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特許7492498LCPベースのフレキシブル銅張積層板の製造方法およびその方法により製造されたLCPベースのフレキシブル銅張積層板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】LCPベースのフレキシブル銅張積層板の製造方法およびその方法により製造されたLCPベースのフレキシブル銅張積層板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/14 20060101AFI20240522BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240522BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20240522BHJP
   C23C 14/02 20060101ALI20240522BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20240522BHJP
   C23C 14/20 20060101ALI20240522BHJP
   C23C 28/02 20060101ALI20240522BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240522BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20240522BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H05K3/14 A
B32B15/08 K
B32B15/20
C23C14/02 A
C23C14/14 D
C23C14/20 A
C23C28/02
H05K1/03 610H
H05K3/10 Z
H05K3/18 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021501067
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 CN2019078909
(87)【国際公開番号】W WO2019184785
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-11-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】201810291943.2
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518155306
【氏名又は名称】武漢光谷創元電子有限公司
【氏名又は名称原語表記】RICHVIEW ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】10/F., Hi-Tech Plaza, No.18 Guandongyuan Rd., Wuhan East Lake High-Tech Development Zone, Wuhan, Hubei 430070, China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】楊念群
(72)【発明者】
【氏名】楊志剛
(72)【発明者】
【氏名】張志強
(72)【発明者】
【氏名】宋紅林
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】寺谷 大亮
【審判官】稲葉 崇
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105873352(CN,A)
【文献】特開2015-32605(JP,A)
【文献】国際公開第2012/093606(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105873371(CN,A)
【文献】特開2007-173818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/03
H05K 3/10- 3/26
H05K 3/38
B32B 1/00-43/00
C23C14/00-14/58
C23C24/00-30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LCPベースのフレキシブル銅張積層板を製造する方法であって、
LCP基材を提供し、前記LCP基材に対しホールイオンソース前処理を行うことにより、前記LCP基材の表面を洗浄することと、
イオン注入によって前記LCP基材内に第1の金属イオンを注入することにより、前記LCP基材の表面下方に所定の深さ範囲にイオン注入層を形成することと、
イオン注入後の前記LCP基材に対しプラズマ蒸着を行うことにより、前記イオン注入層上に第2の金属イオンを蒸着させてプラズマ蒸着層を形成することと、
マグネトロンスパッタリング蒸着を行なうことにより、前記プラズマ蒸着層上に銅イオンを蒸着させて、マグネトロンスパッタリング蒸着層を形成することと、
