(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】コンタクタ
(51)【国際特許分類】
H01H 51/06 20060101AFI20240522BHJP
H01H 50/02 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01H51/06 J
H01H50/02 A
(21)【出願番号】P 2021505902
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 GB2019052157
(87)【国際公開番号】W WO2020025958
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-15
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】523455389
【氏名又は名称】ソリッド ステイト ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】マーク スティーブン デル ジュディチェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ハミルトン メリル
【審査官】荒木 崇志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-016907(JP,A)
【文献】特開2013-232340(JP,A)
【文献】特表2017-506813(JP,A)
【文献】米国特許第05903203(US,A)
【文献】実開平04-068334(JP,U)
【文献】中国実用新案第2342458(CN,Y)
【文献】特開昭62-274520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/666
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクタであって、
電気回路の第1導体に固定及び接続される第1接点部材と、
前記電気回路の第2導体にコネクタによって接続される第2接点部材であって、前記第1及び第2の接点部材が互いの接触から外れる開路位置と前記第1及び第2の接点部材が互いに接触する閉成位置との間で前記第2接点部材が移動する、該第2接点部材と、
前記第2接点部材に連結されるアクチュエータ組立体であって、前記アクチュエータ組立体の作動が前記第2接点部材の移動に転換させる、該アクチュエータ組立体と、
電磁コイル及び前記アクチュエータ組立体の少なくとも一部分を含む電磁装置であって、前記コイルが付勢されるとき、前記コイルが磁場を発生し、またこれにより前記アクチュエータ組立体が前記磁場の影響の下で移動させられ、この移動により前記第2接点部材を移動させる、該電磁装置と、及び
前記第1及び第2の接点部材、前記コネクタ、及び前記アクチュエータ組立体を内部に収納する密封可能なエンクロージャと、
を備え、また
前記コイルは前記エンクロージャの外部に存在し、
前記エンクロージャは、互いに反対側にある第1端部及び第2端部と、前記第1端部と前記第2端部との間に延在する長手方向軸線と、を有しており、
前記第2接点部材は、前記開路位置と前記閉成位置との間を前記長手方向軸線に沿って移動するものであり、
前記第1接点部材と前記第2接点部材とは、前記長手方向軸線に沿って互いに離間しており、
前記アクチュエータ組立体は、前記エンクロージャ内において移動可能であり、また磁性素子を有するピストンを備えており、
前記ピストンは、前記第2接点部材に連結されており、
前記磁性素子は、前記コイルと磁気連通するとともに、前記ピストンによって前記第2接点部材から離間して
おり、
前記第1導体及び前記第1接点部材は前記エンクロージャの前記第1端部に位置付けられ、また前記第2導体及び前記コネクタの少なくとも一部分は前記エンクロージャの前記第2端部に位置付けられた、コンタクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコンタクタにおいて、前記アクチュエータ組立体は、前記電磁コイルによって非接触で作動する、コンタクタ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のコンタクタにおいて、前記コネクタは、変形可能な導体である、コンタクタ。
