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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】医療用管状体搬送装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20240522BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
A61F2/966
A61M25/00 532
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021565389
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2020043202
(87)【国際公開番号】W WO2021124786
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2019228671
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市村 想生
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-030033(JP,A)
【文献】特開2007-97620(JP,A)
【文献】米国特許第6613075(US,B1)
【文献】特表2011-510758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用管状体を体内に搬送する装置であって、
前記医療用管状体が内腔に配置される外側チューブと、
前記医療用管状体より近位側に配置されるガイドワイヤ挿通部材と、
前記外側チューブの内腔に配置される内挿部材とを有し、
前記ガイドワイヤ挿通部材には、ガイドワイヤが内腔に挿通される貫通路が形成されており、
該貫通路内には、前記ガイドワイヤが内腔に挿通されるガイドワイヤ用チューブが配置されており、
該ガイドワイヤ用チューブは、少なくとも前記貫通路の近位側開口位置より近位側に延伸して配置されており、
前記内挿部材の一部は、前記ガイドワイヤ挿通部材に固定されており、
前記内挿部材と前記ガイドワイヤ挿通部材とが固定されている固定領域より近位側における前記内挿部材の一部は、外方に第1保護部材を有しており、
前記固定領域の最近位位置と前記第1保護部材が配置された領域の最遠位位置との間における前記内挿部材の少なくとも一部は、第2保護部材で覆われていることを特徴とする医療用管状体搬送装置。
【請求項2】
前記第2保護部材は、前記内挿部材に対して遠近方向に移動可能に形成されている請求項1に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項3】
前記第2保護部材は、遠近方向の長さが縮小可能である請求項1または2に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項4】
前記ガイドワイヤ挿通部材の最近位位置と前記第1保護部材の最遠位位置との距離は、30mm以下である請求項1~3のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項5】
前記内挿部材と前記ガイドワイヤ挿通部材とが固定されている固定領域より近位側で、前記第2保護部材は、前記内挿部材に固定されている請求項1に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項6】
前記ガイドワイヤ挿通部材の近位端と前記第2保護部材の遠位端、および前記第2保護部材の近位端と前記第1保護部材の遠位端は、長軸方向に互いに離間して配置されている請求項5に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項7】
前記第2保護部材の遠位端は、前記ガイドワイヤ挿通部材の近位端に固定されている請求項1に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項8】
前記第2保護部材の最近位位置と前記第1保護部材の最遠位位置との距離は、5mm以下である請求項7に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項9】
前記第2保護部材は、前記貫通路の近位側開口位置より近位側に延伸して配置されている前記ガイドワイヤ用チューブの少なくとも一部を覆っている請求項1~8のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項10】
前記医療用管状体搬送装置は、前記外側チューブがガイドワイヤポートを有するラピッドエクスチェンジ型であり、
該ガイドワイヤポートは、前記外側チューブの近位端より遠位側に配置されている請求項1~9のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項11】
前記ガイドワイヤ用チューブは、前記貫通路の遠位側開口位置より遠位側に延伸して配置されている請求項1~10のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項12】
