(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】グリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方を低減するプロセスにおけるシリカ-ジルコニア触媒の使用
(51)【国際特許分類】
C11B 3/10 20060101AFI20240522BHJP
A23D 9/02 20060101ALI20240522BHJP
A23D 9/007 20060101ALI20240522BHJP
B01J 21/06 20060101ALI20240522BHJP
C01B 33/12 20060101ALI20240522BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20240522BHJP
B01J 35/61 20240101ALI20240522BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240522BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240522BHJP
B01J 35/63 20240101ALI20240522BHJP
B01J 35/64 20240101ALI20240522BHJP
【FI】
C11B3/10
A23D9/02
A23D9/007
B01J21/06 Z
C01B33/12 A
C01B33/18 Z
B01J35/61
B01J37/02 101E
B01J37/08
B01J35/63
B01J35/64
(21)【出願番号】P 2021565010
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 US2020029470
(87)【国際公開番号】W WO2020226905
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-17
(32)【優先日】2019-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミチョス、デメトゥリウス
(72)【発明者】
【氏名】グライムス、チェルシー、エル.
(72)【発明者】
【氏名】リバナティ、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】カトゥッチ、イニャツィオ
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-205141(JP,A)
【文献】国際公開第2019/007641(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B;C11C;B01J;C01B;A23D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリグリセリドを含む組成物中の(i)グリシドール、(ii)グリシジルエステル、又は(iii)グリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減するための方法であって、
前記トリグリセリドを含む前記組成物を、有効量の微粒子シリカ-ジルコニア触媒と接触させて、(i)グリシドール、(ii)グリシジルエステル、又は(iii)グリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減することであって、前記シリカ-ジルコニア触媒が、ジルコニアを含浸させた多孔質シリカ粒子を含む、ことを含み、
(i)グリシドール、(ii)グリシジルエステル、又は(iii)グリシドール及びグリシジルエステルの両方の量が、前記トリグリセリドを含む前記組成物の他の構成要素に影響を及ぼすことなく低減される、方法。
【請求項2】
前記シリカ-ジルコニア触媒が、前記多孔質シリカ粒子の表面の少なくとも一部上に配置されたジルコニアを含む、及び/又は
前記シリカ-ジルコニア触媒が、前記多孔質シリカ粒子の細孔の少なくとも一部内に配置されたジルコニアを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリカ-ジルコニア触媒が、実質的に前記多孔質シリカ粒子の細孔に配置されたジルコニアを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記シリカ-ジルコニア触媒が、約0.1ミクロン(μm)~約10,000μ
mの平均粒径を有する粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記シリカ-ジルコニア触媒が、Barrett-Joyner Halenda(BJH)法によって判定される、少なくとも0.01立方センチメートル/グラム(cc/g
)の細孔容積を有する粒子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリカ-ジルコニア触媒が、Micromeritics Instrument Corp.から入手可能なAutopore IV 9520を使用する水銀圧入試験手順によって判定される、少なくとも0.1ナノメートル(nm)~約1,000nmの平均細孔径を有する粒子を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シリカ-ジルコニア触媒が、約1.0nm~約100.0n
mの平均細孔径を有する粒子を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記シリカ-ジルコニア触媒が、少なくとも約10m
2/g~約2000m
2/g又はそれ以
上のBET粒子表面積を有する粒子を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記多孔質シリカ粒子が、シリカゲル、沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ粒子を含む、及び/又は
前記シリカ-ジルコニア触媒が、前記シリカ-ジルコニア触媒の総重量に基づいて少なくとも0.01重量パーセント(重量%)のジルコニ
アを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記シリカ-ジルコニア触媒が、
水中で多孔質シリカ粒子に可溶性ジルコニウム化合物を含浸させることと、
前記含浸多孔質シリカ粒子を約105℃で約2時間乾燥させることと、
前記乾燥した含浸多孔質シリカ粒子を約500℃で約4時間焼成することと、
によって形成される粒子を含み、前記含浸工程が
、前記多孔質シリカ粒子と前記可溶性ジルコニウム化合物とを約30分間接触さ
せ、及び/又は
前記方法が
、
前記含浸工程の後、及び前記乾燥工程の前に、前記含浸された多孔質シリカ粒子を約60分間粉砕させることを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記トリグリセリド及び前記シリカ-ジルコニア触媒を含む前記組成物を混合することを更に含む、及び/又は
前記接触工程が
、室温で行われる、及び/又は
前記混合工程が
、室温で行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記トリグリセリド及び前記シリカ-ジルコニア触媒を含む前記組成物を、少なくとも40.0℃の温
度まで加熱することを更に含み、
a)前記加熱工程が
、
前記トリグリセリド及び前記シリカ-ジルコニア触媒を含む前記組成物を最高温度まで加熱することと、
前記最高温度を少なくとも10.0分間維持することと、
を含み、
b)前記加熱工程が
、
前記トリグリセリド及び前記シリカ-ジルコニア触媒を含む前記組成物を最高温度まで加熱することと、
前記最高温度を約30.0分間維持することと、
を含み、及び/又は
c
)前記加熱工程及び前記混合工程が、同時に行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記接触工程が、
前記トリグリセリド及び前記シリカ-ジルコニア触媒を含む前記組成物を不活性ガス流下で混合することであって、前記不活性ガスが
、窒素、アルゴン、二酸化炭素、又はこれらの任意の組み合わせを含む、ことを含む、及び/又は
前記接触工程が
、
