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特許7492518位相シフトの決定方法及び位相シフトの決定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】位相シフトの決定方法及び位相シフトの決定システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240522BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021534164
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2019085889
(87)【国際公開番号】W WO2020127446
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】1820814.0
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516149435
【氏名又は名称】ボンバルディアー プリモーフ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bombardier Primove GmbH
【住所又は居所原語表記】Eichhornstrasse 3, 10785 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ビューニング
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ザレヴスキ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ニクレス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス カプマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ツァインスキ
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-102350(JP,A)
【文献】特表2013-539537(JP,A)
【文献】特開2009-089600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバータの交流相線(U、V、W)における相電流(I、I、I)と相電圧(U、U、U)との間の位相シフトを、前記相電圧(U 、U 、U )を測定することなく決定する方法であって、下記工程1)~5)を含むことを特徴とする位相シフトの決定方法。
1)相電流変化依存量を決定する工程。
2)前記相電流変化依存量に応じて電圧固有の基準時点を決定する工程。
3)前記相電流(I、I、I)を決定する工程。
4)前記相電流(I、I、I)に応じて電流固有の基準時点を決定する工程。
5)前記電圧固有の基準時点と前記電流固有の基準時点との間の時間差に応じて、前記位相シフトを決定する工程。
【請求項2】
前記電圧固有の基準時点は、前記相電流変化依存量のゼロクロスの時点として、位相シフトが決定されることを特徴とする請求項1に記載の位相シフトの決定方法。
【請求項3】
前記相電流変化依存量を少なくとも1回微分することによって、前記相電流変化依存量の導関数を決定し、前記電圧固有の基準時点を前記導関数のゼロクロスの時点として、前記位相シフトを決定することを特徴とする請求項1に記載の位相シフトの決定方法。
【請求項4】
前記相電流(I、I、I)を、前記相電流変化依存量を時間的に積分することによって決定することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の位相シフトの決定方法。
【請求項5】
前記相電流変化依存量を、ロゴスキーコイルに基づく決定手段によって判定することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の位相シフトの決定方法。
【請求項6】
第1の比較手段により、前記相電流変化依存量を第1の所定の基準値(TH1)と比較し、前記第1の比較手段の出力信号に応じて、前記電圧固有の基準時点を決定し、
更に第2の比較手段により、前記相電流(I、I、I)を更なる所定の基準値(TH2)と比較することにより、前記第2の比較手段の出力信号に応じて、前記電流固有の基準時点を決定することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の位相シフトの決定方法。
【請求項7】
トリガ信号が形成され、前記電圧固有の基準時点及び前記電流固有の基準時点を、前記トリガ信号を形成する時点の後の所定の持続時間の時間間隔内の時点として決定することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の位相シフトの決定方法。
【請求項8】
前記トリガ信号を形成する時点を、スイッチ信号の形成の時点に対応して決定することを特徴とする請求項7に記載の位相シフトの決定方法。
【請求項9】
コンバータの交流相線(U、V、W)における相電流(I、I、I)と相電圧(U、U、U)との間の位相シフトを、前記相電圧(U 、U 、U )を測定することなく決定するシステムであって、
相電流変化依存量を決定するための少なくとも1つの手段と、
相電流変化依存量に応じて電圧固有の基準時点を決定するための少なくとも1つの手段と、
相電流(I、I、I)を決定する少なくとも1つの手段と、
相電流に応じて電流固有の基準時点を決定する少なくとも1つの手段と、
前記電圧固有の基準時点と前記電流固有の基準時点との間の時間差に応じて前記位相シフトを決定する少なくとも1つの手段と、
を備えることを特徴とする位相シフトの決定システム。
【請求項10】