【請求項4】
請求項3記載のコンタクタにおいて、前記コネクタは、前記第2接点部材が前記エンクロージャ内で移動する際に変形するよう構成される、コンタクタ。
【請求項5】
請求項3又は4記載のコンタクタにおいて、前記コネクタは可撓性である、コンタクタ。
【請求項6】
請求項5記載のコンタクタにおいて、前記コネクタは、可撓性束状構造、可撓性編組、又はばねのうち任意な1つである、コンタクタ。
【請求項7】
請求項3~6のうちいずれか1項記載のコンタクタにおいて、前記コネクタは、導電性材料を積層することによって形成される、コンタクタ。
【請求項8】
請求項3~7のうちいずれか1項記載のコンタクタにおいて、前記コネクタは、可逆的に変形可能である、コンタクタ。
【請求項9】
請求項1~8のうちいずれか1項記載のコンタクタにおいて、前記第2接点部材は、単一点接触コンタクタである、コンタクタ。
【請求項10】
請求項1~9のうちいずれか1項記載のコンタクタにおいて、前記エンクロージャは単一チャンバを画定し、また前記第1及び第2接点部材、前記コネクタ、及び前記アクチュエータ組立体は、前記単一チャンバ内に包囲される、コンタクタ。
【請求項11】
請求項10記載のコンタクタにおいて、前記第1及び第2接点部材、前記コネクタ、及び前記アクチュエータ組立体は、前記単一チャンバ内に完全に閉じ込められる、コンタクタ。
【請求項12】
請求項1~
11のうちいずれか1項記載のコンタクタにおいて、前記第2接点部材は、前記第1接点部材の近位側における第1端部と、前記第1接点部材の遠位側における第2端部を有し、また前記コネクタは、前記第2接点部材の前記第1端部から離間する場所で前記第2接点部材に取り付けられる、コンタクタ。
【請求項13】
請求項1~
12のうちいずれか1項記載のコンタクタにおいて、前記コンタクタは、信号回路を有する補助接点機構を備え、前記補助接点機構は、アクチュエータ組立体によって作動し、この作動の際に前記電気回路の状態を示す外部信号を作動させるよう構成される、コンタクタ。
【請求項14】
請求項
13記載のコンタクタにおいて、前記補助接点機構は、
前記エンクロージャ内に位置付けられ、かつ前記アクチュエータ組立体に接続され、前記アクチュエータ組立体の移動の際に移動可能な補助接点部材と、及び
補助電極と
を有し、
前記アクチュエータ組立体の前記エンクロージャ内での移動は、前記補助接点部材及び前記補助電極が互いの接触から外れ、前記信号回路に何らの電流を発生しない離脱位置と、前記補助接点部材及び前記補助電極が互いに接触して、前記信号回路に電流を発生する係合位置との間で前記補助接点部材を移動させ、前記補助接点機構は、前記信号回路における電流の有無に基づいて、前記電気回路の状態を示す外部信号を作動させるよう構成された信号発生コンポーネントを有する、コンタクタ。
【請求項15】
請求項1~
14のうちいずれか1項記載のコンタクタにおいて、前記ピストンは、前記エンクロージャの長手方向軸線に沿って前記エンクロージャ内で移動可能である、コンタクタ。
【請求項16】
請求項1~
15のうちいずれか1項記載のコンタクタにおいて、前記第1接点部材は、前記第1及び第2の接点部材が接触状態にあるとき、発生した熱を放散できるヒートシンクをなすよう構成されており、
前記ヒートシンクは、前記第1接点部材の導電性延長部によって設けられ、前記導電性延長部は、前記エンクロージャ内で前記第1接点部材及び前記第2接点部材から離れる方向に延在する、コンタクタ。
【請求項17】
請求項
16記載のコンタクタにおいて、前記導電性延長部は、前記エンクロージャの少なくとも一部分を内張りする、コンタクタ。
【請求項18】
請求項
17記載のコンタクタにおいて、前記導電性延長部は、前記エンクロージャの内壁の少なくとも一部分に補完し合う形状を有する、コンタクタ。
【請求項19】
請求項
16記載のコンタクタにおいて、前記ヒートシンクは、前記第1及び第2の接点部材が接触状態にあるとき、前記第2接点部材から離れる方向に熱を伝導するよう前記第1接点部材を前記第2接点部材よりも十分に大きく作成することによって設ける、コンタクタ。