前記トリグリセリド及び前記シリカ-ジルコニア触媒を含む前記組成物を真空下で混合することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記トリグリセリドを含む前記組成物が、(i)油、(ii)有機溶媒、又は(iii)油及び有機溶媒の両方を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記トリグリセリドを含む前記組成物が、食用油を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記トリグリセリドを含む前記組成物が、(i)トリグリセリド系油、(ii)トリグリセリドを溶解可能な有機溶媒、又は(iii)トリグリセリド系油及びトリグリセリドを溶解可能な有機溶媒の両方を含み、前記トリグリセリドを含む前記組成物が、大豆油、パーム油、トウモロコシ油、キャノーラ油、菜種油、魚油、藻類油、ヒマワリ油、オリーブ油、植物油、植物由来油、動物由来油、微生物由来油、又はこれらの任意の組み合わせを
含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記トリグリセリドを含む前記組成物が、ヘプタン、ヘキサン、トルエン、ジエチルエーテル、アルコール、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記トリグリセリドを含む前記組成物中のグリシジルエステルが、オレイン酸グリシジルを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記シリカ-ジルコニア触媒の量が、前記シリカ-ジルコニア触媒及び前記トリグリセリドを含む前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.01重量%の前記シリカ-ジルコニア触
媒を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、(i)グリシドール、(ii)グリシジルエステル、又は(iii)グリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を、前記トリグリセリドを含む前記組成物中の(i)グリシドール、(ii)グリシジルエステル、又は(iii)グリシドール及びグリシジルエステルの両方の10.0百万分率(ppm)未満のレベルまで低
減する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、前記トリグリセリドを含む前記組成物中の(i)グリシドール、(ii)グリシジルエステル、又は(iii)グリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を少なくとも50重量パーセント(重量%)低
減する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
食用油の製造方法であって、前記方法が請求項
15に記載の方法を含み、前記食用油が
、請求項15~21のいずれか一項に記載の方法に記載されるように前記シリカ-ジルコニア触媒と接触させる前に、精製漂白脱臭(RBD)処理に供され、前記食用油が
、使用前に更なる処理を必要としない、方法。
【請求項23】
前記方法が、0.2ppm未満の総遊離及び結合グリシドール(すなわち、グリシドール及びグリシジルエステル)のレベルを提供し、
前記食用油が
、オレイン酸の含量として測定される初期遊離脂肪酸含量を有し、前記方法が、AOCS Official Method Ca 5a-40によって測定される前記初期遊離脂肪酸含量を約20%未
満変化させる、請求項1
5に記載の方法。
【請求項24】
前記食用油が、初期p-アニシジン値(p-AV)を有し、前記方法が、AOCS Official Method Cd 18-90によって測定される前記初期p-アニシジン値(p-AV)を10単位未満変化させる、及び/又は
前記食用油が初期過酸化物値(PV)を有し、前記方法が、AOCS Official Method Cd 8-53によって測定される前記初期過酸化物値を10単位未満変化させる、請求項1
5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方を低減するプロセスにおいてシリカ-ジルコニア触媒を使用する方法に関する。本発明はまた、シリカ-ジルコニア触媒、及びシリカ-ジルコニア触媒の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリシジルエステルは、加工された食用油に見出される既知の発癌因子及び突然変異原である。これらの発熱汚染物質は、200℃という低い温度で形成される。しかしながら、脱臭プロセス中に、油から様々な揮発性成分を除去するためには、はるかに高い温度が必要である。いったん原油が精製、漂白、脱臭された(RBD)後、グリシジルエステル濃度を許容可能な規制限度に下げるために追加の油処理が必要とされる。これらの低減方法としては、限定するものではないが、油を酵素と接触させること、油を酸と剪断混合すること、油を再漂白すること、及び/又は脱臭を低温だが、長期間にわたって再実行させることなどの、多種多様なプロセスの組み合わせが挙げられる。これらの既知の方法は、動作するために非効率的かつ費用がかかるだけでなく、油品質を更に劣化させ、市場価格を低下させる。
【0003】
当該技術分野では、食用油などのトリグリセリド含有組成物から、グリシジルエステルなどの発熱汚染物質を低減するための有効な方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方を低減するための方法を発見することにより、当該技術分野における前述の必要性に対処し、この方法は、既知の方法の欠点を伴わずに有効な環境に優しい方法を提供する。本発明の方法は、有利なことに、(1)はるかに低い処理温度を要する、(2)より短い処理時間を要する、(3)食用油の遊離脂肪酸含量を増加させない、(4)処理されたトリグリセリド含有組成物(例えば、処理された食用油)のp-アニシジン値及び/又は過酸化物値によって測定される、いかなる有意な酸化ももたらさない。
【0005】
したがって、本発明は、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減するための方法は、トリグリセリド含有組成物を有効量のシリカ-ジルコニア触媒と接触させて、組成物中の(i)グリシドール、(ii)グリシジルエステル、又は(iii)グリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減させることを含み、(i)グリシドール、(ii)グリシジルエステル、又は(iii)グリシドール及びグリシジルエステルの両方の量は、トリグリセリドを含む組成物の他の構成要素に影響を及ぼすことなく(すなわち、トリグリセリド含有組成物の遊離脂肪酸含量を増加させることなく、処理されたトリグリセリド含有組成物のp-アニシジン値及び/又は過酸化物値によって測定される、トリグリセリド含有組成物の有意な酸化を伴うことなく)低減される。
【0006】
いくつかの実施形態では、本方法は、有益なことに、比較的短い反応時間(例えば、60分以下)及び相対的に低い反応温度(例えば、典型的には室温~約100℃まで)を使用する。本方法は、開示されるシリカ-ジルコニア触媒を使用して、グリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方をより効果的に低減するように、トリグリセリド含有組成物及びシリカ-ジルコニア粒子を加熱することを更に含んでもよい。予想外に、有効量の開示されたシリカ-ジルコニア触媒粒子の導入は、トリグリセリド含有組成物(例えば、食用油)中に存在するグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方を低減する上で優れた触媒活性をもたらすことが見出された。
【0007】
いくつかの所望の実施形態では、トリグリセリド含有食用油中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドールとグリシジルエステルの両方を低減するための方法は、望ましくは、低レベル、すなわち0.2ppm未満のグリシジルエステルを有し、(i)食用油の初期遊離脂肪酸含量(オレイン酸の含量によって測定される)、又は(ii)(a)American Oil Chemists’Society(AOCS)Official Method Cd 18-90によって測定される食用油のp-アニシジン値、(b)AOCS Official Method Cd 8-53によって測定される食用油の過酸化物値、若しくは(c)(a)及び(b)の両方、によって測定される食用油の初期脂質酸化レベルがほとんど又は全く変化しない食用油を提供する。
【0008】
本発明は更に、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方を低減するための開示された方法において使用するのに好適なシリカ-ジルコニア触媒に関する。シリカ-ジルコニア触媒は、ジルコニアを含浸させた多孔質シリカ粒子を含む。いくつかの実施形態では、ジルコニアは、多孔質シリカ粒子の表面の少なくとも一部上に含浸される。いくつかの実施形態では、ジルコニアは、多孔質シリカ粒子の細孔の少なくとも一部内に含浸される。いくつかの実施形態では、ジルコニアは、実質的に多孔質シリカ粒子の細孔内に配置されるように含浸される。典型的には、シリカ-ジルコニア微粒子触媒は、シリカ-ジルコニア粒子の総重量に基づいて少なくとも0.01重量パーセント(重量%)のジルコニアを含む。より典型的には、シリカ-ジルコニア微粒子触媒は、触媒の総重量に基づいて約1.0重量%~約50.0重量%のジルコニアを含む。
