(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】ヒト化BCMA抗体およびBCMA-CAR-T細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240522BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240522BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240522BHJP
C12N 15/86 20060101ALN20240522BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240522BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20240522BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20240522BHJP
C12N 15/861 20060101ALN20240522BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20240522BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20240522BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/86 Z
C07K19/00
C07K16/30
C12N15/867 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/0783
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022129829
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2020561062の分割
【原出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-08-17
(32)【優先日】2019-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515251115
【氏名又は名称】カリブー・バイオサイエンシーズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】リージュン・ウー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィータ・ゴルボフスカヤ
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-527271(JP,A)
【文献】国際公開第2018/026953(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/211900(WO,A1)
【文献】Cancers,2018年,Vol.10, No.323,pp.1-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/10
C12N 15/00
C07K 19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(V
H);および
配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖鎖可変領域(V
L)
を含む、抗BCMA1本鎖可変断片(scFv);
CD8の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメイン;
4-1BB共刺激性ドメインを含む共刺激性ドメイン;ならびに
CD3ゼータ活性化ドメインを含む活性化ドメイン
を含む抗BCMAキメラ抗原受容体(CAR)を含む、ナチュラルキラー(NK)細胞。
【請求項2】
CARが配列番号17のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のNK細胞。
【請求項3】
配列番号17のCARをコードし、5’末端および3’末端を有する核酸を含む、請求項1に記載のNK細胞。
【請求項4】
BCMA陽性がん細胞を致死させる方法で使用するための、抗BCMAキメラ抗原受容体(CAR)を含む
、ナチュラルキラー(NK)細胞であって、前記方法は:
BCMA陽性がん細胞
とNK細胞を接触させることを含み、前記CARは:
配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(V
H);および
配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖鎖可変領域(V
L)
を含む、抗BCMA1本鎖可変断片(scFv);
CD8の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメイン;
4-1BB共刺激性ドメインを含む共刺激性ドメイン;ならびに
CD3ゼータ活性化ドメインを含む活性化ドメイン
を含む
、
NK細胞。
【請求項5】
接触はインビトロである、請求項4に記載
のNK細胞。
【請求項6】
BCMA陽性がん細胞は、多発性骨髄腫がん細胞を含む、請求項4に記載
のNK細胞。
【請求項7】
接触は腫瘍内である、請求項4に記載
のNK細胞。
【請求項8】
抗BCMA NK細胞を製造する方法であって、
