(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】レーザリフトオフ装置およびレーザリフトオフ方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/57 20140101AFI20240522BHJP
H01L 33/32 20100101ALN20240522BHJP
【FI】
B23K26/57
H01L33/32
(21)【出願番号】P 2021048095
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】西田 光志
(72)【発明者】
【氏名】梶山 康一
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-283073(JP,A)
【文献】特開2020-175412(JP,A)
【文献】特開2010-075982(JP,A)
【文献】特開2020-203313(JP,A)
【文献】特開2012-181452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/57
H01L 33/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面に、所定の配列ピッチで行および列をなすようにマトリクス状に配置、固定されたチップ部品の群を備える成長用基板に対して、前記チップ部品の平面輪郭と同程度の大きさのビームスポットを有するレーザビームを、前記成長用基板に対して列方向に沿って相対移動させ、前記チップ部品と前記成長用基板との界面にレーザビームを逐次照射して、前記チップ部品を前記成長用基板から剥離可能にするレーザリフトオフ装置であって、
前記成長用基板に対向するように、前記チップ部品の前記列のそれぞれに対して、レーザビームを集光する集光レンズを1つずつ備えるように配置されてなる、前記集光レンズの1周期分集合体を含む集光レンズアレイを有し、
前記1周期分集合体における前記集光レンズ同士は、互いに干渉しない位置に分散して配置されている
ことを特徴とするレーザリフトオフ装置。
【請求項2】
前記1周期分集合体は、前記行方向に沿って複数の前記集光レンズが並んでなるレンズ行を、前記列方向に沿って複数行備え、
それぞれの前記レンズ行における前記集光レンズの前記行方向のピッチは、前記チップ部品の前記行方向のピッチの整数倍に設定され、
前記列方向に隣接する前記レンズ行同士の前記行方向のオフセットは、前記チップ部品の当該行方向のピッチ以上で、前記集光レンズの当該行方向のピッチ未満である、
請求項1に記載のレーザリフトオフ装置。
【請求項3】
前記集光レンズアレイは、
前記チップ部品の群の前記列方向の長さと、前記1周期分集合体の前記列方向の長さと、を加えた長さとなるように、
前記1周期分集合体に対して、
当該1周期分集合体における前記レンズ行の配置の周期性を保った状態で、前記列方向に沿って、
前記レンズ行を順次追加して形成されている、
請求項2に記載のレーザリフトオフ装置。
【請求項4】
前記集光レンズアレイの、前記列方向における、前記チップ部品の群に対する相対移動方向の最も下流側端部に位置する前記レンズ行と、
前記チップ部品の群の、前記列方向における、前記集光レンズアレイに対する相対移動方向の最も上流側端部に位置する前記チップ部品の前記行と、
が対向する位置に配置された状態から、レーザビームの照射を開始するように設定されている、
請求項3に記載のレーザリフトオフ装置。
【請求項5】
前記集光レンズアレイは、前記集光レンズの前記1周期分集合体のみからなり、
前記集光レンズアレイの、前記列方向における、前記チップ部品の群に対する相対移動方向の最も下流側端部に位置する前記集光レンズと、
前記チップ部品の群の、前記列方向における、前記集光レンズアレイに対する相対移動方向の最も下流側端部に位置する前記チップ部品の前記行と、
が対向する位置に配置された状態から、レーザビームの照射を開始するように設定されている、
請求項1または請求項2に記載のレーザリフトオフ装置。
【請求項6】
前記チップ部品の群以外の外側領域を遮光する遮光板を備える、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレーザリフトオフ装置。
【請求項7】
前記集光レンズアレイはマイクロレンズアレイであり、前記集光レンズはマイクロレンズである、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のレーザリフトオフ装置。
【請求項8】
前記成長用基板の表面に形成されたアライメントマークを検出する撮像部を備える、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレーザリフトオフ装置。
【請求項9】
前記成長用基板はサファイア基板であり、前記チップ部品は発光ダイオードである、
請求項1に記載のレーザリフトオフ装置。
【請求項10】
前記集光レンズアレイは、前記成長用基板の他方の表面側に配置される、
請求項1に記載のレーザリフトオフ装置。
【請求項11】
一方の表面に、所定の配列ピッチで行および列をなすようにマトリクス状に配置、固定されたチップ部品の群を備える成長用基板に対して、前記チップ部品の平面輪郭と同程度の大きさのビームスポットを有するレーザビームを、前記成長用基板に対して列方向に沿って相対移動させ、前記チップ部品と前記成長用基板との界面にレーザビームを逐次照射して、前記チップ部品を前記成長用基板から剥離可能にするレーザリフトオフ方法であって、
前記チップ部品の前記列のそれぞれに対してレーザビームを集光する集光レンズを1つずつ備え、前記集光レンズ同士は、互いに干渉しない位置に分散して配置されている集光レンズの1周期分集合体を含む集光レンズアレイを、前記チップ部品の群に対して前記列方向の一方の向きに所定の長さだけ相対移動させて、前記チップ部品の群の全ての前記チップ部品にレーザビームを逐次照射する、
