(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】薄膜層貼付具
(51)【国際特許分類】
A45D 40/30 20060101AFI20240522BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240522BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
A45D40/30
A61K8/02
A61Q1/04
(21)【出願番号】P 2021553416
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2020039216
(87)【国際公開番号】W WO2021085203
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2019199325
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】尾花 敬和
(72)【発明者】
【氏名】冨田 希子
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0117437(KR,A)
【文献】特開2014-196276(JP,A)
【文献】特開2014-231483(JP,A)
【文献】特開平05-038348(JP,A)
【文献】特開2016-140717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0286687(US,A1)
【文献】特表2004-530883(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0067718(US,A1)
【文献】特開2015-168626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/30
A61K 8/02
A61Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の体表部に貼付される薄膜層を挟んで、第1のセパレータシートと、第1のセパレータシートよりも薄膜層に対する粘着力の強い第2のセパレータシートとを積層してなり、先に第1のセパレータシートを前記薄膜層から剥離した後に、該薄膜層を前記体表部に接触させた状態で第2のセパレータシートを薄膜層から剥離することにより薄膜層を前記体表部に貼付する薄膜層貼付具であって、
前記薄膜層が、前記貼付がなされる前記体表部の外形に対応させて概略一方向に延びたものであり、
前記第2のセパレータシートが、分割線により分割される2枚のセパレータシート片からなり、該2枚のセパレータシート片がそれぞれ、前記薄膜層に粘着される粘着領域
を含んで前記一方向に沿った方向に延びる横部分と、前記薄膜層に粘着されない非粘着領域
を含んで前記一方向と交わる方向に延びる少なくとも1つの縦部分とを有し、
前記縦部分が把持部であり、
前記分割線が、前記第2のセパレータシートの少なくとも前記非粘着領域を含む部分において蛇行形状またはジグザグ形状であることを特徴とする薄膜層貼付具。
【請求項2】
前記分割線が、前記第2のセパレータシートの少なくとも前記粘着領域を含む部分において蛇行形状またはジグザグ形状である請求項1に記載の薄膜層貼付具。
【請求項3】
前記薄膜層と、前記第1のセパレータシートとの間に第1のセパレータシート側の粘着層を有し、かつ、
前記薄膜層と、前記第2のセパレータシートとの間に第2のセパレータシート側の粘着層を有し、
前記粘着領域が、前記第2のセパレータシート側の粘着層である、
請求項1または2に記載の薄膜層貼付具。
【請求項4】
前記2枚のセパレータシート片の各々における前記縦部分が、蛇行形状またはジグザグ形状の分割線を介して互いに隣接している、
請求項
1から3
のいずれかに記載の薄膜層貼付具。
【請求項5】
前記2枚のセパレータシート片の各々における前記横部分が、蛇行形状またはジグザグ形状の分割線を介して互いに隣接している、
