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特許7492517樹脂組成物、成形品、キット、および、成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形品、キット、および、成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/06 20060101AFI20240522BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20240522BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20240522BHJP
   C08K 5/5399 20060101ALI20240522BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240522BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240522BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20240522BHJP
   B29C 65/16 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C08L77/06
C08L53/02
C08L71/12
C08K5/5399
C08K7/14
C08K3/22
C08K3/016
B29C65/16
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021533001
(86)(22)【出願日】2020-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2020026703
(87)【国際公開番号】W WO2021010255
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2019130529
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523168917
【氏名又は名称】グローバルポリアセタール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】岡元 章人
(72)【発明者】
【氏名】住野 隆彦
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-132027(JP,A)
【文献】特開2019-025673(JP,A)
【文献】特開2013-039771(JP,A)
【文献】国際公開第2014/042068(WO,A1)
【文献】特開2016-196563(JP,A)
【文献】特許第5243006(JP,B2)
【文献】特開2010-260995(JP,A)
【文献】特開2011-012206(JP,A)
【文献】特開2009-161748(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0040023(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/06
C08L 53/02
C08L 71/12
C08K 5/5399
C08K 7/14
C08K 3/22
C08K 3/016
B29C 65/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂20~40質量%と、
フォスファゼン系難燃剤3質量%以上20質量%以下と、
エラストマーである無水マレイン酸変性スチレンブロック重合体1.0~3.0質量%と、
ポリフェニレンエーテル系樹脂1.0質量%以上、20.0質量%以下と、
亜鉛酸化物6.1質量%以上8.9質量%以下と、
ガラス繊維と、
光透過性色素とを含む樹脂組成物であって、
前記光透過性色素を前記樹脂組成物100質量部に対し、0.001質量部以上5.0質量部以下の割合で含み、
前記樹脂組成物を1mmの厚さに成形したときの、波長940nmにおける光線透過率が30%以上100%未満であり、
前記樹脂組成物を4mm厚さに成形したときの、ISO179に従ったノッチ無シャルピー衝撃強さが50kJ/m2以上70kJ/m2以下、かつ、ISO179に従ったノッチ有シャルピー衝撃強さが10kJ/m2以上20kJ/m2以下であり、
前記樹脂組成物を0.75mmの厚さに成形したときの、UL94燃焼性試験において、V-0に適合し、
前記エラストマーである無水マレイン酸変性スチレンブロック重合体中のポリスチレンの含有量が前記樹脂組成物の0.3~0.8質量%であり、
前記キシリレンジアミンが、メタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンを含み、前記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸を含み、
前記樹脂組成物における、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂の含有量が前記樹脂組成物の4質量%以下であり、
前記ガラス繊維の含有量は、樹脂組成物中、40質量%以上50質量%以下であり、
前記ガラス繊維はEガラス繊維であり、
レーザー溶着用の樹脂組成物
【請求項2】
エラストマーである無水マレイン酸変性スチレンブロック重合体とポリフェニレンエーテル系樹脂の質量比率が、1:1~1:35である、請求項1に記載のレーザー溶着用の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が無水マレイン酸変性されている、請求項1または2に記載のレーザー溶着用の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載のレーザー溶着用の樹脂組成物から形成されたレーザー溶着用の成形品。
【請求項5】
請求項1または2に記載のレーザー溶着用の樹脂組成物と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物とを有するレーザー溶着用のキット。
【請求項6】
請求項1または2に記載のレーザー溶着用の樹脂組成物を成形してなる成形品と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物を成形してなる成形品を、レーザー溶着させることを含む、レーザー溶着成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載のレーザー溶着用の樹脂組成物、または、請求項4に記載のキットを成形してなるレーザー溶着成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形品、キット、および、成形品の製造方法に関する。特に、レーザー溶着用に適した樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いたキット、成形品の製造方法および成形品に関する。本発明の樹脂組成物は、レーザー溶着用の光を透過する側の樹脂組成物(光透過性樹脂組成物)として主として用いられる。
【背景技術】
【0002】
代表的なエンジニアリングプラスチックであるポリアミド樹脂は、加工が容易であり、さらに、機械物性、電気特性、耐熱性、その他の物理的・化学的特性に優れている。このため、車両部品、電気・電子機器部品、その他の精密機器部品等に幅広く使用されている。最近では形状の複雑な部品もポリアミド樹脂で製造されるようになって来ており、例えば、インテークマニホールドのような中空部を有する部品などの接着には、各種溶着技術、例えば、接着剤溶着、振動溶着、超音波溶着、熱板溶着、射出溶着、レーザー溶着技術などが使用されている。