前記外側チューブの内腔には、前記ガイドワイヤが内腔に挿通される内挿チューブが配置されており、
該内挿チューブの近位端は、前記ガイドワイヤポートに固定されている請求項10に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項13】
前記内挿チューブの一部が、前記ガイドワイヤ用チューブの内腔に配置されている請求項12に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項14】
前記ガイドワイヤ用チューブの近位側端部は、テーパー形状である請求項1~13のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項15】
前記ガイドワイヤ挿通部材は、着色されている請求項1~14のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項16】
前記医療用管状体は、自己拡張型ステントである請求項1~15のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用管状体搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、体内の病変部に医療用管状体を搬送して配置する最小侵襲治療技術が開発されている。医療用管状体としては、例えば、ステント、ステントグラフト、閉塞具、注入カテーテル、プロテーゼ弁等が用いられる。これらのうちステントは、一般に、血管または他の生体内管腔が狭窄または閉塞することによって生じる様々な疾患を治療する医療用管状体である。
【0003】
この技術では、体内管腔を通して病変部に医療用管状体を搬送して配置する搬送装置が用いられている。搬送装置は、外側チューブを備えており、この外側チューブの内腔に医療用管状体を保持させた状態で、体内管腔を通して病変部に医療用管状体を搬送する。搬送した後は、外側チューブの内腔から医療用管状体を解放することによって病変部に医療用管状体を配置できる。こうした医療用管状体を搬送する装置が、例えば、特許文献1、2に開示されている。
【0004】
医療用管状体を搬送する装置には、体内の管腔に沿って抵抗なく進入可能なように、手元の操作が遠位側に伝わりやすい追随性、操作性の良さが求められ、使用時に変形、キンク、破壊が起こりにくいことが求められる。こうした医療用管状体を搬送する装置が、例えば、特許文献3に開示されている。特許文献3には、アウターシャフト、及び、インナーシャフトが含まれ、アウターシャフトは、デュアルルーメンを有し、インナーシャフトは、ガイドワイヤ用誘導チューブ及びプッシャワイヤを並列させて有し、ガイドワイヤ用誘導チューブ及びプッシャワイヤは、アウターシャフトのデュアルルーメンに、スライド可能に分けて挿入されているとともに、ガイドワイヤ用誘導チューブの長手方向の中間に、プッシャワイヤが接合されているステントデリバリーカテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2008/0255655号明細書
【文献】特開2012-45043号公報
【文献】特開2012-55470号公報
【文献】特開2012-115425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の医療用管状体搬送装置の実施形態の一例を図1に示す。なお、医療用管状体搬送装置は、術者の手元側を近位端とし、近位端の反対側、すなわち病変部等に近い側を遠位端とする。
【0007】
図1は、医療用管状体搬送装置の遠位側における断面模式図であり、医療用管状体11が内腔に配置される外側チューブ12と、該医療用管状体11より近位側にガイドワイヤ挿通部材14と、外側チューブ12の内腔に配置される内挿部材13とを有する。ガイドワイヤ挿通部材14には、ガイドワイヤが内腔に挿通される貫通路15が形成されており、該貫通路15内には、ガイドワイヤが内腔に挿通されるガイドワイヤ用チューブ16が配置されており、該ガイドワイヤ用チューブ16は、少なくとも貫通路15の近位側開口15aより近位側に延伸して配置されている。内挿部材13の一部は、ガイドワイヤ挿通部材14に固定されており、内挿部材13とガイドワイヤ挿通部材14とが固定されている固定領域14aより近位側における内挿部材13の一部は、外方に保護部材17が配置されている。また、図1に示すように、ガイドワイヤ用チューブ16は、ガイドワイヤ挿通部材14の遠位端より遠位側に延伸して配置されており、該ガイドワイヤ用チューブ16の遠位端は、先端チップ18の内腔に達している。
【0008】
内挿部材13は、医療用管状体搬送装置の近位端(術者の手元)まで延伸して配置されており、術者の手元の操作を、内挿部材13を介して遠位側へ伝えることができる。また、外側チューブ12を近位側へ引くことにより医療用管状体11がガイドワイヤ挿通部材14によって外側チューブ12の内腔から体内管腔へ押し出され、解放される。詳説すると、外側チューブ12を近位側へ引くと、医療用管状体11は外側チューブ12の動きに追随して近位側へ移動し、ガイドワイヤ挿通部材14と内挿部材13を圧縮する。この圧縮の応力に対してガイドワイヤ挿通部材14と内挿部材13に生じた反力が医療用管状体11と外側チューブ12の内面に生じる摩擦抵抗を上回ったときに、医療用管状体11が外側チューブ12の外方へと放出される。しかし、医療用管状体11の摩擦抵抗が過度に大きい場合や、ガイドワイヤ挿通部材14および内挿部材13が柔軟すぎる場合、さらにこれらの部材が長軸方向の応力伝達を阻害する構造である場合などの状況においては、外側チューブ12を近位側へ引く荷重が増大することが知られている。
