IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立国際電気の特許一覧

特許7492595監視システム、解析装置及びAIモデル生成方法
<>
  • 特許-監視システム、解析装置及びAIモデル生成方法 図1
  • 特許-監視システム、解析装置及びAIモデル生成方法 図2
  • 特許-監視システム、解析装置及びAIモデル生成方法 図3
  • 特許-監視システム、解析装置及びAIモデル生成方法 図4
  • 特許-監視システム、解析装置及びAIモデル生成方法 図5
  • 特許-監視システム、解析装置及びAIモデル生成方法 図6
  • 特許-監視システム、解析装置及びAIモデル生成方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】監視システム、解析装置及びAIモデル生成方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240522BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240522BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240522BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H04N7/18 D
H04N7/18 K
G06N20/00
G06T7/00 350B
G08B25/00 510M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022550252
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2020035228
(87)【国際公開番号】W WO2022059122
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 海斗
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 圭吾
【審査官】鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】特許第6573297(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0160207(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2152237(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G06N 20/00
G06T 7/00
G08B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AIモデルを用いて映像解析を行う機能を持つ複数のカメラと、前記カメラで使用されるAIモデルを生成する解析装置とを備えた監視システムであって、
前記解析装置は、前記複数のカメラのそれぞれで得られた映像及び解析結果に基づいて、前記複数のカメラで使用できる汎用AIモデルを生成し、前記汎用AIモデルをカメラ毎に調整することで、そのカメラの設置環境又は撮影環境に応じた専用AIモデルを生成し、前記複数のカメラのそれぞれに前記汎用AIモデル又は前記専用AIモデルを送信することを特徴とする監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視システムにおいて、
前記解析装置は、前記専用AIモデルの対象となるカメラで得られた映像及び解析結果を用いて前記汎用AIモデルを調整することで、前記専用AIモデルを生成することを特徴とする監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の監視システムにおいて、
前記解析装置は、前記専用AIモデルの生成において、前記対象のカメラで得られた映像及び解析結果を均等以上の割合で用いることを特徴とする監視システム。
【請求項4】
カメラ内で映像解析に使用されるAIモデルを生成する解析装置であって、
複数のカメラのそれぞれで得られた映像及び解析結果に基づいて、前記複数のカメラで使用できる汎用AIモデルを生成する処理と、
前記汎用AIモデルをカメラ毎に調整することで、そのカメラの設置環境又は撮影環境に応じた専用AIモデルを生成する処理と、
前記複数のカメラのそれぞれに前記汎用AIモデル又は前記専用AIモデルを送信する処理とを行うことを特徴とする解析装置。
【請求項5】
カメラ内で映像解析に使用されるAIモデルを生成するAIモデル生成方法であって、
