(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】月経随伴性流体の除去
(51)【国際特許分類】
A61B 17/42 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
A61B17/42
(21)【出願番号】P 2021520596
(86)(22)【出願日】2019-10-07
(86)【国際出願番号】 IL2019051090
(87)【国際公開番号】W WO2020079677
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-07-26
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】521152460
【氏名又は名称】ペリーディグマ リサーチ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PERRYDIGMA RESEARCH LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】マモ, シェイ ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ソファー, ラン エス.
(72)【発明者】
【氏名】スターン-ペリー, ミカル
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108210152(CN,A)
【文献】国際公開第2012/137894(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0056963(US,A1)
【文献】米国特許第05782779(US,A)
【文献】特表2013-526949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/42
A61F 5/455
A61M 1/74
A61M 1/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮及び膣の流体を除去するためのシステムであって、
i)真空源に接続され、子宮頸部の近くの膣に挿入される吸引カップと;
ii)1Hzと15Hzとの間の周波数で前記真空源と前記カップとの接続及び切り離しを交互に行うことにより、1振動周期内の最小負圧と最大負圧との圧力差が5mbarと600mbarとの間である振動する真空を前記カップに供給する真空調節手段を有する非侵襲的な子宮頸部開口手段と;
を備える、システム。
【請求項2】
前記真空の振動は、方形波又はのこぎり波の形で繰り返される、請求項
1に記載の
システム。
【請求項3】
1つ又は複数の圧力センサ、を備える、請求項1
又は2に記載の
システム。
【請求項4】
前記カップは、医療グレードのエラストマーで作製されている、請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の
システム。
【請求項5】
前記カップは、前記流体を吸引しながら前記子宮頸部に密着するように構成される、請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の
システム。
【請求項6】
前記
真空源は、-150mbarゲージ圧と-750mbarゲージ圧との間の最大負圧及び10mbarゲージ圧と200mbarゲージ圧との間の最大正圧を提供する、請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、月経管理に関し、特に、月経中の女性の毎日の計画を簡素化するデバイスに関する。より具体的には、本発明は、タンポン、パッド又は合成ホルモンの必要性を減らし、月経分泌物のない予め定めた時間帯をユーザに提供するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
女性の月経周期は、子宮の内膜(子宮内膜)から膣を介した体液の分泌に関連している。月経出血の期間は通常2~7日の範囲である。月経分泌物の総量は通常20~120mlの範囲であり、血液が前記体液の約半分を構成し、組織の細片を含む水性塩が残りの半分を構成する。月経は通常13歳から50歳まで生じ、女性の人生の約半分をカバーする。平均的な月経周期が28日であることから、人々は自然に月の周期と星のつながりに注意を向けた。女性の出産に関連するこの現象は、女性が男性と同等の地位を獲得するのに苦労する一因となっている。歴史を通して実際に行われてきた月経管理には、水分を吸収する試み、特別な衣服の着用、汚れた物質の処分、洗浄、女性の分離が含まれ、また、現代において実際に行われている月経管理には、女性用衛生用品の使用又は合成ホルモンによる月経の抑制が含まれる。
【0003】
月経周期は、不便や不快感を引き起こすだけでなく、感情的な障害を伴うことも多く、場合によっては非常に深刻なこともある。更に、月経を管理するための既存の手段は、必ずしも問題を解決するとは限らず、時には深刻な合併症を引き起こすことさえある。例えば、タンポンの使用は毒素性ショック症候群を引き起こす可能性がある。合成ホルモンの使用は推奨されない場合があり、条件によっては禁忌となることさえある。更に、分泌の予期しないタイミング又は量の可能性が常にあり、それは恥ずかしくて不快な結果をもたらす可能性がある。西洋社会は、女性が平等な権利を享受し、平等な地位を獲得することを妨げる可能性のある障害を取り除くために多大な努力を払っている。従って、月経周期中の月経を管理して不便さを防ぐための新しい手段を提供する必要性が感じられる。
【0004】
単に吸収繊維を使用することのほかに、様々なデバイスが提案されており、膣からの分泌物を遮断しようとする人もいれば、膣内膨張部材を含む子宮頸部からの分泌物を遮断しようとする人もいる。様々な排出装置及び収集手段が報告されている。多くのデバイスは、かなり扱いにくいものでありながら、流体を受動的に転送又は収集するだけである。従って、本発明の目的は、既知のデバイスの欠点を回避するデバイスを提供することである。
【0005】
現代の女性は、病院、上級管理職、ハイパフォーマンススポーツ、さらには戦闘状態などを含め、最も要求の厳しい地位を占めているため、月経分泌物の流出がない時間を少なくとも数時間、できれば6時間以上確保して、作業以外のことを気にしなくてもよいようにする必要がある。膣から流体を吸引したり、子宮からの流れを促進したりする試みが行われているようである。本発明の目的は、月経分泌物の流出の速度、持続時間及びタイミングを調整することを可能にするデバイスを提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、月経期間中の女性が自分の活動をよりよく計画し、不便でやっかいな時間を回避することを可能にするシステムを提供することである。