ことを特徴とするレーザリフトオフ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザリフトオフ装置およびレーザリフトオフ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の表示デバイスとして、マイクロLEDディスプレイが期待されている。マイクロLEDディスプレイは、回路基板(バックプレーン)の表面に多数の微細なチップ状のLED(Light Emitting Diode)が実装されている。チップ状のLEDの製造方法は、以下の通りである。まず、サファイア基板(成長用基板)の表面に、窒化ガリウム(GaN)系半導体層を成長させた複合半導体層を用いて面方向に多数のLED領域を形成する。次に、これらLED領域を面方向で互いに分離してマトリクス状に配列された島状のLEDを形成する。その後、レーザリフトオフ装置を用いて、それぞれのLEDをサファイア基板から剥離することにより、個片化されたチップ状のLEDが製造される。
【0003】
レーザリフトオフ装置としては、特許文献1に開示されたものが知られている。このレーザリフトオフ装置は、1つのLEDの外形(平面輪郭)と同程度のスポットサイズのレーザビームを用いる。このように、レーザビームのスポットサイズを1つのLEDの外形のサイズに合わせる理由は、レーザビームを集光させることにより、サファイア基板からLEDを剥離するために必要な照射エネルギー強度を確保するためである。そして、このレーザリフトオフ装置では、マトリクス状に配列されたLEDに対して、ステップアンドリピート方式により、レーザビームを順次、照射して、LEDをサファイア基板から1つずつ剥離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のレーザリフトオフ装置では、光学系とともにレーザビームをジグザグ状に移動させるため、サファイア基板上のLEDの配列におけるレーザビームの折り返し点付近においての移動方向が逆向きに変化するため、光学系の移動に加減速が必要となる。例えば直径が300mm程度のサファイア基板に設けられた多数のLEDのレーザリフトオフを行う場合には、多数の折り返し点付近の光学系の移動速度の加減速に伴い、タクトタイムが増加してしまうという問題がある。特に、マイクロLEDディスプレイでは、多数のLEDを用いるため、LEDの製造におけるタクトタイムの増加は、製造コストの増加を招いてしまうという課題がある。この課題は、レーザビームを生成する光学系を位置固定し、サファイア基板をXYステージに配置してXYステージ側を移動させる装置構成においても同様に存在する。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、成長用基板の表面にマトリクス状をなすように一体に形成された複数のチップ部品を、成長用基板から剥離して個片化されたチップ部品にするまでのタクトタイムを減少させることができるレーザリフトオフ装置およびレーザリフトオフ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様は、一方の表面に、所定の配列ピッチで行および列をなすようにマトリクス状に配置、固定されたチップ部品の群を備える成長用基板に対して、前記チップ部品の平面輪郭と同程度の大きさのビームスポットを有するレーザビームを、前記成長用基板に対して列方向に沿って相対移動させ、前記チップ部品と前記成長用基板との界面にレーザビームを逐次照射して、前記チップ部品を前記成長用基板から剥離可能にするレーザリフトオフ装置であって、前記成長用基板に対向するように、前記チップ部品の前記列のそれぞれに対して、レーザビームを集光する集光レンズを1つずつ備えるように配置されてなる、前記集光レンズの1周期分集合体を、含む集光レンズアレイを有し、前記1周期分集合体における前記集光レンズ同士は、互いに干渉しない位置に分散して配置されていることを特徴とする。
【0008】
上記態様としては、前記1周期分集合体は、前記行方向に沿って複数の前記集光レンズが並んでなるレンズ行を、前記列方向に沿って複数行備え、それぞれの前記レンズ行における前記集光レンズの前記行方向のピッチは、前記チップ部品の当該行方向のピッチの整数倍に設定され、前記列方向に隣接する前記レンズ行同士の前記行方向のオフセットは、前記チップ部品の当該行方向のピッチ以上で、前記集光レンズの当該行方向のピッチ未満であることが好ましい。
【0009】
上記態様としては、前記集光レンズアレイは、前記チップ部品の群の前記列方向の長さと、前記1周期分集合体の前記列方向の長さと、を加えた長さとなるように、前記1周期分集合体に対して、当該1周期分集合体における前記レンズ行の配置の周期性を保った状態で、前記列方向に沿って、前記レンズ行を順次追加して形成されていることが好ましい。
【0010】
上記態様としては、前記集光レンズアレイの、前記列方向における、前記チップ部品の群に対する相対移動方向の最も下流側端部に位置する前記レンズ行と、前記チップ部品の群の、前記列方向における、前記集光レンズアレイに対する相対移動方向の最も上流側端部に位置する前記チップ部品の前記行と、が対向する位置に配置された状態から、レーザビームの照射を開始するように設定されていることが好ましい。
【0011】
上記態様としては、前記集光レンズアレイは、前記集光レンズの前記1周期分集合体のみからなり、前記集光レンズアレイの、前記列方向における、前記チップ部品の群に対する相対移動方向の最も下流側端部に位置する前記集光レンズと、前記チップ部品の群の、前記列方向における、前記集光レンズアレイに対する相対移動方向の最も下流側端部に位置する前記チップ部品の前記行と、が対向する位置に配置された状態から、レーザビームの照射を開始するように設定されていることが好ましい。
【0012】
上記態様としては、前記チップ部品の群以外の外側領域を遮光する遮光板を備えることが好ましい。
【0013】
上記態様としては、前記集光レンズアレイはマイクロレンズアレイであり、前記集光レンズはマイクロレンズであることが好ましい。
【0014】
上記態様としては、前記成長用基板の表面に形成されたアライメントマークを検出する撮像部を備えることが好ましい。
【0015】
上記態様としては、前記成長用基板はサファイア基板であり、前記チップ部品は発光ダイオードであることが好ましい。
【0016】
上記態様としては、前記集光レンズアレイは、前記成長用基板の他方の表面側に配置されることが好ましい。
【0017】
