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特許7492531ソノトロードと対向要素との接触又は離脱を検出する方法
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  • 特許-ソノトロードと対向要素との接触又は離脱を検出する方法 図1
  • 特許-ソノトロードと対向要素との接触又は離脱を検出する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】ソノトロードと対向要素との接触又は離脱を検出する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/10 20060101AFI20240522BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B23K20/10
G01H17/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021553289
(86)(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2020056298
(87)【国際公開番号】W WO2020187639
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102019106694.8
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520062177
【氏名又は名称】ヘルマン ウルトラシャルテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト グナート
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-254818(JP,A)
【文献】特表2008-500904(JP,A)
【文献】特開2012-024771(JP,A)
【文献】特開平06-007745(JP,A)
【文献】特表2010-503536(JP,A)
【文献】特開平01-133690(JP,A)
【文献】特表2005-511316(JP,A)
【文献】西独国特許出願公告第02823361(DE,B)
【文献】米国特許出願公開第2007/0251977(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動装置を制御するための方法であって、
超音波振動装置はソノトロード(4)と対向工具(5)を有し、対向工具(5)は動作時にソノトロード(4)と対向して配置されて、ソノトロード(4)によって加工する材料(7)をソノトロード(4)と対向工具(5)との間に配置できるようにし、
前記方法は、
A)所定の時間tdの間に振動を伴ってソノトロード(4)を励起するステップと、
B)周波数f及び振動振幅A0で振動するように設定されたソノトロード(4)と、対向要素(5)との接触又は離脱を検出するための方法を実施するステップであって、
a)第1の測定期間ΔTの間に振動振幅A0の時間的推移を検知するステップと、
b)振動振幅A0の時間的推移から、測定期間ΔT内に接触又は離脱が起こったか否かを決定するステップと、を有する接触又は離脱を検出するための方法を実施するステップと、
C)ステップB)でソノトロード(4)と対向工具(5)の間の接触が検出されてから、ソノトロード(4)の励起を停止し、又はソノトロードを対向工具(5)から離すステップと、を有する方法。
【請求項2】
前記材料(7)はステップb)において加工されている、請求項1による方法。
【請求項3】
ステップb)で、検知された振動振幅A0が所定の基準振幅Rから所定の許容値αを超えて逸脱すると、又は検知された振動振幅A0が所定の許容間隔(Tmin,Tmax)外にあると、ソノトロード(4)と対向要素(5)との接触又は離脱が確認されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)の前に第2の測定期間Δtの間に振動振幅A0
の時間的推移が検知され、この第2の測定期間Δt中の検知から基準振幅及び/又は許容間隔(Tmin,Tmax)が計算されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
i)第2の測定期間Δt中の検知から平均振動振幅が計算され、この計算された平均振動振幅がステップb)で所定の基準振幅として使用されること、
及び/又は