【0007】
本発明の更なる目的は、タンポン及びパッドの使用量を減らすことを可能にするシステムを提供することである。
【0008】
本発明の更に他の目的は、月経分泌物の流出を予め定めた時間に確実に集めることができるシステムを提供することである。
【0009】
本発明は、月経分泌物の流出のない予め定めた時間帯を確保するシステムを提供することを目的としている。また、本発明は、予め定めた時間帯に月経分泌物の流出を集めるためのデバイスを提供し、月経分泌物の流出のない時間帯をユーザに提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的及び利点は、説明が進むにつれて明らかにされるであろう。
【発明の概要】
【0011】
[発明の概要]
本発明は、子宮の流体を吸引するためのデバイスを提供するものであり、i)真空ポンプと;ii)第1及び第2の端部を有する吸引チューブであって、前記第1の端部を介して前記ポンプに接続され、前記チューブの少なくとも一部が直線的な軸を画定する当該吸引チューブと;iii)前記第2の端部を介して前記チューブに接続され、前記チューブよりも幅が広く、前記流体を吸引するための開口部を備える吸引カップであって、カップ及びチューブが人の膣に挿入されるように構成されている当該吸引カップと;iv)非侵襲的な子宮頸部開口手段と;v)前記流体を保持するために前記ポンプと前記吸引チューブとの間に接続された流体トラップと;vi)前記ポンプ及び前記非侵襲的な子宮頸部開口手段の性能を制御し、デバイスの動作レジメンを規定するソフトウェアを格納するためのプロセッサと;を備える。前記子宮頸部開口手段及び前記プロセッサは、好ましくは、急激な真空の印加を提供し、それによって膣及び子宮の流体を吸引する真空調節手段を備え、この調節手段は、好ましくは、例えば1Hzと15Hzとの間又は4Hzと15Hzとの間などの1Hzと25Hzとの間の周波数で前記ポンプと前記カップとの接続及び切り離しを交互に行うことによって真空の振動を生成する。真空調節手段は、例えば、搾乳ポンプと同様のバルブ若しくはダイアフラムポンプ、又は、他の適切な手段を備えてもよい。前記子宮頸部開口手段は、本発明の好ましい実施形態において、前記チューブ及び前記カップの前記軸に沿った両方向への最大40mm各方向への最大20mmの並進的な移動を可能にする装置であってエンジンと前記吸引チューブを前記エンジンに接続するための取り付け部材とを含む当該装置を備え、前記カップは医療グレードのエラストマーで作製されている。本発明のデバイスにおける前記子宮頸部開口手段は、他の実施形態では、真空吸引中に子宮頸部に振動を与える装置を備える。急激な真空の印加を提供する前記真空調節手段は、好ましくは方形波又はのこぎり波の形で真空の振動を供給する。一実施形態では、本発明のデバイスは、音波を子宮頸部に供給する装置を備える。前記子宮頸部開口手段は、真空の振動、子宮頸部と接触するカップの並進的な移動、及び、子宮頸部に印加される振動のうちの2つ又は3つを組み合わせてもよい。前記プロセッサは、好ましくは、前記エンジンも制御する。一実施形態では、本発明のデバイスは、1つ又は複数の圧力センサを備える。前記プロセッサは、好ましくは、前記センサからデータを受信する。前記カップは、好ましくは、医療グレードのエラストマーで作製されており、前記吸引チューブ側に凸状の表面を備える。カップ及びチューブは滑らかであり、鋭利な要素や目障りになるような要素はない。前記吸引チューブ及び前記カップは、前記流体を吸引しながら子宮頸部に密着するように構成されている。このデバイスは、好ましくは、前記子宮の流体中に最終的に存在する血の塊又は組織断片を前記吸引チューブに入る前に小さな断片に切断するための手段を備える。吸引チューブ及び前記カップは、前記流体を吸引しながら、人の膣に挿入され、子宮頸部とドッキングするように構成されている。前記並進的な移動により、前記カップは子宮頸部に向かって最大20mm移動し、子宮頸部から20mm離れて移動し、その結果、前記子宮頸部が変位する。前記ポンプは、好ましくは、-150mbarゲージ圧と-800mbarゲージ圧との間の最大真空圧(負圧)及び20mbarゲージ圧と200mbarゲージ圧との間の最大正圧を供給する。
【0012】
本発明は、月経中に子宮及び膣の流体を除去する際に使用するためのデバイスを対象とし、デバイスは、次の効果の少なくとも1つの効果、すなわち、月経分泌物のない予め定めた時間帯をユーザに提供する効果、月経分泌物の総量を減らす効果、月経出血の期間を短縮する効果、月経困難症を軽減する効果、月経痛を軽減する効果並びにタンポン及びパッドの必要性を軽減する効果の少なくとも1つの効果を奏する。
【0013】
本発明は、子宮の流体を吸引する方法を提供し、本方法は、i)医療グレードのポリマーで作製された吸引カップであって前記流体を吸引するための開口部を有する当該吸引カップと、真空ポンプに接続された第1の端部と前記カップに接続された第2の端部とを有する吸引チューブであって当該チューブの少なくとも一部が直線的な軸を画定する当該吸引チューブとを提供することと;ii)(a)1Hzと15Hzとの間の周波数で前記真空ポンプと前記カップとの接続及び切り離しを行うことにより振動する真空を前記カップに供給する真空調節手段、(b)前記カップの前記軸に沿った両方向への並進的な移動を可能にし、それにより、最大40mmの総距離の範囲内で前記カップを押したり引いたりすることを可能にする装置、(c)真空吸引中に子宮頸部に振動を与える装置又は(d)それらの組み合わせから選択される非侵襲的な子宮頸部開口手段を提供することと;iii)子宮頸部に隣接するように前記カップを膣に挿入することと;iv)前記子宮頸部開口手段を作動させ、前記真空を好ましくは1Hzから15Hzまでの範囲の周波数で振動させ、前記並進的な移動を可能にする前記装置は例えば最大2Hzなど最大5Hzの周波数で各方向に最大20mmの子宮頸部変位を発生させ、前記装置が例えば25Hzから300Hzまでの範囲など最大300Hzの周波数で子宮頸部に振動を与え、前記装置が任意選択的に音波を供給することと;v)膣から子宮及び膣の流体を抽出すること;とを含み、これらにより、月経分泌物のない予め定めた時間帯をユーザに提供する効果、月経分泌物の総量を減らす効果、月経出血の期間を短縮する効果、月経困難症を減らす効果、月経痛を減らす効果並びにタンポン及びパッドの必要性を減らす効果の少なくとも1つの効果を奏する。
【0014】