本発明の他の態様としては、一方の表面に、所定の配列ピッチで行および列をなすようにマトリクス状に配置、固定されたチップ部品の群を備える成長用基板に対して、前記チップ部品の平面輪郭と同程度の大きさのビームスポットを有するレーザビームを、前記成長用基板に対して列方向に沿って相対移動させ、前記チップ部品と前記成長用基板との界面にレーザビームを逐次照射して、前記チップ部品を前記成長用基板から剥離可能にするレーザリフトオフ方法であって、前記チップ部品の前記列のそれぞれに対してレーザビームを集光する集光レンズを1つずつ備え、前記集光レンズ同士は、互いに干渉しない位置に分散して配置されている集光レンズの1周期分集合体を含む集光レンズアレイを、前記チップ部品の群に対して前記列方向の一方の向きに所定の長さだけ相対移動させて、前記チップ部品の群の全ての前記チップ部品にレーザビームを逐次照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、成長用基板の表面にマトリクス状をなすように一体に形成された複数のチップ部品を、成長用基板から剥離して個片化されたチップ部品にするまでのタクトタイムを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置でレーザリフトオフ処理が施されるサファイア基板の平面説明図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置の要部断面説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置で用いるマイクロレンズアレイの平面説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて1回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて2回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて3回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図8】
図8は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて4回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図9】
図9は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて5回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて6回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図11】
図11は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて7回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図12】
図12は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて8回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図13】
図13は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて9回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図14】
図14は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて1回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図15】
図15は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて2回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図16】
図16は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて3回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図17】
図17は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて4回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図18】
図18は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて5回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図19】
図19は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて6回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図20】
図20は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて7回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図21】
図21は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて8回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図22】
図22は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて9回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図23】
図23は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いて10回目の照射を行う直前のLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【
図24】
図24は、本発明の第3の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いてレーザビームの照射を開始するときのLEDの群に対するマイクロレンズアレイの配置状態を示す平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置およびレーザリフトオフ方法について図面を用いて説明する。なお、図面は模式的なものであり、各部材の寸法や寸法の比率や数、形状などは現実のものと異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率や形状が異なる部分が含まれている。
