(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】フィルタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01P 1/20 20060101AFI20240522BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H01P1/20 Z
H01P11/00 200
(21)【出願番号】P 2022566185
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(86)【国際出願番号】 KR2021005344
(87)【国際公開番号】W WO2021221449
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0052843
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0054539
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508112782
【氏名又は名称】ケーエムダブリュ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナム シン パク
(72)【発明者】
【氏名】スン ホ ジャン
(72)【発明者】
【氏名】カン イ リ
(72)【発明者】
【氏名】キョン フン コ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヘ キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン チン パク
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228721(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0140856(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第106785269(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/20
H01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電気的な信号ラインを構築するRFコネクタと、
内部に前記RFコネクタが設けられる少なくとも1つのインピーダンス整合空間が形成されたフィルタボディと、
前記RFコネクタの一端部が実装固定され、前記フィルタボディの一側面に密着結合される関連PCBボードと、
前記フィルタボディの一側面と前記関連PCBボードとの間の信号の漏洩を遮蔽するように介在する環状のガスケットと、を含み、
前記フィルタボディの一側面のうち前記環状のガスケットが付着する表面は、付着面積が増加するように凹凸部が加工された、フィルタ。
【請求項2】
前記ガスケットは、ゴム材質からなる、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記凹凸部は、前記フィルタボディの一側面にメッキ形成された銀メッキ層の表面に形成された、請求項
1に記載のフィルタ。
【請求項4】
一側に密着するように結合される関連PCBボードとの間に環状のガスケットが付着するフィルタボディの一側面に凹凸部を加工形成する凹凸部形成工程と、
前記凹凸部形成工程の後、前記フィルタボディの一側面に前記ガスケットのモールディング材である樹脂を塗布する動作でディスペンシングするディスペンシング工程と、を含む、フィルタの製造方法。
【請求項5】
前記凹凸部形成工程は、
前記フィルタボディの内部で一側面側に貫通形成されたインピーダンス整合空間の外側縁部位に環状に前記凹凸部を形成する工程である、請求項
4に記載のフィルタの製造方法。
【請求項6】
前記凹凸部形成工程は、レーザ加工機によって前記凹凸部を加工形成する工程である、請求項
4に記載のフィルタの製造方法。
【請求項7】
前記凹凸部形成工程は、打刻工具によって前記凹凸部を加工形成する工程である、請求項
4に記載のフィルタの製造方法。
【請求項8】
前記凹凸部形成工程の前、前記凹凸部が形成される前記フィルタボディの一側面を銀メッキさせる銀メッキ工程をさらに含む、請求項
4に記載のフィルタの製造方法。
【請求項9】
前記ディスペンシング工程時に塗布される前記ガスケットのモールディング材である樹脂は、前記凹凸部のうち凹部に染み込み、硬化後、前記凹凸部が形成された前記フィルタボディの一側面から所定の厚さを有する程度の粘度からなる、請求項
4に記載のフィルタの製造方法。
【請求項10】
前記ディスペンシング工程の際、前記ガスケットの塗布厚さは、前記凹凸部の厚さより大きく設定される、請求項