本発明は、子宮及び膣の流体を除去するために設計されたシステムを対象とし、前記システムは、真空源に接続され、子宮頸部の近くの膣に挿入される吸引カップと、非侵襲的な子宮頸管開口手段とを備え、前記非侵襲的な子宮頸管開口手段は、(a)1Hzと15Hzとの間の周波数で前記真空源と前記カップとの接続及び切り離しを行うことにより、振動する真空を前記カップに供給する真空調節手段、(b)前記チューブ及び前記カップを前記軸に沿って両方向に並進的に移動させ、場合によっては周期的にカップを子宮頸部から離すように引いたり前記子宮頸部に向かって押したりすることを可能にする装置、(c)真空吸引中に子宮頸部に振動を与える装置又は(d)それらの組み合わせ、から選択される。このシステムにより、月経中の女性は自分の活動を計画でき、タンポンやパッドを使用しなくても、不便で恥ずかしい時間を避けることができ、また、前記システムは、月経分泌物の流出のない予め定めた時間帯を女性に提供することもできる。
【0015】
本発明の主な目的は、ライフスタイルの改善である。しかしながら、本発明のデバイスは、月経過多(過度の出血)及び月経困難症(痛み及び痙攣)を含む月経不順の取り扱いと治療にも有用である。
【0016】
本発明の装置、方法及びシステムは、正常な月経周期並びに月経不順に関連する不便及び不快感を軽減すると同時に、月経を抑制するためのタンポン、パッド及び合成ホルモンの使用を削減又は回避しながら、月経期間中の女性に月経分泌物の流出のない予め定めた時間帯を提供することによって女性の活動を計画できるようにすることを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
[図面の簡単な説明]
本発明の前述の及びその他の特徴及び利点は、以下の実施例を通じて及び添付の図面を参照することにより、より容易に明らかになるであろう。
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るデバイスであって、膣に挿入されることを意図された本発明の一部(100、以下「チューブとアプリケータのアセンブリ」という)であるデバイスを図示する。1A)は、セミフレキシブルチューブ(2)の前部と折りたたまれたカップ(4A)がプラスチック製のアプリケータ(1)で覆われ、チューブ(2)の後部が露出している(以下、「折りたたまれた構成」という)図である。1B)は、アプリケータ(1)が後方(本体から離れる方向)に引かれて子宮頸管カップ(4B)が開いて露出している(以下「展開構成」という)図である。1C)は、ユーザによって取り外されることが意図されたチューブ及び子宮頸管カップをアプリケータなしで示している。1D)は、ユーザによってチューブの後端に取り付けられたチューブスプリッタが、チューブ(5)を2つのチューブに分割し、その1つが真空キャニスタ/トラップ(7)に接続され、もう1つが真空解放チャネル(6)に接続されている図である。
【0019】
【
図2】
図2は、3つの視点から見た、カップを広げた状態(
図1の4B)でアプリケータを取り外した後のチューブとアプリケータのアセンブリ(100)を示す。2A)は、正面図である。2B)は、真空ルーメン(22)及び真空解放ルーメン(21)からなるダブルルーメンチューブ(2)と、真空ルーメン(52)及び真空解放ルーメン(51)からなるチューブスプリッタ(5)と、チューブの2つのチューブ(
図1に詳述されている6及び7)への分岐と、を示す側面断面図(断面A-A)であり、また、カップを完全に開いた状態に保つことを目的とした4つのスプライン(41)の1つと、子宮頸部で密閉するように設計された内側のリップ(42)も示している。2C)は、チューブが2つのルーメン(21と22)に分割されていることを示す別の断面図(断面B-B)である。
【0020】
【
図3】
図3は、チューブ(2)から取り外されたとき(3A)と、チューブ(2)に取り付けられているとき(3B)に、ハウジングで覆われたプル及びプッシュのアジテーションを制御するモータ(200)とともに、アプリケータが取り外された後のチューブとアプリケータのアセンブリ(
図1C及び1Dでは100)を示し、また、ユーザがデバイスを配置できるように設計されたモータハンドル(8)と、モータを電源に接続するケーブル(9)も示している。
【0021】
【
図4】
図4は、モータ(200)に沿って前後にスライドするチューブとアプリケータのアセンブリ(アプリケータを取り外した後)(100)を示す。次の3つの位置が図示されている。4A)は、アセンブリが、+20mmと表記される最も前方の位置(つまり、本体の最も深い位置)を図示する。4C)は、アセンブリが、-20mmと表記される最も後方の位置を図示する。4B)は、アセンブリが、0と表記されるベースライン位置を図示し、チューブの露出部分(膣に挿入される)の典型的な長さは70mm(ユーザの解剖学的構造に応じて調整可能)である。
【0022】
【
図5】
図5は、
図4のモータハウジング(10)の断面図を示す。リニアモータのロータ(12)及びステータ(11)のパーツと、前後に移動するキャリッジ(201)とが表示されている。
【0023】
【
図6】
図6は、チューブとアプリケータのアセンブリ(アプリケータを取り外した後)(100)と、プル及びプッシュのアジテーションを制御するモータ(ハウジングで覆われている)(200)とが互いに取り付けられている、別の図を示す。
【0024】
【
図7】
図7は、
図6のモータハウジングの断面図を示す。リニアモータのロータ(12)とステータ(11)のパーツと、前後に移動するキャリッジ(201)が表示されている。
【0025】
【
図8】
図8は、モータハウジングがなく部品を取り外した場合において、
図7に示すチューブとアプリケータのアセンブリ(アプリケータを取り外した後)(100)とモータ(200)とを示す。モータをチューブに取り付けるためのネジ(14)とグリッパー(13)とが分解図で示されている。
【0026】
【
図9】
図9は、リニアモータ(11及び12)とグリッパー(13)で組み立てられたキャリッジ(201)の別の図を示す。
【0027】
【
図10】
図10は、カラーセンサ(15)と送信機(16)及び受信機(3)からなる赤外線フローセンサとが露出した断面とともに、
図9と同じ方向から見たキャリッジ(201)を示す。
【0028】
【
図11】
図11は、ポンプユニット(300)を示す。真空ポンプ(309)、アキュムレータ(311)、真空バルブ(304)、キャニスタ/トラップ(310)、真空チューブコネクタ(301)、真空開放コネクタ(302)、キャニスタ圧力センサ(306)及びアキュムレータ圧力センサ(307)が表示されている。
【0029】
【
図12】
図12は、
図11に示すポンプユニット(300)の別の方向から見た図を示す。真空ポンプ(309)、アキュムレータ(311)、開放バルブ(305)、真空チューブコネクタ(301)、真空開放コネクタ(302)、キャニスタ圧力センサ(306)、アキュムレータ圧力センサ(307)及び真空開放圧力センサ(308)が表示されている。
