の中空部22には、有底筒状のシャッタ部材30が、摺動自在に挿入されている。シャッタ部材30は、図2に示すように、筒部30aと、筒部30aの図中下端である先端側開口を閉塞する底部30bとを備える。筒部30aの反底部側端の外周には、外向きに突出するとともに、ホルダ21の小径部20bの内周に摺接する環状のフランジ部30cが設けられている。また、底部30bには、底部30bの筒部30a側中央に設けられる筒部30aの内径よりも径の小さい凹部30dと、底部30bの側方から貫通して凹部30dと連通する連通路30eが形成されている。これにより、連通路30eは、凹部30dと筒部30aの内側を介して、中空部22に連通している。
【0033】
また、図2に示すように、ホルダ21の大径筒部21aと小径筒部21bの内周側の境界に形成される段差部21fの上には、ばね受け28が配置されている。ばね受け28の下端中央には、丸孔28aが形成されている。そして、ばね受け28の図2中上方から大径筒部21aの内周にナット29を螺合して締め付けることで、ばね受け28は段差部21fとナット29によって挟持されている。なお、ここで、ホルダ21の大径筒部21aにはナット29と対向する位置で径方向に貫通するとともに内周にねじ溝が形成された貫通孔21gが設けられており、当該貫通孔21gにはセットスクリュー31が挿入されている。このセットスクリュー31は、ナット29の外周に当接して、ナット29が緩むのを防止している。
【0034】
また、図2に示すように、シャッタ部材30の底部30bとばね受け28の間には、弾性体としてのコイルばねSが介装されており、シャッタ部材30をホルダ21から外方へ向けて付勢している。ここで、ホルダ21の下端内周には環状のストッパ部21hが設けられている。そのため、シャッタ部材30は、コイルばねSによって付勢されても、フランジ部30cが、ストッパ部21hに当接する。これにより、シャッタ部材30はホルダ21の中空部22から外れないようになっている。なお、図示しないが、フランジ部30cと小径筒部21bとの間には、シャッタ部材30とホルダ21の間に形成される空間が密閉されないよう隙間が形成されている。シャッタ部材30が中空部22内に出入りする際に、当該隙間を介してシャッタ部材30とホルダ21の間に形成される空間に液体が出入りできるので、シャッタ部材30が中空部22内を軸方向移動できる。
【0035】
また、コイルばねSは、ばね受け28とシャッタ部材30の筒部30aの反底部側端(図2中上端)との間に介装されてもよい。この場合、コイルばねSをばね受け28とシャッタ部材30の底部30bとの間に介装する場合に比べて、径の大きいコイルばねSを選択できるため、シャッタ部材30を付勢する力を大きくできる。ただし、本実施の形態のように、コイルばねSをばね受け28とシャッタ部材30の底部30bの間に介装する場合、ホルダ21の軸方向長さを長くすることなく、シャッタ部材30のストローク長を確保できる。
【0036】
また、本実施の形態では、弾性体としてコイルばねSを利用しているが、シャッタ部材30を付勢する付勢力を有していれば、弾性体は、コイルばねSには限定されず、例えば、ゴムであってもよい。
【0037】
また、本実施の形態では、図2に示すように、ばね受け28の丸孔28aには、棒状のばねガイド32が嵌合されて固定されている。ばねガイド32は、コイルばねSの内方に挿入されて、コイルばねSの伸縮をガイドするようになっている。そのため、コイルばねSは、収縮時に胴曲がりすることがない。
【0038】
また、本実施の形態のコイルばねSは、シャッタ部材30の筒部30aの内側に収容されているため、線径が小さくなって収縮時に胴曲がりを生じやすくなる傾向にある。そのため、コイルばねSの内方にばねガイド32を設けることは、本実施の形態のように、コイルばねSの線径を小さくせざるを得ない場合に、特に有効である。ただし、コイルばねSが収縮時に胴曲がりしない程度の線径に設定されている場合には、ばねガイド32は、省略されてもよい。
【0039】
なお、ばねガイド32の軸方向長さは、シャッタ部材30が最収縮した際に、ばねガイド32の先端がシャッタ部材30の底部30bと干渉しない長さに設定されている。
【0040】