請求項4に記載の薄膜層貼付具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜層貼付具に関し、特に詳しくは、唇その他人体の所望部位の表面に貼付される薄膜層をシート状基材の上に担持してなる薄膜層貼付具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1~3に示されるように、唇に貼付される「つけ唇」等と称される薄膜層をシート材の上に剥離可能に担持してなる薄膜層貼付具が知られている。特に引用文献2には、口紅がコーティングされた薄膜層を、一表面および他表面側からガードシートおよびベースシートで挟み付けてなり、それらのシートは唇よりも広い範囲まで延びるように形成された唇化粧料シート体が示されている。この薄膜層貼付具は、通常着色されている薄膜層を唇に接触させた状態でシート材を薄膜層から剥離させて、薄膜層を唇に貼付するように使用される。このような薄膜層貼付具は、上記「つけ唇」以外の化粧用の薄膜層、例えばシミ隠し膜や保湿膜等を貼付するために、さらには化粧用以外の医療用薄膜層等を貼付するために用いることも可能である。また、薄膜層貼付具によって薄膜層が貼付される人体の体表部も、唇に限られるものではなく、例えば顔、手、足、胸、下腹、背中、爪等が挙げられる。
【0003】
この種の薄膜層貼付具においては、例えば特許文献3に示されるように、上記薄膜層およびシート材に加えてさらに、シート材と反対側から薄膜層を覆う別のシート材を設けたものも知られている。この薄膜層貼付具を特許文献3の記載に沿って説明すると、着色され得る支持体層(上記薄膜層に相当)の一表面側にキャリア層(上記シート材に相当)を積層し、支持体層の他表面側に粘着層を介して離型紙等からなるセパレータ層(上記別のシート材に相当)を積層してなるものである。この薄膜層貼付具は、セパレータ層を剥がして粘着層により支持体層を唇の表面に貼付し、その後、キャリア層を剥がすように使用される。キャリア層が剥がされると、唇の表面に貼付されている支持体層が直接視認され得るようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-080807号公報
【文献】特開2008-029522号公報
【文献】特開2015-168626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、支持体層(薄膜層)が唇の表面に貼付された後に剥がされるシート材は、支持体層からの剥離性が良いことが望まれる。そこで特許文献3には、キャリア層/唇に貼付される支持体層/粘着剤層/セパレータ層をこの順に積層して備える積層体口唇用貼付材において、唇の形状に合わせて細長い形状とされたシート材であるキャリア層に、その長手方向や、あるいは長手方向と直交する方向(概略唇の厚さ方向)に延びてキャリア層を2つに分ける直線状の分割線(スリット)を設けておくことが提案されている。このような分割線を設けておけば、分割線を境にして2分割されたキャリア層の各々を分割線の近辺から把持して、唇に貼付されている支持体層から剥離できるようになる。特に分割線が、概略唇の厚さ方向に延びるものである場合は、2分割されたキャリア層の各々を、唇の中央付近から唇の左右端部に向かう方向に剥離することも可能であり、この剥離をより容易に行うことができる。
【0006】
しかし、この特許文献3に示された積層体口唇用貼付材において、分割線が設けられたキャリア層は唇の形状に合わせた小さい形状とされているので、この口唇用貼付材は取扱いが難しいものとなっている。そこでこのキャリア層を、唇の形状に合わせた粘着剤層よりも広い範囲まで拡がるように大きく形成して、口唇用貼付材の取扱いは、粘着剤層の無いキャリア層の部分を手で把持して行うことが考えられる。ところが本発明者の研究によると、そのようにして口唇用貼付材を取り扱うと、粘着剤層の無いキャリア層の部分を手で把持しているうちに、キャリア層が分割線の所から簡単に大きく分割し得ることが判明した。そうであると、唇に貼付される支持体層が未貼付のうちに、この支持体層に対面する部分のキャリア層も大きく分割してしまって、支持体層を唇に貼付し難くなる。本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、唇等に貼付される薄膜層を粘着保持するシート材を有し、このシート材に分割線が設けられていても、シート材が分割線の所から簡単に大きく分割してしまうことのない薄膜層貼付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による薄膜層貼付具は、