【0030】
【
図13】
図13は、ポンプユニット(300)の別の図を示す。13A)は、上面図であり、真空ポンプ(309)、アキュムレータ(311)、キャニスタ/トラップ(310)、真空チューブコネクタ(301)及び真空開放コネクタ(302)が表示されている。13B)は、側面図であり、キャニスタ/トラップ(310)、アキュムレータ(311)、真空チューブコネクタ(301)、真空開放コネクタ(302)、キャニスタ圧力センサ(306)、アキュムレータ圧力センサ(307)、及び、キャニスタ/トラップの質量を測定するために使用されるロードセル(312)が表示されている。
【0031】
【
図14】
図14は、女性の身体の断面図を示しており、直腸(405)、膀胱(401)、膣(406)、尿道(409)、小陰唇(408)、大陰唇(407)、並びに、子宮筋層(402)、子宮内膜(403)及び子宮頸部(404)を含む子宮が表示されている。チューブ(2)及びアプリケータ(1)(折り畳まれた構成で膣に挿入されることを意図されたデバイスの部分(100)、
図1A)は、体の外側に配置された状態で示されている。
【0032】
【
図15】
図15は、折り畳まれた構成(
図1A)のチューブとアプリケータのアセンブリが膣に挿入され、子宮頸部(404)に接近している状態の、
図14に示す女性の体の断面図を示している。
【0033】
【
図16】
図16は、アプリケータ(1)がチューブ(2)に沿って後方に引っ張られ、それによって
図1B(展開構成)に示されるようにカップ(4B)を露出及び開放した後、子宮頸部に接近するチューブとアプリケータのアセンブリを示す。カップは子宮頸部(404)にドッキングして密封する。
【0034】
【
図17】
図17は、(
図1Dのように)アプリケータ(1)が取り外された後、(
図16のように)カップが子宮頸部とドッキングしているチューブとアプリケータのアセンブリ(100)を示す。このとき、チューブスプリッタ(5)がチューブ(2)に取り付けられている。
【0035】
【
図18】
図18は、アプリケータが取り外され、(
図17のように)カップが子宮頸部にドッキングしているチューブとアプリケータのアセンブリ(100)を、チューブに取り付けられたハウジング(
図3Bのように)でカバーされたプル及びプッシュのアジテーションを制御するモータ(200)とともに示している。
【0036】
【
図19】
図19は、チューブとアプリケータのアセンブリ(100)と、
図18に示すハウジング(200)で覆われたモータとを、断面図で示している。
【0037】
【
図20】
図20は、子宮(504)及び膣(509)の実験室モデルで試験されている本発明の一実施形態に係るデバイス(500)の実験室プロトタイプを示す。ユニットは、変位モータアセンブリ(508)及び圧力振動バルブアセンブリ(507)を制御するコントローラ及びデータロガー(501)などのプロセッサによって制御される。後者は、変位キャリッジ(506)上に位置し、カップ(図示せず)を介して子宮モデル(504)の子宮頸部とドッキングするチューブ(505)を変位させる。また、約50mbarの子宮内圧をシミュレートするための子宮内圧センサ(503)と月経サイロ(502)も示されている。
【0038】
【
図21】
図21は、時間(相対単位)を示すX軸と変位又は圧力を相対単位で示すY軸とともに、周期的に印加される真空(下)と子宮頸部の変位(上)との時間的な同期の例を示す。
図21には、1つの変位サイクルといくつかの真空振動サイクルが示され(21A)、また、方形波、のこぎり波及び変形のこぎり波を含む、真空圧の突然の高インパルス印加(601)を伴う振動波の4つの例が示されている(21B)。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[発明の詳細な説明]
周期的な真空振動と子宮頸部の変位を同時に与えながら膣の流体を吸引することを含み、月経出血の持続時間を短縮し、流れのない時間帯を確保するために、月経の流体を膣及び子宮から効率的に除去できることが見出された。
【0040】
本発明に係るシステムの一実施形態において、流体は、吸引エンディングカップが子宮頸部にドッキングすることができるデバイスによって子宮から引き出される。このデバイスは主に子宮から月経分泌物を取り除くが、特にモータがカップを子宮頸部から引き離すと、子宮の外側や膣の内側からも流体を吸い込むことができる。月経抽出デバイスは、真空ポンプと、真空アキュムレータと、子宮頸部を大気圧と真空圧に交互にさらすための2つの高速切替バルブと、月経分泌物を収集するためのキャニスタ(トラップ)と、チューブと、膣に対する位置決め面としても機能する保護ケースに封入されたリニアモータと、剛性がありながらフレキシブルなデュアルルーメンチューブと、子宮頸部とドッキングして軸方向に移動し、子宮頸部の円蓋を押して子宮頸部から引き離す、剛性のあるフレキシブルなチューブに取り付けられた非対称カップと、から構成される。また、デバイスは、アキュムレータ、キャニスタ及びカップの圧力センサを含むいくつかのセンサを備えてもよい。このデバイスは、特に実験室での試験中だけでなく実際の使用においても、月経流体の流れを示すIRセンサと、キャニスタの重量を量るはかりと、抽出された月経分泌物の色を分析するためのスペクトルセンサとを備えてもよい。
【0041】
本発明に係る月経分泌物の抽出は、以下の効果の少なくとも1つ、すなわち、月経分泌物のない所定の時間間隔をユーザに提供する効果、月経分泌物の総量を減らす効果、月経出血の期間を短くする効果、月経困難症を減らす効果、月経痛を減らす効果並びにタンポン及びパッドの必要性を減らす効果の少なくとも1つの効果を有する。
【0042】