前記マグネトロンスパッタリング蒸着層上に銅厚化層をめっきすることにより、前記LCPベースのフレキシブル銅張積層板を得ることと、
を備え、
前記ホールイオンソースの作業ガスは酸素を含み、前記酸素の前記LCP基材の表面での化学反応によって洗浄過程に生ずる残留不純物を除去し、且つ前記作業ガスで処理する前に、真空加熱管で加熱するようにホールソースチャンバー内の温度を40~120℃に上げ、あるいは前記ホールイオンソースのパラメータを制御することにより前記LCP基材の温度を40~80℃という範囲に制御し、
前記LCPベースのフレキシブル銅張積層板の製造過程において、前記LCP基材の温度を常に200℃未満に制御することにより、前記LCPベースのフレキシブル銅張積層板における銅箔とLCP基材との剥離強度が0.9N/mmより大きい、ことを特徴とするLCPベースのフレキシブル銅張積層板を製造する方法。
【請求項2】
前記LCPベースのフレキシブル銅張積層板は、両面銅箔の厚さ許容差が4.3μm以下であり、片面銅箔の厚さ許容差が3.4μm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作業ガスで処理する前に、真空加熱管で加熱するようにホールソースチャンバー内の温度を40~120℃に上げる場合、
前記ホールソースチャンバー内の温度が40~70℃に上がるとき、処理電圧が1500~2000Vであり、処理電流が1.5~2Aであり、処理時間が20~30分間であるように設定され、
前記ホールソースチャンバー内の温度が70~100℃に上がるとき、処理電圧が1000~1500Vであり、処理電流が1~1.5Aであり、処理時間が10~20分間であるように設定され、
前記ホールソースチャンバー内の温度が100~120℃に上がるとき、処理電圧が500~1000Vであり、処理電流が0.04~1Aであり、処理時間が30秒~10分間であるように設定される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記作業ガスで処理する前に、前記ホールイオンソースのパラメータを制御することにより前記LCP基材の温度を40~80℃という範囲に制御する場合、以下の方式のいずれかで前記ホールイオンソースのパラメータを制御し、
処理電圧が1500~2000Vであり、処理電流が1.5~2Aであり、処理時間が30秒~20分間であるように設定されることと、
処理電圧が1000~1500Vであり、処理電流が1~1.5Aであり、処理時間が10秒~20分間であるように設定されることと、
処理電圧が500~1000Vであり、処理電流が0.04~1Aであり、処理時間が20秒~30分間であるように設定されることと、
のいずれか手段で、前記ホールイオンソースのパラメータを制御することにより、前記LCP基材の温度を40~80℃という範囲に制御することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ホールイオンソースの作業ガスとしては、アルゴンと酸素との混合ガスであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
イオン注入時に、イオン注入電圧が10~20kVであり、イオン注入電流が1~4mAであり、注入時間が40秒~3分間であるように設定され、
プラズマ蒸着時に、プラズマ蒸着は、45~70Aの蒸着電流、10~30eVの蒸着エネルギー、および40秒~3分間の蒸着時間を採用するように設定され、
マグネトロンスパッタリング蒸着時に、蒸着電流が2~10Aであり、蒸着電圧が200~500Vであり、蒸着時間が40秒~3分間であるように設定される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記LCPベースのフレキシブル銅張積層板の耐折り曲げ特性が少なくとも400回を超えるように、200~300℃の温度で前記LCPベースのフレキシブル銅張積層板に対し高温アニール処理を30秒~10分間行うことを更に含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記LCPベースのフレキシブル銅張積層板における銅箔とLCP基材との結合面は、表面粗さが0.3μm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1の方法により製造されたLCPベースのフレキシブル銅張積層板であって、
LCP基材と、
前記LCP基材の表面下方に前記LCP基材内にイオン注入されるイオン注入層と、
前記イオン注入層上にプラズマ蒸着されるプラズマ蒸着層と、
前記プラズマ蒸着層上にマグネトロンスパッタリング蒸着されるマグネトロンスパッタリング蒸着層と、
前記マグネトロンスパッタリング蒸着層上にめっきされる銅厚化層と、
を備え、
前記LCPベースのフレキシブル銅張積層板における銅箔とLCP基材との結合面は、表面粗さが0.3μm以下であり、
前記LCPベースのフレキシブル銅張積層板における銅箔とLCP基材との剥離強度が0.9N/mmより大きい、
ことを特徴とするLCPベースのフレキシブル銅張積層板。
【請求項10】