【0021】
[第1の実施の形態]
(レーザリフトオフ装置の概略構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置1の概略構成を示している。このレーザリフトオフ装置1は、搬送ステージ2と、レーザ光源3と、ホモジナイザ4と、フォトマスク5と、集光レンズアレイとしてのマイクロレンズアレイ6と、遮光板8A,8Bと、撮像部9と、制御部10と、を備える。
【0022】
このレーザリフトオフ装置1の処理対象は、
図1および
図2に示すような、成長用基板としてのサファイア基板(サファイアウェハ)11である。
図2に示すように、このサファイア基板11の一方の表面には、例えば窒化ガリウム(GaN)系半導体層を用いた、チップ部品としての発光ダイオード(以下、LEDという)12の群13が作り込まれている。
図2に示すように、サファイア基板11に作り込まれたLED12の群は、行方向Rおよび列方向Cに所定の配列ピッチでマトリクス状に配置されている。それぞれのLED12は、サファイア基板11の面方向では互いに区画、分離するように島状に形成されている。
【0023】
図1に示すように、レーザリフトオフ装置1は、サファイア基板11の裏面(他方の表面)側から、このサファイア基板11とそれぞれのLED12との界面に対してレーザビームLBを集光して照射し、LED12をサファイア基板11から剥離可能とする。
【0024】
図1に示すように、搬送ステージ2は、上面にサファイア基板11を載せて、サファイア基板11を一定のスキャン方向Sへ一定速度で搬送する。本実施の形態では、スキャン方向SがLED12の列方向Cと同じに設定されている。なお、LED12の群13における行方向Rおよび列方向Cは、説明の便宜のために設定したものであり、これに限定されるものではない。
【0025】
図2に示すように、サファイア基板11には、アライメントマーク14が形成されている。このアライメントマーク14は、マイクロレンズアレイ6とサファイア基板11との位置合わせの基準となる。上記した撮像部9は、このアライメントマーク14を検出して制御部10にアライメント情報を出力するように設定されている。なお、本実施の形態では、このアライメントマーク14をLED12の群13における列方向Cの一方の端縁よりも外側に配置してる。なお、アライメントマーク14の配置位置としては、レーザリフトオフ処理を行う前に、サファイア基板11とマイクロレンズアレイ6との位置合わせが可能であれば、上記位置に限定されるものではなく、LED12の群13の側方に設けてもよい。また、LED12の群13の側方に列方向Cに沿って直線状のアライメントマークや、複数を列方向Cに沿って間欠的に形成したアライメントマークとしてもよい。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態では、サファイア基板11は、LED12の群13を形成した表面側を下向きにして搬送用支持プレート7の上に載せた状態で支持される。また、上記の遮光板8A,8Bは、サファイア基板11における、スキャン方向Sの下流側と上流側の領域を覆った状態でサファイア基板11と一緒にスキャン方向Sへ搬送されるように設定されている。これら遮光板8A,8Bは、上記した搬送用支持プレート7に一体的に設けてもよいし、サファイア基板11と同期して移動するように、搬送ステージ2側に設けてもよい。
図5に示すように、これら遮光板8A,8Bは、LED12の群13以外のスキャン方向Sの下流側と上流側の領域を覆って、サファイア基板11の周辺部や搬送ステージ2側の部材にレーザビームLBが照射されることを防止する。
【0027】
レーザ光源3としては、エキシマレーザを用いる。なお、レーザ光源3としては、YAGレーザなどの各種のレーザを用いることも可能である。ホモジナイザ4は、レーザ光源3から出射されたレーザビームLBを均一な光強度分布のレーザビームに変える機能を有する。なお、本実施の形態では、ホモジナイザ4で形成されたレーザビームLBのビームスポットは、サファイア基板11の上に形成されたLED12の群13を包含する径寸法になるように設定されている。
【0028】
フォトマスク5は、後述するマイクロレンズアレイ6におけるマイクロレンズ6Bのそれぞれに対向する位置に円形の光透過部5Aが形成されている。なお、
図1および
図3に示すように、光透過部5Aを通過したレーザビームLBのビームスポットの径寸法は、マイクロレンズ6Bの径寸法と同等となるように設定されている。
【0029】
(マイクロレンズアレイの構成)
図4は、マイクロレンズアレイ6を示す。このマイクロレンズアレイ6は、透明なアレイ基板6Aの一面に複数のマイクロレンズ6Bが、後述するような所定の配置に形成されている。それぞれのマイクロレンズ6Bを通過するレーザビームLBは、サファイア基板11上に形成されたLED12の外径と同程度のビームスポットに集光するように設定されている。さらに詳しくは、マイクロレンズ6Bを通過するレーザビームLBは、LED12とサファイア基板11との界面において、LED12の外径と同程度のビームスポットに集光するように設定されている。
【0030】
図5に示すように、マイクロレンズアレイ6は、サファイア基板11に対向するように配置されたときに、LED12の列のそれぞれに対して、レーザビームLBのビームスポットBSが集光するようマイクロレンズ6Bを1つずつ、備えるように配置した1周期分集合体15(
図4において一点鎖線で囲まれた部分)を備えている。1周期分集合体15において、マイクロレンズ6B同士は、平面的なレイアウトにおいて互いに干渉しない位置に分散して配置されている。
図4および
図5に示すように、マイクロレンズアレイ6における1周期分集合体15分を含めた列方向Cの長さは、LED12の群13の列方向Cの長さL13と、1周期分集合体15の列方向Cの長さL1と、を加えた長さに設定されている。
【0031】
加えて、1周期分集合体15においては、それぞれ、行方向Rに沿ってマイクロレンズ6Bが並んでなる第1レンズ行R1,第2レンズ行R2,第3レンズ行R3を備える。これら第1レンズ行R1,第2レンズ行R2,第3レンズ行R3は、列方向Cに沿って隣接している。
【0032】