唇等の人体の体表部に貼付される薄膜層を挟んで、第1のセパレータシートと、第1のセパレータシートよりも薄膜層に対する粘着力の強い第2のセパレータシートとを積層してなり、先に第1のセパレータシートを薄膜層から剥離した後に、該薄膜層を体表部に接触させた状態で第2のセパレータシートを薄膜層から剥離することにより薄膜層を体表部に貼付する薄膜層貼付具であって、
第2のセパレータシートが、分割線により分割される2枚のセパレータシート片からなり、該2枚のセパレータシート片がそれぞれ、薄膜層に粘着される粘着領域と、薄膜層に粘着されない非粘着領域とを有し、
上記分割線が、第2のセパレータシートの少なくとも非粘着領域を含む部分において蛇行形状またはジグザグ形状であることを特徴とするものである。
【0008】
なお、上記分割線は、第2のセパレータシートの少なくとも粘着領域を含む部分において蛇行形状またはジグザグ形状であることが望ましい。そして分割線は、この第2のセパレータシートの少なくとも粘着領域を含む部分においても、また上記非粘着領域を含む部分においても、蛇行形状とジグザク形状とが共存した形状とされてもよい。さらに分割線は、以上述べた種々の形状に一部直線形状が加わった形状とされてもよい。
【0009】
また、上記構成を有する本発明の薄膜層貼付具においては、
薄膜層が、上記貼付がなされる唇等の体表部の外形に対応させて概略一方向に延びたものであり、
2枚のセパレータシート片がそれぞれ、粘着領域を含んで上記一方向に沿った方向に延びる横部分と、非粘着領域を含んで上記一方向と交わる方向に延びる縦部分とを有している、
ことが望ましい。
【0010】
そして、2枚のセパレータシート片がそれぞれ上記横部分と縦部分とを有している場合、2枚のセパレータシート片の各々における縦部分(非粘着領域を含む部分である)が、蛇行形状またはジグザグ形状の分割線を介して互いに隣接するように形成されてもよい。また、2枚のセパレータシート片の各々における縦部分が上述の通りに形成された上で、2枚のセパレータシート片の各々における横部分(粘着領域を含む部分である)が同様に、蛇行形状またはジグザグ形状の分割線を介して互いに隣接するように形成されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の薄膜層貼付具によれば、人体の体表部に貼付される薄膜層を挟んで、第1のセパレータシートと、第1のセパレータシートよりも薄膜層に対する粘着力の強い第2のセパレータシートとを積層して構成されているので、第2のセパレータシートが薄膜層に粘着した状態のまま、薄膜層から第1のセパレータシートを容易に剥離させることができる。そこでその後、薄膜層を、第1のセパレータシートが積層していた側の表面から体表部に接触、粘着させることができる。以上の操作を行うに当たっては、薄膜層に粘着している第2のセパレータシートの非粘着領域を指先に把持しながら行うことができる。
【0012】
薄膜層を上述のように体表部に粘着させた後、薄膜層から第2のセパレータシートを剥離、除去する必要があるが、第2のセパレータシートには分割線が形成されているので、この分割線の両側の部分から捲るようにして、第2のセパレータシートの剥離、除去の操作を容易に行うことができる。しかし、この操作の前に、第2のセパレータシートが分割線の所から簡単に大きく分割してしまうことは防止可能である。これは、分割線が、第2のセパレータシートの少なくとも非粘着領域を含む部分において蛇行形状またはジグザグ形状とされている構成による。以下その理由を、上記構成を本構成と称し、特許文献3に示されるように分割線が直線状に形成されている構成を対比構成と称して、詳しく説明する。
【0013】
対比構成において、分割線の両側に有る2枚のセパレータシート片はそれぞれ、分割線を揺動軸として簡単に揺動しやすい。この揺動は、揺動軸方向から見たとき2枚のセパレータシート片が「く」の字状になるような動きであり、第2のセパレータシートを把持している指先から、そのような揺動をさせるような力が該第2のセパレータシートに作用することもある。2枚のセパレータシート片の一方あるいは双方が上述のように揺動すると、両セパレータシート片は簡単に大きく分割してしまう。それに対して本構成においては、第2のセパレータシートに上述のような力が作用した場合、2枚のセパレータシート片の分割線を介して隣接している部分の多くに、互いにシート厚さ方向またはそれに近い方向に相対移動させるような力が作用する。この力は、2枚のセパレータシート片の端面を互いに擦れ合わせて、上記相対移動の抵抗となるので、両セパレータシート片が簡単に大きく分割してしまうことが防止される。