相電流変化依存量を決定するため前記手段が、ロゴスキーコイルを用いた決定手段を含んでいることを特徴とする請求項9に記載の位相シフトの決定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフトの決定方法及び位相シフトの決定システムに関する。
特に、コンバータのAC(交流)相線、より好ましくは、誘導電力伝達用システムのコンバータにおいて、相電流(以下、交流相電流と称する場合がある。)と相電圧(以下、交流相電圧と称する場合がある。)の間の位相シフトの決定方法、及び相電流と相電圧間の位相シフトの決定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング損失を最小限に抑え、効率的な誘導電力伝達を行うためには、コンバータの交流出力電圧と交流相電流は、それぞれ同相であることが好ましい。
そして、かかるコンバータに接続されている負荷は、下記式(1)に示されるインピーダンス(Z)であると考えられる。
【0003】
【数1】
【0004】
ここで、Zがインピーダンス、Rが負荷のレジスタンス(抵抗)、Xは負荷のリアクタンスをそれぞれ表す。
そして、インピーダンスの値は、負荷のインピーダンス、特に一次巻線構造のインピーダンス、及び存在する場合には二次巻線構造のインピーダンスに依存することが知られている。
【0005】
又、リアクタンスは、動作周波数、すなわち誘導電力伝達用の交流電磁界の周波数が、コンバータの交流出力に接続された共振回路の共振周波数に等しい場合、それを最小化することができる。
【0006】
出力交流電圧又は出力相電流は、矩形波(方形波)として送信される。この場合、このような信号は、基本周波数と高調波周波数を有することになる。
【0007】
そこで、コンバータの損失を低減するための様々な技術が知られている。
そのような技術の一つは、コンバータの交流出力端子に接続されている電気回路部品のリアクタンスを、例えば、電気部品を追加したり、リアクタンス値を変更したりすることで、所望の値に適合させる方法である。
【0008】
又、コンバータの動作周波数、例えば、矩形波の交流出力電圧や交流出力電流の基本周波数を調整する方法もある。
【0009】
ここで、かかるコンバータの電力損失は、コンバータの交流相電圧と交流相電流の間の位相差に基づいて推定することが好ましい。
この理由は、この位相差により、交流端子に接続された電気回路のインピーダンス、すなわちリアクタンスXを求めることができるためである。
従って、あるコンバータのトポロジーは、位相差を小さくすると、電力損失も小さくなることが判明している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明によれば、コンバータ、特に誘導電力伝達用システムでのコンバータの交流相線における相電流と相電圧の間の位相シフトを決定するための、精密で計算効率の高い決定方法、及び相電流と相電圧間の位相シフトの決定システムを提供することを、それぞれ目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
技術的課題の解決は、特許請求の範囲に記載の請求項1及び請求項9の特徴を有する主題によって提供される。更に有利な実施形態は、従属請求項の特徴を持つ主題によって提供される。
【0012】
すなわち、コンバータの少なくとも1つの交流相線における相電流と相電圧の間の位相シフトを決定する決定方法を提供する。
【0013】
かかるコンバータは、特に車両への誘導電力伝達用システムのコンバータとすることが好ましい。
更に、コンバータは、電磁力伝達場を形成するために、誘導電力伝達用システムの一次巻線構造に交流動作電圧を供給することが好ましい。
【0014】
又、コンバータはインバータとすることが好ましい。かかるインバータは、DC(直流)入力電圧から交流出力電圧を得ることが好ましく、更には、かかるコンバータは、交流入力電圧から交流出力電圧を得ることも好ましい。
又、インバータは、直流入力電流から交流出力電流を得ることが好ましく、コンバータは交流入力電流から交流出力電流を得ることが好ましい。
但し、以下の説明では、インバータに関する説明は、適切な場合には、コンバータに関する説明になる場合がある。
【0015】
又、一次巻線構造は、三相巻線構造とすることが好ましい。この場合、インバータは、三相コンバータとすることが好ましい。
そして、かかる三相インバータは、ツーポイント型ブリッジトポロジーである、いわゆるB6ブリッジトポロジーで設計されていることが好ましい。
又、特に、インバータは、2つのスイッチング素子を直列接続した少なくとも1つの脚部を備えることが好ましい。
又、かかる直列接続の第1のスイッチング素子の高電位端子は、高電位の直流相線に接続することが好ましい。そして、第1のスイッチング素子の第2の端子は、第2のスイッチング素子の第1の端子に接続することが好ましい。
又、第2のスイッチング素子の第2端子は、低電位の直流相線に電気的に接続すること好ましい。そして、第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子の接続セクションに、インバータの交流相線を電気的に接続することが好ましい。
又、一次巻線構造の相線は、インバータの少なくとも1つの交流相線に接続することが好ましい。
これらの相線は、直接接続されるか、又はフィルタ、例えば、インピーダンスを反転させる回路網であるジャイレータ(gyrator)を介して、間接的に接続されることが好ましい。
【0016】
又、インバータが、三相インバータである場合、かかるインバータは、スイッチング素子のこのような直列接続と、インバータの3つの交流相線とを有する3つの脚部を備えていることが好ましい。
そして、かかるスイッチング素子として、電界効果トランジスタの一種であるMOSFET(Metal-oxide-semiconductor field-effect transistor、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)とすることが好ましい。
