(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】計測装置、計測方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/02 20060101AFI20240522BHJP
G01C 7/04 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G01B11/02 Z
G01C7/04
(21)【出願番号】P 2022125402
(22)【出願日】2022-08-05
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【氏名又は名称】阿形 直起
(72)【発明者】
【氏名】西村 修
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-045558(JP,A)
【文献】特開2011-170599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01C 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を含む実空間を移動する車両から三次元計測した点群および前記点群を三次元計測したときの前記車両の軌跡を記憶する記憶部と、
前記点群が配置される仮想空間に鉛直な平面である計測面を設定するとともに、前記計測面上に、それぞれが鉛直な線分である一対の計測線を設定する設定部と、
前記仮想空間における前記点群および前記一対の計測線を示す立体図を生成する立体図生成部と、
前記立体図を表示する表示制御部と、
利用者の操作に応じて、前記計測面を鉛直軸回りに回転し、または前記一対の計測線の少なくとも一方を前記計測面上で平行移動することにより、前記計測面および前記計測線の前記仮想空間における配置を変更する変更部と、
前記一対の計測線の間の水平距離を出力する距離出力部と、を備え、
前記設定部は、前記軌跡の方向の水平成分に直交するように前記計測面を初期設定し、
前記表示制御部は、前記利用者の操作に応じて前記計測面または前記計測線の配置が変更された場合に、当該配置に基づいて生成された立体図を再表示する
ことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記点群を構成する点のうち前記計測面からの距離が所定の距離範囲に含まれる点、および前記一対の計測線を前記計測面に投影して断面図を生成する断面図生成部をさらに備え、
前記表示制御部は、さらに前記断面図を表示する、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記利用者の操作に応じて前記計測面または前記計測線の配置が変更された場合に、当該配置に基づいて生成された断面図を再表示する
請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記点群に基づいて前記道路の路面高を算出し、前記計測面上において前記路面高に対して所定の高さを有する水平直線上の点の周辺において前記点群がなす面を検出し、前記点群がなす面の水平位置に前記一対の計測線を初期設定する、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記立体図の光軸と交わる鉛直線を設定し、前記鉛直線上の点の周辺において前記点群がなす面を検出し、当該点群がなす面の高さを前記路面高として算出する、
請求項4に記載の計測装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記立体図の光軸に対して所定の俯角をなす直線を設定し、前記直線上の点の周辺において前記点群がなす面を検出し、当該点群がなす面の高さを前記路面高として算出する、
請求項4に記載の計測装置。
【請求項7】
計測装置によって実行される計測方法であって、
道路を含む実空間を移動する車両から三次元計測した点群および前記点群を三次元計測したときの前記車両の軌跡を記憶し、
前記点群が配置される仮想空間に鉛直な平面である計測面を設定するとともに、前記計測面上に、それぞれが鉛直な線分である一対の計測線を設定し、
前記仮想空間における前記点群および前記一対の計測線を示す立体図を生成し、
前記立体図を表示し、
利用者の操作に応じて、前記計測面を鉛直軸回りに回転し、または前記一対の計測線の少なくとも一方を前記計測面上で平行移動することにより、前記計測面および前記計測線の前記仮想空間における位置を変更し、
前記一対の
計測線の間の水平距離を出力する、ことを含み、
前記設定することにおいて、前記軌跡の方向の水平成分に直交するように前記計測面を初期設定し、
前記利用者の操作に応じて前記計測面または前記計測線の配置が変更された場合に、当該配置に基づいて生成された立体図を再表示することをさらに含む、
ことを特徴とする計測方法。
【請求項8】
道路を含む実空間を移動する車両から三次元計測した点群および前記点群を三次元計測したときの前記車両の軌跡を記憶するコンピュータのプログラムであって、
前記点群が配置される仮想空間に鉛直な平面である計測面を設定するとともに、前記計測面上に、それぞれが鉛直な線分である一対の計測線を設定し、
前記仮想空間における前記点群および前記一対の計測線を示す立体図を生成し、
前記立体図を表示し、
利用者の操作に応じて、前記計測面を鉛直軸回りに回転し、または前記一対の計測線の少なくとも一方を前記計測面上で平行移動することにより、前記計測面および前記計測線の前記仮想空間における配置を変更し、
前記一対の計測線の間の水平距離を出力する、ことを前記コンピュータに実行させ、
前記設定することにおいて、前記軌跡の方向の水平成分に直交するように前記計測面を初期設定し、
前記利用者の操作に応じて前記計測面または前記計測線の配置が変更された場合に、当該配置に基づいて生成された立体図を再表示することをさらに前記コンピュータに実行させる、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項9】
道路を含む実空間を三次元計測した点群を記憶する記憶部と、
前記点群が配置される仮想空間に鉛直な平面である計測面を設定するとともに、前記計測面上に、それぞれが鉛直な線分である一対の計測線を設定する設定部と、
前記仮想空間における前記点群および前記一対の計測線を示す立体図を生成する立体図生成部と、
前記点群を構成する点のうち、前記計測面からの距離が所定の距離範囲に含まれる点、および前記一対の計測線を前記計測面に投影して断面図を生成する断面図生成部と、
前記立体図および前記断面図を表示する表示制御部と、
利用者の操作に応じて、前記計測面を鉛直軸回りに回転し、または前記一対の計測線の少なくとも一方を前記計測面上で平行移動することにより、前記計測面および前記計測線の前記仮想空間における配置を変更する変更部と、