4に記載のフィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタおよびその製造方法(FILTER AND MANUFACTURING METHOD FOR THE SAME)に関し、ガスケット(Gasket)と塗布面との引張力を高め、製造費用が安価なフィルタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、フィルタにおいて、ガスケットは信号を遮蔽するための手段として用いられ、ガスケットの接合のために、フィルタを構成する函体全体に3価クロメートメッキ後、ウィンドウ(Window)に沿って塗布される。ここで、3価クロメートメッキは、フィルタボディの外側面との間に接着されるガスケットとの引張力を高めるための構成である。これは、一般的に、ガスケットはゴム材質からなるのに対し、ゴム材質のガスケットが異種材質であるフィルタの外側面に直ちに塗布されるよりも、上述した3価クロメートメッキされたフィルタの外側面に塗布される方が、より一層高い引張力を発生させるからである。
【0003】
しかし、このように3価クロメートメッキをフィルタをなす函体全体にわたって行うことは、環境的な面、費用的な面および製造の面で望ましくない。
【0004】
また、フィルタの外側面のうちガスケットが塗布される部位にのみ3価クロメートメッキをすることも考えられるが、この場合は、フィルタと3価クロメートメッキとの間の接着力が低下する問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであって、3価クロメートメッキ工程を削除し、ガスケットフィルタ間の直接的な物理的引張力を高めるために、ガスケットが接合される局所部位のみ表面加工を行うか、既存の3価クロメートメッキ工程の代わりにガスケットが接合される局所部位のみ銀メッキ工程を行った後、前記表面加工を行って製造されたフィルタおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例によるフィルタは、所定の電気的な信号ラインを構築するRFコネクタと、内部に前記RFコネクタが設けられる少なくとも1つのインピーダンス整合空間が形成されたフィルタボディと、前記RFコネクタの一端部が実装固定され、前記フィルタボディの一側面に密着結合される関連PCBボードと、前記フィルタボディの一側面と前記関連PCBボードとの間の信号の漏洩を遮蔽するように介在する環状のガスケットとを含み、前記フィルタボディの一側面のうち前記環状のガスケットが付着する表面は、付着面積が増加するように凹凸部が加工される。
【0007】
ここで、前記ガスケットは、ゴム材質からなる。
【0008】
また、前記凹凸部は、レーザ加工機によって加工形成される。
【0009】
また、前記凹凸部は、打刻工具によって加工形成される。
【0010】
また、前記凹凸部は、前記フィルタボディの一側面にメッキ形成された銀メッキ層の表面に形成される。
【0011】
本発明の一実施例によるフィルタの製造方法は、一側に密着するように結合される関連PCBボードとの間に環状のガスケットが付着するフィルタボディの一側面に凹凸部を加工形成する凹凸部形成工程と、前記凹凸部形成工程の後、前記フィルタボディの一側面に前記ガスケットのモールディング材である樹脂を塗布する動作でディスペンシングするディスペンシング工程とを含む。
【0012】
ここで、前記凹凸部形成工程は、前記フィルタボディの内部で一側面側に貫通形成されたインピーダンス整合空間の外側縁部位に環状に前記凹凸部を形成する工程であってもよい。
【0013】
また、前記凹凸部形成工程は、レーザ加工機によって前記凹凸部を加工形成する工程であってもよい。
【0014】
また、前記凹凸部形成工程は、打刻工具によって前記凹凸部を加工形成する工程であってもよい。
【0015】
また、前記凹凸部形成工程の前、前記凹凸部が形成される前記フィルタボディの一側面を銀メッキさせる銀メッキ工程をさらに含むことができる。
【0016】
また、前記凹凸部形成工程の後、前記フィルタボディの一側面に前記ガスケットのモールディング材である樹脂を塗布する動作でディスペンシングするディスペンシング工程をさらに含むことができる。
【0017】
また、前記ディスペンシング工程時に塗布される前記ガスケットのモールディング材である樹脂は、前記凹凸部のうち凹部に染み込み、硬化後、前記凹凸部が形成された前記フィルタボディの一側面から所定の厚さを有する程度の粘度からなる。
【0018】