【0009】
こうした医療用管状体搬送装置は、体内管腔に挿入されるが、体内管腔は複雑に屈曲しているため、医療用管状体搬送装置も体内管腔に追随して曲げられる。曲げられたときにガイドワイヤ挿通部材14の近位側で局所的な応力集中が生じると、ガイドワイヤ挿通部材14の近位端での剛性変化によって外側チューブ12がキンク、即ち、引っかかって動かない状態になりやすかった。キンクした状態で外側チューブ12を近位側へ引くと、医療用管状体11を体内管腔へ押し出すことができないことがあった。
【0010】
また、内挿部材13は、ガイドワイヤ挿通部材14よりも細いため、充分な支持力がない。従って、医療用管状体11の展開操作の際に、内挿部材13に過度の荷重がかかることがある。内挿部材13を補強するために、図1に示したように、内挿部材13の外方に保護部材17を配置することが考えられる。この場合、ガイドワイヤ挿通部材14の近位端と保護部材17の遠位端との間に隙間を設けることによって、例えば、医療用管状体搬送装置が屈曲したときに、部材の端部同士の干渉を適度に抑制できるため、操作性も向上させることができる。しかし、このような隙間があると、剛性の不連続性が生じるため、キンクの発生や、医療用管状体11の展開荷重の増加を助長することになる。また、医療用管状体搬送装置をキンクしにくくするには、例えば、外側チューブ12の強度を高めることが考えられるが、強度を高めると、体内管腔における曲がりくねった湾曲部もしくは分岐した分岐部を通過するときにこれらに合せて変形しにくくなる。そのため体内管腔等との間で接触抵抗が増加し、医療用管状体搬送装置を体内管腔へ挿入しにくくなり、操作性が低下すると考えられる。
【0011】
破断しにくい上に柔軟性に富んだカテーテルの一例が特許文献4に開示されている。このカテーテルは、連結する第1チューブおよび第2チューブと、上記の両チューブ内部の連結部分に支持されることで、上記の両チューブの内壁から乖離する線材と、線材を被覆するチューブで、連結部分から伸び出る部分を、全周囲に位置するチューブの内壁から乖離させる第3チューブと、を含んでいる。この第3チューブで被われることで外径を大型化した線材が、狭まる第2チューブの内壁の移動を止めることで、第2チューブの伸びを抑え、第2チューブが破断することを抑制している。しかしこの特許文献4では、カテーテルのキンクについては検討されていなかった。
【0012】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、操作性を低下させることなく、保護部材による内挿部材の補強効果を維持しつつ、ガイドワイヤ挿通部材の近位端でキンクしにくく、効率的よく医療用管状体を展開できる医療用管状体搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]医療用管状体を体内に搬送する装置であって、前記医療用管状体が内腔に配置される外側チューブと、前記医療用管状体より近位側に配置されるガイドワイヤ挿通部材と、前記外側チューブの内腔に配置される内挿部材とを有し、前記ガイドワイヤ挿通部材には、ガイドワイヤが内腔に挿通される貫通路が形成されており、該貫通路内には、前記ガイドワイヤが内腔に挿通されるガイドワイヤ用チューブが配置されており、該ガイドワイヤ用チューブは、少なくとも前記貫通路の近位側開口位置より近位側に延伸して配置されており、前記内挿部材の一部は、前記ガイドワイヤ挿通部材に固定されており、前記内挿部材と前記ガイドワイヤ挿通部材とが固定されている固定領域より近位側における前記内挿部材の一部は、外方に第1保護部材を有しており、前記固定領域の最近位位置と前記第1保護部材が配置された領域の最遠位位置との間における前記内挿部材の少なくとも一部は、第2保護部材で覆われていることを特徴とする医療用管状体搬送装置。
[2]前記第2保護部材は、前記内挿部材に対して遠近方向に移動可能に形成されている[1]に記載の医療用管状体搬送装置。
[3]前記第2保護部材は、遠近方向の長さが縮小可能である[1]または[2]に記載の医療用管状体搬送装置。
[4]前記ガイドワイヤ挿通部材の最近位位置と前記第1保護部材の最遠位位置との距離は、30mm以下である[1]~[3]のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
[5]前記内挿部材と前記ガイドワイヤ挿通部材とが固定されている固定領域より近位側で、前記第2保護部材は、前記内挿部材に固定されている[1]に記載の医療用管状体搬送装置。
[6]前記ガイドワイヤ挿通部材の近位端と前記第2保護部材の遠位端、および前記第2保護部材の近位端と前記第1保護部材の遠位端は、長軸方向に互いに離間して配置されている[5]に記載の医療用管状体搬送装置。
[7]前記第2保護部材の遠位端は、前記ガイドワイヤ挿通部材の近位端に固定されている[1]に記載の医療用管状体搬送装置。