前記一対の計測線の間の水平距離を出力する距離出力部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記利用者の操作に応じて前記計測面または前記計測線の配置が変更された場合に、当該配置に基づいて生成された立体図および断面図を再表示する
ことを特徴とする計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置、計測方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路管理者は、道路の管理のために、道路の幅、施設の幅、高さ等を計測する。そのような計測を効率化するために、MMS(Mobile Mapping System)により道路とその周辺を計測して得られた三次元点群が用いられている。
【0003】
特許文献1には、三次元点群を立体図として表示するとともに、三次元点群で構成される仮想空間に板状のカーソルを配置し、カーソル位置における断面図を断面方向の寸法とともに表示する方法が記載されている。また、一般に、三次元点群で構成される仮想空間内の二点が指定された場合に、その二点の間の距離を表示する技術も知られている。このような技術を用いて、道路の幅を横断方向に計測することにより、道路の幅員、車道の幅等が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、道路の幅を横断方向に計測するためには、作業者は、立体図を回転させる等の操作をして計測方向と道路の横断方向との関係を目視で確認する必要があり、作業効率が悪い。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、簡易な操作で正確に道路の幅を計測することを可能とする計測装置、計測方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る計測装置は、道路を含む実空間を移動する車両から三次元計測した点群および点群を三次元計測したときの車両の軌跡を記憶する記憶部と、点群が配置される仮想空間に鉛直な平面である計測面を設定するとともに、計測面上に、それぞれが鉛直な線分である一対の計測線を設定する設定部と、仮想空間における点群および一対の計測線を示す立体図を生成する立体図生成部と、立体図を表示する表示制御部と、一対の計測線の間の水平距離を出力する距離出力部と、利用者の操作に応じて計測面および計測線の少なくとも一方の仮想空間における配置を変更する変更部と、を備え、設定部は、軌跡の方向の水平成分に直交するように計測面を初期設定することを特徴とする。
【0008】
また、変更部は、利用者の操作に応じて、計測面を鉛直軸回りに回転し、または一対の計測線の少なくとも一方を計測面上で平行移動することにより、計測面および計測線の少なくとも一方の仮想空間における配置を変更することが好ましい。
【0009】
また、計測装置は、点群を構成する点のうち計測面からの距離が所定の距離範囲に含まれる点、および一対の計測線を計測面に投影して断面図を生成する断面図生成部をさらに備え、表示制御部は、さらに断面図を表示することが好ましい。
【0010】
また、設定部は、点群に基づいて道路の路面高を算出し、計測面上において路面高に対して所定の高さを有する水平直線上の点の周辺において点群がなす面を検出し、点群がなす面の水平位置に一対の計測線を初期設定することが好ましい。
【0011】
また、設定部は、立体図の光軸と交わる鉛直線を設定し、鉛直線上の点の周辺において点群がなす面を検出し、点群がなす面の高さを路面高として算出することが好ましい。
【0012】
また、設定部は、立体図の光軸に対して所定の俯角をなす直線を設定し、直線上の点の周辺において点群がなす面を検出し、点群がなす面の高さを路面高として算出することが好ましい。
【0013】
本発明の実施形態に係る計測方法は、計測装置によって実行される計測方法であって、道路を含む実空間を移動する車両から三次元計測した点群および点群を三次元計測したときの車両の軌跡を記憶し、点群が配置される仮想空間に鉛直な平面である計測面を設定するとともに、計測面上に、それぞれが鉛直な線分である一対の計測線を設定し、仮想空間における点群および一対の計測線を示す立体図を生成し、立体図を表示し、一対の鉛直線分の間の水平距離を出力し、利用者の操作に応じて計測面および計測線のうちの少なくとも一方の仮想空間における配置を変更する、ことを含み、設定することにおいて、軌跡の方向の水平成分に直交するように計測面を初期設定することを特徴とする。
【0014】
本発明の実施形態に係るプログラムは、道路を含む実空間を移動する車両から三次元計測した点群および点群を三次元計測したときの車両の軌跡を記憶するコンピュータのプログラムであって、点群が配置される仮想空間に鉛直な平面である計測面を設定するとともに、計測面上に、それぞれが鉛直な線分である一対の計測線を設定し、仮想空間における点群および一対の計測線を示す立体図を生成し、立体図を表示し、一対の計測線の間の水平距離を出力し、利用者の操作に応じて計測面および計測線のうちの少なくとも一方の仮想空間における配置を変更する、ことをコンピュータに実行させ、設定することにおいて、軌跡の方向の水平成分に直交するように計測面を初期設定することを特徴とする。
【0015】
本発明の実施形態に係る計測装置は、道路を含む実空間を三次元計測した点群を記憶する記憶部と、点群が配置される仮想空間に鉛直な平面である計測面を設定するとともに、計測面上に、それぞれが鉛直な線分である一対の計測線を設定する設定部と、仮想空間における点群および一対の計測線を示す立体図を生成する立体図生成部と、点群を構成する点のうち、計測面からの距離が所定の距離範囲に含まれる点、および一対の計測線を計測面に投影して断面図を生成する断面図生成部と、立体図および断面図を表示する表示制御部と、一対の計測線の間の水平距離を出力する距離出力部と、利用者の操作に応じて計測面および計測線の少なくとも一方の仮想空間における配置を変更する変更部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る計測装置、計測方法およびプログラムは、簡易な操作で正確に道路の幅を計測することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】計測装置1を用いた道路の幅員の計測について説明するための模式図である。
【
図3】計測データT1のデータ構造を示す図である。
【
図6】表示条件設定処理の流れを示すフロー図である。
【
図7】計測面S1の配置位置の設定について説明するための模式図である。
【
図8】道路縁の検出について説明するための模式図である。
【
図9】計測面S1の配置位置の設定について説明するための模式図である