本実施の形態のオイルロックケース6は、図1図2に示すように、有底筒状であって、緩衝器Dの最収縮時にオイルロックピース7が筒部6a内に挿入可能なように、シリンダ1の圧側室R2側端(図中下端)に固定されている。また、オイルロックケース6の底部6bには、オイルロックケース6内と圧側室R2とを連通する排出通路33が設けられている。排出通路33は、軸方向視でシャッタ部材30の底部30bと対向する位置に開口している。また、排出通路33の途中には、通過する液体の流れに抵抗を与えるオリフィスOが設けられている。なお、本実施の形態では、オリフィスOは、開口面積を調整可能な可変オリフィスとなっているが、オリフィスOは、開口面積が一定の固定オリフィスとされてもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、オイルロックケース6の筒部6aの内径は、オイルロックピース7の外径よりも僅かに大きい。そのため、図2に示すように、オイルロックピース7が中立位置から圧側室R2側へ第1所定量L1移動してオイルロックケース6内に侵入すると、オイルロックケース6の筒部6aとオイルロックピース7の間に環状隙間34が形成される。この環状隙間34は、絞りとして機能し、通過する液体の流れに抵抗を与えるように設定されている。ただし、オイルロックピース7の外径をオイルロックケース6の筒部6aの内周に摺接する大きさにして、環状隙間34を省略してもよい。
【0042】
ここで、本実施の形態の緩衝器Dでは、オイルロックピース7の中立位置は、ピストン3がシリンダ1の中央に配置された状態におけるオイルロックピース7の位置とされているが、緩衝器Dが車両の車体と車軸との間に介装された状態におけるオイルロックピース7の位置としてもよい。このように、オイルロックピース7のシリンダ1に対する中立位置は、オイルロックケース6外に配置される任意の位置に設定できる。
【0043】
そして、図3に示すように、オイルロックピース7が、中立位置から圧側室R2側へ第1所定量L1移動した位置(以下、「第1所定量位置」とする)から、オイルロックケース6内に第2所定量L2侵入した位置(以下、「第2所定量位置」とする)まで移動すると、シャッタ部材30が、オイルロックケース6の底部6bに当接し、排出通路33の開口部を閉塞して、排出通路33を遮断する。ここで、第1所定量L1とは、図1に示すように、中立位置に配置されたオイルロックピース7の上端の高さ位置からオイルロックケース6の開口端の高さ位置までの距離を指す。第2所定量L2とは、図2に示すように、オイルロックピース7が第1所定量位置に配置された状態におけるシャッタ部材30の先端からオイルロックケース6の底部6bまでの距離を指す。
【0044】
また、図4に示すように、オイルロックピース7が、オイルロックケース6内に第2所定量L2以上侵入すると、シャッタ部材30がオイルロックケース6の底部6bによって押圧されるので、シャッタ部材30はコイルばねSの付勢力に抗して縮んで、ロッド2の中空部22内に収容される。
【0045】
また、図2図3に示すように、シャッタ部材30は、オイルロックケース6の底部6bに対向する端部である下端に球面を持つ形状とされており、排出通路33の開口部は、シャッタ部材30側に向かうに従って開口径が大きくなるテーパ面33aを有している。したがって、シャッタ部材30の軸が排出通路33の開口部に対して偏心したとしても、シャッタ部材30の球面部分がテーパ面33aに当接して、シャッタ部材30はテーパ面33aにならって開口部の中心に自動的に調心される。よって、シャッタ部材30は、排出通路33を確実に遮断できる。
【0046】
次に、本実施の形態の緩衝器Dの作動について説明する。まず、緩衝器Dの伸縮速度が極低速域であって、伸側室R1又は圧側室R2の圧力が、減衰バルブ15又はベースバルブ11の開弁圧よりも低くなる場合について説明する。
【0047】
緩衝器Dが、伸長作動すると、圧縮される伸側室R1内の液体がバイパス通路17を介して拡大する圧側室R2へ移動するとともに、ロッド2がシリンダ1内から退出するため、ロッド2の退出体積分の液体がシリンダ1内で不足する。そのため、チェックバルブ12が開いて不足分の液体がリザーバ室Rからシリンダ1内へ供給される。これにより、極低速域における伸長作動時には、バイパス通路17の途中に設けられた可変絞り弁18の抵抗に基づいて伸側減衰力が発揮される。
【0048】
反対に緩衝器が収縮作動すると、圧縮される圧側室R2内の液体が拡大する伸側室R1内へ圧側通路14を介して移動するとともに、シリンダ1内へロッド2が侵入するため、ロッド2の侵入体積分の液体がシリンダ1内で過剰となる。そのため、過剰分の液体は、減衰通路19を介して圧側室R2からリザーバ室Rへ排出される。これにより、収縮作動時には、減衰通路19の途中に設けられた可変絞り弁19aの抵抗に基づく圧側減衰力が発揮される