更にかかるスイッチング素子として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を用いることも好ましい。
【0017】
又、コンバータは、一次巻線構造を動作させるための交流出力電圧を出力する1つ以上の交流相線を有することも好ましい。
かかるコンバータは、単相又は多相、特に三相コンバータとすることが好ましい。そして、三相コンバータ又は三相インバータの場合、これらのコンバータ又はインバータとして、いわゆるB6ブリッジトポロジーを有することが好ましい。
【0018】
相線では、交流相電圧と交流相電流が用いられる。
従って、コンバータが、交流動作電圧を交流相線に供給し、すなわち交流相線に接続された一次巻線構造に供給する場合、交流相電流は、コンバータの交流出力電流を意味していることが好ましい。
そして、かかる交流相電流として、例えば、コンバータの脚部のスイッチング素子を介して、それぞれの相線に流れる電流とすることが好ましい。
なお、相電圧は、交流相線の電位と、基準電位との間の電圧を意味する。
【0019】
更に、少なくとも1つの相電流変化依存量が決定されることが好ましい。これは、かかる相電流変化依存量の時間経過が決定されることを意味する。
すなわち、相電流変化依存量は、相電流の時間変化に依存する量とすることが好ましい。
【0020】
又、相電流変化依存量は、例えば、相電流変化、すなわち相電流の1次導関数となる関係であることが好ましい。
或いは、相電流変化依存量は、相電流の2次導関数、3次導関数、4次導関数、又は4次導関数よりも高次の導関数とすることが好ましい。
【0021】
又、相電流変化依存量は、例えば、相電流変化依存量を測定するためのセンサ、例えば、相電流変化センサによって直接測定することが好ましい。
しかしながら、計算によって相電流変化依存量を決定することも好ましい。
1つの例示的なオプションは、相電流を測定し、測定された相電流に応じて、例えば、相電流の1次導関数又は高次の導関数を計算することによって、相電流変化依存量を決定することである。
或いは、更なる相電流依存量、例えば相電流変化を測定し、測定された更なる相電流変化依存量に応じて、例えば更なる相電流変化依存量の導関数を計算することにより、所望の相電流変化依存量を決定することも好ましい。
【0022】
そして、相電流と相電圧は、相電流と相電圧の時間経過を示すことが好ましい。
【0023】
又、相電流と相電圧の間の位相差は、相電流と相電圧のそれぞれに関連するゼロクロスの間の時間差を表すことが好ましい。
又、位相シフトは、特に相電流及び相電圧の周期が既知である場合、位相角の形で提供することも好ましい。
【0024】
ここで、上述したゼロクロスは、相電流と相電圧の関連するゼロクロスを意味している。
【0025】
従って、相電圧のゼロクロスの時点は、交流相電圧が、最小電位、例えば低電位と、最大電位、例えば高電位と最小電位との差の半分との和に相当する値をとる時点を示している。
そして、低電位は、例えば、前述の低電位直流相線の電位とすることが好ましく、高電位は、例えば、インバータの直流入力端子が接続されている前述の高電位直流相線の電位とすることが好ましい。
【0026】
更に、少なくとも1つの相電流変化依存量に応じて、特に電流変化値に応じて、電圧固有の基準時点が決定されることが好ましい。
前述のように、位相シフトは、時点間の時間差として決定され、電圧固有の基準時点は、決定された時間差の範囲内で電圧関連の時点を決定することが好ましい。
かかる電圧固有の基準時点は、相電圧のゼロクロスに対応するか、又はゼロクロスの時点から所定の量以上に逸脱しないようにすることが好ましい。
【0027】
又、電圧固有の基準時点は、複数の異なる相電流変化依存量に応じて決定することが好ましい。
【0028】
更に、相電流が決定される。かかる相電流は、例えば、相電流センサによって測定することが好ましい。或いは、かかる相電流は、計算によって決定することも好ましい。
例えば、相電流変化依存量を測定し、相電流変化を少なくとも1回、時間で積分することにより、相電流を決定することが好ましい。
【0029】
言い換えれば、単一のセンサ、例えば単一の相電流変化センサ又は単一の相電流センサの出力信号に応じて、相電流変化依存量と相電流を決定することが好ましい。
【0030】
更に、相電流、特に相電流の時間経過に応じて、電流固有の基準時点が決定されることが好ましい。
かかる電流固有の基準時点は、位相シフトを形成する時間差の第2の時点に対応することが好ましい。
特に、電流固有の基準時点は、相電流のゼロクロスの時点に等しいか、又はゼロクロスの時点からばらついて、所定量よりも逸脱しないことが好ましい。
【0031】
更に、位相シフトは、電圧固有の基準時点と、電流固有の基準時点との間の時間差に対応させて決定されることが好ましい。
特に、かかる位相シフトは、電圧固有の基準時点と、電流固有の基準時点との間の時間差そのものとして決定することが好ましい。
しかしながら、位相シフトを決定し、調整するために、電圧固有の基準時点と電流固有の基準時点との間の時間差を変更、例えば、増加又は減少させることが好ましい。
かかる時間差の増加又は減少は、例えば、温度などの動作条件に対する許容範囲又は依存性を反映させることが好ましい。
【0032】
本発明が開示する位相シフトの決定方法によれば、有利なことに、相電圧を測定又は決定することなく、コンバータの交流相線における相電流と相電圧との間の位相シフトを正確に決定することができる。
これは、位相シフトを決定するために、相電流関連の信号、例えば、相電流そのもの、又は、相電流変化、又は、相電流変化に依存する量のみが測定されることを意味する。
【0033】