【0009】
本発明は更に、本明細書に開示されるシリカ-ジルコニア微粒子触媒を作製する方法に関する。いくつかの実施形態では、シリカ-ジルコニア触媒の作製方法は、水を含む酢酸中で多孔質シリカ粒子に酢酸ジルコニウムを含浸させることと、含浸多孔質シリカ粒子を乾燥させるのに十分な時間及び温度、すなわち約80℃~約150℃で約1時間~約4時間、含浸多孔質シリカ粒子を乾燥させることと、乾燥したジルコニア含浸多孔質シリカ粒子を約400~約1000℃の範囲の温度で約2時間~約8時間焼成することと、を含む。
【0010】
本発明は更に、(i)トリグリセリド含有組成物と、(ii)本明細書に開示されるシリカ-ジルコニア微粒子触媒と、を含む組成物に関する。いくつかの実施形態では、組成物は、(i)油と、(ii)本明細書に開示されるシリカ-ジルコニア触媒と、を含む。本組成物は、グリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方を更に含んでもよく(すなわち、グリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減するための本明細書に開示される方法に供される前の組成物)、又は最小若しくはごくわずかな量のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方を有してもよい(すなわち、グリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減する本明細書に開示される方法に供された後の組成物)。いくつかの所望の実施形態では、トリグリセリド含有組成物は、油、特に、大豆油又はパーム油などの食用油である。
【0011】
本発明のこれら及び他の特徴及び利点は、以下の開示された実施形態の詳細な説明及び添付の「特許請求の範囲」の考察後に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の原理の理解を促すため、本発明の特定の実施形態の説明が続き、特定の原語を用いてその特定の実施形態を説明する。とはいえ、特定の原語の使用により本発明の範囲の制限を意図していないことを理解されたい。変更、更なる修正、及び考察されるそのような本発明の原理の更なる用途は、通常本発明が関係する当業者が想到し得るものとして企図される。
【0013】
本明細書及び添付の請求項に使用される場合、単数形の「a」、「and」、及び「the」は、文脈が別途明らかに指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。そのため、例えば、「ある酸化物」への言及は、複数のそのような酸化物を含み、「酸化物」への言及は、1つ以上の酸化物及び当業者に既知であるその同等物などへの言及を含む。
【0014】
例えば、本開示の実施形態を記載する際に用いられる、コーティングされた粒子及び/又は組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、回収率又は収率、流量、並びにそれらの同様の値及び範囲を修飾する「約」は、例えば、典型的な測定及び取り扱い手順を通じて、これらの手順における不慮のエラーを通じて、これらの方法を実行するために使用される成分の差を通じて、また近似の検討事項を通じて起こり得る数量のばらつきを指す。用語「約」はまた、特定の初期濃度又は混合物を有する製剤の経時変化によって異なる量、並びに特定の初期濃度又は混合物を有する製剤の混合又は処理によって異なる量も包含する。用語「約」で修飾されているかどうかに関わらず、添付の特許請求の範囲は、等価物を含む。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「トリグリセリド含有組成物」(本明細書では「トリグリセリドを含む組成物」とも呼ばれる)は、好ましくは、1種以上のトリグリセリド、及び任意に1つ以上の追加の組成物構成要素を含有する任意の液体である。本発明のいくつかの実施形態では、グリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方は、大豆油などの食用油中に存在する。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「結晶質」は、その構成要素である原子、分子、又はイオンが、全三方向に延在する秩序あるパターンで配置された固体物質を意味し、X線回折又は示差走査熱量測定によって測定することができる。本明細書で使用するとき、用語「非晶質」は、その構成要素である原子、分子、又はイオンが、全三方向に延在するランダムで秩序がないパターンで配置された固体物質を意味し、X線回折又は示差走査熱量測定によって測定することができる。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「BET粒子表面積」は、Brunauer Emmet Teller(BET)窒素吸着法によって測定される、粒子表面積を意味するものとして定義される。
【0018】
本明細書で使用するとき、語句「総細孔容積」は、DIN66134に記載されているBarrett-Joyner Halenda(BJH)窒素ポロシメトリーを使用して求めたときの、複数の粒子(例えば、本明細書で開示されるシリカ-ジルコニア粒子)の平均細孔容積を指す。
【0019】
本明細書で使用するとき、語句「粒径」は、粒子が水中又はアセトン若しくはエタノールなどの有機溶媒でスラリー化される場合、動的光散乱法により測定される、平均粒径(D50、50容積パーセントの粒子のサイズがこの数より小さく、50容積パーセントの粒子のサイズがこの数より大きい容積分布である)を指す。
シリカ-ジルコニア触媒の使用方法
【0020】
本発明は、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減するための方法に関する。本方法は、例えば、トリグリセリド含有組成物を、有効量のシリカ-ジルコニア触媒と、グリシドール、グリシジルエステル、又はその両方の量を低減するのに十分な時間及び温度で接触させることを含んでもよい。本方法は、トリグリセリド含有組成物及びシリカ-ジルコニア触媒を、真空下で、又は任意の加熱で不活性ガスと混合することを更に含んでもよい。本方法は、典型的には、比較的低い反応時間及び温度を利用しながら、所与のトリグリセリド含有組成物中で、グリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量の少なくとも50重量パーセント(重量%)を低減させる。例えば、反応時間及び温度は、わずか60分で、約100℃未満の反応温度であってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減するための開示される方法は、トリグリセリド含有組成物を有効量の触媒と室温で接触させることを含むが、他の温度を使用することもできる(例えば、好ましくは、室温の約20~25℃から最高約90.0℃まで)。
【0022】
典型的には、加熱工程は、開示される方法で使用される場合、トリグリセリド含有組成物及びシリカ-ジルコニア触媒を少なくとも約40.0℃の温度まで加熱することを含む。いくつかの実施形態では、加熱工程は、開示される方法で使用される場合、トリグリセリド含有組成物及びシリカ-ジルコニア触媒を約90.0℃の温度まで加熱することを含む。典型的には、加熱工程は、トリグリセリド含有組成物及びシリカ-ジルコニア触媒を、約20.0℃~約90.0℃の温度(又は約20.0℃~約90.0℃の間の任意の温度範囲のうちの0.1℃刻みで、例えば、約20.1℃~約89.9℃)まで加熱することを含む。
【0023】
任意の加熱工程(例えば、約90.0℃)中に到達した最高温度に関わらず、加熱工程は、使用される場合、望ましくは、トリグリセリド含有組成物及びシリカ-ジルコニア触媒を約90.0℃の温度まで加熱することと、温度を少なくとも10.0分間維持することと、を含む。いくつかの実施形態では、加熱工程は、トリグリセリド含有組成物及びシリカ-ジルコニア触媒を最高温度(例えば、約90.0℃)まで加熱することと、最高温度を約30.0分間維持することと、を含む。開示される方法では、任意の加熱工程の最高温度(例えば、約90.0℃)は、任意の所望の時間、例えば、約5.0分~約60.0分(又は約5.0分~約60.0分間の任意の分範囲のうちの0.1分刻みで、例えば、約5.1分~約59.9分)、最高温度(例えば、約90.0℃)で維持させ得ることを理解されたい。