つづいて、緩衝器の伸縮速度が、低速域以上であって、伸側室R1又は圧側室R2の圧力が、減衰バルブ15又はベースバルブ11の開弁圧よりも高くなる場合について説明する。
【0049】
緩衝器Dが、伸長作動すると、圧縮される伸側室R1内の液体が伸側通路13を介して拡大する圧側室R2へ移動するとともに、ロッド2がシリンダ1内から退出するため、ロッド2の退出体積分の液体がシリンダ1内で不足する。そのため、チェックバルブ12を開いて不足分の液体がリザーバ室Rからシリンダ1内へ供給される。これにより、低速域以上における伸長作動時には、減衰バルブ15の抵抗に基づく伸側減衰力が発揮されるとともに、リザーバ室Rにより体積補償がなされる。
【0050】
反対に緩衝器Dが収縮作動すると、圧縮される圧側室R2内の液体が拡大する伸側室R1内へ圧側通路14を介して移動するとともに、シリンダ1内へロッド2が侵入するため、ロッド2の侵入体積分の液体がシリンダ1内で過剰となる。そのため、過剰分の液体は、ベースバルブ11を開いて圧側室R2からリザーバ室Rへ排出される。これにより、低速域以上における収縮作動時には、ベースバルブ11の抵抗に基づく圧側減衰力が発揮されるとともに、リザーバ室Rにより体積補償がなされる。
【0051】
さらに、緩衝器Dが収縮して、オイルロックピース7が、第1所定量位置まで移動すると、オイルロックピース7は、図2に示すように、オイルロックケース6内に侵入する。オイルロックピース7が、オイルロックケース6内を第1所定量位置から第2所定量位置まで移動する間は、オイルロックケース6の内部と圧側室R2は、環状隙間34と排出通路33を介して連通している。そのため、オイルロックピース7の侵入時には、オイルロックピース7の侵入体積分の液体は、環状隙間34と排出通路33を通って圧側室R2へ移動する。したがって、オイルロックピース7が、オイルロックケース6内を第1所定量位置から第2所定量位置まで移動する間は、排出通路33のオリフィスOと環状隙間34が液体の流れに与える抵抗に基づく付加減衰力が発揮される。なお、この際、オイルロックピース7の下端に積層されて通路を閉塞するリーフバルブ24は、圧側室R2からオイルロックケース6内への液体の流れのみを許容するチェック弁35として機能する。そのため、オイルロックピース7が、オイルロックケース6内に侵入する間は、通路23は遮断されている。
【0052】
そして、図3に示すように、オイルロックピース7が、第2所定量位置まで移動すると、シャッタ部材30の底部30bが排出通路33の開口部のテーパ面33aに当接して、シャッタ部材30によって排出通路33が遮断される。この際、シャッタ部材30は、ホルダの中空部22内に軸方向移動自在に挿入されているため、図4に示すように、オイルロックピース7は、オイルロックケース6内に第2所定量L2以上侵入することができる。図4に示すように、オイルロックピース7がオイルロックケース6内に第2所定量L2以上侵入する際には、シャッタ部材30が排出通路33を遮断しつつコイルばねSを押し縮めて中空部22内に侵入するので、オイルロックケース6の内部と圧側室R2が、環状隙間34のみを介して連通する。したがって、オイルロックピース7が、オイルロックケース6内を第2所定量L2以上侵入する際には、環状隙間34の抵抗のみに基づいて付加減衰力が発揮される。
【0053】
つまり、オイルロックピース7がオイルロックケース6内で第2所定量位置よりもオイルロックケース6の底部6b側に位置する場合は、オイルロックピース7がオイルロックケース6内の第1所定量位置から第2所定量位置の間に位置する場合に比べて、オイルロックケース6の内部と圧側室R2を連通する通路の流路面積が小さくなるため、緩衝器Dは、大きな付加減衰力を発揮できる。
【0054】
したがって、本実施の形態では、緩衝器Dの最収縮時において、オイルロックピース7が第1所定量位置から第2所定量位置まで移動している間の付加減衰力を低くしつつ、オイルロックピース7がオイルロックケース6内を第2所定量L2以上侵入する際の付加減衰力を高くできる。
【0055】
また、図2に示すように、オイルロックケース6内にオイルロックピース7が侵入した状態では、シャッタ部材30を収容する中空部22とオイルロックケース6の内部は、シャッタ部材30に設けられた連通路30e、凹部30d及び筒部30aの内側を通じて連通している。そのため、中空部22とオイルロックケース6内の圧力は常に等圧となる。
【0056】