本発明は、相電圧の測定とは無関係に、相電流変化、特に相電流の時間経過に基づいて、位相シフトを決定するというアイデアを有利に利用している。
言い換えれば、相電流の時間経過の中に符号化された又は含まれた相電圧の時間経過の情報が決定され、それが位相シフトの決定に使用されることが好ましい。
【0034】
又、本発明の別の実施形態では、電圧固有の基準時点は、相電流変化依存量、特に相電流変化のゼロクロスの時点として決定される。
【0035】
すなわち、コンバータのスイッチング素子のスイッチング動作は、相電流の絶対値の変化だけでなく、相電流の勾配の符号の変化ももたらすと想定することが好ましい。
言い換えれば、スイッチング動作は、相電流変化又は相電流変化依存量のゼロクロスをもたらすことになる。
【0036】
スイッチング動作では、相電圧も変化する。例えば、高電位から低電位へ、又は低電位から高電位へと変化する。従って、相電流変化又は相電流変化依存量のゼロクロスは、相電圧のゼロクロスと関連するか、又は対応していることが好ましい。
【0037】
これにより、相電圧のゼロクロスの時点が正確に決定されるため、有利に位相シフトを正確に決定することができる。
【0038】
又、代替的な実施形態では、相電流変化依存量の導関数、特に相電流変化の導関数が、その量を少なくとも1回微分することによって決定されることが好ましい。
言い換えれば、相電流変化の少なくとも1次導関数を決定することが好ましい。
代替的又は追加的に、相電流変化の2次、3次又は更に高次の導関数を決定することも好ましい。
すなわち、導関数は、相電流変化の1次、2次、3次、又は更に高次の導関数とすることが好ましい。
【0039】
更に、電圧固有の基準時点は、導関数のゼロクロスの時点として決定されることが好ましい。
【0040】
導関数と導関数に依存するゼロクロスの時点とを決定することで、決定のロバスト性と精度が有利に向上する。
特に、相線に接続された負荷の抵抗値が高い場合や、相線に供給される電力量が多い場合には、前述の絶対値の変化が減少し、相電流の符号の変化の検出がより複雑になる可能性がある。
言い換えれば、相電流変化依存量の導関数を提供することにより、相電流変化依存量の高調波周波数に起因する信号部分と、相電流変化依存量の基本周波数に起因する信号部分との比率が大きくなる。
又、電圧固有の基準時点は、相電流変化の1次導関数のゼロクロスの時点として決定されることが好ましい。これにより、ノイズなどの影響を受けずに、電圧固有の基準時点を正確に決定することができる。
【0041】
本発明の別の実施形態では、相電流は、相電流変化依存量を経時的に、特に1回又は2回以上、積分することによって決定される。
この場合、位相シフトは、例えば、測定された相電流変化依存量に応じて、測定された相電圧に依存せずに決定することができる。これは以前に説明した通りである。
更に、有利なことに、1つのセンサ、例えばコンバータの相線ごとに1つのセンサ、すなわち相電流変化依存量用のセンサを設けるだけで、位相シフトを決定することができる。
【0042】
本発明の別の実施形態では、相電流変化依存量は、ロゴスキーコイルに基づく決定手段によって決定されることが好ましい。
このようなロゴスキーコイルに基づく決定手段は、例えば、相電流変化、特に相電流の時間経過の1次導関数を表す出力信号、例えば、電圧信号を形成することができる。
すなわち、このような信号を出力するために、ロゴスキーコイルに基づく決定手段は、出力信号を積分するための積分手段を有していないことが好ましい。
【0043】
そして、ロゴスキーコイルに基づく決定手段の出力信号を微分することにより、相電流の時間経過の2次導関数、3次導関数、又は更なる高次の導関数として、相電流変化依存量を決定することが更に好ましい。
【0044】
特に、ロゴスキーコイルに基づく決定手段は、ロゴスキーコイルセンサであるか、又はそのようなロゴスキーコイルから構成されていることが好ましい。
かかるロゴスキーコイルに基づく決定手段は、有利なことに、特に交流相線からのガルバニック分離を用いて、相電流変化依存量を正確かつ堅牢に測定又は決定することができる。
【0045】
更に、ロゴスキーコイルに基づく決定手段は、広い帯域幅を有しており、すなわち、相電流が変化した場合に、ロゴスキーコイルに基づく決定手段が形成する出力信号は、最小の時間遅延で変化する。
【0046】
かかるロゴスキーコイルは、相線に巻き付けることができる螺旋状のコイルで構成されるており、すなわち、そのような構成によって提供されることが好ましい。
又、ロゴスキーコイルに基づく決定手段は、短絡電流に対して電気的及び機械的に低感度特性を有している。これは、コンバータが故障したような場合でも、ロゴスキーコイルに基づく決定手段が破損するリスクが小さいことを意味する。
【0047】
又、本発明の別の実施形態では、相電流変化依存量、特に相電流変化依存量の実際の値が、複数の比較手段によって、所定の基準値と比較されることが好ましい。
すなわち、まずは、第1の比較手段によって第1の所定の基準値(以下、第1の閾値と称する場合がある。)と比較されることが好ましい。
かかる第1の比較手段は、例えば、比較器(以下、コンパレータと称する場合がある。)又は比較回路によって構成することが好ましい。そして、第1の所定の基準値は、例えば、ゼロとすることが好ましい。
しかしながら、相電流変化依存量又は相電流決定手段及び第1の比較手段のノイズ特性又は動作依存性に応じて、第1の所定の基準値を選択することが可能である。この場合、第1の所定の基準値は、ゼロとは異なる値とすることが好ましい。
【0048】
更に、相電流は、更なる比較手段としての第2の比較手段によって、更なる所定の基準値である第2の所定の基準値(以下、第2の閾値と称する場合がある。)と比較することが好ましい。
ここで、更なる比較手段である第2の比較手段は、更なる比較器又は更なる比較回路によって提供することが好ましい。
そして、第2の所定の基準値は、例えば、ゼロとすることが好ましい。