配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(V
H);および
配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖鎖可変領域(V
L)
を含む、抗BCMA1本鎖可変断片(scFv);
CD8の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメイン;
4-1BB共刺激性ドメインを含む共刺激性ドメイン;ならびに
CD3ゼータ活性化ドメインを含む活性化ドメイン
を含む抗BCMAキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を、インビトロでNK細胞内に導入することを含む、方法。
【請求項9】
核酸は、ウイルスベクターによってNK細胞内に導入される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、サルウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクター、エプスタインバーウイルス(EBV)ベクター、およびHSVベクターから成る群から選択される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列リスト、表またはコンピュータープログラムの参照
配列リストは、EFS-Webを介して明細書と共にASCII形式のテキストファイルとして、ファイル名Sequence Listing.txt、作成日2020年1月13日、サイズ4キロバイトで本明細書と同時に提出される。EFS-Webを介して出願された配列リストは本明細書の一部であり、参照によってその全体を本明細書に組み入れる。
【0002】
本発明は、腫瘍の養子免疫遺伝子療法の分野で有用な、特に多発性骨髄腫の腫瘍増殖を減少させるヒト化BCMA抗体(PMC306)およびBCMA-CAR-T細胞に関する。
【背景技術】
【0003】
免疫療法は、がん治療のための非常に有望なアプローチであることが明らかになりつつなる。免疫系の攻撃部隊であるT細胞またはTリンパ球は、常に外来抗原を探し、異常な細胞(がんまたは感染した細胞)を正常な細胞から区別する。CAR(キメラ抗原受容体)構築物でT細胞を遺伝子改変することは、腫瘍特異的T細胞を設計するための最も一般的なアプローチである。腫瘍関連抗原(TAA)を標的とするCAR-T細胞は、患者に注入することができ(養子細胞移植またはACTと呼ばれる)、効率的な免疫療法アプローチとなる(1、2)。化学療法または抗体と比較してCAR-T技術の利点は、再プログラムされ遺伝子操作されたT細胞は患者の中で増殖し、持続することができることである(「生きている薬」)(1、2)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
CARは典型的に、N末端部分のモノクローナル抗体由来の1本鎖可変断片(scFv)、ヒンジ、膜貫通ドメインおよび活性化CD3-ゼータドメインと並んだいくつかの細胞内共活性化ドメイン:(i)CD28、(ii)CD137(4-1BB)、CD27またはその他の共刺激性ドメインで構成されている(
図1)。CARの進化は、第1世代(共刺激ドメインなし)から第2世代(1つの共刺激ドメインあり)、第3世代CAR(いくつかの共刺激ドメインあり)へと進んだ。2つの共刺激性ドメイン(いわゆる第3世代CAR)を使用してCARを生成すると、細胞溶解性CAR-T細胞活性が増加し、CAR-T細胞の持続性が向上し、抗腫瘍活性が増強した。
【0005】
BCMA
B細胞成熟抗原(BCMA)は、CD269および腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17(TNFRSF17)としても知られている細胞表面受容体であり、TNFRSF17遺伝子によってコードされている。この受容体は主に成熟Bリンパ球で発現し、ほとんどの場合、多発性骨髄腫(MM)で過剰発現される(4)。MMにおいてBCMAを標的とする現在の療法には、モノクローナル抗体、二重特異性抗体およびT細胞免疫療法、CAR-T療法が含まれる(4、5)。
【0006】
ヒトBCMAタンパク質は、184個のアミノ酸:1~54-細胞外ドメイン;55~77-膜貫通ドメイン;78~184-細胞質ドメインで構成されている。BCMAのアミノ酸配列を
図2に示す。BCMAにはシグナルペプチドが欠如しており、その他の受容体であるBAFF受容体および膜貫通活性化因子およびシクロフィリンリガンド相互作用因子およびカルシウム調節因子(TACI)に類似している(4)。これらの受容体は、
B細胞の成熟および形質細胞への分化において主要な役割を担っている。それらのリガンドには、MM患者で発現が増加しているBAFFおよびAPRILが含まれる(4)。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】CARの構造を示した図である(3)。左パネルは第1世代の構造(共刺激性ドメインなし)を示す。中央パネルは第2世代の構造(1つの共刺激ドメインCD28または4-BB)を示す。右パネルは第3世代の構造(2つまたはそれ以上の共刺激ドメイン)を示す。
【
図2】BCMAタンパク質のアミノ酸配列(配列番号1)を示した図である。細胞外ドメインには下線が引いてある。
【
図3】ヒト化BCMA CAR構築物を示した図である。
【
