(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】イオン源のためのテトロード引出装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/08 20060101AFI20240522BHJP
H01J 27/08 20060101ALI20240522BHJP
H01J 37/18 20060101ALI20240522BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01J37/08
H01J27/08
H01J37/18
H01J37/317 Z
(21)【出願番号】P 2021531743
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(86)【国際出願番号】 US2019061169
(87)【国際公開番号】W WO2020131254
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-06
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】プラトー,ウィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】アイズナー,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデンヴァーグ,ボ
(72)【発明者】
【氏名】バッサム,ニール
(72)【発明者】
【氏名】クリストフォロ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】アベシャウス,ジョシュア
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-511658(JP,A)
【文献】特開2010-080446(JP,A)
【文献】特表2018-510471(JP,A)
【文献】特開2006-147226(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0101834(US,A1)
【文献】特開平06-052816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
H01J 27/00-27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源のための電極システムであって、
上記イオン源に関連するソース電極と、
上記ソース電極に近接して配置された第1接地電極と、
ビームラインに沿って上記第1接地電極の下流に配置された抑制電極と、
上記ビームラインに沿って上記抑制電極の下流に配置された第2接地電極と、を備えており、
上記ソース電極は、イオン源チャンバの外壁内にソース開口を画定し、
上記ソース開口は、ソース電源に電気的に接続されており、
上記第1接地電極は、第1接地開口を画定し、
上記第1接地電極は、電気的接地電位に電気的に接続されており、かつ、上記ビームラインに沿って上記イオン源からイオンを引き出し、
上記抑制電極は、抑制開口を画定し、
上記抑制電極は、抑制電源に電気的に接続されており、
上記第2接地電極は、第2接地開口を画定し、
上記第1接地電極および上記第2接地電極は、相互に固定的に接続されており、かつ、上記電気的接地電位に電気的に接続されており、
上記第1接地電極、上記抑制電極、および上記第2接地電極は、相互に固定的に接続されており、かつ、引出マニピュレータを画定し、
上記抑制電極は、上記第1接地電極および上記第2接地電極から電気的に絶縁されており、
上記引出マニピュレータは、上記ビームラインに対して少なくとも1つ以上の方向に移動し、
上記ソース電極は、ソースギャップによって、上記第1接地電極から電気的に隔離されて
おり、
上記第1接地電極、上記抑制電極、および上記第2接地電極のうちの少なくとも1つは、対応する可変開口幅を有している可変開口電極であり、
フィードバックループにおける制御信号を用いて、イオンの測定されたエネルギーに基づいて上記ソースギャップおよび上記可変開口幅が制御される、電極システム。
【請求項2】
上記ソース電源は、上記電気的接地電位に対して正のソース電圧を上記ソース電極に供給する、請求項1に記載の電極システム。
【請求項3】
上記抑制電源は、上記ソース電極に対して負の電位を上記抑制電極に印加する、請求項2に記載の電極システム。
【請求項4】
上記第1接地電極を上記第2接地電極に固定的に接続する、1つ以上の接地ロッドをさらに備えている、請求項1に記載の電極システム。
【請求項5】
上記1つ以上の接地ロッドは、導電性を有しており、上記第1接地電極を上記第2接地電極に電気的に接続する、請求項4に記載の電極システム。
【請求項6】
上記第1接地電極および上記第2接地電極のうちの1つ以上に電気的に接続された接地部材をさらに備えており、
上記接地部材は、上記第1接地電極および上記第2接地電極をターミナル接地に電気的に接続する、請求項4に記載の電極システム。
【請求項7】
上記接地部材は、ワイヤ、ケーブル、およびロッドのうちの1つ以上を含んでいる、請求項6に記載の電極システム。
【請求項8】
イオン注入システムのためのイオン源であって、
内部領域を有するアークチャンバと、
ソース電極と、
上記ソース電極に近接して配置された第1接地電極と、
ビームラインに沿って上記第1接地電極の下流に配置された抑制電極と、
上記ビームラインに沿って上記抑制電極の下流に配置された第2接地電極と、を備えており、
上記アークチャンバは、正イオンを含むプラズマを形成し、
上記ソース電極は、上記アークチャンバの外壁内にソース開口を画定し、かつ、上記アークチャンバの上記内部領域を包囲し、
上記ソース開口は、ソース電源に電気的に接続されており、
上記第1接地電極は、第1接地開口を画定し、
上記第1接地電極は、電気的接地電位に電気的に接続されており、かつ、上記ビームラインに沿って上記イオン源から上記正イオンを引き出し、
上記抑制電極は、抑制開口を画定し、
上記抑制電極は、抑制電源に電気的に接続されており、