また、前記ディスペンシング工程の際、前記ガスケットの塗布厚さは、前記凹凸部の厚さより大きく設定される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施例によるフィルタおよびその製造方法によれば、3価クロメートの塗布工程を削除可能なため、環境汚染を防止することはもちろん、製造費用を節減させ、ガスケットとフィルタの上面との間の物理的接着力をさらに増加させることができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明によるフィルタの一実施例を示す断面図である。
【
図2】
図1の構成のうち凹凸部の様子を示す平面図および断面図の一部である。
【
図3】
図1の部分拡大図であって、第1実施例によるフィルタの製造方法を示す断面図である。
【
図4】
図1の部分拡大図であって、第2実施例によるフィルタの製造方法を示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施例によるフィルタの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【
図6】レーザ加工機および打刻工具によって製造された試料を示す図である。
【
図7】レーザ加工機および打刻工具によって製造された試料を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明によるフィルタおよびその製造方法の一実施例を、添付した図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
各図面の構成要素に参照符号を付加するにあたり、同一の構成要素については、たとえ他の図面上に表示されてもできるだけ同一の符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本発明の実施例を説明するにあたり、かかる公知の構成または機能に関する具体的な説明が本発明の実施例に対する理解を妨げると判断された場合、その詳細な説明は省略する。
【0023】
本発明の実施例の構成要素を説明するにあたり、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使うことができる。これらの用語はその構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語によって当該構成要素の本質や順番または順序などが限定されない。また、他に定義されない限り、技術的または科学的な用語を含むここで使われるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使われる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有すると解釈されなければならず、本出願において明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されない。
【0024】
図1は、本発明によるフィルタの一実施例を示す断面図であり、
図2は、
図1の構成のうち凹凸部の様子を示す平面図および断面図の一部である。
【0025】
本発明によるフィルタの一実施例は、
図1に示されるように、所定の電気的な信号ラインを構築するRFコネクタ30と、内部にRFコネクタ30が設けられる少なくとも1つのインピーダンス整合空間20が形成されたフィルタボディ10と、RFコネクタ30の一端部が実装固定され、フィルタボディ10の一側面に密着結合される関連PCBボード40と、フィルタボディ10の一側面と関連PCBボード40との間の信号の漏洩を遮蔽するように介在する環状のガスケット50とを含む。
【0026】
フィルタボディ10は、上述したRFコネクタ30の一端部が露出して関連PCBボード40に連結されるように一面が開口して形成される。
【0027】
ここで、フィルタボディ10の内部には、RFコネクタ30の他端部が連結されるバー形状の共振バー60が備えられる。共振バー60は、キャビティフィルタの複数の空洞80内に設けられた共振棒85と連結された構成であってもよい。
【0028】
このように、RFコネクタ30は、インピーダンス整合空間20を形成するフィルタボディ10の内部に位置し、一端部と他端部との間が組立時に提供される組立力によって伸張および収縮するように備えられ、一端部は関連PCBボード40に実装されるか接触する方式で連結され、他端部は共振棒85に実装されるか接触する方式で連結されて、複数のフィルタ層とPCB層との積層間隔の間を電気的に連結させる同軸コネクタ(Direct Coaxial Connect)で備えられる。
【0029】
フィルタボディ10の内部に形成されたインピーダンス整合空間20は、RFコネクタ30を介在して構築された所定の電気的な信号ラインを介して信号を伝達する時、インピーダンスが整合されるように設計された空間であってもよい。
【0030】