しなしながら、相電流又は相電流変化依存量決定手段及び第2の比較手段のノイズ特性や動作依存性に応じて、第2の所定の基準値を選択することも可能である。
【0049】
電圧固有の基準時点は、第1の比較手段の出力信号に応じて決定されることが好ましい。
かかる出力信号は、論理「1」の状態を表す第1の値と、論理「0」の状態を表す第2の値の2つの値のみを取ることが可能である。
【0050】
この場合、電圧固有の基準時点は、第1の比較手段の出力信号が、特に第1の値から第2の値へ、又はその逆に変化する時点として決定することが好ましい。
例えば、出力信号の立ち上がり又は立ち下がりの信号エッジを検出することが可能である。電圧固有の基準時点は、例えば、検出の時点又はそれに依存するためである。
【0051】
更に、電流固有の基準時点は、第2の比較手段の出力信号に応じて決定されることが好ましい。すなわち、出力信号は、論理「1」の状態を表す第1の値と、論理「0」の状態を表す第2の値の2つの値のみを取ることが可能である。
【0052】
又、電圧固有の基準時点の場合と同様に、電流固有の基準時点は、例えば、更なる出力信号の変化、特に、第1の値から更なる値への変化、又はその逆の変化の時点として決定することが好ましい。
例えば、出力信号の立ち上がり又は立ち下がりの信号エッジを検出することが可能である。現在の特定の基準時点は、例えば、検出の時点であるか、それに依存することが好ましい。
【0053】
これにより、電圧固有の基準時点及び電流固有の基準時点の、ロバストで事前にサイズ設定された決定を可能にする。
更に、かかる決定は、それぞれの時点を決定するために比較手段のみが使用されるので、高い計算効率で実行することができる。
特に、電圧固有の基準時点及び電流固有の基準時点を決定するために、特に高速なA/Dコンバータを必要としないため、高い計算能力が必要とされる。
【0054】
又、第1の比較手段の出力信号に応じた電圧固有の基準時点の決定は、例えば、マイクロコントローラ又はいわゆるFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成される評価ユニットによって実行することが好ましい。
【0055】
本発明の別の実施形態では、トリガ信号が形成され、電圧固有の基準時点及び電流固有の基準時点が、トリガ信号の後の所定の持続時間の時間間隔内の時点として決定されることが好ましい。
【0056】
かかる所定の持続時間については、通常、例えば、1~10μsecの範囲内の値であるが、3~6μsecの範囲内の値であることが好ましく、4~5μsecの範囲内の値であることがより好ましく、それぞれの範囲から選択することができる。
このような持続時間は、例えば、動作周波数が20kHzの場合に選択することが好ましい。
但し、所定の持続時間につき、例えば、動作周波数が85kHzの場合、通常、0.2~2.5μsecの範囲内の値であるが、0.6~1.5μsecの範囲内の値であることが好ましく、1.0~1.25μsecの範囲内の値であることがより好ましく、これらの範囲から、所定の持続時間を選択することも可能である。
【0057】
又、トリガ信号を提供し、トリガ信号の後の時間間隔で基準時点を決定することは、位相シフトの決定のロバスト性を有利に高めることになる。
特に特定の動作条件の下では、相電流変化依存量が短い時間間隔内に複数のゼロクロスを有し、発生したゼロクロスの全てがスイッチング動作に関連しているわけではない可能性がある。
トリガ信号を提供することで、スイッチング動作に関連する時点を決定する信頼性を高めることが好ましい。
かかるトリガ信号は、例えば、発生中又は今後発生するスイッチング動作に応じて形成することが好ましい。そして、このような発生中又は今後発生するスイッチング動作は、例えば、検出されることが好ましい。
【0058】
又、相電流又は相電流変化依存量を連続的に測定することが好ましい。
更に、相電流変化依存量及び/又は相電流が、それぞれの基準値と連続的に比較されることも好ましい。この場合、前述の比較手段の出力信号を分析して、トリガ信号後の前述の時間間隔のみで、電圧及び電流固有の基準時点を決定することが更に好ましい。
【0059】
又、本発明の別の実施形態では、トリガ信号を形成する時点は、スイッチ信号の形成時点に応じて決定されることが好ましい。
特に、スイッチ信号が形成された場合にトリガ信号を形成することが好ましい。
かかるスイッチ信号は、例えば、コンバータの動作を制御するための制御ユニットによって形成することが好ましい。そして、スイッチ信号は、例えば、スイッチング素子のゲート入力に供給される信号とすることが好ましい。
又、スイッチ信号は、制御ユニットによって形成され、スイッチング素子に転送又は送信されることが好ましい。
更に、トリガ信号は、制御ユニットによって形成され、前述の評価ユニットに転送されることも好ましい。
【0060】
この場合、時間間隔の長さは、スイッチ信号の形成と実際のスイッチング動作との間の時間遅延を反映する必要がある。特に、時間間隔は、かかる時間遅延よりも長いことが好ましい。
【0061】
更に、本発明によれば、コンバータ、特に誘導電力伝達用システムのコンバータの交流相線における相電流と相電圧の間の位相シフトを決定するシステム、すなわち、位相シフト決定システムを提供することができる。
【0062】
かかる位相シフト決定システムによれば、有利には、本明細書で開示された実施形態の1つによる方法を実行することが好ましい。
言い換えれば、かかる位相シフト決定システムは、前述の開示された方法の1つを当該システムで実行できるように設計されていることが好ましい。
【0063】
かかる位相シフト決定システムによれば、相電流変化依存量を決定するための少なくとも1つの手段を備えることが好ましい。
特に、かかる位相シフト決定システムは、少なくとも1つの相電流変化センサ又は相電流変化依存量のセンサを備えることが好ましい。