図4】ヒト化BCMA-CAR構築物が、蛍光標識された組換えBCMAタンパク質を用いたFACS分析によって検出されたことを示した図である。レンチウイルスのヒト化BCMA-CARをT細胞に形質導入した後、ヒト化BCMA-CAR陽性細胞が検出された。
【
図5A】ヒト化BCMA-CAR-T細胞はCHO-BCMA細胞を致死させたが、CHO細胞は致死させなかったことを示した図である。XCelligenceリアルタイム細胞毒性アッセイが、ヒト化BCMA-CAR-T細胞の細胞毒性の検出に使用された。正規化された細胞インデックスはY軸に表示され、時間はX軸に表示されている。
図5Aは、CHO-BCMA標的細胞について示す。右は:上から下へ:Mock CAR-T細胞、T細胞、標的細胞のみおよびヒト化CAR-T細胞である。
【
図5B】ヒト化BCMA-CAR-T細胞はCHO-BCMA細胞を致死させたが、CHO細胞は致死させなかったことを示した図である。XCelligenceリアルタイム細胞毒性アッセイが、ヒト化BCMA-CAR-T細胞の細胞毒性の検出に使用された。正規化された細胞インデックスはY軸に表示され、時間はX軸に表示されている。
図5Bは、CHO標的細胞について示す。右は上から下へ、Mock CAR-T細胞、ヒト化BCMA CAR-T細胞、T細胞および標的細胞のみである。
【
図6】ヒト化BCMA-CAR-T細胞が、CHO-BCMA陽性細胞では高レベルのIFN-ガンマを分泌したが、BCMA陰性のCHO対照細胞では分泌しなかったことを示した図である。p<0.05 BCMA-CAR-T細胞対T細胞およびMock CAR-T細胞のCHO-BCMA細胞におけるIFN-ガンマ分泌。
【
図7】ヒト化BCMA-CAR-T細胞が、多発性骨髄腫細胞に対して高レベルのIFN-ガンマを分泌したが、BCMA陰性のK562対照細胞に対しては分泌しなかったことを示した図である。
*p<0.05、BCMA-CAR-T細胞対T細胞およびMock-CAR-T細胞の多発性骨髄腫細胞におけるIFN-ガンマ分泌。
【
図8A】ヒト化BCMA-CAR-T細胞がRPMI8226異種移植腫瘍の増殖を顕著に減少させたことを示した図である。CAR-T細胞は、7日目と20日目にivによって、1×10^7細胞/マウスで注射した。バーは平均腫瘍体積+/-標準誤差を示す。
*p<0.05、BCMA CAR-T細胞対Mock T細胞。
【
図8B】ヒト化BCMA-CAR-T細胞はマウスの体重を減少させなかったことを示した図である。バーは平均マウス体重+/-標準偏差を示す。
【
図8C】BCMA組換えタンパク質を用いたFACSにより、Mock-Car-T細胞ではなく、ヒト化BCMA-CAR-T細胞がマウス血液中で検出されたことを示した図である。末梢血細胞は、ヒトBCMAタンパク質およびヒトT(CD4+/CD8+)細胞に特異的な抗体への結合についての研究の最後に、フローサイトメトリーによって分析した。CD4抗体に結合する細胞のパーセンテージは
図8Cの左パネルに示され、BCMAタンパク質にも結合したそれらのヒトT細胞のパーセンテージは
図8Cの右パネルに示されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
本明細書で使用したように、「キメラ抗原受容体(CAR)」は、T細胞に特定のタンパク質を標的とする新しい能力を与えるように遺伝子操作された受容体タンパク質である。抗原結合機能およびT細胞活性化機能の両方を単一の受容体に組み合わせたので、受容体はキメラである。CARは、抗原、膜貫通ドメインおよび少なくとも1つの細胞内ドメインに結合することができる細胞外ドメインを含む融合タンパク質である。「キメラ抗原受容体(CAR)」は、「キメラ受容体」、「T体」または「キメラ免疫受容体(CIR)」と呼ばれることもある。「抗原に結合することができる細胞外ドメイン」とは、ある種の抗原に結合することができる任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。「細胞内ドメイン」とは、細胞内の生物学的プロセスの活性化または阻害を引き起こすシグナルを伝達するドメインとして機能することが知られている任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。
【0009】
本明細書で使用したように、「ドメイン」は、その他の領域とは独立して特定の構造に折りたたまれている、ポリペプチド内の1つの領域を意味する。
【0010】
本明細書で使用したように、「ヒト化抗体」は、ヒトにおいて天然に産生される抗体バリアントとの類似性を高めるためにタンパク質配列が改変された非ヒト種に由来する抗体である。例えば、マウス抗体が開発された後、その抗体をコードするDNAを配列決定することができる。次に、抗体CDRに対応するDNA配列を決定することができる。このCDR配列は、ヒト化抗体を製造するためにヒト抗体バリアントのDNAを含有する構築物に挿入することができる。
【0011】
本明細書で使用したように、「1本鎖可変断片(scFv)」は、抗原に結合する能力を保持した、抗体に由来する1本鎖ポリペプチドを意味する。scFvの1例としては、組換えDNA技術により形成され、免疫グロブリン重鎖(H鎖)および軽鎖(L鎖)断片のFv領域がスペーサー配列を介して連結されている抗体ポリペプチドが挙げられる。scFvを遺伝子操作するための様々な方法が当業者には知られている。
【0012】
本明細書で使用したように、「腫瘍抗原」は、抗原性を有する生体分子を意味し、その発現はがんの原因となる。
【0013】