ii)第2の測定期間Δt中の検知から最小振動振幅Aminと最大振動振幅Amaxが決定され、最小振動振幅Aminと最大振動振幅Amaxから許容間隔(Tmin,Tmax)がTmin≦Amin及びTmax≧Amaxとして計算されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)でソノトロード(4)はコンバータによって励起され、コンバータは電流発生器と接続されており、電流発生器によって供給されてコンバータを通って流れる電流IE(t)が測定され、更に電流発生器によりコンバータに印加される電圧UE(t)が測定され、これらの測定された電圧UE(t)と測定された電流IE(t)から振動振幅A0、又は電流発生器とコンバータからなる電気振動システムの、振動振幅A0と関係するフィールドサイズが計算されることを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
更に、
c)ステップb)で認識された接触が行われた時点t0を、振動振幅A0の時間的推移から決定し、振動振幅A0が測定期間ΔT内に初めて許容間隔(Tmin,Tmax)又は(R-α,R+α)(3)を離れる時点、又はこの時点から事前に定義された補正時間だけずらした時点が、接触の時点t0として設定されるステップを有することを特徴とする、請求項3~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップa)で、振動振幅A0の時間的推移を決定するために、少なくとも2000サンプル/秒、好ましくは少なくとも5000サンプル/秒、特に好ましくは少なくともの15000サンプル/秒のサンプリングレートを使用することを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
対向要素として対向工具(5)が使用され、ソノトロード(4)と対向工具(5)との間に加工される材料(7)を配置でき、ソノトロード(4)と対向工具(5)との接触が検出されることを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップC)は、接触が検出された後で所定の追跡時間tNが経過してから初めて実行され、好ましくは接触が検出された直後に振動振幅A0の低減が行われることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数f及び振動振幅A0で振動するように設定されたソノトロードと、対向要素との接触又は離脱を検出するための方法に関する。特に本発明はソノトロードと対向工具との接触を検出するための方法に関し、ソノトロードと対向工具との間に被加工材料を配置できる。更に本発明は、超音波振動装置を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波振動装置は、一般に規定通りに機械的振動に変換できる少なくとも1つのソノトロードを有する。超音波振動装置を用いる超音波溶接、又は超音波切断装置を用いる超音波切断では、ソノトロードと対向して対向工具が配置され、そしてソノトロードと対向工具との間に被加工材料が配置される。次いで材料は、それぞれの用途に応じてソノトロードによって溶接シーム継手が形成されたり切断されたりする。
【0003】
超音波切断において切断が正常に完了したら、又は超音波溶接において材料シートが到達したら、ソノトロードと対向工具との間で接触する。
【0004】
ソノトロードと対向工具とのそのような接触若しくは衝突は、ソノトロードが動作時に振動している間に行われるが、これは一方で望ましくない効果をもたらす。なぜならソノトロードも対向工具も硬質材料からなるため、対向工具とソノトロードの衝突又は相互摩擦はこれら両要素の強い磨耗の原因となる。
【0005】
他方で、ソノトロードと対向工具が接触することは特定のプロセス上の事象を示す。超音波切断装置で切断する場合、ソノトロードと対向工具が接触することは、切断しようとする材料が完全に切断されたことを示す。したがって超音波溶接装置で溶接する場合に、ソノトロードと対向工具が接触することは、材料が意図せずに切断されたことを示す可能性がある。いずれの用途においてもソノトロードと対向工具との接触は、ソノトロードと対向工具との間を案内される材料シートの終端に到達したことも示すことができる。
【0006】
特に超音波切断装置で切断する場合は、プロセスの信頼性及び被加工製品の品質にとって、ソノトロードと対応する対向工具が接触する時点を確認できることは、それに基づいて適切な後続の措置を講じることが可能となるため重要である。この場合、接触が実際に発生する時点と、接触が決定及び特定される時点とを区別する必要がある。その間の時間は本発明の関連において検知時間と呼ばれる。したがって接触に対する応答は検知時間が経過した後で初めて起こることができるので、応答時間は検知時間に等しいかそれ以上である。