図5は、レーザリフトオフ装置1を用いて、1回目のレーザビームLBの照射を行う前における、マイクロレンズアレイ6を構成するマイクロレンズ6Bと、サファイア基板11に形成されたLED12の群13と、遮光板8A,8Bと、の位置関係を示す。また、
図5において、LED12の群13の長さをL13で示す。また、図面説明の便宜から、LED12の群13を示す格子の交点は、LED12を表すものとする。
【0033】
以下、
図5を用いて、マイクロレンズ6Bの配置について説明する。それぞれの第1レンズ行R1,第2レンズ行R2,第3レンズ行R3におけるマイクロレンズ6Bの行方向RのピッチPLは、LED12の行方向RのピッチPCの整数倍(本実施の形態では3倍)に設定されている。列方向Cに隣接する第1レンズ行R1,第2レンズ行R2,第3レンズ行R3同士の行方向RのオフセットOSは、LED12の行方向RのピッチPC以上(本実施の形態では1ピッチと同一)で、マイクロレンズ6Bの行方向RのピッチPL未満(本実施の形態では3つピッチPC未満)に設定されている。
【0034】
図4に示すように、マイクロレンズアレイ6は、1周期分集合体15に対して、この1周期分集合体15における第1レンズ行R1,第2レンズ行R2,第3レンズ行R3の配置の周期性(規則性)を保った状態で列方向Cに沿って(相対移動方向と逆方向に向けて)、順次、第1レンズ行R1,第2レンズ行R2,第3レンズ行R3,第1レンズ行R1が加えられている。1周期分集合体15に対して加えるレンズ行の数は、マイクロレンズアレイ6の列方向Cの長さが、LED12の群13の列方向Cの長さL13と、1周期分集合体13の長さL1と、を加えた長さになるように、レンズ行を、周期性を保って順次追加して形成されている。本実施の形態の場合では、1周期分集合体15に追加するレンズ行が、上記したように、第1レンズ行R1,第2レンズ行R2,第3レンズ行R3,第1レンズ行R1の4つになる。
【0035】
(レーザリフトオフ装置の動作および作用)
まず、搬送用支持プレート7に、サファイア基板11を支持する。そして、サファイア基板11に対して位置固定される遮光板8A,8Bをセットする。その後、サファイア基板11のアライメントマーク14を撮像部9で検出して制御部10に検出データ信号を出力する。制御部10は、検出データ信号に基づいてサファイア基板11が初期位置に配置されるように、搬送ステージ2を駆動制御する。
【0036】
(1)1回目照射
サファイア基板11が初期位置に配置されたときに、サファイア基板11に対するマイクロレンズ6Bの配置位置は、
図5に示すとおりである。この状態は、レーザリフトオフ装置1における、サファイア基板11に対する1回目照射前の状態である。
【0037】
本実施の形態では、1回目照射前の状態において、第1レンズ行R1と、LED12の行12R1とが対向するように配置されている。因みに、第1レンズ行R1は、マイクロレンズアレイ6における列方向Cにおける、LED12の群13に対する相対移動方向(
図6に示すスキャン方向Sと逆の方向)の最も下流側端部(図中、マイクロレンズアレイ6の右側端部)に位置する。この第1レンズ行R1の列方向Cの位置は、位置Ps0に固定されている。
【0038】
LED12の行12R1は、LED12の群13の列方向Cにおける、マイクロレンズアレイ6に対する相対移動方向(
図6に示すスキャン方向S)の最も上流側端部(図中、LED12の群13の右側端部)に位置する。このとき、遮光板8Aのスキャン方向Sの下流側端部は、列方向Cにおける位置Ps1に位置するように設定されている。
【0039】
図5に示すように、この1回目照射前の状態では、遮光板8Aの上方に、第2レンズ行R2,第3レンズ行R3,第1レンズ行R1が配置される。このため、LED12の群13の輪郭よりも外側の領域のサファイア基板11、搬送用支持プレート、および搬送ステージ2などがレーザビームLBが照射されてダメージを受けないように設定されている。
【0040】
この1回目照射前のマイクロレンズ6Bの配置状態において、マイクロレンズアレイ6の全てのマイクロレンズ6BからレーザビームLBを対応するLED12に向けて一括照射する。なお、
図5において、マイクロレンズ6Bの中央に破線で描いた円は、ビームスポットBSを表している。このようなマイクロレンズアレイ6とLED12の群13との位置関係において、レーザビームLBの照射を行うと、第1レンズ行R1,第2レンズ行R2,第3レンズ行R3,第1レンズ行R1を構成する全てのマイクロレンズ6Bを介したレーザビームLBの照射により、
図6に示すような照射済み領域Dが形成される。この照射済み領域Dでは、LED12とサファイア基板11との界面が溶融されて、サファイア基板11からLED12を剥離し易い状態となる。
【0041】
(2)2回目照射
図6に示す状態は、レーザリフトオフ装置1における、サファイア基板11に対する2回目照射前の状態である。このマイクロレンズアレイ6の配置は、1回目照射前の状態に比べて、サファイア基板11がスキャン方向SにLED12の1行分だけ移動させた状態である。すなわち、遮光板8Aのスキャン方向Sの下流側端部は、LED12の1行分だけ列方向Cに移動して位置Ps2に達する。このとき、マイクロレンズアレイ6は、位置固定されているため、第1レンズ行R1の列方向Cの位置は、位置Ps0に固定されている。
【0042】
このようなマイクロレンズアレイ6とLED12の群13との位置関係において、レーザビームLBの照射を行うと、LED12の群13の上方に配置された、第2レンズ行R2,第3レンズ行R3,第1レンズ行R1,第2レンズ行R2を構成する全てのマイクロレンズ6Bを介したレーザビームLBの照射により、
図7に示すような照射済み領域Dが形成される。
【0043】
(3)3回目照射
図7に示す状態は、レーザリフトオフ装置1における、サファイア基板11に対する3回目照射前の状態である。このマイクロレンズアレイ6の配置は、2回目照射前の状態に比べて、サファイア基板11をスキャン方向SにLED12の1行分だけ移動させた状態である。遮光板8Aのスキャン方向Sの下流側端部は、列方向Cにおける位置Ps3に位置する。
【0044】
このようなマイクロレンズアレイ6とLED12の群13との位置関係において、レーザビームLBの照射を行うと、LED12の群13の上方に配置された、第2レンズ行R2,第3レンズ行R3,第1レンズ行R1,第2レンズ行R2を構成する全てのマイクロレンズ6Bを介したレーザビームLBの照射により、
図8に示すような照射済み領域Dが形成される。
【0045】
(4)4回目照射