【0014】
さらに対比構成においては、分割線の両側に有る2枚のセパレータシート片はそれぞれ、概略シート面内で互いに独立して回転するように動きやすい。この動きは、例えばハサミの両刃のような動きであり、第2のセパレータシートを把持している指先から、そのような動きをさせる力が該第2のセパレータシートに作用することもある。2枚のセパレータシート片の一方あるいは双方が上述のように動くと、両セパレータシート片は簡単に大きく分割してしまう。それに対して本構成においては、第2のセパレータシートに上述のような力が作用しても、2枚のセパレータシート片の分割線を介して隣接している部分は互いに歯車状に噛み合っていることから、上記の回転するように動くことが起こり難い。そこでこの場合も、両セパレータシート片が簡単に大きく分割してしまうことが防止される。以上述べた効果は、分割線が、第2のセパレータシートの少なくとも非粘着領域を含む部分において蛇行形状とジグザク形状とが共存した形状とされている場合も、さらには、蛇行形状および/またはジグザク形状に一部直線形状が加わった形状とされている場合も同様に得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態による薄膜層貼付具を示す平面図
【
図2】
図1の薄膜層貼付具を分解して示す分解斜視図
【
図3】
図1の薄膜層貼付具の層構成を示す概略断面図
【
図5】本発明の第2実施形態による薄膜層貼付具を示す平面図
【
図6】
図5の薄膜層貼付具の体表部への貼付状態を説明する概略図
【
図7】
図1の薄膜層貼付具の体表部への貼付状態を説明する概略図
【
図8】本発明の第3実施形態による薄膜層貼付具を示す平面図
【
図9】本発明の第4実施形態による薄膜層貼付具を示す平面図
【
図10】本発明の第5実施形態による薄膜層貼付具を示す平面図
【
図11】本発明の第6実施形態による薄膜層貼付具を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による薄膜層貼付具10を示す平面図であり、
図2はこの薄膜層貼付具10の層構成を示す分解斜視図である。これらの図に示される通り薄膜層貼付具10は、一例として長方形状とされた第1のセパレータシート1と、この第1のセパレータシート1の上に配された柔軟性を有する薄膜層3と、この薄膜層3の上に配された第2のセパレータシート2とを積層して構成されている。薄膜層3は唇、本例では下唇に貼付されるものであって、下唇の外形に対応させて概略一方向(
図1中の左右方向)に延びた形状とされ、例えば紅色やそれに近い色に着色されたり、あるいは透明のものとされている。また薄膜層3は後に詳述するように、その一表面および他表面が粘着性のものとされている。薄膜層3を着色しておくことにより、該薄膜層3とセパレータシート1、2との境界が視認しやすくなり、薄膜層3を唇等の所望の部位に正確に貼ることが可能になる。
【0017】
薄膜層3を着色するための着色剤としては例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム等の無機顔料;酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆ホウケイ酸ガラス等のパール剤,有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等)等が使用可能である。
【0018】
第1のセパレータシート1および第2のセパレータシート2は、例えば透明な合成樹脂シートから形成されている。なお、特に第1のセパレータシート1は、合成樹脂の他に紙から形成されてもよい。第1のセパレータシート1は一例として長方形状とされている。第2のセパレータシート2は、上記一方向に沿った方向に延びる横部分2aと、上記一方向と交わる方向に延びる縦部分2bとを有する形状とされている。第2のセパレータシート2は、柔軟性を有する薄膜層3に倣って変形できるように、柔軟性を有していることが望ましい。なお