解析装置が、複数のカメラのそれぞれで得られた映像及び解析結果に基づいて、前記複数のカメラで使用できる汎用AIモデルを生成するステップと、
前記解析装置が、前記汎用AIモデルをカメラ毎に調整することで、そのカメラの設置環境又は撮影環境に応じた専用AIモデルを生成するステップと、
前記解析装置が、前記複数のカメラのそれぞれに前記汎用AIモデル又は前記専用AIモデルを送信するステップとを有することを特徴とするAIモデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AIモデルを用いて映像解析する機能を持つ複数のカメラを備えた監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラ等の撮像装置を用いて24時間の映像監視を提供する映像監視システムが普及している。近年では、監視員による有人監視以外に、AI(Artificial Intelligence)を用いて監視を行う技術が検討されている。AIを用いた映像監視システムは、例えば、特定物体が出現した映像及び時間などの必要最小限の情報のみを保存する機能、表示装置による警告アイコンの表示及びブザーの鳴動などにより監視員の注意を促す機能を備えている。このため、AIを用いた映像監視システムは、常時確認が必要であった従来方式に比べ、監視業務の負担軽減に役立つ。
【0003】
顔検知及びナンバープレート検知などの古くから研究されている解析は、カメラ内でのリアルタイム処理が可能になるように、低演算量の解析に関する最適化が進められている。これに対し、深層学習(Deep Learning)を主とするAI解析は、計算量が膨大になるため、専用の解析サーバ又はクラウドを用いて実現されることが多い。また、近年では、組み込み用のAIチップが開発されており、一部のAI解析についてはカメラ内部でリアルタイムに処理できるようになりつつある。例えば、特許文献1には、複数の学習モデルを切り替え可能に有するカメラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6641446号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
AIを用いた映像監視システムにおいて、AI解析精度(例えば、特定物体の検知精度)は非常に重要な要素となる。従来方式のAI映像監視システムとして、複数のカメラの各々で得られた映像に対してサーバ又はクラウドでAI解析を行うシステムや、各々のカメラ内部でAI解析を行うシステムが構築されている。しかしながら、これらのAI映像監視システムでは、全てのカメラ映像に対して共通のAIモデルが適用されるため、カメラの設置環境によっては、画角、被写体までの距離、背景などの様々な要因により解析精度が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、AIモデルを用いて映像解析する機能を持つ複数のカメラを備えた監視システムにおける映像解析の性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る監視システムは以下のように構成される。
すなわち、本発明に係る監視システムは、AIモデルを用いて映像解析を行う機能を持つ複数のカメラと、カメラで使用されるAIモデルを生成する解析装置とを備え、解析装置は、複数のカメラのそれぞれで得られた映像及び解析結果に基づいて、複数のカメラで使用できる汎用AIモデルを生成し、汎用AIモデルをカメラ毎に調整することで、そのカメラでの映像解析に適した専用AIモデルを生成し、複数のカメラのそれぞれに汎用AIモデル又は専用AIモデルを送信することを特徴とする。
【0008】
ここで、解析装置は、専用AIモデルの対象となるカメラで得られた映像及び解析結果を用いて汎用AIモデルを調整することで、専用AIモデルを生成してもよい。
【0009】
また、解析装置は、専用AIモデルの生成において、対象のカメラで得られた映像及び解析結果を均等以上の割合で用いてもよい。
【0010】