より一般的には、本発明は、月経出血の持続時間を短縮するとともに流れのない時間帯を確保するために膣及び子宮から月経流体を効率的に除去することを目的とし、子宮頸部開口手段を採用することにより子宮頸部の潰れ(閉鎖)を防止し同時に周期的な真空の振動を印加しながら、膣及び子宮の流体を吸引することを含む。通常、月経中は、子宮内は正圧(~50mbar)で膣の外は大気圧であり、これにより、子宮頸部を通る月経分泌物の流れが遅くなり、子宮頸部が潰れるのを防ぐ。子宮頸部の組織自体には、子宮頚部を開いたままに維持する構造的な強度がある。子宮頸部自体が膣内に伸びているため、子宮頸部の外側の真空圧が特定のしきい値を超えると、その通路がしぼむことがあり、真空圧の上昇と頸管を通過する流体の欠如は、頸管の狭窄又は完全な閉鎖を引き起こすことがある。本発明者等は、いかなる特定の理論によって限定されることを望まないが、本方法は、潰れた子宮頸部の壁を往復動させながら物理的に広げることを含んでもよいし、又は、子宮の内圧を増加させて子宮頸部を強制的に開くことを含んでもよい、と考える。月経中に月経分泌物が排出される子宮頸管は、外子宮口に真空圧をかけると、(潰れ/収縮のメカニズムによって)断続的に閉じることがある。本発明者らは、閉鎖は、加えられる圧力の大きさ及び頻度、並びに、子宮頸部の解剖学的構造及び子宮頸部の組織の機械的特性に依存すると推測する。閉鎖は、次の3つの独立したメカニズムの結果であってもよい。a)子宮頸管は、リラックスしているとき(つまり、外力が加えられていないとき)に必ずしも開いているとは限らないが、断続的に収縮する可能性がある。これは子宮のMRI画像及びUS画像で見ることができる。b)子宮頸部の唇に真空圧をかけると、子宮頸部の唇が子宮体から遠ざかるように引っ張られ、子宮頚部が伸びる。これにより、子宮頸管が軸方向(つまり子宮頸管の軸に沿って)伸びて横方向(つまり子宮頸管に垂直な平面内)に狭くなり、子宮頸管の狭窄をもたらす。c)流体が通過しない(又は、十分な流体がない)ときに子宮頸管に真空圧をかけると(例えば、内子宮口の近くでブロックが発生するため)、子宮頸管の壁にかかる圧力が増加する(ベルヌーイの定理による)。このような圧力の上昇と頸管を通過する流体の欠如は、潰れ/収縮によって頸管を狭め、最終的に完全に閉鎖させる。
【0043】
本発明に係るデバイスは、子宮頸部が潰れないように真空を印加するので特に効果的である。好ましい実施形態では、子宮頸部の機械的変位が真空の振動とともに使用され、別の実施形態では、高周波及び高振幅からなる真空の振動が使用される。例えば、振動が方形波又はのこぎり波の形を有する高振幅の真空を非常に迅速に印加することにより、真空の増加が速く、真空の解放が遅いため、最終的に子宮頸部が潰れる前に吸引が達成される。真空を長時間かけ、その強度を徐々に上げると、子宮頸部が潰れ、吸引圧を更に上げても効果がない場合がある。子宮頸部の潰れを防ぐための好ましい方法は、例えば、吸引カップで子宮頸部を押したり引いたりすることによって、前記機械的変位によって子宮頸部のアジテーションを生成することである。別の方法には、真空吸引中に子宮頸部に振動を与えることが含まれる。振動は、潰れた子宮頸部が開くのを促進したり、子宮頸部が容易に潰れるのを妨げたりすることができる。また、振動は、子宮頸部の粘弾性組織を硬化させて子宮頸部の潰れを防ぎ、又は、子宮の流体の粘度を変化させて流れを促進することができる。
【0044】
好ましい実施形態では、以下のように、本発明は、少なくとも、真空ポンプと、吸引カップを備えた吸引チューブと、流体トラップと、プロセッサと、真空圧をかけて子宮頸部の潰れを防止する子宮頸部開口手段と、を備えるデバイスを提供する。前記手段は、真空圧を非常に迅速にかけること(高衝撃又は高周波)により、子宮頸部に軸方向の力をかけること(プッシュ、プル)により、及び/又は、子宮頸部に振動をかけることにより、子宮頸部が潰れるのを防ぐことができる。本発明のデバイスは、好ましくは、方形波又は鋸歯状の圧力の振動、軸方向の並進的な移動/力及び振動から選択されるオプションのうちの少なくとも1つを含む。一実施形態では、デバイスは、前記オプションのうちの少なくとも2つを含む。一実施形態では、デバイスは音波を使用してもよい。
【0045】
本発明に係るデバイス及び方法の重要な特徴の1つは、それらの非侵襲的な特性、すなわち、子宮頸管が交差しないこと、及び、デバイスが、その構造により、子宮頸管を通過したり子宮頸管に侵入したりすることはできない、ことである。
【0046】
本発明は、以下のように、真空調節手段を備えるシステムを提供し、その真空調節手段は圧力の振動を含み、当該圧力の振動は、好ましくは0mbarから-700mbarまでなどの圧力の迅速な開始を伴い、例えば、方形波を有し、また、両方向への最大20mmの子宮頸部の変位を伴い、及び/又は、機械的な振動を伴う。真空の振動は、1Hzから15Hzまでなど、例えば4Hzから15Hzまでなどの2Hzと15Hzとの間など、1Hzから25Hzまでの周波数を有してもよい。直線的な変位は、2Hzから5Hzまでなど、1Hzから6Hzまでの周波数を有してもよい。子宮頸部に加えられる機械的な振動は、40Hzから100Hzまでなど、25Hzから300Hzまでの周波数を有してもよい。振動は、非ゼロの軸方向成分及び非ゼロの横方向成分を有してもよい。人体に使用されるマッサージ装置からのエネルギー出力を使用する音波又は超音波のいずれかを含む音響的な振動を使用してもよい。
【0047】
本発明に係るシステム及びデバイスの最も重要な特徴の1つは、次の動作の同時適用、すなわち、(a)ドッキングベースラインから最大20mm前方及び20mm後方の機械的な並進移動、及び、(b)最大15Hzの周波数で約0mbarゲージ圧から600mbarゲージ圧までの圧力値を示す真空圧のパルス、の同時適用である。本発明の好ましい実施形態では、並進的な変位は圧力パルスと同期している。本発明の追加的な特徴は、月経分泌物の色を継続的に監視するカラーセンサを有し、それにより、抽出の進行及びユーザの健康状態の指標を提供することを含む。
【0048】
本発明の他の態様は、フローセンサを有する。これにより、システムはコントローラとともに、ユーザを「学習」し、真空圧の振幅、真空圧の周波数、前方及び後方変位、変位の周波数、真空の振動と変位の振動との同期など、デバイスの重要なパラメータを変更できる。更に、患者に最適化された個別のレジメンの一部として時間帯を適応させるように調整することができる。ユーザを特徴付ける特定のパラメータは、デバイスを使用する前に、婦人科医を含む専門家又は医師から、又は、ユーザが記入した質問票を介して、取得できる。そのパラメータには、手術歴、経膣分娩及び帝王切開、子宮筋腫、更に関連する病歴、及び、最適なレジメンに影響を与える可能性のあるその他の情報、が含まれる。
【0049】
本発明に係るシステムの他の特徴は、任意選択で、メインの抽出フェーズの前にプライミングフェーズをレジメンに組み込むことである。そのプライミングフェーズでは、例えば、メインフェーズよりも低い周波数又は弱い真空であってもよい。フェーズの構造はユーザに合わせて調整される。
【0050】
本発明の一実施形態において、真空のパルスを独立して印加し自身の軸に沿って前後に移動するように構成されたエンドカップを有する吸引チューブを含む流体吸引デバイスは、所定のレジメンに従って圧力のパルス及び機械的変位を同時に印加することによって子宮及び膣の流体を除去する。真空及び/又は空気圧の前記パルスは、好ましくは、子宮頸部を含む隣接する組織に振動を発生させ、前記流体の流れを促進する。前記レジメンは、いくつかの実施形態では、流体の抽出中又は抽出後のクレンジングサイクル、及び、痛みを和らげるための振動メカニズムを含んでもよい。
【0051】