図8に示す状態は、レーザリフトオフ装置1における、サファイア基板11に対する4回目照射前の状態である。このマイクロレンズアレイ6の配置は、3回目照射前の状態に比べて、サファイア基板11をスキャン方向SにLED12の1行分だけ移動させた状態である。遮光板8Aのスキャン方向Sの下流側端部は、列方向Cにおける位置Ps4に位置する。
【0046】
このようなマイクロレンズアレイ6とLED12の群13との位置関係において、レーザビームLBの照射を行うと、LED12の群13の上方に配置された、第2レンズ行R2,第3レンズ行R3,第1レンズ行R1,第2レンズ行R2を構成する全てのマイクロレンズ6Bを介したレーザビームLBの照射により、
図9に示すような照射済み領域Dが形成される。
【0047】
(5)5回目照射
図9に示す状態は、レーザリフトオフ装置1における、サファイア基板11に対する5回目照射前の状態である。このマイクロレンズアレイ6の配置は、4回目照射前の状態に比べて、サファイア基板11をスキャン方向SにLED12の1行分だけ移動させた状態である。遮光板8Aのスキャン方向Sの下流側端部は、列方向Cにおける位置Ps5に位置する。
【0048】
このようなマイクロレンズアレイ6とLED12の群13との位置関係において、レーザビームLBの照射を行うと、LED12の群13の上方に配置された、第3レンズ行R3,第1レンズ行R1,第2レンズ行R2,第3レンズ行R3を構成する全てのマイクロレンズ6Bを介したレーザビームLBの照射により、
図10に示すような照射済み領域Dが形成される。
【0049】
(6)6回目照射
図10に示す状態は、レーザリフトオフ装置1における、サファイア基板11に対する6回目照射前の状態である。このマイクロレンズアレイ6の配置は、5回目照射前の状態に比べて、サファイア基板11をスキャン方向SにLED12の1行分だけ移動させた状態である。遮光板8Aのスキャン方向Sの下流側端部は、列方向Cにおける位置Ps6に位置する。
【0050】
このようなマイクロレンズアレイ6とLED12の群13との位置関係において、レーザビームLBの照射を行うと、LED12の群13の上方に配置された、第3レンズ行R3,第1レンズ行R1,第2レンズ行R2,第3レンズ行R3を構成する全てのマイクロレンズ6Bを介したレーザビームLBの照射により、
図11に示すような照射済み領域Dが形成される。
【0051】
(7)7回目照射
図11に示す状態は、レーザリフトオフ装置1における、サファイア基板11に対する7回目照射前の状態である。このマイクロレンズアレイ6の配置は、6回目照射前の状態に比べて、サファイア基板11をスキャン方向SにLED12の1行分だけ移動させた状態である。遮光板8Aのスキャン方向Sの下流側端部は、列方向Cにおける位置Ps7に位置する。
【0052】
このようなマイクロレンズアレイ6とLED12の群13との位置関係において、レーザビームLBの照射を行うと、LED12の群13の上方に配置された、第3レンズ行R3,第1レンズ行R1,第2レンズ行R2,第3レンズ行R3を構成する全てのマイクロレンズ6Bを介したレーザビームLBの照射により、
図12に示すような照射済み領域Dが形成される。
【0053】
(8)8回目照射
図12に示す状態は、レーザリフトオフ装置1における、サファイア基板11に対する8回目照射前の状態である。このマイクロレンズアレイ6の配置は、7回目照射前の状態に比べて、サファイア基板11をスキャン方向SにLED12の1行分だけ移動させた状態である。遮光板8Aのスキャン方向Sの下流側端部は、列方向Cにおける位置Ps8に位置する。
【0054】
このようなマイクロレンズアレイ6とLED12の群13との位置関係において、レーザビームLBの照射を行うと、LED12の群13の上方に配置された、第1レンズ行R1,第2レンズ行R2,第3レンズ行R3,第1レンズ行R1を構成する全てのマイクロレンズ6Bを介したレーザビームLBの照射により、
図13に示すような照射済み領域Dが形成される。
【0055】
(9)9回目照射
図13に示す状態は、レーザリフトオフ装置1における、サファイア基板11に対する9回目照射前の状態である。このマイクロレンズアレイ6の配置は、8回目照射前の状態に比べて、サファイア基板11をスキャン方向SにLED12の1行分だけ移動させた状態である。遮光板8Aのスキャン方向Sの下流側端部は、列方向Cにおける位置Ps9に位置する。
【0056】
このようなマイクロレンズアレイ6とLED12の群13との位置関係において、レーザビームLBの照射を行うと、LED12の群13の上方に配置された、第1レンズ行R1,第2レンズ行R2,第3レンズ行R3,第1レンズ行R1を構成する全てのマイクロレンズ6Bを介したレーザビームLBの照射により、LED12の群13の全てのLED12が形成された領域を照射済み領域Dとすることができる。
【0057】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態に係るレーザリフトオフ装置1では、サファイア基板11が初期位置に配置されたときに、サファイア基板11に対するマイクロレンズ6Bの配置位置は、
図5に示すように、LED12の群13のうちの多くのLED12に対して一括でレーザビームLBの照射を効率的に行うことができる。このため、本実施の形態に係るレーザリフトオフ装置1では、少ないステップ数で、全てのLED12へレーザビームLBの照射を行うことができる。
【0058】
本実施の形態に係るレーザリフトオフ装置1では、上記構成のマイクロレンズアレイ6がLED12の群13の輪郭を包囲した状態でサファイア基板11スキャンを開始するため、サファイア基板11の移動距離を短くすることができ、装置のフットプリントを小さくすることができる。
【0059】
本実施の形態に係るレーザリフトオフ装置1では、1周期分集合体15におけるマイクロレンズ6B同士は、互いに干渉しない位置に分散して配置されているため、レンズの有効口径を大きくすることも可能となり、エネルギー効率を向上させる効果を奏する。
【0060】
本実施の形態に係るレーザリフトオフ装置1では、サファイア基板11を一方向のみに移動させるだけでよいため、タクトタイムを短くすることができる。
【0061】
本実施の形態では、スキャン方向Sが一方向のみであるため、上記した1回目から9回目照射の工程を短時間にすることができる。また、本実施の形態では、サファイア基板11を一方向のスキャン方向Sに移動させるだけでよいため、従来のようにレーザビームの照射に複数の折り返しを行う必要がない。