上記第2接地電極は、第2接地開口を画定し、
上記第1接地電極および上記第2接地電極は、相互に固定的に接続されており、かつ、上記電気的接地電位に電気的に接続されている、
上記第1接地電極、上記抑制電極、および上記第2接地電極は、相互に固定的に接続されており、かつ、引出マニピュレータを画定し、
上記抑制電極は、上記第1接地電極および上記第2接地電極から電気的に絶縁されており、
上記引出マニピュレータは、上記ビームラインに対して少なくとも1つ以上の方向に移動し、
上記ソース電極は、ソースギャップによって、上記第1接地電極から電気的に隔離されて
おり、
上記第1接地電極、上記抑制電極、および上記第2接地電極のうちの少なくとも1つは、対応する可変開口幅を有している可変開口電極であり、
フィードバックループにおける制御信号を用いて、イオンの測定されたエネルギーに基づいて上記ソースギャップおよび上記可変開口幅が制御される、イオン源。
【請求項9】
上記抑制電源は、上記第1接地電極および上記第2接地電極に対して負の電位を上記抑制電極に印加する、請求項8に記載のイオン源。
【請求項10】
上記第1接地電極を上記第2接地電極に固定的に接続する、1つ以上の接地ロッドをさらに含んでいる、請求項8に記載のイオン源。
【請求項11】
上記1つ以上の接地ロッドは、導電性を有しており、上記第1接地電極を上記第2接地電極に電気的に接続する、請求項10に記載のイオン源。
【請求項12】
イオン注入システムであって、
プラズマを形成するイオン源と、
ソース電源と、
抑制電源と、
電極システムと、を備えており、
上記電極システムは、
ソース電極と、
上記ソース電極に近接して配置された第1接地電極と、
ビームラインに沿って上記第1接地電極の下流に配置された抑制電極と、
上記ビームラインに沿って抑制電極の下流に配置された第2接地電極と、
導電性を有する1つ以上の接地ロッドと、
質量分析器と、
加速/減速装置と、
エンドステーションと、を備えており、
上記ソース電極は、上記イオン源の外壁内にソース開口を画定し、かつ、上記イオン源の内部領域を包囲し、
上記ソース開口は、上記ソース電源に電気的に接続されており、
上記第1接地電極は、第1接地開口を画定し、
上記第1接地電極は、電気的接地電位に電気的に接続されており、上記イオン源から正イオンを引き出すことによって、上記ビームラインに沿ったイオンビームを画定し、
上記抑制電極は、抑制開口を画定し、
上記抑制電極は、上記抑制電源に電気的に接続されており、
上記第2接地電極は、第2接地開口を画定し、
上記第1接地電極および上記第2接地電極は、相互に固定的に接続されており、かつ、上記電気的接地電位に電気的に接続されており、
上記1つ以上の接地ロッドは、上記第1接地電極を上記第2接地電極に固定的かつ電気的に接続し、
上記質量分析器は、上記ビームラインに沿って上記イオンビームを質量分析し、
上記加速/減速装置は、所望の注入エネルギーまで上記イオンビームを加速または減速させ、
上記エンドステーションは、上記ビームラインに沿った注入のためにワークピースを支持し、
上記第1接地電極、上記抑制電極、および上記第2接地電極は、相互に固定的に接続されており、かつ、引出マニピュレータを画定し、
上記抑制電極は、上記第1接地電極および上記第2接地電極から電気的に絶縁されており、
上記引出マニピュレータは、上記ビームラインに対して少なくとも1つ以上の方向に移動し、
上記ソース電極は、ソースギャップによって、上記第1接地電極から電気的に隔離されて
おり、
上記第1接地電極、上記抑制電極、および上記第2接地電極のうちの少なくとも1つは、対応する可変開口幅を有している可変開口電極であり、
フィードバックループにおける制御信号を用いて、イオンの測定されたエネルギーに基づいて上記ソースギャップおよび上記可変開口幅が制御される、イオン注入システム。
【請求項13】
少なくとも上記イオン源および上記電極システムを包囲する真空チャンバと、
上記真空チャンバ内に真空をもたらす真空源と、
上記真空チャンバに関連する1つ以上の真空フィードスルーと、をさらに備えており、
上記ソース電源および上記抑制電源は、上記真空チャンバに内包されておらず、
上記1つ以上の真空フィードスルーは、上記真空チャンバ内の上記真空を維持しつつ、上記ソース電源および上記抑制電源を、上記ソース電極および上記抑制電極にそれぞれ電気的に接続する、請求項12に記載のイオン注入システム。
【請求項14】
上記1つ以上の真空フィードスルーは、上記真空チャンバ内の上記真空を維持しつつ、上記第1接地電極および上記第2接地電極を、上記真空チャンバの外部のターミナル接地電位に電気的に接続する、請求項13に記載のイオン注入システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の参照]
本出願は、“TETRODE EXTRACTION APPARATUS FOR ION SOURCE”というタイトルが付された、2018年12月20日に出願された米国特許出願第16/227,296号の利益を主張する。当該特許出願の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、一般的にはイオン注入システムに関する。より詳細には、本発明は、高電流イオン注入装置のためのイオン源に応じた接地電極-抑制電極-接地電極(ground-suppression-ground electrodes)を有するテトロード引出装置(四極管引出装置)に関する。
【0003】
[発明の背景]
半導体デバイスおよび他のイオン関連製品の製造において、イオン注入システムは、ドーパント要素(成分)を半導体ウェハ、ディスプレイパネル、または他の種類のワークピース内に供給するために使用される。典型的なイオン注入システムまたはイオン注入装置は、n型またはp型のドープ領域を生成するために、または、ワークピース内にパッシベーション層を形成するために、公知のレシピまたはプロセスを利用して、イオンビームをワークピースに衝突させる。半導体をドーピングするために使用される場合、イオン注入システムは、所望の外因性材料を生成するために、選択されたイオン種を注入する。典型的には、ドーパント原子または分子は、イオン化され、分離され、場合によっては加速または減速され、ビームへと形成され、そしてワークピース内に注入される。ドーパントイオンは、ワークピースの表面に物理的に衝撃を与えて当該表面に入り、続いて、ワークピースの結晶格子構造内にて、ワークピース表面の下方において静止する。