前記LCPベースのフレキシブル銅張積層板は、両面銅箔の厚さ許容差が4.3μm以下であり、片面銅箔の厚さ許容差が3.4μm以下である、ことを特徴とする請求項に記載のLCPベースのフレキシブル銅張積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路板の基板製造分野に関し、具体的には液晶ポリマー(LCP)ベースのフレキシブル銅張積層板の製造方法及びその製品に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の一例として、銅張積層板は、回路板(PCB)などの様々な製品の工業生産において広く応用されている。使用される基材によって、銅張積層板は、通常、折り曲げにくい剛性銅張積層板(CCL)と、折り曲げ可能なフレキシブル銅張積層板(FCCL)とに分けられる。
【0003】
ウェアラブル・ポータブルスマートデバイスの普及に伴い、スマートフォンやタブレットコンピュータなどのスマートデバイスは、人間の日常生活に不可欠なものとなっている。携帯電話などの移動通信デバイスは、短小軽薄、多機能、ローロス、優れた電気特性などの応用が急速に発展する場合、折り曲げ可能なフレキシブル銅張積層板への需要が高くなる。
【0004】
現在のところ、フレキシブル銅張積層板を製造する絶縁基材としては、多くの場合、ポリイミド(PI)材料を使用する。しかし、PI材料は、例えば、吸湿性が大きすぎるので、湿気条件下で、それによって製造されるフレキシブルプリント回路板(FPC)の信頼性が低下するようになり、高温で水蒸気の蒸発による、銅箔の酸化及び剥離強度の低下などの危害が含まれている。また、PI材料に基づくフレキシブルプリント回路板は、6GHz未満の周波数の高周波アンテナを作成する場合のみに適する。移動デバイスの高周波・高速化の発展につれて、使用頻度が高くなる。6GHzより大きい周波数を有する高周波アンテナに対し、PIの高誘電率(3.4)と高誘電損耗(0.02)のせいで、信号損失は比較的に大きい。そのため、液晶ポリマー(LCP)材料のような低誘電率や低誘電損耗のある樹脂材料を使用しなければならない。
【0005】
液晶ポリマー材料は熱可塑性樹脂であって、低吸湿性、低熱膨張係数、低誘電率及び高寸法安定性などの特性を有し、完全にPI材料の欠点を効果的に補うことができる。液晶ポリマー材料は、熱変形温度(HDT)によって、熱変形温度が270℃を超え主に高温環境で使用されるタイプと、熱変形温度が240~270°Cに介在するタイプと、熱変形温度が240°C未満であって加熱温度がわずかに低く、加工流動性が良好であるタイプとの3つのタイプに分けられる。
【0006】
液晶ポリマーベースのフレキシブル銅張積層板にとって、伝統的な銅張法は、主に液晶ポリマーの温度を熱変形温度付近に制御して、液晶ポリマーと銅箔とを直接にラミネートし、冷却固化後に液晶ポリマーと銅箔とを接着して、液晶ポリマー(LCP)ベースのフレキシブル銅張積層板を形成する方法である。ラミネート過程において、ラミネート温度及び圧力への制御は特に重要であり、フレキシブル銅張積層板の厚さの均一性及び剥離強度を決定する、と注意すべきである。温度や圧力が均一でないと、銅張積層板の厚さや剥離強度が不均一になり、さらにフレキシブル銅張積層板製品の用途に影響する。また、不均一な剥離強度を招く要因としては、銅箔の表面粗さも挙げられる。液晶ポリマーとラミネートする場合、銅箔との良好な結合を実現するために、銅箔の表面粗さを大きくする必要がある。ただし、銅箔の高表面粗さは剥離面が不均一になる原因であり、剥離強度に大きな変動を引き起こす。それに、銅箔と液晶ポリマーとの結合面の高粗さにより、高周波信号の送信時に表皮効果が発生しやすく、液晶ポリマーアンテナの電気的性能にも影響を与える。また、液晶ポリマーは高疎水性材料であって、表面に伝統的な化学的・物理的処理を施しても、銅箔等の金属との良好な結合を実現しがたい。
【0007】
従って、高周波アンテナ、特に6GHzより高い周波数を有する高周波アンテナについて、改良されたLCPベースのフレキシブル銅張積層板が必要となる。それによって製造されるLCPベースのフレキシブル銅張積層板は、厚さが均一であって、LCP基材と銅箔との結合が良好であるだけでなく、高周波信号の送信時に発生しやすい表皮効果を大幅に削減、または完全になくすこともできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来技術の問題に鑑みて、本発明は、新規なLCPベースのフレキシブル銅張積層板の製造方法を提出し、かつ、この方法を通じて非常に高い結合力及び超薄の銅箔厚さを有するLCPベースのフレキシブル銅張積層板を製造することを一つの目的としている。このようなLCPベースのフレキシブル銅張積層板は、主に高周波アンテナ、特に6GHzより高い周波数の高周波アンテナに使用される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的には、本発明は、LCP基材を提供し、LCP基材に対しホールイオンソース前処理を行うことにより、LCP基材の表面を洗浄することと、イオン注入によってLCP基材内に第1の金属イオンを注入することにより、LCP基材の表面下方に所定の深さ範囲にイオン注入層を形成することと、イオン注入後のLCP基材に対しプラズマ蒸着を行うことにより、イオン注入層上に第2の金属イオンを蒸着させてプラズマ蒸着層を形成することと、マグネトロンスパッタリング蒸着を行なうことにより、プラズマ蒸着層上に銅イオンを蒸着させて、マグネトロンスパッタリング蒸着層を形成することと、マグネトロンスパッタリング蒸着層上に銅厚化層をめっきすることにより、LCPベースのフレキシブル銅張積層板を得ることと、を備え、LCPベースのフレキシブル銅張積層板の製造過程において、LCP基材の温度を常に200℃未満に制御するLCPベースのフレキシブル銅張積層板を製造する方法を開示する。