図1には、上記横部分2aと縦部分2bとの境界を破線で示している。この破線の図中上側が横部分2aであり、下側の部分が縦部分2bである。横部分2aは、薄膜層3の外周よりもやや大きい外周を有する形状とされている。
【0019】
第1のセパレータシート1あるいは第2のセパレータシート2は、着色されたり、印字されていてもよい。このように着色や印字をしておくことにより、薄膜層貼付具10を使用する際に、剥がすべきシートは第1のセパレータシート1と第2のセパレータシート2のどちらであるかが分かりやすくなる。
【0020】
図3は、薄膜層3の外周近傍部分における第1のセパレータシート1、第2のセパレータシート2および薄膜層3の断面形状を示す図である。同図に示される通り、第2のセパレータシート2における横部分2aは、薄膜層3の全面を上から覆った上で、薄膜層3よりも外側まで延びた状態とされている。
【0021】
また、前述したように薄膜層3は、その一表面および他表面が粘着性のものとされている。すなわち、薄膜層3の第1のセパレータシート1側の表面には粘着層3aが形成され、薄膜層3の第2のセパレータシート2側の表面には粘着層3bが形成されている。それにより、第1のセパレータシート1および第2のセパレータシート2は、それぞれ薄膜層3に粘着している。ここで、薄膜層3の第2のセパレータシート2側の粘着層3bは、第1のセパレータシート1側の粘着層3aよりも粘着力が強いものとされている。なお、粘着層3aおよび3bは、
図1および
図2では省略している。
【0022】
図1および
図2に示されるように第2のセパレータシート2は、横部分2aおよび縦部分2bに亘って延びる分割線4によって、2枚のセパレータシート片2L、2Rに分割されている。セパレータシート片2L、2Rはそれぞれ、薄膜層3に粘着される粘着領域(横部分2aの一部)と、薄膜層3に粘着されない非粘着領域(縦部分2b)とを有している。分割線4は、上記非粘着領域を含む縦部分2bにおいて蛇行形状とされている。つまりセパレータシート片2L、2Rの各縦部分2bは、蛇行形状の分割線4を介して互いに隣接した状態となっている。本例において分割線4はさらに、セパレータシート片2L、2Rの横部分2aにおいても蛇行形状とされている。このような蛇行形状の分割線4は、例えば打抜き刃による加工やレーザーカットにより形成することができる。
【0023】
以下、上記構成を有する薄膜層貼付具10の使用法について説明する。薄膜層貼付具10を使用する際には、まず第1のセパレータシート1が薄膜層3から剥離される。このとき、薄膜層3に対する粘着力は、第1のセパレータシート1よりも第2のセパレータシート2の方が強いので、薄膜層3に第2のセパレータシート2が粘着した状態を保って、簡単に第1のセパレータシート1を剥離させることができる。
【0024】
次いで
図4に示されるように、使用者の手5の指先で非粘着領域である第2のセパレータシート2を把持して、該第2のセパレータシート2に粘着している薄膜層3を、上唇6の下側の下唇(図示せず)に接触させる。薄膜層3は両表面が粘着性のものとされているので下唇に粘着可能であり、第2のセパレータシート2の上から薄膜層3を適宜下唇に押し付けることにより、薄膜層3を全面的に下唇に粘着、貼付させることができる。
【0025】
このとき、第2のセパレータシート2を2枚のセパレータシート片2L、2Rに分割する分割線4は少なくとも非粘着領域を含む縦部分2bにおいて蛇行形状とされているので、この縦部分2bが把持されていても、2枚のセパレータシート片2L、2Rが分割線4から簡単に大きく分割してしまうことはない。その理由は、先に詳しく説明した通りである。そこで、薄膜層3を下唇に粘着、貼付させる操作は、大きく分割してはいない第2のセパレータシート2に薄膜層3を保持させたまま、確実に行うことができる。
【0026】
こうして薄膜層3を下唇に貼付させたならば、次に、薄膜層3の上に残っている第2のセパレータシート2を薄膜層3から剥離、除去させる。このとき使用者は先ず、例えば、把持している縦部分2bを意識的に強く捻ってから保持を外すことにより、2枚のセパレータシート片2L、2Rが当初よりも分割線4から大きく分割した状態とする。