また、本発明は、カメラ内で映像解析に使用されるAIモデルを生成する解析装置として実現することもできる。すなわち、本発明に係る解析装置は、複数のカメラのそれぞれで得られた映像及び解析結果に基づいて、複数のカメラで使用できる汎用AIモデルを生成する処理と、汎用AIモデルをカメラ毎に調整することで、そのカメラでの映像解析に適した専用AIモデルを生成する処理と、複数のカメラのそれぞれに汎用AIモデル又は専用AIモデルを送信する処理とを行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、カメラ内で映像解析に使用されるAIモデルを生成するAIモデル生成方法として実現することもできる。すなわち、本発明に係るAIモデル生成方法は、解析装置が、複数のカメラのそれぞれで得られた映像及び解析結果に基づいて、複数のカメラで使用できる汎用AIモデルを生成するステップと、解析装置が、汎用AIモデルをカメラ毎に調整することで、そのカメラでの映像解析に適した専用AIモデルを生成するステップと、解析装置が、複数のカメラのそれぞれに汎用AIモデル又は専用AIモデルを送信するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、AIモデルを用いて映像解析する機能を持つ複数のカメラを備えた監視システムにおける映像解析の性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る監視システムの概略的な構成を示す図である。
図2】AIカメラの構成例を示す図である。
図3】解析装置の構成例を示す図である。
図4】侵入者検知の処理フロー例を示す図である。
図5】AIモデル更新の処理フロー例を示す図である。
図6】汎用AIモデルを生成する手順を説明する図である。
図7】専用AIモデルを生成する手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る監視システムについて、図面を参照して説明する。以下では、監視エリアにおける侵入者の検知を目的とした監視システムを例にして説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る監視システムの構成例を示してある。本例の監視システムは、1台以上(図1ではN台)のAIカメラ101と、解析装置102と、1台以上(図1ではM台)のPC103と、発報装置104と、携帯端末105とを備え、インターネット等の通信網を介して互いに通信可能に接続されている。なお、発報装置104及び携帯端末105なども、1台以上が設けられてもよい。
【0015】
AIカメラ101は、監視エリアの撮影だけでなく、その映像をAIモデルに基づいて解析する機能を持つ撮像装置である。AIモデルとしては、複数のAIカメラで使用できる汎用AIモデルと、それぞれのAIカメラに特化した専用AIモデルがあり、いずれかのAIモデルが各AIカメラ101に設定されている。また、AIカメラ101には、各々を識別する識別子(例えば、カメラ番号)が関連付けられており、解析装置102やPC103などの他の装置との通信データに付加される。
【0016】
解析装置102は、それぞれのAIカメラ101で得られた映像及び解析結果を記憶すると共に、これらの解析結果を統合及び再解析する。また、解析装置102は、複数のAIカメラ101のそれぞれで得られた映像及び解析結果に基づいて汎用AIモデルを生成する処理と、汎用AIモデルをAIカメラ毎に調整することでカメラ個別の専用AIモデルを生成する処理と、複数のAIカメラ101のそれぞれに汎用AIモデル又は専用AIモデルを送信する処理とを行う。
【0017】
PC103は、ユーザ操作に応じてAIカメラ101又は解析装置102にアクセスし、過去又は現在の監視エリアの映像及び解析結果などを表示する。発報装置104は、AIカメラ101から侵入者検知時に送信される検知信号に応じてアラームを発報する。携帯端末105は、AIカメラ101から侵入者検知時に送信される映像及び解析結果を表示する。ここで、AIカメラ101の解析結果には、映像内における侵入者の検知座標、検知人数、検知属性(侵入者の性別、年齢、身長、国籍など)、検知日時、検知場所の1つ以上が含まれる。
【0018】
図2には、AIカメラ101の構成例を示してある。AIカメラ101は、映像受信部201、AI解析部203、データ送信部204、データ保存部205、AIモデル受信部207、AIモデル更新部208などの機能部と、AIモデルメモリ202、映像・解析結果保存装置206などの記憶部を有する。また、AIカメラ101は、ハードウェアとして、レンズなど光学系の補正処理及び鮮明化処理などを行うISP(Image Signal Processor)、AI解析を高速に行うためのGPU(Graphics Processing Unit)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)、或いは、これらに代わるその他のAIチップを備えている。
【0019】