【0007】
従来、超音波切断過程は、たいてい単純にあらかじめ決めた所定の動作時間又はあらかじめ決めた所定のエネルギー消費量に達するまで実行された。これは過去の経験からそれぞれの用途について、当該動作時間が経過し、又は当該エネルギー消費量に到達したら切断過程は完了することが示されたことによっている。しかしながらこの方法は特に正確ではなく、長いリードタイムが必要であり、その間に特定の用途について最初に十分な経験又は測定値を集める必要がある。
【0008】
代替として、いわゆる金属接触電子装置が使用され、ソノトロードと対向工具との接触が、リレースイッチの場合と同様に追加的に外部から印加される直流電圧によって確認された。しかしながらそのような方法は、追加のセンサー若しくは電子機器を必要とし、したがってより多くの労力とより高いコストを伴う。このような方法による検知時間は、2msかそれ以上である。これは多くの用途にとって長すぎる。
【0009】
ソノトロードと対向工具との接触を決定することと並んで、ソノトロードと対向工具との離脱、及びソノトロードと別の対向要素との接触又は離脱を決定できることも望ましい。しかし追加のセンサーを用いるこのような事象の検出は、しばしば時間がかかりすぎ、又は手間がかかりすぎる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような背景のもとで本発明の課題は、ソノトロードと対向要素との接触又は離脱を検出することができる方法を提供することであり、この方法は上記の問題を取り除くか、少なくとも軽減する。特に本発明の課題は、ソノトロードと対向工具が接触する時点を1ms未満の検知時間で決定し、更に廉価である方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題は、請求項1に記載の方法によって解決される。請求項1の対象は、周波数f及び振動振幅A0で振動するように設定されたソノトロードと、対向要素との接触又は離脱を検出するための方法であって、
a)第1の測定期間ΔTの間に振動振幅A0の時間的推移を検知するステップと、
b)振動振幅A0の時間的推移から、測定期間ΔT内に接触又は離脱が起こったか否かを決定するステップと、を有する方法である。
【0012】
専ら接触を検出することを目的とした従来公知の方法と比較すると、本発明の方法により離脱も検出できる。このことは、例えば多層システムの超音波加工において、内部にあるより硬い層の切断(即ちこのより硬い層との離脱)を検出すべき場合に重要であり得る。
【0013】
振動は、好ましくは周期振動、特に調和振動である。周波数fの調和振動を仮定すると、振動の偏差A(t)は通常、時間tの関数として振動振幅A0と関連している。
【数1】
理想的な状態では、ソノトロードは一定の振動振幅A0で振動する。しかしながら、ソノトロードと対向工具との間、又はソノトロードと被加工材料との間の連結が変化すると振動振幅も変化するため、振動振幅も時間依存変数A0(t)である。本発明はこれを利用するものである。
【0014】
本発明の方法により接触又は離脱の時点が、従来技術から公知の方法におけるよりも著しく速く決定される。そのため本発明の方法により100μs以下の短い検知時間が可能になる。その結果として、対向要素とソノトロード、特に対向工具とソノトロードの接触又は離脱にもより速く応答できる。したがって本発明の方法により、ソノトロードと対向要素との接触又は離脱に非常に短い応答時間で応答する可能性が提供される。
【0015】
応答時間とは、接触又は離脱の実際の時点と、それに対する応答、例えば制御命令の呼び出しなどの時点との間の時間と理解すべきである。
【0016】
好適な実施形態では、本発明による方法のステップb)で、検知された振動振幅A0が所定の基準振幅Rから所定の許容値αを超えて逸脱すると、又は検知された振動振幅A0が所定の許容間隔(Tmin,Tmax)外にあると、ソノトロードと対向要素との接触又は離脱が確認される。
【0017】
したがってこの実施形態は、基準振幅Rと許容値α又は許容間隔(Tmin,Tmax)によって定義された許容範囲を提供する。この許容範囲とは、可能な振動振幅の関連した部分範囲を含む。超音波振動装置の各ソノトロードについてそのような許容範囲を定義でき、その結果としてソノトロードと対向要素が接触又は離脱すると、特にソノトロードが対向工具と接触すると、振動振幅は定義可能な許容範囲外にあるのに対し、ソノトロードと対向要素が接触又は離脱せずに規則的に振動すると、この許容範囲内にあることが分かった。