図4では、この状態にあるセパレータシート片2L、2Rを示している。次に使用者はセパレータシート片2L、2Rの一方の、例えば分割線4に隣接している部分を、シート把持側の手5とは別の手の指先で摘まんで薄膜層3から引き剥がす。このとき、セパレータシート片2L、2Rの一方は他方から大きく離れているので、上述のように指先で摘まみ易くなっている。その後、セパレータシート片2L、2Rの他方も同様にして薄膜層3から引き剥がす。以上により、第2のセパレータシート2を薄膜層3から容易に剥離、除去することができる。その後は下唇の上に、あたかも口紅を塗布したように、薄膜層3が残った状態となる。
【0027】
なお、上述のように唇等の上に薄膜層3を貼付させるに当たっては、貼付前に予め唇等の表面に密着剤を塗布しておくことが望ましい。それにより、薄膜層3が唇等に密着して剥がれ難くなって仕上がりが長時間に亘って持続する。またその結果、唇等の表層におけるいわゆるオクルージョン効果が持続することになり、その点でも好ましいと言える。その種の密着剤の一つの組成例を下の表1に示す。この表1において、化粧品名称に続けてその右側に当該化粧品のINCI(International Nomenclature of Cosmetic Ingredient)名称を併せて示す。また配合量は質量%で示している。
【0028】
【0029】
次に
図5を参照して、本発明の第2実施形態による薄膜層貼付具20について説明する。なおこの
図5において、先に説明した
図1~4中のものと同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は、特に必要の無い限り省略する(以下、同様)。上に説明した第1実施形態の薄膜層貼付具10において、分割線4は第2のセパレータシート2の横部分2aおよび縦部分2bの双方において蛇行形状とされているが、本実施形態の薄膜層貼付具20では、第2のセパレータシート2の縦部分2bにおける分割線4は蛇行形状とされる一方、第2のセパレータシート2の横部分2aにおける分割線24は直線状とされている。
【0030】
以上の構成においても、第2のセパレータシート2の縦部分2bにおいて分割線4は蛇行形状とされているので、それにより、第1実施形態におけるのと同様の作用、効果が得られる。
【0031】
ここで、上記第2実施形態による薄膜層貼付具20を用いた場合と、前述した第1実施形態による薄膜層貼付具10を用いた場合とにおける作用、効果の違いについて説明する。これらの薄膜層貼付具20、10を用いた場合それぞれにおける、セパレータシート片2L、2Rの体表部への貼付状態を
図6、
図7に概略的に示す。より詳しく説明すれば、
図6、
図7はそれぞれ、前述した下唇等の体表部6Uに貼付されているセパレータシート片2L、2Rを、それらの並び方向と直交し、かつ各セパレータシート片2L、2Rの厚さ方向と直交する方向、つまり
図5、
図1の上方側から見た状態を薄膜層3は省いて示している。そして各セパレータシート片2L、2Rはそれぞれ、貼付されている体表部6Uから剥がすために、相手のセパレータシート片と隣接している端部(分割線24あるいは分割線4に面している部分)近辺が、体表部6Uから少しの角度をなして斜めに離れた状態にあるものとする。
【0032】
図6と
図7とを比較すれば分かるように、体表部6Uが外側に向かって凸状のものである場合、その体表部6Uから角度をなして斜めに離れたセパレータシート片2L、2Rは、上記角度が共通であるならば、
図7の場合の方が、端部がより大きく体表部6Uから離れるようになる。つまり、第2のセパレータシート2の粘着領域を含む横部分2a(
図5および
図1参照)に形成される分割線は、
図1の構成における分割線4のように蛇行形状である方が、この横部分2aを把持して体表部6Uから剥がす作業をより容易に行えるようになる。この点は、分割線4が蛇行形状とされる代わりに、ジグザグ形状とされた場合も同様である。
【0033】
次に
図8を参照して、本発明の第3実施形態による薄膜層貼付具30について説明する。この第3実施形態の薄膜層貼付具30においては、粘着領域を含む横部分2aに形成された蛇行形状の分割線4と比べて、粘着領域を含まない縦部分2bに形成された分割線4sが、より細かい(ピッチがより小さい)蛇行形状のものとされている。このような分割線4sとしておくことにより、縦部分2bを把持した際に2枚のセパレータシート片2L、2Rが分割線4から簡単に大きく分割してしまうことを、より確実に防止可能となる。