【0003】
しかしながら、接着剤による溶着は、硬化するまでの時間的ロスに加え、周囲の汚染などの環境負荷の問題がある。超音波溶着、熱板溶着などは、振動、熱による製品へのダメージや、摩耗粉やバリの発生により後処理が必要になるなどの問題が指摘されている。また、射出溶着は、特殊な金型や成形機が必要である場合が多く、さらに、材料の流動性が良くないと使用できないなどの問題がある。
【0004】
一方、レーザー溶着は、レーザー光に対して透過性(非吸収性、弱吸収性とも言う)を有する樹脂部材(以下、「透過樹脂部材」ということがある)と、レーザー光に対して吸収性を有する樹脂部材(以下、「吸収樹脂部材」ということがある)とを接触し溶着して、両樹脂部材を接合させる方法である。具体的には、透過樹脂部材側からレーザー光を接合面に照射して、接合面を形成する吸収樹脂部材をレーザー光のエネルギーで溶融させ接合する方法である。レーザー溶着は、摩耗粉やバリの発生が無く、製品へのダメージも少なく、さらに、ポリアミド樹脂自体、レーザー透過率が比較的高い材料であることから、ポリアミド樹脂製品のレーザー溶着技術による加工が、最近注目されている。
【0005】
上記透過樹脂部材は、通常、光透過性樹脂組成物を成形して得られる。このような光透過性樹脂組成物として、特許文献1には、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対し、(B)23℃の屈折率が、1.560~1.600である強化充填材1~150質量部を配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、前記(A)ポリアミド樹脂の少なくとも1種を構成する、少なくとも1種のモノマーが芳香環を含有することを特徴とする、レーザー溶着用ポリアミド樹脂組成物が記載されている。特許文献1の実施例では、ポリアミドMXD6とポリアミド66とのブレンド物、または、ポリアミド6I/6Tとポリアミド6とのブレンド物に、ガラス繊維と、着色剤を配合した樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-308526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、レーザー溶着用の樹脂組成物にもシャルピー衝撃強さが求められる場合がある。さらに、レーザー溶着用の樹脂組成物にも難燃性が求められることもある。
しかしながら、本発明者が検討を行ったところ、優れた難燃性と高いシャルピー衝撃強さの両立が難しいことが分かった。
特に、樹脂組成物を4mm厚さに成形したときの、ISO179に従ったノッチ無シャルピー衝撃強さが50kJ/m以上であるものについて需要があるものの、かかる値を達成しつつ、難燃性に優れた成形品の提供が難しいことが分かった。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、レーザー溶着用に用いることが可能な樹脂組成物であって、高い光線透過率および高い難燃性を達成し、かつ、シャルピー衝撃強さが高い成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、成形品、キット、および、成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリアミド樹脂と、難燃剤と、エラストマーと、光透過性色素とを含む樹脂組成物であって、前記樹脂組成物を1mmの厚さに成形したときの、波長940nmにおける光線透過率が30%以上であり、前記樹脂組成物を4mm厚さに成形したときの、ISO179に従ったノッチ無シャルピー衝撃強さが50kJ/m以上、かつ、ISO179に従ったノッチ有シャルピー衝撃強さが10kJ/m以上であり、前記樹脂組成物を0.75mmの厚さに成形したときの、UL94燃焼性試験において、V-0に適合する、樹脂組成物。
<2>前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記キシリレンジアミンが、メタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンを含み、前記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸を含む、<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記エラストマーとして、スチレンブロック重合体を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記スチレンブロック重合体中のポリスチレンの量が、樹脂組成物中、0.3~1.0質量%である、<4>に記載の樹脂組成物。
<6>さらに、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>スチレンブロック重合体とポリフェニレンエーテル系樹脂を含み、前記スチレンブロック重合体とポリフェニレンエーテル系樹脂の質量比率が、1:1~1:35である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>さらに、難燃助剤を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>前記難燃助剤として、亜鉛酸化物を含む、<8>に記載の樹脂組成物。
<10>前記難燃助剤の含有量が、樹脂組成物の1.1~6.0質量%である、<8>または<9>に記載の樹脂組成物。
<11>前記樹脂組成物における、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂の含有量が樹脂組成物の4質量%以下である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<12>前記難燃剤がフォスファゼン系難燃剤を含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<13>ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂と、フォスファゼン系難燃剤と、スチレンブロック重合体と、ポリフェニレンエーテル系樹脂と、亜鉛酸化物とを含む樹脂組成物であって、前記スチレンブロック重合体中のポリスチレンの含有量が前記樹脂組成物の0.3~1.0質量%であり、前記キシリレンジアミンが、メタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンを含み、前記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸を含み、前記難燃助剤の含有量が、前記樹脂組成物の1.1~6.0質量%であり、前記樹脂組成物における、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂の含有量が前記樹脂組成物の4質量%以下である、樹脂組成物。
<14><1>~<13>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物から形成された成形品。
<15><1>~<13>のいずれか1つに記載の樹脂組成物と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物とを有するキット。