[8]前記第2保護部材の最近位位置と前記第1保護部材の最遠位位置との距離は、5mm以下である[7]に記載の医療用管状体搬送装置。
[9]前記第2保護部材は、前記貫通路の近位側開口位置より近位側に延伸して配置されている前記ガイドワイヤ用チューブの少なくとも一部を覆っている[1]~[8]のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
[10]前記医療用管状体搬送装置は、前記外側チューブがガイドワイヤポートを有するラピッドエクスチェンジ型であり、該ガイドワイヤポートは、前記外側チューブの近位端より遠位側に配置されている[1]~[9]のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
[11]前記ガイドワイヤ用チューブは、前記貫通路の遠位側開口位置より遠位側に延伸して配置されている[1]~[10]のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
[12]前記外側チューブの内腔には、前記ガイドワイヤが内腔に挿通される内挿チューブが配置されており、該内挿チューブの近位端は、前記ガイドワイヤポートに固定されている[10]に記載の医療用管状体搬送装置。
[13]前記内挿チューブの一部が、前記ガイドワイヤ用チューブの内腔に配置されている[12]に記載の医療用管状体搬送装置。
[14]前記ガイドワイヤ用チューブの近位側端部は、テーパー形状である[1]~[13]のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
[15]前記ガイドワイヤ挿通部材は、着色されている[1]~[14]のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
[16]前記医療用管状体は、自己拡張型ステントである[1]~[15]のいずれかに記載の医療用管状体搬送装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内挿部材とガイドワイヤ挿通部材とが固定されている固定領域の最近位位置と、該固定領域より近位側における内挿部材の外方に第1保護部材が配置された領域の最遠位位置との間における内挿部材の少なくとも一部が、第2保護部材で覆われているため、操作性を低下させることなく、曲げられてもキンクしにくい医療用管状体搬送装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、従来の医療用管状体搬送装置における遠位側の実施形態の一例を示す断面図である。
図2図2は、本発明に係る医療用管状体搬送装置における遠位側の第1実施形態を示す断面模式図である。
図3図3は、本発明に係る医療用管状体搬送装置における遠位側の第2実施形態を示す断面図である。
図4図4は、本発明に係る医療用管状体搬送装置における遠位側の第3実施形態を示す断面図である。
図5図5は、本発明に係る医療用管状体搬送装置における遠位側の第4実施形態を示す断面図である。
図6図6は、本発明に係る医療用管状体搬送装置における遠位側の第5実施形態を示す断面図である。
図7図7は、本発明に係る医療用管状体搬送装置における遠位側の第6実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る医療用管状体搬送装置は、医療用管状体が内腔に配置される外側チューブと、前記医療用管状体より近位側に配置されるガイドワイヤ挿通部材と、前記外側チューブの内腔に配置される内挿部材とを有し、前記ガイドワイヤ挿通部材には、ガイドワイヤが内腔に挿通される貫通路が形成されており、該貫通路内には、前記ガイドワイヤが内腔に挿通されるガイドワイヤ用チューブが配置されており、該ガイドワイヤ用チューブは、少なくとも前記貫通路の近位側開口位置より近位側に延伸して配置されており、前記内挿部材の一部は、前記ガイドワイヤ挿通部材に固定されており、前記内挿部材と前記ガイドワイヤ挿通部材とが固定されている固定領域より近位側における前記内挿部材の一部は、外方に第1保護部材を有しており、前記固定領域の最近位位置と前記第1保護部材が配置された領域の最遠位位置との間における前記内挿部材の少なくとも一部は、第2保護部材で覆われている点に特徴を有する。
【0017】
以下、本発明に係る医療用管状体搬送装置の実施形態の一例について、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明は図示例に限定される訳ではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0018】
図2は、本発明に係る医療用管状体搬送装置における遠位側の第1実施形態を示す断面模式図である。なお、図2には、医療用管状体搬送装置の遠位側のみを図示した。
【0019】
医療用管状体搬送装置は、医療用管状体21が内腔に配置される外側チューブ22と、該医療用管状体21より近位側に配置されるガイドワイヤ挿通部材24と、外側チューブ22の内腔に配置される内挿部材23とを有している。
【0020】
ガイドワイヤ挿通部材24には、ガイドワイヤが内腔に挿通される貫通路25が形成されており、該貫通路25内には、ガイドワイヤが内腔に挿通されるガイドワイヤ用チューブ26が配置されており、該ガイドワイヤ用チューブ26は、少なくとも貫通路25の近位側開口25a位置より近位側に延伸して配置されている。