一方、ガスケット50は、インピーダンス整合空間20の開口部であるフィルタボディ10の外側と関連PCBボード40との間の空間を通して信号が漏洩しないように遮蔽する役割を果たすことができる。フィルタボディ10の外側と関連PCBボード40との間の空間に物理的な隙間が形成される場合、インピーダンス整合空間20で整合された信号の漏洩が発生することによりインピーダンス整合が乱れる恐れがあることから、ガスケット50を両者の間に介在させるのである。
【0031】
ここで、ガスケット50は、ゴム材質からなる。より詳しくは、ガスケット50は、ゴム材質のモールディング材であって、後述するディスペンシング工程により塗布され、硬化して、フィルタボディ10の一側面に突出して付着できる。ガスケット50がディスペンシング工程により塗布および硬化した状態で関連PCBボード40を密着させると、ゴム材質であるガスケット50が弾性変形しながら、フィルタボディ10の開口した外側面と関連PCBボード40との間の隙間を完全に遮断することができる。
【0032】
これとともに、ガスケット50は、環状に形成され、フィルタボディ10のインピーダンス整合空間20の開口部位の縁部分を取り囲むように配置される。
【0033】
従来は、ガスケット50が一定の接着力を維持したままフィルタボディ10に結合させるために、ガスケット50が接着されるフィルタボディ10の一側面全部に対してマスキング工程後、剥離工程を取った後、フィルタボディ10をなす函体の外部全面に対して3価クロメートメッキ工程を行い、ディスペンシング工程によりガスケット50を接着する方式を取っていたが、クロメート剥離過程およびメッキ工程中の高温によるクラック発生およびディスペンシング工程での密着力の問題が発生した。また、従来は、3価クロメートメッキ工程を必須で行うことによる環境汚染の問題も付随的に発生した。
【0034】
しかし、本発明によるフィルタおよびその製造方法の一実施例は、従来の3価クロメートメッキによるガスケット50の付着方式を全部見直して、クロメートメッキ工程を全部削除できる画期的な技術的構成を提案する。
【0035】
より詳しくは、
図2に示されるように、フィルタボディ10の一側面のうち環状のガスケット50が付着する表面は、付着面積が増加するように凹凸部70が加工形成される。
【0036】
ここで、凹凸部70は、
図2の拡大図に示されるように、凹部71と凸部72とが繰り返されるようになることにより、ガスケット50が付着する付着面の面積を平面の場合に比べてより増加させる役割を果たし、所定の付着力を維持するようにする。
【0037】
より詳しくは、凹凸部70は、凹部71をなす微細谷形状と、凸部72をなす微細山形状とが繰り返し配列されるとともに、それぞれ同一方向に平行な直線形状に形成されることはもちろん、凹部71と凸部72とが格子形状をなすように交差することにより、数多くの微細凹凸部70を形成できるように備えられることも可能である。
【0038】
ただし、凹凸部70を後述するレーザ加工機110または打刻工具120により加工形成する前に、フィルタボディ10の一側面を銀メッキさせることができる。ここで、銀メッキは、フィルタボディ10の外側面全部に対して行う必要はなく、ガスケット50が塗布されるフィルタボディ10の一側面に対してのみ行うことが好ましい。上述した凹凸部70は、銀メッキされた状態のフィルタボディ10の外側面に形成されるので、銀メッキ層は、後述するように、レーザ加工機110または打刻工具120を用いて加工形成される部位と定義される。
【0039】
銀材質は、その特性上、人体に有害でないことから環境汚染の問題を発生させる恐れが少なく、関連PCBボード40と対面するフィルタボディ10の一側面にメッキされて、外部信号のフィルタボディ10の内側への侵入を容易に遮断できる材質である。
【0040】
図3は、
図1の部分拡大図であって、第1実施例によるフィルタの製造方法を示す断面図であり、
図4は、
図1の部分拡大図であって、第2実施例によるフィルタの製造方法を示す断面図である。
【0041】
本発明によるフィルタおよびその製造方法の一実施例において、凹凸部70は、
図3に示されるように、レーザ加工機110によって加工形成される。
【0042】
レーザ加工機110は、不図示のレーザ発生部によってレーザビームが発振すると、発振したレーザビームの大きさ(ビーム幅)および焦点位置に応じて、フィルタボディ10の一側面に対する凹凸部70のうち凹部71の幅および深さの微細調整が可能である。
【0043】
また、レーザ加工機110は、凹凸部70の予め設計された通りにレーザビームを移動させて発振することにより、非常に迅速かつ精密に凹凸部70の加工過程が行われるという利点を提供する。
【0044】
特に、フィルタボディ10が所定の誘電体材質からなるキャビティフィルタの一構成である場合、後述する打刻工具120による物理的な打刻方式の凹凸部70の製造の場合よりもフィルタボディ10に加えられる物理力がほとんどないので、フィルタボディ10のクラック発生および割れによる損傷を事前に遮断できるという利点を有する。