本発明は、血液、水、電解質、粘液、血漿、細胞及び組織の細片を含む子宮の流体を除去するためのデバイス及びシステムを対象にするものであり、子宮の流体は、膣から真空源を介して抽出及び吸引される。前記子宮の流体は、凝固した血液の塊を含んでもよい。システム及びデバイスは、少なくとも次のi)~viii)を含む。i)真空ポンプ又は他の真空源。ii)第1及び第2の端部を有し、前記第1の端部を介して前記ポンプに接続され、前記チューブの少なくとも一部が直線的な軸を画定する吸引チューブ。iii)前記第2の端部を介して前記チューブに接続され、前記チューブよりも幅が広く、チューブに取り付けられたより小さな開口部と前記流体を吸引するためのより広い開口部とを通常備える吸引カップ。iv)前記ポンプと前記カップとの接続及び切り離しを交互に行う切断するため、又は、1Hzと15Hzとの間の周波数で振動する真空を提供するための真空バルブ又は類似の機器。ここで、ゲージ圧の振幅は、-300mbarと-700mbarとの間、例えば-400mbarと-600mbarとの間など、-150mbarと-800mbar(150mbarと800mbarとの間の低圧に対応)であってもよく、また、1振動周期内の最小負圧と最大負圧の間の実際の圧力差は、5mbarと600mbarとの間、例えば30mbarと300mbarとの間であってもよい。v)前記チューブ及び前記カップを前記軸に沿って初期位置から各方向に通常の5~20mmの移動を含む最大40mm両方向に並進移動させることができる装置であって、エンジンと、前記吸引チューブを前記エンジンに接続するための取り付け部材とを通常備える装置。vi)ポンプの後若しくは収集容器(キャニスタ/トラップ)内、カップの前、又は、デバイスの他のいくつかのポイントで例えば圧力を測定する1つ又は複数の圧力センサ。vii)前記流体を保持するために前記ポンプと前記吸引チューブとの間に接続され、好ましくは十分に洗浄可能又は使い捨てのプラスチック製の流体トラップ。viii)前記センサからデータを受信し、前記ポンプ、前記バルブ又は他の真空調節手段及び前記エンジンの性能を制御し、デバイスの動作レジメンを規定するソフトウェアを格納するデータロガー又はマイクロプロセッサ。好ましい実施形態では、本発明に係るシステム及びデバイスは、好ましくは前記吸引チューブに入る前に、前記血の塊又は組織の細片をより小さな断片に切断するための手段を備え、いくつかの実施形態では、その手段は、回転カッティング部材又は網状の細いカッティングワイヤを備え、前記吸引された子宮流体が前記回転部材又は前記網状のワイヤを通って移動し、これにより、より大きな血塊又は血餅がより小さな断片に分割される。前記回転部材は、刃先のあるシャッターを有する回転ディスクを備えてもよい。前記網状のワイヤは、強力で柔軟な金属又はポリマー材料を含んでもよい。
【0052】
先端の細いエッジを有する前記回転ディスクは、月経分泌物を切断、混合及び均質化することができ、前記通路に残った隙間部分を月経分泌物が簡単に通過することができるようにする。ディスクは毎秒約1~10回転してもよい。また、ディスクはバルブパルスを制御してもよい。好ましい実施形態では、前記吸引カップ及び前記吸引チューブは使い捨てである。月経中の人の子宮内のベースライン圧力は、収縮の間に約50mbarになる可能性がある。従って、この圧力を均等にし、子宮頸部の両側が等しい圧力となるようにするために、小さな正圧を使用する必要がある場合がある。本発明の一実施形態では、負圧の印加に続いて、例えば40mbarと150mbarとの間などの最大で10mbarと200mbarとの間のより低い正圧を印加してもよい。別の好ましい実施形態では、前記カップ及び前記チューブは、単一の一体型使い捨てプラスチックユニットを形成する。前記カップは、医療グレードのプラスチックでできており、前記吸引チューブの側に凸状の表面を備える。カップ及びチューブは、鋭利な要素や目障りになるような要素はなく滑らかである。吸引チューブとカップは人の膣に挿入され、前記流体を吸引しながら、子宮頸部に密着するように構成されている。前記並進移動は、通常、前記カップを各方向に約10mm又は最大15mmなど最大約20mm移動させ、その結果、前記子宮頸部が同様の距離だけ変位する。いくつかの実施形態では、前記ポンプは、-200mbarゲージ圧と-800mbarゲージ圧との間の最大真空圧(吸引圧力又は低圧)を印加し、前記バルブは、4Hzと10Hzとの間の周波数の圧力振動を生成し、一方、前記子宮頸部変位は最大15mmである。動作パラメータは、ユーザが調整可能であってもよく、専門家のアドバイスに従って、デバイスによって最適化してもよい。
【0053】
本発明は、月経中に子宮の流体を除去することによって月経を管理する際に使用するためのデバイスを対象にするものであり、次の効果のうちの少なくとも1つ、すなわち、月経分泌物のない予め定めた時間帯をユーザに提供する効果、毎月の月経出血の全体量を減らす効果、月経出血の期間を減らす効果、月経困難症及び月経痛を減らす効果並びにタンポン及びパッドの必要性を減らす効果の少なくとも1つを奏する。
【0054】
本発明は、次に示す各ステップを含む子宮の流体を吸引する方法を提供する。すなわち、この方法は、医療グレードのプラスチックで作製され凸面を有し前記凸面を介して真空源に接続された吸引カップを提供するステップと;1Hzと15Hzとの間の周波数で、好ましくは、例えば5Hzと9Hzとの間、4Hzと10Hzとの間などの3Hzと12Hzとの間の周波数で、前記カップ内の部分的な真空の振動を発生させることができる真空バルブ又は他の手段を提供するステップと;各方向に最大20mmの距離以内で前記カップを押したり引いたりする装置を提供するステップと;子宮頸部とドッキングするために前記カップを膣に挿入するステップと;前記振動する真空を発生させ同時に前記装置を作動させることにより、好ましくは最大2.5Hzの周波数で最大20mmの子宮頸部の変位を発生させるステップと;膣から子宮流体を抽出するステップと、を含む。そして、本方法は、次の少なくとも1つの効果、すなわち、月経分泌物のない予め定めた時間帯をユーザに提供する効果、毎月の月経分泌物の全体量を減らす効果、月経出血の期間を短くする効果、月経困難症を減らす効果、月経痛を軽減する効果並びにタンポン及びパッドの必要性を軽減する効果の少なくとも1つを達成する。好ましい一実施形態では、少なくともいくつかの作業サイクルにおいて、カップは前記真空圧によって子宮頸部に取り付けられ、周囲の組織を遠位方向(子宮から離れる方向)に動かし、続いて真空を中断して組織を解放する。これにより、流体抽出の効率が向上する。カップ内の真空は、前記凸面の近く又はその上に配置された真空解放バルブによって中断されてもよい。
【0055】