ここで、本実施の形態のシャッタ部材30において、中空部22の圧力を受ける受圧面積と、オイルロックケース6内の圧力を受ける受圧面積は、いずれもシャッタ部材30におけるホルダ21の内周に摺接する部分の外径を直径とする円の面積である。つまり、中空部22とオイルロックケース6内の圧力を受けるシャッタ部材30の受圧面積は等しい。
【0057】
このように、本実施の形態では、中空部22とオイルロックケース6内の圧力は等しく、これらの圧力を受けるシャッタ部材30の受圧面積も等しいため、中空部22とオイルロックケース6内の圧力によってシャッタ部材30を押す力も等しくなる。
【0058】
したがって、本実施の形態では、オイルロックピース7がオイルロックケース6内に侵入して、オイルロックケース6内の圧力が上昇しても、オイルロックケース6内の圧力によってシャッタ部材30が軸方向移動することはない。よって、本実施の形態のシャッタ部材30は、排出通路33を遮断する前にオイルロックケース6内の圧力によって、中空部22内に押し込まれてしまうことはない。
【0059】
また、中空部22が密閉されていると、シャッタ部材30がホルダ21に対して後退できず、シャッタ部材30の底部30bが排出通路33の開口部のテーパ面33aに当接する際に衝撃が発生してしまうが、中空部22とオイルロックケース6内とが連通していると、この衝撃を回避することができる。
【0060】
戻って、緩衝器Dの作動方向が収縮方向から伸長方向へ切り換わり、オイルロックピース7がオイルロックケース6から退出する場合には、リーフバルブ24がオイルロックピース7に設けられた通路23を開くので、圧側室R2の液体が通路23を通じてオイルロックケース6内へ供給される。よって、オイルロックピース7がオイルロックケース6から速やかに退出できる。さらに、中空部22内に押し込まれていたシャッタ部材30は、コイルばねSの付勢力によって元の位置に復帰する。
【0061】
上述したように本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1の圧側室R2側端に設けられる有底筒状のオイルロックケース6と、ロッド2のピストン3よりも圧側室R2側に連結されるとともにオイルロックケース6内に侵入可能なオイルロックピース7と、オイルロックケース6の底部6bに設けられオイルロックケース6内からオイルロックケース6外へ排出する液体の流れに抵抗を与える排出通路33と、ロッド2に対して軸方向に移動可能に装着されてオイルロックピース7がオイルロックケース6内に所定量(第2所定量L2)侵入すると排出通路33を遮断するシャッタ部材30とを備えている。
【0062】
この構成によると、オイルロックピース7がオイルロックケース6内に侵入する緩衝器Dの最収縮時において、オイルロックピース7が所定量(第2所定量L2)移動するまでの付加減衰力を低くしつつ、オイルロックピース7がオイルロックケース6内に所定量(第2所定量L2)以上侵入する際の付加減衰力を高くできる。
【0063】
したがって、本実施の形態の緩衝器Dでは、オイルロックピース7が所定量(第2所定量L2)移動するまでは付加減衰力を低くできるので車両における乗心地は損なわれず、オイルロックピース7が所定量(第2所定量L2)以上移動する際には付加減衰力を高くできるのでロッド2の底付きを防止できる。
【0064】
また、本実施の形態では、排出通路33に設けられるオリフィスOを、開口面積を調整可能な可変オリフィスとしているため、オリフィスOの開口面積を調整することで、オイルロックピース7が第2所定量L2移動するまでの付加減衰力を調整できるようになっている。ただし、オリフィスOは、開口面積が一定の固定オリフィスであってもよい。なお、本実施の形態では、オリフィスOによってオイルロックケース6内からオイルロックケース6外へ排出する液体の流れに抵抗を与えているが、排出通路33の途中に設けられる減衰手段はオリフィスOには限定されず、例えば、減衰バルブであってもよい。
【0065】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、ロッド2は、圧側室R2側の先端から開口する中空部22を有し、シャッタ部材30は、中空部22内に摺動自在に挿入されるとともに、オイルロックピース7がオイルロックケース6内に挿入された状態で、中空部22とオイルロックケース6内を連通する連通路30eを有している。
【0066】
この構成によるとシャッタ部材30がオイルロックケース6の底部6bに当接すると緩衝器Dの収縮に伴ってシャッタ部材30が中空部22内に後退できる。よって、中空部22が密閉されてシャッタ部材30が中空部22内に後退不能となるようなことがなく、シャッタ部材30の当接時の衝撃も緩和できる。