<16><1>~<13>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を成形してなる成形品と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物を成形してなる成形品を、レーザー溶着させることを含む、成形品の製造方法。
<17><1>~<13>のいずれか1つに記載の樹脂組成物、または、<15>に記載のキットを成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、レーザー溶着用に用いることが可能な樹脂組成物であって、高い光線透過率および高い難燃性を達成し、かつ、シャルピー衝撃強さが高い成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、成形品、キット、および、成形品の製造方法を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂と、難燃剤と、エラストマーと、光透過性色素とを含む樹脂組成物であって、前記樹脂組成物を1mmの厚さに成形したときの、波長940nmにおける光線透過率が30%以上であり、前記樹脂組成物を4mm厚さに成形したときの、ISO179に従ったノッチ無シャルピー衝撃強さが50kJ/m以上、かつ、ISO179に従ったノッチ有シャルピー衝撃強さが10kJ/m以上であり、前記樹脂組成物を0.75mmの厚さに成形したときの、UL94燃焼性試験において、V-0に適合することを特徴とする。このような構成とすることにより、レーザー溶着用に用いることが可能な樹脂組成物であって、高い光線透過率および難燃性を維持しつつ、シャルピー衝撃強さが高い成形品を提供可能になる。
上記シャルピー衝撃強さと難燃性は、概ね、以下のようにして調整される。難燃性を付与するためには、難燃剤、さらには難燃助剤を配合する必要があるが、これらの成分の含有量が多いと、シャルピー衝撃強さが低くなる傾向にある。また、エラストマーを配合すると、シャルピー衝撃強さが高くなる傾向にあるが、エラストマーの含有量が多いと、光線透過率が低くなってしまう。また、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂(キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂)を用いることにより、シャルピー衝撃強さをより高くできる傾向にある。逆に、他の樹脂成分が多くなると、シャルピー衝撃強さが低くなる場合がある。本発明では、樹脂組成物を構成する成分および含有量を調整することにより、高い光線透過率および高い難燃性を達成し、かつ、シャルピー衝撃強さが高い成形品を提供可能な樹脂組成物の提供に成功したものである。
【0012】
<ポリアミド樹脂>
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂を含む。ポリアミド樹脂としては、公知のものを使用でき、半芳香族ポリアミド樹脂および/または脂肪族ポリアミド樹脂を含むことが好ましく、半芳香族ポリアミド樹脂を含むことがより好ましい。
半芳香族ポリアミド樹脂とは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位およびジカルボン酸由来の構成単位の合計構成単位の20~80モル%が芳香環を含む構成単位であることをいう。このような半芳香族ポリアミド樹脂を用いることにより、得られる成形品の機械的強度を高くすることができる。
半芳香族ポリアミド樹脂としては、テレフタル酸系ポリアミド樹脂(ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T)、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂などが例示され、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が好ましい。
脂肪族ポリアミド樹脂としては、ラクタムの開環重合、アミノカルボン酸の重縮合、ジアミンと二塩基酸の重縮合により得られる酸アミド等のアミド結合で連結した構成単位とする高分子であって、原料モノマーの80モル%超(好ましくは90モル%以上)が非芳香族化合物であるものをいう。
脂肪族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/66、ポリアミド1010が挙げられ、ポリアミド66が好ましい。
【0013】
上述の通り、本発明で用いるポリアミド樹脂は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含むことが好ましい。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含むことにより、シャルピー衝撃強さが高くなる傾向にある。
本発明で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂である。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジアミン由来の構成単位は、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上がキシリレンジアミンに由来する。
キシリレンジアミンは、メタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも1種を含むことが好ましく、10~100モル%のメタキシリレンジアミンと90~0モル%のパラキシリレンジアミンを含むことが好ましく(ただし、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計が100モル%を超えることはない、以下同じ)、20~80モル%のメタキシリレンジアミンと80~20モル%のパラキシリレンジアミンを含むことがさらに好ましく、60~80モル%メタキシリレンジアミンと40~20モル%のパラキシリレンジアミンを含むことがさらに好ましい。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジカルボン酸由来の構成単位は、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上が、炭素数が4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。炭素数が4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸などが好適に使用でき、アジピン酸およびセバシン酸がより好ましく、アジピン酸がさらに好ましい。
【0014】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0015】
上記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸類の異性体等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0016】