【請求項20】
請求項1~
19のうちいずれか1項記載のコンタクタにおいて、前記エンクロージャは、前記第1導体に直接連結する、コンタクタ。
【請求項21】
請求項1~
20のうちいずれか1項記載のコンタクタにおいて、前記エンクロージャ内に規定及び制御された環境を与える、コンタクタ。
【請求項22】
請求項
21記載のコンタクタにおいて、前記エンクロージャは、真空状態の下、又は少なくとも1種類のガスで充填した状態の下にある、コンタクタ。
【請求項23】
請求項1~
22のうちいずれか1項記載のコンタクタにおいて、前記エンクロージャは、熱的及び電気的な伝導材料から形成する、コンタクタ。
【請求項24】
請求項1~
23のうちいずれか1項記載のコンタクタにおいて、前記エンクロージャは管状である、コンタクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路を閉成及び開路する電磁コンタクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁コンタクタは、限定しないが、電気回路を閉成及び開路するため限定しないが、電気自動車を含む多様な用途に使用される。例えば、特許文献1(国際公開第2008/033349号)又は特許文献2(韓国特許公開第2016-0031897号)に記載されたような代表的電磁コンタクタは、接触位置と遮断位置との間で移動可能なアクチュエータ、及び1対の固定電極を密封的に収容するケーシングを有する。一般的に、電極はケーシング内で互いに隣接するよう位置決めされ、アクチュエータは、接触位置で2つの固定電極を接続させて回路を閉成するクロスバーを有する。ばねは通常アクチュエータを開路位置に維持する。コンタクタは電磁コイルを収容し、コイルが付勢されるとき、アクチュエータをばねに打ち勝たせて変形させ、接触位置に移動させる。アクチュエータは、コイルが付勢状態に留まる限り接触位置に留まる。場合によって、磁気ラッチ機構を設け、アクチュエータが接触位置に留まるのを補助し、コイルが消費するエネルギーを減少する。回路を開路させるため、コイルを滅勢し、これによりばねを釈放してアクチュエータを遮断位置に移動させる。このような構成での問題は、電極が例えば、経時的摩耗により又は応力に起因した誤整列を生じて、クロスバーが適正に電極に接触するのを阻止し、またさらに、電弧発生を生ぜしめることである。さらにまた、2つの電極に対する接触位置へのクロスバー強制は、応力を生ぜしめ、またケーシング内における密封シールを損なうおそれがある。特許文献3(米国特許第2,278,971号)は、ケーシングの同一側に位置付けられた固定電極を接続するため、クロスバーの代わりに軸線方向に移動可能なロッドをアクチュエータが有する他の構成を開示している。この軸線方向に移動可能なロッドは、第1電極に対して接触状態になる及び接触から外れるよう移動可能であり、また第2電極に対しては導電性ばね及び固定ブラケット状導体によって恒久的に接続されている。電気経路は、ロッドが軸線方向に移動して第1電極に接触するとき、2つの電極間に確立される。これは、可動ロッドがケーシングの外部に突出するという事実と結びついて、このような構成を面倒で複雑なものにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2008/033349号パンフレット
【文献】韓国特許公開第2016-0031897号明細書
【文献】米国特許第2,278,971号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した観点から、本発明の目的は、上述した欠点を軽減及び緩和することにあり、またさらに、部品点数、製品重量及び全体的な包絡体積を減少させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、コンタクタであって、電気回路の第1導体に固定及び接続される第1接点部材と、前記電気回路の第2導体にコネクタによって接続される第2接点部材であって、前記第1及び第2の接点部材が互いの接触から外れる開路位置と前記第1及び第2の