【0067】
また、この構成によると、オイルロックピース7がオイルロックケース6内に挿入された状態で、中空部22とオイルロックケース6内の圧力が常に等圧になるので、中空部22とオイルロックケース6内の圧力を受けるシャッタ部材30の受圧面積が等しくなるように設定される場合、中空部22とオイルロックケース6内の圧力によってシャッタ部材30を押す力も等しくなる。したがって。オイルロックピース7がオイルロックケース6内に侵入して、オイルロックケース6内の圧力が上昇しても、オイルロックケース6内の圧力によってシャッタ部材30が軸方向移動することはない。したがって、シャッタ部材30が、排出通路33を遮断する前に、中空部22内に押し込まれてしまい、排出通路33が遮断不能となるのを防止できる。
【0068】
また、図示しないが、連通路30eは、通過する液体の流れに抵抗を与えるオリフィスとされてもよい。このようにすると、緩衝器Dの最収縮時に、排出通路33に設けられたオリフィスOや環状隙間34とは別に減衰力を発揮できるため、緩衝器Dの最圧縮時における付加減衰力のチューニングの自由度が向上する。
【0069】
なお、本実施の形態では、連通路30eは、オイルロックピース7がオイルロックケース6内に侵入した状態で、中空部22とオイルロックケース6内を連通しているが、シャッタ部材30を中空部22内に収容するだけであれば、ホルダ21に連通路30eを設けて中空部22cと圧側室R2を連通するようにしてもよい。
【0070】
また、本実施の形態では、シャッタ部材30は、ロッド2の中空部22内に軸方向移動自在に挿入されているが、シャッタ部材30は、ロッド2の先端外周に軸方向移動自在に装着されてもよい。
【0071】
ただし、このようにした場合、シャッタ部材30がオイルロックピース7に干渉しないように、シャッタ部材30とオイルロックピース7を離間させる必要が生じるので、ロッド2の軸方向長さが長くなってしまう。
【0072】
これに対して、本実施の形態のように、シャッタ部材30を中空部22内に軸方向移動自在に挿入した場合、シャッタ部材30は、緩衝器Dの最圧縮時に、中空部22内に収容されるので、オイルロックピース7に干渉する心配がない。よって、ロッド2の軸方向長さを長くする必要がない。
【0073】
また、本実施の形態では、中空部22とオイルロックケース6内は、連通路30eを介して常に連通しているが、図5に示すように、シャッタ部材30の側方から開口し、シャッタ部材30が中空部22内へ侵入するにしたがって、オイルロックケース6内に対向する開口面積が、ロッド2によって減少される連通路40を設けてもよい。
【0074】
この構成によると、緩衝器Dの収縮動作に伴って、徐々に連通路40の開口面積が小さくなるため、連通路40を通過する液体の流れに抵抗が与えられる。そのため、緩衝器Dの最収縮時に、排出通路33に設けられたオリフィスOや環状隙間34とは別に減衰力を発揮できる。これにより、緩衝器Dの最圧縮時における付加減衰力のチューニングの自由度が向上する。
【0075】
連通路40は、具体的には、図5に示すように、シャッタ部材30の筒部30aに形成されてシャッタ部材30の内外を連通する横孔40aと、筒部30aの外周に形成されて横孔40aに連通する環状溝40bと、筒部30aの外周の環状溝40bよりも底部30b側に軸方向に沿って形成されて環状溝40bと連通しそれぞれ長さの異なる複数の縦溝40c,40dとで構成される。
【0076】
このようにすると、シャッタ部材30が中空部22内へ侵入するにしたがって、縦溝40c,40dがホルダ21によって徐々に閉塞されて、連通路40の開口面積が減少する。また、縦溝40c,40dの数、深さや幅などを任意に設定すれば、さらに、緩衝器Dの最圧縮時における付加減衰力のチューニングの自由度が向上する。
【0077】
ただし、図5に示す連通路40の構成は、一例であって、シャッタ部材30が中空部22内へ侵入するにしたがって、オイルロックケース6内に対向する開口面積が、ロッド2によって減少されるようになっていれば図5のものには限定されない。
【0078】
例えば、連通路40は、シャッタ部材30の側方から開口し、軸方向に並べて設けられる複数のポートで構成されてもよい。このようにしても、緩衝器Dの収縮動作に伴って、各ポートがホルダ21によって徐々に閉塞されていくので、連通路40の開口面積がロッド2によって減少される。