本発明者らは、マウスモノクローナル抗体、クローン4C8Aに由来するマウスモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖可変領域から始まるヒト化BCMA scFvを遺伝子操作した。マウス4C8A抗体は、ヒトBCMAに対して強力かつ選択的な結合を示す(6)。本発明者らは、BCMA腫瘍抗原を過剰発現するがん細胞を標的とするために、ヒト化BCMA抗体をベースにしてBCMA-CAR-T細胞を作製した。本発明のBCMA-CAR-T細胞は、いくつかのがん細胞株に対して高い細胞毒性活性を有する。
【0014】
本発明は、配列番号3のアミノ酸を有するVHおよび配列番号5のアミノ酸を有するVLを含むヒト化抗ヒトBCMA抗体を対象とする。
【0015】
一実施形態では、ヒト化抗ヒトBCMA抗体は1本鎖可変断片(scFv)である。ScFvは、VH-リンカー-VLまたはVL-リンカー-VHである。
【0016】
本発明はまた、N末端からC末端まで:(i)VHが配列番号3のアミノ酸配列を有し、VLが配列番号5のアミノ酸を有するBCMAに対する1本鎖可変断片(scFv)、(ii)膜貫通ドメイン、(iii)少なくとも1つの共刺激性ドメイン、および(iv)活性化ドメインを含むキメラ抗原受容体融合タンパク質を対象とする。
【0017】
【0018】
一実施形態では、共刺激性ドメインは、CD28、4-1BB、GITR、ICOS-1、CD27、OX-40およびDAP10からなる群から選択される。好ましい共刺激性ドメインはCD28である。
【0019】
好ましい活性化ドメインは、CD3ゼータ(CD3ZまたはCD3ζ)である。
【0020】
膜貫通ドメインは、天然ポリペプチドから得てもよいし、人工的に設計してもよい。天然ポリペプチドから得られた膜貫通ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質から得ることができる。例えば、T細胞受容体αまたはβ鎖の膜貫通ドメイン、CD3ゼータ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD154、またはGITRを使用することができる。人工的に設計された膜貫通ドメインは、主にロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を含むポリペプチドである。フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが、合成膜貫通ドメインの各端に見いだされることが好ましい。場合により、短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカー、例えば、長さが2から10アミノ酸のリンカーを、膜貫通ドメインと細胞内ドメインとの間に配置することができる。一実施形態では、グリシン-セリン連続配列を有するリンカー配列を使用することができる。
【0021】
本発明は、BCMA-CARをコードする核酸を提供する。CARをコードする核酸は、従来の方法によって、指定されたCARのアミノ酸配列から製造することができる。アミノ酸配列をコードする塩基配列は、各ドメインのアミノ酸配列の前述のNCBI参照配列番号またはジェンバンクの受入番号から取得することができ、本発明の核酸は、標準的な分子生物学的および/または化学的手法を使用して製造することができる。例えば、塩基配列に基づいて、核酸を合成することができ、本発明の核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用してcDNAライブラリーから得られるDNA断片を組み合わせることによって製造することができる。
【0022】
本発明のCARをコードする核酸はベクターに挿入することができ、このベクターは細胞に導入することができる。例えば、レトロウイルスベクター(オンコレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターおよび偽型ベクターを含む)、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、サルウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターまたはセンダイウイルスベクター、エプスタインバーウイルス(EBV)ベクターおよびHSVベクターなどのウイルスベクターを使用することができる。感染細胞内で自己複製しないようにするために、複製能力を欠くウイルスベクターを使用することが好ましい。
【0023】
例えば、レトロウイルスベクターを使用する場合、パッケージング細胞を用いてレトロウイルス粒子を製造するために、ベクターが保有するLTR配列およびパッケージングシグナル配列をベースにした適切なパッケージング細胞を選択することができる。パッケージング細胞の例には、PG13(ATCC CRL-10686)、PA317(ATCC CRL-9078)、GP+E-86およびGP+envAm-12ならびにPsi-Cripが含まれる。レトロウイルス粒子は、トランスフェクション効率の高い293細胞または293T細胞を使用して製造することもできる。レトロウイルスをベースに作製された多種のレトロウイルスベクターおよびレトロウイルスベクターのパッケージングに使用することができるパッケージング細胞は、多くの企業から広く市販されている。
【0024】
CAR-T細胞はCARを介して特定の抗原に結合し、それによってシグナルが細胞に