【0018】
接触又は離脱は、振動振幅が許容範囲を離れるときにのみ確認されることが好ましい。
【0019】
このことは、超音波振動装置の過渡振動過程を別個に処理する必要はないという利点がある。ソノトロードの過渡振動の間、ソノトロードと対向要素との対応する接触又は離脱が行われないにもかかわらず、振動振幅が事前に定義された許容範囲外の値を取ることがある。しかしここで論じる好適な実施形態により接触又は離脱の決定は、振動振幅が許容範囲を離れることを前提としている。しかしながら原則として振動振幅は、過渡振動過程が終了した後に初めて許容範囲内の値をとる。それゆえ「離れる」という要件によって、過渡振動過程で誤って接触又は離脱を決定することがないように確保されている。
【0020】
更に、接触又は離脱の誤検出決定のリスクを最小限にする冗長システムを形成するために、測定期間ΔTは、ソノトロードの過渡振動過程が測定期間ΔTの開始前に完了しているように構成されていることが好ましい。
【0021】
ソノトロードと対向要素との接触又は離脱を決定するために許容範囲を利用することが特に有利なのは、それによって接触又は離脱の決定が非常に簡単かつ迅速に行われ、振動振幅の時間的推移に基づいて時間のかかる計算を実行する必要がないからであり、さもなければ検知時間と潜在的な応答時間が増加することになろう。むしろ接触又は離脱は直接、振動振幅が許容範囲外にあるか、若しくは許容範囲を離れることによって確認される。
【0022】
特に単純な実施形態では、基準振幅は単に以前に記録された測定値であり得る。現在の測定値と以前の測定値(基準振幅)の差が所定の許容値αより大きくなると直ちに、これは接触(又は離脱)として解釈される。許容値αは、経験値に基づくことができる。
【0023】
振動振幅の短時間の変化を無視できるようにするために、振動振幅の測定信号をローパスフィルタに通すと有利であり得る。
【0024】
特に好適な実施形態において、ステップa)の前に第2の測定期間Δtの間に振動振幅A0の時間的推移が検知され、この第2の測定期間Δt中の検知から基準振幅及び/又は許容間隔が計算される。
【0025】
この実施形態では、許容範囲が有利には動作時に、超音波振動装置を事前の設定又は調整することなく規定される。したがって超音波振動装置の自動化された自己校正が行われ、超音波振動装置は常に進行中の動作若しくは動作中の振動に適合されており、そのため異なる超音波振動装置、又は異なる用途、又は異なる外的状況に対して、それぞれ適当な基準振幅を外部から調整する必要はない。それにより取り扱いが簡素化され、当該超音波振動装置の効率が改善される。
【0026】
特にソノトロードと対向工具との接触又は離脱の検出に関して、多くの超音波用途、例えば超音波溶接又は超音波切断において、ソノトロードと対向工具との接触が決して予想されない既知の期間がある。ここで論じる実施形態は、許容範囲に対する基準振幅を定義するために、これらの期間の1つ以上を第2の測定期間として使用することを可能にする。
【0027】
それゆえソノトロードと対向工具との接触又は離脱を検出するための相応の方法において、第2の測定期間は、ソノトロードと対向工具との接触が通常の状況ではこの第2の測定期間内に予想されないように選択されていることが好ましい。
【0028】
別の実施形態は、第2の測定期間Δt中の検知から平均振動振幅が計算され、この計算された平均振動振幅がステップb)で所定の基準振幅として使用される。動作中に計算される振動振幅の平均値を基準振幅として使用することにより、基準振幅と許容値から生じる許容範囲が常に進行中の動作に正確に適合されるように確保される。
【0029】
更に別の実施形態では、第2の測定期間Δt中の検知から最小振動振幅Aminと最大振幅振動Amaxが決定され、最小振動振幅Aminと最大振幅振動Amaxから許容間隔がTmin≦Amin及びTmax≧Amaxとして計算される。この実施形態は特に、許容間隔によって形成される許容範囲が、ソノトロードと対向要素との接触又は離脱を指示しない振動振幅のすべての値を含むことを保証する。この場合、許容間隔は、常に動作時の特別な状況に適合されている。このようにして単一の超音波切断装置の許容間隔は、種々異なる外的状況に応じて動的に適合することができる。例えば最初の切断プロセスの許容間隔は、後続の第2の切断プロセスにおけるよりも広く形成することができる。
【0030】