一つの実施形態において、LCPベースのフレキシブル銅張積層板における銅箔とLCP基材との剥離強度が0.5N/mm以上であり、好ましくは0.9N/mmよりも大きい。一つの実施形態において、LCPベースのフレキシブル銅張積層板は、両面銅箔の厚さ許容差が4.3μm以下であり、片面銅箔の厚さ許容差が3.4μm以下である。
【0010】
本発明によれば、ホールイオンソース前処理は、真空加熱管で加熱するように、ホールソースチャンバー内の温度を40~120℃に上げることを含む。一つの実施形態において、ホールソースチャンバー内の温度が40~70℃に上がるとき、処理電圧が1500~2000Vであり、処理電流が1.5~2Aであり、処理時間が20~30分間であるように設定される。別の実施形態において、ホールソースチャンバー内の温度が70~100℃に上がるとき、処理電圧が1000~1500Vであり、処理電流が1~1.5Aであり、処理時間が10~20分間であるように設定される。もう一つの実施形態において、ホールソースチャンバー内の温度が100~120℃に上がるとき、処理電圧が500~1000Vであり、処理電流が0.04~1Aであり、処理時間が30秒~10分間であるように設定される。代わりとして、ホールイオンソース前処理は、ホールイオンソースのパラメータを制御することによりLCP基材の温度を40~80℃という範囲に制御する。一つの実施形態において、処理電圧が1500~2000Vであり、処理電流が1.5~2Aであり、処理時間が30秒~20分間であるように設定され、LCP基材が40~80℃という範囲に制御される。別の実施形態において、処理電圧が1000~1500Vであり、処理電流が1~1.5Aであり、処理時間が10秒~20分間であるように設定され、LCP基材が40~80℃という範囲に制御される。もう一つの実施形態において、処理電圧が500~1000Vであり、処理電流が0.04~1Aであり、処理時間が20秒~30分間であるように設定され、LCP基材が40~80℃という範囲に制御される。
【0011】
本発明の一方の面によれば、ホールイオンソースの作業ガスとしては、アルゴン、窒素、水素、酸素、二酸化炭素、およびそれらの組み合わせからなる混合ガスが挙げられる。好ましくは、ホールイオンソースの作業ガスは、LCP基材の表面における化学反応を通して洗浄過程に生ずる残留不純物を除去するための酸素を含む。
【0012】
本発明の他方の面によれば、イオン注入時に、イオン注入電圧が10~20kVであり、イオン注入電流が1~4mAであり、注入時間が40秒~3分間であるように設定される。一つの実施形態において、第1の金属イオンは、銅、鉄、クロム、ニッケル、モリブデン、マンガン、チタン、およびそれらの組み合わせからなる合金の1つまたは複数から構成される。プラズマ蒸着時に、プラズマ蒸着は、45~70Aの蒸着電流、10~30eVの蒸着エネルギー、および40秒~3分間の蒸着時間を採用するように設定される。一つの実施形態において、第2の金属イオンは、銅、鉄、クロム、ニッケル、モリブデン、マンガン、チタン、およびそれらの組み合わせからなる合金の1つまたは複数から構成される。マグネトロンスパッタリング蒸着時に、蒸着電流が2~10Aであり、蒸着電圧が200~500Vであり、蒸着時間が40秒~3分間であるように設定される。一つの実施形態によれば、本発明の方法は、LCPベースのフレキシブル銅張積層板の耐折り曲げ特性が少なくとも400回を超えるように、200~300℃の温度でLCPベースのフレキシブル銅張積層板に対し、高温アニール処理を30秒~10分間行うことを更に含む。
【0013】
本発明の他方の面によれば、LCP基材と、LCP基材の表面下方にLCP基材内にイオン注入されるイオン注入層と、イオン注入層上にプラズマ蒸着されるプラズマ蒸着層と、プラズマ蒸着層上にマグネトロンスパッタリング蒸着されるマグネトロンスパッタリング蒸着層と、マグネトロンスパッタリング蒸着層上にめっきされる銅厚化層と、を備えるLCPベースのフレキシブル銅張積層板は提供される。一つの実施形態において、本発明のLCPベースのフレキシブル銅張積層板における銅箔とLCP基材との結合面は、0.3μm以下の表面粗さを有し、LCPベースのフレキシブル銅張積層板における銅箔とLCP基材との剥離強度は0.5N/mm以上である。別の実施形態において、本発明のLCPベースのフレキシブル銅張積層板は、両面銅箔の厚さ許容差が4.3μm以下であり、片面銅箔の厚さ許容差が3.4μm以下である。
【0014】
上記の方法の実施形態に対する修正および改善は、本発明の範囲および精神内にあり、且つ本文にもさらに説明される。
【0015】