【0021】
内挿部材23の一部は、ガイドワイヤ挿通部材24に固定されており、該内挿部材23と該ガイドワイヤ挿通部材24とが固定されている固定領域24aより近位側における該内挿部材23の一部は、外方に第1保護部材27を有している。
【0022】
そして固定領域24aの最近位位置24bと、内挿部材23の外方に第1保護部材27が配置された領域(以下、第1保護部材被覆領域と呼ぶことがある。)の最遠位位置27aとの間における内挿部材23の少なくとも一部は、第2保護部材29で覆われている。以下、最近位位置24bと最遠位位置27aとの間の領域を第2保護部材被覆領域と呼ぶことがある。
【0023】
第2保護部材被覆領域における内挿部材23の少なくとも一部を、第1保護部材27とは別部材の第2保護部材29で覆うことによって、固定領域24aの最近位位置24bと第1保護部材被覆領域の最遠位位置27aとの間の空間を埋めることができる。この空間における内挿部材23を、第1保護部材27とは別部材の第2保護部材29で覆うことによって、医療用管状体搬送装置を体内屈曲に通したときに応力を受けても応力が第1保護部材27と第2保護部材29の両方に分散されるため、局所的な応力集中を回避しやすくなる。即ち、医療用管状体搬送装置が応力を受けても、第2保護部材29がクッション材となり、医療用管状体搬送装置はキンクしにくくなる。また、固定領域24aの最近位位置24bと第1保護部材被覆領域の最遠位位置27aとの間の空間を埋めることによって、長軸方向における支持力および挿通性を向上できるため、医療用管状体21を展開するときにかかる応力を支える力を高めることができる。そのため医療用管状体21を展開するために外側チューブ22を近位側に引くときに無駄な荷重を生じさせにくくなり、外側チューブ22の破断や、力んだ操作による医療用管状体21の目的部位からのずれなどのリスクを低減し、医療用管状体を容易に展開でき、より安全な治療を実現できる。よって本発明によれば、操作性を低下させることなく、曲げられてもキンクしにくい医療用管状体搬送装置を提供できる。
【0024】
なお、固定領域24aの最近位位置24bと第1保護部材被覆領域の最遠位位置27aとの間の空間を埋める観点では、第1保護部材被覆領域を延伸し、内挿部材23の外方に第1保護部材27が配置された領域の最遠位位置27aが、固定領域24aの最近位位置24b近傍となるように第1保護部材27を配置することが考えられる。しかし、固定領域24aの最近位位置24bより近位側に若干の隙間を空けることによって部材同士の干渉を適度に抑制できるため、操作性を向上させることができる一方で、この隙間によってキンクの発生や過度の展開荷重の発生などの問題が生じるため、本発明では、この隙間に対して第1保護部材27とは別部材の第2保護部材29で内挿部材23を覆っている。
【0025】
第2保護部材29の形状は、筒状の他、遠近方向の長さが縮小可能であってもよい。遠近方向の長さが縮小可能な形状とは、例えば、コイル状や蛇腹状が挙げられる。筒状は、メッシュ状のチューブであってもよい。
【0026】
第2保護部材29は、ガイドワイヤ挿通部材24に対して固定されていてもよいが、非固定であることが好ましい。非固定であることにより外力に応じて第2保護部材29が長軸方向にスライドするため、長軸方向の剛性が連続的になり、屈曲に対するキンク耐性が向上し、キンクしにくくなる。
【0027】
第2保護部材29は、内挿部材23に対して遠近方向に移動可能に形成されていてもよいし、内挿部材23とガイドワイヤ挿通部材24とが固定されている固定領域24aより近位側で、内挿部材23に固定されていてもよい。
【0028】
第2保護部材29を内挿部材23に対して非固定とし、内挿部材23に対して遠近方向に移動可能に形成されていることによって、医療用管状体搬送装置が応力を受けたときに第2保護部材29が追随して遠近方向に移動するため、受けた応力が緩和され、医療用管状体搬送装置がキンクしにくくなる。
【0029】
第2保護部材29を内挿部材23に対して非固定とする方法は特に限定されず、例えば、外方に第1保護部材27が配置されている内挿部材23の遠位側に、第2保護部材29として筒状物やコイル状物を非固定の状態で配置してから、内挿部材23の遠位部をガイドワイヤ挿通部材24へ挿入して内挿部材23とガイドワイヤ挿通部材24とを固定する方法や、外方に第1保護部材27が配置されている内挿部材23の遠位部をガイドワイヤ挿通部材24へ挿入して固定した後、固定領域24aの最近位位置24bと第1保護部材27が配置された領域の最遠位位置との間に、第2保護部材29として断面がC字状の筒状物を挟み込む方法などが挙げられる。
【0030】