【0004】
従来のイオン注入装置では、イオン源からイオンビームを引き出すために、いわゆる「トライオード(三極管)」設計が利用されている。従来のイオン注入装置では、イオンビームを引き出すために、イオン源の開口の前方に抑制電極および接地電極(グランド電極)が配置されている。続いて、イオンビームは、AMUまたは質量分析器マグネット(mass analyzing magnet)によって分析される。但し、引出電流が大きい場合(例えば、いわゆる「高電流注入器」)、イオンビームは、空間電荷に起因して拡張または「ブローアップ」する傾向を有しうる。この場合、イオンビームの個々のイオンは、互いに反発し合う傾向を有する。例えば、正イオンビームを引き出す場合、正イオンは、静電反発または空間電荷に起因して互いに反発する。典型的には、残留ガスも存在している。このため、ビームを中和する傾向を有する2次電子が生じる。但し、引出領域では、これらの2次電子は、強い静電界に起因して除去される。これにより、ビームの中和が防げられる。このため、イオンビームは、質量分析器マグネットを通過してイオンビーム全体を輸送することができなくなるポイントまで、ますます大きくなる。そして、イオンビームは、当該イオンビームの上端および下部においてクリップされる(削がれる)。
【0005】
イオンビームを引き出すために三極管設計を利用することとは対照的に、「テトロード(四極管)」設計が利用されてもよい。この場合、より大きい程度の柔軟性が実現される。最初に
図1を参照する。米国特許第6,559,454号に開示されている通り、従来のテトロード引出アセンブリ10が図示されている。テトロード引出アセンブリ10は、ハウジング15を備える。ハウジングは、当該ハウジング15に取り付けられたアークチャンバ20Aを有する。ブッシング20Bは、プラズマ源20をハウジング15の残りの部分から隔離(分離)(isolate)するための絶縁体として作用する。アークチャンバ20A内に形成されたイオンは、プラズマ源20から、当該源20の前面内の出口開口(出射開口)21を通じて引き出される。これにより、プラズマ源20のソース電位(ソースポテンシャル)にあるソース電極22が画定(規定)される。引出電極23、抑制電極24、および接地電極25のそれぞれ(以降では、E-S-Gと称される)は、導電性プレートを備える。導電性プレートは、自身を貫通するそれぞれの開口を有する。当該開口によれば、イオンビーム30を通過させ、当該イオンビームをイオン源アセンブリ10から出射させることができる。
【0006】
例えば、正イオンビーム30の場合、イオン源20は、高い正電位(10~90kV)にバイアスされる。これにより、イオンビーム30の最終エネルギーが概ね決定される。プラズマ源20からイオンを引き出すために、引出電極23は、ソース電極22に関連するソース電位に対して負にバイアスされる。そして、接地電極の下流に位置する電子がプラズマ源へと逆流(バックストリーミング)することを防止するために、抑制電極24は、接地電極25に対して負にバイアスされる。これにより、ビームの中和が維持される。典型例には、引出電極23は、(i)アーム43上に、絶縁体44と共に、プラズマ源20に取り付けられ、かつ、(ii)当該プラズマ源に対して電源と共にバイアスされる。
【0007】
従来のテトロード引出アセンブリ10は、ソース電極22、引出電極23、および抑制電極24にそれぞれ電力を供給するために、3つの電源(不図示)およびそれぞれのフィードスルー(不図示)を使用する。この場合、コーティング(被覆)および/または電気的短絡が起こりうる。さらに、従来のイオン源アセンブリ10は、引出電極に関連する絶縁体44の被覆、または、絶縁体間の他の電気的短絡を被りうる。加えて、ソース電極22、引出電極23、抑制電極24、および接地電極25にそれぞれ関連する4つの開口を有している場合、4つの開口の全てのアライメント(位置合わせ)に関連する様々な事柄が問題となりうる。
【0008】
[発明の概要]
本発明は、高電流イオン注入システムのための効率的な引出電極システムを提供することによって、従来技術の制限を克服する。そこで、以下では、本発明の一部の態様についての基本的な理解を提供するために、本開示についての簡略化された概要を提示する。この要約は、本発明の広い概観ではない。また、本発明の重要または主要な要素を特定することも、本発明の範囲を規定することも意図していない。本概要の目的は、後に提示されるより詳細な説明の前置きとして、本開示の一部のコンセプトを簡略化された形式にて提示することにある。
【0009】
本開示のある例示的な態様によれば、イオン源のための電極システムが提供される。上記電極システムは、上記イオン源に関連するソース電極を備える。上記ソース電極は、イオン源チャンバの外壁内にソース開口を概ね画定する。上記ソース開口は、ソース電源に電気的に接続(結合)されている。第1接地電極(第1グランド電極)は、上記ソース電極に近接して配置されている。上記第1接地電極は、第1接地開口(第1グランド開口)を概ね画定する。上記第1接地電極は、電気的接地電位(electrical ground potential)に電気的に接続されており、かつ、ビームラインに沿って上記イオン源からイオンを引き出す。抑制電極は、上記ビームラインに沿って上記第1接地電極の下流に配置されている。上記抑制電極は、抑制開口を概ね画定する。例えば、上記抑制電極は、抑制電源に電気的に接続されている。第2接地電極(第2グランド電極)は、上記ビームラインに沿って上記抑制電極の下流にさらに配置されている。上記第2グランド電極は、第2接地開口(第2グランド開口)を概ね画定する。一例として、上記第1接地電極と上記第2接地電極とは、相互に固定的に接続されており、かつ、上記電気的接地電位に電気的に接続されている。一例として、上記ソース電極は、ソースギャップによって、上記第1接地電極から電気的に隔離されている。例えば、上記ソース電源は、上記接地電位に対して正のソース電圧を上記ソース電極に供給する。例えば、上記抑制電源は、上記接地電極に対して負の電位を上記抑制電極に印加する。