本発明に用いられるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を主成分として構成されるが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。ここで主成分とは、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を構成する構成単位のうち、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計数が全構成単位のうち最も多いことをいう。本発明では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましい。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(好ましくは、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂)を樹脂組成物の20~70質量%の割合で含むことが好ましい。ポリアミド樹脂(好ましくは、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂)は、樹脂組成物の22質量%以上の割合で含むことがより好ましく、25質量%以上の割合で含むことがさらに好ましい。また、65質量%以下の割合で含むことがより好ましく、60質量%以下の割合で含むことがさらに好ましく、50質量%以下の割合で含むことが一層好ましく、40質量%以下の割合で含むことがより一層好ましく、35質量%以下の割合で含むことがさらに一層好ましく、32質量%以下、30質量%以下であってもよい。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0018】
<他の樹脂>
本発明の樹脂組成物は、上記ポリアミド樹脂、後述するエラストマー、ポリフェニレンエーテル系樹脂以外の樹脂成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
他の樹脂としては、エラストマー以外のオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、さらには、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等が例示される。
さらに、本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(好ましくはキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂)、エラストマーおよびポリフェニレンエーテル系樹脂以外の他の樹脂成分を実質的に含まない構成とすることが好ましい。実質的に含まないとは、他の樹脂成分の含有量が、樹脂組成物の4質量%以下であることをいい、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下、さらには0質量%であってもよい。
【0019】
<難燃剤>
本発明の樹脂組成物は、難燃剤を含む。
難燃剤は、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤等の各種難燃剤を用いることができるが、リン系難燃剤が好ましく、フォスファゼン系難燃剤がより好ましい。フォスファゼン系難燃剤を配合することにより、樹脂組成物の難燃性がより高くなる傾向にある。
難燃剤としては、特開2012-001580号公報の段落0049~0059の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0020】
本発明の樹脂組成物における難燃剤(好ましくはフォスファゼン系難燃剤)の含有量は、下限値が、樹脂組成物の1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。上限としては、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以下であることが一層好ましく、6質量%以下であることがより一層好ましく、5質量%以下であることがさらに一層好ましい。このような範囲とすることにより、レーザー溶着の際の総エネルギー投入量を減らしても、レーザー溶着性をより高くすることができる。
本発明の樹脂組成物は、難燃剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、フォスファゼン系難燃剤以外の難燃剤を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、フォスファゼン系難燃剤以外の難燃剤の含有量が、フォスファゼン系難燃剤の配合量の10質量%以下であることをいい、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0022】
<難燃助剤>
本発明の樹脂組成物は、難燃助剤を含んでいてもよい。
難燃助剤としては、亜鉛、アンチモン、銅、マグネシウム、モリブデン、ジルコニウム、スズ、鉄、チタンおよびアルミニウムからなる群から選択される金属含有酸化物であることが好ましい。
難燃助剤は、亜鉛酸化物であることが好ましい。亜鉛酸化物を配合することにより、樹脂組成物の難燃性を高めるとともに、その添加量とポリアミド樹脂のリン原子濃度に関わらず、樹脂の透過率を低下させることが無いという効果が期待できる。亜鉛酸化物は、ホウ酸亜鉛が好ましい。ホウ酸亜鉛は、酸化亜鉛とホウ酸とから得ることができ、例えば、ZnO・B・2HOおよび2ZnO・3B・3.5HO等の水和物や無水物が挙げられる。
【0023】
本発明の樹脂組成物における難燃助剤の含有量は、下限値が、樹脂組成物の1.1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましい。難燃助剤の量を1.1質量%以上とすることにより、難燃性をより効果的に発揮させることができる。また、難燃助剤の量の上限は、6.0質量%以下であることが好ましく、5.5質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましい。6.0質量%以下とすることにより、シャルピー衝撃強さ、特に、ノッチ無シャルピー衝撃強さを効果的に向上させることができる。
本発明の樹脂組成物は、難燃助剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0024】
<エラストマー>
本発明の樹脂組成物はエラストマーを含む。エラストマーを含むことにより、耐衝撃性を向上させることが可能になる。エラストマーとしては、特開2017-210591号公報の段落0033に記載のエラストマー、特開2012-251061号公報の段落0075~0088に記載のエラストマー、特開2012-177047号公報の段落0101~0107に記載のエラストマー等を用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明で用いるエラストマーは、ブロック重合体が好ましい。ブロック重合体は、スチレンブロック重合体が好ましい。スチレンブロック重合体を配合することにより、透過率をより高くすることができる。
【0025】
スチレンブロック重合体としては、例えば、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)-ポリスチレンブロック重合体(SEBS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)-ポリスチレンブロック重合体(SEPS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック重合体(SEB)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック重合体(SEP)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)-ポリオレフィン結晶ブロック重合体(SEBC)等が例示される。
【0026】
