(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/115 20060101AFI20240522BHJP
B60Q 1/12 20060101ALI20240522BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20240522BHJP
B60Q 1/24 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B60Q1/115
B60Q1/12 100
B60Q1/14
B60Q1/24 B
(21)【出願番号】P 2021565385
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2020043066
(87)【国際公開番号】W WO2021124778
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2019226552
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 宇司
【審査官】谷口 東虎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/039051(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0112268(KR,A)
【文献】特開2008-001305(JP,A)
【文献】特開2014-078477(JP,A)
【文献】特開2012-081842(JP,A)
【文献】特開2014-024399(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲がる方向に向かって車体を傾けることでコーナを走行する車両に設けられた車両用灯具であって、
ハイビーム配光パターンを形成する第一ランプと、
側方配光パターンを形成する第二ランプと、
対象物を検出する外部センサと、
前記ハイビーム配光パターンおよび前記側方配光パターンを調節するように前記第一ランプおよび前記第二ランプを制御する制御部と、
を備えており、
前記側方配光パターンは、少なくとも前記ハイビーム配光パターンよりも車体の左右方向に広がって形成されており、
前記ハイビーム配光パターンおよび前記側方配光パターンの少なくとも一方は、前記対象物を含む第一領域と、前記第一領域以外の第二領域を含み、
前記外部センサが前記対象物を検出した場合、前記制御部は、少なくとも前記第二領域に光が照射されるように前記ハイビーム配光パターンおよび前記側方配光パターンを調節
し、
前記制御部は、前記車体の傾きに応じて、前記第二領域に光が照射されるように少なくとも前記側方配光パターンを調節する、車両用灯具。
【請求項2】
前記外部センサが前記対象物を検出した場合、前記制御部は前記第二ランプを消灯する、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記制御部は、前記外部センサの検出結果に関わらず、所定の基準線または当該基準線よりも下方の領域に光が照射されるように前記側方配光パターンを調節し、
前記基準線は、前記車体の左右方向に延びる、水平線に平行な線であり、前記水平線から所定の高さを有する、請求項1
または請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記対象物は対向車または前走車の少なくとも一方を含み、
前記外部センサが前記対向車または前記前走車を検出した場合、前記制御部は、前記第一領域に光が照射されないように前記ハイビーム配光パターンおよび前記側方配光パターンを調節する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記対象物は対向車または前走車の少なくとも一方を含み、
前記基準線は、前記対向車の窓ガラスまたは前記前走車の窓ガラスよりも低い、請求項
3に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記対象物は歩行者を含み、