【0010】
別の例では、1つ以上の接地ロッド(グランドロッド)が、上記第1接地電極を上記第2接地電極に固定的に接続する。例えば、上記1つ以上の接地ロッドは、導電性を有しており、上記第1接地電極を上記第2接地電極に電気的に接続する。別の例では、接地部材が、上記第1接地電極および上記第2接地電極のうちの1つ以上に電気的に接続されている。上記接地部材は、上記第1接地電極および上記第2接地電極を電気的接地に電気的に接続する。例えば、上記接地部材は、ワイヤ、ケーブル、およびロッドのうちの1つ以上を含みうる。
【0011】
別の例では、上記第1接地電極、上記抑制電極、および上記第2接地電極は、相互に固定的に接続されている。上記抑制電極は、上記第1接地電極および上記第2接地電極から電気的に絶縁されている。例えば、上記第1接地電極、上記抑制電極、および上記第2接地電極は、引出マニピュレータを概ね画定しうる。上記引出マニピュレータは、上記ソースに対して少なくとも1つ以上の方向に移動する。
【0012】
別の例示的な態様によれば、イオン注入システムのためのイオン源が提供される。アークチャンバは、内部領域を有している。上記アークチャンバは、正イオンを含むプラズマを形成する。ソース電極は、上記アークチャンバの外壁内にソース開口を概ね画定し、かつ、上記アークチャンバの上記内部領域を概ね包囲する。上記ソース開口は、ソース電源に電気的に接続されている。例えば、第1接地電極は、上記ソース電極に近接して配置されている。上記第1接地電極は、第1接地開口を概ね画定する。上記第1接地電極は、電気的接地電位に電気的に接続されており、かつ、ビームラインに沿って上記イオン源から上記正イオンを引き出す。抑制電極は、上記ビームラインに沿って上記第1接地電極の下流にさらに配置されている。上記抑制電極は、抑制開口を概ね画定する。上記抑制電極は、抑制電源に電気的に接続されている。例えば、第2接地電極は、上記ビームラインに沿って上記抑制電極の下流に配置されている。上記第2接地電極は、第2接地開口を概ね画定する。上記第1接地電極および上記第2接地電極は、相互に固定的に接続されており、かつ、上記電気的接地電位に電気的に接続されている。
【0013】
さらに別の例示的な態様によれば、イオン注入システムが提供される。上記イオン注入システムは、上述の各例のいずれかにおける、プラズマを形成するイオン源を備える。上記イオン注入システムは、上記ビームラインに沿って上記イオンビームを質量分析する質量分析器をさらに備える。所望の注入エネルギーまで上記イオンビームを加速または減速させる加速/減速装置が、さらに設けられている。エンドステーションは、上記ビームラインに沿った注入のためにワークピースを支持する。
【0014】
一例として、真空チャンバは、少なくとも上記イオン源および上記電極システムを概ね包囲する。上記ソース電源および上記抑制電源は、上記真空チャンバに内包されていない。真空源(例:真空ポンプ)は、上記真空チャンバ内に真空をもたらす。1つ以上の真空フィードスルーは、上記真空チャンバにさらに関連付けられている。例えば、上記1つ以上の真空フィードスルーは、上記真空チャンバ内の上記真空を維持しつつ、上記ソース電源および上記抑制電源を、上記ソース電極および上記抑制電極にそれぞれ電気的に接続する、イオン注入システム。一例として、上記第1接地電極および上記第2電極は、上記真空チャンバと同電位(等電位)にある。
【0015】
上述の目的およびこれに関連した目的を達成するために、本発明は、以下に詳細に記載されており、かつ、クレームにおいて具体的に挙示された各構成を含んでいる。以下の記載および添付の図面は、本発明の例示的な実施形態を詳細に開示している。但し、これらの実施形態は、本発明の原理を用いる種々の方法の一部を示しているにすぎない。本発明の他の目的、利点、および新規な構成は、図面を参照して、本発明の詳細な記載から明らかになるであろう。
【0016】
[図面の簡単な説明]
図1は、従来技術のイオン源引出装置の模式図である;
図2は、本発明の一態様に係るイオン注入システムを示す;
図3は、本発明の一態様に係るイオン源装置の断面図である;
図4は、本発明の別の態様に係るイオン源電極装置(イオンソース電極装置)の断面図を示す;
図5は、本発明のさらに別の例示的な態様に係る電極の斜視図である。
【0017】
[発明の詳細な説明]
本発明は、イオン注入システムにおいて使用するための改良されたイオン引出電極装置、システム、および方法を概ね対象としている。そこで、以下では、図面を参照して本発明を説明する。図面において、同様の参照番号は、全体を通して同様の要素(部材)を指すために使用されてよい。これらの態様についての説明は、単に例示的なものであり、限定的な意味合いにて解釈されるべきではないことを理解されたい。以下の記載では、説明を目的として、本発明についての十分な理解を提供すべく、様々な特定の詳細部が開示されている。当業者であれば、本発明は、これらの特定の詳細部がなくとも実施されうることが明らかであろう。さらに、本発明の範囲は、添付の図面を参照して以下に記載されている実施形態または例によって限定されることは意図されていない。本発明の範囲は、添付のクレームおよびその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
【0018】
また、図面は、本開示の実施形態の一部の態様についての例示を与えるために提供されており、概略的なものに過ぎないと見なされるべきであることにも留意されたい。特に、図面に示される各部材は、必ずしも互いにスケール通りではなく、図面における様々な部材配置は、それぞれの実施形態についての明確な理解を提供するように選択されている。これらは、本発明の実施形態に係る実施における様々なコンポーネントの実際の相対位置を表現したものであると必ずしも解釈されるべきではない。さらに、本明細書において説明されている様々な実施形態および例の構成は、特に明示されない限り、互いに組み合わせられてよい。