第2保護部材29が内挿部材23に対して遠近方向に移動可能に形成されている場合は、第1保護部材27の最遠位位置27aと、固定領域24aの最近位位置24bとの距離xは、例えば、30mm以下が好ましい。距離xを30mm以下とすることによって、医療用管状体搬送装置の長軸方向の剛性が連続的になるため、屈曲に対するキンク耐性が向上し、キンクしにくくなる。さらに、医療用管状体搬送装置の長軸方向の剛性が連続的になることで、医療用管状体21の展開時にガイドワイヤ挿通部材24からの応力がよりスムーズに伝達できるため、医療用管状体21の展開操作時の無駄な荷重の発生を抑制できる。したがって、距離xは、できるだけ短い方が望ましい。距離xは、20mm以下がより好ましく、更に好ましくは10mm以下、特に好ましくは5mm以下である。距離xを5mm以下とすることによって第1保護部材27で内挿部材23の支持力および挿通性を向上させ、医療用管状体21の展開時にガイドワイヤ挿通部材24から掛かる応力を内挿部材23と一体的に支えることができる。距離xの下限は特に限定されないが、短すぎるとガイドワイヤ挿通部材24と第1保護部材27の遠位端が接触しやすくなり、ガイドワイヤ挿通部材24からの応力で第1保護部材27の遠位部が折れ曲がって損傷することがあるため、距離xは1mm以上が好ましく、より好ましくは2mm以上である。
【0031】
一方、第2保護部材29を内挿部材23に対して固定することによって、長軸方向における支持力および挿通性を向上できるため、医療用管状体21を展開するときにかかる応力を支える力を高めることができる。
【0032】
第2保護部材29が内挿部材23に対して固定されている場合は、第2保護部材29が、ガイドワイヤ挿通部材24の近位端と第2保護部材29の遠位端、および第2保護部材29の近位端と第1保護部材の遠位端が長軸方向に互いに離間するように配置されていることが好ましい。これにより部材同士の干渉を適度に抑制できるため、操作性を向上させることができる。
【0033】
第2保護部材29を内挿部材23に対して固定とする方法は特に限定されず、例えば、外方に第1保護部材27が配置されている内挿部材23の遠位側に、第1保護部材27とは別部材の第2保護部材29を固定してから、内挿部材23の遠位部をガイドワイヤ挿通部材24へ挿入して内挿部材23とガイドワイヤ挿通部材24とを固定する方法や、外方に第1保護部材27が配置されている内挿部材23の遠位部をガイドワイヤ挿通部材24へ挿入して固定した後、固定領域の最近位位置と第1保護部材27が配置された領域の最遠位位置との間に、第2保護部材29として断面がC字状のチューブを挟み込み、第2保護部材29と内挿部材23とを接着や融着等によって固定する方法などが挙げられる。
【0034】
第2保護部材29の材料は、第1保護部材27と同じであってもよく、異なっていてもよいが、第2保護部材29近傍に応力が集中してキンクしないようにするために、第2保護部材29の剛性は、第1保護部材27の剛性よりも高いことが好ましい。
【0035】
ガイドワイヤ挿通部材24には、ガイドワイヤが内腔に挿通される貫通路25が形成されており、該貫通路25内には、ガイドワイヤが内腔に挿通されるガイドワイヤ用チューブ26が配置されている。ガイドワイヤ用チューブ26を配置することによって、ガイドワイヤを内腔に挿通できるため、挿通させたガイドワイヤに沿って医療用管状体搬送装置を体内管腔へ容易に挿入できる。貫通路25の内壁とガイドワイヤ用チューブ26の外壁は、例えば、熱融着や接着剤等で固定されていてもよい。
【0036】
ガイドワイヤ用チューブ26は、少なくとも貫通路25の近位側開口25a位置より近位側に延伸して配置されている。ガイドワイヤ用チューブ26の近位端が、貫通路25の近位端より近位側に突出していることによって、ガイドワイヤ挿通部材近位端での剛性変化が連続的になるため、医療用管状体搬送装置の操作性を向上させることができる。
【0037】
ガイドワイヤ用チューブ26の近位側端部の形状は特に限定されず、例えば、図2に示すように長軸方向に対して垂直な形状であってもよいし、或いはテーパー形状、凹凸形状、階段形状、波形形状などであってもよく、テーパー形状がより好ましい。テーパー形状とすることにより、剛性変化の連続性を高めてキンクを防止しやすくなる。
【0038】
ガイドワイヤ用チューブ26は、貫通路25の遠位側開口位置25bより遠位側に延伸して配置されていてもよく、該ガイドワイヤ用チューブ26の遠位端は、図2に示すように、先端チップ28の内腔まで延伸して配置されてもよい。
【0039】
内挿部材23の一部は、ガイドワイヤ挿通部材24に固定されている。内挿部材23は、ガイドワイヤ挿通部材24に圧入されて固定されていてもよく、ガイドワイヤ挿通部材24と熱融着や接着剤等で固定されていてもよい。
【0040】
固定領域24aより近位側における内挿部材23の一部は、外方に第1保護部材27を有している。上記領域の内挿部材23の一部の外方に第1保護部材27を配置することによって、内挿部材23の損傷を抑制できる。また、第1保護部材27を配置することによって内挿部材23の長軸方向における支持力および挿通性を向上できるため、医療用管状体を展開するときにかかる応力を支える力を高めることができ、医療用管状体を容易に展開できる。第1保護部材27は、内挿部材23と接し、内挿部材23を被覆していることが好ましい。
【0041】
ガイドワイヤ挿通部材24の遠位端に、医療用管状体21を押し出しやすくするための押出部材を配置してもよい。
【0042】
ガイドワイヤ挿通部材24は、着色されていることが好ましい。ガイドワイヤ挿通部材24を着色することによって、内視鏡下で視認しやすくなり、ガイドワイヤ挿通部材24の位置を確認しやすくなる。着色したガイドワイヤ挿通部材24は、ビジュアルマーカーと呼ばれることがある。ガイドワイヤ挿通部材24に着色する色は、内視鏡下で視認しやすい色であれば特に限定されないが、例えば、胃腸内の粘膜や血液に対して比較的目立つ色が好ましく、黄色が特に好ましい。