前記外部センサが前記歩行者を検出した場合、前記制御部は、前記第一領域に光が照射されるように前記ハイビーム配光パターンおよび前記側方配光パターンの少なくも一方を調節する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車用の前照灯として、ハイビーム・ロービーム光源に加えてサブヘッドライト光源がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動二輪車では、右左折をする際に運転者が重心を移動させ、曲がる方向に向かって車体を傾けてバンク角を大きくしながらコーナを走行する。バンク角に伴って前照灯が形成する配光パターンも水平方向に対して傾くため、曲がる方向への前照灯の光量が不十分となり遠方視認性が低下することがあった。これに対して、バンク角に応じてハイビーム・ロービームやサブビームを制御することが知られている(特許文献1)。しかし特許文献1は対向車を含む対象物を考慮して配光を調節しておらず、運転支援の観点で配光調節に改善の余地があった。
【0005】
本開示は、側方配光パターンを含む配光パターンであって、対象物を考慮して適切な配光パターンを形成する車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両用灯具は、
曲がる方向に向かって車体を傾けることでコーナを走行する車両に設けられた車両用灯具であって、
ハイビーム配光パターンを形成する第一ランプと、
側方配光パターンを形成する第二ランプと、
対象物を検出する外部センサと、
前記ハイビーム配光パターンおよび前記側方配光パターンを調節するように前記第一ランプおよび前記第二ランプを制御する制御部と、
を備えており、
前記ハイビーム配光パターンおよび前記側方配光パターンの少なくとも一方は、前記対象物を含む第一領域と、前記第一領域以外の第二領域を含み、
前記外部センサが前記対象物を検出した場合、前記制御部は、少なくとも前記第二領域に光が照射されるように前記ハイビーム配光パターンおよび前記側方配光パターンを調節する。
【0007】
本開示の車両用灯具によれば、少なくとも第二領域には光が照射されるので、対象物の存在に関わらず、ランプの光量を確保することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の車両用灯具によれば、側方配光パターンを含む配光パターンであって、対象物を考慮して適切な配光パターンを形成する車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は本開示のヘッドランプ(車両用灯具)を備えた車両の斜視図である。
【
図3】
図3はヘッドランプが備えるハイビーム灯具ユニットの構成を示す断面図である。
【
図4】
図4はハイビーム灯具ユニットが備える光源ユニットの構成を示す斜視図である。
【
図5】
図5は車両が路面に対して垂直の状態で走行する場合の配光パターンを示す図である。
【
図6】
図6は車両が路面に対して傾いた状態で走行する場合の配光パターンを示す図である。
【
図7】
図7は外部センサが歩行者を検出する場合の配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態における、「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」とは、
図1に示す自動二輪車100について、説明の便宜上、設定された相対的な方向である。
【0011】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態における車両の一例として自動二輪車100を示している。自動二輪車100は、曲がる方向に向かって車体を傾けることで道路のコーナー(カーブ)に沿って走行することが可能な車両である。本実施形態の車両は、この自動二輪車100のように、曲がる方向に向かって車体を傾けることでコーナーを走行可能な車両であればよく、車輪の数は限定されない。したがって、例えば自動三輪車、自動四輪車などであっても、この自動二輪車100と同様に走行可能であれば本実施形態の車両に含まれる。
【0012】
図1に示すように、自動二輪車100の前部には、本実施形態に係るヘッドランプ1が搭載されている。ヘッドランプ1は、車両前方に光を照射可能な灯具である。ヘッドランプ1は、ロービーム灯具ユニット2と、ハイビーム灯具ユニット3と、コーナリングランプ4とを備えている。本実施形態では、車体の左右方向に一対のコーナリングランプ4が備えられているが、この構成に限定されない。ヘッドランプ1は車両用灯具の一例である。ハイビーム灯具ユニット3は第一ランプの一例である。コーナリングランプ4はサブランプの一例である。
【0013】
図2に示すように、ヘッドランプ1は、ランプ制御部5を備えている。ランプ制御部5には、ロービーム灯具ユニット2、ハイビーム灯具ユニット3およびコーナリングランプ4が接続されている。ランプ制御部5は、ロービーム灯具ユニット2、ハイビーム灯具ユニット3およびコーナリングランプ4を制御する。また、ランプ制御部5には、バンク角センサ6と、外部センサ7と、速度センサ8等とが電気的に接続されている。ランプ制御部5は制御部の一例である。