【0019】
また、以下の説明では、図面に示されている、または、本明細書において説明されている、機能ブロック、デバイス、コンポーネント、回路素子、あるいは他の物理的または機能的ユニット間の任意の直接的な接続または結合も、間接的な接続または結合によって実施されうることを理解されたい。さらに、図面に示されている機能ブロックまたはユニットは、(i)ある実施形態では個別の構成または回路として実装されてもよいし、あるいは、(ii)代替的には、別の実施形態では、共通の構成または回路によって完全にまたは部分的に実装されてもよいことを理解されたい。例えば、一部の機能ブロックは、共通のプロセッサ(例:信号プロセッサ)において実行されるソフトウェアとして実装されてもよい。さらに、以下の説明において有線ベースとして記載されている任意の接続は、特に明示されない限り、無線通信として実装されてもよいことが理解されるべきである。
【0020】
本開示についてのより良い理解を得るために、
図2は、本開示の様々な例示的な態様に係るイオン注入システム100を示す。システム100は、例示の目的にて提示されている。本開示の態様は、記載されている上記イオン注入システムに限定されず、様々な構成の他の適切なイオン注入システムを使用することもできることを理解されたい。イオン注入システム100は、(i)ターミナル102と、(ii)ビームラインアセンブリ104と、(iii)イオン注入システムのビームライン108を概ね画定するエンドステーション106と、を有する。
【0021】
図示されている例では、後により詳細に述べる通り、ターミナル102は、(i)イオン源110(例:プラズマ発生コンポーネント)と、(ii)カソード112と、(iii)フィラメント114(例:タングステンまたはタングステン合金から成るロッド)と、(iv)アノード116と、(v)リペラ118と、(vi)ガス源(ガスソース)120と、(vii)イオン源電極システム(イオンソース電極システム)122と、を備える。例えば、ドーパントガスは、ガスコンジット126を介して、ガス源120からイオン源110のイオン源チャンバ(イオンソースチャンバ)124に供給されてよい。ガス源120は、イオンが生じるイオン源102の領域128内に、1つ以上のプレカーサガス(前駆体ガス)を、(例えば、コンジット126を介して)供給する。例えば、フィラメント114は、当該フィラメント内の電子を励起するために、(例えば、約2500°Kまで)加熱される。これにより、電子を、ガス源120によって供給されるドーパントガスの分子と衝突させることができる。例えば、カソード112は、ドーパントガスが存在する領域128内において電子の熱放出(thermionic emissions of electrons)を生じさせるための付加的なエネルギーを供給するように、さらに給電されてもよい。アノード116は、領域128内に電子を引き込むことを補助する。例えば、アノード116は、イオン源110の側壁134を含みうる。一例では、さらなる電子を領域128内に引き込むことを促進するために、カソード112とアノード116との間にバイアスを設定することができるように、アノード116がさらに給電されてもよい。
【0022】
リペラ118は、例えば、領域128内に電子を維持することを補助することもできる。特に、リペラ118に供給されるバイアスは、アノード112から放出された電子を領域128内へと戻すように反発させるように設定されている。同様に、ソースマグネット(不図示)によってイオン源110内に誘起される磁界は、領域128内およびソース110の側壁から外れた電子を維持するように機能しうる。領域128内を移動する電子は、ガス源120から供給されたドーパントガス分子と衝突して、イオンを形成するか、あるいはイオンを発生させる。特に、十分な運動量を伴ってドーパントガス分子と衝突する電子は、ドーパントガス分子から1つ以上の電子を取り除く。これにより、正帯電イオン(正に帯電したイオン)が発生する。
【0023】
図示されていないが、本開示は、上述のアーク放電イオン源以外の様々な他のタイプのイオン源を考慮している。例えば、イオン源は、イオンを発生させるために、RF励起(高周波励起)の手段を含んでいてもよい。このような源は、米国特許第5,661,308号に開示されている。当該特許の開示の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。本開示によって考慮されている他のタイプのイオン源は、イオンを発生させるために、電子ビーム注入による励起を含んでいてもよい。本発明が適用されるイオン源のさらなる例は、複数のイオンを発生させるために、マイクロ波励起を含むイオン源である。
【0024】
本開示によれば、ソース電極130は、イオン源110に関連している。ソース電極はイオン源チャンバ124の外壁134内にソース開口132を概ね画定する。例えば、ソース開口132は、ソース電源136に電気的に接続されている。ソース電源は、接地電位(グランド電位)に対して正であるソース電圧(例えば、約10~100keVの範囲内)を、ソース電極に供給するように構成さていれる。
【0025】
さらに、第1接地電極138は、ソース電極130に近接して配置されている。第1接地電極は、第1接地開口140を概ね画定する。例えば、第1接地電極138は、電気的ターミナル接地電位142に電気的に接続されている。このように、第1接地電極は、ソース開口132を介してイオン源110からイオンを引き出すように構成されている。これにより、ビームライン146を概ね画定するイオンビーム144を形成できる。例えば、ソース電極130は、ソースギャップ148によって、第1接地電極から電気的に隔離(例えば、電気的に絶縁)されている。
【0026】
このように、接地電位にある第1接地電極138は、イオン源110に対して負にバイアスされている。これにより、正イオンを、ソースギャップ148を越えて(across)第1接地電極に引き付けることができる。一例において、イオンビーム144は、高エネルギーイオンビーム(例えば、約10~100keVの範囲内)を含んでいる。但し、イオンビームの他のエネルギーもまた、本開示の範囲内にあると考慮されている。