【0045】
また、本発明によるフィルタおよびその製造方法の一実施例において、凹凸部70は、
図4に示されるように、打刻工具120によって加工形成される。
【0046】
一般的に、キャビティフィルタは、所定の誘電体材質からなるフィルタボディ10を含み、フィルタボディ10のモールディング方式の製造過程中に打刻工具120による所定の打刻力で凹凸部70を容易に形成することができる。
【0047】
打刻工具120は、不図示の打刻駆動部によってフィルタボディ10の一面に向かって所定の速度で移動して打刻させることにより、ガスケット50が付着するフィルタボディ10の一面に環状の凹凸部70を非常に迅速に加工できるという利点を提供する。
【0048】
図3および
図4を参照すれば、レーザ加工機110を用いて凹凸部70を形成する場合には、打刻工具120を用いて凹凸部70を形成する場合よりも尖った形状の断面を有するように凹部71を形成できるという点で、単位面積あたりの接触面積をよりさらに大きく増加させることができる。
【0049】
フィルタボディ10の一側面にレーザ加工機110または打刻工具120を用いて凹凸部70を形成した後には、フィルタボディ10の一側面にガスケット50をなすゴム材質(モールディング樹脂)を塗布してディスペンシングすることができる。
【0050】
一方、前記のようなレーザ加工機110または打刻工具120を用いた凹凸部70の加工前に、フィルタボディ10の一側面には所定厚さの銀メッキ過程が行われる。そのため、上述したように、凹凸部70は、銀メッキされたフィルタボディ10の一側面にレーザビームを発振または打刻させることにより形成される部位と定義される。
【0051】
ここで、凹凸部70の厚さは、後述するディスペンシング工程S30により塗布されるガスケット50の厚さより小さく形成されることが好ましい。これは、ガスケット50が凹凸部70を全部覆うように塗布されることにより、表面が滑らかでないように形成された凹凸部70がインピーダンス整合空間20に露出してインピーダンス整合が乱れるのを防止可能にするためである。
【0052】
図5は、本発明の一実施例によるフィルタの製造方法の手順を示すフローチャートである。
【0053】
以下、上記のように構成される本発明の一実施例によるフィルタの製造方法を簡略に説明する。
【0054】
本発明の一実施例によるフィルタの製造方法は、
図1~
図4および
図5に示されるように、所定の誘電体材質からなり、少なくとも1つ以上の空洞が形成されたフィルタボディ10を用意するフィルタボディ製造工程(図面符号不図示)と、フィルタボディ10の一側に密着するように結合される関連PCBボード40との間に環状のガスケット50が付着する部位に凹凸部70を加工形成する凹凸部形成工程S20とを含む。
【0055】
本発明の一実施例では、フィルタボディ10をキャビティフィルタの一構成として採用しているが、必ずしもキャビティフィルタのフィルタボディ10に限定されるものではなく、信号の漏洩を防止(信号の遮蔽)するための構成においてフィルタボディ10とは異なる異種材質のガスケット50が、後述するディスペンシング工程S30により塗布される限度でいかなる材質またはいかなる仕様のフィルタボディ10として採用されても、本発明の権利範囲に含まれる構成であると見なす。すなわち、フィルタボディ10は、上述したキャビティフィルタのみならず、セラミック材質からなる導波管フィルタ(Wave-Gudie Filter)が採用されることも可能である。
【0056】
ここで、凹凸部形成工程S20は、フィルタボディ10の内部で一側面側に貫通形成されたインピーダンス整合空間20の外側縁部位に環状に凹凸部70を形成する工程と定義される。
【0057】
ただし、本発明の一実施例によるフィルタの製造方法では、凹凸部70をフィルタボディ10の一側に開口した一面の円形ホール(図面符号不図示)の形状に対応する形状として環状に形成されたものに限定して説明しているが、必ずしも凹凸部70の形状が環状に限定される必要はなく、信号の遮蔽が可能な範囲でいかなる形状に形成されることも可能であることは言うまでもない。
【0058】
また、凹凸部形成工程S20は、
図3に示されるように、レーザ加工機110によって凹凸部70を加工形成する工程と定義される。
【0059】
これとともに、凹凸部形成工程S20は、
図4に示されるように、打刻工具120によって凹凸部70を加工形成する工程と定義される。
【0060】
ただし、凹凸部形成工程S20の前、凹凸部70が形成されるフィルタボディ10の一側面を銀メッキさせる銀メッキ工程S10をさらに含むことができ、さらに、凹凸部形成工程S20の後、フィルタボディ10の一側面にガスケット50のモールディング材である樹脂を塗布する動作でディスペンシングするディスペンシング工程S30をさらに含むことができる。
【0061】