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る計測装置1の機能ブロック図である。計測装置1は、MMSが道路を含む実空間を三次元計測することによって取得された三次元点群データ(以下、単に点群と称する。)が配置される仮想空間の任意の二点間の距離を出力する。例えば、計測装置1は、道路の幅員を計測するために用いられる。
【0020】
MMSは、道路を含む実空間を移動する車両並びに車両に搭載されたレーザ計測器、撮像装置、GNSS(Global Navigation Satellite System)計測器および慣性計測器を有する。車両が道路を移動している間に、レーザ計測器は定期的に道路の三次元計測を行い、道路を含む車両の周辺の構造物の形状を示す点群を生成する。また、撮像装置は、レーザ計測器による計測と並行して、道路およびその周辺を撮像して撮像画像を生成する。GNSS計測器および慣性計測器は、レーザ計測器による計測および撮像装置による撮像が行われた時点における車両の位置および方向を示すデータを生成する。
【0021】
計測装置1は、例えばPC(Personal Computer)、タブレット端末、スマートフォン、サーバ等の情報処理装置である。計測装置1は、記憶部11、通信部12、表示部13、操作部14および処理部15を備える。
【0022】
記憶部11は、プログラムまたはデータを記憶するための構成であり、例えば、半導体メモリ装置を備える。記憶部11は、処理部15による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。プログラムは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等のコンピュータ読み取り可能かつ非一時的な可搬型記憶媒体から記憶部11にインストールされる。
【0023】
通信部12は、計測装置1を他の装置と通信可能にする構成であり、通信インタフェース回路を備える。通信部12が備える通信インタフェース回路は、有線LAN(Local Area Network)又は無線LAN等の通信インタフェース回路である。通信部12は、データを他の装置から受信して処理部15に供給するとともに、処理部15から供給されたデータを他の装置に送信する。
【0024】
表示部13は、画像を表示するための構成であり、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイを備える。表示部13は、処理部15から供給された表示データに基づいて画像を表示する。
【0025】
操作部14は、計測装置1に対するユーザの入力操作を受付けるための構成であり、例えば、マウスおよびキーボードを備える。操作部14は、表示部13と一体化されたタッチパネルを備えてもよい。操作部14は、ユーザの入力操作に応じた信号を生成して処理部15に供給する。
【0026】
処理部15は、計測装置1の動作を統括的に制御するデバイスであり、一または複数個のプロセッサおよびその周辺回路を備える。処理部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を備える。処理部15は、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えてもよい。処理部15は、記憶部11に記憶されているプログラム並びに通信部12および操作部14からの入力に基づいて計測装置1の各種処理が適切な手順で実行されるように、各構成の動作を制御するとともに、各種の処理を実行する。
【0027】
処理部15は、設定部151、立体図生成部152、断面図生成部153、距離出力部154、表示制御部155および変更部156をその機能ブロックとして備える。これらの各部は、処理部15によって実行されるプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、ファームウェアとして計測装置1に実装されてもよい。
【0028】
図2(A)および(B)は、計測装置1を用いた道路の幅員の計測について説明するための模式図である。計測装置1は、点群が配置される仮想空間Vを設定して、表示部13に表示する。
図2(A)および(B)に示す例では、点群によって構成される道路RSおよび道路の両側の道路縁に沿った側壁REを含む仮想空間Vが表示されている。
【0029】
図2(A)に示すように、計測装置1は、仮想空間Vに、鉛直な平面である計測面S1を設定するとともに、計測面S1上にそれぞれが鉛直な線分である一対の鉛直計測線L1およびL2を設定する。計測面S1並びに鉛直計測線L1およびL2は、図形オブジェクトとして表示部13に表示される。また、計測装置1は、一対の鉛直計測線L1およびL2の間の水平距離D1を出力する。計測装置1の利用者は、操作部14を操作して、計測面S1を鉛直軸A回りに回転させることができる。また、利用者は、操作部14を操作して、鉛直計測線L1およびL2を計測面S1上で平行移動させることができる。
【0030】
図2(B)に示すように、道路の幅員を計測する利用者は、操作部14を操作して、計測面S1を道路の横断方向に平行になるように回転させるとともに、鉛直計測線L1およびL2を道路の両側の側壁REの位置に平行移動させる。このときに出力される距離D1は、道路の両側の道路縁の間の距離を道路の横断方向に計測した距離であり、道路の幅員にあたる。このようにして、利用者は、計測面S1または鉛直計測線L1およびL2の仮想空間Vにおける配置を変更することにより、道路の幅員を計測する。なお、
図2(A)および(B)では道路の幅員を計測するための基準としての側壁REを例示したが、車道の幅を計測する際は側壁REに代えてガードレールや縁石や区画線などを基準にしてもよい。
【0031】
道路や車道等の幅を正確に計測するためには、計測方向を道路の横断方向に一致させるとともに、その計測方向に沿って道路の両側の道路縁や車道の両側の車道縁の位置を指定しなければならない。しかしながら、従来、利用者がこれらの二つの条件を同時に満たすような操作をすることは容易ではなかった。計測装置1では、計測面S1の回転が計測方向の設定に対応し、鉛直計測線L1およびL2の移動が道路縁や車道縁の位置の指定に対応する。すなわち、計測装置1の利用者は、上述した二つの条件を一つずつ満たすように操作をすれば足りるから、従来よりも容易に道路や車道等の幅を計測することができる。
【0032】
図3は、記憶部11に記憶される計測データT1のデータ構造を示す図である。計測データT1は、計測時刻、計測位置、計測方向、点群、撮像画像等を相互に関連付けて記憶する。
【0033】