【0027】
本開示の一例では、ビームライン146に沿ってイオン源110に向かって引き付けられる電子を抑制するために、抑制電極150がさらに設けられている。この場合、抑制電極は、抑制電源152によって、接地電位に対して概ね負にバイアスされる。例えば、抑制電源152は、ソース電源136によってソース電極130に供給される電位よりも低いが、ターミナル接地電位142に対しては正である、ある負の電位を、抑制電極150に印加するように構成されている。例えば、抑制電極150は、抑制電源に電気的に接続され、かつ、抑制開口154を概ね画定するように構成されている。イオンビーム144は、抑制開口154を通過する。
【0028】
さらに、第2接地電極156は、ビームライン146に沿って、抑制電極150の下流に配置されている。この場合、第2接地電極は、接地電位142にさらに電気的に接続されている。例えば、第2接地電極156は、第2接地開口158を概ね画定する。イオンビーム144は、第2接地開口158を通過する。
【0029】
本開示の1つの例示的な態様では、第1接地電極138および第2接地電極156は、相互に固定的に接続されているとともに、両方とも電気的ターミナル接地電位142に電気的に接続されている。さらに、抑制電極150は、(i)第1接地電極138および第2接地電極156のうちの1つ以上に固定的に接続されているとともに、(ii)これらからさらに電気的に絶縁されていてもよい。従って、一例では、イオン源電極システム122は、イオン源110に対して、ユニットとして移動されうる。この場合、第1接地電極138、第2接地電極156、および抑制電極150の相互の相対的位置に影響を与えることなく、ソースギャップ148が制御されうる。別の例では、第1接地電極138および第2接地電極156は、抑制電極150の位置とは無関係に(独立して)、相互に固定的に結合されうる。この場合、第1接地電極および第2接地電極は、ソース開口132および抑制電極150のうちの1つ以上に対して、ユニットとして移動されうる。
【0030】
本開示では、第1接地電極138、抑制電極150、および第2接地電極156のいずれかが、単一のプレートまたは2つ以上の個別のプレート(不図示)のうちの1つ以上をさらにそれぞれ備えているものとして考慮している。この場合、第1接地開口140、抑制開口154、および第2接地開口158は、それぞれの固定幅または可変幅を有しうる。これらは、当業者には、可変開口電極(variable aperture electrode,VAE)としても知られている。
【0031】
イオン源電極(イオンソース電極)130および抑制電極150は、相互に電気的に絶縁されているとともに、第1接地電極138および第2接地電極156から電気的に絶縁されている。例えば、抑制電源152およびソース電源136は、コントローラ160(例:制御システム)にさらに接続されている。コントローラ160は、抑制電極150およびイオン源チャンバ124のそれぞれにおける電位を制御し、かつ、一例ではギャップ148をさらに選択的に制御するための制御信号を生成するように構成されている。従って、イオン発生におけるパラメータ(例:ギャップ148、開口幅、開口サイズ、および開口アライメントのみならず、抑制電極150およびイオン源チャンバ124などに印加される電位)を制御するために、イオンエネルギーがフィードバックループにおいて測定され、かつ使用されてもよい。例えば、コントローラ160は、測定されたエネルギーに応じてイオンビーム144の様々なパラメータを制御するための制御信号を生成するように、さらに構成されてもよい。
【0032】
イオンビーム144は、イオン源電極システム122を通過した後、ビームラインアセンブリ104および関連する質量分析器マグネット(mass analyzer magnet)162に入る。例えば、質量分析器マグネット162は、約90°の角度、または別の角度において実現されうる。これにより、質量分析器マグネットの内部に磁界が発生する。イオンビーム144が質量分析器マグネット162に入ると、不適切な電荷対質量比のイオンが拒絶されるように、イオンビームは磁界によって対応して曲げられる。より詳細には、大きすぎる電荷対質量比または小さすぎる電荷対質量比を有するイオンが、質量分析器マグネット162の側壁164へと偏向させられる。このようにして、質量分析器マグネット162は、所望の電荷対質量比を有するイオンのみをビーム144内に残し、かつ、当該イオンに当該質量分析器マグネットを完全に通過させる(traverse)ことを選択的に許容する。
【0033】
例えば、コントローラ160は、各特性の中でも特に、磁界の強度および向き(配向)を調整してよい。例えば、磁界は、質量分析器マグネット162のコイル巻線を流れる電流の量を調整することによって制御されてよい。コントローラ160は、(例えば、オペレータによって、以前に取得されたデータおよび/または現在取得されているデータによって、および/またはプログラムによって)イオン注入システム100を全体的に制御するための、プログラマブルマイクロコントローラ、プロセッサ、および/または他のタイプの計算器メカニズムを含みうると理解されるであろう。
【0034】
例えば、質量分析器マグネット162の出口に近接する分解開口166は、ビーム経路(ビームパス)146に従って調整されてよい。一例では、分解開口166は、x方向に関して移動可能である。これにより、変更された経路が分解開口を通って出て行く場合に、当該変更された経路に適合できる。別の例では、分解開口166は、選択された範囲における変更された経路に適合できるように成形されている。質量分析マグネット(mass analysis magnet)162および分解開口166は、イオン注入システム100に応じた適切な質量分解能を維持しつつ、磁界の変動およびその結果として生じる変更された経路を実現する。
【0035】