ディスペンシング工程S30によるガスケット50のモールディング材を凹凸部70上に塗布する場合、フィルタボディ10または銀メッキ層の外面に表面積を増加させるように形成された凹凸部70に樹脂が染み込みながら硬化することから、接合力(引張力)が未加工面に塗布する場合よりはるかに増加する。
【0062】
ここで、ディスペンシング工程S30の際、
図3および
図4に示されるように、ガスケット50の塗布厚さは、凹凸部70の厚さより大きく設定されることが好ましい。ディスペンシング工程S30により塗布されたガスケット50が凹凸部70を全部覆うように備えられることにより、凹凸部70がインピーダンスマッチングを必要とするインピーダンス整合空間20に露出するのを防止することができる。
【0063】
また、ディスペンシング工程S30の際に塗布されるガスケット50のモールディング材である樹脂は、凹凸部70のうち凹部71に染み込み、硬化後、凹凸部70が形成されたフィルタボディ10の一側面から所定の厚さを有する程度の粘度からなることが好ましい。ここで、所定の厚さとは、少なくともフィルタボディ10の一側面に密着する関連PCBボード40の対向面に接触する厚さで定義される。
【0064】
上記のように構成される本発明によるフィルタおよびその製造方法によれば、3価クロメートメッキ工程を削除可能なため、環境汚染のリスク負担を低減できることはもちろん、製品の製造単価を節減することができ、これとともに、製品の工程時間を大きく短縮できるという利点を提供する。
【0065】
図6および
図7は、レーザ加工機および打刻工具によって製造された試料を示す図である。
【0066】
加工手順としては、フィルタボディ10の原材料にレーザ加工機110または打刻工具120による凹凸部70を生成した後、ディスペンシング工程を行うと、添付した
図6および
図7のような試料を確保することができる。
【0067】
参照として、
図6は、銀メッキ工程の代わりに、銅メッキ工程で製作した試料を示したものであり、
図7は、銀メッキ工程を行ったものである。
【0068】
図6および
図7を参照すれば、レーザ加工機110を用いて凹凸部70を形成する場合には、より精密な凹部71および凸部72の加工が可能なため、凹凸部70の加工密度が打刻工具120を用いて凹凸部70を形成する場合よりも高いことを確認することができる。
【0069】
また、銀メッキ工程を追加して銀メッキ層を備えた場合(
図7参照)と、銅メッキ工程を追加して銅メッキ層を備えた場合(
図6参照)とを肉眼で比較しても、外観の色相を示すメッキ材質のみ差があるだけで、形成される凹凸部70の加工密度の面で差が生じるのではないことを確認することができる。
【0070】
このように、本発明の一実施例によるフィルタおよびその製造方法によれば、フィルタボディ10の固有の材質である誘電体材質の表面またはフィルタボディ10の一側面にメッキ工程により形成されたメッキ層を形成する材質の表面に、直接異種材質であるゴム材質のガスケット50を塗布形成するにあたり、予めフィルタボディ10の一側面またはメッキ層の表面にレーザ加工機110または打刻工具120によって凹凸部70を形成してフィルタボディ10に対する接合力(引張力)をより向上させることにより、製品の信頼性を向上させるという利点を提供する。
【0071】
また、上述した接合力(引張力)を向上させるために、以前に行われていた3価クロメートメッキ工程を完全に削除することにより、費用を節減する一方で、環境汚染を防止できるという利点もさらに創出できる。
【0072】
以上、本発明によるフィルタおよびその製造方法の実施例を、添付した図面を参照して詳細に説明した。しかし、本発明の実施例が必ずしも上述した実施例によって限定されるものではなく、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者による多様な変形および均等な範囲での実施が可能であることは当然であろう。そのため、本発明の真の権利範囲は後述する特許請求の範囲によって定められる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、3価クロメートメッキ工程を削除し、ガスケットとフィルタとの間の直接的な物理的引張力を高めるために、ガスケットが接合される局所部位のみ表面加工を行うか、既存の3価クロメートメッキ工程の代わりに、ガスケットが接合される局所部位のみ銀メッキ工程を行った後、前記表面加工を行って製造されたフィルタおよびその製造方法を提供する。
【符号の説明】
【0074】
10:フィルタボディ 20:インピーダンス整合空間
30:RFコネクタ 40:関連PCBボード
50:ガスケット 60:共振バー
70:凹凸部 71:凹部
72:凸部 110:レーザ加工機
120:打刻工具 S10:銀メッキ工程
S20:凹凸部形成工程 S30:ディスペンシング工程