映像受信部201は、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)などのイメージセンサから映像を取得する。AI解析部203は、映像受信部201で取得した映像をAIモデルメモリ202内のAIモデル(つまり、汎用AIモデル又は専用AIモデル)により解析する。データ送信部204は、映像受信部201で取得した映像及びAI解析部203による解析結果などのデータを送信する。データ保存部205は、映像受信部201で取得した映像及びAI解析部203による解析結果などのデータを映像・解析結果保存装置206に保存する。AIモデル受信部207は、解析装置102からAIモデルを受信する。AIモデル更新部208は、AIモデル受信部207で受信したAIモデルで、AIモデルメモリ202内のAIモデルを更新する。
【0020】
図3には、解析装置102の構成例を示してある。解析装置102は、データ受信部301、解析部302、データ保存部303、学習データ生成部305、AIモデル生成部307、AIモデル送信部309などの機能部と、映像・解析結果保存装置304、学習データメモリ306、AIモデルメモリ308などの記憶部を有する。また、解析装置102は、ハードウェアとしてCPU(Central Processing Unit)、GPU、FPGAなどを備えた、電子計算機システムもしくはクラウドにより構成され、各機能部の処理(後述)を実行する。
【0021】
データ受信部301は、AIカメラ101から送信される映像及び解析結果などのデータを受信する。解析部302は、データ受信部301で受信した映像及び解析結果に基づいて再解析を行う。解析部302による再解析は、例えば、AIカメラ101での解析よりも詳細な解析や、複数のAIカメラ101の映像を用いた総合的又は横断的な解析である。データ保存部303は、データ受信部301で受信した映像及び解析結果、解析部302で再解析したデータなどを映像・解析結果保存装置304に保存する。学習データ生成部305は、映像・解析結果保存装置304に保存されている映像及び解析結果などを用いてAIモデル用の学習データを生成し、学習データメモリ306に格納する。AIモデル生成部307は、学習データメモリ306内の学習データを用いてAIモデルを生成し、AIモデルメモリ308に格納する。AIモデル送信部309は、AIモデルメモリ308内のAIモデルをAIカメラ101に送信する。
【0022】
図4には、本例の監視システムによる侵入者検知の処理フロー例を示してある。各AIカメラ101は、映像解析部203にて、AIモデルメモリ202内のAIモデルを用いて、映像受信部201で取得した撮影映像のAI解析による侵入者検知処理を行い(ステップS101)、侵入者が検知されたか否かを判定する(ステップS102)。侵入者検知は、例えば、顔認証、背景差分、深層学習による人物検知、骨格検知、セグメンテーションなどを用いてもよい。
【0023】
侵入者が検知された場合、AIカメラ101は、侵入者が検知されたことを監視員などに報せるために、検知信号及び解析結果を発報装置104に送信し(ステップS103)、また、侵入者を検知した瞬間の前後数秒の映像及び解析結果を携帯端末105に送信する(ステップS104)。これらデータの送信手段としては、例えば、有線LANや、Wi-Fi,LTE,5Gなどを含む無線LAN、接点などを用いることができる。AIカメラが送信する映像は、侵入者を検知した瞬間のスナップショット(静止画)でもよい。
【0024】
また、AIカメラ101は、送信した映像及び解析結果のデータと同じものを、内蔵の映像・解析結果保存装置206に保存する(ステップS105)。なお、データを保存するタイミングは、映像及び解析結果などのデータを送信する前でもよい。発報装置104は、AIカメラ101から検知信号及び解析結果を受信すると、アラームを発報する(ステップS106)。アラームの発報は、例えば、予め録音された音声、アラーム音、非常ベル、回転灯を用いた発光などを用いて行うことができる。携帯端末105は、AIカメラ101から映像及び解析結果を受信すると、受信した映像と侵入者の検知を報せるメッセージを携帯端末105の画面に表示する(ステップS107)。
【0025】
その後、AIカメラ101は、侵入者の検知結果に関わらず、映像及び解析結果を解析装置102に送信する(ステップS108)。解析装置102は、AIカメラ101から受信した映像及び解析結果を内蔵の映像・解析結果保存装置304に保存する(ステップS109)。なお、映像・解析結果保存装置304に保存した映像及び解析結果は、後述するように、学習データやAIモデルを生成するために用いられる。
【0026】
また、PC103は、AIカメラ101及び解析装置102へのアクセスが常時可能である。このため、PC103を使用して、AIカメラ101がリアルタイムに配信する映像及び解析結果を参照したり、AIカメラ101内の映像・解析結果保存装置206又は解析装置102内の映像・解析結果保存装置304に保存されている過去の映像及び解析結果を参照したりすることができる。