例えば、イオンビーム144は、比較的狭いプロファイル(例えば、「ペンシル」または「スポット」ビーム)を有しうる。イオンビーム144は比較的狭いプロファイルを有するものとして説明されうるが、代替的に、イオンビームは細長いプロファイル(例えば、公称ビーム経路146に沿って見た場合に、概ね楕円形の断面,概して「リボン」イオンビームと称される)を有していてもよいことに留意されたい。そして、全てのそのようなイオンビームは、本開示の範囲内に含まれると考慮されている。一例では、走査および/または集束システム168が提供されている。この場合、イオンビーム144をそれぞれ走査および集束/ステアリングするために、走査部材170と集束および/またはステアリング部材172とのうちの1つ以上が設けられている。本例では、走査イオンビーム(走査されたイオンビーム)174を画定するために、イオンビーム144が走査および/または集束システム168によって走査される。
【0036】
例えば、図示されている例では、走査ビーム174は、ダイポールマグネット(双極子マグネット)178を含むパラレライザ/コレクタ(平行化器/補正器)176を通過する。本例におけるダイポールマグネット178は、実質的に(ほぼ)台形であり、かつ、相互に鏡像的に向かい合わせられている(oriented mirror to one another)。これにより、ビーム144(例えば、走査イオンビーム174)をほぼS字状に屈曲させる(曲げる)ことができる(この場合、例えば、ダイポールは、等しい角度および半径と、反対方向の曲率とを有する)。従って、パラレライザ/コレクタ176は、走査角度によらずビームがビーム軸に対して平行に進むように、走査イオンビーム174の経路を変更させる。その結果、注入角度は、エンドステーション106内のワークピースサポート182上に配置されたワークピース180に対して比較的均一である。
【0037】
例えば、1つ以上の減速ステージ184が、パラレライザ/コレクタ176の下流にさらに配置されてよい。ビームブローアップの傾向を緩和するために、イオン注入システム100におけるこのポイントまで、イオンビーム144は比較的高いエネルギーレベルにおいて概ね輸送される。ビームブローアップは、ビーム密度が高くなる位置において(例:例えば走査頂点186において)、特に高くなりうる。例えば、1つ以上の減速ステージ184は、イオンビーム144を減速するように動作可能な1つ以上の減速電極またはレンズ188を含みうる。
【0038】
米国特許第6,777,696号明細書に記載されている通り、例示的な走査部材170、集束および/またはステアリング部材172、および減速ステージ184は、イオンを加速および/または減速させるのみならず、イオンビーム144を集束、屈曲、偏向、収束、発散、走査、平行化、および/または浄化するように、配置およびバイアスされた任意の適切な数の電極またはコイルを含みうると理解されるであろう。当該特許出願の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
例えば、エンドステーション106は、ワークピース180に向けて導かれたイオンビーム144(例えば、走査イオンビーム174)を受容する。イオン注入システム100では、異なる種類のエンドステーション106が使用されうることを理解されたい。例えば、「バッチ」タイプのエンドステーションは、回転支持構造体(不図示)上において、複数のワークピース180を同時に支持することができる。この場合、全てのワークピースが完全に注入されるまで、ワークピースはイオンビーム144の経路を通るように回転されられる。一方、「シリアル」タイプのエンドステーションは、注入のためのビーム経路146に沿った単一のワークピース180を支持する。この場合、複数のワークピースは、シリアル方式によって一度に1つずつ注入される。各ワークピースは、次のワークピースの注入が開始される前に、逐次的に(シリアル的に)注入される。ハイブリッドシステムでは、ワークピース180が第1(Yまたは低速走査)方向に機械的に移動させられてよい。その一方、イオンビーム144は、第2(Xまたは高速走査)方向に走査される。これにより、ワークピース180の全体に亘ってイオンビームを供給できる。
【0040】
例えば、制御システム160は、イオン源10、質量分析器162、分解開口166、走査および/または集束システム168、パラレライザ178、および減速ステージ184を、制御、通信、および/または調整するために、さらに設けられている。制御システム160は、コンピュータ、マイクロプロセッサ等を含みうる。制御システム160は、ビーム特性の測定値を取得し、相応にパラメータを調整するように動作可能であってもよい。例えば、制御システム160は、イオンのビームが生じるターミナル102のみならず、ビームラインアセンブリ104の質量分析器162、走査部材170、集束およびステアリング部材172、パラレライザ178、および減速ステージ184に、1つ以上のそれぞれの電源(不図示)を介して接続されてよい。従って、これらの部材のいずれも、所望のイオン注入を促進するために、制御システム160によって調整されうる。例えば、(i)ソース電源136によってソース電極132に印加されるバイアス、および、(ii)抑制電源152によって抑制電極150に供給されるバイアスを調整することによって、接合深さを調整するために、ビームのエネルギーレベルが調整されてよい。
【0041】
ビーム電流は、イオン注入システム100のコンポーネントの多くから影響を受けうることが理解されるであろう。例えば、第1接地電極138および第2接地電極156の接地電位に対する、イオン源電極130および抑制電極150におけるそれぞれのバイアスは、イオンビーム144のビーム電流に影響を与えうる。従って、イオン源電源(イオンソース電源)136および抑制電源152のうちの1つ以上をそれぞれ選択的に制御することによって、ビーム電流を変化させることができる。第1接地電極138および第2接地電極156は、イオン源電極130および抑制電極150とは異なる電圧によって、概ね調整されうることが理解されるであろう。当該電圧は、第1接地電極および第2接地電極の両方において等しい。そして、当該電圧は、ターミナル接地電位142と同じであってもよいし、あるいは当該ターミナル接地電位と異なっていてもよい。
【0042】