スチレンブロック重合体は、側鎖に環状酸無水物基を有してもよく、環状酸無水物基としては、無水マレイン酸基、無水コハク酸基、無水フタル酸基、無水グルタル酸基等が挙げられ、無水マレイン酸基が好ましい。側鎖に環状酸無水物基を有する熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、タフテック(無水マレイン酸変性SEBS、M1913(旭化成ケミカルズ社製))、タフテック(無水マレイン酸変性SEBS、M1943(旭化成ケミカルズ社製))、クレイトン(無水マレイン酸変性SEBS、FG1901X(クレイトンポリマー社製))、タフプレン(無水マレイン酸変性SBS、912(旭化成社製))、セプトン(無水マレイン酸変性SEPS(クラレ社製))等が挙げられる。
【0027】
本発明の樹脂組成物におけるスチレンブロック重合体中のポリスチレンの量は、樹脂組成物中、0.3質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。一方、前記エラストマーの含有量の上限値は、3質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、優れた難燃性を維持しつつ、高い光線透過率を達成することが可能になる。
【0028】
本発明の樹脂組成物におけるエラストマーの含有量は、樹脂組成物中、1.0~3.0質量%とすることができる。
本発明の樹脂組成物は、エラストマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、スチレンブロック重合体以外のエラストマーを実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、スチレンブロック重合体以外のエラストマーの含有量が、スチレンブロック重合体の配合量の10質量%以下であることをいい、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
<光透過性色素>
本発明の樹脂組成物は、光透過性色素を含む。
本発明で用いる光透過性色素は、通常、黒色色素であり、具体的には、ナフタロシアニン、アニリンブラック、フタロシアニン、ポルフィリン、ペリノン、ペリレン、クオテリレン、アゾ染料、アントラキノン、ピラゾロン、スクエア酸誘導体、およびインモニウム染料等が挙げられる。
市販品としては、オリエント化学工業社製の着色剤であるe-BIND(商品名) LTW-8731H(型番)、e-BIND(商品名) LTW-8701H(型番)、有本化学社製の着色剤であるPlast Yellow 8000、Plast Red M 8315、Oil Green 5602、LANXESS社製の着色剤であるMacrolex Yellow 3G、Macrolex Red EG、Macrolex Green 3、BASFカラー&エフェクトジャパン株式会社製、Lumogen K0087(旧:Lumogen FK4280)、Lumogen K0088(旧:Lumogen FK4281)等が例示される。
特に、光透過性色素として、ピラゾロン、ペリノン、ペリレンおよびアントラキノンの少なくとも1種を含むポリアミド樹脂組成物を用いると、得られる成形品の湿熱試験後の色移りを効果的に抑制できる。
本発明の樹脂組成物における光透過性色素の含有量は、樹脂組成物100質量部に対し、0.001質量部以上であることが好ましく、0.006質量部以上であることがより好ましく、さらには、0.018質量部以上、0.024質量部以上、0.030質量部以上、0.050質量部以上であってもよい。また、光透過性色素の含有量の上限値は、樹脂組成物の5.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以下であることが一層好ましく、0.20質量部以下、0.10質量部以下、0.060質量部以下であってもよい。
本発明の樹脂組成物における光透過性色素の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、光透過性色素の含有量の上限値は、樹脂組成物の5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%であることが一層好ましい。
光透過性色素は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、カーボンブラックを実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、例えば、樹脂組成物の0.0001質量%以下であることをいう。
【0031】
<ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)>
本発明の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含むことが好ましい。ポリフェニレンエーテル系樹脂を含むことにより、成形品のバリを効果的に抑制することが可能になる。
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、無水マレイン酸変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂であることが好ましい。また、無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル系樹脂中の無水マレイン酸の量が、マレイン酸量換算で0.01~1.0質量%であり、0.1~0.7質量%であることが好ましい。このような範囲とすることにより、高い機械的強度を達成できる。
ここで、無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル系樹脂中の無水マレイン酸の量とは、ポリフェニレンエーテル系樹脂を変性するために用いた無水マレイン酸がポリフェニレンエーテル系樹脂と反応した量をマレイン酸量で換算した場合の質量を言う。
【0032】
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エ-テル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エ-テル、ポリ(2,6-ジプロピル-1,4-フェニレン)エ-テル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エ-テル、ポリ(2-メチル-6-プロピル-1,4-フェニレン)エ-テル等が挙げられ、特に、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エ-テルが好ましい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、クロロホルム中、温度30℃で測定した固有粘度が好ましくは0.2~0.6dL/gであり、より好ましくは0.3~0.5dL/gである。固有粘度を0.2dL/g以上とすることにより、耐衝撃性がより向上する傾向にあり、0.6dL/g以下とすることにより、成形性や外観が向上する傾向にある。なお、上記範囲内の固有粘度の調整は、異なる固有粘度のポリフェニレンエーテル系樹脂2種以上を併用することにより行ってもよい。
【0033】
ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量は、下限値が、樹脂組成物の1.0質量%以上であることが好ましく、2.5質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、7質量%以上であることが一層好ましく、8.5質量%以上であることがより一層好ましく、9.0質量%以上であることがさらに一層好ましい。上限値としては、20.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましく、12.0質量%以下であることがさらに好ましく、11.0質量%以下であることが一層好ましい。20.0質量%以下とすることにより、レーザー溶着の際の総エネルギー投入量を減らしても、レーザー溶着性をより高くすることができる。