接点部材が互いに接触する閉成位置との間で前記第2接点部材が移動する、該第2接点部材と、前記第2接点部材に連結されるアクチュエータ組立体であって、前記アクチュエータ組立体の作動が前記第2接点部材の移動に転換させる、該アクチュエータ組立体と、電磁コイル及び前記前記アクチュエータ組立体の少なくとも一部分を含む電磁装置であって、前記コイルが付勢されるとき、前記コイルが磁場を発生し、またこれにより前記アクチュエータ組立体が前記磁場の影響の下で移動させられ、この移動により前記第2接点部材を移動させる、該電磁装置と、及び前記第1及び第2の接点部材、前記コネクタ、及び前記アクチュエータ組立体を内部に収納する密封可能なエンクロージャと、を備えるコンタクタを提供する。
【0006】
一構成において、前記コイルは前記エンクロージャの外部に存在する。
【0007】
一構成において、前記アクチュエータ組立体は、前記電磁コイルによって非接触で、すなわち、前記電磁コイルと前記アクチュエータ組立体との間に機械的リンク機構を設ける必要なしに作動する。この実施形態において、コイルが付勢されるとき、コイルは磁場を発生し、またアクチュエータ組立体は単に磁場の影響の下で移動させられる。
【0008】
好適には、前記コネクタは変形可能な導体とする。好適には、前記コネクタは、前記第2接点部材が前記エンクロージャ内で移動する際に変形するよう構成されるものとする。前記コネクタは、限定しないが、束状構造、編組、ワイヤ、ケーブル又はばねを含む可撓性コネクタとすることができる。前記コネクタは、さらに、導電性ラミネーションによって形成することもできる。前記コネクタは、可逆的に変形可能なものとすることができる。前記コネクタは、弾性変形可能なもの、例えば、ばねとすることができる。
【0009】
好適には、前記第2接点部材は単一点接触コンタクタとする。
好適には、前記エンクロージャは単一チャンバを画定し、また前記第1及び第2接点部材、前記コネクタ、及び前記アクチュエータ組立体は、前記単一チャンバ内に包囲されるものとする。一実施形態において、前記第1及び第2接点部材、前記コネクタ、及び前記アクチュエータ組立体は、前記単一チャンバ内に完全に閉じ込められ、これにより前記第1及び第2接点部材、前記コネクタ、及び前記アクチュエータ組立体のいかなる部分も前記エンクロージャの外部に突出しない。
【0010】
好適には、前記エンクロージャは互いに反対側の第1端部及び第2端部を有し、前記第1導体及び前記第1接点部材は前記エンクロージャの前記第1端部に位置付けられ、また前記第2導体及び前記コネクタの少なくとも一部分は前記エンクロージャの前記第2端部に位置付けられるものとする。好適には、前記第2接点部材は、前記第1端部と前記第2端部との間に延在する前記エンクロージャの長手方向軸線に沿って移動可能なものとする。
【0011】
好適には、前記第2接点部材は、前記第1接点部材の近位側における第1端部と、前記第1接点部材の遠位側における第2端部を有し、また前記コネクタは、前記第2接点部材の前記第1端部から離間する場所で前記第2接点部材に取り付けられる。
【0012】
前記コンタクタは、信号回路を有する補助接点機構を備え、前記補助接点機構は、アクチュエータ組立体によって作動し、この作動の際に前記電気回路の状態を示す外部信号を作動させるよう構成されるものとすることができる。
【0013】
一構成において、前記補助接点機構は、
前記エンクロージャ内に位置付けられ、かつ前記アクチュエータ組立体に接続され、前記アクチュエータ組立体の移動の際に移動可能な補助接点部材と、及び
補助電極と
を有し、
前記アクチュエータ組立体の前記エンクロージャ内での移動は、前記補助接点部材及び前記補助電極が互いの接触から外れ、前記信号回路に何らの電流を発生しない離脱位置と、前記補助接点部材及び前記補助電極が互いに接触して、前記信号回路に電流を発生する係合位置との間で前記補助接点部材を移動させ、前記補助接点機構は、前記信号回路における電流の有無に基づいて、前記電気回路の状態を示す外部信号を作動させるよう構成された信号発生コンポーネントを有する。
【0014】