以下、図面を参照しつつ実例を組み合わせて本発明を具体的に説明すると、本発明の長所及び実現方式がより明らかになる。その中、図示する内容は本発明を一切制限しなく、ただ本発明への釈明に用いられるものである。図面は必ず一定の比例に描かれるとは限らなく、単なる概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一つの例示的な実施形態による、LCPベースのフレキシブル銅張積層板を製造する方法のフローチャートである。
図2図2は、本発明の一つの例示的な実施形態による、ホールイオンソースの概略構造図である。
図3図3は、図1の方法にて得られた片面LCPベースのフレキシブル銅張積層板の概略断面図である。
図4図4は、本発明の一つの実施形態による、両面LCPベースのフレキシブル銅張積層板の断面図を示す。
図5図5は、通常ラミネート法にて製造されるLCPベースのフレキシブル銅張積層板の結合面の拡大断面図を示す。
図6図6は、本発明の方法にて製造されるLCPベースのフレキシブル銅張積層板の結合面の拡大断面図を示す。
図7図7は、それぞれラミネート法および本発明の方法によって製造されるLCPベースのフレキシブル銅張積層板の剥離強度の比較図を示す。
図8図8は、本発明に従って製造される、熱処理後および未熱処理のLCPベースのフレキシブル銅張積層板の耐折り曲げ特性の比較図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
現在、本発明の実施形態を詳細に参照する。そのうちの一つ又は複数の実例が図面に示される。各実例は、本発明を制限せず、それを説明するように提供される。実際上、当業者は、本発明の範囲又は精神から逸脱しない場合に、本発明において様々な修正および変形を行うことができるとよく知っている。例えば、一つの実施形態の一部として図示または説明される特徴は、別の実施形態と併せて使用して、さらに別の実施形態を生み出すことができる。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等方案の範囲内に属するこれら修正および変形を含むことが望ましい。
【0018】
図1は、本発明の一つの例示的な実施形態による、イオン注入法を用いLCPベースのフレキシブル銅張積層板を製造する方法のフローチャートである。まず、ステップS11において、液晶ポリマー(LCP)材料からなる基材は提供される。本発明の一つの実施形態において、LCP絶縁基材は有機ポリマーフィルムの形態である。このステップには、通常、更にLCP基材を前処理する必要があるのは好ましい。前処理方法として、通常、表面洗浄処理は含まれる。たとえば、アルコールに浸したガーゼで基材の表面を拭いてそれに付着した汚れを取り除いたり、基材を洗浄液に入れて超音波で洗浄したりする。しかし、このような通常の洗浄方法は、銅張積層板基材、特にLCP基材に対し理想的な洗浄効果を達成することが困難である。本発明では、ホールイオンソースの洗浄方式でLCPフィルムに対する前処理を実現して、良好な表面最適化効果を得ることで、後続した蒸着や電気めっき等のプロセスに有利となる。
【0019】
一般的には、イオンソースは、中性原子または分子をイオン化し、そこからイオンビームを引き出す装置である。具体的には、ホールイオンソースは、真空環境下で放出された電子の電場と磁場における相互作用によって、真空室に充填されたガスをイオン化し、電場と磁場の作用下でイオンを放出させる。総体上、ホールイオンソースは順でカソード、ハウジング、アノード、ガスパイプ、及び磁場発生器からなる。
【0020】
図2に示すように、ハウジング内には、磁場発生器、アノードおよびカソードによってホールソースチャンバーは限定されている。ホールソースチャンバー内には、磁場発生器(例えば、磁石)により円錐磁場が生じ、その上部にはカソードフィラメント等の中和カソードが設けられている。作業ガスは、アノードの底部からガスパイプを通ってホールソースチャンバーに入り、放電に参与する。操作中、カソードフィラメントを加熱する後、熱電子を生成する。イオンソースのアノードに正の電位が印加される場合、電子は電界の作用下でアノードに向かって移動する。磁界の存在により、電子は磁力線の周りをらせん軌道で移動し、作業ガスの原子と衝突してそれをイオン化し、イオンを生成する。次に、イオンはホール電場の作用下で加速され、対応的なエネルギーが得られ、フィラメントのカソードから放出される熱電子の一部と共に、プラズマソースから放出され基材と作用して洗浄目的を達成する近接プラズマを形成する。
【0021】
通常、イオンソースの作業ガスとして、アルゴン、窒素、水素、酸素、二酸化炭素、およびそれらの組み合わせからなる混合ガスは挙げられる。研究によって、適切な操作条件では、酸素を作業ガスとして用いるとき、酸素プラズマが高分子と反応して化学的洗浄の作用を果すことで、LCPフィルムの表面における高分子を洗浄できることが発見された。そして、酸素プラズマは、更にLCP分子構造における炭素-酸素二重結合を破壊して、LCPフィルムの表面活性を提供し得る。このために、本発明の一つの実施形態において、ホールイオンソースの処理前、真空加熱管で加熱するように、ホールソースチャンバー内の温度を40℃~120℃に上げる。具体的には、一つの実施形態において、ホールソースチャンバー内の温度が40~70℃に上がる時、処理電圧が1500~2000Vであり、処理電流が1.5~2Vであり、処理時間が20~30分間であるように設定される。