計測時刻は、MMSのレーザ計測器による計測および撮像装置による撮像が行われた時刻である。計測位置は、計測および撮像が行われたときの車両の位置を示す情報であり、GNSS計測器によって取得される。詳細には、計測位置は、例えばカメラである撮像装置の光学中心の位置である。計測方向は、計測および撮像が行われたときの車両の向きを示す情報であり、慣性計測器によって取得される。詳細には、計測方向は、例えば撮像装置の光軸方向である。計測位置および計測方向は、平面直角座標系等の三次元座標系の座標値およびベクトルで表される。計測位置を計測時刻に基づいて時系列に配列したデータは、MMSの車両の軌跡を示す。
【0034】
点群は、道路を含む実空間の構造物の三次元形状を示すデータであり、レーザ計測器によって取得される。レーザ計測器は、撮像装置の光軸方向を含む所定の角度範囲にレーザを照射し、構造物で反射されたレーザを検出することにより、反射点の位置を算出する。点群は、複数の反射点のそれぞれについて、その反射点の識別情報とレーザ計測器によって算出されたその反射点の位置を含む。当該位置は計測位置と同じく三次元座標系の座標値で表される。撮像画像は、道路を含む実空間を撮像した画像であり、撮像装置によって生成される。撮像画像として、生成された撮像画像のファイル名やファイルパス等が記憶されてもよい。
【0035】
図4は、表示部13に表示される計測画面G1の例を示す図である。計測装置1の利用者は、計測画面G1が表示部13に表示されている状態で操作部14を操作することにより、点群によって構成される仮想空間に距離の計測対象(例えば、道路の両側の道路縁の位置)を設定する。計測画面G1は、立体図表示部G11および断面図表示部G12を含む。
【0036】
立体図表示部G11には、仮想空間における点群を示す立体図が表示される。
図4に示す例では、点群により、道路およびその周辺の建造物、植栽等の構造物の形状が立体図として示されている。
【0037】
立体図は、点群に加えて、上述した一対の鉛直計測線L1およびL2を示す。さらに、立体図は、一対の補助線L3およびL4、水平計測線L5、底面S2並びに一対の測面S3およびS4を示す。
【0038】
一対の補助線L3およびL4は、一対の鉛直計測線L1およびL2の上端をそれぞれ通り、計測面S1上で水平方向に延伸する線分である。補助線L3およびL4の両端には、補助線L3およびL4の長さを伸縮操作するための逆三角形の図形オブジェクトが表示される。水平計測線L5は、一対の鉛直計測線L1およびL2の下端を結び、計測面S1上で水平方向に延伸する線分である。
【0039】
底面S2は、水平方向に延伸する面である。底面S2は、点群に基づいて、実空間の路面に概ね一致するように設定される。一対の測面S3およびS4は、一対の鉛直計測線L1およびL2を含み、かつ計測面S1および底面S2と直交する平面である。一対の測面S3およびS4は、点群に基づいて、実空間の道路の両側の道路縁または車道の両側の車道縁に概ね沿うように設定される。底面S2並びに一対の測面S3およびS4には、矩形状に格子が設定される。
【0040】
一対の補助線L3およびL4、水平計測線L5、底面S2並びに一対の測面S3およびS4は、計測面S1並びに一対の鉛直計測線L1およびL2と同様に、図形オブジェクトとして表示される。また、立体図表示部G11は、立体図に重畳して、一対の鉛直計測線L1およびL2の間の水平距離D1並びに操作用アイコンIを表示する。操作用アイコンIは、設定された矩形状の格子を鉛直軸回りに回転または、計測面S1を鉛直軸回りに回転する操作のためのアイコンである。
【0041】
断面図表示部G12は、点群を構成する点(以下、点群構成点として称することがある。)のうち、計測面S1からの距離が所定の距離範囲に含まれる点を計測面S1に投影して生成される断面図を表示する。断面図は、点群に加えて、一対の鉛直計測線L1およびL2、一対の補助線L3およびL4並びに水平計測線L5を含む。また、断面図表示部G12は、断面図に重畳して、一対の鉛直計測線L1およびL2の間の水平距離D1、一対の補助線L3およびL4の水平計測線L5に対する高さD2およびD3(通常D2およびD3は路面に対する高さとなる)並びに一対の補助線L3およびL4の長さD4およびD5をそれぞれ表示する。
【0042】
上述したように、利用者は、操作部14を操作して、計測面S1を回転し、または鉛直計測線L1およびL2を計測面S1上で移動することにより、道路の幅を計測することができる。さらに、利用者は、操作部14を操作して、補助線L3およびL4の高さおよびその両端の位置を変更することができる。
【0043】
例えば、利用者は、補助線が道路の周辺の構造物の上端に位置するように補助線の高さを変更する。このときに表示される補助線の高さD2およびD3は、道路の周辺の構造物の高さである。すなわち、利用者は構造物の高さを計測することができる。また、利用者は、補助線の両端が道路の周辺の構造物の両端に位置するように補助線の両端の位置を変更する。このときに表示される補助線の長さD4およびD5は、道路の周辺の構造物の幅である。すなわち、利用者は道路の周辺の構造物の幅を計測することができる。
【0044】
図5は、計測装置1によって実行される計測処理の流れを示すフロー図である。計測処理は、記憶部11に記憶されたプログラムに基づいて、処理部15が計測装置1の構成と協働することにより実現される。
【0045】
最初に、設定部151は、立体図の視点を初期設定する(ステップS101)。視点は、立体図の投影中心となる仮想空間内の点である。設定部151は、計測データT1に含まれる計測位置のうちから、一つの計測位置を抽出する。例えば、設定部151は、仮想空間上の任意の点を指定する利用者の操作を受け付け、指定された点に最も近い計測位置を抽出する。設定部151は、抽出した計測位置を立体図の視点として初期設定する。
【0046】
次に、設定部151は、立体図および断面図の表示条件設定処理を実行する(ステップS102)。表示条件設定処理では、立体図を生成するための投影面、計測面S1、鉛直計測線L1およびL2、補助線L3およびL4、水平計測線L5、底面S2並びに測面S3およびS4が設定される。表示条件設定処理の詳細は後述する。
【0047】
次に、立体図生成部152は、仮想空間における点群、一対の鉛直計測線L1およびL2を示す立体図を生成する(ステップS103)。例えば、立体図生成部152は、視点として設定されている計測位置に関連付けられた点群を計測データT1から抽出する。立体図生成部152は、抽出した点群構成点のそれぞれと視点とを結ぶ線分を算出し、各点群構成点を線分と投影面との交点に投影する。同様にして、立体図生成部152は、計測面S1、一対の鉛直計測線L1およびL2、一対の補助線L3およびL4、水平計測線L5、底面S2並びに側面S3およびS4を投影面に投影する。立体図生成部152は、各部が投影された投影面を、二次元の立体図として生成する。
【0048】
このようにして、立体図生成部152は、点群、一対の鉛直計測線L1およびL2、一対の補助線L3およびL4、水平計測線L5、底面S2並びに測面S3およびS4を示す立体図を生成する。なお、立体図の視認性を向上させるため、立体図には、底面S2または測面S3若しくはS4が含まれなくてもよいし、或いは計測面S1が含まれてもよい。