本発明の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、ブロック重合体およびポリフェニレンエーテル系樹脂の両方を含むことがより好ましい。本発明では、特に、ポリスチレンブロック重合体とポリフェニレンエーテル系樹脂を含み、スチレンブロック重合体とポリフェニレンエーテル系樹脂の質量比率が1:1~1:35であることが好ましく、1:10~1:20であることがより好ましく、1:12~1:18であることがさらに好ましい。このような質量比率とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
【0035】
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、ケトンワックス、ライトアマイドなどが挙げられ、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルが好ましく、脂肪族カルボン酸の塩がより好ましい。
離型剤の詳細は、特開2018-095706号公報の段落0055~0061の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中、0.05~3質量%であることが好ましく、0.1~0.8質量%であることがより好ましく、0.2~0.6質量%であることがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、離型剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0036】
<ガラス繊維>
本発明の樹脂組成物は、ガラス繊維を含むことが好ましい。
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Rガラス、Sガラスなどのガラス組成からなり、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
【0037】
本発明の樹脂組成物に用いるガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取った「ガラスロービング」、カット長(数平均繊維長が)1~10mmである「チョップドストランド」、粉砕長さ(数平均繊維長)10~500μmである「ミルドファイバー」などのいずれであってもよい。かかるガラス繊維としては、旭ファイバーグラス社より、「グラスロンチョップドストランド」や「グラスロンミルドファイバー」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
【0038】
また、本発明ではガラス繊維として、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径をD2、短径をD1とするときの長径/短径比(D2/D1)で示される扁平率が、例えば、1.5~10であり、中でも2.5~10、さらには2.5~8、特に2.5~5であることが好ましい。かかる扁平ガラスについては、特開2011-195820号公報の段落0065~0072の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0039】
本発明におけるガラス繊維は、ガラスビーズであってもよい。ガラスビーズとは、外径10~100μmの球状のものであり、例えば、ポッターズ・バロティーニ社より、商品名「EGB731」として市販されており、容易に入手可能である。また、ガラスフレークとは、厚さ1~20μm、一辺の長さが0.05~1mmの燐片状のものであり、例えば、日本板硝子社より、「フレカ」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。
【0040】
本発明で用いるガラス繊維は、特に、重量平均繊維径が1~20μm、カット長(数平均繊維長)が1~10mmのガラス繊維が好ましい。ここで、ガラス繊維の断面が扁平の場合、重量平均繊維径は、同じ面積の円における重量平均繊維径として算出する。
本発明で用いるガラス繊維は、集束剤で集束されていてもよい。この場合の集束剤としては、無水マレイン酸などを含む酸系や、ウレタン系集束剤、エポキシ系集束剤等が好ましい。
【0041】
本発明の樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量は、樹脂組成物中、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、35質量%以上であることが一層好ましく、40質量%以上であることがより一層好ましい。また、本発明の樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量は、樹脂組成物中、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%未満であってもよい。ガラス繊維を上記範囲で配合することにより、より光線透過率を高く維持することが可能になる。
本発明の樹脂組成物は、ガラス繊維を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0042】
<他の成分>
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。このような添加剤としては、核剤、ガラス繊維以外のフィラー、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明の樹脂組成物は、各成分の合計が100質量%となるように、ポリアミド樹脂(好ましくはキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂)、難燃剤、エラストマーおよび光透過性色素、さらには、ガラス繊維や他の添加剤の含有量等が調整される。
【0043】
<樹脂組成物の好ましいブレンド形態>
本発明の樹脂組成物は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂と、フォスファゼン系難燃剤と、スチレンブロック重合体と、ポリフェニレンエーテル系樹脂と、亜鉛酸化物とを含み、前記スチレンブロック重合体の含有量が樹脂組成物の1~2質量%であり、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を構成するキシリレンジアミンが、メタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンを含み、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を構成する炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸を含み、難燃助剤の含有量が、樹脂組成物の1.1~6.0質量%であり、樹脂組成物における、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂の含有量が樹脂組成物の4質量%以下であることが好ましい。このような組成とすることにより、各成分がうまく調和し、高い難燃性を維持しつつ、光線透過率を高く維持し、かつ、より高いシャルピー衝撃強さを達成できる。
【0044】
<樹脂組成物の特性>