【0024】
望ましくは、加熱工程は、開示される方法で使用される場合、トリグリセリド含有組成物及びシリカ-ジルコニア触媒(i)を不活性ガス流下(すなわち、不活性ガスブランケット下)、(ii)真空下、又は(iii)(i)不活性ガス流下及び(ii)真空下の両方で加熱することを含む。典型的には、不活性ガスは、使用される場合、窒素、アルゴン、二酸化炭素、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0025】
トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減するための開示される方法は、トリグリセリド含有組成物は、(i)トリグリセリド系油、(ii)トリグリセリドを溶解可能な有機溶媒、又は(iii)トリグリセリド系油及びトリグリセリドを溶解可能な有機溶媒の両方を含む。好適な油としては、大豆油、パーム油、トウモロコシ油、キャノーラ油、菜種油、魚油、藻類油、ヒマワリ油、オリーブ油、植物油、植物由来油、動物由来油、微生物由来油、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適な有機溶媒としては、ヘプタン、ヘキサン、トルエン、ジエチルエーテル、アルコール、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
いくつかの所望の実施形態では、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方を低減するための開示される方法は、トリグリセリド含有組成物が大豆油又はパーム油などの食用油を含む場合に特に有用である。
【0027】
典型的には、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方を低減するための開示される方法は、シリカ-ジルコニア触媒及びトリグリセリド含有組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.01重量%のシリカ-ジルコニア触媒の有効量のシリカ-ジルコニア触媒を使用することを含む。いくつかの実施形態では、開示される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒の量は、シリカ-ジルコニア触媒及びトリグリセリド含有組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%~約10.0重量%のシリカ-ジルコニア触媒である。他の実施形態では、開示される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒の量は、シリカ-ジルコニア触媒及びトリグリセリド含有組成物の総重量に基づいて、約1.0重量%~約3.0重量%のシリカ-ジルコニア触媒である。しかしながら、任意の量のシリカ-ジルコニア触媒、例えば、シリカ-ジルコニア触媒及びトリグリセリド含有組成物の総重量に基づいて、シリカ-ジルコニア触媒の約0.5重量%~約10.0重量%(又は約0.5重量%~約10.0重量%の重量パーセントの任意の範囲のうちの0.1重量%刻みで、例えば、約0.6重量%~約9.9重量%)の任意の量が、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減させるための開示された方法において使用され得ることを理解されたい。
【0028】
予想外に、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減するための開示される方法は、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドールとグリシジルエステルの両方の量を、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の約10.0百万倍率(ppm)未満のレベルまで低減することができることが判明した。いくつかの実施形態では、開示される方法は、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の約5.0ppm未満のレベルまで低減することができる。他の実施形態では、開示される方法は、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の約1.0ppm未満のレベルまで低減することができる。他の実施形態では、開示される方法は、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の約0.5ppm未満のレベルまで低減することができる。更に他の実施形態では、開示される方法は、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の約0.2ppm未満のレベルまで低減することができる。
【0029】
予想外に、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減するための開示された方法は、上記の反応パラメータ(すなわち、室温~約100℃未満の反応温度、及び/又は最大約60分の反応時間)内で、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を少なくとも50重量パーセント(重量%)低減することができることが判明した。いくつかの実施形態では、本方法は、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を少なくとも80.00重量%低減させる。いくつかの実施形態では、開示される方法は、上記反応パラメータ(すなわち、室温~約100℃未満までの反応温度、及び/又は最大約60分の反応時間)内で、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドールとグリシジルエステルの両方の量の最大約99.99重量%(又は約50.00重量%~99.99重量%の重量パーセントの任意の範囲のうち0.01重量%刻みで、例えば、約50.01重量%~99.98重量%)低減させることができる。
【0030】
加えて、かつ予想外に、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方を低減するための開示される方法は、上述のように、所与のトリグリセリド含有組成物の遊離脂肪酸含量に悪影響を及ぼすことなく、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を極めて低レベルまで低減することができる。いくつかの実施形態では、所与のトリグリセリド含有組成物(例えば、大豆油又はパーム油)は、本発明のシリカ-ジルコニア触媒と接触する前に遊離脂肪酸含量を有し、特に、トリグリセリド含有組成物(例えば、大豆油又はパーム油)をシリカ-ジルコニア触媒と接触させることを含む開示される方法は、AOCS Official Method Ca 5a-40によって測定される、トリグリセリド含有組成物の遊離脂肪酸含量(すなわち、オレイン酸として)の変化はごくわずかである。
【0031】
本発明のいくつかの所望の実施形態では、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドールとグリシジルエステルの両方を低減するための方法は、0.2ppm未満のレベルのグリシドール及び/又はグリシジルエステルを有し、(i)食用油の遊離脂肪酸含量(すなわち、オレイン酸として)、又は(ii)(a)例えば、AOCS Official Method Cd 18-90によって測定される食用油のp-アニシジン値、(b)例えば、AOCS Official Method Cd 8-53によって測定される食用油の過酸化物値、若しくは(c)(a)及び(b)の両方、によって測定される食用油の酸化レベルがほとんど又は全く変化しない食用油を製造する方法を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、開示された食用油の製造方法(例えば、0.2ppm未満のグリシドール及び/又はグリシジルエステルのレベルを有する)は、食用油の初期遊離脂肪酸含量(すなわち、オレイン酸含量として測定される)を約20%未満変化させる。他の実施形態では、開示された食用油の製造方法(例えば、0.2ppm未満のグリシドール及び/又はグリシジルエステルのレベルを有する)は、食用油の初期遊離脂肪酸含量(すなわち、オレイン酸含量として測定される)を約10%未満変化させる。
【0033】