【0049】
次に、断面図生成部153は、点群構成点のうち、計測面S1からの距離が所定の距離範囲に含まれる点および一対の鉛直計測線L1およびL2を計測面S1に投影して断面図を生成する(ステップS104)。断面図生成部153は、ステップS103で抽出された点群構成点のうち、計測面S1からの距離が所定の距離範囲に含まれる点を抽出する。所定の距離範囲は、計測面S1上と同視できる範囲であり、例えば10cmである。断面図生成部153は、抽出した点のそれぞれから計測面S1に下ろした垂線を算出し、各点を垂線と投影面との交点に投影する。同様にして、断面図生成部153は、一対の鉛直計測線L1およびL2、一対の補助線L3およびL4並びに水平計測線L5を計測面S1に投影する。このようにして、断面図生成部153は、点群、一対の鉛直計測線L1およびL2、一対の補助線L3およびL4並びに水平計測線L5を含む断面図を生成する。
【0050】
次に、距離出力部154は、距離を算出する(ステップS105)。距離出力部154は、一対の鉛直計測線L1およびL2の間の水平距離D1を算出する。距離出力部154は、一対の補助線L3およびL4の水平計測線L5に対する高さD2およびD3をそれぞれ算出する。距離出力部154は、一対の補助線L3およびL4の長さD4およびD5をそれぞれ算出する。
【0051】
次に、表示制御部155は、立体図および断面図を表示する(ステップS106)。表示制御部155は、立体図および水平距離D1を立体図表示部G11に含み、断面図、水平距離D1、高さD2およびD3、長さD4およびD5を断面図表示部G12に含む計測画面G1の表示データを生成する。表示制御部155は、表示データを表示部13に供給することにより、表示部13に計測画面G1を表示する。このようにして、距離出力部154は一対の鉛直計測線L1およびL2の間の距離を出力する。
【0052】
次に、変更部156は、利用者の操作を受け付ける(ステップS107)。利用者の操作は、視点を移動する操作、投影条件を変更する操作、計測面S1を回転する操作、鉛直計測線L1若しくはL2を移動する操作、補助線L3およびL4を移動し若しくはその長さを変更する操作または計測画面G1の表示を終了する操作である。
【0053】
次に、変更部156は、受け付けた操作が視点を移動する操作であるか否かを判定する(ステップS108)。視点を移動する操作は、例えば、視点の移動方向を指定する操作である。視点の移動方向は、前方または後方である。
【0054】
受け付けた操作が視点を移動する操作である場合(ステップS108-Yes)、変更部156は、視点を移動する(ステップS109)。視点の移動方向として前方が指定された場合、変更部156は、時系列で、視点として設定されている計測位置の次の計測位置を計測データT1から抽出する。視点の移動方向として後方が指定された場合、変更部156は、時系列で、視点として設定されている計測位置の直前の計測位置を計測データT1から抽出する。変更部156は、抽出した計測位置を視点として設定することにより、視点を移動する。その後、計測処理はステップS102に戻り、移動した視点に基づいて投影面、計測面S1、鉛直計測線L1およびL2、補助線L3およびL4、水平計測線L5、底面S2並びに測面S3およびS4が設定される。
【0055】
受け付けた操作が視点を移動する操作でない場合(ステップS108-No)、変更部156は、操作が投影条件を変更する操作であるか否かを判定する(ステップS110)。投影条件を変更する操作は、立体図を生成するための投影面を変更する操作であり、例えば立体図の画角を変更する操作である。
【0056】
受け付けた操作が投影条件を変更する操作である場合(ステップS110-Yes)、変更部156は、投影条件を変更する(ステップS111)。変更部156は、変更された投影条件に基づいて投影面を設定する。その後、計測処理はステップS103に戻り、
設定された投影面に基づいて立体図および断面図が生成される。
【0057】
受け付けた操作が投影条件を変更する操作でない場合(ステップS110-No)、変更部156は、操作が計測面S1を回転する操作であるか否かを判定する(ステップS112)。計測面S1を回転する操作は、回転方向を指定する操作である。計測面S1を回転する操作は、さらに回転角を指定してもよい。
【0058】
受け付けた操作が計測面S1を回転する操作である場合(ステップS112-Yes)、変更部156は、計測面S1を回転する(ステップS113)。変更部156は、計測面S1を、鉛直軸回りの指定された方向に所定角度だけ回転させる。受け付けた操作が回転角を指定する操作である場合、変更部156は、計測面S1を指定された方向に指定された角度だけ回転させる。また、変更部156は、鉛直計測線L1およびL2、補助線L3およびL4並びに水平計測線L5を、計測面S1と同一の方向に同一の角度だけ回転させる。その後、計測処理はステップS103に戻り、回転した計測面S1、鉛直計測線L1およびL2、補助線L3およびL4並びに水平計測線L5に基づいて立体図および断面図が生成される。
【0059】
受け付けた操作が計測面S1を回転する操作でない場合(ステップS112-No)、変更部156は、操作が鉛直計測線L1またはL2を移動する操作であるか否かを判定する(ステップS114)。鉛直計測線を移動する操作は、移動する鉛直計測線を指定するとともに、その鉛直計測線の移動方向および移動距離を指定する操作である。
【0060】
受け付けた操作が鉛直計測線L1またはL2を移動する操作である場合(ステップS114-Yes)、変更部156は、鉛直計測線L1またはL2を計測面S1上で平行移動する(ステップS115)。変更部156は、鉛直計測線L1およびL2のうちの指定された鉛直計測線を、指定された方向に指定された距離だけ移動する。また、変更部156は、鉛直計測線L1およびL2の下端を結ぶように水平計測線L5を設定する。次に、計測処理はステップS103に戻り、移動した鉛直計測線L1およびL2に基づいて立体図および断面図が生成される。
【0061】
受け付けた操作が鉛直計測線L1またはL2を移動する操作でない場合(ステップS114-No)、変更部156は、操作が補助線L3またはL4の高さまたはその両端の位置を変更する処理であるか否かを判定する(ステップS116)。補助線の高さを変更する操作は、高さを変更する補助線を指定するとともに、その補助線の変更後の高さを指定する操作である。補助線の両端の位置を変更する操作は、両端の位置を変更する補助線を指定するとともに、その補助線の移動後の両端の位置を指定する操作である。
【0062】