【0062】
(レーザリフトオフ方法)
本実施の形態に係るレーザリフトオフ方法では、まず、LED12の列のそれぞれに対してレーザビームLBを集光するマイクロレンズ6Bを1つずつ備え、マイクロレンズ6B同士は、互いに干渉しない位置に分散して配置されているマイクロレンズ6Bの1周期分集合体15を含むマイクロレンズアレイ6を用意する。
【0063】
次に、サファイア基板11の位置決めを行った後、マイクロレンズアレイ6を、LED12の群13に対して列方向Cの一方の向きに所定の長さだけ相対移動させて、LED12の群13の全てのLED12にレーザビームLBを逐次照射する。ここで、レーザビームLBは、LED12とサファイア基板11との界面に照射して、LED12をサファイア基板11から剥離させる。
【0064】
本実施の形態のレーザリフトオフ方法では、レーザビームLBを一方向のみに移動させるだけでよいため、タクトタイムを短くすることができる。
【0065】
[第2の実施の形態]
図14は、本発明の第2の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置で1回目照射を行う前の状態を示す平面説明図である。本実施の形態に係るレーザリフトオフ装置において、上述の第1の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置1と同一部分の部材には、同一の符号を用いて説明する。なお、本実施の形態では、マイクロレンズ6Bを破線で描いた矩形で示すが、上述の第1の実施の形態に係るマイクロレンズ6Bと同様の構成である。以下、本実施の形態において、上記第1の実施の形態と異なる構成について説明し、同一もしくは類似の構成の説明は省略する。
【0066】
本実施の形態においては、マイクロレンズアレイ6が、LED12の列のそれぞれに対して、レーザビームLBが集光して照射されるようマイクロレンズ6Bを1つずつ、備えるように配置した1周期分集合体15(
図14において一点鎖線で囲まれた部分)を3つ備えて構成されている。
【0067】
1周期分集合体15において、マイクロレンズ6B同士は、互いに干渉しない位置に分散して配置されている。
図14に示すように、3つ1周期分集合体15の列方向Cの長さは、LED12の群13の列方向Cの長さに、1つ分の1周期分集合体15の長さを加えた長さに設定されている。
【0068】
加えて、1周期分集合体15においては、それぞれ、行方向Rに沿ってマイクロレンズ6Bが並んでなる第1レンズ行R1、第2レンズ行R2、第3レンズ行R3、第4レンズ行R4、第5レンズ行R5、第6レンズ行R6、第7レンズ行R7、第8レンズ行R8、第9レンズ行R9、および第10レンズ行R10を備える。これら第1レンズ行R1から第10レンズ行R10は、列方向Cに沿って隣接している。
【0069】
図14は、1回目のレーザビームLBの照射を行う前における、マイクロレンズアレイ6を構成するマイクロレンズ6Bと、サファイア基板11に形成されたLED12の群13と、遮光板8A,8Bと、の位置関係を示す。それぞれの第1レンズ行R1から第10レンズ行R10におけるマイクロレンズ6Bの行方向RのピッチPLは、LED12の行方向RのピッチPCの整数倍(本実施の形態では10倍)に設定されている。列方向Cに隣接する第1レンズ行R1から第10レンズ行R10の互いに隣接する同士の行方向RのオフセットOSは、LED12の行方向RのピッチPC以上(本実施の形態では3ピッチ分)で、マイクロレンズ6Bの行方向RのピッチPL未満(本実施の形態ではピッチPCの10倍の長さ未満)に設定されている。
【0070】
図14に示すように、3つの1周期分集合体15が、この1周期分集合体15における第1レンズ行R1から第10レンズ行R10の配置の周期性を保った状態で列方向Cに沿って、連結された構成である。
図14に示すように、3の1周期分集合体15のうち、2つの1周期分集合体15が、LED12の群13の領域を覆うような大きさである。
【0071】
(1)1回目照射
サファイア基板11が初期位置に配置されたときに、サファイア基板11に対するマイクロレンズ6Bの配置位置は、
図14に示すとおりである。第1レンズ行R1の列方向Cの位置は、位置Ps0に固定されている。このとき、遮光板8Aのスキャン方向Sの下流側端部は、列方向Cにおける位置Ps1に位置するように設定されている。
【0072】
本実施の形態では、1回目照射前の状態において、第1レンズ行R1と、LED12の行12R1とが対向するように配置されている。因みに、第1レンズ行R1は、マイクロレンズアレイ6における列方向Cにおける、LED12の群13に対する相対移動方向(
図15に示すスキャン方向Sと逆の方向)の最も下流側端部(図中、マイクロレンズアレイ6との右側端部)に位置する。LED12の行12R1は、LED12の群13の列方向Cにおける、マイクロレンズアレイ6に対する相対移動方向(スキャン方向S)の最も上流側端部(図中、LED12の群13の右側端部)に位置する。
【0073】
図14に示すように、この1回目照射前の状態では、遮光板8Aの上方に、1周期分集合体15が配置される。このため、LED12の群13の輪郭よりも外側の領域のサファイア基板11、搬送用支持プレート、および搬送ステージ2などにレーザビームLBが照射されてダメージを受けないように設定されている。
【0074】
この1回目照射前のマイクロレンズ6Bの配置状態において、マイクロレンズアレイ6の全てのマイクロレンズ6BからレーザビームLBを対応するLED12に向けて照射する。このようなマイクロレンズアレイ6とLED12の群13との位置関係において、レーザビームLBの照射を行うと、2つ分の1周期分集合体15を構成するマイクロレンズ6Bを介したレーザビームLBの照射により、
図15に示すような照射済み領域Dが形成される。この照射済み領域Dでは、LED12とサファイア基板11との界面が溶融されて、サファイア基板11からLED12を剥離し易い状態となる。
【0075】
(2)2回目照射
図15に示す状態は、レーザリフトオフ装置1における、サファイア基板11に対する2回目照射前の状態である。このマイクロレンズアレイ6の配置は、1回目照射前の状態に比べて、サファイア基板11がスキャン方向SにLED12の1行分だけ移動させた状態である。このとき、遮光板8Aのスキャン方向Sの下流側端部は、列方向Cにおける位置Ps2に位置する。
【0076】