主題全体が本明細書に組み込まれるAOCS Official Method Cd 18-90に記載されるように、所与の食用油の脂質酸化レベルは、食用油のp-アニシジン値によって測定され得る。食用油の処理は、食用油の品質を低下させる酸素を伴う望ましくない一連の化学反応をもたらす可能性がある。このような望ましくない酸化反応は、例えば、過酸化物、ジエン、遊離脂肪酸などの一次酸化生成物、及びカルボニル、アルデヒド、トリエンなどの二次生成物を生成することができる。食用油のp-アニシジン値は、食用油中のアルデヒドの量を測定する。
【0034】
いくつかの実施形態では、0.2ppm未満のレベルのグリシジルエステルを有する食用油を製造する開示された方法は、食用油の初期p-アニシジン値を約10.0単位未満変化させる。いくつかの実施形態では、0.2ppm未満のレベルのグリシジルエステルを有する食用油を製造する開示された方法は、食用油の初期p-アニシジン値を約1.0単位未満変化させる。いくつかの実施形態では、0.2ppm未満のレベルのグリシジルエステルを有する食用油を製造する開示された方法は、食用油の初期p-アニシジン値を約0.2単位未満変化させる。
【0035】
所与の食用油の酸化レベルはまた、AOCS Official Method Cd 8-53によって測定される食用油の過酸化物値によって測定され得る。主題全体が本明細書に組み込まれるAOCS Official Method Cd 8-53に記載されるように、過酸化物値は、所与の食用油内の過酸化物の量の尺度を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、0.2ppm未満のレベルのグリシジルエステルを有する食用油を製造する開示された方法は、食用油の初期過酸化物値を約10.0単位未満変化させる。他の実施形態では、0.2ppm未満のレベルのグリシジルエステルを有する食用油の製造方法は、食用油の初期過酸化物値を約7.0単位未満変化させる。他の実施形態では、0.2ppm未満のレベルのグリシジルエステルを有する食用油の製造方法は、食用油の初期過酸化物値を約2.0単位未満変化させる。
【0037】
典型的には、食用油は、精製漂白脱臭(RBD)処理に供される。食用油を製造する従来の方法では、RBD処理後、食用油は、使用前に更なる処理に供される。従来通りに調製された(すなわち、本明細書に記載される方法を使用して処理されない)食用油の更なる処理は、油を酵素と接触させること、油を酸と剪断混合すること、油を再漂白すること、及び/又は脱臭を低温ではあるが長期間にわたって再実行させること、又は前述のプロセス工程の任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。しかしながら、RBD処理に供され、続いて、0.2ppm未満のレベルのグリシドール及び/又はグリシジルエステルを有する食用油を製造する本明細書に記載される方法を使用して処理される食用油は、典型的には、使用前に更なる処理を必要としない(すなわち、油を酵素と接触させること、油を酸と剪断混合すること、油を再漂白すること、及び/又は脱臭を低温ではあるが長期間にわたって再実行させること、又は前述のプロセス工程の任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない更なる処理を必要としない)。
本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒
【0038】
本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒は、ジルコニアを含浸させた多孔質シリカ粒子を含む。上述のように、いくつかの実施形態では、ジルコニアは、多孔質シリカ粒子の表面の少なくとも一部上に含浸される。いくつかの実施形態では、ジルコニアは、多孔質シリカ粒子の細孔の少なくとも一部内に含浸される。いくつかの実施形態では、ジルコニアは、実質的に多孔質シリカ粒子の細孔内に配置されるように含浸される。
【0039】
本発明のシリカ-ジルコニア触媒の調製に有用である、好適な多孔質シリカ粒子には、シリカゲル、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、及びコロイダルシリカが挙げられるが、これらに限定されない。また、好適な多孔質シリカには、シリカ粒子の形成中に有機テンプレート(例えば界面活性剤)を介して調製され、続いて、高温処理により有機物が「焼き尽くされた」、規則メソ細孔シリカが挙げられるが、これに限定されない。特に好ましい多孔質シリカ粒子は、シリカゲル又は沈殿シリカ粒子を含む。
【0040】
任意の市販の多孔質シリカ粒子を使用して、本発明のシリカ-ジルコニア触媒を形成してもよい。本発明のシリカ-ジルコニア触媒を形成するのに有用な市販の多孔質シリカ粒子としては、SYLOID(登録商標)C807シリカゲル粒子及びSYLOID(登録商標)MX106沈殿シリカ粒子などのSYLOID(登録商標)、SYLOBLOC(登録商標)シリカ粒子、並びにDARACLAR(登録商標)シリカ粒子の商品名にてW.R.Grace(Columbia,MD)から入手可能な粒子が挙げられるが、それらに限定されない。
【0041】
本発明のシリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子は、当該多孔質シリカ粒子の総重量に基づいて、少なくとも約93.0重量%のSiO2、又は少なくとも約93.5重量%のSiO2、少なくとも約94.0重量%のSiO2、少なくとも約95.0重量%のSiO2、少なくとも約96.0重量%のSiO2、少なくとも約97.0重量%のSiO2、又は少なくとも約98.0重量%のSiO2かつ最大で100重量%のSiO2の純度を有する多孔質シリカを含む。
【0042】
本発明のシリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子は、鎖状、ロッド状、又は拍子木状を含む、様々な異なる対称、非対称、又は不規則な形状を有し得る。多孔質シリカ粒子は、非晶質又は結晶質などを含む異なる構造を有し得る。好ましい一実施形態において、多孔質シリカ粒子は非晶質である。多孔質シリカ粒子は、異なる組成、大きさ、形状、若しくは物理構造を含む粒子、又は表面処理が異なる以外は同一であり得る粒子の混合物を含み得る。より小さな粒子が凝集してより大きな粒子を形成する場合、多孔質シリカ粒子の多孔度は粒子内又は粒子間であり得る。
【0043】
典型的には、シリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア粒子を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、約0.1ミクロン(μm)~約10,000μm(又は約0.1μm~約10,000μmの平均粒径の任意の範囲のうちの0.1μm刻みで、例えば、約0.2μm~約9,999.9μm)の平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア粒子(及び独立して、シリカ-ジルコニア粒子を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、約80.0μm~約400μmの平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア粒子(及び独立して、シリカ-ジルコニア粒子を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、約100.0μm~約200μmの平均粒径を有する。
【0044】
本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、典型的には、Barrett-Joyner Halenda(BJH)法によって判定される、少なくとも0.01立方センチメートル/グラム(cc/g)の細孔容積を有する。より典型的には、シリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、Barrett-Joyner Halenda(BJH)法によって判定される、少なくとも0.5cc/gの細孔容積を有する。いくつかの実施形態では、シリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、Barrett-Joyner Halenda(BJH)法によって判定される、約0.5cc/g~約3.0cc/g又はそれ以上の細孔容積を有する。しかしながら、本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、Barrett-Joyner-Halenda(BJH)法によって測定される、約0.01cc/g~約3.00cc/g(又はそれ以上)(又は、約0.01cc/g~約3.0cc/gの細孔容積の任意の範囲のうち0.01cc/gの刻みで、例えば、約0.02cc/g~約2.99cc/g)の細孔容積を有し得ることを理解されたい。
【0045】