受け付けた操作が補助線L3またはL4の高さ、またはその両端の位置を変更する操作である場合(ステップS116-Yes)、変更部156は、補助線L3またはL4の高さまたはその両端の位置を変更する(ステップS117)。操作が補助線の高さを変更する操作である場合、変更部156は、補助線L3およびL4のうちの指定された補助線を、指定された高さに移動する。また、変更部156は、移動した補助線に対応する鉛直計測線の上端を補助線が通るように移動する。操作が補助線の両端の位置を変更する操作である場合、変更部156は、補助線L3およびL4のうちの指定された補助線の両端を指定された位置に移動する。次に、計測処理はステップS103に戻り、高さまたは両端の位置が変更された補助線に基づいて立体図および断面図が生成される。
【0063】
受け付けた操作が補助線L3またはL4を移動し、またはその長さを変更する処理でない場合(ステップS116-No)、操作は計測画面G1の表示を終了する処理である。この場合、計測処理は終了する。
【0064】
図6は、計測装置1によって実行される表示条件設定処理の流れを示すフロー図である。表示条件設定処理は、計測処理のステップS102で実行される。
【0065】
最初に、設定部151は、立体図の投影条件を設定する(ステップS201)。設定部151は、投影条件として、立体図の光軸および画角を設定する。立体図の光軸とは、立体図である透視投影図を仮想的なカメラで撮影した画像と捉えたときの、仮想的なカメラの光軸に相当するものである。光軸は、立体図の視点を通る、立体図の投影面の法線でもある。設定部151は、視点として設定されている計測位置に関連付けられた計測方向を計測データT1から抽出する。設定部151は、視点を通り計測方向に延伸する直線を立体図の光軸として設定する。また、設定部151は、道路の幅よりも広い範囲が投影されるようにあらかじめ設定された角度範囲を画角として設定する。
【0066】
設定部151は、設定された光軸方向および画角に基づいて、仮想空間に投影面を設定する。例えば、設定部151は、所定の大きさを有する矩形の投影面を光軸に直交するように設定する。投影面と視点との距離は、画角に基づいて設定される。
【0067】
次に、設定部151は、底面S2を設定するとともに、計測面の配置位置を設定する(ステップS202)。
【0068】
図7は、計測面S1の配置位置の設定について説明するための模式図である。設定部151は、光軸LSと交わる鉛直線を設定する。
図6に示す例では、設定部151は、視点Q0から光軸方向に距離E1だけ離れた点Q1を特定し、点Q1を通る鉛直線を設定する。距離E1は、例えば5mである。
【0069】
次に、設定部151は、設定した鉛直線上の点の周辺において点群がなす面を検出する。検出される面は、路面に対応する面である。
図7に示す例では、設定部151は、点Q1を中心とする矩形(例えば、各辺が0.25mの正方形)を断面とし、微小高さΔ1を有する直方体領域を設定する。微小高さΔ1は、例えば5cmに設定される。設定部151は、点群構成点のうち、直方体領域の内部に位置する点の数が所定数N1以上となるまで、直方体領域を高さΔ1だけ下方に移動する。設定部151は、直方体領域の内部に位置する点の数が所定数N1以上となったときに、その直方体領域の内部に点群がなす面を検出する。
【0070】
次に、設定部151は、点群がなす面の高さを道路の路面高として算出する。設定部151は、点群構成点のうち、点群がなす面が検出された直方体領域の中心に最も近い点Q2を特定する。設定部151は、直方体領域の内部の点群構成点のうち、点Q2との距離が近いものから順に所定数N2個の点群構成点を抽出する。所定数N2は、所定数N1より小さい数である。設定部151は、抽出した点群構成点の高さ、すなわちz座標の平均値を点群がなす面の高さ、すなわち路面高として算出する。設定部151は、算出した路面高を有する水平面を底面S2として設定する。また、例えば上記点Q2を、点Q1を中心とする上記矩形を上面とする所定高さ(計測位置よりも十分高い高さ。例えば10m)の直方体領域内から点群構成点を順次ランダムサンプリングして予め定めた個数目(例えば50個目)にサンプリングされた点群構成点とすることもできる。
【0071】
また、設定部151は、鉛直線と点群がなす面との交点を算出し、計測面S1の配置位置として設定する。設定部151は、点Q1と等しい水平方向位置、すなわちx座標およびy座標を有し、算出した路面高と等しい高さ、すなわちz座標を有する点P0を鉛直線と点群がなす面との交点として算出する。設定部151は、算出した交点を計測面S1の配置位置に設定する。計測面S1の配置位置である点P0は、計測面S1が回転するときの鉛直軸が通る点である。
【0072】
なお、路面高および交点の算出方法は上述した例に限られない。例えば、直方体領域の内部に位置する点の数が所定数N1以上となったときに、その直方体領域の内部に含まれる点群構成点に基づいて水平面を算出し、その水平面の高さを路面高として算出するとともに、その水平面と鉛直線との交点を算出してもよい。水平面は、例えば最小二乗法を用いて算出される。
【0073】
図6に戻り、次に、設定部151は、軌跡の方向を算出する(ステップS203)。設定部151は、視点として設定されている計測位置と、時系列で、視点として設定されている計測位置の次の計測位置とを計測データT1から抽出する。設定部151は、視点として設定されている計測位置からその次の計測位置に向かう方向を軌跡の方向として算出する。
【0074】
次に、設定部151は、軌跡の方向の水平成分に直交するように計測面S1を初期設定する(ステップS204)。設定部151は、設定された配置位置を含み、かつ軌跡の方向の水平成分に直交するように、鉛直な平面である計測面S1を設定する。
【0075】
次に、設定部151は、道路縁または車道縁に対応する、点群がなす面の水平位置を算出する(ステップS205)。
【0076】
図8は、道路縁の水平位置の検出について説明するための模式図である。説明を簡単にするため、
図8においては、計測面S1がzx平面となるように計測面S1の向きが設定されているとする。
図8に示す例では、設定部151は、計測面S1の上方で、配置位置P0に対して所定の高さF1を有する点Q3を通る水平直線を設定する。所定の高さF1は、例えば0.5mである。
【0077】
次に、設定部151は、設定した水平直線上の点の周辺において点群がなす面を検出する。検出される面は、測面S3およびS4に対応する面である。このとき、設定部151は、配置位置P0の上方を除いた領域で点群がなす面を検出する。例えば、設定部151は、水平直線上に、配置位置P0の上方の点Q3から所定距離F2だけ離れた点Q4を設定する。距離F2は、例えば1mである。設定部151は、点Q4を中心とし、かつ水平直線に直交する矩形(例えば、各辺が0.1mの正方形)を断面とし、水平直線の方向に微小幅Δ2を有する直方体領域を設定する。微小幅Δ2は、例えば5cmに設定される。設定部151は、点群構成点のうち、直方体領域の内部に位置する点の数が所定数N3以上となるまで、直方体領域を幅Δ2だけ、水平直線に沿って配置位置P0から離れる方向に移動する。設定部151は、直方体領域の内部に位置する点の数が所定数N3以上となったときに、その直方体領域の内部に点群がなす面を検出する。