このようなマイクロレンズアレイ6とLED12の群13との位置関係において、レーザビームLBの照射を行うと、LED12の群13の上方に配置された、20行分のレンズ行を構成するマイクロレンズ6Bを介したレーザビームLBの照射により、
図16に示すような照射済み領域Dが形成される。
【0077】
(3)3から10回目照射
図16から
図23に示す状態は、レーザリフトオフ装置1における、サファイア基板11に対する3から10回目照射前の状態である。このマイクロレンズアレイ6の配置は、前回の照射の状態に比べて、サファイア基板11がスキャン方向SにLED12の1行分だけ移動させた状態であり、遮光板8Aのスキャン方向Sの下流側端部は、列方向Cにおける位置Ps3から位置Ps10まで順次移動する。
【0078】
本実施の形態においても、上記の第1の実施の形態と同様に、サファイア基板11を一定のスキャン方向Sへ移動させながら、レーザビームLBの照射を行うことにより、LED12の群13の全てのLED12が形成された領域を効率よく照射済み領域Dとすることができる。
【0079】
(第2の実施の形態の効果)
本実施の形態に係るレーザリフトオフ装置1においては、サファイア基板11が初期位置に配置されたときに、サファイア基板11に対するマイクロレンズ6Bの配置位置は、
図14に示すように、LED12の群13のうちの多くのLED12に対して一括でレーザビームLBの照射を効率的に行うことができる。このため、本実施の形態に係るレーザリフトオフ装置1では、少ないステップ数で、全てのLED12へレーザビームLBの照射を行うことができる。
【0080】
本実施の形態に係るレーザリフトオフ装置1では、サファイア基板11を一定のスキャン方向Sへのステップ数を少なくしたことにより、サファイア基板11の移動距離を短くすることができ、遮光板8A,8Bの列方向Cの長さも抑えることができる。このため、本実施の形態に係るレーザリフトオフ装置1では、装置のフットプリントを小さくすることができる。
【0081】
本実施の形態に係るレーザリフトオフ装置1では、1周期分集合体15におけるマイクロレンズ6B同士は、互いに干渉しない位置に分散して配置されているため、レンズの有効口径を大きくすることも可能となり、エネルギー効率を向上させる効果を奏する。
【0082】
本実施の形態に係るレーザリフトオフ装置1では、サファイア基板11を一方向のみに移動させるだけでよいため、タクトタイムを短くすることができる。
【0083】
[第3の実施の形態]
図24は、本発明の第3の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置を用いてレーザリフトオフを開始する状態を示す平面説明図である。本実施の形態においては、マイクロレンズアレイ6は、マイクロレンズ6Bの1周期分集合体15のみからなる。
【0084】
本実施の形態における1周期分集合体15は、LED12の列のそれぞれに対して、マイクロレンズ6Bを1つずつ備えるマイクロレンズ6Bの集合体である。このように配置されてなるマイクロレンズアレイ6の、列方向Cにおける、LED12の群13に対する相対移動方向(スキャン方向Sと逆方向)の最も下流側端部に位置する第1レンズ行R1と、LED12の群13の、列方向Cにおける、マイクロレンズアレイ6に対する相対移動方向(スキャン方向S)の最も下流側端部に位置するLED12の行12Rnと、が対向する位置に配置された状態から、レーザビームの照射を開始するように設定されている。
【0085】
本実施の形態では、サファイア基板11をスキャン方向Sに移動させ、LED12の群13の1行分のステップ毎に、逐次、全マイクロレンズ6BからレーザビームLBを照射させればよい。マイクロレンズアレイ6における第3レンズ行R3が、LED12の群13を通過し終わるときに全てのLED12へのレーザビームLBの照射が完了する。本実施の形態では、1周期分集合体15において、LED12の列のそれぞれに対して、マイクロレンズ6Bを1つずつ、備えるものであれば、マイクロレンズ6Bの配列に規則性がなくてもよい。
【0086】
(第3の実施の形態の効果)
本実施の形態では、1周期分集合体15のみでマイクロレンズアレイ6が構成されるため、マイクロレンズアレイ6を小型化することが可能となり、遮光板8A,8Bの小型化を図ることができる。
【0087】
本実施の形態では、マイクロレンズ6B同士が分散しているため、マイクロレンズ6B同士が干渉し合うということがない。このため、マイクロレンズ6Bの有効口径を大きくすることも可能となり、エネルギー効率を向上させる効果を奏する。
【0088】
[その他の実施の形態]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、これら開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0089】
例えば、上記の実施の形態に係るレーザリフトオフ装置では、サファイア基板11側をスキャン方向Sへ移動させたが、マイクロレンズアレイ6を含む光学系を移動させる構成としても勿論よい。
【0090】
上記の各実施の形態では、成長用基板としてサファイア基板11を用いた例を示したが、これに限定されない。また、上記の各実施の形態では、チップ部品としてLED12を適用したが、これに限定されない。
【0091】
上記の各実施の形態では、サファイア基板11のスキャン方向Sの下流側および上流側に、遮光板8A,8Bを配置したが、サファイア基板11のスキャン方向Sと直交する方向の両側にも遮光板を配置してもよい。
【符号の説明】
【0092】
BS ビームスポット
C 列方向
D 照射済み領域
LB レーザビーム
OS オフセット
PL ピッチ(マイクロレンズのレンズ行のピッチ)
PC ピッチ(チップ部品の行方向のピッチ)
R 行方向
R1 第1レンズ行
R2 第2レンズ行
R3 第3レンズ行
R4 第4レンズ行
R5 第5レンズ行
R6 第6レンズ行
R7 第7レンズ行
R8 第8レンズ行
R9 第9レンズ行
R10 第10レンズ行
S スキャン方向
1 レーザリフトオフ装置
2 搬送ステージ
3 レーザ光源
6 マイクロレンズアレイ(集光レンズアレイ)
6A アレイ基板
6B マイクロレンズ(集光レンズ)
8A,8B 遮光板
11 サファイア基板(成長用基板)
12 LED(チップ部品)
12R1 LEDの群の相対移動方向の最も上流側の行
12Rn LEDの群の相対移動方向の最も下流側の行
13 LEDの群
15 1周期分集合体