その結果、LCPフィルム表面における除染効果は良好である。同じく有効なLCPフィルム表面への除染効果を達成するために、一つの好ましい実施形態において、ホールソースチャンバー内の温度が70~100℃に上がるとき、処理電圧が1000~1500Vであり、処理電流が1~1.5Aであり、処理時間が10~20分間であるように設定される。別の好ましい実施形態において、ホールソースチャンバー内の温度が100~120℃に上がるとき、処理電圧が500~1000Vであり、処理電流が0.04~1Aであり、処理時間が30秒~10分間であるように設定される。代わりとして、酸素が作業ガスとして機能することと異なるように、一つの実施形態において、アルゴンを作業ガスとしてプラズマ洗浄を行なう。不活性ガスとして、アルゴンプラズマは高エネルギーを有して、LCPフィルム表面の高分子を除去し、LCP分子構造中の炭素-酸素二重結合を破壊できるが、これは物理的洗浄過程の1種に過ぎず、炭素のような不純物がLCPフィルム表面に付着して基材の剥離強度に影響すると言う問題が残る。これを鑑み、一つの好ましい実施形態において、本発明は酸素とアルゴンとの混合ガスでプラズマ洗浄を行なう。このように、アルゴンによってエネルギーを高めることができ、酸素の化学反応によって洗浄過程に生ずる残留不純物を除去することもできる。
【0022】
前述したホールイオンソース処理の前にホールソースチャンバーを40~120℃まで加熱することと異なるように、本発明の別の好ましい実施形態において、ホールイオンソースの処理中にLCP基材の温度を直接に制御する。研究によって、LCP基材の温度を40~80℃の範囲内に制御することにより、LCP基材への優れた除染効果及びLCP基材の活性増強効果を実現できることが発見された。具体的には、一つの好ましい実施形態において、処理電圧が1500~2000Vであり、処理電流が1.5~2Aであり、処理時間が30秒~20分間であるように設定することで、LCP基材を40~80℃という目標温度に制御することができる。LCP基材を目標温度に制御するために、別の好ましい実施形態において、処理電圧が1000~1500Vであり、処理電流が1~1.5Aであり、処理時間が10秒~20分間であるように設定される。また、処理電圧が500~1000Vであり、処理電流が0.04~1Aであり、処理時間が20秒~30分間であるように設定することで、LCP基材を40~80℃という目標温度に制御することもできる。
【0023】
研究した結果、本発明のホールイオンソース処理後に得られたLCPベースのフレキシブル銅張積層板について、その銅箔とLCP基材との剥離強度は、他の前処理方法、特に他のホールイオンソース処理による剥離強度よりも優れ、0.5N/mm以上に達しえ、好ましくは0.9N/mmよりも大きい。
【0024】
次に、ステップS12において、イオン注入によって第1の金属イオンをLCP基材内に注入することにより、LCP基材の表面下方に所定の深さ範囲にイオン注入層を形成する。必要に応じて、LCP基材の上面、下面又は両者の下方にイオン注入によって各自のイオン注入層を形成することがある。一つの実施形態において、イオン注入は以下の方法によって実現可能である。ターゲットとして導電材料を選択し、金属蒸気真空アークイオンソース(MEVVA)を利用して、真空環境下でアーク作用によりターゲットをイオン化し、金属イオンを生成する。その後、該イオンを高電圧電場下で加速させて、高エネルギー(例えば、5~1000keV、つまり、10keV、50keV、100keV、200keV、500keVなど)を得る。次に、高エネルギーの金属イオンは、非常に高い速度でLCP基材の絶縁表面に直接に衝突し、絶縁表面下方の所定の深さ範囲内(たとえば、1~100nm、つまり、5nm、10nm、20nm、50nmなど)に注入される。注入される金属イオンとLCP基材の材料分子との間に化学結合または格子間構造が形成され、ドープ構造が形成される。このように得られたイオン注入層は、外面(または上面と呼ばれる)がLCP基材の絶縁表層の外面と面一となり、内面(または下面と呼ばれる)が基材の絶縁表層の内部に深く入る。例えば、イオン注入層はLCP基材表面の下方、1~100nm(例えば、5~50nm)の深さに位置する。この際、基材の絶縁表層の外側部分は、イオン注入層の形成で、拡散バリア層の一部として構成される。
【0025】
イオン注入期間において、ターゲットのイオンは、非常に高い速度でLCP基材の内部に強制的に注入され、LCP基材との間にドープ構造を形成して、LCP基材の表面下方に多くの基礎杭を形成したことに相当する。基礎杭が存在し、かつ後続の得られる導体層(プラズマ蒸着層又は導体厚化層)が基礎杭に接続されるので、最終に製造されるLCP基板における導体層とLCP基材との間の結合力は比較的に高くなる。そして、イオン注入用金属イオンは通常ナノメートルをサイズ単位とし、イオン注入期間において均一に分布されており、LCP基材表面に対する入射角はあまり変わらない。従って、イオン注入層の表面は良好な均一性と緻密性を持ち、ピンホール現象が出現しにくいとは確保し得る。
【0026】