本発明の樹脂組成物は、4mm厚さに成形したときの、ISO179に従ったノッチ無シャルピー衝撃強さが50kJ/m以上であり、かつ、ISO179に従ったノッチ有シャルピー衝撃強さが10kJ/m以上である。また、ノッチ有シャルピー衝撃強さは11kJ/m以上であることが好ましい。本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、シャルピー衝撃強さが高いので、衝撃性が求められる用途に好ましく用いることができる。特に、本発明では、難燃剤を配合しつつ、上記シャルピー衝撃強さを達成できた点で、価値が高い。
前記ノッチ無シャルピー衝撃強さの上限値は、特に定めるものではないが、70kJ/m以下、さらには、60kJ/m以下であっても、十分に実用レベルである。また、ノッチ有シャルピー衝撃強さは、特に定めるものではないが、20kJ/m以下、さらには、15kJ/m以下であっても、十分に実用レベルである。
本発明の樹脂組成物は、1mmの厚さに成形したときの、波長940nmにおける光線透過率が30%以上であり、35%以上であることが好ましい。上限は、100%であってもよいが、実際には、50%以下でも十分に要求性能を満たす。
また、本発明の樹脂組成物は0.75mmの厚さに成形したときの、UL94燃焼性試験(燃焼性および熱老化性)において、V-0に適合する。
さらに、本発明の樹脂組成物は0.75mmの厚さに成形し、70℃の環境下に168時間置いた後の、UL94燃焼性試験において、V-0に適合することが好ましい。
UL94燃焼性試験の詳細は、後述する実施例に記載の方法に従う。
【0045】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に制限されないが、ベント口から脱揮できる設備を有する単軸または2軸の押出機を混練機として使用する方法が好ましい。上記ポリアミド樹脂成分、ガラス繊維および必要に応じて配合される他の添加剤は、混練機に一括して供給してもよいし、ポリアミド樹脂成分に他の配合成分を順次供給してもよい。ガラス繊維は、混練時に破砕するのを抑制するため、押出機の途中から供給することが好ましい。また、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合、混練しておいてもよい。
本発明では、光透過性色素は、ポリアミド樹脂等で、マスターバッチ化したものをあらかじめ調製した後、他の成分(ポリアミド樹脂(好ましくはキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂)等)と混練して、本発明における樹脂組成物を調整してもよい。
【0046】
本発明の樹脂組成物を用いた成形品の製造方法は、特に制限されず、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形方法、すなわち、射出成形、中空成形、押出成形、プレス成形などの成形方法を適用することができる。この場合、特に好ましい成形方法は、流動性の良さから、射出成形である。射出成形に当たっては、樹脂温度を250~300℃にコントロールするのが好ましい。
【0047】
<キット>
本発明は、また、上記樹脂組成物と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物とを有するキットを開示する。本発明のキットは、レーザー溶着による成形品の製造に好ましく用いられる。
すなわち、キットに含まれる樹脂組成物は、光透過性樹脂組成物としての役割を果たし、光透過性樹脂組成物を成形してなる成形品は、レーザー溶着の際のレーザー光に対する透過樹脂部材となる。一方、光吸収性樹脂組成物を成形してなる成形品は、レーザー溶着の際のレーザー光に対する吸収樹脂部材となる。
【0048】
<<光吸収性樹脂組成物>>
本発明で用いる光吸収性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む。
熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等が例示され、樹脂組成物との相溶性が良好な点から、特に、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂がさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
光吸収性樹脂組成物に用いるポリアミド樹脂としては、その種類等を定めるものではないが、上記キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が好ましい。
また、無機フィラーを含んでいてもよい。無機フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ、アルミナ、タルク、カーボンブラックおよびレーザーを吸収する材料をコートした無機粉末等のレーザー光を吸収しうるフィラーが例示され、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維は、上記本発明の樹脂組成物に配合してもよいガラス繊維と同義であり、好ましい範囲も同様である。
光吸収性色素としては、照射するレーザー光波長の範囲、すなわち、本発明では、波長800nm~1100nmの範囲に極大吸収波長を持つものであり、無機顔料(カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)などの黒色顔料、酸化鉄赤などの赤色顔料、モリブデートオレンジなどの橙色顔料、酸化チタンなどの白色顔料)、有機顔料(黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料など)などが挙げられる。なかでも、無機顔料は一般に隠ぺい力が強く好ましく、黒色顔料がさらに好ましい。これらの光吸収性色素は2種以上組み合わせて使用してもよい。光吸収性色素の含有量は、樹脂成分100質量部に対し0.01~30質量部であることが好ましい。
【0049】
本発明のキットは、樹脂組成物中の光透過性色素を除く成分と、光吸収性樹脂組成物中の光吸収性色素を除く成分の80質量%以上が共通することが好ましく、90質量%以上が共通することがより好ましく、95~100質量%が共通することが一層好ましい。
【0050】
<<レーザー溶着方法>>
次に、レーザー溶着方法について説明する。本発明では、本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品(透過樹脂部材)と、上記光吸収性樹脂組成物を成形してなる成形品(吸収樹脂部材)を、レーザー溶着させて成形品を製造することができる。レーザー溶着することによって透過樹脂部材と吸収樹脂部材を、接着剤を用いずに、強固に溶着することができる。
部材の形状は特に制限されないが、部材同士をレーザー溶着により接合して用いるため、通常、少なくとも面接触箇所(平面、曲面)を有する形状である。レーザー溶着では、透過樹脂部材を透過したレーザー光が、吸収樹脂部材に吸収されて、溶融し、両部材が溶着される。本発明の樹脂組成物の成形品は、レーザー光に対する透過性が高いので、透過樹脂部材として好ましく用いることができる。ここで、レーザー光が透過する部材の厚み(レーザー光が透過する部分におけるレーザー透過方向の厚み)は、用途、樹脂組成物の組成その他を勘案して、適宜定めることができるが、例えば、5mm以下であり、好ましくは4mm以下である。
【0051】
レーザー溶着に用いるレーザー光源としては、光吸収性色素の光の吸収波長に応じて定めることができ、波長800~1100nmの範囲のレーザーが好ましく、例えば、半導体レーザーまたはファイバーレーザーが利用できる。
【0052】
より具体的には、例えば、透過樹脂部材と吸収樹脂部材を溶着する場合、まず、両者の溶着する箇所同士を相互に接触させる。この時、両者の溶着箇所は面接触が望ましく、平面同士、曲面同士、または平面と曲面の組み合わせであってもよい。次いで、透過樹脂部材側からレーザー光を照射する。この時、必要によりレンズを利用して両者の界面にレーザー光を集光させてもよい。その集光ビームは、透過樹脂部材中を透過し、吸収樹脂部材の表面近傍で吸収されて発熱し溶融する。次にその熱は熱伝導によって透過樹脂部材にも伝わって溶融し、両者の界面に溶融プールを形成し、冷却後、両者が接合する。