伝達され、その結果、細胞が活性化される。CARを発現する細胞の活性化は、宿主細胞の種類およびCARの細胞内ドメインに応じて変化し、指標として、例えば、サイトカインの放出、細胞増殖速度の改善、細胞表面分子の変化などに基づいて確認することができる。例えば、活性化された細胞からの細胞傷害性サイトカイン(腫瘍壊死因子、リンホトキシンなど)の放出は、抗原を発現する標的細胞の破壊を引き起こす。さらに、サイトカインの放出または細胞表面分子の変化は、その他の免疫細胞、例えば、B細胞、樹状細胞、NK細胞およびマクロファージを刺激する。
【0025】
CARを発現する細胞は、疾患の治療薬として使用することができる。治療薬は、CARを活性成分として発現する細胞を含み、さらに適切な賦形剤を含むことができる。
【0026】
本発明者らは、BCMAを特異的に標的とするヒト化BCMA ScFv配列をベースにしたCAR-T細胞を作製した。本発明者らは、BCMA腫瘍抗原を過剰発現するがん細胞を標的とするためにヒト化BCMA-CAR-T細胞を作製した。本発明のヒト化BCMA-CAR-T細胞は、多発性骨髄腫がん細胞に対して高レベルのサイトカインを分泌し、CHO-BCMA陽性標的細胞を致死させるが、対照の親CHO細胞を制御しない。
【0027】
対応するマウスScFv配列に対する本発明のヒト化BCMA-ScFvの利点には、ヒト化BCMA scFv配列のおかげでヒトに対する免疫原性が低いことが挙げられる。したがって、本発明のヒト化BCMA抗体は、多くの臨床応用における治療薬として非常に強力で有利である。
【0028】
本発明のヒト化BCMA ScFvは、免疫療法の適用:毒素/薬物結合抗体、モノクローナル治療用抗体およびCAR-T細胞免疫療法のために使用することができる。
【0029】
本発明のヒト化BCMA ScFvを使用するヒト化BCMA-CAR-T細胞は、卵巣がん、結腸がん、膵臓がん、黒色腫、子宮頸がんおよびその他のBCMA陽性がんなどのBCMA陽性がん細胞株におけるBCMA抗原を効果的に標的とする。
【0030】
ヒト化BCMA-CAR-T細胞は、様々な化学療法:チェックポイント阻害剤、標的療法、低分子阻害剤および抗体と組み合わせて使用することができる。
【0031】
ヒト化BCMA-CAR-T細胞は、BCMA陽性がん細胞のために臨床的に使用することができる。
【0032】
CD28、4-1BBなどの共活性化ドメインの改変を使用して、CAR-T細胞の有効性を高めることができる。タグ結合ヒト化BCMA scFvはCAR生成に使用することができる。
【0033】
ヒト化BCMA-CAR-T細胞は、t-EGFR、RQR(リツキシマブ-CD34-リツキシマブ)、誘導性カスパーゼ-9などの様々な安全スイッチを用いて使用することができる。
【0034】
第3世代CAR-Tまたはその他の共活性化シグナル伝達ドメインをヒト化BCMA-scFvと共に使用して、BCMA-CAR-Tを製造することができる。
【0035】
ヒト化BCMA CARは、その他の腫瘍抗原または腫瘍微小環境、例えば、VEGFR-1-3、PDL-1を標的とするCARと組み合わせることができる。BCMAおよびCD3またはその他の抗原に対する二重特異性抗体を療法のために生成することができ
る。
【0036】
ヒト化BCMA-CARは、BCMA陽性がんを標的とすることができるCAR-ナチュラルキラー(NK)細胞、BCMA-CAR-マクロファージ、同種異系CAR-T細胞、遺伝子編集T細胞およびその他のBCMA-CAR造血細胞などのその他の種類の細胞の生成のために使用することができる。
【0037】
本発明は、BCMA-CARを発現するように改変されたT細胞、NK細胞、マクロファージまたは造血細胞を提供する。
【0038】
BCMA-CAR-T細胞は、化学療法に対して最も耐性があり、攻撃的な腫瘍を形成するがん幹細胞および循環腫瘍幹細胞に対して使用することができる。
【0039】
BCMA-CAR-T細胞、BCMA-NK細胞、BCMA-マクロファージおよびその他の細胞は、様々な種類のがんを標的とするために使用することができる。
【0040】
BCMA-CAR-T細胞は、安全性を高めるために患者の腫瘍内に送達することができる。
【0041】
以下の実施例はさらに本発明を例示する。これらの実施例は、本発明を例示することのみを目的としており、限定的であると解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0042】
ヒト化BCMA VHおよびVLおよびscFv配列
BCMA scFvは、ハイブリドーマクローン4C8Aから得られた(国際公開第2019/195017号パンフレット)。マウスクローン4C8Aの重鎖および軽鎖可変領域の配列は決定され、ヒト化scFvを構築するために使用された。
【0043】
ヒト化BCMA(PMC306)scFvの構造は、VH-リンカー-VLであった。リンカーは、G4S×3であった。
【0044】
太字は、ヒト化BCMA PMC306ScFvクローン:V
Hのヌクレオチド配列を強調する;下線はV
Lのヌクレオチド配列を強調する。その間(イタリック体)は、リンカーをコードするヌクレオチド配列である。
【化1】
【0045】
PMC306 VHアミノ酸配列:(配列番号3)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTSYVMHWVRQAPGQGLEWMGYIIPYNDATKYNEKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARYNYDGYFDVWGQGTLVTVSS
【0046】
リンカーアミノ酸配列(配列番号4)
GGGGSGGGGSGGGGS