好適には、前記アクチュエータ組立体は、前記エンクロージャ内において移動可能であり、また磁性素子を有するピストンを備え、前記ピストンは前記第2接点部材に連結し、また前記磁性素子は前記コイルと磁気連通する。前記ピストンは、好適には、前記エンクロージャの長手方向軸線に沿って前記エンクロージャ内で移動可能なものとする。
【0015】
好適には、前記第1接点部材は、前記第1及び第2の接点部材が接触状態にあるとき、発生した熱を放散できるヒートシンクをなすよう構成されるものとする。一構成において、前記ヒートシンクは、前記第1接点部材の導電性延長部によって設けることができる。前記導電性延長部は、前記エンクロージャ内で前記第1接点部材及び前記第2接点部材から離れる方向に延在するものとすることができる。前記導電性延長部は、前記エンクロージャの少なくとも一部分を内張りすることができる。前記導電性延長部は、前記エンクロージャの内壁の少なくとも一部分に補完し合う形状を有することができる。前記導電性延長部は、前記エンクロージャ内における前記第1及び第2接点部材、前記コネクタ、及び前記アクチュエータ組立体のための付加的内側ケーシングを形成することができる。ケーシング及び第1接点部材のこのような一体化は、個別ケーシング及び接点レイアウトを設ける従来技術では見られない改善された熱放散をもたらす。前記ヒートシンクは、前記第1及び第2の接点部材が接触状態にあるとき、前記第2接点部材から離れる方向に熱を伝導するよう前記第1接点部材を前記第2接点部材よりも大きく作成することによって設けることができる。このヒートシンクは、熱負荷を第1及び第2の接点部材からより効率的な熱放散をもたらす。
【0016】
好適には、前記エンクロージャは、前記第1導体に直接連結する。
【0017】
好適には、前記エンクロージャ内に規定及び制御された環境を与える。前記エンクロージャは、真空状態の下、又は少なくとも1種類のガス、例えば、限定しないが、不活性ガス、又はガスの混合気で充填した状態の下にあるものとすることができる。
【0018】
好適には、前記エンクロージャは、熱的及び電気的な伝導材料、限定しないが、例えば、金属から形成する。
【0019】
一構成において、前記エンクロージャは管状とすることができるが、本発明は特別なエンクロージャ形状に限定しない。エンクロージャは封止する、好適には、密封シールする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、回路を閉成及び開路するため単一の移動接点部材のみを必要とする。第1及び第2の接点部材間の接触ポイントは、第2接点部材の移動ライン上に存在するため、接点は、クロスバーを有する従来構成ほど摩耗しない。この結果として、電弧発生は減少する。作動接触面の数が4個から2個に減少するため、部品点数も減少し、また接点部材の材料及び質量も減少する。さらにまた、変形可能な導体を設けることに起因して、エンクロージャ、とくに、封止する界面は、変形可能な導体がないとしたら、作動過程中に伝達されるおそれがある荷重又は応力が加わらない。変形可能な導体は荷重又は応力がエンクロージャに伝達されるのを防止する。この結果として、エンクロージャのシールを損なうリスクが除去又は減少する。本発明の構成は、さらに、コンタクタの動作中の振動に起因するノイズを減少し、またクロスバーを有する従来構成に比べて安定性を向上させるのに役立つ。
【0021】
作動及び接続双方のための単一チャンバを設けることは、結果として、個別の作動チャンバ及び接続チャンバを有する従来技術の構成よりも少ない部品及び軽い重量を有するコンタクタとなる。部品点数の減少は、コンパクトなコンタクタ設計を促進し、また本発明コンタクタを製造するのに必要な材料の量を減少する。
【0022】
本発明のコンタクタは電気自動車又は電池蓄電の解決法での使用に好適であるが、本発明はこのような使用に何ら限定するものではない。
【0023】
総じて、本発明は、インライン接触、減少した部品点数、コンパクトなレイアウト、及び改善された熱放散により、コスト、重量、体積及びエネルギーの減少をもたらす。本発明のより簡単でより堅牢な設計は、回路の破壊点を減少し、かつ信頼性を向上する。
【0024】
本明細書で使用する用語「導体(conductor)」は、それ以外を明記しない限り、電気的導体であると理解すべきである。
【0025】