例えば、上述の電圧供給は、測定システム190に基づいて、コントローラ160によって制御されてよい。当該測定システム(例えば、ファラデーカップを含む)は、イオン注入中に利用されうる走査イオンビーム174について、走査終了ビーム電流(end-of-scan beam current)の指標(indication)を提供してよい。
【0043】
続いて、
図3を参照する。本開示では、例示的なイオン源110およびイオン源電極アセンブリ(イオンソース電極アセンブリ)122がより詳細に示されている。上述の通り、第1接地電極138および第2接地電極156は、相互に接続されている。そして、第1接地電極および第2接地電極は、接地電位142に電気的に接続されている。
図3に示す通り、第1接地電極138および第2接地電極156は、1つ以上の接地ロッド192によって相互に接続されている。1つ以上の接地ロッドは、第1接地電極を第2接地電極に固定的に接続する。例えば、1つ以上の接地ロッド192は、導電性を有しており、第1接地電極138を第2接地電極156に電気的に接続する。
【0044】
一例では、接地部材194がさらに設けられている。接地部材は、第1接地電極138および第2接地電極156のうちの1つ以上に電気的に接続されている。例えば、接地部材194は、ワイヤ、ケーブル、およびロッドのうちの1つ以上を含みうる。接地部材は、第1接地電極138および第2接地電極156を、接地電位142(例えば、ターミナル接地)に電気的に接続する。第1接地電極138および第2接地電極156は、相互に電気的に接続されている。このため、有益であることに、本開示は、第1接地電極および第2接地電極の両方に対して、
図2の真空エンクロージャ198を貫く単一の電気的フィードスルー196を提供できる。
【0045】
一例では、第1接地電極138、抑制電極150、および第2接地電極156は、相互に固定的に接続されている。そして、抑制電極は、第1接地電極および第2接地電極から電気的に絶縁されている。例えば、第1接地電極138、抑制電極150、および第2接地電極156は、引出マニピュレータ200を概ね画定する。引出マニピュレータは、ビームラインに対して少なくとも1つ以上の方向(例えば、x方向、y方向、およびz方向のうちの1つ以上)に移動するように構成されている。
【0046】
従って、例えばアインツェルレンズ(Einzel lens)が後続する単一ギャップ引出を利用した引出スキームが提供される。この場合、強い集束性能(集束能力)は、低ビーム発散を実現し、かつ、AMUマグネットを通過するビーム輸送を促進するとともに、電子がソースへと逆流することを依然として防止する。
図4および
図5は、引出マニピュレータ200の一例を示す。本例では、抑制電極150は、(i)第1接地電極138によって支持されており、かつ、(ii)1つ以上の絶縁体202によって、当該第1接地電極138から電気的に絶縁されている。
【0047】
このように、有益であることに、本開示は、イオン源110からイオンビーム144を引き出すために、第1接地電極138を提供する。一方、従来のシステムは、典型的には、ソースに対して負にバイアスされた電極を提供する。当該電極は、個別のフィードスルーおよび電源を必要とする。このため、コストが増加し、かつ、負にバイアスされた電極のための真空フィードスルーに関連する信頼性の問題(例えば、フィードスルーの被覆および短絡など)が引き起こされる。本開示は、第1接地電極138および第2接地電極156を、電気的かつ物理的に接続する。これにより、電気的接地電位への接続のために、単一の真空フィードスルーを利用することができる。
【0048】
本開示は、従来のシステムよりも良好な熱膨張特性のみならず、従来のシステムよりも良好なビーム補正をもさらに提供する。例えば、イオンがイオン源110から引き出されると、当該イオンは、イオン源に関連する磁界によって偏向させられる。イオンは、イオン源から出た直後に最低のエネルギーを有し、かつ、ソース磁界も最も強くなるであろう。それゆえ、このような偏向は、引出ギャップ148において最大となる。このような偏向を補正するために、引出マニピュレータ200全体を相応に移動させてもよい。ボロン(ホウ素)、ヒ素(アーセニック)、リン等などの異なる種のイオンビームが、イオン注入システム100において利用されてよい。この場合、異なる引出エネルギーが相応に提供される。従って、異なるソース磁界を有する異なる設定および補正を変更することができる。また、本開示は、このような場合にさらなる柔軟性を提供する。
【0049】
本開示は、コンパクトな引出マニピュレータ200を提供する。このため、信頼性を向上させ、残留物によって被覆される絶縁体をより少なくし、かつ、従来のシステムに比べて故障メカニズムをより少なくすることができる。これにより、電極アライメントの問題が軽減される。
【0050】
本発明は、ある好適な実施形態に対して図示および説明されているが、本明細書と添付の図面とを読んで理解すれば、他の当業者も同等の変更および修正を認識できるであろうことは自明である。特に、上述のコンポーネント(アセンブリ、デバイス、回路など)によって実行される様々な機能に関して、そのようなコンポーネントを説明するために使用される用語(「手段」への言及を含む)は、特に明示されない限り、本明細書にて示されている本発明の例示的な実施形態において機能を実行する開示された構造と構造的に等価(同等)ではないにもかかわらず、説明されたコンポーネントの特定の機能を実行する(すなわち、機能的に等価である)任意のコンポーネントに対応することが意図されている。さらに、本発明の特定の構成は、複数の実施形態のうちの1つのみに対して開示されているが、そのような構成は、任意の所与または特定の用途(アプリケーション)にとって望ましくかつ有益である他の実施形態における1つ以上の構成と組み合わせられてよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】従来技術のイオン源引出装置の模式図である。
【
図2】本発明の一態様に係るイオン注入システムを示す。
【
図3】本発明の一態様に係るイオン源装置の断面図である。
【
図4】本発明の別の態様に係るイオン源電極装置の断面図を示す。
【
図5】本発明のさらに別の例示的な態様に係る電極の斜視図である。