超音波振動装置によって常に繰り返して実行されるプロセスに対して、基準振幅及び/又は許容間隔を自動的に決定するために、上述した実施形態は好ましく1回又は数回のみ実行されることが好ましい。その後は外的状況の変化が予想されない他の同種のプロセスに対しては、このようにして決定された基準振幅及び/又は許容間隔が使用される。
【0031】
超音波振動装置のプロセスとは、特に超音波切断工具の切断プロセス及び超音波溶接工具の溶接プロセスと理解されるべきである。
【0032】
好適な実施形態は、ステップa)でソノトロードはコンバータによって励起され、コンバータは電流発生器と接続されており、電流発生器によって供給されてコンバータを通って流れる電流IE(t)が測定され、更に電流発生器によりコンバータに印加される電圧UE(t)が測定され、これらの測定された電圧UE(t)と測定された電流IE(t)から振動振幅、又は電流発生器とコンバータからなる電気振動システムの、振動振幅と関係するフィールドサイズ(field size)が計算される。
【0033】
特に振動振幅は、国際公開第2013/017452(A2)号により公知の方法を用いて決定することができる。
【0034】
電流発生器は発電機であることが好ましく、周期的に変化する電圧、好ましくは交流電圧を提供し、交流電圧は好ましくは圧電素子を備えたコンバータにより機械的振動に変換されて、自由に振動する超音波振動装置内に定常波が形成され、その際にソノトロードと印加される電圧は、定常波の山の位置がソノトロードの前面の位置と一致するように形成されている。周期的に変化する印加電圧の周波数は励起周波数であり、これは、自由に振動する、即ち他の要素と接触していない超音波振動装置の共振周波数に対応するように選択される。
【0035】
ここで論じる実施形態を考慮に入れると、本発明の基礎としている認識はとりわけ、ソノトロードと対向要素が接触又は離脱すると超音波振動装置全体の振動構造が修正されて超音波振動装置の共振周波数がシフトするということである。その結果、励起周波数と共振周波数は一致しなくなる。このことはまた、例えば「乱れ(jitter)」、即ち振動振幅の交互の上昇と下降などの変化を引き起こす。
【0036】
別の実施形態では、本発明による方法は、更に次のステップc)を有する。
c)ステップb)で認識された接触又は離脱が行われた時点t0を、振動振幅(1)の時間的推移から決定し、振動振幅が測定期間に初めて許容範囲を離れる時点、又はこの時点から事前に定義された補正時間だけずらした時点が接触又は離脱の時点t0として規定される。
【0037】
この時点を決定することにより、有利には基礎となるプロセスを更に最適化することができる。
【0038】
測定期間内に振動振幅が初めて許容範囲を離れる時点を、接触又は離脱の時点t0として規定する第1の代替策は、接触又は離脱の時点を決定するための特に簡単な方法を表しており、振動振幅の簡単な照会と許容範囲との比較のみを必要とする。更にそれ以上の方法ステップは必要ないので、この好適な方法により接触又は離脱の時点t0は特に迅速かつ効率的に決定される。
【0039】
補正時間を設ける第2の代替策によって、接触又は離脱の時点が、個々の超音波振動装置で行われる認識、経験及び測定に依存して非常に正確かつ具体的に規定できる。
【0040】
一実施形態では、ステップa)で、振動振幅の時間的推移を決定するために、少なくとも2000サンプル/秒、好ましくは少なくとも5000サンプル/秒、特に好ましくは少なくともの15000サンプル/秒のサンプリングレートを使用する。好適な実施形態では、測定値は50μsごとに記録され、これは20000サンプル/秒に相当する。
【0041】
上記のサンプリングレートによって、振動振幅が実際に許容範囲を離れる時点と、許容範囲を離れたことが確認される時点との間の時間が十分に短いことが確保される。例えば5,000サンプル/秒のサンプリングレートでは、振動振幅が実際に許容範囲を離れる時点と、許容範囲を離れたことが認識される時点との間は常に200μs未満であり、10000サンプル/秒のサンプリングレートでは常に100μs未満であり、20,000サンプル/秒のサンプリングレートでは常に50μs未満である。
【0042】
特に好適な実施形態では、対向要素として対向工具が使用され、ソノトロードと対向工具との間に被加工材料を配置でき、ソノトロードと対向工具との間の接触が検出される。
【0043】
このようにすることによって、例えば超音波切断において、ソノトロードと対向工具との接触は切断プロセスが成功したことを示すので、いつ切断が完了したかを有利に検出することができる。
【0044】