本発明は、以下に単なる例として本発明の実施形態を示す添付図面につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明コンタクタの互いに直交する一方の断面平面における概略的断面図である。
【
図2】本発明コンタクタの互いに直交する他方の断面平面における概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び2につき説明すると、本発明は、互いに反対側にある第1端部2a及び第2端部2bを有する、密封シール可能な管状エンクロージャ2を有するコンタクタ1を提供する。エンクロージャ2は、その内部に生ずる規定及び制御された環境を有する。特別な要件に基づいて、エンクロージャ2は、真空状態の下、又は例えば、限定しないが、不活性ガス若しくは混合ガスのような少なくとも1種類のガスで充填した状態の下にあるようにすることができる。エンクロージャ2は、金属のような、熱的及び電気的な伝導材料から形成する。コンタクタ1は第1接点部材3を有する。第1接点部材3は、電気回路の第1導体5に対して固定及び接続される。第1導体5及び第1接点部材3は、エンクロージャ2の第1端部2aに位置付けられる。コンタクタ1は、さらに、コネクタ11によって電気回路の第2導体9に接続される第2接点部材7を有する。第2導体9及びコネクタ11の少なくとも一部分はエンクロージャ2の第2端部2bに位置付ける。第2接点部材7は、第1接点部材3の近位側における第1端部7aと、第1接点部材3の遠位側における第2端部7bとを有し、またコネクタ11を第2接点部材7の第1端部7aから離れた位場所で第2接点部材7に取り付ける。
【0028】
第2接点部材7は、第1及び第2の接点部材3、7が互いの接触から外れる開路位置(
図1及び2に示すような)と、第1及び第2の接点部材3、7が互いに接触する閉成位置(図示せず)との間で移動可能である。第1及び第2の接点部材3、7間の接触は、好適には、単一の点接触である。
【0029】
コンタクタ1は、さらに、アクチュエータ組立体15を有する。アクチュエータ組立体15は第2の接点部材7に連結し、この連結は、アクチュエータ組立体15の作動が、以下により詳細に説明するように、第2の接点部材7の移動に転換するように行う。アクチュエータ組立体15は、第2接点部材3に連結し、かつエンクロージャ2の長手方向軸線Lに沿ってエンクロージャ2内において移動可能なピストン16を有する。
【0030】
コンタクタ1は、エンクロージャ2の外側に配置した電磁コイル17と、ピストン16に備え付け、かつコイル17と磁気連通する磁性素子21とを有する電磁装置を備える。コイル17が付勢されるとき、コイル17は磁場を発生し、またこれによりピストン16が磁場の影響の下で移動させられ、このことは、第2の接点部材7を閉成位置と開路位置との間で移動させる。ばね18は、通常ピストン16を第1接点部材3から離れるよう維持し、したがって、第2の接点部材7は開路位置になる。コイル17が付勢され、ピストン16が閉成位置に移動させられるとき、ピストン16はばね18に打ち勝ってばね18を変形させる。ピストン16は第2の接点部材7を閉成位置に移動させ、またコイル17が付勢状態に留まる限り第2の接点部材7を閉成位置に留まらせる。磁気ラッチスリーブ20を設け、第2の接点部材7が閉成位置に留まるのを補助し、またコイル17が消費するエネルギーを減少する。回路を開路させるため、コイル17を滅勢し、これによりばね18を釈放し、このばね18がピストン16を第1接点部材3から離れるよう移動させ、またひいては第2の接点部材7を開路位置にもたらす。第2の接点部材7の周りにおけるオーバートラベルばね22は、第1及び第2の接点部材3、7の制御された圧縮をもたらす。セラミックバリア24を第2接点部材7の周りに設ける。ここに記載した実施形態において、アクチュエータ組立体15は電磁コイル17によって非接触で作動し、すなわち、電磁コイル17とアクチュエータ組立体15との間に機械的リンク機構を設ける必要がない。コイル17を付勢するとき、コイル17は磁場を発生し、またアクチュエータ組立体15は単に磁場の影響の下で移動させられる。
【0031】