【0014】
バンク角センサ6は、自動二輪車100の傾き状態を検出する。具体的には、バンク角センサ6は、自動二輪車100の車体が鉛直線に対して左右に傾斜したときの傾斜角を検出することが可能なセンサである。バンク角センサ6は、例えばジャイロセンサで構成されている。なお、車体の傾斜角は、例えば車体に搭載されるカメラで撮影した画像に基づいて算出するようにしてもよい。
【0015】
外部センサ7は、対象物などの車両外部の環境情報を検出する。具体的には、外部センサ7は、自動二輪車100の周辺環境(例えば障害物、他車(前走車、対向車)、歩行者、道路形状、交通標識等)を含む自車両の外部の情報を取得することが可能なセンサである。外部センサ7は、例えばLiDAR(Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)、カメラ、レーダ等の少なくとも一つで構成されている。
速度センサ8は、自動二輪車100の速度を検出する。
【0016】
バンク角センサ6、外部センサ7および速度センサ8によって検出された各情報は、ランプ制御部5へ送信される。ランプ制御部5は、バンク角センサ6、外部センサ7および速度センサ8の各々から送信されてきた情報に基づいて、ロービーム灯具ユニット2、ハイビーム灯具ユニット3およびコーナリングランプ4を制御する。例えば、ランプ制御部5は、バンク角センサ6、外部センサ7および速度センサ8の検出結果に基づいてヘッドランプ1を制御し、車両前方に形成される配光パターンを調整することが可能である。すなわち、ランプ制御部5は、バンク角センサ6、外部センサ7および速度センサ8の検出結果に基づいて、ロービーム灯具ユニット2、ハイビーム灯具ユニット3およびコーナリングランプ4を制御し、ロービーム配光パターン、ハイビーム配光パターンおよび側方配光パターンを調整することが可能である。
【0017】
図3は、ヘッドランプ1が備えるハイビーム灯具ユニット3の概略構成を示す垂直断面図である。
図3に示すように、ヘッドランプ1は、車両前方側に開口部を有するランプボディ11と、ランプボディ11の開口部を覆うように取り付けられた透明の前面カバー12とを備えている。ランプボディ11と前面カバー12とによって灯室13が形成される。灯室13の内部にハイビーム灯具ユニット3が配置されている。灯室13の外部にランプ制御部5、バンク角センサ6、および外部センサ(例えばLiDAR)7等が配置されている。
図3の断面図では図示されていないが、ロービーム灯具ユニット2はハイビーム灯具ユニット3と同様にヘッドランプ1の灯室13の内部に収容されている。コーナリングランプ4は灯室13の外部に配置されている。
【0018】
ハイビーム灯具ユニット3は、いわゆるプロジェクタ型の灯具である。ハイビーム灯具ユニット3は第一ランプの一例である。ハイビーム灯具ユニット3は、投影レンズ31と、光源ユニット32と、投影レンズ31および光源ユニット32を保持するホルダ34とを備えている。光源ユニット32は、ハイビームの光源33を有する。ホルダ34は、投影レンズ31および光源ユニット32を保持する。
【0019】
投影レンズ31は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズである。投影レンズ31は、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置されている。投影レンズ31は、その周縁部がホルダ34の前端側に保持されている。投影レンズ31は、光源33からの光を灯具前方へ照射して所定のハイビーム配光パターンを形成する。
【0020】
光源ユニット32は、光源33が光軸Ax方向における前方を向くように配置されて、ホルダ34の後端側に保持されている。光源33は、ランプ制御部5と電気的に接続されている。
ホルダ34は、図示しない支持部材を介してランプボディ11に取り付けられている。
【0021】
図4は、ハイビーム灯具ユニット3の光源ユニット32の概略構造を示す斜視図である。光源ユニット32は、光源33と、支持プレート35と、ヒートシンク36とを有する。光源33は、例えば発光ダイオード(LED)などの発光素子で構成される複数の個別光源30を有する。光源33は、例えば、横7列縦1行で、並列配置される個別光源30a~30gを有し、支持プレート35の前方側表面に固定されている。個別光源30a~30gは、LEDアレイとして構成されている。各々の個別光源30a~30gは、ランプ制御部5と電気的に接続されている。個別光源30a~30gは、後述するADB(Adaptive Driving Beam)モードにおいて、ランプ制御部5により互いに独立に光の照射が制御される。なお、個別光源30a~30gは、左右方向(光軸Axに直交する方向)に並列配置されている。個別光源30の数や配置は特に限定されない。