様々な金属、合金、導電酸化物、導電炭化物、導電有機物等の導電材料を、イオン注入用ターゲットとして使用することができるが、これらに限定されない。イオン注入は、銅、鉄、クロム、ニッケル、モリブデン、マンガン、チタン、およびそれらの組み合わせからなる合金のような、基材分子との結合力が強い金属または合金を使用して行われることが好ましい。また、イオン注入層は1つまたは複数の層を含み得る。
【0027】
また、イオン注入過程において、注入電流、注入電圧、注入時間等の様々な関連パラメータを制御することで、絶縁表層内部へのイオン注入層の深さ、つまり、イオン注入層の内面が基材表面の下方に位置する深さを調整することができる。一つの好ましい実施形態において、イオン注入電圧は10~20kVであり、イオン注入電流は1~4mAであり、注入時間は40秒~3分間である。
【0028】
図1に戻ると、ステップS12の後にステップS13を実行し、即ち、イオン注入後のLCP基材に対しプラズマ蒸着を行なうことで、イオン注入層上に第2の金属イオンを蒸着させてプラズマ蒸着層を形成する。ここで、第2の金属と第1の金属とは、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。上述したイオン注入方法と類似するように、プラズマ蒸着もイオン注入デバイスに行なわれ、導電材料又はターゲットのイオンがはるかに低いエネルギーを有するように、低い引出電圧を印加する。即ち、導電材料をターゲットとして、真空環境下でアーク作用によりターゲットをイオン化し、イオンを生成した後、該イオンを高電圧電場下で加速して、所定のエネルギー、例えば1~1000keVを得る。加速後の金属イオンがLCP基材の表面に飛来し、予めこの基材表面の下方に形成されたイオン注入層上に蒸着され、1~10000nmの厚さのプラズマ蒸着層を構成する。
【0029】
プラズマ蒸着中、イオン注入と同じまたは異なる導電材料をターゲットとして使用し得る。例えば、様々な金属、合金、導電酸化物、導電炭化物、導電性有機物などを使用することができるが、これらに限定されない。銅、鉄、クロム、ニッケル、モリブデン、マンガン、チタンおよびこれらの組み合わせからなる合金のような、イオン注入層との結合が良好な金属または合金を用いてプラズマ蒸着を行なうことが好ましい。そして、プラズマ蒸着層は1つまたは複数の層を含み得る。プラズマ注入の操作パラメータとは異なるように、本発明の好ましい実施形態において、プラズマ蒸着は45~70Aの蒸着電流、10~30eVの蒸着エネルギー、及び40秒~3分間の蒸着時間を使用する。
【0030】
プラズマ蒸着期間において、金属イオンは比較的に高い速度でLCP基材の表面に飛来し、予め該基材表面の下方に形成されたイオン注入層上に蒸着され、イオン注入層の材料との間に比較的に大きい結合力を果たすので、LCP基材の表面から脱落しにくい。その他、プラズマ蒸着用金属イオンは通常ナノメートルをサイズ単位とし、プラズマ蒸着期間において均一に分布され、かつ、LCP基材表面に対する入射角はあまり変わらない。従って、得られるプラズマ蒸着層の表面は良好な均一性と緻密性を有し、ピンホール現象が出現しにくいとは確保し得る。
【0031】
必要に応じて、一つの実施形態において、ステップS13にて形成されるプラズマ蒸着層の上に、マグネトロンスパッタリング蒸着を行なって、マグネトロンスパッタリング蒸着層を形成するステップS14を更に含むことがある。プラズマ蒸着とは異なるように、ステップS14では本発明の実施形態により、銅がターゲットとして使用され、蒸着電流が2~10Aであり、蒸着電圧が200~500Vであり、蒸着時間が40秒~3分間であるように設定することでマグネトロンスパッタリング蒸着を行なう。
【0032】
最後、一つの実施形態において、ステップS15に、銅厚化層をプラズマ蒸着層又はマグネトロンスパッタリング蒸着層上にめっきすることで、導電性を改善することを更に含む。電気メッキ法により銅厚化層を形成することは好ましい。化学めっき、真空蒸着めっき、スパッタリングなどの方法に比べて、電気めっき法は高速で低コストであり、かつ電気めっき可能な材料は、非常に広い範囲をカバーし、Cu、Ni、Sn、Ag及びそれらの合金等に用いられる。本発明の一つの実施形態において、LCP基材を電気めっきにより2~36μmに厚くして、LCPベースのフレキシブル銅張積層板を形成する。
【0033】
また、200~300℃の温度でLCPベースのフレキシブル銅張積層板に対し高温アニーリング処理を30秒~10分間行うことで、銅箔応力を排除し、銅箔の柔軟性を向上させて、LCPベースのフレキシブル銅張積層板の耐折り曲げ特性を高めることが好ましい。図8は、本発明に従って製造される、熱処理後および未熱処理のLCPベースのフレキシブル銅張積層板の耐折り曲げ特性の比較図を示す。図示するように、熱処理したLCPベースのフレキシブル銅張積層板は耐折り曲げ特性が少なくとも400回を超え、熱処理しないLCPベースのフレキシブル銅張積層板の耐折り曲げ特性よりも顕著に優れている。
【0034】
図3には、本発明の一つの実施形態により、本発明の方法にて製造される片面LCPベースのフレキシブル銅張積層板の概略断面図が示されている。図示するように、LCPベースのフレキシブル銅張積層板10は、LCPフィルムのようなLCP基材11と、LCP基材の表面12の下方にLCP基材11内にイオン注入されるイオン注入層13と、イオン注入層13上にプラズマ蒸着されるプラズマ蒸着層14と、プラズマ蒸着層14上にマグネトロンスパッタリング蒸着されるマグネトロンスパッタリング蒸着層24と、マグネトロンスパッタリング蒸着層24上にめっきされる銅厚化層15とを有する。片面LCPベースのフレキシブル銅張積層板の製造方法と類似するように、銅張積層板の両面に上記の方法を同時または続けて実行すると、両面LCPベースのフレキシブル銅張積層板を得ることができる。