ここに説明した実施形態において、エンクロージャ2は単一のチャンバ23を画定し、また第1及び第2の接点部材3、7、コネクタ11,並びにアクチュエータ組立体15はチャンバ23内に完全に閉じ込められ、したがって、第1及び第2の接点部材3、7、コネクタ11,並びにアクチュエータ組立体15のいかなる部分も、コンタクタ1の使用中にエンクロージャ2の外側に突出しない。
【0032】
コネクタ11は、ここに説明した実施形態において、可逆的に変形可能な導体として設け、この導体はエンクロージャ2内における第2接点部材7の移動の際に変形する。コネクタ11は、限定しないが、束状構造、編組、ワイヤ、ケーブル又はばねを含む可撓性コネクタとすることができる。コネクタは、さらに、導電性ラミネーションによって形成することもできる。
【0033】
コンタクタ1は、信号回路(図示せず)を有する補助接点機構25を備える。この補助接点機構25は、アクチュエータ組立体15によって作動し、この作動の際にコンタクタ1の電気回路の状態を示す外部信号を作動させるよう構成される。この補助接点機構25は、エンクロージャ2内に位置付けられ、かつアクチュエータ組立体15に接続され、アクチュエータ組立体15の移動の際に移動可能な補助接点部材27と、補助電極29とを有する。アクチュエータ組立体15のエンクロージャ2内での移動は、補助接点部材27及び補助電極29が互いの接触から外れ、信号回路に何らの電流を発生しない離脱位置(図示せず)と、補助接点部材27及び補助電極29が互いに接触して、信号回路に電流を発生する係合位置(
図1及び2に示すような)との間で補助接点部材27を移動させる。補助接点機構は、信号回路における電流の有無に基づいて、コンタクタ1の電気回路の状態を示す外部信号を作動させるよう構成された信号発生コンポーネント(図示せず)を有する。このような信号を発生するための多数の選択肢があることは当業者には容易に分かるであろう。
【0034】
第1接点部材3は、第1及び第2の接点部材3、7が接触状態にあるとき、発生した熱を放散できるヒートシンクをなす。ここに説明した実施形態において、ヒートシンクは、第1接点部材3の導電性延長部31によって設けられる。この導電性延長部31は、エンクロージャ2内で第1接点部材3及び第2接点部材7から離れる方向に延在する。この導電性延長部31は、エンクロージャ2を内張りし、エンクロージャ2の内壁の少なくとも一部分に補完し合う形状を有する。導電性延長部31は、エンクロージャ2内で、第1及び第2の接点部材3、7、コネクタ11並びにアクチュエータ組立体15のための付加的内側ケーシングを形成する。図面には示さないが、ヒートシンクは、第1及び第2の接点部材3、7が接触状態にあるとき、第2接点部材7から離れる方向に熱を伝導するよう第1接点部材3を第2接点部材7よりも相当大きく作成することによっても設けることができる。より大きな第1接点部材3は、さらに、コンタクタ1内における第1及び第2の接点部材3、7の整列を容易にする。
【0035】
ここに説明した実施形態において、電気絶縁及び密封シールは、導体9、25に対してガラス-対-金属シール35を使用してコンタクタ1内の電気的コンポーネント間に設ける。しかし、電気絶縁及び密封シールを設けるための他の適当な解決法も考えられ、これらは当業者には明らかであろう。
【0036】
第1及び第2の接点部材3、7間での接触を生ずるエンクロージャ2の領域の周りに外部電弧ブローアウト磁石37を設けることができる。
【0037】
当業者には、特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく改変及び変更をなし得ることは明らかであろう。
【符号の説明】
【0038】
2 エンクロージャ
2a 第1端部(エンクロージャ)
2b 第2端部(エンクロージャ)
3 第1接点部材
5 第1導体
7 第2接点部材
7a 第1端部(第2接点部材)
7b 第2端部(第2接点部材)
9 第2導体
11 コネクタ
15 アクチュエータ組立体
16 ピストン
17 電磁コイル
18 ばね
21 磁性素子
22 オーバートラベルばね
23 チャンバ
24 セラミックバリア
25 補助接点機構
29 補助電極
31 導電性延長部
35 ガラス-対-金属シール
37 外部電弧ブローアウト磁石