【0022】
ヒートシンク36は、光源33から発せられる熱を放散させるための部材であり、支持プレート35の車両後方側表面に保持されている。光源ユニット32は、支持プレート35を介してホルダ34に固定されている。
【0023】
次に、自動二輪車100に搭載されたヘッドランプ1によって形成される配光パターンについて、
図5から
図7を参照して説明する。
【0024】
図5から
図7は、灯具前方の所定位置、例えば灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成された配光パターンを示している。
図5から
図7において、H-Hは水平方向(水平線H)を、V-Vは垂直方向をそれぞれ示している。
図5および
図6は、対象物が対向車CVである場合の配光パターンを示している。対象物は前走車を含んでもよい。
図7は、対象物が歩行者Pである場合の配光パターンを示している。
【0025】
図5から
図7において、ハイビーム配光パターンPHは、ハイビーム灯具ユニット3によって形成される配光パターンである。ロービーム配光パターンPLは、ロービーム灯具ユニット2によって形成される配光パターンである。側方配光パターンPCは、コーナリングランプ4によって形成される配光パターンである。
【0026】
図5は、自動二輪車100が路面に対して車体を垂直にした状態で走行する場合の配光パターンを示している。例えば
図5は、自動二輪車100が車体を傾けることなく直進路を走行する場合の配光パターンを示している。
【0027】
ハイビーム灯具ユニット3から照射された光は、車両前方に照射され、ハイビーム配光パターンPHを形成する。具体的には、ハイビーム灯具ユニット3の個別光源30aは部分パターンPHaを形成する。個別光源30bは部分パターンPHbを形成する。個別光源30cは部分パターンPHcを形成する。個別光源30dは部分パターンPHdを形成する。個別光源30eは部分パターンPHeを形成する。個別光源30fは部分パターンPHfを形成する。個別光源30gは部分パターンPHgを形成する。当該部分パターンPHa~PHgが合成されることでハイビーム配光パターンPHが形成される。本実施形態では、ハイビーム灯具ユニット3は、
図4に示すように合計7つの個別光源30a~30gを備えるので、
図5のように7つの部分パターンPHa~PHgが形成される。ハイビーム灯具ユニット3は、後述のADBモードにおいて各部分パターンPHa~PHgの形成と非形成との組み合わせにより、対向車CVに応じて形状の異なる複数のハイビーム配光パターンPHを形成する。
【0028】
コーナリングランプ4から照射された光は、車両前方に照射され、側方配光パターンPCを形成する。例えば、
図1に示すようにコーナリングランプ4は、複数の個別光源40を備える。具体的にコーナリングランプ4は、右側に個別光源40R1、40R2、40R3と、左側に個別光源40L1、40L2、40L3を備える。個別光源40R1、40R2、40R3はそれぞれ部分パターンPCR1、PCR2、PCR3を形成する。個別光源40L1、40L2、40L3はそれぞれ部分パターンPCL1、PCL2、PCL3を形成する。当該部分パターンPCR1、PCR2、PCR3、PCL1、PCL2、PCL3が合成されることで側方配光パターンPCは形成される。側方配光パターンPCは、ハイビーム配光パターンPHに対して付加的に形成される配光パターンである。側方配光パターンPCは、少なくともハイビーム配光パターンPHよりも車体の左右方向に広がって形成される。本実施形態では、コーナリングランプ4は左右に3つずつ個別光源を備えているが、個別光源の数は増減されてもよい。コーナリングランプ4は、後述のADBモードにおいて各部分パターンPCR1、PCR2、PCR3、PCL1、PCL2、PCL3の形成と非形成との組み合わせにより、対向車CVに応じて形状の異なる複数の側方配光パターンPCを形成する。
【0029】
図5は、ハイビーム配光パターンPHと側方配光パターンPCとが互いに重なる配光パターンを示している。しかしながら、ランプ制御部5はハイビーム配光パターンPHと側方配光パターンPCとが互いに重ならないように配光パターンを形成してもよい。
【0030】