本発明の基礎となる課題は、更に超音波振動装置を制御する方法によって解決され、超音波振動装置はソノトロードと対向工具を有し、対向工具は動作時にソノトロードと対向して配置されて、ソノトロードによって加工する材料をソノトロードと対向工具との間に配置できるようになっており、
A)ソノトロードを所定の時間tdの間、振動で励起するステップと、続いて
B)請求項8に記載の方法を(上述した実施形態により)実行するステップと、
C)ステップB)でソノトロードと対向工具の間の接触が検出されたら、ソノトロードの励起を停止するステップとを有する。
【0045】
上述した方法で決定されたソノトロードと対向工具との接触は、この実施形態で説明した方法によって超音波振動装置を制御するために利用される。この場合、方法ステップは自動化されて実施されることが好ましい。
【0046】
ソノトロードと対向工具の接触を決定するための上述した本発明による方法の検知時間は、従来技術により知られている検知時間よりはるかに短いので、接触の決定に続く制御命令の潜在的応答時間も著しく短い。
【0047】
ソノトロードの振動中にソノトロードと対向工具が接触すると衝突や相互摩擦のために強い磨耗が引き起こされるので、最初に接触を認識したら励起を終了(遮断)したりソノトロードを離したりすることによって摩耗が最小限度に抑えられる。このとき費やされる応答時間は、従来使用されている金属接触検知に基づく方法より明らかに短い(即ち約100マイクロ秒の範囲内)。これらの方法で得られる達成可能な最小応答時間は、達成可能な検知時間に基づいて2ミリ秒である。
【0048】
この方法の好適な実施形態では、ステップC)は、接触が検出された後で所定の追跡時間tNが経過してから初めて実行され、好ましくは接触が検出された直後に振動振幅の低減が行われる。
【0049】
そのような事前に定義された追跡時間tNは、対向工具とソノトロードが接触したときに超音波適用プロセス、例えば超音波溶接過程又は超音波切断過程が完全に終了していない場合に特に有利である。ソノトロードと対向工具は、切断しようとする材料がまだ100%に切断されていないにもかかわらず接触することがある。それゆえそのような事前に定義された追跡時間が設けられて調整可能であることは、超音波振動装置にとって有利である。
【0050】
更に、実際の接触に至る直前に接触が決定される場合もある。そのような場合、検知時間はマイナスになろう。それゆえこれらの場合も、所望の適用、例えば超音波切断プロセスが正常に完了することを確保するために追跡時間は有用である。
【0051】
追跡時間内に振動振幅が絶えず縮小されて、振動が突然終了するのではなく、振動が「消失(fading out)」することが好ましい。そうすることによって超音波溶接においては切断エッジが、超音波切断においては溶接継目が特にきれいに仕上げられる。
【0052】
特に好適な実施形態では、測定期間ΔTは、ソノトロードの振動の開始(投入)の時点から見て遅延時間のtdが経過した後で開始し、そのためソノトロードの振動の過渡振動は測定期間ΔT外にある。
【0053】
このようにすることにより、振動が通常定義された許容範囲外にもある既述のソノトロードの過渡振動過程は測定期間から除外されて、ソノトロードの振動の振幅の時間的推移に基づく接触の誤検出決定を招くことはない。測定期間をこのように規定することは、測定期間外に起こる接触を決定しないリスクの点でほとんどの場合に問題にならない。なぜなら、超音波振動装置若しくは超音波適用において、過渡振動過程の間、ソノトロードと対向工具が接触することは通常予想されないからである。
【0054】
本発明による方法のすべての実施形態は、コンピュータに実装される方法として設計されることが好ましい。
【0055】
更に、本発明はソノトロードと対向工具を備えた超音波振動装置を含み、ソノトロードによって加工される材料はソノトロードと対向工具との間に配置でき、コンピュータに実装される方法を上述した実施形態に従って実行するための手段を含む。この場合、好ましくは超音波振動装置は、高周波電圧を供給するための発電機と、電流発生器、コンバータ高周波電圧を機械的振動に変換するための少なくとも1つの圧電素子を備えたコンバータを有し、コンバータとソノトロードは、コンバータの機械的振動がソノトロードに伝達されるように接続されている。
【0056】
本発明による超音波振動装置は、超音波切断装置であることが好ましい。そのような超音波切断装置では、ソノトロードと対向工具との接触の決定に続いて超音波振動装置を制御するための応答時間が非常に短いと特に有利である。なぜならソノトロードと対向工具が接触することは、切断過程が終了したことと同義だからである。これにより切断プロセスはより効率的に工具に優しい方法で実行することができる。
【0057】