【0047】
PMC306 VLアミノ酸配列:(配列番号5)
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSISDYLHWYQQKPGQAPRLLIYYASQSITGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQNGHSFPPTFGGGTKVEIK
【0048】
ヒト化BCMA(PMC306)scFvタンパク質:(配列番号6)
【化2】
【実施例2】
【0049】
ヒト化BCMA-CAR配列
ヒト化(PMC306)BCMA-CAR構築物の設計図は
図3に示されている。ヒト化scFv CAR配列のクローニングには、EF1aプロモーターを備えたレンチウイルスベクターを使用した。
【0050】
BCMA-CAR構造には、ヒトCD8シグナルペプチド、ヒト化BCMA scFv(V
H-リンカーV
L)、CD8ヒンジ、CD28膜貫通、活性化ドメインCD3ゼータが含まれる(
図3)。
【0051】
CD8シグナリング-BCMA scFv(VH-リンカー-VL)-CD8ヒンジ-CD28TM-CD28-CD3-ゼータのヌクレオチド配列およびいくつかのアミノ酸配列を以下に示した。
【0052】
<CD8リーダー>
ヌクレオチド
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCG(配列番号7)
【0053】
アミノ酸
MALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号8)
【0054】
<NheI部位>
gctagc
【0055】
<ヒト化BCMA、PMC306scFv>
VH-リンカーVL、核酸配列およびアミノ酸配列については実施例1を参照すること。
【0056】
<XhoI制限部位>
CTCGAG
【0057】
<CD8ヒンジ>
ヌクレオチド
AAGCCCACCACGACGCCAGCGCCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGAGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCAGTGAT(配列番号9)
【0058】
アミノ酸
KPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEASRPAAGGAVHTRGLDFASD(配列番号10)
【0059】
<aagccc>
【0060】
<CD28膜貫通>
ヌクレオチド
TTTTGGGTGCTGGTGGTGGTTGGTGGAGTCCTGGCTTGCTATAGCTTGCTAGTAACAGTGGCCTTTATTATTTTCTGGGTG(配列番号11)
【0061】
アミノ酸
FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号12)
【0062】
<CD28共刺激性>
ヌクレオチド
AGGAGTAAGAGGAGCAGGCTCCTGCACAGTGACTACATGAACATGACTCCCCGCCGCCCCGGGCCCACCCGCAAGCATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCC(配列番号13)
【0063】
アミノ酸
RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号14)
【0064】
<CD3ゼータ>終止コドンに下線
ヌクレオチド
AGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGCAGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGCTAAtag (配列番号15)
【0065】
アミノ酸
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号16)
【0066】
<EcoRI制限部位>
gaattc
【0067】
ヒト化BCMA-CARタンパク質の翻訳したアミノ酸配列(配列番号17)
M A L P V T A L L L P L A L L L H A A R P A S Q V Q L V Q S G A E V K K P G S S V K V S C K A S G Y T F T S Y V M H W V R Q A P G Q G L E W M G Y I I P Y N D A T K Y N E K F K G R V T I T A D K S T S T A Y M E L S S L R S E D T A V Y Y C A R Y N Y D G Y F D V W G Q G T L V T V S S G G G G S G G G G S G G G G S E I V L T Q S P A T L S L S P G E R A T L S C R A S Q S I S D Y L H W Y Q Q K P G Q A P R L L I Y Y A S Q S I T G I P A R F S G S G S G T D F T L T I S S L E P E D F A V Y Y C Q N G H S F P P T F G G G T K V E I K L E K P T T T P A P R P P T P A P T I A S Q P L S L R P E A S R P A A G G A V H T R G L D F A S D K P F W V L V V V G G V L A C Y S L L V T V A F I I F W V R S K R S R L L H S D Y MN M T P R R P