【0035】
図4には、本発明の一つの実施形態による、両面LCPベースのフレキシブル銅張積層板の拡大断面図が示されている。図示するように、LCPベースのフレキシブル銅張積層板は、LCP基材の厚さが17.24~17.46μmという範囲内に保持される。テストした結果、本発明に従って製造されるLCPベースのフレキシブル銅張積層板は、銅箔とLCP基材との結合面が0.3μm以下の表面粗さ、及び0.5N/mm以上の剥離強度を達成できる。しかも、LCP基材は変形が非常に小さくて、基本的に安定した厚さを維持し、高い厚さの均一性を実現できる(例えば、両面銅箔のFCCL厚さの許容差は4.3μm以下であり、片面銅箔のFCCL厚さの許容差は3.4μm以下である)。これは、LCPベースのフレキシブル銅張積層板の製造過程に亘って、温度が200℃未満に維持しえ、かつ圧力作用がないからである。銅箔ラミネートがないため、銅箔とLCPフィルムとの接合面の表面粗さは、LCPフィルムの表面粗さと同等である。従って、本発明によるLCPベースのフレキシブル銅張積層板は、粗さを増大させることで剥離強度を高める必要がなく、それゆえ、高剥離強度を満足すると共に、比較的に低い粗さを有する。好ましくは、本発明によれば、製造過程におけるプロセスパラメータを制御することで、LCPベースのフレキシブル銅張積層板における銅箔とLCP基材との結合面は、0.3μm以下の表面粗さ、0.5N/mm以上、乃至0.9N/mmの剥離強度を達成し得る。
【0036】
参照を容易にするために、図5は、通常ラミネート法にて製造されるLCPベースのフレキシブル銅張積層板の結合面の拡大断面図を示す。図6は、本発明の方法にて製造されるLCPベースのフレキシブル銅張積層板の結合面の拡大断面図を示す。通常ラミネート法に比べて、本発明に従って製造されるLCPベースのフレキシブル銅張積層板は、LCP基材と銅箔との結合面が低い粗さを有するとは明らかなことである。その他、図7は、それぞれラミネート法および本発明の方法によって製造されるLCPベースのフレキシブル銅張積層板の剥離強度の比較図を示す。図中、横軸は銅箔とLCP基材とを剥離する時のLCPベースのフレキシブル銅張積層板の距離を表し、縦軸は剥離強度を表す。図中、合計で4本の剥離曲線は示されている。その中、上部の2本は、本発明に従って異なる製造条件下で製造されるLCPベースのフレキシブル銅張積層板の2つの異なる表面の剥離強度であり、両者は共に0.5N/mmよりも大きい。図面の下部にある2本の剥離曲線は、伝統的なラミネート法にて製造されるLCPベースのフレキシブル銅張積層板の2つの異なる表面の剥離強度を表す。比較して分かるように、伝統的なラミネート法にて製造されるLCPベースのフレキシブル銅張積層板の剥離強度は、本発明に従って製造されるLCPベースのフレキシブル銅張積層板の剥離強度よりも顕著に低い。
【0037】
更に、前述したように、図8には本発明に従って製造される、熱処理後および未熱処理のLCPベースのフレキシブル銅張積層板の耐折り曲げ特性の比較図が示されている。そのうち、熱処理したLCPベースのフレキシブル銅張積層板は耐折り曲げ特性が少なくとも400回を超え、熱処理しないLCPベースのフレキシブル銅張積層板の耐折り曲げ特性よりも顕著に優れている。
【0038】
本発明によるLCPベースのフレキシブル銅張積層板は、高い剥離強度(≧0.5N/mm)と良好な耐折り曲げ性を有するので、アンテナ回路の信頼性及び高い厚さ均一性(両面銅箔FCCLの厚さ許容差は4.3μm以下であり、片面銅箔の厚さ許容差は3.4μm以下である)が確保され、アンテナ性能の均一性が確保されるようになる。また、LCP基材と金属層との接合面は表面粗さが低くて、高周波送信時に信号損失が少ない。アンテナ回路の信頼性及びアンテナ性能の一致性、アンテナ導体層の表面粗さは全て高周波送信に肝要であるため、高周波アンテナの性能を評価するのに重要な指標となる。本発明のLCPベースのフレキシブル銅張積層板は、上記の面で、既存のLCPベースのフレキシブル銅張積層板よりも顕著に優れている。従って、本発明は、高周波アンテナ送信のために非常に有利な方案を提供する。
【0039】
この書面説明は、最適なモードを含む実例を利用して本発明を開示し、また、当業者に任意の装置又はシステムの製造及び使用、及び任意の結合方法の実行をカバーする本発明を実施させることが出来る。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって限定され、当業者によって考案された他の実例を含んでいてもいい。これら他の実例には、特許請求の範囲の書面用語とは異ならない構造素子があれば、またはこれら他の実例には、特許請求の範囲の書面用語とは実質的に異ならない同等の構造素子があれば、これらの実例は特許請求の範囲内に含まれると見なされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8