或いは、かかる位相シフト決定システムは、相電流センサと、測定された相電流の1次導関数及び/又は2次導関数を提供するための少なくとも1つの手段とから構成されることも好ましい。
【0064】
更に、かかる位相シフト決定システムは、相電流変化依存量に応じて、電圧固有の基準時点を決定する少なくとも1つの手段を備えていることが好ましい。
かかる少なくとも1つの手段は、例えば、評価ユニットで構成されるか、又は評価ユニットによって提供され、評価ユニットは、例えば、マイクロコントローラ又はFPGAで構成されることが好ましい。
更に、電圧固有の基準時点を決定するための少なくとも1つの手段は、比較手段、例えば、比較器又は比較回路で構成することが好ましい。
【0065】
更に、かかる位相シフト決定システムは、相電流を決定するための少なくとも1つの手段を備えていることが好ましい。
このような相電流を決定するための少なくとも1つの手段は、電流センサによって提供されることが好ましい。
或いは、相電流を決定するための少なくとも1つの手段は、相電流変化依存量を積分するための積分手段で構成することが好ましく、相電流変化依存量は、相電流変化依存量を決定するための少なくとも1つの手段によって決定されることが好ましい。
【0066】
又、かかる位相シフト決定システムは、相電流に応じて電流固有の基準時点を決定する少なくとも1つの手段を備えていることが好ましい。
このような電流固有の基準時点を決定するための手段は、例えば、前述の評価ユニット又は更なる評価ユニットで構成することが好ましい。
更に、電流固有の基準時点を決定するための手段は、第2の比較手段、例えば、更なる比較器又は更なる比較回路で構成することが好ましい。
【0067】
又、かかる位相シフト決定システムは、電圧固有の基準時点と電流固有の基準時点との間の時間差に応じて、位相シフトを決定する少なくとも1つの手段を備えることが好ましい。位相シフトを決定する手段は、例えば、前述の評価ユニット又は更なる評価ユニットから構成することが好ましい。
【0068】
又、かかる位相シフト決定システムは、コンバータの動作を制御するため、例えば、コンバータのスイッチング素子にスイッチ信号を提供するための制御ユニットを更に備えることが好ましい。
そして、このように提示された位相シフト決定システムの要素、特に、相電流、相電流変化依存量、電圧固有の基準時点及び電流固有の基準時点、及び位相シフトを決定するための手段は、例えば、信号又はデータ接続によって接続することが好ましい。
更に、制御ユニットと位相シフトを決定する手段は、信号又はデータ接続によって接続することが好ましい。
【0069】
かかる位相シフト決定システムは、有利には、位相シフトを決定することが好ましい。
まず、相電流変化又はそれに依存する量が、例えば、相電流変化依存量を決定する手段によって決定可能である。
更に、電圧固有の基準時点が、例えば、電圧固有の基準時点を決定するための手段によって決定可能である。
更に、相電流は、例えば、相電流を決定するための手段によって、決定可能である。
更に、電流固有の基準時点は、例えば、電流固有の基準時点を決定するための手段によって、決定可能である。
更に、位相シフトは、例えば、位相シフトを決定するための手段によって、決定可能である。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、相電流変化依存量を決定する手段は、ロゴスキーコイルに基づく決定手段からなる。これと対応する利点は、以前に説明したとおりである。
【0071】
又、かかる位相シフト決定システムは、更に、コンバータ、例えば、インバータを含むことが好ましい。
【0072】
更に、特に車両への誘導電力伝達用システムについて説明すると、かかるシステムは、コンバータと、一次巻線構造と、本明細書に開示された実施形態の1つによる位相シフトの決定システムとを備えることが好ましい。
【0073】
更に、コンバータの動作を制御するための方法、特に、誘導電力伝達用システムのコンバータの動作を制御するための方法について説明する。
例えば、本明細書に開示された実施形態の1つによる方法によって決定された位相シフトに応じて、コンバータの動作を制御することが可能である。
特に、位相シフトが低減又は最小化されるように、コンバータのスイッチング素子のスイッチング動作を制御することが可能である。
又、特に、コンバータの動作周波数、特に相電流及び/又は相電圧の基本周波数が、交流相線に接続された電気回路の共振周波数に対応するように、コンバータのスイッチング素子のスイッチング動作を制御することが可能である。
【0074】
更に、コンバータの相線に接続された電気回路のインピーダンスを調整する方法について説明する。
かかる電気回路は、例えば、一次巻線構造を提供する素子(要素)、例えば、コイルで構成することが好ましい。
更に、かかる電気回路は、電気回路又はそのセクションのインピーダンスを調整する手段を備える。特に、電気回路は、調整可能なキャパシタンスを有する素子、又は調整可能なインダクタンスを有する素子で構成することが好ましい。
更に、電気回路のインピーダンスは、本明細書に開示された方法の1つに従って決定された位相シフトに応じて調整することが好ましい。特に、電気回路の共振周波数がコンバータの動作周波数に対応するように、電気回路のインピーダンスを調整することが好ましい。
かかる電気回路のインピーダンスは、例えば、調整可能なキャパシタンスを有する素子のインピーダンス、及び/又は調整可能なインダクタンスを有する素子のインダクタンスを調整することによって制御することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1図1は、誘導電力伝達用システムの一次ユニットの概略回路図である。
図2図2は、位相シフトの決定システムの概略ブロック図である。