本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)はまた、Micromeritics Instrument Corp.から入手可能なAutopore IV 9520を使用する水銀圧入試験手順によって測定される、少なくとも0.1ナノメートル(nm)の平均細孔径を有してもよい。典型的には、本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、約1.0nm~約1,000.0nmの平均細孔径を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、約1.0nm~約100.0nmの平均細孔径を有する。他の実施形態では、本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、約2.0nm~約50.0nmの平均細孔径を有する。しかしながら、本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、約0.1nm~約1,000.0nm(又はそれ以上)(又は約0.1nm~約1,000.0nmの平均細孔径の任意の範囲のうちの0.1nm刻みで、例えば、約0.2nm~約999.9nm)の平均細孔径を有してもよいことが理解されよう。
【0046】
本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)はまた、少なくとも約10m2/g~約2000m2/g又はそれ以上のBET粒子表面積を有してもよい。典型的には、本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、少なくとも約25.0m2/gのBET粒子表面積を有する。いくつかの実施形態では、シリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、少なくとも約50m2/g~約800m2/gのBET粒子表面積を有する。しかしながら、本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、約10m2/g~約2000m2/g又はそれ以上の範囲の任意のBET粒子表面積(又は、約10m2/g~約2000m2/gで0.1m2/g刻みの、例えば、約10.1m2/g~約1999.9m2/gのBET粒子表面積値の任意の範囲)を有し得ることを理解されたい。
【0047】
本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、サイズの低減にも供され得る。任意の既知である粒径減少方法が使用され得、この方法としてボールミル又は乳棒と乳鉢で摩砕する工程などの粉砕工程が挙げられるが、これに限定されない。
【0048】
本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒(及び独立して、シリカ-ジルコニア触媒を形成するために使用される多孔質シリカ粒子)は、(i)上記多孔質シリカ粒子のいずれかを、(ii)ジルコニアと組み合わせて含んでもよい。上述のように、ジルコニアは、多孔質シリカ粒子の粒子表面の少なくとも一部上に含浸されてもよく、又は(ii)多孔質シリカ粒子の細孔の少なくとも一部内に含浸されてもよく、又は(iii)多孔質シリカ粒子の表面の少なくとも一部上、及び多孔質シリカ粒子の細孔の少なくとも一部内、又は(iv)実質的に多孔質シリカ粒子の細孔内に含浸されてもよい。一実施形態では、ジルコニアは、実質的にシリカ粒子の細孔内に配置される。
【0049】
典型的には、本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒は、シリカ-ジルコニア触媒の総重量に基づいて、少なくとも約0.01重量パーセント(重量%)のジルコニアを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒は、シリカ-ジルコニア触媒の総重量に基づいて、約1.0重量%~約50.0重量%のジルコニアを含む。いくつかの所望の実施形態において、本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒は、シリカ-ジルコニア触媒の総重量に基づいて、約1.5重量%~約14.3重量%のジルコニアを含む。他の所望の実施形態において、本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒は、シリカ-ジルコニア触媒の総重量に基づいて、約2.4重量%~約5.0重量%のジルコニアを含む。しかしながら、本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒は、約0.01重量%~約50.0重量%(又はそれ以上)の範囲の任意の量(又は、シリカ-ジルコニア触媒の総重量に基づいて、約0.01重量%~約50.0重量%のジルコニアの量の任意の範囲のうち0.01重量%刻みで、例えば、約0.02重量%~約49.99重量%)のジルコニアを含んでもよいことを理解されたい。
【0050】
いくつかの実施形態では、本発明のシリカ-ジルコニア触媒は、(i)約80.0μm~約400μmの平均粒径を有し、(ii)Barrett-Joyner Halenda(BJH)法によって判定される、約0.5cc/g~約3.0cc/g又はそれ以上の細孔容積を有し、(iii)約1.0nm~約100.0nmの平均細孔径を有し、(iv)少なくとも約50.0m2/g~約800m2/gのBET粒子表面積を有し、(v)シリカ-ジルコニア触媒の総重量に基づいて、約1.0重量%~約50.0重量%のジルコニアを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明のシリカ-ジルコニア触媒は、(i)約100.0μm~約200μmの平均粒径を有し、(ii)Barrett-Joyner Halenda(BJH)法によって判定される、約1.0cc/g~約2.0cc/gの細孔容積を有し、(iii)約15.0nm~約30.0nmの平均細孔径を有し、(iv)少なくとも約75.0m2/g~約400m2/gのBET粒子表面積を有し、(v)シリカ-ジルコニア触媒の総重量に基づいて、約2.5重量%~約15.0重量%のジルコニアを含む。
本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒の作製方法
【0052】
本明細書に記載される方法で使用されるシリカ-ジルコニア触媒は、ジルコニアコーティング及び/又は含浸工程、続いて、乾燥工程、焼成工程、又はその両方などの1つ以上の追加の工程によって形成され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で使用するのに好適なシリカ-ジルコニア触媒の作製方法は、水を含む酢酸中で多孔質シリカ粒子に酢酸ジルコニウムを含浸させることと、含浸多孔質シリカ粒子を約105℃で約2時間乾燥させることと、乾燥した含浸多孔質シリカ粒子を約500℃で約4時間焼成することと、を含む。
【0053】
典型的には、シリカ-ジルコニア触媒の作製方法は、多孔質シリカ粒子と酢酸ジルコニウムとのを、所望時間接触させる含浸工程を含む。いくつかの実施形態では、含浸工程は、多孔質シリカ粒子と酢酸ジルコニウムとを、約30分間接触させる。しかしながら、含浸工程は、任意の所望時間、多孔質シリカ粒子と酢酸ジルコニウムとを接触させ得ることを理解されたい。
【0054】
いくつかの所望の実施形態では、シリカ-ジルコニア触媒の作製方法は、含浸工程後及び乾燥工程前に、含浸された多孔質シリカ粒子を約60分間粉砕させることを含む。含浸多孔質シリカ粒子は、任意の所望時間にわたって粉砕(又は粉砕)され得ることを理解されたい。
本明細書に記載される方法で使用及び製造される組成物
【0055】
本発明は更に、本明細書に記載のシリカ-ジルコニア触媒を含むトリグリセリド含有組成物に関する。上述のように、典型的には、所与のトリグリセリド含有組成物(すなわち、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減するための上記の方法、及び/又は食用油の製造方法の前又は後、シリカ-ジルコニア触媒の除去前)は、シリカ-ジルコニア触媒及びトリグリセリド含有組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%を超える量、典型的には約0.50重量%~約10.0重量%(又は約0.50重量%~約10.00重量%の重量パーセントの任意の範囲のうちの0.01重量%刻みで、例えば、約1.00重量%~約3.00重量%)の本明細書に記載のシリカ-ジルコニア触媒を含む。上述のように、いくつかの所望の実施形態では、本発明のトリグリセリド含有組成物は、油中の本明細書に記載されたシリカ-ジルコニア触媒(例えば、大豆油又はパーム油などの食用油)又は有機溶媒(例えば、トルエンなどのトリグリセリド溶解溶媒)(すなわち、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減するための上記の方法、及び/又は食用油の製造方法の前又は後、シリカ-ジルコニア触媒の除去前)を含む。いくつかの所望の実施形態では、本発明のトリグリセリド含有組成物は、食用油(例えば、大豆油又はパーム油)中の本明細書に記載のシリカ-ジルコニア触媒(すなわち、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減するための上記の方法、及び/又は食用油の製造方法の前又は後、シリカ-ジルコニア触媒の除去前)を含む。