更に、本発明はコンピュータプログラムを含んでおり、これはプログラムがコンピュータ又はプロセッサによって実行されるときに、これらに上記の実施形態の1つによる方法を実行させる命令を含んでいる。
【0058】
本発明は更にコンピュータ可読記憶媒体を含み、これはコンピュータによって実行されるときに、これに上記の実施形態の1つによる方法を実行させる命令を含んでいる。
【0059】
本発明のその他の利点、特徴、及び可能な応用は、好適な実施形態の以下の説明及び関連する図に基づいて明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は接触前(左)と接触中のソノトロードとアンビルの概略図である。
図2図2は本発明による方法の実施形態を使用する際のソノトロードの振動振幅の時間的推移のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1に、ソノトロード4と対向工具5の概略図が示されている。ソノトロード4と対向工具5との間に、切断しようとする材料7が配置されている。対向工具5は、隆起部6を有する。
【0062】
図1の左側には、加工直前の状況が示されている。材料7を切断するために、ソノトロード4は対向工具5に向かって動かされる。材料7はソノトロード4と隆起部6の間で、図1の右側に示されているようにソノトロード4が隆起部6と隆起部6が接触するまで圧縮される。隆起部6がソノトロード4と接触すると材料7が切断され、加工ステップが完了する。図1の右側に示す状態で、隆起部6がソノトロード4と接触すると、ソノトロード4の振動振幅が変化し、それが本発明により検出される。
【0063】
図2は、横軸に時間tが示され、縦軸に振動振幅A0が示された2軸グラフを示している。参照番号1で表示された線は、振動振幅A0の時間的推移を表す。
【0064】
図示された振動振幅A0の時間的推移は、ソノトロードと対向工具との接触を検出するための本発明の方法が適用された、超音波切断装置のソノトロードの振動振幅の時間的推移である。基本的な切断プロセスにおいて、ソノトロードと対向工具との間に材料は、配置され、次いでソノトロードにより超音波機械加工で切断される。図2に示す時間的推移1は、ソノトロードの振動振幅A0を、ソノトロードのここで使用された信号の開始若しくは投入の時点から始まり、ソノトロードの振動が終わる時点まで示している。
【0065】
振動振幅A0の時間的推移において、左側の領域に過渡振動過程が見て取れ、ソノトロードの振動振幅A0は最初にゼロ位置から上昇し、次にグラフの中央領域では固定値で軽く上下振動する推移を辿っているが、これは過渡振動過程が完了したことを示している。
【0066】
図2に示す振動振幅A0の時間的推移においては、過渡振動過程が終了した後で測定期間ΔTが開始するように形成された遅延時間tdを設けた、本発明による方法の実施形態が適用された。遅延時間tdの時間的な広がりは、図2に示すグラフでは両矢印で示されている。
【0067】
更に図2に示すグラフには、基準振幅Rと許容値αによって定義される許容範囲3が記入されている。許容範囲3は、振動振幅の下限R-αから振動振幅の上限R+αまで及ぶ。基本的な本発明の方法は、振動振幅が測定期間内ΔTに、即ちここでは遅延時間tdの後に許容範囲3を離れ、それによってR+αよりも大きい値又はR-αがより小さい値を取ると対向工具とソノトロードとの接触が決定されるようになっている。
【0068】
振動振幅A0の時間的推移の参照符号2で表示された個所で、振幅振動A0は、それまではまだ許容範囲3の値を取っていたが、遅延時間tdの後で始まった測定期間ΔT内に許容範囲3外の値を取ることが見て取れる。したがってこれに対応する時点t0は、振動振幅A0が初めて許容範囲3にある時点によって決定される。このとき時点t0は、ソノトロードと対向工具との接触が行われた時点として決定される。
【0069】
図2に示すグラフの基礎となる本発明の実施形態では、対向工具とソノトロードの接触が決定されたことに対する応答として、追跡時間tNの後で超音波振動装置が遮断されてソノトロードの振動が終了する。追跡時間tNは接触する時点t0を起点として、図2では同様に両矢印で記入されている。追跡時間tNが経過すると、非常に短い期間内にソノトロードの振動が終了し、その期間内に振動振幅はゼロ位置に低下する。
【0070】
要約すると、本発明は周波数f及び振動振幅A0で振動するように設定されたソノトロード(4)と、対向要素(5)との接触又は離脱を検出するための方法に関する。ソノトロードと対向要素との接触又は離脱を特に迅速かつ廉価に検出できる方法を提供するために、本発明により、この方法は、(a)第1の測定期間ΔTの間に振動振幅A0(1)の時間的推移を検知するステップと、(b)振動振幅A0(1)の時間的推移から、測定期間ΔT内に接触又は離脱が起こったか否かを決定するステップとを有することが提案される。