【0027】
図5には、本例の監視システムによるAIモデル更新の処理フロー例を示してある。ここで、上述した侵入者検知の処理フロー(図4)によって、複数のAIカメラ101で得られた映像及び解析結果が解析装置102に送信され、解析装置102内の映像・解析結果保存装置304に保存されているものとする。ここでは、複数のAIカメラ101のうち、AIカメラ(1)とAIカメラ(2)に着目して説明する。
【0028】
解析装置102は、映像・解析結果保存装置304に保存されている映像及び解析結果に基づいて汎用AIモデルを生成する(ステップS201)。解析装置102は、生成した汎用AIモデルをAIカメラ(1)及びAIカメラ(2)に送信する(ステップS202,S203)。AIカメラ(1)及びAIカメラ(2)は、モデル受信部207で汎用AIモデルを受信すると、AIモデル更新部208にて、AIモデルメモリ202内のAIモデルを受信した汎用AIモデルで更新する(ステップS204,S205)。
【0029】
次に、解析装置102は、AIカメラ(1)専用AIモデルが必要か否かを判定し(ステップS206)、必要な場合には、AIカメラ(1)専用AIモデルを生成してAIカメラ(1)に送信する(ステップS207,S208)。AIカメラ(1)は、AIモデルメモリ202内のAIモデルを受信したAIカメラ(1)専用AIモデルで更新する(ステップS209)。同様に、解析装置102は、AIカメラ(2)専用AIモデルが必要か否かを判定し(ステップS210)、必要な場合には、AIカメラ(2)専用AIモデルを生成してAIカメラ(2)に送信する(ステップS211,S212)。AIカメラ(2)は、AIモデルメモリ202内のAIモデルを受信したAIカメラ(2)専用AIモデルで更新する(ステップS213)。
【0030】
ここで、専用AIモデルの必要性は、AIカメラ毎に事前に設定されているものとする。例えば、一般的な撮影環境に設置されたAIカメラは専用AIモデルが不要な設定とされ、特殊な撮影環境に設置されたAIカメラについては専用AIモデルが必要な設定とされる。なお、専用AIモデルの必要性は、他の手法で決定してもよい。例えば、各AIカメラの解析性能を評価し、解析性能が基準を満たさないAIカメラに対して専用AIモデルが必要と判定してもよい。
【0031】
次に、汎用AIモデルを生成する手順について、図6を用いて説明する。汎用AIモデルを生成する場合、解析装置102は、映像・解析結果保存装置304に保存されている全てのAIカメラ101の映像及び解析結果を用いて、学習データ生成部305により汎用学習データを生成し、学習データメモリ306に格納する。その後、学習データメモリ306内の汎用学習データを用いて、AIモデル生成部307により汎用AIモデルを生成し、AIモデルメモリ308に格納する。全てのAIカメラで得られた映像及び解析結果が均等に含まれる汎用学習データを用いることで、複数のAIカメラで使用できる汎用AIモデルを生成することができる。つまり、全てのAIカメラで得られた知見を有する汎用AIモデルを生成することができる。
【0032】
次に、専用AIモデルを生成する手順について、図7を用いて説明する。専用AIモデルを生成する場合、解析装置102は、映像・解析結果保存装置304に保存されている各AIカメラ101の映像及び解析結果を用いて、学習データ生成部305によりAIカメラ個別の専用学習データを生成し、学習データメモリ306に格納する。その後、学習データメモリ306内の専用学習データを用いて、AIモデル生成部307により汎用AIモデルを初期パラメータとしてファインチューニング又は転移学習を行うことでAIカメラ個別の専用AIモデルを生成し、AIモデルメモリ308に格納する。図7の例では、AIカメラ(1)~AIカメラ(N)に対応するN個の専用学習データを用いて、N個の専用AIモデルを生成している。
【0033】
このとき、専用学習データとして、専用AIモデルの対象となるAIカメラで撮影した映像及び解析結果を用いる割合を増やすことで、そのAIカメラの撮影条件(例えば、画角、被写体までの距離、背景など)に適した専用AIモデルを生成できる。特に、対象のAIカメラで撮影した映像及び解析結果を均等以上の割合で用いることで、そのAIカメラの撮影条件に特化した専用AIモデルを生成できる。
【0034】
ここで、上記の汎用学習データ及び専用学習データの生成に際し、学習データ生成部305では、アノテーションツールを用いて人手により学習データを生成してもよく、自動的に学習データを生成してもよい。また、解析結果を参照することで、関連する映像に対して、映像内における侵入者の検知座標、検知人数、検知属性、検知日時、検知場所に対してフィルタリングを行ってもよい。