続いて、ランプ制御部5により実行されるADBモードについて説明する。ランプ制御部5は、例えば外部センサ7が取得する環境情報に基づいて、対向車CVの存否および対向車CVの存在位置を含む対向車CVの状況を検出する。対向車CVの存在位置とは、自動二輪車100から対向車までの距離、仮想鉛直スクリーンにおける対向車の位置座標などを含む。また、ランプ制御部5は、例えばバンク角センサ6が取得する車体の傾斜角情報に基づいて、車体の傾きを検出する。また、ランプ制御部5は、例えば速度センサ8が取得する速度情報に基づいて、自動二輪車100の走行と停止とを含む、自動二輪車100の走行状況を検出する。ランプ制御部5は、外部センサ7、バンク角センサ6、および速度センサ8が取得する情報に基づいて、配光パターンを制御する。
【0031】
ランプ制御部5は、外部センサ7から環境情報を取得すると、当該検出結果に基づいてハイビーム灯具ユニット3の複数の個別光源30の点消灯を個別に制御するとともに、コーナリングランプ4の複数の個別光源40の点消灯を個別に制御する。具体的にランプ制御部5は、複数の個別光源30a~30gのうちハイビーム配光パターンPHの光照射に使用される部分パターンの個別光源30を点灯状態とし、ハイビーム配光パターンPHの光照射に使用されない部分パターンの個別光源30を消灯状態とするよう、ハイビーム灯具ユニット3の複数の個別光源30をそれぞれ制御する。同様にして、ランプ制御部5は、複数の個別光源40のうち側方配光パターンPCの光照射に使用される部分パターンの個別光源40を点灯状態とし、側方配光パターンPCの光照射に使用されない部分パターンの個別光源40を消灯状態とするよう、コーナリングランプ4の複数の個別光源40をそれぞれ制御する。ランプ制御部5はハイビーム灯具ユニット3とコーナリングランプ4を連携して制御してもよいし、個別に独立して制御してもよい。
【0032】
外部センサ7が対向車CVを検出した場合、ハイビーム配光パターンPHおよび側方配光パターンPCの少なくとも一方は、対向車CVが存在する領域を含むことになる。配光パターンにおいて、対向車CVを含む領域を第一領域とし、対向車CVを含まない領域、すなわち第一領域以外の領域を第二領域とする。
図5はハイビーム配光パターンPHが第一領域および第二領域を含み、側方配光パターンPCも第一領域および第二領域を含む状態を示している。しかしながら、ハイビーム配光パターンPHと側方配光パターンPCの少なくとも一方が第一領域および第二領域を含んでいればよい。
【0033】
外部センサ7が対向車CVを検出した場合、ランプ制御部5は少なくとも第二領域に光が照射されるようにハイビーム配光パターンPHと側方配光パターンPCを調節する。
図5において、部分パターンPHa、PHb、PHc、PHdとPHgは、対向車CVを含まない第二領域である。ランプ制御部5は、ハイビーム灯具ユニット3の複数の個別光源30のうち、当該第二領域に光を照射するように個別光源30a~30dと30gを点灯する。同様に、部分パターンPCL1、PCL2、PCL3は対向車CVを含まない第二領域である。ランプ制御部5は、コーナリングランプ4の複数の個別光源40のうち、当該第二領域に光を照射するように個別光源40L1~40L3を点灯する。
【0034】
本実施形態によれば、外部センサ7が対向車CVを検出した場合、少なくとも第二領域には光が照射されるので、対向車CVの存在に関わらず、第二領域に対するランプの光量を確保することができ、運転支援時の視認性を向上することができる。
【0035】
本実施形態においては、外部センサ7が対向車CVを検出した場合、ハイビーム灯具ユニット3およびコーナリングランプ4の両方が、少なくとも第二領域に光を照射するように制御されている。したがって、対向車CVの存在に関わらず、第二領域に対する2つのランプの光量を確保することができ、運転支援時の視認性を向上することができる。特にコーナリングランプ4は、ハイビーム灯具ユニット3と比較すると、車体側方への光照射に適しているため、車体左右方向の広い範囲に配光パターンを形成することができる。本実施形態のコーナリングランプ4においては、対向車CVを含む対象物を考慮して側方配光パターンPCを調節することができる。
【0036】
本実施形態では、外部センサ7が対向車CVを検出した場合、ランプ制御部5は第一領域に光が照射されないようにハイビーム配光パターンPHと側方配光パターンPCを調整してもよい。
図5において、部分パターンPHe、PHfが対向車CVを含む第一領域である。ランプ制御部5は、ハイビーム灯具ユニット3の複数の個別光源30のうち、当該部分パターンPHe、PHfに対応する個別光源30e、30fを消灯する。同様に、部分パターンPCR1~PCR3が対向車CVを含む第一領域である。ランプ制御部5はコーナリングランプ4の複数の個別光源40のうち、当該部分パターンPCR1~PCR3に対応する個別光源40R1~40R3を消灯する。
【0037】
本実施形態によれば、対向車CVを含む第一領域には光が照射されないため、対向車CVの運転者に対するグレアを防止することができる。