このようにして透過樹脂部材と吸収樹脂部材を溶着された成形品は、高い溶着強度を有する。なお、本発明における成形品とは、完成品や部品の他、これらの一部分を成す部材も含む趣旨である。
【0053】
本発明でレーザー溶着して得られた成形品は、機械的強度が良好で、高い溶着強度を有し、レーザー光照射による樹脂の損傷も少ないため、種々の用途、例えば、各種保存容器、電気・電子機器部品、オフィスオートメート(OA)機器部品、家電機器部品、機械機構部品、車両機構部品などに適用できる。特に、食品用容器、薬品用容器、油脂製品容器、車両用中空部品(各種タンク、インテークマニホールド部品、カメラ筐体など)、車両用電装部品(各種コントロールユニット、イグニッションコイル部品など)、モーター部品、各種センサー部品、コネクター部品、スイッチ部品、ブレーカー部品、リレー部品、コイル部品、トランス部品、ランプ部品などに好適に用いることができる。特に、本発明の樹脂組成物およびキットは、車載カメラモジュールに適している。
【実施例
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0055】
[原料]
<ポリアミド樹脂>
MP6:ポリメタパラキシリレンアジパミド、下記方法に従って合成した。
PA66:ポリアミド66、ソルベイ社製、STAVAMID26AE1K
PA12:ポリアミド12、製造元:エムスケミー・ジャパン社製 品番:グリルアミドL20G
【0056】
<<MP6の合成例>>
アジピン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を撹拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)とメタキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)のモル比が3:7の混合ジアミンを、加圧(0.35MPa)下でジアミンとアジピン酸(ローディア社製)とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を270℃まで上昇させた。滴下終了後、0.06MPaまで減圧し10分間反応を続け分子量1,000以下の成分量を調整した。その後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(MP6)を得た。
【0057】
<マレイン酸変性PPE>
PME-80(三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
【0058】
クレイトンFG1901X:クレイトンジャパン社製、無水マレイン酸変性ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)-ポリスチレンブロック共重合体30質量%、無水マレイン酸含有量1.7質量%、ポリスチレン含有量30質量%を含む。
【0059】
離型剤(CS8CP):モンタン酸カルシウム、日東化成工業社製
光透過性色素(LTW-8701H):オリエント化学工業社製、e-BIND LTW-8701H、ポリアミド66と光透過性色素のマスターバッチ
ガラス繊維(296GH):日本電気硝子社製、ECS 03T-296GH
難燃剤(ラビトルFP-110):フォスファゼン化合物、伏見製薬所
難燃助剤(ファイヤーブレイクZB):ホウ酸亜鉛、Rio Tinto Minerals Asia Pte ltd製
【0060】
[実施例1~3、比較例1~8]
<コンパウンド>
後述する表1または表2に記載の樹脂組成物(透過樹脂部材形成用ペレット)を製造した。
具体的には、後述する表1または表2に示す各成分であって、ガラス繊維以外の成分を表1または表2に示す割合(単位は、質量部である)をそれぞれ秤量し、ドライブレンドした後、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)のスクリュー根元から2軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE-W-1-MP)を用いて投入した。また、ガラス繊維については振動式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE-V-1B-MP)を用いて押出機のサイドから上述の二軸押出機に投入し、樹脂成分等と溶融混練し、透過樹脂部材形成用ペレットを得た。押出機の温度設定は、280℃とした。
【0061】
<シャルピー衝撃強さ>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製、NEX140IIIを用いて、4mm厚さのISO引張り試験片を射出成形した。成形に際し、シリンダー温度は280℃、金型表面温度は130℃にて実施した。
得られたISO引張り試験片を、ISO179に準拠し、23℃の条件で、ノッチ有およびノッチ無シャルピー衝撃強さを、それぞれ、測定した。シャルピー衝撃強さの単位は、kJ/mで示した。
【0062】
<光線透過率>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製、NEX140IIIを用いて、1mm厚さの試験片を射出成形した。成形に際し、シリンダー温度は280℃、金型表面温度は130℃にて実施した。
上記で得られた1mm厚さの試験片について、島津製作所社製、紫外可視近赤外分光光度計UV-3100PCに従い、波長940nmにおける光線透過率(単位:%)を測定した。
【0063】
<UL94燃焼性試験(燃焼性)>
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(FN-3000、スクリュー径40mm、日精樹脂工業社製)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度を130℃にて、長さ125mm、幅13mm、厚み0.75mmの試験片に成形した。
得られた試験片を23℃の環境下に48時間置いた後(常温)、および、70℃の環境下に168時間置いた後(熱老化)、燃焼性を測定した。燃焼性は、UL94燃焼性試験(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)に従い評価した。
【0064】
<灰分(600℃)>
るつぼの質量、成形品の質量、るつぼに入れた成形品の質量をそれぞれ測定し、電機炉600℃で2時間処理し、再度、その質量を測定した。これらの値から、灰分を算出した。
単位は質量%で示した。
【0065】
【表1】
【表2】
【0066】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、高い光線透過率および優れた難燃性を達成しつつ、高いシャルピー衝撃強さを達成できた(実施例1~3)。
一方、比較例の樹脂組成物は、高いノッチ無シャルピー衝撃強さを達成できなかった(比較例1~8)。
【0067】
実施例1の樹脂組成物について、光透過性色素を配合せず、カーボンブラックマスターバッチ(日弘ビックス社製、PA-0895)を6質量部配合した他は同様に行って、吸収樹脂部材形成用ペレットを得た。実施例1で得られた透過樹脂部材形成用ペレットと、前記吸収樹脂部材形成用ペレットを用い、特開2018-168346号公報の段落0072、段落0073、および、図1の記載に従い、レーザー溶着させた。適切にレーザー溶着していることを確認した。