図3図3は、本発明による位相シフトの決定方法の概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明を、添付の図を参照して説明する。以下では、同じ参照番号は、同じ又は類似の技術的特徴を持つ要素を示している。
【0077】
図1は、誘導電力伝達用システム2(図示せず)の一次ユニット1の概略回路図である。一次ユニット1は、B6ブリッジトポロジーで設計されたインバータ5から構成されている。
かかるインバータ5は、複数のスイッチング素子6を有しており、更に、これらのスイッチング素子6には、バイパスダイオード7が逆平行に接続されていることが好ましい。
そして、インバータ5は、3つの脚部を有しており、各脚部は、2つのスイッチング素子6の直列接続から構成されていることが好ましい。
その上、2つのスイッチング素子6の接続セクションに対して、1つの相線U、V、Wが接続されていることが好ましい。
【0078】
特に、スイッチング素子6のうち、第1のスイッチング素子が、高電位の相線に接続されていることが好ましく、更に、スイッチング素子6のうち、第2のスイッチング素子が、低電位の相線に接続されていることが好ましい。
【0079】
又、インバータのスイッチング素子6としては、例えば、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタであるMOSFETや、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタであるIGBTなどから構成されていることが好ましい。
【0080】
又、インバータ5は、一次巻線構造3の相線U、V、Wに対して、AC(交流)相電圧U、U、Uを形成させるか、或いは供給することが好ましい。
従って、かかるインバータ5の交流出力端子は、相線U、V、Wにそれぞれ接続されていることが好ましい。
図1に示されている実施形態では、一次巻線構造3のこれらの相線U、V、Wは、インバータ5の交流相線に電気的に接続されている。従って、相線U、V、Wは、インバータ5の交流相線についても示している。
【0081】
図1に示すように、一次巻線構造3は、三相巻線構造である。各相線U、V、Wに設けられたインダクタンスL、L、Lと、各相線U、V、WのインダクタンスL、L、Lと、キャパシタンスC、C、Cとで構成される共振回路の共振周波数が、動作周波数fに一致するように、各相線U、V、Wに設けられた補償容量であるキャパシタンスC、C、Cの容量値が選択されていることを模式的に示す。
【0082】
更に、インバータ5の交流相線の相電流に対応する各相線U、V、Wの交流相電流としての相電流I、I、Iを示す。
すなわち、各相電流I、I、Iの矢印は、相電流I、I、Iの正の方向を示している。そして、相電流I、I、Iの正の値は、指示された方向に電流が流れることを示している。又、交流相線としての相線U、V、Wにおける交流相電圧としての相電圧は、記号UU、、Uで参照される。
【0083】
各交流相線としての相線U、V、Wにおける相電流I、I、Iと相電圧UU、、Uとの間の位相シフトの決定システム12(図2参照)は、相電流変化依存量を測定するためのセンサを有することが好ましい。
従って、各相としての相線U、V、Wにおける相電流I、I、Iの相電流変化を測定する相電流変化センサ8を備え、この相電流変化により相電流変化依存量を測定することが好ましい。
特に、相電流変化センサ8によれば、インバータ5の脚部の1つのスイッチング素子6を通ってそれぞれの相線U、V、Wに流れる相電流I、I、Iの相電流変化を測定することができる。
かかる相電流変化センサ8は、ロゴスキーコイル13(図2参照)で構成することが好ましい。
【0084】
しかしながら、位相シフトの決定システム12が、相電流センサと、測定された相電流I、I、Iの導関数を決定するための少なくとも1つの手段と、を備えることも好ましい。
【0085】
又、位相シフトの決定システム12は、破線で示された信号リンクによって相電流変化センサ8に接続される評価ユニット9を備えることも好ましい。
かかる相電流変化センサ8は、測定された相電流I、I、Iのサンプルを提供することが好ましい。
そして、位相シフトの決定システム12は、信号又はデータリンクによって評価ユニット9に接続されているメモリユニット10を備えていることも好ましい。
又、インバータ5の動作、例えば、スイッチング素子6の動作を制御するための制御ユニット11を有することが好ましい。従って、かかる制御ユニット11は、信号又はデータリンクによって評価ユニット9に接続されていることが好ましい。
【0086】
又、かかる評価ユニット9が、相電流変化に応じて、相電流変化センサ8によって提供される相電流変化のゼロクロスの時点として、電圧固有の基準時点を決定することが好ましい。
そして、特に相電流変化を時間で積分することにより、相電流I、I、Iを決定することが好ましい。これは、評価ユニット9によって実行することも好ましい。
更に、電流固有の基準時点は、相電流I、I、I、特に、相電流I、I、Iのゼロクロスの時点に応じて決定することが好ましい。
【0087】
加えて、評価ユニット9が、相電流変化の1次導関数又はより高次の導関数に応じて、電圧固有の基準時点を決定することも好ましい。
【0088】
更に言えば、このような評価ユニット9により、電圧固有の基準時点と電流固有の基準時点との間の時間差に応じて、特に位相シフトを決定することが好ましい。
【0089】
又、評価ユニット9が、相電流変化センサ8によって提供される相電流変化の1次導関数を決定することが更に可能である。そして、電圧固有の基準時点を、この1次導関数のゼロクロスの時点として決定することが好ましい。
【0090】
図2は、インバータ5(図1参照)の交流相線としての相線Uにおける相電流I及び相電圧U図1参照)の間の位相シフトの決定システムの概略回路図である。
かかる図2は、第1の相線としての相線Uについての前述のシステムの概略回路図を示しているが、同様のシステムを残りの相線V、Wにも適用することができる。