【0056】
本発明は更に、シリカ-ジルコニア触媒の除去前又は除去後に、トリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方の量を低減するための上記の方法、及び/又は食用油を製造する方法から得られる油及びトリグリセリド含有組成物に関する。いくつかの所望の実施形態では、開示される方法は食用油を製造するために使用される。
【0057】
上記のシリカ-ジルコニア触媒、方法、及び使用は、1つ以上の構成要素又は工程を「含んでいる(comprising)」と記載されるが、上記のシリカ-ジルコニア触媒、方法、及び使用は、シリカ-ジルコニア触媒、方法、及び使用の上記の構成要素又は工程のいずれか「を含む(comprise)」、「からなる(consists of)」又は「から本質的になる(consist essentially of)」ことができると理解すべきである。その結果として、本発明又はその一部分が「含んでいる」などのオープンエンドの用語で記載された場合、本発明の記載又はその一部分はまた(別段の指定がない限り)、以下に記載されるように、用語「から本質的になる」又は「からなる」又は「~からなる(consisting of)」又はそれらの変形を使用して、本発明又はその一部分を記載していると解釈されるべきであると容易に理解されるべきである。
【0058】
本明細書で使用するとき、用語「備える」、「備えること」、「含む」、「含むこと」、「有する」、「有すること」、「含有する」、「含有すること」、「~を特徴とする」、又はこれらの任意の他の変化形は、そうではないと明示的に指し示されたあらゆる限定を条件として、列挙された成分の非排他的包含を含むことが意図される。例えば、一連の要素(例えば、構成要素又は工程)を「含む(comprises)」シリカ-ジルコニア触媒、方法、及び/又は使用は、必ずしもこれらの要素(又は構成要素若しくは工程)のみに限定されず、シリカ-ジルコニア触媒、方法、及び/若しくは使用について明示的に列挙されないか又は固有ではない他の要素(又は構成要素若しくは工程)を含み得る。
【0059】
本明細書で使用するとき、移行句「~からなる(consists of)」及び「~からなる(consisting of)」は、指定されないいかなる要素、工程、又は構成要素も除外する。例えば、請求項で使用する「~からなる(consists of)」及び「~からなる(consisting of)」は、それと通常関連する不純物(すなわち、所与の構成要素内の不純物)を除いて、その請求項を、その請求項に具体的に列挙される構成要素、材料、又は工程に制限する。語句「~からなる(consist of)」又は「~からなる(consisting of)」が、前文の直後ではなく請求項の主文の節内に見られるとき、語句「~からなる(consist of)」又は「~からなる(consisting of)」は、その節内に記載される要素(又は構成要素若しくは工程)のみを制限する。他の要素(又は構成要素)は、特許請求の範囲全体から除外されない。
【0060】
本明細書で使用するとき、移行句「~から本質的になる(consists essentially of)」及び「~から本質的になる(consisting essentially of)」は、文字どおり開示されたものに加えて、材料、工程、特徴、構成要素、又は要素を含むシリカ-ジルコニア触媒、方法、及び/又は使用を定義するために使用されるが、ただし、これらの追加の材料、工程、特徴、構成要素、又は要素は、請求される本発明の基本的な及び新規の特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼすものではない。用語「~から本質的になる」は、「含む」と「~からなる」との間の中間領域にある。
【0061】
本発明は、以下の実施例によって更に説明されるが、これらは決してその範囲に制限を課するものとして解釈されるものではない。反対に、様々な他の実施形態、修正、及びそれらの同等物に依ることができることは明らかに理解されるべきであり、これは本明細書の説明を読めば、本発明の趣旨及び/又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、それら自体が当業者に示唆され得る。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は、(i)シリカ-ジルコニア触媒を調製するための本発明によるプロセス、及び(ii)様々なトリグリセリド含有組成物中のグリシドール、グリシジルエステル、又はグリシドール及びグリシジルエステルの両方を低減する際のシリカ-ジルコニア触媒の評価について記載する。
シリカ-ジルコニア粒子サンプルの窒素細孔容積及びBET表面積測定
【0063】
シリカ-ジルコニア触媒の窒素細孔容積を、Quantachrome Instrument(Boynton Beach,FL)から入手可能なAutosorb(登録商標)iQ分析器を使用して測定した。65℃(すなわち、約80℃のワックスの融解温度未満)で4時間、各サンプルの脱気を実施した。それぞれ、窒素圧を0.01%気圧から0.998%気圧に増加させ、その後、0.998%気圧から0.025%気圧に減少させて、77Kで窒素吸脱着等温線を測定した。BJH理論に基づくAsiQwin(商標)5.0バージョンプログラムを使用して、細孔容積を計算した。例えば、Barrett et al.,The Determination of Pore Volume and Area Distributions in Porous Substances.I.Computations from Nitrogen Isotherms,J.Am.Chem Soc.1951,73(1),pp373~380を参照し、BET表面積もまた、Brunauer Emmet Teller法(Brunauer,et al.,「Adsorption of Gases in Multimolecular Layers」.J.Am Chem Soc.1938,60(2):309-319)、その両方の主題は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
総グリシドール濃度分析
【0064】
所与のサンプルの総グリシドール濃度は、主題全体が参照により本明細書に組み込まれるAOCS Official Method Cd 29c-13を使用して判定される。この方法は、所定のサンプル中に存在する(i)総遊離グリシドール及び(ii)結合グリシドール(すなわち、グリシジルエステル)の合計の濃度を判定する。
触媒合成
【0065】
多孔質シリカ-ジルコニア触媒粒子を、以下の手順を用いて調製した。所望の量の酢酸ジルコニウムを水を含む酢酸で希釈し、多孔質シリカ粒子に30分かけて含浸させた後、更に1時間粉砕させた。次に、この材料を105℃で2時間乾燥させ、次いで500℃で4時間焼成した。
【0066】
得られたシリカ-ジルコニア触媒は、0.01重量%~49.99重量%の範囲のジルコニア濃度を有した。以下に更に記載されるように、いくつかの実施形態では、約2.00重量%~約20.00重量%の範囲のジルコニア濃度を有するシリカ-ジルコニア触媒が有効な結果をもたらした。最終的なジルコニア濃度は、ICP元素微量分析を用いて判定した。
【0067】
4つのサンプルのシリカ-ジルコニア触媒である触媒A~Dを、本明細書に記載の合成手順を用いて形成した。当該触媒の特性は、下記の表1に示す。
【表1】
反応手順
【0068】
各油/溶媒を丸底フラスコに充填し、グリシドール及び/又はグリシジルエステル(例えば、オレイン酸グリシジル)を添加した。オーバーヘッドミキサーを250rpmに設定した。反応器を不活性ガスでフラッシュし、次いで、GC/MS分析のために初期サンプルを採取した。所望の触媒量のシリカ-ジルコニア触媒を添加した後、温度を所望の設定点まで上昇させた。所望の時間の後、最終サンプルを採取し、次いで、分析前にフィルタディスクを通して濾過して、固体触媒を除去した。
【0069】
反応温度は限定されないが、好ましくは約45℃~約90℃である。食用油産業に関しては、温度を90℃未満に維持することは、油の酸化を防止するのに役立つが、グリシドール及びグリシジルエステルを十分な時間で低減させる。同様に、反応時間は限定されないが、精製器中の滞留時間を最小化するために好ましくは2時間未満である。