なお、本発明の態様(構成)として、以下に示すものがある。
[態様1]
周波数f及び振動振幅A 0 で振動するように設定されたソノトロード(4)と、対向要素(5)との接触又は離脱を検出するための方法であって、
a)第1の測定期間ΔTの間に振動振幅A 0 (1)の時間的推移を検知するステップと、
b)振動振幅A 0 (1)の時間的推移から、測定期間ΔT内に接触又は離脱が起こったか否かを決定するステップと、を有する方法。
[態様2]
ステップb)で、検知された振動振幅A 0 が所定の基準振幅Rから所定の許容値αを超えて逸脱すると、又は検知された振動振幅A 0 が所定の許容間隔(T min ,T max )外にあると、ソノトロード(4)と対向要素(5)との接触又は離脱が確認されることを特徴とする、態様1に記載の方法。
[態様3]
ステップa)の前に第2の測定期間Δtの間に振動振幅A 0 (1)の時間的推移が検知され、この第2の測定期間Δt中の検知から基準振幅及び/又は許容間隔が計算されることを特徴とする、態様2に記載の方法。
[態様4]
i)第2の測定期間Δt中の検知から平均振動振幅が計算され、この計算された平均振動振幅がステップb)で所定の基準振幅として使用されること、
及び/又は
ii)第2の測定期間Δt中の検知から最小振動振幅A min と最大振幅振動A max が決定され、最小振動振幅A min と最大振幅振動A max から許容間隔がT min ≦A min 及びT max ≧A max として計算されることを特徴とする、態様3に記載の方法。
[態様5]
ステップa)でソノトロード(4)はコンバータによって励起され、コンバータは電流発生器と接続されており、電流発生器によって供給されてコンバータを通って流れる電流I E (t)が測定され、更に電流発生器によりコンバータに印加される電圧U E (t)が測定され、これらの測定された電圧U E (t)と測定された電流I E (t)から振動振幅、又は電流発生器とコンバータからなる電気振動システムの、振動振幅と関係するフィールドサイズが計算されることを特徴とする、態様1~4の何れか一項に記載の方法。
[態様6]
更に、
c)ステップb)で認識された接触が行われた時点t 0 を、振動振幅(1)の時間的推移から決定し、振動振幅が測定期間ΔT内に初めて許容範囲(T min ,T max )又は(R-α,R+α)(3)を離れる時点、又はこの時点から事前に定義された補正時間だけずらした時点が、接触の時点t 0 として設定されるステップを有することを特徴とする、態様2~5の何れか一項に記載の方法。
[態様7]
ステップa)で、振動振幅の時間的推移を決定するために、少なくとも2000サンプル/秒、好ましくは少なくとも5000サンプル/秒、特に好ましくは少なくともの15000サンプル/秒のサンプリングレートを使用することを特徴とする、態様1~6の何れか一項に記載の方法。
[態様8]
対向要素として対向工具(5)が使用され、ソノトロード(4)と対向工具(5)との間に加工される材料(7)を配置でき、ソノトロード(4)と対向工具(5)との接触が検出されることを特徴とする、態様1~7の何れか一項に記載の方法。
[態様9]
超音波振動装置を制御するための方法であって、
超音波振動装置はソノトロード(4)と対向工具(5)を有し、対向工具(5)は動作時にソノトロード(4)と対向して配置されて、ソノトロード(4)によって加工する材料(7)をソノトロード(4)と対向工具(5)との間に配置できるようになっており、
A)所定の時間t d の間に振動を伴ってソノトロード(4)を励起するステップと、続いて、
B)態様8に記載の方法を実行するステップと、
C)ステップB)でソノトロード(4)と対向工具(5)の間の接触が検出されてから、ソノトロード(4)の励起を停止し、又はソノトロードを対向工具(5)から離すステップと、を有する方法。
[態様10]
前記ステップC)は、接触が検出された後で所定の追跡時間t N が経過してから初めて実行され、好ましくは接触が検出された直後に振動振幅の低減が行われることを特徴とする、態様9に記載の方法。
【符号の説明】
【0071】
1 振動振幅の時間的推移
2 振動振幅の値範囲の個所
3 許容範囲
4 ソノトロード
5 対向工具
6 隆起部
7 材料
R 基準振幅
α 許容値
d 遅延時間
N 追跡時間
0 時点
t 時間
0 振動振幅(ソノトロードの振動の振幅)
図1
図2