【0091】
図示されているのは、交流相電流としての相電流Iが供給される、位相シフトの決定システム12のための交流入力端子14である。更に図示されているのは、交流出力端子15であり、この端子は、例えば、一次巻線構造3(図1参照)の相線に接続することができる。
【0092】
次いで、ロゴスキーコイル13を備えた相電流変化センサ8を説明する。
かかる相電流変化センサ8によれば、相電流Iの切り替え時間、すなわち、相電流Iの経時変化に比例する出力信号を測定することができる。
【0093】
位相シフトの決定システム12は、相電流変化センサ8の出力信号を増幅するための増幅器16を備えていることが好ましい。
そして、かかる増幅器16の出力信号は、第1の比較器17によって第1の閾値TH1(以下、第1の所定の基準値と称する場合がある。)と比較される。
すなわち、かかる第1の閾値TH1は、第1の比較器17に提供される前に、増幅器18によって増幅されることが示されている。
又、第1の閾値TH1は、ゼロ又はゼロに近い値を有することが好ましい。
従って、第1の比較器17の出力信号は、相電流変化センサ8の増幅された出力信号がゼロクロスを有する場合、論理的な「1」の状態を表す信号から論理的な「0」の状態を表す信号に変化し、又はその逆になる。
第1の比較器17の出力信号は、増幅器19によって増幅され、評価ユニット24に入力される。その際、第1の比較器17の出力は、矩形波の形態を有することが好ましい。
【0094】
更に、相電流変化センサ8の増幅された出力信号を、相電流変化センサ8の出力信号を時間的に積分する積分器20に送信して、入力することが好ましい。
又、相電流Iに対応する積分された相電流変化は、増幅器21によって増幅され、第2の比較器22に、入力することが好ましい。
そして、第2の閾値TH2(以下、第2の所定の基準値と称する場合がある。)は、増幅器23によって増幅され、第2の比較器22にも入力されることが好ましい。
又、第2の閾値TH2は、ゼロ又はゼロに近い値をとることが好ましい。第2の比較器22の出力信号は、相電流がゼロクロスを有する場合、例えば論理「1」の状態を表す第1の信号から、論理「0」の状態を表す信号へと変化する。従って、第2の比較器22の出力信号は、矩形波の形態を有することも好ましい。
【0095】
第1の比較器17及び第2の比較器22の出力信号は、図1に示す評価ユニット9と等しくすることができる評価ユニット24に、送信されて、入力されることが好ましい。
そして、かかる評価ユニット24によって、第1の比較器17及び第2の比較器22から出力される出力信号の信号エッジ、例えば立ち上がり又は立ち下がりの信号エッジを検出することが好ましい。
第1の比較器17の増幅された出力信号におけるこのような信号エッジの検出の時点は、電圧固有の基準時点に対応することが好ましく、第2の比較器22の増幅された出力信号における信号エッジの検出の時点は、電流固有の基準時点に対応することが好ましい。
【0096】
そして、評価ユニット24は、電圧固有の基準時点と電流固有の基準時点との時間差として、位相差を決定することが好ましい。
【0097】
制御ユニット11(図1参照)は、当該制御ユニット11によって、インバータ5の1つの脚部において、スイッチング素子6のためのスイッチング信号が形成された場合に、トリガ信号を形成することが更に可能であり、当該脚部は、位相シフトが決定されるべき相線Uに接続されている。
かかるトリガ信号は、評価ユニット24に送信されることが好ましい。そして、トリガ信号の受信後、所定の持続時間の時間間隔内の時点として、電圧固有の基準時点及び電流固有の基準時点が決定される。
【0098】
図3は、インバータ5の交流相線としての相線U、V、Wの1つにおける相電流I、I、Iと相電圧U、U、Uとの間の位相シフトを決定するための方法の概略フロー図を示している。
第1のステップS1は、例えばロゴスキーコイルを用いた相電流変化センサ8で相電流変化を測定することにより、相電流変化を求める工程である。
又、第2のステップS2は、相電流変化に応じて、特に相電流変化のゼロクロスの時点として、電圧固有の基準時点を決定する工程である。
又、第3のステップS3は、特に相電流変化を時間で積分することにより、相電流I、I、Iを決定する工程である。
又、第4のステップS4は、相電流I、I、Iに応じて、特に相電流I、I、Iのゼロクロスの時点として、電流固有の基準時点を決定する工程である。
更に、第5のステップS5は、電圧固有の基準時点と電流固有の基準時点との間の時間差に応じて、位相シフトを決定する工程である。
【0099】
なお、図3に示す順序は、必ずしも第1のステップS1~第5のステップS5を順次実行する必要はなく、必須の工程順序ではない。
従って、例えば、第1のステップS1を実施したのち、単一のステップとして、特に、第2のステップS2、第3のステップS3、及び第4のステップS4を同時に、又は少なくとも部分的に同時に実行することも可能である。
そして、そのあとに、第5のステップS5を実施することも好ましい。
【符号の説明】
【0100】
1:一次ユニット、2:誘導電力伝達用システム、3:一次巻線構造、5:インバータ、6:スイッチング素子、7:バイパスダイオード、8:相電流変化センサ、9、24:評価ユニット、10:メモリユニット、11:制御ユニット、12:位相シフトの決定システム、13:ロゴスキーコイル、14:交流入力端子、15:交流出力端子、16、18、19、21、23:増幅器、17:第1の比較器、20:積分器、22:第2の比較器、C、C、C:キャパシタンス、I、I、I:相電流(交流相電流)、L、L、L:インダクタンス、S1:第1のステップ、S2:第2のステップ、S3:第3のステップ、S4:第4のステップ、S5:第5のステップ、TH1:第1の閾値、TH2:第2の閾値、U、V、W:相線(交流相線)、U、U、U:相電圧(交流相電圧)、X:リアクタンス、f:動作周波数
図1
図2
図3