【0043】
ガイドワイヤ挿通部材24、外側チューブ22、第1保護部材27、第2保護部材29の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等)、ポリアミド、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン、ポリエステル、シリコーン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の樹脂材料が挙げられる。
【0044】
内挿部材23の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金、タングステン、金、白金等の各種金属材料が挙げられる。
【0045】
次に、本発明に係る医療用管状体搬送装置における遠位側の第2実施形態について図3を用いて説明する。なお、図3において、上記図面と同一箇所には同じ符号を付して、重複説明を避ける(以下、同じ)。
【0046】
図3に示すように、第2保護部材29は、貫通路25の近位側開口25a位置より近位側に延伸して配置されているガイドワイヤ用チューブ26の少なくとも一部を覆ってもよい。ガイドワイヤ用チューブ26の少なくとも一部と、内挿部材23の一部とを、非固定の第2保護部材29で覆い、これらを拘束することによって、第2保護部材29で固定領域24aの最近位位置24bと第1保護部材被覆領域の最遠位位置27aとの間の空間を埋めることができると共に、該ガイドワイヤ用チューブ26と内挿部材23の位置関係がズレないように一体化できるため、長軸方向における支持力および挿通性を一層向上でき、医療用管状体21を展開するときにかかる応力を支える力を一層高めることができる。第2保護部材29を非固定に配置することで、屈曲時に第2保護部材29が遠近方向に移動して応力を適度に分散させることができる。
【0047】
第2保護部材29の近位端部の形状は、例えば、テーパー形状にしてもよい。このようにすることで第1保護部材27への剛性の連続性が高まり、送達性の向上、医療用管状体21の展開時の操作荷重の抑制が可能となる。
【0048】
次に、本発明に係る医療用管状体搬送装置における遠位側の第3実施形態について図4を用いて説明する。図4に示すように、第2保護部材29の遠位端は、ガイドワイヤ挿通部材24の近位端に固定されていてもよい。第2保護部材29をガイドワイヤ挿通部材24に固定することによってガイドワイヤ挿通部材からの剛性変化の連続性を高め、長軸方向における支持力および挿通性を一層向上でき、医療用管状体21を展開するときに内挿部材23にかかる応力を支える力を一層高めることができる。第2保護部材29とガイドワイヤ挿通部材24は、例えば、接着剤や熱融着等によって固定されていることが好ましい。
【0049】
なお、図4では、第2保護部材29で内挿部材23のみを覆った例を示したが、本発明はこの構成に限定されず、図3に示したように、第2保護部材29で内挿部材24とガイドワイヤ用チューブ26の少なくとも一部を覆いつつ、該第2保護部材29の遠位端をガイドワイヤ挿通部材24の近位端に固定してもよい。
【0050】
第1保護部材27の最遠位位置27aと、第2保護部材29の最近位位置29aとの距離yは、例えば、5mm以下が好ましい。距離yを5mm以下とすることによって、医療用管状体搬送装置の長軸方向の剛性が連続的になるため、屈曲に対する耐性が向上し、キンクしにくくなる。距離yは、できるだけ短い方が望ましい。距離yは、4mm以下がより好ましく、更に好ましくは3mm以下、特に好ましくは2mm以下である。距離yを2mm以下とすることによって第1保護部材27で内挿部材23の支持力および挿通性を向上させ、医療用管状体21の展開時にガイドワイヤ挿通部材24から掛かる応力を内挿部材23と一体的に支えることができる。第1保護部材27の最遠位位置27aと、第2保護部材29の最近位位置29aとの距離yは、例えば、1mm以上であってもよい。
【0051】
次に、本発明に係る医療用管状体搬送装置における遠位側の第4実施形態について図5を用いて説明する。図5に示すように、医療用管状体搬送装置を、外側チューブ22がガイドワイヤポート31を有するラピッドエクスチェンジ型としてもよく、該ガイドワイヤポート31は、該外側チューブ22の近位端より遠位側に配置されていることが好ましい。
【0052】
ガイドワイヤ用チューブ26の近位端側は、ガイドワイヤポート31まで延伸して配置されてもよい。
【0053】
なお、図5では、医療用管状体搬送装置の他の実施形態として、ラピッドエクスチェンジ型を示したが、オーバーザワイヤー型であってもよい。
【0054】
次に、本発明に係る医療用管状体搬送装置における遠位側の第5実施形態について図6を用いて説明する。図6に示すように、外側チューブ22の内腔には、ガイドワイヤが内腔に挿通される内挿チューブ51が配置されており、該内挿チューブ51の近位端は、該ガイドワイヤポート31に固定されていてもよい。
【0055】