【0038】
図5においてランプ制御部5は、外部センサ7が対向車CVを検出した場合に、第二領域に光を照射するようにコーナリングランプ4の個別光源40L1~40L3を点灯し、第一領域に光を照射しないようにコーナリングランプ4の個別光源40R1~40R3を消灯することにより、側方配光パターンPCを調節している。しかし、外部センサ7が対向車CVを検出した場合に、ランプ制御部5はコーナリングランプ4の全ての個別光源40を消灯することにより、側方配光パターンPCを調節してもよい。すなわち、
図5においてランプ制御部5は、外部センサ7が対向車CVを検出した場合に、ハイビーム灯具ユニット3およびコーナリングランプ4の両方により第二領域に光を照射している。しかし、外部センサ7が対向車CVを検出した場合に、ハイビーム灯具ユニット3のみにより第二領域が照射されるようにハイビーム配光パターンおよび側方配光パターンPCが調節されてもよい。この場合ランプ制御部5は、外部センサ7の検出結果に応じてコーナリングランプ4のオンとオフを切り替えるだけで側方配光パターンPCを調節することができる。したがって、対向車CVの運転者に対するグレアを防止しつつ、コーナリングランプ4の制御を簡潔にすることができる。
【0039】
本実施形態のランプ制御部5は、所定の基準線Lおよび当該基準線Lよりも下方の領域に光が照射されるように側方配光パターンPCを調節してもよい。基準線Lは、車体の左右方向に延びる、水平線Hに平行な線であり、且つ水平線Hから所定の高さを有する。例えば基準線Lは、対象物の位置において水平線Hから所定の高さを有するが、これに限定されない。
【0040】
コーナリングランプ4の複数の個別光源40において、基準線Lおよび当該基準線Lよりも下方の領域に対応する部分パターンを形成する個別光源がある場合には、外部センサ7の検出結果に関わらず、ランプ制御部5は当該部分パターンの個別光源を点灯させても良い。図示されてはいないが、コーナリングランプ4の複数の個別光源40において、下側の部分パターンPCR3およびPCL3が基準線Lおよび当該基準線Lよりも下方の領域に形成される場合には、外部センサ7の検出結果に関わらずランプ制御部5は下側の個別光源40R3および40L3を点灯し続けても良い。この場合に本実施形態は、外部センサ7の検出結果に関わらず基準線Lおよび当該基準線Lよりも下方の領域に常に側方配光パターンPCが形成されるため、基準線Lおよび当該基準線Lよりも下方の領域への光量を確保することができる。
【0041】
対象物が対向車CVまたは前走車のいずれか一方である場合、基準線Lは、対向車CVの窓ガラスまたは前走車の窓ガラスよりも低いことが好ましい。窓ガラスとして四輪車のフロントウィンドウやリアウィンドウ、二輪車のフロントシールドが挙げられる。これら窓ガラスは樹脂やビニル等、ガラスに限らず他の材料で形成されてもよい。対象物が対向車CVである場合、基準線Lは対向車CVのフロントウィンドウまたはウィンドシールドWSよりも低いことが好ましい。すなわちランプ制御部5は、外部センサ7の検出結果に関わらず、対向車CVのフロントウィンドウまたはウィンドシールドWSよりも低い位置に光を照射するようにハイビーム配光パターンPHまたは側方配光パターンPCを調節してもよい。この場合に本実施形態は、対向車CVの運転者に対するグレアを防止しつつ、第二領域に加えて基準線Lおよび当該基準線Lよりも下方の領域に対しても光量を確保することができる。対象物が前走車である場合、基準線Lは前走車のリアウィンドウまたは標識灯よりも低いことが好ましい。
基準線Lは、対向する自動車の前照灯よりも低くてもよい。すなわちランプ制御部5は、対向する自動車の前照灯よりも低い位置に光が照射されるようにハイビーム配光パターンPHまたは側方配光パターンPCを調節してもよい。この場合に本実施形態は、基準線Lが対向する自動車の前照灯よりも低いため、対向する自動車の運転者の顔に光が当たらず、対向する自動車の運転者に対するグレアを防ぐことができる。
【0042】
図6は、自動二輪車100が路面に対して車体を傾けた状態で走行する場合の配光パターンを示している。例えば
図6は、自動二輪車100が路面の左側に寄る場合や左へ曲がる曲路を走行する場合の配光パターンを示している。車体のバンク角度は限定されないが、例えばバンク角度は10度、20度、30度等である。自動二輪車100が路面の右側に寄る場合や右へ曲がる曲路を走行する場合の配光パターンの制御方法は、左右の方向が逆であること以外は、自動二輪車100が路面の左側に寄る場合や左へ曲がる曲路を走行する場合の配光パターンの制御方法と同じであるため、説明は省略する。
【0043】