G P T R K H Y Q P Y A P P R D F A A Y R
S R V K F S R S A D A P A Y Q Q G Q N Q
L Y N E L N L G R R E E Y D V L D K R R
G R D P E M G G K P Q R R K N P Q E G L
Y N E L Q K D K M A E A Y S E I G M K G
E R R R G K G H D G L Y Q G L S T A T K
D T Y D A L H M Q A L P P R(配列番号17)
【実施例3】
【0068】
CARレンチウイルス作製
レンチウイルスは、[7]に記載されているように、293T細胞を使用した標準的手順によって作製された。本発明者らは、レンチウイルスベクター内に、レンチウイルスベクターのXbaIおよびEcoRI部位にクローニングされたヒト化BCMA-ScFv-CAR構築物を生成した。pCD510-FMC63-28zレンチウイルスCAR構築物は、XbaIとEcoRIのクローニング部位の間に、ヒト化BCMA ScFv-CD28-CD3ゼータ挿入物を含有していた。
【0069】
レンチウイルスは293T細胞中で生成され、力価はRT-PCRによって確立された。次に、等用量のレンチウイルスをT細胞の形質導入のために使用した。
【実施例4】
【0070】
全血からの末梢血単核細胞(PBMC)の単離
全血(Stanford Hospital Blood Center、Stanford、CA)は、個体または混合ドナー(必要な血液量に応じて)から10mLのヘパリンバキュテナー(Becton Dickinson)中に収集した。全抗凝固血液約10mlを滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液と混合し、50ml遠心管(PBS、pH7.4、Ca+2およびMg+2を含まない)中において総体積を20mlにし
た。血液/PBS(20ml)をコニカル遠心分離管中のFicoll-PaquePLUS(GE Healthcare)15mLの上部に静かに重層し、サンプルを室温で400×gで30~40分間遠心分離した。希釈血漿/フィコール界面の末梢血単核細胞(PBMC)を含有する細胞の層を取り出し、洗浄し、室温で200×gで10分間遠心分離した。細胞を血球計数器で計数した。PBMCを、5%AB血清およびアンホテリシンB(Gemini Bioproducts、CA)1.25μg/mL、ペニシリン100U/mLおよびストレプトマイシン100μg/mLを含むCAR-T培地(AIM V-AlbuMAX(BSA)(Life Technologies)で1回洗浄し、実験に使用するか、または-80℃で凍結した。
【実施例5】
【0071】
PBMCからのT細胞活性化
単離したPBMC細胞は、huIL2(1000×ストックから;Invitrogen)300U/mLを含むCAR-T培地に再懸濁し、CD3-CD28ビーズとビーズ対細胞比1:1で混合した。細胞は、ウイルス形質導入の前に、CO2の存在下で37℃で24時間インキュベートした。
【実施例6】
【0072】
T細胞形質導入および増殖
PBMCの活性化後、細胞を37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。1×106細胞の各ウェルに、レンチウイルス5×106およびTransplus培地(Alstem、Richmond、CA)(最終希釈率1:500)2μL/mLを添加した。ウイルスの添加を繰り返す前に、細胞をさらに24時間インキュベートした。次に、細胞を、IL-2を含むIL-2新鮮培地300U/MLの継続的な存在下で、12~14日間増殖させた(総インキュベーション時間は、必要なCAR-T細胞の最終数に応じた)。細胞濃度は2~3日ごとに分析し、その時点で培地を添加して細胞懸濁液を1×106細胞/mLに希釈した。
【実施例7】
【0073】
ヒト化BCMA-CAR-T細胞はBCMA scFvを発現した。
本発明者らは、実施例2に示したヒト化BCMA-CART構築物を用いて、ヒト化BCMA-CAR-T細胞を設計した。無関係のScFvと共にMock scFvを使用し、陰性対照としてMock-CAR-T細胞を生成した。レンチウイルスのヒト化BCMA-CARをT細胞に形質導入した後、ヒト化BCMA-CAR陽性細胞が検出された(
図4)。
【実施例8】
【0074】
ヒト化BCMA-CAR-T細胞はCHO-BCMA細胞を致死させたが、CHO細胞は致死させなかった。
本発明者らは、ヒト化BCMA-CAR-T細胞を標的CHO-BCMA細胞およびCHO(BCMA陰性)対照細胞と共にインキュベートした。ヒト化BCMA-CAR-T細胞はCHO-BCMA細胞を特異的に致死させた(
図5A)が、CHO細胞は致死させなかった(
図5B)。結果は、BCMA抗原を標的とし、BCMA陽性細胞を致死させるためのヒト化BCMA-CAR-T細胞の高い特異性を示す。
【実施例9】
【0075】
ヒト化CAR-T細胞は、標的CHO-BCMA細胞に対してIFN-ガンマを顕著に分泌したが、CHO細胞に対しては分泌しなかった。
本発明者らは、ヒト化BCMA-CAR-T細胞と標的CHO-BCMAおよび親CHO細胞の同時インキュベーション後に上清を収集し、IFN-ガンマアッセイを実施した