【0078】
次に、設定部151は、点群がなす面の水平位置(水平直線方向の位置、すなわちx座標)を道路縁または車道縁の水平位置として算出する。設定部151は、点群構成点のうち、点群がなす面が検出された直方体領域の中心に最も近い点Q5をそれぞれ特定する。設定部151は、直方体領域の内部の点群構成点のうち、点Q5との距離が近いものから順に所定数N4個の点群構成点を抽出する。所定数N4は、所定数N3よりも小さい数である。設定部151は、抽出した点群構成点の水平直線方向の位置、すなわちx座標の平均値を点群がなす面の水平位置X1として算出する。
【0079】
設定部151は、配置位置P0の上方の点Q3から所定距離F2だけ離れ、かつ点Q3に対して点Q4とは反対側の水平直線上の点Q6を特定する。設定部151は、水平位置X1の算出と同様にして、点Q6の側において点群がなす面を検出し、その水平位置X2を算出する。
【0080】
水平直線が路面高に対して所定の高さF1を有するように設定されることにより、実空間における路面の、高さ(F1-0.05m)に満たない凹凸が道路縁や車道縁として誤検出することが防止され、道路縁や車道縁等の水平位置が適切に検出される。このようにして検出された道路縁や車道縁等は、道路の側壁、ガードレール、縁石、道路沿いの建物等の構造物に対応する。利用者は、道路縁として検出したい構造物の種類に応じて、水平直線の高さF1を設定することができる。例えば、車道の幅として車道の両端のガードレールの間の距離を計測したい場合には、車道縁としてガードレールを検出する必要がある。この場合、利用者は、一般的なガードレールが位置する高さである0.5mを所定の高さF1として設定する。このようにすることで、計測装置1は、計測対象に応じて適切な車道縁を自動的に検出することができる。
【0081】
また、配置位置の上方を除いた領域で点群がなす面が検出されることにより、適切に道路縁や車道縁等が検出される。すなわち、配置位置の上方は道路の中央に対応するため、中央分離帯等の、道路縁ではない構造物が存在する可能性が高い。そのような領域が探索範囲から除かれることにより、道路の中央の構造物が道路縁や車道縁等であると誤検出されることが防止され、適切に道路縁や車道縁等が検出される。
【0082】
配置位置P0の上方の点Q3から所定距離だけ離れた位置まで直方体領域を移動させても直方体領域の内部に位置する点の数が所定数N3以上とならない場合、設定部151は、配置位置P0から所定距離だけ離れた位置を道路縁または車道縁の水平位置として検出する。所定距離は、一般的な道路の中央から道路縁までの距離よりも大きい距離であり、例えば10mである。
【0083】
図6に戻り、設定部151は、一対の鉛直計測線L1およびL2、一対の補助線L3およびL4並びに一対の測面S3およびS4を初期設定する(ステップS206)。設定部151は、計測面S1上の道路縁または車道縁の水平位置、すなわち点群がなす面の水平位置を通るように一対の鉛直計測線L1およびL2を初期設定する。また、設定部151は、計測面S1上に、一対の鉛直計測線L1およびL2の上端を通る一対の補助線L3およびL4を設定する。また、設定部151は、計測面S1と直交し、かつ一対の鉛直計測線L1およびL2を含む面をそれぞれ測面S3およびS4として設定する。
【0084】
次に、設定部151は、底面S2並びに測面S3およびS4に格子を設定する(ステップS207)。設定部151は、底面S2上に、計測面S1に平行な水平直線および計測面S1に直交する水平直線を等間隔となるように設定することにより、底面S2に矩形状の格子を設定する。例えば、設定部151は、計測面S1に平行な水平直線と計測面S1に直交する水平直線との交点の一つが計測面S1の配置位置となるように、底面S2上に格子を設定する。また、設定部151は、測面S3およびS4上に、計測面S1に平行な鉛直線および計測面S1に直交する鉛直線を等間隔となるようにそれぞれ設定することにより、側面S3およびS4上に格子を設定する。例えば、設定部151は、計測面S1に平行な鉛直線と計測面S1に直交する鉛直線との交点の一つが鉛直計測線L1またはL2の下端となるように、側面S3およびS4上に格子を設定する。格子を構成する直線の間隔は、利用者によって指定されてもよく、一対の鉛直線分の間の距離または鉛直線分の長さに応じて計測装置1によって自動的に設定されてもよい。以上で、表示条件設定処理は終了する。
【0085】
以上説明したように、計測装置1は、計測面S1上に設定される一対の鉛直計測線L1およびL2の間の水平距離を出力する。また、計測装置1は、車両の軌跡の方向の水平成分に直交するように計測面を初期設定する。一般に、車両の軌跡の方向に直交する面は、道路や車道等の幅を計測する方向である横断方向に平行であるから、上述の構成を有する計測装置1は、簡易な操作で正確に道路や車道等の幅を計測することを可能とする。
【0086】
また、計測装置1は、利用者の操作に応じて、計測面S1を鉛直軸回りに回転し、または鉛直計測線L1およびL2の少なくとも一方を計測面S1上で平行移動する。これにより、利用者は、まず計測面S1を回転させて計測方向を道路の横断方向に平行にしたうえで、鉛直計測線L1およびL2を道路縁や車道縁等の位置に移動させることができる。したがって、計測装置1は、容易な操作で道路や車道等の幅を計測することを可能とする。
【0087】
また、計測装置1は、点群を構成する点のうち計測面S1からの距離が所定の距離範囲に含まれる点、並びに一対の鉛直計測線L1およびL2を計測面S1に投影して断面図を生成する。利用者は、断面図を見ながら計測面S1を回転し、または鉛直計測線L1およびL2を移動することができるため、利用者が道路や車道等の幅を計測するために位置変更操作をやり直す回数が減少する。また、点群並びに一対の鉛直計測線L1およびL2は断面図として投影されると同時に立体図としても投影されるため鉛直計測線L1およびL2の少なくとも一方を平行移動させるとその鉛直計測線は断面図上と立体図上で連動して移動する。これにより利用者は断面図と立体図の両方で点群と鉛直計測線の位置関係を視認しながら操作できるので位置変更操作をやり直す回数がより一層減少する。したがって、計測装置1は簡易な操作で道路や車道等の幅を計測することを可能とする。
【0088】