図6に示すように、自動二輪車100が路面に対して車体を傾けて走行した場合、車体の傾きに伴ってハイビーム灯具ユニット3およびコーナリングランプ4も路面に対して傾くため、ハイビーム配光パターンPHおよび側方配光パターンPCは水平方向H-Hに対して傾斜して形成される。本実施形態においてバンク角センサ6が車体のバンク角を検出して、当該検出結果をランプ制御部5へ送信する。ランプ制御部5は、バンク角センサ6によって検出された車体の傾きに応じて、第二領域に光が照射されるように少なくとも側方配光パターンPCを調整する。具体的には、部分パターンPCR1~PCR3およびPCL3は対向車CVを含まない第二領域である。したがって、ランプ制御部5は、コーナリングランプ4の複数の個別光源40のうち、当該部分パターンPCR1~PCR3およびPCL3に対応する個別光源40R1~40R3と40L3を点灯する。また、部分パターンPCL1及びPCL2は対向車CVを含む第一領域である。したがって、ランプ制御部5は当該部分パターンPCL1及びPCL2に対応する個別光源40L1および40L2を消灯する。
【0044】
本実施形態によれば、たとえ車体が傾いた場合でも、車体の傾きに応じて、対向車を含まない領域である第二領域に光が照射されることで、第二領域への光量を確保することができる。加えて本実施形態によれば、車体が傾いた場合でも、対向車CVを含む第一領域には光は照射されないので、対向車CVの運転者に対するグレアを防止することができる。
【0045】
本実施形態のランプ制御部5は、車体が傾いた場合でも、基準線Lおよび当該基準線Lよりも下方の領域に光が照射されるように側方配光パターンPCを調節してもよい。図示されてはいないが、コーナリングランプの個別光源40L1~40L3のうち、中央の部分パターンPCL2が基準線以下の場合には、外部センサ7の検出結果に関わらず中央の個別光源40L2を点灯し続けても良い。この場合、車体が傾いた場合でも、外部センサ7の検出結果に関わらず基準線Lおよび当該基準線Lよりも下方の領域に常に側方配光パターンPCが形成され、基準線Lおよび当該基準線Lよりも下方の領域への光量を確保することができる。
【0046】
図5及び
図6では対象物を対向車CVとして説明していたが、対象物は歩行者Pであっても良い。
図5及び
図6のように対象物が対向車CVである場合には、対向車CVの運転者に対するグレアを防止するために、ランプ制御部5は対向車CVを含む第一領域には光が照射されないようにハイビーム配光パターンPHおよび側方配光パターンPCを調節した。一方、対象物が歩行者Pである場合には、運転支援時の視認性の観点では自動二輪車100の運転者が歩行者Pを認識できるように、歩行者Pに対して光を照射することが好ましい。すなわち
図7に示すように外部センサ7が歩行者Pを検出した場合、ランプ制御部5は歩行者Pを含まない第二領域に対してだけでなく、歩行者Pを含む第一領域に対しても光が照射されるようにハイビーム配光パターンPHおよび側方配光パターンPCを調節することが好ましい。この場合、歩行者Pを含む第一領域に光を照射するので、自動二輪車100の運転者は歩行者Pを確実に視認することができ、運転支援の視認性を向上することができる。
外部センサ7が歩行者Pを検出した場合、歩行者Pの顔には光を照射せず、歩行者Pの胴体等に光が照射されるように、ハイビーム配光パターンPHおよび側方配光パターンPCを調節してもよい。この場合、歩行者Pの顔以外が第一領域となる。歩行者Pの顔を含まない第一領域に光を照射するので、自動二輪車100の運転者は歩行者Pを視認しつつ、歩行者Pに対するグレアを防止し、運転支援の視認性を向上することができる。
【0047】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本開示の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本開示の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲およびその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0048】
上記の実施形態では、コーナリングランプ4、ランプ制御部5および外部センサ7が、ヘッドランプ1の灯室13の外部に収容されている。しかしながら、例えばランプ制御部5あるいはコーナリングランプ4が、ヘッドランプ1の灯室13の内部に収容されていてもよい。
【0049】
本出願は、2019年12月16日出願の日本特許出願2019-226552号に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。