。BCMA-CAR-T細胞は、CHO-BCMA細胞ではIFN-ガンマを分泌したが、陰性対照CHO細胞では分泌しなかった(
図6)。結果は、ヒト化BCMA-CAR-T細胞の特異性を立証した。
【実施例10】
【0076】
ヒト化CAR-T細胞は、BCMA陽性RPMI8266多発性骨髄腫細胞に対して高レベルのIFN-ガンマを分泌したが、BCMA陰性K562白血病細胞に対しては分泌しなかった。
本発明者らは、BCMA-CAR-T細胞を多発性骨髄腫がん細胞RPMI8266およびBCMA陰性K562細胞(慢性骨髄性白血病細胞)と共にインキュベートし、IFN-ガンマについてFisherのキットを使用して製造元の手順に従ってELISAを実施した。ヒト化BCMA-CAR-T細胞は、BCMA陽性多発性骨髄腫がん細胞に対して高レベルのIFN-ガンマを分泌したが、BCMA陰性K562細胞に対しては分泌しなかった(
図7)。死滅のレベルおよびIFN-ガンマの分泌は、T細胞およびMock CAR-T細胞よりもBCMA-CAR-T細胞の方が顕著に高かった。これは、造血BCMA陽性細胞に対するヒト化BCMA-CAR-T細胞の特異性を立証している。
【実施例11】
【0077】
ヒト化BCMA-CAR-T細胞は、インビボにおいてマウスモデルでRPMI8226異種移植腫瘍の増殖を顕著に減少させた。
多発性骨髄腫RPMI8226細胞をNSGマウス(1×10^7細胞/マウス)に皮下注射した後、ヒト化BCMA-CAR-T細胞をivによって(1×10^7CAR-T細胞/マウス)2回注射した。ヒト化BCMA-CAR-T細胞は、マウスにおけるRPMI8226腫瘍の増殖を顕著に減少させた(
図8A)。ヒト化BCMA-CAR-T細胞で治療したマウスは、マウスの体重減少を引き起こさなかったので、CAR-T細胞はマウスに対して毒性がないことが示唆された(
図8B)。研究中、行動や目に見える変化は観察されなかった。
【0078】
末梢血細胞は、ヒトBCMAタンパク質およびヒトT(CD4+/CD8+)細胞に特異的な抗体への結合についての研究の最後に、フローサイトメトリーによって分析した。CD4mAb抗体に結合する細胞のパーセンテージは
図8Cの左パネルに示され、BCMAタンパク質にも結合したそれらのヒトT細胞のパーセンテージは
図8Cの右パネルに示されている。結果は、BCMA組換えタンパク質を用いたFACSにより、Mock-Car-T細胞ではなく、ヒト化BCMA-CAR-T細胞がマウス血液中で検出されたことを示す。
【0079】
参考文献
1. Maus, M.V., Haas, A.R., Beatty, G.L., Albelda, S.M., Levine, B.L., Liu, X., Zhao, Y., Kalos, M., and June, C.H. (2013). T cells expressing chimeric antigen receptors can cause anaphylaxis in humans. Cancer Immunol Res 1, 26-31.
2. Maus, M.V., Grupp, S.A., Porter, D.L., and June, C.H. (2014). Antibody-modified T cells: CARs take the front seat for hematologic malignancies. Blood 123, 2625-2635.
3. Golubovskaya V, Wu L. (2016) Different Subsets of T Cells, Memory, Effector
Functions, and CAR-T Immunotherapy. Cancers, 15, 8 (3). PMID: 26999211
4. Ali, S.A., Shi, V., Maric, I., Wang, M., Stroncek, D.F., Rose, J.J., Brudno,
J.N., Stetler-Stevenson, M., Feldman, S.A., Hansen, B.G., et al. (2016). T cells expressing an anti-B-cell maturation antigen chimeric antigen receptor cause remissions of multiple myeloma. Blood 128, 1688-1700.
5. Tai, Y.T., and Anderson, K.C. (2015). Targeting B-cell maturation antigen in
multiple myeloma. Immunotherapy. 7(11):1187-99. doi: 10.2217/imt.15.77. Epub 2015 Sep 15. Review. PMID: 26370838
6. WO2019/195017
7. Berahovich R, Xu S, Zhou H, Harto H, Xu Q, Garcia A, Liu F, Golubovskaya VM,
Wu L. FLAG-tagged CD19-specific CAR-T cells eliminate CD19-bearing solid tumor cells in vitro and in vivo. Front Biosci (Landmark Ed). 2017 Jun 1;22: 1644-1654
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