【0034】
次に
図9を参照して、本発明の第4実施形態による薄膜層貼付具40について説明する。この第4実施形態の薄膜層貼付具40においては、粘着領域を含む横部分2aに形成された分割線4は蛇行形状のものとされる一方、粘着領域を含まない縦部分2bに形成された分割線4zはジグザグ形状のものとされている。このような分割線4zを適用した場合も、縦部分2bを把持した際に2枚のセパレータシート片2L、2Rが分割線4から簡単に大きく分割してしまうことを防止できる効果が得られる。
【0035】
次に
図10を参照して、本発明の第5実施形態による薄膜層貼付具50について説明する。この第5実施形態の薄膜層貼付具50において、薄膜層33としては、顔の肌に貼付されるシミ隠し膜が適用されている。また第2のセパレータシート2は、全体的に長円形に形成されている。この第2のセパレータシート2は、上記薄膜層33を含む部分つまり粘着領域を含む部分である横部分2aと、この横部分2aの左右両端からそれぞれシート長さ方向に張り出した張出し部分2cとを有している。そしてこの第2のセパレータシート2は、一方の張出し部分2cから横部分2aを経て他方の張出し部分2cまで延びる分割線34によって、図中上側のセパレータシート片2Tと、下側のセパレータシート片2Dとに分割されている。分割線34は、横部分2aでは直線状とされ、張出し部分2cでは蛇行形状とされている。
【0036】
上記構成の薄膜層貼付具50を使用する際には、まず使用者によって、第2のセパレータシート2に粘着している薄膜層33から第1のセパレータシート1が剥離され、次に2つの張出し部分2cの一方が把持されて第2のセパレータシート2が、所望の貼付部分に薄膜層33が位置するように肌に宛がわれる。その状態で、薄膜層33を所望の貼付部分に貼付させた後、互いに分離したセパレータシート片2Tおよび2Dが各々薄膜層33から剥離される。このように薄膜層貼付具50を使用する場合も、把持される張出し部分2cでは分割線34が蛇行形状とされているので、張出し部分2cが把持されていても、2枚のセパレータシート片2T、2Dが分割線34から簡単に大きく分割してしまうことが防止される。また張出し部分2cは、薄膜層33が粘着している横部分2aを間に置いて左右に2つ設けられているので、薄膜層33を貼付させたい肌の部分の位置や、使用者の利き腕に応じて張出し部分2cを選択して把持するようにして、容易に薄膜層33を肌に貼付させることができる。
【0037】
次に
図11を参照して、本発明の第6実施形態による薄膜層貼付具60について説明する。本実施形態の薄膜層貼付具60において、薄膜層43としては、顔の肌に貼付されるシミ隠し膜が適用されている。そして第2のセパレータシート2の非粘着領域を含む部分である縦部分2bは、粘着領域を含む部分である横部分2aを間に置いて互いに反対方向に突出させて2つ形成されている。分割線4は、第2のセパレータシート2の横部分2aおよび縦部分2bの全てに亘って蛇行形状とされている。上述のように縦部分2bを2つ形成しておくことにより、横部分2aを所望の位置に所望の姿勢で配する操作がより容易になる。本実施形態でも、第2のセパレータシート2の縦部分2bにおいて分割線4が蛇行形状とされているので、以上述べた各実施形態におけるのと同様の作用、効果が得られる。
【0038】
以上、薄膜層が唇や肌に貼付される膜である実施形態について説明したが、本発明の薄膜層貼付具は、唇や肌に貼付される膜以外の化粧用の薄膜層や、さらには化粧用以外の医療用薄膜層等を貼付するために用いることも可能である。また、本発明の薄膜層貼付具が薄膜層貼付の対象とする人体の体表部も、唇や顔の肌に限られるものではなく、例えば手、足、胸、下腹、背中、爪等に薄膜層を貼付するために本発明の薄膜層貼付具を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10、20、30、40、50、60 薄膜層貼付具
1 第1のセパレータシート
2 第2のセパレータシート
2a 第2のセパレータシートの横部分
2b 第2のセパレータシートの縦部分
2c 第2のセパレータシートの張出し部分
2L、2R、2T、2D セパレータシート片
3、33、43 薄膜層
3a、3b 粘着層
4、4s、4z、24、34 分割線
6U 体表部