内挿チューブ51の近位端がガイドワイヤポート31に固定されている形態としては、例えば、外側チューブ22の一部を肉厚にして内挿チューブ51との間に充填部材30を形成し、外側チューブ22と内挿チューブ51の近位端部との隙間をなくして固定されている形態や、内挿チューブ51の近位端部と外側チューブ22との間に、樹脂等で構成される充填部材30を介在させ、接着剤で固定されている形態や、充填部材30として接着剤を用い、内挿チューブ51の近位端部と外側チューブ22とが接着されている形態などが挙げられる。また、充填部材30を用いずに、外側チューブ22の内壁と内挿チューブ51の外壁が、例えば、熱溶融や圧着によって密着するように固定されている形態であってもよい。
【0056】
図6に示した医療用管状体搬送装置の実施形態では、ラピッドエクスチェンジ型であることが好ましい。
【0057】
図6に示すように、内挿チューブ51の一部は、ガイドワイヤ用チューブ26の内腔に配置されていてもよい。このように構成することによって、外側チューブ22を近位側に引いて医療用管状体21を放出、展開させるときに、ガイドワイヤが常に内挿チューブ51または貫通路25の内腔に配置されるため、ガイドワイヤが、例えば、内挿部材23等に絡みついて操作できなくなったり、医療用管状体21の放出を阻害することを防止できる。
【0058】
次に、本発明に係る医療用管状体搬送装置における遠位側の第6実施形態について図7を用いて説明する。図7に示した医療用管状体搬送装置では、貫通路25内に、ガイドワイヤが内腔に挿通されるガイドワイヤ用チューブ26が配置されており、該ガイドワイヤ用チューブ26の遠位側は、先端チップ28まで延伸して配置されており、ガイドワイヤ用チューブ26の近位側は、貫通路25の近位側開口25aの位置まで延伸して配置されている。ガイドワイヤ用チューブ26の近位端部の形状は、テーパー状である。テーパー状にすることによって、キンクを防止しやすくなる。ガイドワイヤ挿通部材24から第2保護部材29および第1保護部材27への剛性変化の連続性が高くなるため、医療用管状体搬送装置全体の剛性変化の連続性が高くなり、医療用管状体搬送装置のキンクを防止しやすくなる。
【0059】
また、外側チューブ22の内腔に、ガイドワイヤが内腔に挿通される内挿チューブ51が配置されており、該内挿チューブ51の近位端は、ガイドワイヤポート31に固定されており、該内挿チューブ51は、貫通路25内に配置されたガイドワイヤ用チューブ26の内腔を通り、先端チップ28まで延伸して配置されている。
【0060】
図7では、内挿チューブ51と外側チューブ22との間に、充填部材30を介在させている。充填部材30の近位端部の形状は、内挿チューブ51の近位端部の形状と一致している。充填部材30の近位端部の形状と、内挿チューブ51の近位端部の形状と一致させることによって、外側チューブ外表面の一体性が増し、送達操作の容易性を高める。
【0061】
図7に示すように、ガイドワイヤ用チューブ26の外表面に係止具32を設けてもよい。該係止具32は、医療用管状体21の内表面に係合しており、外側チューブ22を近位側に引くと医療用管状体21は係止具32によって後退を抑制され、外側チューブ22の外方へと展開される。
【0062】
係止具32を設ける位置は、医療用管状体21の後退を抑制できれば特に限定されないが、例えば、医療用管状体21の長軸方向長さにおける中央位置より近位側が好ましい。また、係止具32を用いずに、ガイドワイヤ挿通部材24の遠位端で医療用管状体21の近位端を支えてもよい。
【0063】
医療用管状体としては、例えば、ステント、ステントグラフト、閉塞具、注入カテーテル、プロテーゼ弁等を用いることができる。中でもステントを用いることが好ましい。ステントとしては、例えば、1本の線状の金属または高分子材料で形成されたコイル状のステント、金属チューブをレーザーによって切り抜いて加工したステント、金属シートをレーザーで切り抜いた後に円筒形状に巻いてレーザー溶接したステント、線状の部材をレーザーによって溶接して組み立てたステント、または、複数の線状金属を織って作ったステントが挙げられる。ステントは、ステントをマウントしたバルーンによって拡張させるバルーン拡張型ステントと、ステントの拡張を抑制する外部部材を取り除くことによって自ら拡張させる自己拡張型ステントに分類される。本発明では、自己拡張型ステントを用いることが好ましい。
【0064】
本願は、2019年12月18日に出願された日本国特許出願第2019-228671号に基づく優先権の利益を主張するものである。2019年12月18日に出願された日本国特許出願第2019-228671号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0065】
11、21 医療用管状体
12、22 外側チューブ
13、23 内挿部材
14、24 ガイドワイヤ挿通部材
14a 固定領域
15、25 貫通路
15a 貫通路15の近位側開口
16、26 ガイドワイヤ用チューブ
17 保護部材
18、28 先端チップ
24a 内挿部材23とガイドワイヤ挿通部材24とが固定されている固定領域
24b 固定領域24aの最近位位置
25a 貫通路25の近位側開口
25b 貫通路25の遠位側開口
27 第1保護部材
27a 第1保護部材の最遠位位置
29 第2保護部材
29a 第2保護部材の最近位位置
30 充填部材
31 ガイドワイヤポート
32 係止具
51 内挿チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7