【0035】
上述したAIモデルの更新は、監視システムの運用過程で、任意のタイミングで繰り返される。AIモデルを更新するタイミングとしては、例えば、事前に設定された定期的なタイミング、所定量の学習データが得られたタイミング、管理者等による指示があったタイミング、解析性能の評価値が閾値を下回ったタイミングなどが挙げられる。
【0036】
以上のように、本例の監視システムは、AIモデルを用いて映像解析を行う機能を持つ複数のAIカメラ101と、AIカメラ101で使用されるAIモデルを生成する解析装置102とを備え、解析装置102が、複数のAIカメラ101のそれぞれで得られた映像及び解析結果に基づいて、複数のAIカメラで使用できる汎用AIモデルを生成し、汎用AIモデルをAIカメラ毎に調整することで、そのAIカメラでの映像解析に適した専用AIモデルを生成し、複数のAIカメラ101のそれぞれに汎用AIモデル又は専用AIモデルを送信する構成となっている。
【0037】
このような構成によれば、全てのAIカメラで得られた知見を有する汎用AIモデルと、AIカメラそれぞれの撮影環境を考慮した専用AIモデルを生成して、各AIカメラで映像解析に使用されるAIモデルを更新することができる。従って、一般的な撮影環境のAIカメラ(汎用AIモデルを使用)における解析性能を向上させることができるだけでなく、特殊な撮影環境のAIカメラ(専用AIモデルを使用)における解析性能を向上させることができる。その結果、監視システム全体の解析性能を向上させることができる。
【0038】
また、AIモデルの更新を繰り返すことで、AIカメラの解析性能を徐々に改善していくことができる。また、AIカメラの撮影環境が経時的に変化する場合にも、その変化にAIモデルを追従させることが可能となる。また、本システムは、AIカメラの増設又は交換などを行う場合にも有効である。すなわち、例えば、AIカメラの設置当初は汎用AIモデルを使用し、そのAIカメラによる映像及び解析結果が十分得られた後に専用AIモデルに切り替えるようにしてもよい。
【0039】
ここで、本例の監視システムでは、1台のAIカメラに1つのAIモデルが設定されるが、別の例として、1台のAIカメラに複数のAIモデルを切り替え可能に設定してもよい。すなわち、例えば、天気、季節、時間帯などに対応付けて複数の汎用AIモデル又は専用AIモデルをAIカメラに設定しておき、撮影時の状況に応じて、AIカメラがAIモデルを切り替えて使用するようにしてもよい。また、例えば、汎用AIモデルと専用AIモデルをAIカメラに設定しておき、AIカメラが通常は汎用AIモデルを使用し、特定の状況の場合に限り専用AIモデルを使用するようにしてもよい。このような場合のAIモデルは、そのAIモデルを使用する際と同様の状況で得られた映像及び解析結果を学習データに用いて生成すればよい。
【0040】
以上、本発明について一実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された構成に限定されるものではなく、他の構成のシステムに広く適用することができることは言うまでもない。例えば、不審物検知、ナンバープレート検知などの他の事象又は物体の検知を行う監視システムに、本発明を適用してもよい。
また、本発明は、例えば、上記の処理に関する技術的手順を含む方法や、上記の処理をプロセッサにより実行させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0041】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、AIモデルを用いて映像解析する機能を持つ複数のカメラを備えた監視システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
101:AIカメラ、 102:解析装置、 103:PC、 104:発報装置、 105:携帯端末、 201:映像受信部、 202:AIモデルメモリ、 203:AI解析部、 204:データ送信部、 205:データ保存部、 206:映像・解析結果保存装置、 207:AIモデル受信部、 208:AIモデル更新部、 301:データ受信部、 302:解析部、 303:データ保存部、 304:映像・解析結果保存装置、 305:学習データ生成部、 306:学習データメモリ、 307:AIモデル生成部、 308:AIモデルメモリ、 309:AIモデル送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7