実施例1-対照実験
【0070】
上記の反応手順を以下の実施例で使用した。オレイン酸グリシジルを添加した大豆油を混合し、アルゴン下で90℃の最高温度まで加熱した。反応混合物中の総グリシドール濃度を、以下の表2に示すように、30分間にわたって測定した。
【表2】
【0071】
表2に示すように、触媒が反応混合物に添加されないと、グリシドール/オレイン酸グリシジルは低減しない。
実施例2-反応混合物中へのシリカ-ジルコニア触媒の投与効果
【0072】
上記の触媒合成及び反応手順を、以下の実施例で使用した。本発明の触媒Aを、シリカ-ジルコニア触媒及び大豆油の総重量に基づいて、0.5、1.0、1.5、及び2.0重量%で、オレイン酸グリシジルを添加した大豆油に添加した。反応混合物を混合し、アルゴン下で90℃の最高温度まで加熱した。反応混合物中の総グリシドールの濃度を、以下の表3に示すように、30分間の前後で測定した。
【表3】
定量限界(LOQ)=0.20ppm
【0073】
表3に示されるように、0.5重量%のシリカ-ジルコニア触媒の投与は、グリシドール/オレイン酸グリシジルを90℃で30分以内に著しく低減させる。同様に、シリカ-ジルコニア触媒の投与を増加させると、反応混合物中のグリシドール/オレイン酸グリシジルの低減が、一定時間にわたって向上する。
実施例3-ジルコニア濃度及び総グリシドール低減に及ぼす効果
【0074】
上記の触媒合成及び反応手順を、以下の実施例で使用した。本発明の触媒A、B、C、及びDを、オレイン酸グリシジルを添加した大豆油に添加した。触媒及び大豆油の総重量に基づいて、2.0重量%のシリカ/ジルコニア触媒を使用した。反応混合物を混合し、アルゴン下で90℃の最高温度まで加熱した。反応混合物中の総グリシドールの濃度を、以下の表4に示すように、30分間の前後で測定した。
【表4】
【0075】
表4に示すように、シリカ塩基上のジルコニア濃度を増加させると、反応混合物中のグリシドール/オレイン酸グリシジル低減が著しく向上する。
実施例4-反応温度及び総グリシドール低減に及ぼす効果
【0076】
上記の触媒合成及び反応手順を、以下の実施例で使用した。本発明の触媒Aを、オレイン酸グリシジルを添加した大豆油に添加した。触媒及び大豆油の総重量に基づいて、2.0重量%のシリカ/ジルコニア触媒を使用した。反応混合物を混合し、アルゴン下で、23℃(加熱なし)、45℃、及び90℃の最高温度まで加熱した。反応混合物中の総グリシドールの濃度を、以下の表5に示すように、それぞれ7時間、2時間、及び30分間の前後に測定した。
【表5】
【0077】
表5に示すように、この触媒反応は、いかなる追加の熱も伴わずに進行する。混合物を加熱すると、真の触媒形態で反応が促進されるが、過剰な熱は、より多くのグリシドール/オレイン酸グリシジルを形成させ得る。例えば、食用油精製においては、200℃以上の温度で脱臭プロセス中にグリシジルエステルが形成されることが以前に知られている。
実施例5-45℃での大豆油中総グリシドール低減、及び酸化に及ぼす効果
【0078】
上記の触媒合成及び反応手順を、以下の実施例で使用した。本発明の触媒Aを、オレイン酸グリシジルを添加した大豆油に添加した。触媒及び大豆油の総重量に基づいて、2.0重量%のシリカ/ジルコニア触媒を使用した。反応混合物を混合し、アルゴン下で45℃の最高温度まで加熱した。反応混合物中の遊離脂肪酸濃度(FFA%)、p-アニシジン値(p-AV)、総グリシドール濃度、及び過酸化物値(PV)を、以下の表6に示すように2時間にわたって測定した。
【表6】
【0079】
表6に示すように、遊離脂肪酸濃度及びp-アニシジン値は変化しなかった一方、過酸化物値及び総グリシドール濃度は、2時間の反応期間にわたって低減した。これにより、このグリシドール/グリシジルエステル低減反応中に有意な分解が生じないことが明らかになる。
実施例6-パーム油中の90℃での総グリコドール低減、及び酸化に及ぼす効果
【0080】
上記の触媒合成及び反応手順を、以下の実施例で使用した。本発明の触媒Aを、オレイン酸グリシジルを添加したパーム油に添加した。触媒及びパーム油の総重量に基づいて、2.0重量%のシリカ/ジルコニア触媒を使用した。反応混合物を混合し、アルゴン下で90℃の最高温度まで加熱した。遊離脂肪酸濃度、p-アニシジン(p-AV)値、過酸化物値(PV)、及び反応混合物中の総グリシドールの濃度を、以下の表7に示すように、30分間にわたって測定した。
【表7】
【0081】
表7に示すように、遊離脂肪酸濃度及びp-アニシジン値は著しく変化しなかった一方で、過酸化物値及び総グリシドール含量は30分間の反応期間にわたって低減し、最終総グリシドール含量は測定可能な量未満である。パーム油は、加熱時に容易に酸化され、このことは、p-AVのわずかだが有意な増加を説明する。反応温度を低下させるだけで、二次酸化生成物の形成が防止される。
実施例7-マトリックス/溶媒のグリコドール低減に及ぼす効果
【0082】
上記の触媒合成及び反応手順を、以下の実施例で使用した。本発明の触媒Aを、遊離グリシドールを添加した反応マトリックスに添加した。触媒及びマトリックス/溶媒の総重量に基づいて、2.0重量%のシリカ/ジルコニア触媒を使用した。反応混合物を混合し、アルゴン下で90℃の最高温度まで加熱した。反応混合物中の総グリシドールの濃度を、以下の表8に示すように、30分間にわたって測定した。
【表8】
【0083】
表8に示すように、反応は、グリシジルエステルに加えて遊離グリシドールを低減するために、食用油及び有機溶媒マトリックスの両方で進行する。
比較例8-市販のシリカ/ジルコニア触媒の使用
【0084】
上記の反応手順及びFisher Scientificを介して購入した市販の非多孔質シリカ/ジルコニア粒子を、以下の実施例で使用した。0.1mmのシリカ/ジルコニアビーズの1つのサンプルをBio Spec Products(カタログ番号:NC0362415)によって製造し、0.1mmのシリカ/ジルコニアビーズの他のサンプルを、Research Products International Corp(カタログ番号:50212145)によって製造した。市販のシリカ/ジルコニア粒子を、オレイン酸グリシジルを添加した大豆油に添加した。粒子及び大豆油の総重量に基づいて、2.0重量%のシリカ/ジルコニア粒子を使用した。反応混合物を混合し、アルゴン下で90℃の最高温度まで加熱した。p-アニシジン(p-AV)値、過酸化物値(PV)、及び反応混合物中の総グリシドールの濃度を、以下の表9に示すように、30分間の前後で測定した。
【表9】
【0085】
表9に示すように、市販の非多孔質シリカ/ジルコニア粒子は、本明細書に記載の本発明のシリカ/ジルコニア触媒と比較して、所与の反応混合物中の総グリシドールを効果的に低減しない。本明細書に開示される本発明のシリカ/ジルコニア触媒とは対照的に、これらの市販のシリカ/ジルコニア粒子は非多孔質であり、より小さな表面積を有する。
【0086】
本発明は、限定数の実施形態を用いて説明されたが、これらの特定の実施形態は、本明細書の他の箇所で説明及び請求されるような本発明の範囲を制限することを意図しない。更なる修正、同等物、及び変化形が可能であることは、本明細書における例示的な実施形態を検討すれば、当業者には明らかであろう。実施例並びに残りの本明細書における全ての部及び割合は、別途指定がない限り、重量によるものである。更に、特定の一連の特性、計測の単位、条件、物理的状態、又はパーセンテージを表すもののような、明細書又は特許請求の範囲において引用される数字のいずれの範囲も、そのような範囲内に含まれる任意の数、並びにそのように示されている任意の範囲内の数の任意の部分集合を含めて、言及するか又は他の方法で示すことによって文字どおり本明細書に明示的に組み込まれるものであることが意図されている。例えば、下限RL及び上限Ruを有する数の範囲が開示されているときはいつでも、範囲内に当てはまるいかなる数Rも具体的に開示されている。特に、範囲内の以下の数Rが具体的に開示される:R=RL+k(Ru-RL)であり、式中、kは、1%刻みで、1%~100%の範囲の変数であり、例えば、kは、1%、2%、3%、4%、5%...50%、51%、52%....95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。更に、上で計算されたように、Rの任意の2つの値によって表される任意の数値範囲も、具体的に開示されている。本明細書に図示及び説明されるものに加えて、本発明のいかなる修正も、前述の説明及び添付の図面から当業者には明らかとなるであろう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。本明細書に引用される全ての刊行物は、参照によりそれら全体が組み込まれる。