【0079】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、シャッタ部材30は、オイルロックケース6の底部6bに対向する端部に球面を持つ形状とされ、排出通路33の開口部は、シャッタ部材30の端部に対向する位置に開口し、開口部は、シャッタ部材30側に向かうに従って開口径が大きくなるとともにシャッタ部材30の端部に当接可能なテーパ面33aを有している。
【0080】
この構成によると、シャッタ部材30の軸が、排出通路33の開口部に対して偏心したとしても、シャッタ部材30の球面部分がテーパ面33aに当接して、シャッタ部材30はテーパ面33aにならって開口部の中心に自動的に調心される。したがって、シャッタ部材30は、排出通路33を確実に遮断できるようになっている。
【0081】
ただし、シャッタ部材30のオイルロックケース6の底部6bに対向する端部の形状や、排出通路33の開口部の形状は、シャッタ部材30が排出通路33を遮断するのを妨げない限り、特に限定されない。
【0082】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、中空部22内のシャッタ部材30よりもロッド2の基端側にばね受け28が設けられており、コイルばねSが、有底筒状のシャッタ部材30の底部30bとばね受け28との間に介装されている。
【0083】
この構成によると、コイルばねSをシャッタ部材30の筒部30a内に挿入できるので、ロッド2の軸方向長さを長くすることなく、シャッタ部材30のストローク長を確保できる。
【0084】
ただし、コイルばねSは、ばね受け28とシャッタ部材30の筒部30aの反底部側端の間に介装されてもよい。この場合、コイルばねSをばね受け28とシャッタ部材30の底部30bの間に介装する場合に比べて、線径の大きいコイルばねSを選択できるため、シャッタ部材30を付勢する力を大きくできる。
【0085】
なお、本実施の形態では、コイルばねSの付勢力によって中空部22内に押し込まれたシャッタ部材30が元の位置に復帰するのを助成しているが、コイルばねSを省略して、シャッタ部材30を自身の自重のみによって元の位置に復帰するようにしてもよい。ただし、コイルばねSの付勢力によってシャッタ部材30が元の位置に戻るのを助成する場合、シャッタ部材30が速やかに元の位置に戻るので、シャッタ部材30の復帰遅れが生じない。
【0086】
なお、本実施の形態では、コイルばねSによってシャッタ部材30をオイルロックケース6の底部6b側へ向けて付勢しているが、コイルばねSに代えて他の弾性体、例えば、ゴムでシャッタ部材30を付勢してもよい。
【0087】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、中空部22内に固定され、コイルばねSの内方に挿入される棒状のばねガイド32を有している。この構成によると、コイルばねSの収縮時における胴曲がりを防止できる。ただし、コイルばねSが収縮時に胴曲がりしない程度の線径に設定されている場合には、ばねガイド32は、省略されてもよい。
【0088】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、ロッド2は、外周にピストン3が嵌合されるロッド本体20と、オイルロックピース7を保持するとともに、ロッド本体20の先端に螺子結合されてピストン3をロッド本体20とともに挟持するホルダ21とを有している。
【0089】
この構成によると、ホルダ21が、ピストン3をロッド本体20の外周に固定するピストンナットとして機能しており、ピストンナットを省略することができるため、部品点数を削減できる。なお、本実施の形態では、ロッド2は、ロッド本体20とホルダ21から構成されているが、一部材で構成されてもよいし、3以上の部品から構成されてもよい。
【0090】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。
【符号の説明】
【0091】
1・・・シリンダ、2・・・ロッド、3・・・ピストン、6・・・オイルロックケース、6b・・・底部、7・・・オイルロックピース、20・・・ロッド本体、21・・・ホルダ、22・・・中空部、28・・・ばね受け、30・・・シャッタ部材、30b・・・底部、30e,40・・・連通路、32・・・ばねガイド、33・・・排出通路、33a・・・テーパ面、D・・・緩衝器、L2・・・第2所定量(所定量)、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室、S・・・コイルばね
図1
図2
図3
図4
図5