月経を管理する他の既知の手段とは対照的に、本提案の方法及びデバイスは、所定の将来の期間における月経流体の流出を防ぎ、月経分泌物の流出がない予め定めた特定の時間帯を確保することができる。この方法は安全であり、専門家の監督下でなくても、指導を受けたユーザであれば誰でも簡単に使用できる。本発明のデバイスは、注意深い分析と子宮モデルでの信頼できるシミュレーションによって検証された、人体の組織にとって安全な範囲内の真空圧及び軸方向の動きを導入する。
【0056】
本発明のシステム及び方法は、月経期間中の女性が自分の活動をよりよく計画し、不便でやっかいな時間を回避することができる。本発明のシステム及びデバイスは、タンポン及びパッドの使用量の削減を促進する。本発明のシステムは、月経分泌物の流出を所定回数だけ確実に集める。本発明は、月経分泌物の流出のない予め定めた時間帯を女性に提供する。
【0057】
本発明は、以下の実施例によって更に説明され例示される。
【実施例】
【0058】
[実施例]
子宮頸部に振動真空圧とプル/プッシュのアジテーションとを印加することによる月経分泌物の抽出-実験的シミュレーション
【0059】
[材料]
[デバイスとモデルの部品と材料]
人間の組織のような特性を持つ熱可塑性エラストマー(TPE)で作られた空洞子宮モデル(
図20の504);
子宮の開口部(子宮口)と充填ダクトとを密閉するためのプラグ;
膣シミュレータ(
図20の509);
プラスチックチューブに接続された空のウォーターボトル(圧力コラムを介して静水圧を加えるための
図20の502);
水;
血液模擬物質(血液);
子宮内膜の剥落(子宮内膜の剥落物)の組織凝集体をシミュレートするための粘液模擬物質(湿潤及び乾燥);
10mlシリンジ(シリンジ);
デジタルスケール(スケール);
子宮から月経分泌物(血液及び子宮内膜の剥落物)を抽出するために使用されるデバイスのプロトタイプ;
吸引チューブに接続された真空ポンプ(
図20の505);
真空圧調整バルブ;
吸引チューブに接続されたカップ;
モータを動力源とする真空圧振動ロータリーバルブ(
図20の507);
モータ(
図20の508)を動力源として、子宮頸部に対してカップ(
図20の506)を軸方向に動かすことを可能にする機構;
カップの近くにおけるキャニスタ内とサクションチューブ内の圧力を測定するための2つの圧力センサ;
データロガー(
図20の501)
【0060】
[実施例1]
[モデルの比較]
以下のようにいくつかのモデルを準備した。
図20に示すように、TPEで作製された子宮モデルは、空洞と、膣モデルに配置された開口部(子宮頸部)と、血液モデル(又は水)の充填チューブが挿入される充填ダクトと、(例えば、圧力測定に使用できる)他のダクトとを有する。子宮モデルは、子宮本体が地面に対して垂直になるようにクランプを使用してスタンドに取り付けられた。子宮口と圧力測定ダクトを密閉するプラグが配置された。スケールはスタンドの真下に配置された。水を集めることができるように空のボウルが子宮の下に配置された。ボトルに接続されたチューブが前記充填ダクトに挿入された。圧力コラムは一定量(600g)の水で満たされた。子宮口を密閉しているプラグが取り外された。子宮が空になるまで排水された水の質量が継続的に測定されながら、水が子宮口を通してボウルに流し続けられ、それによって互いに異なるモデルが特徴づけられた。以下に説明するように、いくつかのモデルが子宮から模擬月経流体を抽出するために更に使用された。
【0061】
[実施例2]
[子宮排出モデル]
人工粘液(湿った子宮内膜剥落物)と人工乾燥粘液(10mm×5mm×5mmの寸法の乾燥子宮内膜剥落物)からなる月経分泌物(以下、月経分泌物という。)を模擬的に再現するように設計された子宮内膜剥落物の模擬物を準備した。吸引チューブに接続された吸引カップは、子宮頸部を包むように構成された。ロータリーバルブ(
図20の507)は、真空ポンプによって生成される真空圧の振動を制御した。ロータリーバルブには2つの動作構成があり、1つはカップを真空で接続するためのもので、もう1つはカップの真空の接続を切断するためのものである。いくつかの実施形態では、カップは、真空解放バルブを備えている。子宮口及び圧力測定ダクトはプラグが挿入されて密閉された。総質量約3.5gの乾燥した子宮内膜剥落物(模造品)の断片が、充填ダクトを通して子宮腔に挿入された。充填された子宮の質量が測定され、子宮腔に含まれる乾燥した子宮内膜剥落物の質量が、現在の測定値と子宮を満たす前に記録された測定値との差として計算され、3.25gと3.75gとの間の任意の値に到達するようにした。シリンジは洗浄され、約3.5gの湿った子宮内膜剥落物で満たされ、その子宮内膜剥落物が充填ダクトを通して子宮腔内に注入された。充填された子宮の質量が測定され、子宮腔に含まれる子宮内膜剥落物(乾燥及び湿潤)の質量が、現在の測定値と子宮を満たす前に記録された測定値との差として計算され、6.75gと7.25gとの間の任意の値に到達するようにした。剥落物は遠心力を使用して子宮口に向けて詰め込まれた。子宮口を密閉しているプラグが取り外された。
図20に示すように、子宮口が水平方向から30度下を向くように、子宮が膣シミュレータに取り付けられた。
【0062】
子宮口を通過する子宮内膜剥落物の流量は、以下に示すように、いくつかの変形モデル(a)~(c)で測定された。
【0063】
(a)[真空+子宮圧で誘発される排出]
重力、シミュレートされた子宮のベースライン圧力及び真空圧によって子宮口を通る月経分泌物の流量が測定された。真空吸引は、吸引キャニスタとカップの近くの吸引チューブに接続されたデジタル圧力センサ(サンプリングレート:2Hz)を使用して測定された。空のボトルに接続された空のプラスチックチューブが充填ダクトに挿入された。(約5kPa=50mbarの子宮内圧がシミュレートされるように)ボトル(
図20の502)に血液模擬物質が充填され、約50cmの血液コラムが作製された。カップは子宮頸部とドッキングするように配置され、圧縮力をかけずに互いにかみ合うようにした。調整バルブが最大に回転されて、真空ポンプで子宮頸部に真空圧が印加された。真空圧の大きさ及び周波数は、必要なレジメンに従って設定された。
図21Bは、カップ付近の真空ポンプ及びロータリーバルブによって生成される真空圧プロファイル(振動波)の例を示す。6.2及び11.8Hzの周波数が主に使用されたが、
図21Bは、1.1Hzの場合の圧力振動を示している。いくつかの圧力振動で測定された圧力の大きさを表1に示す。
【0064】
【0065】
測定は、すべての子宮内膜剥落物の模擬物質が子宮口を通過するまでの間又は30分間(2つのうちの早いタイミングまで)継続された。子宮内膜剥落物が抽出された時点は視覚的に特定された。
【0066】
(b)[真空+プル・アジテーション+子宮圧で誘発される排出]