また、設定部151は、計測面S1上において路面高に対して所定の高さF1を有する水平直線上の点の周辺において点群がなす面を検出し、点群がなす面の水平位置に一対の鉛直計測線L1およびL2を初期設定する。水平直線が路面高に対して所定の高さF1を有するように設定されることにより、路面の凹凸が道路縁や車道縁等として誤検出されることが防止される。また、点群がなす面の水平位置、すなわち道路縁や車道縁等の水平位置に鉛直計測線L1およびL2が初期設定されることにより、初期設定された鉛直計測線L1およびL2の間の距離は道路や車道等の幅に一致し、鉛直計測線L1およびL2の位置を変更する操作が不要となり、又はその回数が少なくなる可能性が高くなる。したがって、計測装置1は簡易な操作で道路や車道等の幅を計測することを可能とする。
【0089】
計測装置1には、次に述べるような変形例が適用されてもよい。
【0090】
上述した説明では、計測処理のステップS106において、表示制御部155は、立体図および断面図を表示するものとしたが、このような例に限られず、立体図のみを表示してもよい。
【0091】
また、表示制御部155は、撮像画像に重畳して立体図を表示してもよい。これにより、周辺の構造物が少ない等の理由で点群構成点の数が少ない場合にも、利用者は撮像画像に基づいて視点の位置を容易に把握することができる。
【0092】
上述した説明では、計測処理のステップS107において、設定部151が計測面S1を鉛直軸回りに回転する操作、並びに一対の鉛直計測線L1およびL2を計測面S1上で平行移動する操作を受け付けるものとしたが、このような例に限られない。例えば、設定部151は、一対の鉛直計測線L1およびL2を仮想空間において任意の位置に移動する操作を受け付けてもよい。この場合、設定部151は、移動した鉛直計測線L1およびL2が計測面S1上に位置するように計測面S1を回転してもよい。
【0093】
上述した説明では、計測処理のステップS107において、設定部151が補助線L3またはL4を移動し、またはその長さを変更する操作を受け付けるものとしたが、このような例に限られない。設定部151は、これらの操作を受け付けなくてもよい。この場合、立体図および断面図は、補助線L3およびL4を含まなくてもよい。
【0094】
上述した説明では、計測処理のステップS109において、設定部151は、視点の移動方向として前方または後方を指定する操作を受け付けるものとしたが、このような例に限られない。設定部151は、視点を連続的に移動する操作を受け付けてもよい。この場合、表示制御部155は、操作用アイコンIとして、再生ボタンおよび停止ボタンを表示する。利用者が再生ボタンを選択する操作をした場合、設定部151は、所定時間ごとに、視点を前方に移動する操作を受け付けた場合と同様の処理(すなわち、ステップS102-S106およびS109の処理)を繰り返し実行し、視点を連続して前方に移動する。利用者が停止ボタンを選択する操作をした場合、設定部151は、視点を連続して前方に移動する処理を停止する。このようにすることで、計測装置1は、任意の位置の立体図および断面図を簡易な操作で表示することを可能とする。
【0095】
上述した説明では、表示条件設定処理のステップS202において、設定部151は、光軸と交わる鉛直線上の点の周辺において点群がなす面を検出するものとしたが、このような例に限られない。設定部151は、光軸に対して所定の俯角をなす直線上の点の周辺において点群がなす面を検出してもよい。
【0096】
図9は、この場合の計測面S1の配置位置の設定について説明するための模式図である。設定部151は、光軸に対して所定の俯角をなす直線を設定する。
図9に示す例では、設定部151は、光軸LSに対して俯角θをなす直線を設定する。俯角θは、例えば20度である。
【0097】
次に、設定部151は、設定した直線上の点の周辺において点群がなす面を検出する。
図9に示す例では、設定部151は、視点から所定距離離間した直線上の点Q8を中心とする矩形(例えば、各辺が1mの正方形)を断面とし、微小高さΔ3を有する直方体領域を設定する。所定距離は、点Q8が一般的な路面よりも上方となるように、θの値に応じて設定される。微小高さΔ3は、例えば5cmに設定される。設定部151は、点群構成点のうち、直方体領域の内部に位置する点の数が所定数N5以上となるまで、直方体領域を直線に沿って、高さ方向の移動距離が高さΔ3となるように移動させる。設定部151は、直方体領域の内部に位置する点の数が所定数N5以上となったときに、その直方体領域の内部に点群がなす面を検出する。
【0098】
次に、設定部151は、点群がなす面の高さを道路の路面高として算出する。設定部151は、点群構成点のうち、点群がなす面が検出された直方体領域の中心Q9に最も近い点Q10を特定する。設定部151は、直方体領域の内部の点群構成点のうち、点Q10との距離が近いものから順に所定数N6個の点群構成点を抽出する。所定数N6は、所定数N5より小さい数である。設定部151は、抽出した点群構成点の高さ、すなわちz座標の平均値を点群がなす面の高さ、すなわち路面高として算出する。
【0099】
また、設定部151は、直線と点群がなす面との交点を算出し、計測面S1の配置位置として設定する。設定部151は、直線上の点のうち、路面高と等しい高さを有する点P0を直線と点群がなす面との交点として算出する。設定部151は、算出した交点を計測面S1の配置位置に設定する。このようにしても、計測装置1は、計測面S1の配置位置を適切に設定することができる。
【0100】
上述した説明では、表示条件設定処理のステップS203において、設定部151は視点として設定されている計測位置からその次の計測位置に向かう方向を軌跡の方向として算出するものとしたが、このような例に限られない。例えば、設定部151は、視点として設定されている計測位置およびその前後の所定数の計測位置を計測データT1から抽出し、抽出した計測位置の近似直線を算出し、近似直線の方向を軌跡の方向として算出してもよい。近似直線は、例えば最小二乗法により算出される。また、設定部151は、抽出した計測位置の近似曲線を算出し、視点に最も近い近似曲線上の点における接線方向を軌跡の方向として算出してもよい。近似曲線は、例えば多項式近似によって算出される。
【0101】
上述した説明では、表示条件設定処理のステップS204において、設定部151は軌跡の方向の水平成分に直交するように計測面S1を初期設定するものとしたが、このような例に限られない。設定部151は、任意の方向の計測面S1を初期設定してもよい。この場合も、利用者は断面図を見ながら位置変更操作をすることにより、少ない回数で計測面S1を軌跡の方向に直交するように回転することができる。したがって、計測装置1は簡易な操作で道路や車道等の幅を計測することを可能とする。
【0102】
上述した計測装置1の機能は、複数の装置によって実現されてもよい。
【0103】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 計測装置
11 記憶部
151 設定部
152 立体図生成部
153 断面図生成部
154 距離出力部
155 表示制御部
156 変更部