重力、シミュレートされた子宮のベースライン圧力、真空吸引及び子宮頸部にかけられた穏やかな引っ張りによって子宮口を通る月経分泌物の流量が調査された。表1にリストアップされているすべての圧力プロファイルが使用され、子宮頸部とカップは常に完全に係合していたわけではないが、(15mmの大きさ、1.1Hz又は2.5Hzの周波数の)ストロークが前記デバイスによって適用された。真空圧をかけながらカップを子宮頸部から引き離すと、子宮頸部がカップと一緒に遠位方向に引っ張られ、カップが子宮頸部から外れると突然吸引力が失われることがある(これにより、ゴム製トイレプランジャによって加えられるのと同様のアジテーションの効果が生まれる。この場合、真空圧が上昇しているときに子宮頸部が繰り返し引っ張られ、真空が解放されると子宮頸部が解放される)。
【0067】
(c)[真空+プル・アジテーション+プッシュ・アジテーション+子宮圧で誘発される排出]
重力、シミュレートされた子宮のベースライン圧力、真空吸引及び子宮頸部にタンデムで交互にかけられる穏やかな引っ張りと押し込みによる子宮口を通る月経分泌物の流量が測定された。プル及びプッシュのアジテーションの両方を加えるために同じモータが使用されたため、これらのアジテーションは常に同じ周波数で適用された。モータは30mmのフルストロークが可能であり、そのフルストロークは15/15mmのプル及びプッシュのアジテーションに分けられた。
【0068】
すべてのトライアルは、すべての子宮内膜剥落物が排出されるまでの間又は30分間(2つのうちの早いタイミングまで)継続された。トライアルが(子宮口をブロックしている剥落物の抽出と子宮口を通る血液の自由な流れによって示されるように、すべての子宮内膜剥落物が排出された)「成功」、又は、(30分までに剥落物はまだ子宮口をブロックしていた)「失敗」として終了した後、子宮の質量を測定し、排出された子宮内膜剥落物の量を、現在の測定値と抽出開始直前に取得された測定値との差として計算した。この手順を3回繰り返した。表2に示す真空ポンプの圧力とストロークの組み合わせに従って、3つの子宮モデルごとに1回ずつ行った。
【0069】
【0070】
[評価結果]
以下の表3は、表2に記載されているように圧力とプル-プッシュ・アジテーションの大きさと周波数のすべての組み合わせに対して実施されたトライアルのスコアを示す。
【0071】
【0072】
子宮頸部に振動する真空圧を印加することは、一定の圧力よりも月経分泌物を抽出するのに一般的に効果的であることがわかった。振動真空ポンプ圧力のみに頼る場合(つまり、プル及び/又はプッシュのアジテーションを適用しない場合)、振動の周波数が高いほど性能が向上する。プル・アジテーション、又は、プル・アジテーションと同時にプッシュ・アジテーションを、振動真空圧と組み合わせる場合、圧力振動の周波数が低いほど効果的であった。(一定の又は振動する)真空によるプル・アジテーションの効果は、子宮からの月経分泌物の抽出にわずかに寄与した。プル・アジテーションの周波数は、デバイスの性能に影響を与えないようであった。プル及びプッシュのアジテーションと真空圧との組み合わせは、子宮からの月経分泌物の抽出に寄与したが、プル・アジテーションのみが寄与するにすぎなかった。プル及びプッシュのアジテーションの周波数が高いと、デバイスの性能が向上した。
【0073】
振動する真空圧は定圧よりも優れており、同時に子宮頸部の変位を使用すると、より効率的な抽出が行われると結論付けることができる。
【0074】
[実施例3]
子宮口に真空圧を印加することによって子宮からの月経流体の吸引をシミュレートする別の実験を以下のように行った。子宮のTPEモデルは、月経分泌物をシミュレートする8.00~8.25gの人工粘液(子宮内膜剥落物、湿った状態のみ)で満たされ、膣シミュレータに取り付けられた。次に、子宮がその充填ダクトの1つを介して、血液模擬物質で満たされたボトルに接続され、50mbarの子宮内圧が生成された。真空圧(さまざまな圧力と周波数、表4を参照)がモデルの開口部(子宮口)に印加され、ポンプ吸引キャニスタに接続された柔軟なプラスチックカップを通して子宮内の月経分泌物が排出された。データロガーに接続された圧力センサは、吸引キャニスタ内の圧力と、子宮内又は子宮頸部のすぐ近くの吸引チューブ内で発生する圧力を(2Hzのサンプリングレートで)継続的に測定した。ポンプによって加えられる公称真空圧は一定又は振動(5又は9Hzの周波数)しており、システムによって有効になる最大値(420~500mbar)又はこれより低い圧力(300~400mbar)に達した(表4)。ポンプ圧力は、子宮頸部に向かう及び/又は子宮頸部から離れるカップの軸方向の動きと断続的に組み合わされ、それにより、子宮頸部を圧縮し、又は引っ張る。真空圧が印加されながらカップが子宮頸部から引き離されると、カップと一緒に子宮頸部が遠位に引っ張られ、カップが子宮頸部から外れたときに突然吸引力が失われることがあった。プッシュ-プル・アジテ-ションは、2つの周波数(1.1及び2.5Hz)と3つの大きさ(各側方向に10、15、及び20mm)のそれぞれで適用された(表4)。真空圧とプル-プッシュ・アジテーションの大きさと周波数の合計34の組み合わせが、5つのテストブロックで適用された(表4)。これらをそれぞれ3回繰り返した。各テストには、月経分泌物がカップから排出されるのにかかった時間に応じて0と1との間の範囲のスコアが割り当てられ、1は3分未満で成功、0.5は15分未満で成功、0.25は30分未満で成功、0は30分を超えて失敗である。圧力とアジテーションの各組み合わせについて、3回のトライアルの平均スコアを計算した。その結果を表4に示す。
【0075】
【0076】
真空圧の大きさが増すと、一般的に月経分泌物の抽出がよりうまくいく。また、圧力振動は一定の圧力と比較した場合、月経分泌物の排出がよりうまくいく。子宮頸部を引っ張ったり押したりすると、一般的に月経流体の排出がよりうまくいき、10mmよりも15mm引っ張ったり押したりする方がよりうまくいく。
【0077】
月経分泌物の抽出には圧力振動が重要であると結論付けることができる。但し、5Hzを超える周波数で圧力振動をかけることは必ずしも有益ではない。圧力振動のより高い振幅が有益である。プル・アジテーション(「トイレプランジャ効果」)を適用すると、プッシュ・アジテーションの有無にかかわらず、月経分泌物の抽出の有効性と効率に貢献する。アジテーション(子宮頸部の変位)の周波数を高めることは必ずしも有益ではない。
【0078】
本発明はいくつかの特定の例を使用して説明されてきたが、多くの修正及び変形が可能である。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲による以外の方法で限定されることを意図するものではないことが理解される。